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子会社・関連会社の 連結の範囲
経営に役立つ タイムリー情報 子会社・関連会社の 連結の範囲 みすずコンサルティング(株) 計操作等が刑事事件として取り上げられた 1.はじめに ことから,再び「連結の範囲」が注目され 「子会社・関連会社の連結の範囲はどの ようにして決まるのか」 「親会社」は,原則としてすべての「子 るようになりました。 2.「子会社」の範囲の決定 会社」を連結の範囲に含めなければならな 連結制度においては,まず支配従属関係 いとされています。 にある連結グループの範囲を決定する必要 その連結の範囲の対象となる「子会社」 があり,この決定のために親子間の取り扱 の判定は,議決権の所有割合(議決権の過 いが次のように定められています。 半数)以外の要素を加味した「支配力基準」 「親会社」とは, 他の会社等 の財務及 4 4 4 4 4 及び他の会社の意思決定機関を支配してい 4 るかどうかという実質的な観点から判定を び営業または事業の方針を決定する機関 4 4 4 4 (以下「意思決定機関」という) を支配して 4 4 していくことになります。 いる 会社をいい,「子会社」とは,意思決 また,「関連会社」の判定にあたっては, 定機関を支配されている当該 他の会社等 「影響力基準(後述)」により他の会社の財 のことをいいます。 4 4 4 4 務・営業の方針決定に対して重要な影響を また,親会社が直接支配しているだけで 与えることができるかどうかという観点か なく子会社を通して他の会社等の意思決定 ら判定をしていくことになります。 機関を支配している場合,いわゆる間接支 さらに,「子会社」及び「関連会社」の 配 においても,「親会社」の「子会社」と 範囲には,会社のほか,会社に準ずる事業 みなされることがあります。 体,いわゆるSPC(特別目的会社) や,投 その具体的な例として,以下のような 資事業組合なども含まれることになりま ケースが考えられます。 す。 ① 親会社と子会社が一体となって他の会 その投資事業組合については,今年の初 めにライブドア社が「連結の範囲」の決定 方法を悪用し,投資事業組合を利用した会 52 建設業しんこう 2006.10 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 社を支配している場合 ② 子会社1社で他の会社を支配している 場合 ③ 複数の子会社が一体となって他の会社 を支配している場合 容の議決権を行使すると認められる者をい います。 意思決定機関とは,株主総会及び取締役 その緊密な関係の有無については,両者 会などの法的な機関をいい,経営会議等の の関係に至った経緯,関係状況の内容,過 任意の機関は含まれません。 去の議決権の行使状況,自己の商号との類 4 そこで,他の会社等の意思決定機関を支 4 4 4 4 4 似性を踏まえ,実質的な判断を行うことと 配している場合の「支配力基準」の要件を されています。 まとめると,以下のとおりになります。 その「緊密な者」に該当する具体例とし • 議決権の50%超を所有 • 議決権の40%以上,50%以下を所有,か つ以下のいずれかの要件に該当する場合 ① 「緊密な者」及び「同意している者」 の議決権と合算して50%超 ては,以下に掲げる者が考えられます。 ① 議決権の20%以上を所有している会社 等 ② 役員または役員が議決権の過半数を所 有している会社等 ② 自己の役員・従業員(現在または過 ③ 役員・使用人,これらであった者が取 去)が取締役会等の構成員の過半数を 締役会等の構成員の過半数を占めている 占める 当該他の会社等 ③ 財務及び営業または事業の方針の決 定を支配する契約等の存在 ④ 資金調達額の総額の過半について融 資・債務保証・担保提供 ⑤ 他の会社等の意思決定機関を支配し ていることが推測される事実が存在す る • 議決権の所有は40%未満であるが, 「緊 ④ 役員・使用人,これらであった者を, 代表権のある役員として派遣し,かつ, 取締役会等の構成員の相当数(過半数に 満たない場合を含む)を占めている当該 他の会社等 ⑤ 資金調達額の総額の過半について融 資・債務保証・担保提供を行っている会 社等 密な者」及び「同意している者」の議決 ⑥ 自己の技術援助契約等が,相手の事業 権と合算して50%超,かつ上記②から⑤ の継続に重要な影響を及ぼすこととなる までのいずれかの要件に該当する場合 会社等 議決権の所有割合の算定は,事業年度末 ⑦ 自己に対する営業取引上の事業依存度 の所有株式に基づく株主総会での議決権の が著しく大きい会社等,または自己に対 数により,次の算式によって算定されます。 するフランチャイズ契約等により著しく 事業上の拘束を受ける会社等 所有する議決権の数 ×100% 行使し得る議決権の総数 次に,「同意している者」とは,役員の 「緊密な者」と「同意している者」につ 選任や定款の変更等,他の会社の財務・営 いてですが,まず「緊密な者」とは,出資, 業または事業方針の決定に関する議決権の 人事,資金,技術,取引等における両者の 行使にあたって,契約,合意等により,自 関係状況からみて,自己の意思と同一の内 己の意思と同一内容の議決権を行使するこ 建設業しんこう 2006.10 53 とに同意していると認められる者をいいます。 議決権の所有割合の算定は,「子会社」 なお,議決権の所有割合の算定において の範囲の決定における算式と同じく「子会 は,分子に「緊密な者」 ・ 「同意している者」 社」以外の 他の会社等 の議決権の所有 の所有する議決権を加えた算式によって算 割合を算定することになります。 定されます。 3. 「関連会社」の範囲の決定 4.連結の範囲から除かれる「子会社」 及び「関連会社」 「関連会社」とは,会社(当該会社が「子 連結制度において,次に該当する「子会 会社」を有する場合には,当該「子会社」を 社」・「関連会社」については,連結の範囲 含む)が出資,人事,資金,技術,取引等 から除外されることになっています。 の関係を通じて,子会社以外の他の会社等 ① 支配(影響)が一時的であると認めら の財務・営業または事業の方針の決定に対 して重要な影響を与えることができる場合 における当該 他の会社等 をいう,とさ れています。 「子会社」以外の他の会社等の財務・営 業または事業の方針の決定に対して重要な れる場合 ② 利害関係人の判断を著しく誤らせるお それがある場合 ③ 重要性が乏しい場合 5.最後に 影響を与えることができる場合の「影響力 投資事業組合に係る不適切な会計処理が 基準」の要件をまとめると,以下のとおり 問題になったことから,金融庁より平成18 になります。 年3月期以降の有価証券報告書提出会社を • 議決権の20%以上を所有 • 議決権の15%以上,20%未満を所有,か つ以下のいずれかの要件に該当する場合 ① 役員・使用人(現在または過去)が 代表取締役等に就任 対象に投資事業組合等に係る連結状況につ いて重点審査を実施するとの発表がありま した。 この問題をめぐって連結の範囲に係る判 断基準を明確化する目的から,「支配力基 ② 重要な融資 準」及び「影響力基準」の適用に関して見 ③ 重要な技術の提供 直しが行われており,今後はより適切な情 ④ 重要な販売,仕入れ等の営業上・事 報開示をする必要があります。 業上の取引 ⑤ 重要な影響を与えることが推測され る事実が存在する • 議決権の所有は15%未満であるが, 「緊 密な者」及び「同意している者」の議決 権と合算して20%以上,かつ上記①から ⑤までのいずれかの要件に該当する場合 54 建設業しんこう 2006.10 ◆