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3+1型新規フタロシアニン合成用イソインドリン誘導体の合成
ISSN 2186-5647 −日本大学生産工学部第46回学術講演会講演概要(2013-12-7)− 4-33 3+1型新規フタロシアニン合成用イソインドリン誘導体の合成 日大生産工(研)○武元 誠 日大生産工 吉野 悟, 坂本 恵一 1 緒言 再生可能エネルギーの研究開発が盛んに 行われており、近年では安全性に難のある原 子力や二酸化炭素などの温室効果ガスを排 出する化石燃料に頼らない発電方法として、 太陽発電が注目されている。とりわけ従来の 太陽電池より簡便な製法による有機材料を 用いた太陽電池が注目されつつある 1)。しか し、既存の有機薄膜太陽電池は低変換効率で あり、可視光域から近赤外域の吸収を有する ルテニウム系色素は希少なレアアースを用 いており非常に高価である。 そこで、次世代の色素増感太陽電池用増感 色素としての新規フタロシアニン(PC)誘導 体の実用化が期待されている。また、太陽電 池に用いる場合は極大吸収波長であるQ帯を 長波長側に有し、熱や光などに対して長時間 の安定性およびセル作成時に用いるITO基盤 との親和性が必要である。しかし、既往の研 究で報告されているノン-ペリフェラル位に S-アリールを有するPC類はQ帯が長波長側に シフトしている1,2)が、ITO基盤との親和性が 低いと考えられている。 本研究では、色素増感型太陽電池用の新規 PC増感色素の合成をサブフタロシアニ ン (SubPC)にイソインドリン誘導体を導入する SubPC開環法3,4)に着目した。SubPCとはピロ ールがベンゼンに縮合した構造のイソイン ドール3ユニットが窒素で架橋されたアンブ レラ構造の物質である。 ここでは、イソインドリン誘導体の5,6位に 親水基を有する新規イソインドリン誘導体 の合成を行うこととした5)。また、ITO基盤と の親和性がよいと思われる親水基をイソイ ンドリン誘導体の5,6位に導入することで、SアリールSubPCから親水基を選択的に付与し た3+1型S-アリールPC類の合成を検討した。 X HN N N NH S N S N N N M N N N S S N S S X N N X S X PC X S N X N X X X S S X R 3+1PC Cl N X S N S X N B N N NH N N R S X S-ArylPC N S N N HN S S N N X X X X S X N Cl S N N B N N N S S X X SubPC S-ArylsubPC X1=CH3, X2=OCH3, X3=C(CH3)3, M=Cu, Co, Ni, Zn, Pb, R=Hydrophilic group Fig. 1 PC derivatives and SubPC derivatives 2 実験 2.11,3-ジイミノイソインドリン(1)の合成 1の合成はアルゴン-アンモニア混合ガス流 通下にてo-フタロニトリルとナトリウムメト キシド混合液を反応させることによった。反 応後は、メタノールと酢酸エチルを用いて析 出した。粗生成物は更に酢酸エチルとエタノ ールにて分離精製を行った。(Scheme 1) NH CN CH3ONa CN NH Ar , NH3 gas R.T. 1h, 60 ℃ 3h NH Scheme 1 The reaction route of 1,3-Diiminoisoindoline 2.2 1,3-ジイミノ-5,6-ジクロロ イソインドリン(2)の合成 2の合成は1と同条件にて出発物質を4,5-ジ クロロフタロニトリルとして合成を行った。 (Scheme 2) NH Cl Cl CN CN Cl CH3ONa Ar , NH3 gas R.T. 1h, 60 ℃ 3h NH Cl NH Scheme 2 The reaction route of 1,3-Diimino-5,6-dichloroisoindoline Synthesis of Isoindoline derivatives to make the new 3+1 type Phthalocyanine Makoto TAKEMOTO, Satoru YOSHINO and Keiichi SAKAMOTO ― 595 ― 2.3 3+1型PCの合成 2.3.1 前駆体の合成 3+1型PCの前駆体は2,3-ジシアノヒドロキ ノンからフタロニトリル-3,6-ジトリフラー ト、3,6-ビス(チオアリール)フタロニトリ ル誘導体を経て、S-アリールSubPC誘導体 (HTASubPC)を3段階で合成した。(Scheme 3) O OTf O CN CN F3C S O S CF3 O O Py , CH2Cl2 CN -72℃ to R.T, 24 h CN OTf OH HS X K2CO3 , DMSO R.T. , 24 h X X X S S S X S CN BCl3 , p-xylene CN 1-Chloronaphthalene 150 ℃ , 0.5 h X X1 = CH3 X2 = OCH3 X3 = C(CH3)3 X N Cl S N N BN N N S S S HTA(Me)PC X HTA(Me)SubPC SubPC X Absorbance / a.u. OH 料である4,5-ジクロロフタロニトリル由来の C≡N基が確認できなかった。また、1H-NMR にて確認を行った。 3.2 HTA(Me)PC フタロニトリル-3,6-ジトリフラートと3,6ビス(チオアリール)フタロニトリル誘導体は IRスペクトルと1H-NMRスペクトルにて、目 的構造を有していることを確認した。 HTA(Me)PC、HTA(Me)SubPCそしてo-フタ ロニトリルを出発物質とした比較用SubPCを 紫外可視(UV-Vis)スペクトルにてQ帯を測定。 Table 1とFig. 2より生成物はそれぞれQ帯 が100nm程度レッドシフトしていることが確 認できた。 Scheme 3 The reaction route of HTASubPC 2.3.2 3+1型PCの合成 3+1型PCの1つである1,4,8,11,15,18-ヘキサ (チオアリールメチル)PC(HTA(Me)PC)の合成 は、ジメチルスルホキシド(DMSO)と1-クロ ロナフタレン溶媒中で生成物1とHTASubPC のメチル基(Me)置換のHTA(Me)SubPCを還流 にて合成した。また、クロロホルムを溶媒と するシリカゲルカラムクロマトグラフィー にて分離精製した。(Scheme 4) CH3 S N ClS N N BN N N S S S S H3C CH3 CH3 CH3 NH NH DMSO 1-Chloronaphthalene S N S NHN S N N NHN S N S S H3C H3C 500 550 600 650 700 750 800 850 Wavelength / nm Fig. 2 The UV-Vis spectra of SubPC, HTA(Me)SubPC and HTA(Me)PC Table 1 The Q band of SubPC, HTAMeSubPC and HTAMePC Solvent Chloroform λmax / nm SubPC HTA(Me)SubPC HTA(Me)PC 565 654 773 CH3 H3C NH H3C 450 CH3 H3C Scheme 4 The reaction route of HTA(Me)PC 3 結果考察 3.1 イソインドリン誘導体 生成物1は白色粉末にて収率32%程度で得 ら れ た 。 赤 外 分 光 (IR) ス ペ ク ト ル で は 、 3280cm-1にN-H伸縮振動、1668 cm-1に-NH2変 角振動、1565 cm-1にベンゼン環C=C伸縮振動 が確認できたことから、N-H基、-NH2基、ベ ンゼン環を確認でき、原料であるo-フタロニ トリル由来のC≡N基が確認できなかった。 また、プロトン核磁気共鳴(1H-NMR)スペクト ルにて確認を行った。 生成物2は淡黄色粉末状にて得られた。IR スペクトルでは、3268cm-1にN-H伸縮振動、 1666 cm-1に-NH2変角振動、1565 cm-1にベンゼ ン環C=C伸縮振動が確認できたことから、 N-H基、-NH2基、ベンゼン環を確認でき、原 参考文献 1) 坂 本 恵 一 , 古 谷 直 樹 , 曽 我 久 司 , 色 材 2012,85,2-8. 2) Keiichi Sakamoto, Satoru Yoshino, Makoto Takemoto and Naoki Furuya J. Porphyrins and Phthalocyanines 2013; 17: 605–627 3) 廣橋亮, 坂本恵一, 奥村映子:“機能性色素 としてのフタロシアニン”, アイピーシー 2004. 4) A.Weitemeyer, H liesch, and D. Wöhrle J. Org. Chem. 1995, 60, 4900-4904 5) Taro Nonomura, Nagao Kobayashi and Tatsuya Tomura J. Porphyrins and Phthalocyanines ― 596 ― 2000; 4: 538–543