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粉河中学校移転建て替え費用に関する件
粉河中学校移転建て替え費用に関する監査請求 内容 第1 請求人 Tほか24名 第2 請求の提出日 平成22年9月9日 第3 請求の要件審査 本件措置請求書は、平成22年9月9日に提出されたが、請求人の職業について記載 がなかったため、9月13日付けで補正を要求した。 9月14日に再提出されたところ、地方自治法第242条第1項に規定する要件を備 えているものと認め、9月21日付けで受理した。 第4 請求の要旨(原文のとおり。 ) 1 請求の趣旨 (1) 市長は、中村愼司市長に対し、粉河中学校の移転建て替え用地の購入費用とし て支出した計15億0872万5360円の返還あるいは損害賠償請求をせよ (2) 市は、粉河中学校の移転建て替えに関する費用について、名目の如何を問わず 今後公金支出を一切してはならない との措置を講じるよう市長に勧告することを求める。 2 請求の理由 (1)当事者 ① 請求人 請求人らは紀の川市に居住しており、粉河中学校で学ぶ子供達が元気 に安心して学ぶことができる教育環境を守るための活動をすすめる市 民らである。 ② 中村愼司市長 中村愼司市長は、現職の紀の川市長であり、粉河中学校の移転建て替 えを推進し、2009年度において、粉河中学校移転建て替え用地の購 入費を公金から支出し、今後も、同用地の造成費を支出しようとする最 終責任者である。 (2)公金支出等 ① 市長は、これまでに粉河中学校の移転建て替えに関する移転先用地の購入費用と して、2009年度に計金15億0872万5360円の公金を支出した。 ② 市は、粉河中学校の移転建て替えに要する用地造成事業費用として、今年度に1 億0056万1000円の予算計上し、翌年度に8億円の債務負担行為を設定して 支出しようとしている。 (3)違法・不当な公金支出 ① 市長は、粉河中学校の校舎等の老朽、耐震化への対策とする建て替えを目的とし て、校舎の移転建て替えを推進し、JR粉河駅の南西にあって、JR和歌山線と国 道24号線の間に位置する紀の川市土地開発公社が保有していた塩漬け土地を主 とする一団の約3万2265.25平方メートル(登記簿上の面積)の土地を購入 (但し、実際の購入部分は、市所有の3168.31平方メートルを除く2万90 96.94平方メートル)し、その費用として、上記のとおりこれまでに巨額の公 金を支出しかつ、同土地を盛り土造成するための費用として、今後も巨額の公金を 支出して移転させる計画を推し進めている。 ② しかしながら、中村市長が推し進める粉河中学校の移転建て替えは、移転させる こと及び、移転先用地を巨額で購入したこと及び巨額の費用を投入して盛り土造成 することは違法・不当でありかつ、移転させずに既存校地で建て替えや耐震化の補 強工事等ができる上、建て替え目的である老朽及び耐震化への対策とする建て替え 及び耐震補強はでき、その目的は達成できる。 それゆえ、市長が、移転先用地の購入費や盛り土造成費及び、老朽と耐震化への 対策の必要のない校舎等の建築費用等を支出することは、その目的を達成するため の必要且つ最小の限度をこえて、これを支出してはならないとする地方財政法第4 条の規定に反するし、最小の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない とする地方自治法第2条14項の規定に反する違法・不当な行為である。以下これ らの点について詳述する。 ③ 粉河中学校を移転させることの違法・不当 ア 市は、粉河中学校を移転させることの理由として、次の点をあげている。 ア ○ 現在の場所に新校舎を建築する場合は、校舎が完成するまでの約2年間、生 徒はプレハブ校舎で学習することとなり、工事に伴う騒音等で落ち着いた環境 での学習が出来ない。また、現校舎の取り壊しに伴い、グラウンドにプレハブ 校舎等を建設し、建築資材を置く場所も確保しなくてはならないため、特に体 育や部活動を中心に教育活動が制限される。 イ ○ 現在の場所に新校舎を建築する場合は、工事に伴い万全の安全対策を講じる ものの、危険を全く回避させるとは言い切れない。また、建築資材等の搬出入 のために、大型車両が頻繁に行き来するため、付近の交通事情に支障や危険を きたす恐れが生じる。 イ しかしながら、上記各理由は、通常、どの学校においても、建て替え工事や耐震 化工事をする際にも、予想されることであって、ことさら、粉河中学校を移転さ せなければならないとする理由にはならないと解することができる。 ア ○ すなわち、どの学校においても、既存校地で建て替えや耐震補強工事を行っ た場合は、騒音は想定されることであるし、そのことによって、落ち着いて学 習できないことも多少は考えられる。また、体育や部活動などの教育活動が制 限される点も、制限が生じないなどと否定することが不可能に近いことでもあ る。さらに、工事に伴う危険を全く回避させるとは言い切れないことも、同様 であり、付近の交通事情に支障や危険をきたすおそれが生じる点も、そのよう なおそれが生じないなどとは、誰も否定できることではない。このように、上 記各理由は、既存校地で建て替えや耐震補強工事を行った場合に、通常、想定 されることであり、それ以外に、粉河中学校に特有の移転させなければならな いとする理由は存しない。 イ ○ そして、粉河中学校に現在ある教室棟は昭和43年及び、管理・特別棟は昭和 49年、体育館は昭和54年、特別教室棟は昭和61年、武道場は平成10年に 建て替えあるいは建築されているが、それらの際にも、市が上述したような移転 させることの理由にしているようなことが生じたことと容易に推認できるが、こ れまでも移転させることなく施工できたことからすれば、今回も、移転せずに施 工することができると解することができる。 ウ ○ また、粉河中学校の建て替えの目的である老朽及び耐震化への対策としての建 て替えや補強工事を行った学校が、紀の川市立学校において、貴志川中学校及び、 安楽川小学校、名手小学校の3校が存するが、これらの3校は、移転させること なく施工された上、市立打田中学校が、建て替えの計画中にあるが、同中学校も、 移転させることなく既存校地においての計画がすすめられている。すでに施工済 みの3校の工事の際にも、上述したような移転させることの理由にしているよう なことが生じたことと容易に推認できるが、移転させたところが存せずかつ、計 画中のところも既存校地での施工を計画していることに照らせば、粉河中学校も、 移転させなくても既存校地において施工できると解すことができる。 エ ○ してみれば、上記各理由は、ことさら、粉河中学校を移転させることの理由に は該当しないと解することができる。 ウ また、上記移転させることの理由は、工事に伴って生じることの問題であり、既 存校地において、建て替えられずかつ耐震化補強工事ができないとする理由がない。 換言すれば、既存校地において建て替え及び耐震化補強工事ができないことはない と解することができる。 エ さらに、平成20年10月に作成された紀の川市財政計画(第1次:平成20年 度∼平成27年度)によれば、粉河中学校が、移転建て替えではなく改築で計画さ れていた。このように紀の川市自体が改築で計画していたということは、既存校地 で建て替えられることの証左である(資料9) 。 オ 移転させた場合、現在、5棟ある建物をすべてを新築することになるが、粉河中 学校の建て替えの目的が、校舎の老朽及び耐震化のための対策であるところ、その 対策が必要とされているのは、現在、5棟ある建物のうち2棟の教室棟の建て替え と1棟の体育館の耐震補強であり、それら以外の2棟の特別教室棟及び武道場は、 建て替えることも耐震補強することも不要である(資料4) 。すなわち、建て替えが 不要の建物が5棟のうち3棟ということであるが、これら3棟を新築することは、 目的外の行為でありかつ、厚遇に過ぎる。 カ このため、上述したとおり既存校地で建て替えられるのであるから、目的外の3 棟すべてを新築することになる移転行為は、市長としての裁量権を逸脱・濫用する 違法・不当な行為と解すべきである。 ④ 移転先用地を巨額で購入したこと及び、巨額の費用を投入して盛り土造成すること の違法・不当。 ア すでに、市は、計15億0872万5360円を投入して移転先用地を購入して いる。購入費のみでも極めて巨額である。この点、上述したとおり移転させること に理由がなく、既存校地においても建て替え及び耐震化補強工事ができないことは ないのであるから、あえて、移転先用地を巨額の費用を投入してまで購入すべき必 要性は何ら存せず、巨額の費用を投入してまで購入すべきではなかった。 イ その上、約15億円を投入して購入した土地が、そのままでは、校地とすること ができない状況にあった。それゆえ、市は、さらに、計9億円を投入して校地環境 を整えようとしている。そうすると、移転先用地は、計24億円を投じなければ、 校舎等が建築できない用地であると解すことができるところ、当該費用が極めて巨 額におよび、なおさら、購入すべき必要性は存せず当該用地を購入すべきではなか った。 ウ この点、何故に、そのままでは、校地とすることができないかといえば、移転先 用地周辺は、もともと紀の川の河川敷であったところであり、国道よりも約3メー トルもの低地であって、紀の川市が作成している「紀の川水系 紀の川・貴志川 洪 水ハザードマップ」によれば、1.0m∼2.0mの浸水が想定される区域内に存 し、洪水による浸水の危険があったからである(資料5) 。 エ それゆえ、市は、購入した土地周辺が浸水の危険があり、そのままでは校地とす ることのできないことが、購入する前から顕著な事実であった土地を、校地と選定 し、購入したことを意味する。 オ さらに、移転先用地は、盛り土造成したとして、その土地が浸水のおそれのある 水域より高地になったとしても、その周辺の一部には、依然として国道より3メー トル低い土地が存し、移転先用地周辺が浸水の危険のあることに何ら変わりがなく、 校地とするには相応しくないことも何ら変わりがない。 カ このため、特段、購入すべき必要性がないにもかかわらず、浸水の危険があり校 地とするには相応しくなく、盛り土造成までしなければならないことが購入する前 から顕著な土地でありかつ、盛り土造成したとしても、校地とするには相応しくな い土地に、巨額の購入費及び造成費を投入することは、市長としての裁量権を逸脱・ 濫用する違法・不当な行為と解すべきである。 キ なお、購入費約15億円のうち、紀の川市土地開発公社から16筆計1万891 7㎡の土地を計13億7043万1980円で購入しているが、かかる土地が、旧 粉河町が先行取得を依頼した土地であったとしても、同開発公社が先行取得する時 に当該土地を購入した価格が、今回同開発公社以外から購入した価格と比較した場 合、3・6倍から5・6倍に相当する高額である(なお、同開発公社が先行取得し た時の価格は9億6692万1000円である。一方、今回市が購入した開発公社 以外の土地の価格は、購入時期として昨年の9月頃と今年の1月頃との2回に分か れているが、9月に計8974㎡を計1億2734万9475円で、1月頃に12 05.94㎡を計1094万3905円で購入している)ことに照らせば、そのよ うに高額な価格で先行取得された土地を、何ら問題にせず、高額なまま買い受けた ことは、市長としての裁量権を逸脱・濫用する違法・不当な行為と解すべきである。 ⑤ 地方財政法第4条及び地方自治法第2条14項の規定に反する違法・不当 ア 地方財政法第4条は、地方公共団体の経費は、その目的を達成するための必要且 つ最小の限度をこえて、これを支出してはならないと規定し、地方自治法第2条1 4項は、地方公共団体は、その事務を処理するに当たっては、住民の福祉の増進に 努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならないと規 定している。 イ 上述してきたとおり粉河中学校の建て替えの目的は、校舎等の老朽及び耐震化に 対応する建て替え及び耐震補強工事であるところ、移転させずに既存校地において も建て替え及び耐震補強工事をすることができ、その目的が達成できる。 ウ 移転させなければ、約15億円の移転先用地の購入費及び、約9億円の盛り土造 成費さらには、建て替え不要の3棟の新築費(この点の費用については、移転建て 替えの場合は約28億円と言われているが改築では約17億円と見積もられてい た)については、その全額が不必要な経費である。 エ このため、上記移転先用地の購入費及び、盛り土造成費さらいは、校舎等の建て 替え及び耐震補強工事の必要のない建築費を支出することは、その目的を達成する ための必要且つ最少の限度をこえて、これを支出してはならない及び、最少の経費 で最大の効果を挙げるようにしなければならないとすることに反することが明らか であると解することができる。 オ 従って、市長が推し進める粉河中学校移転建て替えは、地方財政法第4条及び地 方自治法第2条14項の規定に反する違法・不当な行為である。 3 結論 よって、監査委員に対し、請求の趣旨記載の勧告を求め、地方自治法第242条1項 に基づき、別紙事実証明を添付の上、請求する次第である。 添 1 資料1 付 資 料 粉河中学校移転先用地購入に関する支出負担行為票等一式 2 資料2 同 購入に関する支出票等一式 3 資料3 基本構想概要説明書 4 資料4 紀の川市立学校耐震診断結果・補強状況一覧表(平成21年3月31日 現在) 5 資料5 ハザードマップ 6 資料6 土地使用目的の変更についてとする資料等 7 資料7 既存校舎の配置図 8 資料8 粉河駅南事業用地(粉河中学校建設用地)と題する資料 9 資料9 紀の川市財政計画抜粋 その他事実証明資料は追って提出する。 2010年9月9日 紀の川市監査委員 様