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土地利用の時代変遷と河道内解析による 樹林化の潜在的原因解明と

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土地利用の時代変遷と河道内解析による 樹林化の潜在的原因解明と
平成26年10月28日
第12回川の自然再生セミナー
第12回「川の自然再生セミナー」
2014年10月28日
月島社会教育会館
土地利用の時代変遷と河道内解析による
樹林化の潜在的原因解明と
予測モデルへの適用
埼玉大学大学院理工学研究科
浅枝 隆
内
容
1.河川樹林化の特性
2.河道内の土砂と植生の関係
3.樹林化の機構とモデリング
1
平成26年10月28日
第12回川の自然再生セミナー
レキ河原はなぜ必要?
コチドリ
Charadrius dubius
イカルチドリ
Charadrius placidus
レキ河原に産卵する
スッポン(Pelodiscus
sinensis)
コチドリ(Charadrius dubius)
Charadrius placidus
Long-billed plover
カワラハハコ
Anaphalis margaritacea
タコノアシ
Penthorum chinense
カワラヨモギ
Artemisia capillaris
カワラノギク
Aster kantoensis
2
平成26年10月28日
第12回川の自然再生セミナー
2012
1967 5
丹沢山
河川樹林化の特性と流域との関係
箒杉沢
3000
2000
1000
0
7
6
5
4
3
2
1
0
河川水中のTN濃度 (mg/L)
オホーツク沿岸
北海道
東北日本海沿岸
三陸/常盤
北関東
首都圏
東海
北陸
紀伊半島
関西大都市圏
山陰
瀬戸内海沿岸
南四国
北九州
南九州
4000
30
25
20
15
10
5
0
2000
1800
1600
1400
1200
1000
800
600
400
200
0
オホーツク沿岸
北海道
東北日本海沿岸
三陸/常盤
北関東
首都圏
東海
北陸
紀伊半島
関西大都市圏
山陰
瀬戸内海沿岸
南四国
北九州
南九州
堆積容量/流域面積(1000m3/km2)
5000
植物生長期の平均気温 (oC)
6000
植物生長期の総降水量 (mm)
•
オホーツク沿岸
北海道
東北日本海沿岸
三陸/常盤
北関東
首都圏
東海
北陸
紀伊半島
関西大都市圏
山陰
瀬戸内海沿岸
南四国
北九州
南九州
•
方 法
現在および過去の空中写真より、単断面で改修の影響の少なく、観測点に近い区間を、全河川
長の10-20%程度抽出(約170箇所)、河川区域において、陸域および水面の面積、植生で
被覆された全面積および樹木面積を判読する。
地形諸量、水理諸量、ダムおよび堰との関係、水質諸量との相関関係を解析し、気候区ごと、大
都市近傍にわけて整理する。
植生繁茂および樹林化の主要原因を抽出。
オホーツク沿岸
北海道
東北日本海沿岸
三陸/常盤
北関東
首都圏
東海
北陸
紀伊半島
関西大都市圏
山陰
瀬戸内海沿岸
南四国
北九州
南九州
•
3
平成26年10月28日
第12回川の自然再生セミナー
山東半島河川
北朝鮮河川
遼東半島河川
韓国 兄山江
韓国 洛東江
韓国 錦江
韓国 栄山江
南九州
北九州
南四国
山陰
草本類
瀬戸内海沿岸
関西大都市圏
北陸
紀伊半島
東海
首都圏
北関東
三陸/常盤
北海道
東北日本海沿岸
木本類
韓国 漢江
1
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
オホーツク沿岸
砂州・河岸の植物による被覆率
河道の植生被覆の地域的特性
• すべての区域において、木本植被率は全植被率の5-50%
• 大都市近郊河川では木本植被率が特に低い----伐採の影響
• 日本海側の方が木本植被率が高い
~ 一次遷移に起因していない可能性 (洪水時の樹木の定着)
• 韓国南部河川は植被率が高く、中国、北朝鮮は木本植被率が低い
1947
194
7
2010
歴史的変遷
2010
荒川
1
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
南九州
北九州
南四国
瀬戸内海沿岸
山陰
関西大都市圏
紀伊半島
北陸
東海
首都圏
北関東
三陸/常盤
東北日本海沿岸
北海道
1946年植被面積率 1975年植被面積率 2010年植被面積率
オホーツク沿岸
砂州・河岸の被覆率
多摩川
4
平成26年10月28日
第12回川の自然再生セミナー
流域変化の状況
河岸・砂州の植被率
1976
0.8
2010
0.6
0.4
0.2
0
南九州
北九州
南四国
山陰
瀬戸内海沿岸
関西大都市圏
北陸
紀伊半島
東海
首都圏
北海道
各地域の河川の森林の割合と植被率
1
2009
北関東
1976
東北日本海沿岸
三陸/常盤
1
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
オホーツク沿岸
流域の森林の割合
各地域の河川の森林面の割合の平均
0.00
0.50
森林面積の割合
1.00
• 森林の割合は土地利用の中では最も大きい
• 森林の割合は過去30年で大きな変化はない
• 森林の割合は大きいものの河岸や砂州の植被率に対する影響は少ない
各地域の各土地利用の割合
0.35
0.15
0.10
南四国
北九州
南九州
南四国
北九州
南九州
山陰
関西大都市圏
瀬戸内海沿岸
瀬戸内海…
山陰
関西大都…
北陸
東海
首都圏
北海道
オホーツク沿岸
紀伊半島
2009
紀伊半島
北陸
南九州
北九州
南四国
山陰
瀬戸内海沿岸
関西大都市圏
北陸
紀伊半島
東海
首都圏
北関東
北海道
東北日本海沿岸
三陸/常盤
オホーツク沿岸
0.00
東海
0.05
首都圏
0.10
1976
北海道
南九州
北九州
0.15
0.20
0.18
0.16
0.14
0.12
0.10
0.08
0.06
0.04
0.02
0.00
オホーツク…
2009
流域の荒地の割合
0.20
南四国
山陰
1976
瀬戸内海沿岸
関西大都市圏
紀伊半島
北陸
東海
首都圏
北関東
東北日本海沿岸
三陸/常盤
北海道
0.25
北関東
0.05
0.00
0.00
三陸/常盤
0.05
2009
0.20
北関東
0.10
1976
0.25
三陸/常盤
0.15
0.30
東北日本海…
2009
0.30
流域の畑地の割合
流域の水田の割合
1976
0.20
東北日本海…
0.25
オホーツク沿岸
市街地/住宅地の割合
0.30
• 市街地/住宅地の割合が大きく増加
• 荒地の割合は小さいものの大きく減少
5
平成26年10月28日
第12回川の自然再生セミナー
各河川の土地利用と植被率
1
1976
0.8
2010
0.6
河岸・砂州の植被率
河岸・砂州の植被率
1
0.4
0.2
0
0.00
0.10
0.20
0.30
0.40
0.4
0.2
0
0.50
0.00
1
0.05
0.10
流域の荒地面積の割合
1
0.8
河岸・砂州の植被率
1976
2010
0.6
0.4
0.2
0.8
1976
0.6
2010
0.4
0.2
0.00
0.10
0.20
0.30
0.40
0.50
0
0.00
0.05
水田面積の割合
0.10
0.15
0.20
0.25
0.30
0.35
畑地面積の割合
• 流域の荒地の割合との負の相関が高い
• 他の土地利用との相関は低い
1000000
ダム堆積砂量(1000m3)
河岸・砂州の植被率
2010
0.6
流域の市街地/住宅地面積の割合
0
1976
0.8
100000
10000
1000
100
10
1976
1
0.00
0.05
0.10
流域の荒地の割合
• 流域に荒地の割合は土砂流入量と正の相関がある
6
平成26年10月28日
第12回川の自然再生セミナー
洪水流量と植被率の関係
0.8
オホーツク沿岸
0.7
東北日本海沿岸
三陸/常磐
0.6
北関東
0.5
東海
0.4
紀伊半島
0.3
山陰
0.2
南四国
0.1
南九州
0
北海道
首都圏
河岸・砂州の木本被覆率
河岸・砂州の植被率
0.9
北陸
阪神大都市圏
瀬戸内海沿岸
北九州
1
10
100
1000
年最大流量/平水流量
0.5
オホーツク
北海道
東北日本海沿岸
三陸・常盤
北関東
首都圏
東海
北陸
紀伊半島
関西大都市圏
0.4
0.3
0.2
山陰
瀬戸内海沿岸
0.1
0
南四国
北九州
南九州
1
10
100
1000
年平均最大流量/平水流量
オホーツク沿岸
0.9
北海道
東北日本海沿岸
三陸/常盤
0.7
北関東
0.6
東海
0.5
紀伊半島
首都圏
北陸
0.4
関西大都市圏
0.3
瀬戸内海沿岸
0.2
北九州
• ダムによる洪水調節はダム下流部を
除き植生増加には関係ない
• 河岸の樹木は柔軟で洪水による物理
的な力に対する耐性は高い
南四国
南九州
0.1
0
洪水流量と植被率との相関は低い
山陰
1
1
10
年最大流量/堤防間幅
(m3/sm)
100
河岸・砂州の植被率
河岸・砂州の植被率
0.8
0.8
0.6
オホーツク
三陸・常盤
東海
関西大都市圏
南四国
東北日本海沿岸
首都圏
紀伊半島
瀬戸内海沿岸
南九州
北海道
北関東
北陸
山陰
北九州
0.4
0.2
0
0.001
0.010
0.100
gHi (m2/s2)
1.000
7
平成26年10月28日
第12回川の自然再生セミナー
0.9
オホーツク沿岸
北海道
東北日本海沿岸
三陸/常磐
北関東
首都圏
東海
北陸
紀伊半島
関西大都市圏
山陰
瀬戸内海沿岸
南四国
北九州
南九州
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
0.01
河川水中の栄養塩濃度と植被率との間には高
い相関はない
• 洪水時の冠水水中の栄養塩濃度は水位の低
下と共に大部分流失する
• 洪水流中の栄養塩濃度は土壌中の蓄積分と
比較すると極めて小さい
• 水面から陸域に入るにつれ、地下水中の濃
度は減少、ただし、数mの間のみ
0.1
1
河川水中のTN (mg/l)
• ダム下流10‐20kmの間は
低い植被率がみられない
10
河岸・砂州の植被率
河岸・砂州の植被率
0.8
1
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
オホーツク
三陸・常盤
東海
関西大都市圏
南四国
1
北海道
北関東
北陸
山陰
北九州
東北日本海沿岸
首都圏
紀伊半島
瀬戸内海沿岸
南九州
10
100
上流のダムからの距離 (km)
1000
河道内の土砂と植生の関係
8
平成26年10月28日
第12回川の自然再生セミナー
河道内の樹林化、草原化の進行
(相模川の例)
1947 10
1977 12
現在
終戦直後は河道内は大量の土砂で満たされているが、その後は徐々に減少
それに伴って、河岸の植生は増加
1936 11
1948 1
磯部頭首工近郊
1967 5
1975 1
1964 7
河道は大量の礫で満たされ、流路も不明瞭
1987 6
1992 12
現在
右岸のみに大量の土砂が堆積
一方で、樹林化も進行
9
平成26年10月28日
第12回川の自然再生セミナー
現状
ニセアカシア群落
オギ群落
河口から50kmの区間の河岸の植生被覆割合
河岸・砂州の植生被覆の割合の変遷
1
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
1946
1975
2013
樹林
草本、潅木
砂、レキ
• 草本・潅木被覆の割合が増加、砂、レキの割合が減少
• 樹木で被覆された領域が減少したわけではない
樹木の侵入形態と草本遷移形態は異なるので注意が必要
10
第12回川の自然再生セミナー
山東半島河川
北朝鮮河川
遼東半島河川
韓国 兄山江
韓国 洛東江
韓国 錦江
韓国 栄山江
南九州
韓国 漢江
北九州
南四国
山陰
草本類
瀬戸内海沿岸
関西大都市圏
北陸
紀伊半島
東海
首都圏
北関東
三陸/常盤
北海道
木本類
東北日本海…
1
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
オホーツク…
砂州・河岸の植物による被覆率
平成26年10月28日
赤川
六角川
多摩川 狛江
• 樹林化箇所を除けば多くの河川は草本群落化
高水敷土地被覆割合
高水敷上の土地被覆の割合
0.9
常呂川下流
0.8
利根川下流
0.7
荒川下流
0.6
信濃川下流
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
木本植物
草本植物
農業地
荒地
グラウンド
11
平成26年10月28日
第12回川の自然再生セミナー
土砂堆積による草本植生の再生阻害
荒川
2007年9月洪水3年後
洪水時に表層が洗掘
洪水後の植生の生長
• 洗掘された場所では
比較的速い
• 新しく土砂の堆積し
た場所では遅れる
新しく土砂の堆積した場所
堆積が生ずる場所
1993
黒部川の例
洪水前
洗掘が生ずる場所
1996
堆積
洗掘
洪水直後
1999
堆積場所
洗掘場所
3年後
12
平成26年10月28日
第12回川の自然再生セミナー
堆積前
1996
洪水による堆積
植生の侵入
1999
2003
樹木の侵入形態と土砂の影響
アキグミ群落拡大の例
1年間に局所的で広大な領域に群落が形成
2008
2009
13
平成26年10月28日
第12回川の自然再生セミナー
黒部川 通常アキグミの種子は鳥によって散布
同時期に侵入したアキグミ
• 明らかに、種子は洪水によって散布
斐伊川 オニグルミ
太田川 ヤナギ
荒川 ニセアカシア
定着時期(樹齢)がほぼ同じ群落が広がる
利根川 カワヤナギ
樹林化で問題になる樹種
カワヤナギ
(種子は風で運ばれる)
シンジュ
14
平成26年10月28日
第12回川の自然再生セミナー
オニグルミ
(種子は動物で運ばれる)
アキグミ
ニセアカシア
(種子は水で運ばれる)
ネムノキ
他の媒介で種子散布が行われる樹種でも洪水による影響が大きい
15
平成26年10月28日
第12回川の自然再生セミナー
河岸の樹木:大半の種子は洪水によって散布
hydrochory
種子散布の時期に適当な水位の洪水があるこ
とにより分布域を広げる
土砂の移動があると種子の定着が妨げられる
• 土砂の堆積による発芽率の減少
• 土砂の洗掘による漂着種子の流失
流路の固定
1947-48
1985
網状流路-複列砂州
1964
1973
交互砂州流路に近づく
流路の変動
2002 交互砂州、流路固定
• 流量、川幅、勾配には変化なし
• 河道内の土砂量の不足により、
土砂量の多い河川にみられる、
流路の変動が激しい網状流路
から、安定な交互砂州流路に変化
16
平成26年10月28日
第12回川の自然再生セミナー
土砂量減少の要因
丹沢山塊の緑化の進行
1946 2 相模原
1962 7
1948 4
2008 9
17
平成26年10月28日
第12回川の自然再生セミナー
富士山
• 山岳河川の下流にはダムが建設され、土砂の供給は停止
• 土砂供給可能な流域はほとんどが市街地であり、
土砂流出量は限られる
深城ダム
130,000m3
相模ダム
19,000,000m3
沼本ダム
300,000m3
上流からの土砂流下
35,000,000m3 道志ダム
1,000,000m3
城山ダム
6,000,000m3
頭首工210,000m3
1964年以前の砂利採取量
28,000,000m3
16,000,000m3 宮ケ瀬ダム 3
3,000,000m
3
9,000,000m
1944 年‐2010年の土砂収支
過去の砂利採取、新しい土砂流入の停止
18
平成26年10月28日
第12回川の自然再生セミナー
深城ダム
50,000m3
0.2mm以上の成分の土砂の収支
相模ダム
7,000,000m3
沼本ダム
100,000m3
城山ダム
2,000,000m3
上流からの土砂流下
頭首工180,000m3
3
道志ダム
11,000,000m
1944
年 1964年以前の砂利採取量
3
400,000m
‐2010年の 24,000,000m3
500,000m3 宮ケ瀬ダム
1,000,000m3
3
3,000,000m
過去の砂利採取、新しい土砂流入の停止
0.2mm以上の成分の土砂の減少は更に深刻
近年の河川の樹林化には、数十年にわたる河道内の
土砂量の減少が大きく影響している
19
平成26年10月28日
第12回川の自然再生セミナー
Structure of the model
flood records
herbaceous plants樹林化の機構に即したモデリング
N fixing
module HERB
loss of herbs
shading
seeds
recruitment
trees
mortality &
decomposition
loss of
trees
remaining trees
module TREE
defoliation
Soil nitrogen
module SOIL
atmospheric fallout
load at flooding
エコロジカルモデリング
多様な因子、複雑な過程の組み合わせ、それぞれの過程の不確かさ
多くの未知数
概略の傾向の記述にとどまる
定量的数値が必要になる計画に利用するには不向き
Why modeling ?
モデリングの役割
全体の現象
Wind
wind
swinging tree ?
swinging tree
Scheffer PC
wind
新しい発見
全体系に近づける
?
組み合わせ
モデルは仕組みを反映している必要がある
20
平成26年10月28日
第12回川の自然再生セミナー
黒部大橋下流
砂州上の植生群落の形成過程
一次遷移
砂州土壌は本来貧栄養
• 洪水時:植生の流
失と洗浄された貧
栄養な新しい土砂
の堆積
• その後の草本から
木本への遷移
植生の流失と新しい土壌の堆積
洪水による樹木種子の散布と生長
2008
2009
• 洪水による樹木種子の散
布、定着とその後の生長、
群落形成
樹林化における主要要素の相互関係
洪水時
flooding
河床変形および水文現象 撹乱
hydrology
土壌栄養塩供給
nutrients
種子散布
recuritment
流失 loss
多年生草本
Perennial herbs
樹木
trees
洪水時
flooding
一次遷移の過程
primary succession
流失樹木 loss
残存樹木
Remaining trees
砂州土壌栄養塩
Soil nutrients
21
平成26年10月28日
第12回川の自然再生セミナー
現象のモデル化
洪水時
洪水時
河床変形および水文現象
Hydrology morphology
多年生草本
Herb biomass
草本バイオマスモデル
Herb biomass
枯死分解モデル
樹木 trees
砂州土壌栄養塩
Soil nutrients
樹木活着モデル decomposition 樹木流失モデル
seedling
loss
樹木生長モデル
樹木葉枯死分解モデル
Mortality decomposition
大気負荷
fallout
洪水時負荷
flooding
木本類侵入-生長予測モデル
22
平成26年10月28日
第12回川の自然再生セミナー
樹木の侵入モデル
カワヤナギ、アキグミの分布(黒部川8km砂州)
標高別樹種分布(荒川熊谷砂州)
黒部川の例
荒川の例
• カワヤナギは標高の低い新しく砂の堆積した
場所に侵入
• アキグミは標高の高いレキ河原に侵入
• ヤナギ類は最も低地に侵入
• ニセアカシアはより高い場所に侵入
Asaeda et al. (2014) Ecohydrol. Online
ヤナギ林の侵入モデル
それぞれの種の種子散布時期
個体密度 (ind/m2)
1
Apr
May
Jun
水面からの比高
0‐2m
>2m
0.1
自己間引き
0.01
0
発芽可能期間 ~ 2週間
Germinate within 2 weeks
10
20
樹齢 (yrs)
30
洪水後の幼木密度 (ind/100m2)
洪水後の萌芽密度
30
Salix
25
y = 0.3167x
R² = 0.05
洪水とヤナギの侵入との関係
2007 flood
20
15
10
5
• 散布時期の湛水有無
• 栄養繁殖は現存する樹林密度に
比例
• 樹木の成長とともに自己間引き
2002 flood
0
1
3
5
7
9
11 13 15 17 19 21 23 25
洪水時の成熟樹木個体密度 (ind/100m2)
Asaeda et al. (2011) Riv. Res. Appl. 27, 976
23
平成26年10月28日
第12回川の自然再生セミナー
ヤナギ類とニセアカシアの侵入、生長特性まとめ
Salix spp.
Robinia pseudoacacia
必要となる洪水特性
4月‐5月初めの洪水
種子散布から 3‐4 以内二に生ずる洪水
8月‐9月の洪水
侵入する水面からの比高
0‐3m
2‐5m(洪水ピークから1m以内)
主に微細土壌
草本大群落外
初期密度
Salix subfragilis: シルト
Salix gilgiana: 新しく堆積した砂
草本大群落外
30 seedlings/m2
0.3 seedlings/m2
生長過程での自己間引き
AGE‐2
0.3(84/(84+AGE4))
侵入に必要な土壌特性
ニセアカシアの侵入モデル
10
夏季‐秋季の最大洪水水位の水際
近傍に定着
樹木個体密度 (/m2)
種子が洪水により流下することで発芽
Robinia density 1
0.1
simulation
HoshinoTamagawa
MakitaAkita
MakitaKosaka
Arakawa 2‐3m
Arakawa 3m‐
0.01
35
洪水後の幼木密度
(ind./100m2)
30
25
20
Robinia pseudoacacia
y = 0.1901x
R² = 0.4079
0.001
0
20
40
樹齢 (yrs)
60
15
10
5
0
1 2 3 4 5 6 7 8 9 11 12 13 18 26
洪水時の成熟樹木個体密度
(ind./100m2) 種子繁殖
•
洪水ピーク時の湛水の有無
• 上流の種子生産量に比例
栄養繁殖
• 樹木密度に比例
24
平成26年10月28日
第12回川の自然再生セミナー
樹木個体生長モデル
バイオマス、樹齢、樹冠幅等を樹齢(AGE)の関数で表す
Asaeda et al.(2012) Riv. Res. Appl. 26, 1153
草本類バイオマスの予測モデル
25
平成26年10月28日
第12回川の自然再生セミナー
土壌栄養塩の影響
2007 S
2007 L
2007 R unflooded
2007 R flooded
2008 S
2008 L
2008 R unflooded
2008 R flooded
0.1
1
草本類バイオマス (gDW/m2)
草本類バイオマス (gDW/m2)
黒部川での測定例
5000
4500
4000
3500
3000
2500
2000
1500
1000
500
0
10
100
1000
10000
5000
4500
4000
3500
3000
2500
2000
1500
1000
500
0
2007 S
2007 L
2007 R
2008 S
2008 L
2008 R
0
0.2
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
0.4
0.6
0.8
1mm 以下の表層土壌中のTP
(mg/g)
土壌中
植物体内
Imperata
Phragmites
A.montana
A.japonica
Chameale
Anaphalis
Polytrichum
Elaeagnus stem
Elaeagnus leaf
Salix stem
Salix leaf
litters
sediment S
sediment L
sediment R…
sediment R flooded
TN/TP
根圏の到達する深さ中の窒素量(g/m2)
TN/TP ~10 植物
~1 土壌
無機態窒素は水位低下時に流失
リンは土壌に吸着
• 植物の生長には土壌窒素が律速
• 冠水時の水中からの栄養補給はほとんど
ない
• 河岸・砂州は貧栄養
Asaeda and Rashid (2011) J Hydrol.
草本類のバイオマス量の変化予測モデル
草本類バイオマス (gDW/m2)
1600
Biomass =1500TN2.5/(0.04 2.5+TN2.5 )
Ara River 2010
Ara River 2010 Coarse Low SVF
Ara River Phragmites japonia
Ara River P.japonica Coarse
Tama River 2010 coarse
Kurobe River Bridge
Kurobe River Bridge Coarse
Tone River
1400
1200
1000
800
600
Biomass =500TN2.5/(0.042.5+TN2.5 )
400
200
0
0.01
0.1
土壌 TN (w/w %)
1
土壌粒径によって律速されたバイオマス
中抜きシンボル:他の因子によって律速
土壌窒素濃度および粒径によって律速された草本類バイオマス量
大型イネ科植物群落
他の植物群落
大型イネ科植物群落
他の植物群落
土壌中TNによって律速された
バイオマス量
(gDW/m2)
土壌粒径D50によって律速され
たバイオマス量
(gDW/m2)
26
平成26年10月28日
第12回川の自然再生セミナー
土壌栄養塩収支モデル
窒素大気負荷
樹木による窒素固定
硝化・脱窒作用
樹木の陰影効果
幹、枝の窒素貯蔵
草本類による
冠水による
窒素固定
窒素の供給
草本類の生長
土壌粒径の影響
砂州の窒素収支の影響因子
落葉、枯死、分解による土壌への窒素還元
植物を介した土壌への窒素還元のしくみ
一年生草本
多年生草本
樹木
葉への分配
固定、吸収された窒素量
葉、茎への分配量
枯死、分解、
窒素の回帰 落葉、分解、
窒素の回帰
一部は幹、枝に貯蔵
固定、吸収された窒素量
枯死、分解される窒素量
固定、吸収された窒素量
27
平成26年10月28日
第12回川の自然再生セミナー
植物による吸収・枯死を介した回帰量
草本類窒素含有量
roots
stems
植物体中の窒素濃度 (w/w %)
組織別窒素濃度 (%)
樹木窒素含有量
4
3.5
3
2.5
2
1.5
1
0.5
0
leaves
3
2.5
2
1.5
1
0.5
0
Salix
Robinia
Albizia
植物枯死による周囲への回帰量N
N = B0 Np(1-exp (-k (t-t0)))
回帰窒素量=窒素濃度x分解バイオマス量
B0 : 枯死時点でのバイオマス
Np : 窒素含有濃度
k : 分解係数
t0 : 分解開始時
適用の例
28
平成26年10月28日
第12回川の自然再生セミナー
樹木の流失モデル
fraction of remaining trees • 荒川での経験式の利用
erosion depth (m)
3.5 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 1.0 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0.0 Salicacae
Robinia pseudoacacia
Albizia julibrissin
0
0.0 0.3 0.6 0.9 1.2 1.5 1.8 2.1 2.4 2.7 3.0 3.3 0.5
1
1.5
erosion depth of the ground surface (m)
inundation depth (m)
湛水深 vs. 洗掘深
洗掘深 vs. 異なる樹種の流失率
• 堆積、洗掘の影響は河床変動モデルに依存
Asaeda et al.(2012) Riv. Res. Appl. 26, 1153
Water level (m)
荒川砂州への適用
植生なし
6
4
2
0
Asaeda et al. Rive. Res. Appl. (2010)
1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 Year
36.1405
36.14
Salix Robinia
36.1395
36.139
36.1385
36.138
36.1375
139.332 139.334 139.336 139.338 139.34 139.342 139.344 139.346 139.348
緯度
観測: 2007年9月7日洪水前の樹木分布
緯度
シミュレーション :
洪水ごとに種子の侵入-生長-流失
観測:2007年9月7日洪水後の樹木分布
36.1405
36.14
Salix Robinia
36.1395
36.139
36.1385
36.138
36.1375
139.337 139.339 139.341 139.343 139.345 139.347
経度
経度
シミュレーション
Salix
Robinia
シミュレーション
S…
10年間計算後: 2007年の洪水前
2007年の洪水後
Asaeda et al. (2014) Riv. Res. Appl. Online
29
平成26年10月28日
第12回川の自然再生セミナー
草本類バイオマス量、窒素濃度等の予測
2010年荒川観測の予測値と観測値の比較
ニセアカシアにおける窒素の分配
ニセアカシアと草本類の窒素回帰量の変化
吸収した窒素の
組織別分配量
(g/m2/yr)
40
30
20
leaf
roots
stem
約2年で土壌中に回帰
10
0
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15
樹齢 (yr)
荒川砂州の条件を使用
樹齢と共に葉に分配される窒素量の割合が増大する
樹木の生長とともに陰が多くなり、
徐々に樹木を介した窒素回帰量が増加する
• 洪水記録と河道内地形の利用だけでも、樹木種の侵入及び流失
及び分布、その後の生長過程における密度変化、樹木個体・草本
バイオマス等の予測は可能
ー 極めて短時間
樹木の種別の分布予測が可能になる
生長段階に応じた樹木管理が可能になる
• 土砂の堆積、洗掘を含んだ植生侵入、群落の発達に対する定量
化には平面2次元河床変動モデルの導入が必要
- 長い計算時間を要する
土砂管理による樹木侵入抑制が可能になる
30
I coordinates
5.00
Jan‐91
Jul‐91
Jan‐92
Jul‐92
Jan‐93
Jul‐93
Jan‐94
Jul‐94
Jan‐95
Jul‐95
Jan‐96
Jul‐96
Jan‐97
Jul‐97
Jan‐98
Jul‐98
Jan‐99
Jul‐99
Jan‐00
Jul‐00
Jan‐01
Jul‐01
Jan‐02
Jul‐02
Jan‐03
Jul‐03
Jan‐04
Jul‐04
Jan‐05
Jul‐05
Jan‐06
Jul‐06
Jan‐07
Jul‐07
Jan‐08
Jul‐08
Jan‐09
Jul‐09
Jan‐10
Jul‐10
Jan‐11
Jul‐11
Jan‐12
Jul‐12
Jan‐13
Floodlevel (m)
平成26年10月28日
第12回川の自然再生セミナー
相模川寒川堰下流への適用
6.00
5.55m Sep Assume Initial Tree Density=0
5.08m Sep 2007
5.07m Oct 2004
3.00
0
0
12
J coordinates
24
36
5.20m Sep 2011
4.00
No recruitment of Robinia
2.00
1.00
0.00
Time
国土交通省、水文水質データベース提供
2012 (22 年間 のシミュレーションの結果)
160
140
120
100
80
60
40
20
48
31
平成26年10月28日
第12回川の自然再生セミナー
相模川中流部(磯部頭首工近郊)のニセアカシアの
シミュレーショ ン
水位変動 1991‐2013
5
2007 9
水位(m)
4
2011 5
3
2
1
0
年
初期条件:樹木ゼロ
砂州が水没:水没水位によって樹木流出・定着を繰り返す
X ニセアカシア個体
2013年のニセアカシアシミュレーション結果
比高差が大きくなった砂州が洪水で冠水することに
より樹木が侵入する
ニセアカシア個体のシミュレーション結果
相模川 磯部頭首工
1992
1995
2000
2010
2013
ニセアカシア個体数は徐々に増加
32
平成26年10月28日
第12回川の自然再生セミナー
まとめ
• 河道内の植生の増加には、流域の荒地の減少が最も相関が高い。
• 洪水流量の減少や河川水の富栄養化は大きくは影響していない。
• 洪水時に土砂が堆積した場所では、植生の回復が著しく遅れる。植生増加
の主原因は河道内の土砂の不足と考えられる。
• 河道内の砂利採取、流域山岳部の緑化及びダムや堰による新たな供給の
停止などが影響している。
• 河岸、砂州の草本群落の発達は一次遷移による窒素濃度の上昇、樹木群
落の多くは洪水時の種子、木片の定着による。
• 洪水特性に応じた樹木の定着・生長、土壌栄養塩の蓄積による一次遷移に
基いた樹林化の予測が可能になる。様々な計画に有効な手段になり得る。
草本類の分布特性、樹木種の増加、上流の種子供給源の影響等
予測について開発中
ありがとうございました
33
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