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トレードと事業投資のシナジーで 「総合商社 No.1」を目指す

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トレードと事業投資のシナジーで 「総合商社 No.1」を目指す
特
丸紅プロジェクト紹介
集
トレードと事業投資のシナジーで
「総合商社 No.1」を目指す
第6回
[ ケミカル・ビジネス ]
世界トップクラスのトレード力
丸紅の化学品ビジネスは 1950 年代、繊維用化学品を
供給元から調達し、需要家へと販売する「トレード」に始
まりました。現在では石油化学品、
塩ビアルカリ、
合成樹脂、
無機・農業化学品、機能化学品、電子材料の全分野をポー
トフォリオとして保持し、川上から川下までの幅広いビジネ
スを世界的に展開しています。
中でも石油化学品分野では、ナフサや天然ガスを原料
として製造されるオレフィン(エチレン、プロピレン、ブタ
ジエン等)のトレードを 1970 年代から続けており、今で
は全 世界で約 30% のシェアを誇るトップクラスのトレー
ダーとして君臨しています。
オレフィンは常温では気体であるため、輸送の際はマイ
ナス 104℃まで冷却・液化し、特 殊専用船で輸送するこ
とになりますが、丸紅は常時 15 ~ 17 隻の特殊専用船を
化学品部門長
チャーターし、それらを世界各地で網目のように運行させ、
岩下 直 也
効率的な調達と供給を実現しています。供給元と需要家の
ニーズに柔軟に対応できるこの体制と、長年に亘るノウハ
ウの蓄積が、丸紅の強固なオレフィントレード力に結びつ
いてきました。
しかしその一方で、丸紅はトップシェアの地位に安泰す
ることなく、加速を続けています。
《 丸紅 ケミカルビジネスの沿革 - 主要案件 》
1968 ダンピア・ソルト社(豪)設立
1972
大韓油化工業※(韓)
へプロピレンを納入 ※当時の丸紅の事業会社
⇒丸紅のオレフィントレードのファーストステップ
1982 TPIC社
(泰)
へエチレンを納入 ⇒ エチレントレードの始まり
1987 ヘレナケミカル社(米)
を買収
トレードと事業投資 ー収益拡大の両輪ー
1990 年代、当時から丸紅はオレフィントレードで世界
トップクラスのシェアを誇っていましたが、その中でブタジ
エンは他のオレフィン素材に比べ、取扱いが多くありませ
んでした。そこで、取扱量を増やすにはまず売り先の確保
1996
申華化学工業有限公司(中)
に出資
アグロビスタ社(英)
を買収
2010
インディアンオイル社(印)、TSRC社(台湾)
と、
インドで合弁会社
を設立。2013年にインド初の合成ゴム工場を稼働予定
2011
ブラスケム社
(伯)
とブタジエン引き取り契約を締結
天津渤海化工集団公司
(中)
と戦略的パートナーシップ契約締結
が必要であると考え、1996 年、ブタジエンを原料とする
2011 WINTER
13
丸紅プロジェクト紹介
合成ゴムを製造・販売する申華化学工業有限公司(中国)
に出資しました。
供給先である合成ゴム製 造事業に参画することによ
り、丸紅のブタジエン取引を大きく拡大させたのです。
2010 年にはさらに事業投資を加速させ、インドにお
いて、国営石油会社であるインディアンオイル社、台湾最
大の合成ゴムメーカー TSRC 社と共同で、合成ゴムの製
丸紅ケミカルビジネスの
主 要 拠 点
丸紅化学品部門は6つの営業ユニ
ットと、30社余りの連結子会社・関
連会社を中心に、丸紅のグローバ
ルネットワークを駆使して世界各
地でビジネスを展開しています。
用塩需要が大幅に伸びています。ダンピア・ソルト社で
丸紅
農業資材ディストリビュ ーション事業で商社トップ
No.1〈 出 資 〉英・オランダ
分野
アグロビスタ社(農薬)
▶丸紅グループ出資比率:100%
〈 出 資 〉マレーシア
ACM 社(農薬)
▶丸紅グループ出資比率:29.55%
造・販売を行う合弁会社設立に合意。2013 年にインド
初の合成ゴム工場が稼働する予定です。
インドの自動車販売数は 2008 年で約 200 万台、そ
の後も年率 10%以上のペースで伸びており、今後数年で
米国、中国、日本に次ぐ世界第 4 位の市場となると言わ
は、急速な勢いで高まりつつある中国向け需要を今後
どう取り込んでいくのかが喫緊の課題です。この分野に
〈 出 資 〉アメリカ
ヘレナケミカル社(農薬・肥料・種子)
おいても事業投資を新たなトレードに繋げるべく、商機
▶丸紅グループ出資比率:100%
を狙っているところです。
全米48州に約400カ所の販売拠点を有する、
全米第2位のディストリビューター。
農薬、肥料、種子、他関連物資のことを指します
豆 知 識 農業資材とは、
いてきました。
上記以外の主な
化学品部門連結子会社・関連会社
この分野にも、さらなる商機はいたるところにあります。
オレフィントレード・
コアオフィス
新興国の食文化が豊かになることで穀物需要が伸び、そ
れに伴って肥料や農薬の需要も飛躍的な伸びを見せてい
需要をさらに取り込むことができると期待されています。
Marubeni Specialty Chemicals Inc.
(特殊化学品・合成樹脂)
デュッセルドルフ
2011 年 5 月には南米最大の石油化学会社であるブラス
・丸紅プラックス
(プラスチック)
・丸紅ケミックス
(有機化学品、
機能性化学品、医薬中間体) 他7社
KAFCO
(アンモニア・尿素)
ケム社(ブラジル)と総額 450 億円におよぶブタジエン
引き取り契約を締結し、ブタジエンの供給元確保を実現
このように丸 紅は、トレードから事 業 投 資へ、事 業
深化させています。
無機化学品分野においては、1968 年、コマルコ社(現
ナーとして、ダンピア・ソルト社(豪)を設立しました。
高度経済成長期の急激な工業塩需要増を見越し、アジ
アに近い地における塩の生産と安定的な日本への供給
を目指していたのです。
現在、ダンピア・ソルト社は、西オーストラリアにある
3 つの塩田で年産 1,000 万トンにのぼる塩を生産する世
界最大の天日製塩製造企業となっています。丸紅は強固
なトレード力を活かし、アジアにおいて 50% 弱のシェア
を占めるまでにこの事業を成長させてきました。
さらに近年、急速な経済 発展により、中国での工業
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「総合商社 No.1」を目指す
これらの例からもおわかり頂けるように、当社化学品
中国向輸出
日本、
韓国、
台湾、
シンガポール、 シンガポール
タイ、
中東などの世界各地の
供給元から中国、
インドネシア等の
さらなる需要
増加を取り込む
需要家へ販売
投 資からさらなるトレード創出へと、ビジネスを拡大・
オレフィントレード
ブタジエンを専用船で
アメリカ、中国、
東南アジア等へ運搬
インド国内での工業需要の
伸びにも商機を狙う
丸紅
No.1
分野
豆知識
丸紅
No.1
分野
●世界トレードシェア約30%
●常時15∼17隻の特殊専用船をチャーター
(合成ゴム) ▶丸紅グループ出資比率:20%
申華化学工業有限公司
(合成ゴム)
▶丸紅グループ
インディアンオイル社、TSRC社との合弁会社で、
出資比率:22.56%
2013年、
インド初の合成ゴム工場を稼働させる予定。
〈 出 資 〉オーストラリア
ダンピア・ソルト社
(天日製塩)
▶丸紅グループ出資比率:21.51%
エチレン、
プロピレン、
ブタジエン等をオレフィンと呼びます
〈 出 資 〉中国
部門は、長期に亘るノウハウと実績に裏打ちされた「強
いトレード力」と、ネットワークを活かした「戦略的な
事業投資」を両輪として、さらなる収益拡大を目指して
います。
オレフィントレードで世界トップに君臨
戦 略 的 出 資・提 携 案 件
〈 出 資 〉インド
Indian Synthetic Rubber 社
においては、肥料原料であるリン(P)やカリ(K)につい
ヒューストン
塩
オレフィントレード
ます。今後一層販売網の拡充を図るとともに、川上分野
ても権益を獲得すべく取り組みを進めているところです。
日本向輸出
年間840万トン
しました。
リオ・ティントグループ)と日商岩井(現双日)をパート
ル社(米)、アグロビスタ社(英・オランダ)、ACM 社(マ
レーシア)に投 資し、肥 料・農 薬の強力な販 売網を築
出資・提携案件
れています。本事業が稼働すれば、インド国内のタイヤ
また、その他の新興国での需要増にも対応するため、
農業化学品分野においては、川下分野でヘレナケミカ
〈 提 携 〉ブラジル
ブラスケム社
(ブタジエン)
総額450億円におよぶブタ
ジエン引き取り契約を締結。
工業塩輸出量
世界第1位。
アジアのトレード
で約50%の
シェアを持つ。
上記でご紹介した以外にも、中国武漢におけるインク
トナー事業、日本での高純度 炭酸リチウム事業等、多
くの分野で将来への布石を打っています。
今後も、トレードによって蓄積した知見やネットワー
クを活用し、最新の情報によって確度の高いビジネスを
タイムリーに企画し、戦略的事業投資の実現を目指すと
ともに、事業投資から新たなトレードの機会を創出し、
業容を拡大していきます。
丸紅は、トレードと事業投資の相乗効果を最大限に
狙い、
「総合商社化学品部門 No.1」を目指します。
2011 WINTER
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