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日産自動車 座間記念車車庫見学

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日産自動車 座間記念車車庫見学
日産自動車
座間記念車車庫見学
奈良橋 大輔 (日本大学理工学部)
小澤 雄哉
(日本大学大学院理工学研究科)
1. はじめに
のグリスアップやエンジンの分解整備など大掛かりなメンテ
現在,自動車は私たちの生活には欠かせない存在です.そ
ナンスが必要でした.そのため当時は金銭的な問題だけでは
の自動車の進歩は目覚しく,次々と新しい製品や技術が世の
なく,一般市民が自動車を保有することは難しいものでした.
中に送り出されています.そこで今回は,私たちが生まれる
1963 年に登場した,図 3 の S50 型スカイラインは,サスペン
以前の自動車はどのようなものだったのかを探るべく,日産
ションのジョイント部分をシールした無給油シャシの採用や,
自動車の歴代の名車が保管されている,日産自動車座間記念
2 年間または 4 万キロ保証のメンテナンスフリー化を実現し
車車庫を 2011 年 1 月 12 日に特別に見学させて頂きました.
た分解整備の不要なエンジンを搭載していました.これは当
時としては衝撃的な出来事で,自動車が身近な存在になりま
2. 日産自動車 座間記念車車庫
した.また,このころ日本で初めて本格的な自動車レースが
日産自動車座間記念車車庫は座間事業所の敷地内にあり,
開催されるようになりました.そのレースでこの S50 型スカ
日産自動車の名車や歴代のレーシングカーなど 400 台以上の
イラインのレーシングモデル「スカイライン GT」S54 型はポ
車両が保管されています.古いものでは 1935 年式の「ダット
ルシェ 904 を一時は押さえ首位を走ると言った快挙を成し遂
サン 14 型」,最も新しいもののひとつが 2007 年式「NISSAN
げ,今に続くスカイライン神話の序章を作ったのです.
GT-R」となっております.残念ながら,一般公開はされてお
りませんが,イベントなどでここに保管されている車両が展
示・走行することがあるとのことでした.
3. 高額所得者向けの時代
図 2 のダットサン 14 型は 1935 年式です.このころの自動
車はまだ一般庶民には手の届かない存在であり,購買層は主
に医者や今でいう芸能人などの高額所得者が中心でした.
4. メンテナンスフリー化
現在の自動車は大掛かりなメンテナンスを行わずに,長期
図 2 ダットサン 14 型(写真 ロードスター)
間壊れることはありません.しかし 1960 年代に入る前の自動
車は,サスペンションやドライブシャフトのジョイント部分
図 3 S50 型 スカイライン(写真 S54B 型)
図 1 座間記念車車庫入り口
1
5. 高性能・低価格
場しました.現在の乗用車では、大半がエンジン横置レイア
技術的に大きな進歩があったのが図 4 に示す 1967 年に登場
ウトによる FF 方式を採用していますが,当時世界的に見ても
した 510 型ブルーバードです.このモデルはエンジン・シャ
比較的早い時期に横置 FF 方式を採用したモデルでした.FF
シ・デザイン等に当時の最新技術が詰め込まれています.ま
方式はメカニズム部分がフロントに集約され,居住スペース
ずエンジンでは,OHV (Over Head Valve)から OHC (Over Head
や荷室が広く取れるメリットがありますが,駆動系が複雑に
Camshaft)となり,シャシでは後輪懸架が縦置きリーフスプリ
なり,荷重もフロントに偏るため、当時はハンドリングに悪
ング式からセミトレーディングアーム式の独立懸架となるな
影響を与えるといわれていました.しかしチェリーは FF 方式
ど走行性能を各段に向上させています.これらのメカニズム
にもかかわらず,ハンドリングも良くレースでは同クラスの
は当時のメルセデス・ベンツのコンパクトクラスと同等のも
FR 方式 (フロントエンジン・リヤドライブ)モデルのサニーと
のでしたが,北米市場において,当時の為替レート(1 ドル
互角の走りをみせました.
360 円)の恩恵もあり、価格はなんと約 1/10 でした.デザイ
ン面において 510 型ブルーバードは,車内の換気のために必
7. 電子制御
需品であった「三角窓」を廃止し,当時では斬新なスタイリ
1980 年に入ると電子制御の技術が進歩をとげ,現在の自動
ングでした.また,「ブルーバードには手が届かない」とい
車に近づいてきます.人間の操作と自動車の間に多くのコン
うお客さまのニーズに応えるため,
1966 年には図 5 に示す B10
ピュータ制御が採用され,より高い基本性能・安全性・快適
型サニーが発売されました.こちらは,ブルーバードよりは
性・環境性能など、全方位的な性能向上が実現されていきま
オーソドックスな成り立ちでしたが,軽自動車が 30 万円代の
した.
時代に排気量 1000cc の乗用車が 41 万円からという価格設定
で大衆車としての地位を確立しました.
8. まとめ
今回,記念庫を見学させて頂きながらお話をお伺いするこ
6. フロントエンジン・フロントドライブ
とで,各モデルの「どこがすばらしいか」「何が新しかった
1970 年に入ると図 6 に示すチェリーというフロントエンジ
のか」などが詳しく知ることができ,自動車の進歩を認識す
ン・フロントドライブ (以下 FF)の駆動方式を持つモデルが登
ることが出来ました.そしてその進歩が「何がすごいのか」
など色々と勉強になりました.また見学の最中に KPGC10 型
スカイライン (通称ハコスカ GT-R)のエンジンをかけるとこ
ろを見せて頂きましたが,冬の寒い日であったためエンジン
をかけるに一苦労といったところでした.どんな状況でもキ
ーをひねればエンジンが当たり前のようにかかることのすば
らしさを認識することが出来ました.
謝 辞
今回の見学にあたり,日産自動車株式会社の中山竜二様をは
じめとする皆様方,記念車車庫を管理されている株式会社サ
ファリ・モータースの内堀榮寿様,藤本誠様をはじめとする
皆様には大変お世話になりました.お忙しいなか,快く取材
図 4 510 型 ブルーバード (写真 クーペ)
を引き受けて頂き誠にありがとうございました.
図 6 E10 型 チェリー
図 5 B10 型 サニー
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