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バイオマスタウンの構築と運営(手引き書) - 農研機構

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バイオマスタウンの構築と運営(手引き書) - 農研機構
バイオマスタウンの構築と運営
(手引き書)
平成25年3月
(独)農業・食品産業技術総合研究機構
農村工学研究所
はじめに
地域でのバイオマス利活用は,原料バイオマスの生産(発生),その収集・運
搬・貯蔵,有用なマテリアル(資材)やエネルギーへの変換,それら再生資源
の貯蔵・運搬,利用,それぞれの段階での適正処分がつながって成立します。
バイオマス利活用は基本的には手段であり,①農林業の発展,地域活性化,②
循環型社会形成,③資材やエネルギーの地産地消,④水質保全や温暖化抑制な
どの上位目標が存在します。
バイオマス利活用のポイントは,①持続的な地域資源の管理,②信頼で結ばれ
た運営組織,③変換によって得られる再生資源(資材やエネルギー)の安定的
な需要の確保,④原料と再生資源の貯蔵・運搬,⑤適切な変換技術(群)の適
用です。それぞれの地域の中で,人(組織),技術,制度,情報,資金が適切に
機能することよって,健全で持続的なバイオマス利活用が進みます。
本冊子は,2010 年 12 月に閣議決定された「バイオマス活用推進基本計画」の
趣旨を踏まえ,
「市町村バイオマス活用推進計画」の策定とバイオマス利活用事
業の運営に貢献し,地域活性化に資する魅力的なバイオマスタウンの構築に役
立つと思われる情報を,研究機関の立場で,市町村のバイオマス利活用担当者
向けに「手引き書」として編集したものです。バイオマス利活用の基本的な知
識を理解されている方に向きます。題材としては農村地域でのバイオマス利活
用をとりあげていますが,様々なタイプのバイオマスタウンの構築と運営に役
立ちます。本手引き書の 2012 年3月版からの改訂に当っては,ワークショップ
「市町村バイオマス活用推進計画サポート 2012」
(2012 月 12 月5日開催)に参
加頂いた皆様からの意見やコメントを参考にさせて頂きました。
ともに,未来を拓く夢あるバイオマス利活用の取組みを進めてまいりましょう。
農村工学研究所 資源循環工学研究領域
上席研究員
柚山義人
この「手引き書」の作成は,農村工学研究所・資源循環工学研究領域の柚山義人
が担当しました。以下の HP でダウンロードできるようにしています。また,内容
は,適宜更新していきます。是非,コメントをお寄せ願います。
http://www.naro.affrc.go.jp/nkk/introduction/chart/06-01/index.html
目次
頁
〔0〕はじめの一歩とヒント
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
15
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
17
〔1〕バイオマスタウン構想から市町村バイオマス活用推進計画へ
〔2〕本格的なバイオマスタウン
〔3〕PDCA サイクルマネジメント
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
19
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
20
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
25
〔4〕構想・計画の策定
〔5〕SWOT 分析
1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
26
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
28
〔6〕地域バイオマス利活用診断ツール
〔7〕社会実験(地域実証研究)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
31
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
34
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
37
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
39
〔12〕ライフサイクル的評価
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
40
〔13〕環境への影響評価
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
43
〔14〕外部経済効果の評価
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
45
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
47
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
50
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
56
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
58
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
60
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
65
〔8〕変換施設の規模と地域の空間的なまとまり
〔9〕評価指標の設定と進捗度管理
〔10〕農業からみた評価指標
〔11〕トータルコストアセスメント
〔15〕地域活性化戦略
〔16〕安全衛生保持
〔17〕トラブルからの教訓
〔18〕バイオガス発電の自立運転
〔19〕実務のヒント
〔20〕農が輝く地域社会
〔21〕予行演習
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 68
〔22〕農村工学研究所によるお手伝い
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
付属資料 A バイオマスの賦存量と利用量の推定法
付属資料 B バイオマス変換技術
引用文献
70
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
75
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
85
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 88
「手引き書」の利用法
「手引き書」をご利用頂くに当たっては,まず予備知識(〔0〕,〔1〕,〔2〕)をお読みくだ
さい。次に,PDCA(Plan-Do-Check-Act)サイクルマネジメントの流れ(〔3〕)をよく吟味
し,これを地域の実情に応じてアレンジすることを意識願います。それ以降は,計画策定
の方法及びツール(〔4〕~〔6〕,
〔8〕,
〔15〕,
〔21〕)
,計画策定の参考情報(〔18〕,
〔19〕,
〔22〕,
〔付 A〕,〔付 B〕),運転時留意点(〔16〕,〔17〕),評価の方法(〔9〕~〔14〕),あるべき姿
の例(〔20〕)に分けて情報を整理しています。それぞれ独立して読んで頂けるようにして
いますが,次に示すフローと PDCA サイクルマネジメント(〔3〕)を参考に,常に全体の中
で位置づけを認識願います。ご担当者がこの手引き書をご自身及びそれぞれの地域に合う
ものにアレンジしながら仕事を進められるのもよろしいかと思います。
(予備知識)
〔0〕はじめの一歩とヒント
〔1〕バイオマスタウン構想から市町村バイオマス活用推進計画へ
〔2〕本格的なバイオマスタウン
(計画策定)
〔3〕
P
〔4〕構想・計画の策定
〔8〕変換施設の規模と地域の空間的なまとまり
〔5〕SWOT 分析
〔15〕地域活性化戦略
〔6〕地域バイオマス利活用診断ツール〔21〕予行演習
D
C
A
(参考情報)
〔7〕社会実験(地域実証研究)
〔18〕バイオガス発電の自立運転
サ
〔19〕実務のヒント
イ
〔22〕農村工学研究所によるお手伝い
ク
付属資料 A
ル
付属資料 B
マ
ネ
(評価)
ジ
〔9〕評価指標の設定と進捗度管理
メ
〔10〕農業からみた評価指標
ン
〔11〕トータルコストアセスメント
ト
〔12〕ライフサイクル的評価
〔13〕環境への影響評価
〔14〕外部経済効果の評価
バイオマスの賦存量と利
用量の推定法
バイオマス変換技術
(運転時留意点)
〔16〕安全衛生保持
〔17〕トラブルからの教訓
(あるべき姿)
〔20〕農が輝く地域社会
〔0〕はじめの一歩とヒント
まずは,寄せられた質問(Q)と答え(A)から始め,生の声をお届けします。
Q
農林水産省食料産業局が「都道府県・市町村バイオマス活用推進計画作成の手引き」1)
を公表されていますが,この農村工学研究所(農工研)による「手引き書」との関係は?
農林水産省食料産業局:都道府県・市町村バイオマス活用推進計画作成の手引き,2012
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/biomass/b_kihonho/local/pdf/tebiki.pdf
A
農水省の手引きは,2010 年 12 月に閣議決定されたバイオマス利活用推進基本計画にお
いて,2020 年までに 600 市町村が市町村バイオマス活用推進計画を策定するという目標
に向けて,オーソドックスな策定方法を示したものです。農工研も業務担当者との打合
せやドラフトの点検という形で協力させて頂きました。生成物の農業利用を行う計画で
は,同手引きに記されている重量や炭素に加えて,窒素,リン,カリの計算も望まれま
す。環境への影響評価には窒素の計算が不可欠です。農工研でも同時期に農水省のプロ
ジェクト研究等で得られた研究成果を活かした手引き書を作成したというのが実情です。
農水省の手引きの最後に,参考となるホームページとして農工研の手引き書を紹介頂い
ております。農工研の手引き書は,一度目を通していただき,少し経験を積まれた後に
じっくり読んでいただけると,なるほどと思って頂ける内容かと思います。
Q
手引き書は,初版が 2011 年 12 月に作成され,2012 年3月に微修正され,今回改訂と
いうことですが,ねらいと方法は?
A
様々な声に応えるべく随時更新しています。今回の改訂では,市町村の担当者にもっ
と身近に活用いただけるよう,県・市町村の担当者,バイオマス活用アドバイザー,民
間コンサルタンツ,学生の方々にお集まりいただいてワークショップを開催し,そこで
頂いた意見や情報を参考にしました。ワークショップの概要は,次のとおりです。
1
ワークショップ「市町村バイオマス活用推進計画策定サポート 2012」
日時:2012 年 12 月 5 日(水)9:00-17:00
場所:農研機構農村工学研究所
第1会議室
目標:ワークショップの成果を踏まえて,農村工学研究所が作成した「バイオマスタウン
の構築と運営(手引き書)」を改訂し,関係機関・関係者と共有する。
参加者(敬称略,順不同):嶋本浩治,戸村信夫,竹内良曜,松田直子,阿部慎一郎,永利
智子,西村俊昭,相原秀基,石橋和隆,大塚秀樹,岡田信一,及川
忠,安部将彦,萱嶋
航,中村真人,柚山義人
実施手順:
1.参加者は,事前に下記3つの資料に目を通す。
1)都道府県・市町村バイオマス活用推進計画作成の手引き,農林水産省
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/biomass/b_kihonho/local/pdf/tebiki.pdf
2)バイオマスタウンの構築と運営(手引き書)
,農村工学研究所
http://www.naro.affrc.go.jp/nkk/introduction/files/tebikisyo.pdf
3)公表済みバイオマス活用推進計画(最低2つをチェック)
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/biomass/b_kihonho/local/keikaku_sakutei.html
http://www.jora.jp/
2.ワークショップ当日,参加者それぞれが市町村の担当者にとってわかりやすく実務に
役立つ手引き書にするため,得意分野で具体的提案をプレゼンする。そして,提案につい
て参加者で議論しながら,手引き書の改訂方向を決める。
1)趣旨確認 by 柚山(10 分)
2)プレゼン4名(80 分)
3)プレゼンに対するグループ討議(15 分)
4)プレゼン3名(60 分)
5) プレゼンに対するグループ討議(10 分)
昼食(60 分)
6)グループ代表からのコメント(3班×5 分=15 分),グループ換え
7)プレゼン3名(60 分)
8) プレゼンに対するグループ討議(10 分)
9)プレゼン3名(60 分)
10) プレゼンに対するグループ討議(10 分)
休憩(15 分)
11)グループ代表からのコメント(3班×5 分=15 分)
,グループ換え
12)まとめ方に対するグループ討議(15 分)
13) グループ代表からのコメント(3班×5 分=15 分)
14)自由討論(15 分)
15)総括と今後の方針 by 柚山(10 分)
3.ワークショップ後,柚山が改定案を作成し,それに対しメールや FB でコメントを頂く。
2
Q
ワークショップで出された主な意見は?
A
出された意見のうち,今回の改訂で十分に反映できなくても重視したいものを中心に
まとめてみました。今後の作業となる部分は,課題の整理ということに致します。関係
機関との適切な役割分担を考えるべきですので,何もかも本手引き書で扱うことはせず,
研究機関としての特徴を出すことを意識します。
(1)担当者が交代しても影響が小さくなることを念頭におき,構想→計画→実施→評価
へと進むためのチェックシート(進行管理)をつくったらよい。
本手引き書でも,第3章で示すように,PDCA(Plan-Do-Check-Act)を念頭においていま
す。旧版では PCM(プロジェクトサイクルマネジメント)という用語を使っていましたが,
石橋さんから行政部局の担当者には PDCA の方が馴染むという意見が出たので修正しまし
た。西村さんは,市町村の担当者がバイオマスタウンの構築に係る段階を設定して,以下
に示す目次に相当する情報を提示してくださいました。ご自身の実践を踏まえられてのア
イデアです。読みかえれば,実務的なチェックシート(進行管理)とも言えます。この情
報も参考に,担当者が自らチェックシートを作成し,進行管理をされるのがベストです。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
■基礎知識の取得段階
1)バイオマスタウンの意義
2)法体系
3)国・県の窓口
4)相談先
5)先進地や技術動向に関する情報源情報
■計画策定段階
1)具体的なバイオマス利活用の計画ありきが大半か,その他産業界などバイオマスに期待
する団体からのプッシュで,それに係る担当部署が担当。
2)計画策定はコンサルに委託:コンサルへの指導のポイント(利活用計画策定時の留意点,
委託先の相談)
3)市町村内の関連課からなる庁内委員会や外部を含めた委員会(協議会)の運営方法
4)産廃,一廃,その他の視点での整理
5)バイオマスの分布,収集・運搬方法の想定をすべき(現実的な調達可能量の想定がポイ
ント)
6)他市町村との連携
7)農業施設は JA,林業施設は森林組合との調整
8)想定される計画の先進地:実務担当者レベルの意見交換が有効
■施設の計画,設計,申請段階
3
1)民間事業者への支援・指導のあり方
2)一廃施設などの市町村直轄施設はコンサルに委託:コンサルへの指導のポイント(施設
の計画,設計,申請段階の留意点,委託先の相談)
3)法的にはバイオマス利活用施設の大半が,産廃,一廃施設,農林業施設に位置づけられ,
この開発許可の手順をおさえる。
4)産廃,一廃施設以外の施設の手順(その他は手順が定まっていない?)
5)事業者のキャッシュフローが重要
支出(人件費,ランニング・消耗品,施設償却費,
返却費,税金,更新積立),収入
6)類似施設の立地場所,競合の点検
7)収集,変換,利用
8)守るべき環境基準
■評価段階
1)全国比較をするために評価指標を定める必要がある。必須なもの,選択的なもの別に。
2)民間施設への提出様式の雛形の提示(評価の基礎数値)
3)エクセルで入力できる簡単な様式を作成
4)コスト評価(補助金も含めて行う)
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
(2)計画書作成のためのスケジュール,所要時間を入れるとよい。
それぞれの事情で,作成にいたる時間には大きな差があります。しっかりした計画を策
定された市町村に実態を尋ねられるのが早道と思いますが,合意形成を大切にする観点か
ら,準備も含めると,2.5~3年間が推奨です。例えば,第4章の図4に示す作成手順と上
記(1)で西村さんが準備してくれた情報を参考に,作成に至るまでの期間を念頭におい
て,スケジュールをたてられるとよろしいかと思います。
(3)賦存量調査のために,バイオマス資源の対象となるモノを,どの課が所管し,どの
情報を参照すればよいかを,出典とともに整理しておくとよい。
大塚さんが,データソースに関わるチェック表の例を示してくれました。新しく担当者
になったとき,前任者が何を使ったのかがわかるので有用です。引き継ぎ資料にもしたい
ところです。また,農林業センサスのデータを使う場合,集落単位のデータは農林統計協
会(http://www.aafs.or.jp/)から DVD で入手(有料)可能です。
「わがマチ・わがムラ~市町
村の姿~」(http://www.machimura.maff.go.jp/machi/)も有名なサイトです。
これらにより,バイオマス利活用状況の推移をわかりやすく整理する表も大塚さんより
例示いただきました。
4
チェック表
バイオマス資源名
出展
(参考)
担当課
家畜排せつ物
畜産年報
畜産課
食品廃棄物・生ごみ
一般廃棄物処理事業年報
産業廃棄物実態調査
廃棄物対策課
廃食用油
聞き取りによる
環境政策課
製材工場等残材
木材統計
林政課
建設発生木材
建設副産物実態調査
検査指導課
街路樹・都市公園・家庭剪定枝
建設副産物実態調査
土木部関連課
道路・河川敷・都市公園刈草
建設副産物実態調査
聞き取りによる
土木部関連課
下水汚泥・し尿汚泥・農業集落排水汚泥
一般廃棄物処理事業年報
農業集落排水施設整備実施状況調査
廃棄物対策課
下水道課
農村環境課
林地残材
森林整備等に係る実績調査
林政課
稲わら
水稲定点調査結果
産地振興課
もみ殻
水稲定点調査結果
産地振興課
野菜等非食部
(茨城県では集計なし)
果樹剪定枝
農林統計年報 聞き取りによる
産地振興課
1.バイオマス利活用の状況
資
源
名
: 畜産系資源(家畜排せつ物)
単位: t/年
利活用状況
年度
H18(策定時)
H19
H20
H21
H22(実績値)
H22(目標値)
発生量
(賦存量)
利活用量(湿潤重量)
堆肥化等 農業資材等 畜産利用等 建設資材等 燃料その他 利活用率
合計
3,301,000
3,214,387
3,281,810
3,244,692
2,604,000
2,974,034
3,042,148
3,017,563
(%)
78.9%
92.5%
92.7%
93.0%
2,604,000
2,974,034
3,042,148
3,017,563
2,812,000 2,812,000 2,526,000
※H21実績が記入できない場合にはデータ集計できる時期をお知らせください →
286,000
月頃
目標達成の見通し(現状の課題,対策等)
H21~22にたい肥生産状況調査を実施することから,その調査結果に基づき利活用量を推定する。
出典根拠(資料名,調査頻度,計算方法など)
(1)発生量(賦存量)
「畜産統計」による頭羽数×家畜排せつ物量
(2)利活用量
(賦存量)-(未利用+浄化放流)
農家実態調査等から推定
2.上記バイオマスに関連する県内の動き(県,市町村,民間事業者など)
項目
内容
畜産バイオマス燃料化の検討 セメント工場において豚ふんを燃料化・セメント原料として活用を検討
鶏糞の焼却施設整備
バイオマス利活用交付金を活用して整備(石岡市)
5
100.0%
(4)地域でできることに絞って計画を作成した方がよい。
竹内さんは,このことを強調されました。もっともです。市町村バイオマス活用推進計
画の策定に当っては,事業化の予定のないことに関しては,最小限の労力で作業すべきで
す。自ずと,事業化の予定のない部分の精度が落ちますが,その旨を書き込んでおいて,
後になって事業化の対象になったら精査すればよいと思われます。
戸村さんは,この点に関し,地域の課題から再考し,分野横断的・統合的な解決の道を
さぐるべきことを指摘されていました。
(5)事業効果の把握,評価の方法がわかりやすく示されるとよい。
バイオマス活用推進基本計画において,事業効果の評価・検証が強調されています。農
林水産省食料産業局が作成した手引きには,その方法の概要が記されています。
農林水産省食料産業局バイオマス循環資源課:都道府県・市町村バイオマス活用推進
計画作成の手引き,2012
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/biomass/b_kihonho/local/pdf/tebiki.pdf
本手引き書では,もう少し踏み込んだ評価指標候補とその算出方法の提示を試みていま
すが,簡単ではありませんので,今後とも現場の声を拝聴しつつ,工夫をしていきます。
(6)事業が,「ありせば」,「なかりせば」の視点を入れる。
この方法はわかりやすいです。地域環境資源センターに問い合せると実務者からアドバ
イスを頂けると思います。比較的入手が容易な公表物には以下があります。
濱井和博ほか:バイオマス利活用システムの費用対効果及び温室効果ガス削減効果,農
業農村工学会資源循環研究部会論文集,6,pp.131-147,2010
(7)合意形成のプロセスの大切さを強調すべき。
永利さんは, この点に関し,ワークショップの効用を指摘されました。バイオマスに限ら
ないことでありますが,同感です。初期段階からの関わりにより,当事者意識が増します。
一方,ワークショップは奥が深いので,その道のプロから学び,経験を積んでから主催者
になるか,上手な人に企画・運営を相談したり一定の役割を任せたりすることを考えるべ
きでしょう。
(8)多様な啓発・広報広聴の手段,伝え方の技術にも触れたらよい。
様々な機会を捉えて,それぞれの場にふさわしい手段を講じたいものです。以下は,例
です。
6
・キャラバン(出前説明会)
情報を HP に掲載したくらいでは伝わらないので,農工研では,自主的に,あるいは求
めに応じ出向いて説明し,現場のニーズの把握に努めています。
・バイオマスの歌
「ゴーゴーバイオマス」という題の歌を作詞し,様々なイベントで披露し,認知度を高
めています。
http://www.naro.affrc.go.jp/org/nkk/soshiki/soshiki07-shigen/01shigen/biomass_song.html
・コミック
農研機構畜産草地研究所では,ガイドコミックを作成し広報しています。これには驚か
されました。
http://www.naro.affrc.go.jp/org/nilgs/guidecomic/index.html
・かみしばい
エックス都市研究所は,
「こんにちは,しおちゃん」と題する大型のかみしばいを製作し,
イベント等で使いました。現在は,農工研が引継いでいます。
・小中学校の出前授業や市民講座
7
バイオマス利活用が盛んな市町村では学校教育の場に入り込んでいる事例が数多く見ら
れます。つくば市では,次世代環境教育を含む「つくばスタイル科」というカリキュラム
を導入しています。このような場も活用したいものです。
http://www.tsukuba.ed.jp/~tsukubasummit/?page_id=68
http://eeeforum.sec.tsukuba.ac.jp/5th3EF/5th3E_yamanaka+nemoto.pdf
・動画
動画はリアル感が増します。つくば市役所にて 2012 年 11 月 5 日に開催した「つくば藻
類バイオマス利用ワークショップ 2012」の模様を YouTube にアップしてみました。
http://eeeforum.sec.tsukuba.ac.jp/bio.html
各々のコンテンツには著作権が存在するものもあろうかと思いますが,了解をとれば,
使えるものが多いと思われますので,有効活用をお薦めします
相原さんは,理解者,協力者を得て,円滑に事業を推進するために,専門的な内容を簡
単に説明することの重要性を説かれました。それを「環境コミュニケーション」と呼んで
います。例えば,あまり馴染みのないメタン発酵消化液に関する理解を得たり,不安を払
拭したりするための工夫をされています。
(9)何故,これまでに思ったほどバイオマス利活用が進まなかったかを説明する必要が
ある。
例えば,メタン発酵プラントを例にあげると,稼動が停止した理由として,運転に要す
るコスト高,安い売電単価をあげるところが多かったということです。竹内さんは,解決
策として,プラントの低コスト化とプラントの高付加価値化(バイオガスの増産,消化液
の商品化)をあげられました。前者は,次の事項が大切と指摘されました。
・利用者がプラントの原理・構造を理解している。
・オートマチック運転ではなく,マニュアル運転を採用する。
・地元で管理・メンテナンス体制を構築する。
・機械施設ではなく,土木建設施設の要素が大きいことを理解する。
・ふん尿に夾雑物が含まれないようにする。
・原料性状,ガス利用条件に合わせて必要な機械設備を付設する。
(10)外国の技術,制度,ノウハウも活用していくべき。
ドイツやイタリアなどヨーロッパ諸国の技術には,日本のより優れていて低コストなも
のがあります。外国製のものを採用すると,トラブルが生じたときにどうしようもなくな
るという指摘がなされ続けてきましたが,バイオマス発電に関する技術基準の整合性検討
も着手されましたので,視野に入れる価値があります。
8
(11)数多くの事業ビジネスモデルのメニューを準備し,ユーザーが選べるようにする。
松田さんによると,ドイツでは 500 のオーダーの事業メニューが提示されており,その
中から自分たちの取り組みに近いものを探し出して参考にすることができるとのことです。
世の中に設計ツールなるものは存在しますが,こういう発想もありますね。直ちに準備と
はいきませんが,念頭におきたいと思います。
(12)技術編,管理編に分けたバージョンがあるとよい。
本手引き書で,2つのバージョンを整備することはできませんが,代わりにこの章の後
半に,ワークショップ参加者から有用な情報を紹介いただいているので,参考にしていた
だきたいと思います。変換技術に関する書籍や資料は数多くありますが,バイオマス利活
用のトータルシステムについて述べたものは少ないです。研究開発プロジェクトの案件で
は,トラブル発生の状況とその対策・教訓が整理されるようになってきました。本手引き
書でも一部紹介しています。百聞は一見にしかず,先行事例地区を訪問して,生の声を聞
くことが一番と思われます。
(13)失われたネット情報の取得が望まれる。
かつて検索等でみつけていた Web 情報が無くなっていたり,リンクが外れていたりとい
うのはよくあることです。これまで全国的な取り組み推進に役割をはたされてきた日本有
機資源協会(JORA)に問い合わせると,発掘できる可能性が高いと思われます。ワークシ
ョップに参加してくださった嶋本さんによると,過去の貴重な情報の整備にも力を入れて
いくとのことでした。
(14)概要版がほしい。
本手引き書を活用いただくためにも必要だと認識します。なるべく早く準備します。バ
イオマスタウン構想策定マニュアル,都道府県・市町村バイオマス活用推進計画作成の手
引きは概要版が作成されていたので,参考にします。
(15)Q&Aを準備したらよい。
問い合わせを受けて回答(対応)した事例を積み重ねていきます。ある程度まとまった
ら公表したいと思います。この改訂手引き書でも,部分的に組み込みました。(17)の意見と
あわせて,関係者と協力していきます。
(16)研究機関がこのような手引き書をつくると,全体ボリュームが大きく文字が多くて
9
難しい。イラスト中心でわかりやすいものが望まれる。
十分に自覚,認識しております。(17)の意見とあわせて,関係者と協力していきます。
(17)2年くらい時間をかけて総力を結集すると充実した手引き書になる。ユーザーに応
じた様々なバージョンの作成が望まれる。
本手引き書の改訂努力は,研究機関としての特徴を出すという路線で続けます。この意
見に応えるものは,予算と時間を要するので,農工研として簡易にやりますとは言えませ
ん。ワークショップの中では,全国的な取り組みにおいてリーダーシップを発揮してきた
日本有機資源協会に幹事役をお願いするのがバランス感覚としてよいという意見も出てい
ました。そのときは,農工研も一翼を担わせて頂きます。
市町村の担当者のうち,特に,バイオマスって何?,という段階の者にわかりやすい本
Q
やネット情報を紹介ください。その推薦の理由は?
A
ワークショップに参加いただいた方からの情報を順不同で掲載します。
(嶋本さんより)
「使おう!
広げよう!
バイオマス!」パンフレット,日本有機資源協会
http://www.jora.jp/txt/bmt/pdf/biomass_project_20110208low.pdf
(平成22年度に制作した一般向けのパンフレット。古くなりつつあるが,バイオマスを紹
介する際に説明しやすく理解しやすい。)
日本有機資源協会編著:バイオマス活用ハンドブック,環境新聞社,2013
(バイオマスの賦存量,利用可能量の把握の仕方が詳述されている。)
(安部さんより)
岡山県真庭市の「バイオマスタウン真庭」
http://www.city.maniwa.lg.jp/html/biomass/index.htm
10
(バイオマスについて,何?といったQ&Aから推進体制,取り組みなど情報多数。)
「使おう!
広げよう!
バイオマス!」パンフレット,日本有機資源協会
(基本的なことを説明するのに,とてもわかりやすい。)
(石橋さんより)
本間琢也
他著:「再生可能エネルギーのキホン」,ソフトバンククリエイティブ㈱ ,2012
(p.144からバイオマスのことについての記載がある。挿絵が載っていてわかりやすい。)
木谷 収:バイオマスは地球環境を救えるか,岩波ジュニア新書,2007
(竹内さんより)
NEDO:バイオマスエネルギー導入ガイドブック,2010
http://www.nedo.go.jp/content/100079692.pdf
(基礎的な話がわかりやすくまとまっている。)
農林水産バイオリサイクル研究「システム実用化千葉ユニット」編:アグリ・バイオマス
タウン構築へのプロローグ,農村工学研究所,2007
http://www.naro.affrc.go.jp/org/nkk/soshiki/soshiki07-shigen/01shigen/biomass_town.html
(図,写真などがきれいで読みやすい。)
井熊 均:図解入門よくわかる最新バイオ燃料の基本と仕組み,秀和システム,2008
(幅広いジャンルにわたり図解でわかりやすく説明されている。)
(永利さんより)
日本有機資源協会:みんなでつくるバイオマスタウン,ぎょうせい,2008
(親しみやすくわかりやすい。)
(相原さんより)
中村
修・遠藤はる奈:成功する「生ごみ資源化」,農文協,2011
(思わずうなずくことが多く,市町村の事例もあるため親近感がある。)
澤山茂樹:トコトンやさしいバイオガスの本,日刊工業新聞社,2009
(プラント用に説明を残すため,わかりやすさを求めている時に見つけた本。)
木谷 収:バイオマスは地球環境を救えるか,岩波ジュニア新書,2007
(ジュニア新書だがまとまっていて,時間の限られた担当者が全体像を把握しやすい。)
(戸村さんより)
東京市町村自治調査会:市町村職員のためのごみ・リサイクル入門,2001
(異動してはじめて担当になった人に傍において貰うイメージで作成されたもの。基礎的
な知識,計画の種類,法律,技術,キーワード等,担当者が困った時にとりあえず見て役
立てることができる。)
(松田さんより)
近畿バイオマス発見活用協議会:バイオマスってなんだろう,2009
近畿バイオマス発見活用協議会:バイオマスで暮らす,2009
(柚山より)
農林水産省:バイオマスの活用の推進
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/biomass/b_kihonho/index.html
11
農林水産省:バイオマスタウン構想策定マニュアル,2008
http://www.maff.go.jp/kinki/kikaku/baiomass/pdf/zenbun.pdf
関東バイオマス発見活用協議会:関東地域のバイオマス利活用事例集,2008
http://biomass.exri.co.jp/wp-content/uploads/pdf/jireishu_zenbun.pdf
小宮山宏ほか:バイオマス・ニッポン,日刊工業新聞社,2003
山本博己:基礎からわかるバイオマス資源,エネルギーフォーラム,2012
古市 徹 監修:循環型社会の廃棄物系バイオマス,環境新聞社,2010
横山伸也・芋生憲司:バイオマスエネルギー,森北出版株式会社,2009
奥 彬:バイオマス~誤解と希望~,日本評論社,2005
木谷 収:バイオマスは地球環境を救えるか,岩波ジュニア新書,2007
松村幸彦:太陽の恵みバイオマス,コロナ社,2008
日本エネルギー学会:バイオマスハンドブック,2002
農林水産バイオリサイクル研究「システム化サブチーム」編:
「バイオマス利活用システム
の設計と評価」,農業工学研究所,2006
http://nkk.naro.affrc.go.jp/soshiki/soshiki07-shigen/01shigen/sekkeitohyouka.html
農業土木学会誌 講座「バイオマス利活用」,2005 年6月~2006 年1月
市町村の担当者の参考になる実践例,ノウハウを紹介した本やネット情報を紹介くださ
Q
い。その推薦の理由は?
A
ワークショップに参加いただいた方からの情報を順不同で掲載します。
(石橋さんより)
福岡県大木町の取り組み
http://www.biomass-hq.jp/documents/biomasstown/oki/page1
(生ごみを活用する点について,住民の力(理解と協力)を感じる。)
高知県仁淀川町の取り組み
http://www.maff.go.jp/chushi/joho/genchi/19baio/1_7.html
http://www.mori-energy.jp/ryu-tu/seika22/02%20tosanomori.pdf (土佐の森救援隊)
(地域でマテリアルと資金が回って,お年寄りが生き生きと過ごすことが出来るまちづく
りのお手本。)
岩手県紫波町の取り組み
http://www.maff.go.jp/tohoku/stinfo/zirei/biomass/pdf/iwate_5.pdf
(100年後の世代により良い姿で引き継ぐことを具体的に行動している。)
(永利さんより)
中村
修・遠藤はる奈:成功する「生ごみ資源化」,農文協,2011
(相原さんより)
野池達也 編著:メタン発酵,技報堂出版,2009
(現在,これがなければプラントを維持できなかった。参考論文も追うことが可能。)
R.E.Speece 松井三郎・高島正信監訳:産業廃水処理のための嫌気性バイオテクノロジー,
12
技報堂出版,1999
(現在,これがなければ維持できなかった。詳細な事例も運用時に使える。)
池上 詢 編:バイオディーゼル・ハンドブック,日報出版,2007
(ページ数は少ないが,実際に製造しているとかなり参考になり,思わずうなずける。)
須藤隆一 編著:水環境保全のための生物学,産業用水調査会,2004(うち第5章 嫌気性
処理
李玉友)
(野池編著の本に記述されていない部分を補える。)
(嶋本さんより)
DVD「ニッポンぐるり
バイオマスの旅」
http://www.jora.jp/txt/kbm/fukyu.html#tabidvd
(2010年1月にBS-TBSで放映された全4話のテレビ番組をDVD化したもの。全国の取組
事例が担当者からの言葉で映像とともに紹介されるので理解しやすい。日本有機資源協
会からコピーの提供等を行っている。)
農林水産省:「バイオマス利活用の取組事例(変換技術別)」
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/kankyo/seisaku/utilization.html
(全国の取組事例を変換技術別にまとめており,事例を把握する上では理解しやすい。)
(中村さんより)
畜産環境技術基礎講座
http://www.leio.or.jp/technical/basic_course/
畜産環境関連Q&A
http://www.leio.or.jp/technical/qanda/
(技術者向けではなく,行政のふん尿処理担当者向けの内容になっている。)
(安部さんより)
中村
修・遠藤はる奈:成功する「生ごみ資源化」,農文協,2011
(生ごみに関し,実践例として行政の取り組みがよくわかる。)
「茂木町バイオマスタウン紹介」
http://www.town.motegi.tochigi.jp/motegi/download/1722.pdf
(地域資源を活用し,循環型社会を目指している取組としてわかりやすい。特に費用対
効果と環境貢献の数値化。)
(戸村さんより)
土佐の森林救援隊
http://mori100s.exblog.jp/
(小さな取組を繋いで地域再生を図ることの重要性がわかる。)
(大塚さんより)
栃木県・那珂川町バイオマス活用推進計画
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/biomass/b_kihonho/local/pdf/nakagawa_plan.pdf
(優先順位がはっきりしている。)
香川県・三豊市バイオマス活用推進計画
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/biomass/b_kihonho/local/pdf/mitoyo.pdf
13
(できること,やりたいことが明確である。)
(柚山より)
バイオマスツアー真庭
http://www.biomass-tour-maniwa.jp/
おおき循環センターくるるん
http://www.kururun.jp/
宮城県大崎市:バイオマスタウンおおさき(パンフレット)
「環境モデル都市」飯田市の取り組み
http://www.team-6.jp/teitanso/project/model/iida.html
DVD「未来につながるバイオマスタウン」,農林水産バイオリサイクル研究「システム実用
化千葉ユニット」,2006
農林水産バイオリサイクル研究「システム実用化千葉ユニット」編:アグリ・バイオマス
タウン構築へのプロローグ,農村工学研究所,2007
http://www.naro.affrc.go.jp/org/nkk/soshiki/soshiki07-shigen/01shigen/biomass_town.html
日本有機資源協会(JORA)
http://www.jora.jp/
地域環境資源センター(JARUS)
http://www.jarus.or.jp/
畜産環境整備機構(LEIO)
http://www.leio.or.jp/
九州バイオマスフォーラム
http://kbf.sub.jp/
バイオガス事業推進協議会
http://www.biogas.jp/
バイオマス産業社会ネットワーク(BIN)
http://www.npobin.net/
農研機構農村工学研究所・資源循環システム担当
http://www.naro.affrc.go.jp/nkk/introduction/chart/06-01/index.html
14
〔1〕バイオマスタウン構想から市町村バイオマス活用推進計画へ
地域でのバイオマス利活用の推進に関し,認識しておくべき近年の政策等の動向を整理
した。
1.バイオマス・ニッポン総合戦略
バイオマス・ニッポン総合戦略 2)(2002 年 12 月閣議決定,2006 年3月改訂)は,様々な
バイオマス利活用の取組みの起爆剤となった。
戦略では,具体的行動計画の1つとして,地域のバイオマス資源を総合的かつ効果的に
利活用するバイオマスタウン構想の策定を市町村等に奨励し,2010 年までに全国で 300 程
度の市町村等がバイオマス利活用を推進することを目標として設定した。戦略において,
バイオマスタウンは,「域内において,広く地域の関係者の連携の下,バイオマスの発生か
ら利用までが効率的なプロセスで結ばれた総合的利活用システムが構築され,安定的かつ
適正なバイオマス利活用が行われているか,あるいは今後行われることが見込まれる地域」
と定義され,数値目標としては,
「廃棄物系バイオマスの 90%以上,または未利用バイオマ
スの 40%以上の活用」を基準としていた。提出された構想書がこの基準に合致している場
合にはホームページで公表した。2011 年4月 28 日時点の公表数は,318 地区である。
2.食料・農業・農村基本計画
2010 年3月に閣議決定された食料・農業・農村基本計画
3)
では,基本的な方針の中でバ
イオマス利用に関して,気候変動をはじめとする地球環境問題への対応,6次産業化によ
る活力ある農山漁村の再生を掲げている。農村の振興という観点では,バイオマスを基軸
とする新たな産業の振興と農村における再生可能エネルギーの生産・利用の促進が記され
ている。
3.農林水産研究基本計画
2010 年3月に決定された農林水産研究基本計画
4)
では,その重点目標の中で,バイオマ
ス利活用に関連するものとして,地球温暖化への対応とバイオマスの利活用,新分野への
展開,地域資源活用を掲げている。また,期別達成目標として,国産バイオ燃料・マテリ
アル生産技術の開発とバイオマスの地域利用システムの構築という大きな課題が立てられ,
具体的には,①食料供給と両立できるバイオマスからの燃料生産技術の開発,②バイオマ
スの多様な燃料利用技術の開発,③バイオマスからのマテリアルの開発,④地域バイオマ
ス利用システム設計・評価手法の開発が示されている。
4.行政刷新会議による事業仕分け,総務省による政策評価
2010 年に行政刷新会議による事業仕分けが行われ,バイオマス利活用に関わる多くの事
業が廃止あるいは削減とされた。総務省は,バイオマス利活用の政策評価を行い,その結
果を 2011 年2月に公表した 5)。これらは,税金を投入して実施する価値のある事業を厳選
して行うことを求めている。
15
5.バイオマス活用推進基本計画
バイオマス活用推進基本法が 2009 年9月に施行された。今後は,同法に基づき,2010 年
12 月に策定されたバイオマス活用推進基本計画 6)がバイオマス利活用の道標になっていく。
基本計画の方針の1つに,
「地域の主体的な取組の促進」が掲げられている。注目すべきは,
バイオマス利活用の施策毎に達成目標とその評価指標が明示されたことである。その1つ
として,2020 年までに 600 の市町村バイオマス活用推進計画を策定することを数値目標と
して設定している。
6.我が国の食と農林漁業の再生のための基本方針・行動計画
2011 年 10 月に「食と農林漁業の再生推進本部」
(内閣総理大臣が本部長)は,
「我が国の
食と農林漁業の再生のための基本方針・行動計画」7)を閣議決定した。これは,2011 年3月
11 日に発生した東日本大震災後に示された行動計画で,持続可能な力強い農業を育てるた
めに策定されたものである。この中の「戦略3」において,エネルギー生産へ農山漁村の
資源の活用を促進することが掲げられ,バイオマス利活用も一翼を担うこととしている。
7.バイオマス事業化戦略
2012 年9月に,バイオマス活用推進会議が「バイオマス事業化戦略」8)を決定した。この
戦略は,バイオマス活用推進基本計画の目標達成に向け,コスト低減と安定供給,持続可
能性基準を踏まえつつ,技術とバイオマスの選択と集中によるバイオマスの事業化を重点
的に推進し,地域におけるグリーン産業の創出と自立・分散型エネルギー供給体制の強化
を実現するための指針と位置づけられている。この中で,バイオマス産業を軸とした環境
にやさしく災害に強い「バイオマス産業都市」の構築を推進することが示されている。こ
れは,バイオマスタウンのコンセプトを発展・高度化したもので,地域のバイオマスを活
用したグリーン産業の創出と,太陽光,小水力等を組み合わせた地域循環型エネルギーシ
ステムの構築が強調されている。
16
〔2〕本格的なバイオマスタウン
バイオマスは,太陽エネルギーを生き物が利用する連鎖によって生成される。それは,
植物が光合成によってデンプンをつくることから始まる。木,作物,家畜,その餌や糞尿,
食品残さ,生活廃水汚泥もバイオマスである。バイオマスは,そのまま,あるいは変換し
て,食料,飼料,暮らしの道具,建材,電気,熱,輸送やプロセス駆動用の燃料,農業生
産資材,工業原料などさまざまなものとして使われる。バイオマス利活用のイメージを図
1に示す。
〈発生・生産〉
廃棄物系バイオマス
産業活動
〈利用〉
耕種農業
人間生活
畜産
資源作物
〈
貯蔵〉
〈供給〉
適正処分
農業生産資材,工業原料
バイオマス由来材料
電気,熱,自動車燃料
未利用バイオマス
変換施設
堆肥化
メタン発酵
飼料化
燃焼
エタノール発酵
炭化
〈再資源化(変換)〉
図1
バイオマス利活用のイメージ
わが国のバイオマス利活用は,国土面積の 67%を占める森林の保全を抜きには考えられ
ない。森林は,林業経営の厳しさに直面して久しいが,間伐材の有効利用,二酸化炭素の
吸収,洪水緩和・水源涵養機能の発揮が評価されてきている。森林の豊かさが日本を支え
ていることを正しく認識する必要がある。
農業は,基本的に,植物の光合成により食料やエネルギーなどを獲得する業(なりわい)
である。化学肥料が普及するまでは,バイオマス由来養分の補給が収量確保の生命線であ
った。投入エネルギーのほとんどは人・畜力であったため,エネルギー生産産業であった。
現在の農業は,化石資源の使用量が多くなり,エネルギー消費産業になっている。農村で
の暮らしの中でも多くのエネルギーが使われている。
バイオマス利活用には,次のような側面がある。これらは,それぞれに目的と方法を明
確にして推進すべきである。
①付加価値のついた商品,機能物質をつくって儲けたり楽しんだりする仕組づくり(生産
者・消費者のマッチング,先行利益の取得を含む)
②行政が中心となって,それぞれの地域の主産業の発展,外部不経済の解消,外部経済の
17
発揮という観点から,公共の利益に資する社会資本の整備の一環として進めるべきもの
(「バイオマスタウン」の概念に一致)
③ビジネスとして,あるいは国際公約を守るという観点から進めるべきもの(京都議定書
目標達成計画など)
上記の②に対応するバイオマス利活用の推進に当っては,持続的な地域資源の管理,適
切な変換技術(群)の適用,信頼できる運営組織の設立及び維持,再生資源(マテリアル
やエネルギー)の確実な需要確保,運搬・貯蔵が重要である。バイオマスの持続的利用は,
そのほとんどが,自然との良好な共生を前提としている。健全な物質循環は,生命の継承
を目的とする自然界の生きものの活動が支えている。広く薄く存在している物質を集積し
たり,微量元素を運んだり分解を行ったりする機能ぬきには成立しない。
本格的なバイオマスタウンには,①地域経済の発展を含めて地域活性化につながる,②
循環型社会形成,エネルギーの地産地消に貢献する,③物質・エネルギー収支の面から持続
性が成立する,④生産基盤整備とリンクし,地域環境を保全し地球温暖化を抑制する,⑤
創意工夫で成長し続ける,という要素が入っていることが重要である。
目指すべきバイオマスタウン像は地域によって異なる。1つのイメージを図2に示す。
「人と技術と制度と資金」をつなげて,バイオマスの利活用を進めます。効果
を,地域活性化に及ばせます。バイオマスが健全に利活用されるマチは,人
の心と自然が美しくなります。循環型社会の形成に貢献し,環境スタイルで,
人の交流を生むバイオマス利活用,それは地域の元気の源です。
バイオマス利活用で
「子供たちの歓声が響き,にぎわいのあるマチ」
をつくりましょう!
図2
地域ににぎわいをもたらすバイオマス利活用
18
〔3〕PDCA サイクルマネジメント
バイオマスを持続的に利活用する施策は,図3に示すような PDCA(Plan-Do-Check-Act)
サイクルマネジメントを導入することにより,実現可能性の高い計画の策定と着実な事業
の推進が可能になる 9)。プロジェクトのサイクルは,地域診断,計画策定,事業の実施,評
価に区分される。1サイクルの時間は主たる再資源化(変換)施設の耐用年数に支配され,
7~20 年程度の場合が多い。*印は,外部経済効果の発掘・評価に関わる事項である。
具体的には,中核事業主体,関係主体,市町村の担当者,内部監査担当者,公募市民お
よび有識者などで構成するバイオマス利活用推進協議会などの場で,適切な地域診断や社
会実験を経て計画を策定し,事業実施中はモニタリングにより毎年度点検を行いながら運
営する手順が適切である。保守・点検や適期の修繕により施設や機器の長寿命化が図られ
る。モニタリングや評価にあたっては,間接エネルギーや外部経済効果の評価を組み入れ
ることが望ましい。バイオマスの利活用には経費(支出)を伴うが,それをできる限り地
域内の人・組織への収入にすることが地域経済活性化につながる。
以下の〔4〕~〔19〕では,この PDCA に添う形で,それぞれの方法や参考情報を整理
している。目次の次のページに示している「手引き書」の利用法と合わせて,図3は折に
触れてふりかえって頂きたい。
地域診断
計画策定
地域診断は, 市町村バイオマス 活用推進計画を策定するために行う. 想定される中核事業主体,関
係する主体,市町村の担当者,内部監査担当者, 公募市民、有識者などで構想を作成する.パブコメ
の実施が望ましい.
・バイオマス利活用という手段を用いてビジ ョンの共通認識を得る.地域づくりや市町村環境基本計画な
どの上位計画との整合性の確認を含む.
・先行事例の調査・分析.
・達成目標,ロードマップの設定.それらの組織・技術・制度・資金面からの実現可能性の確認.
・原理原則の部分と自由度がある部分の区分.
・施策の評価項目,評価方法,権限及び責任範囲の概定.
・バイオマス利活用の持続性を担保するための前提条件,必要な社会インフラの維持・更新の必要性の
確認.
・物質・エネルギー収支,ライフサイクル的思考による環境影響(*),経済性の診断.
・外部経済候補項目のリストアップ(*)(地産地消で地域経済に貢献すること,地域ブランド形成など)
社会実験
施策決定
モニタリング
事業開始
適期の修繕
保守・
点検
(実施)
施策評価
(目標年次)
毎年度点検
新施策準備
(注)点線矢印は必要に応じての手順.
図3
社会実験は, 確実性のない施策について,ハード,ソフトの
両面で1/100~1/1,000規模の実験を1~3年行い, ノウハウ
を蓄積する.
モニタリングは, 実施中の施策を常時監視する役割をもつ. こ
のため, 以下を含めて施策評価に必要なデータの収集・ 整理を
行う.評価者による現地調査と聞き取りが望まれる.
・トラブル,その対応策と教訓の整理.
・リストアップした外部経済項目の分析(*).
・当初考慮していない問題,効用(*)の抽出.
・現場の創意工夫内容の抽出(*).
・新たな連携(*)による便益発掘.
毎年度点検は,モニタリング結果を踏まえ て,1年に1度,施策
改善のために以下を行う.結果は次年度施策に反映させる.
・評価法の点検と必要に応じての改良.
・実施中の施策に安定性,持続性があるかどうかの点検(リスクマ
ネージメントを含む).
・各運営主体, 技術,制度上の問題点整理と改善方法とりまとめ.
・技術のシステム化, 新たな公の機能発揮による社会コス ト削減
(*)などによって,より有効な方法がとれないかの検討.
・外部経済効果の整理と定量化の検討(*).
・農林業及びバイオマスの政策の動向と生産基盤の状況の点検.
バイオマス利活用の PDCA サイクルマネジメント
19
〔4〕構想・計画の策定
1.全般的事項
市町村バイオマス活用推進計画を策定するためには,バイオマス利活用システムを構成
する,原料バイオマスの生産(発生)
,その収集・運搬・貯蔵,資材やエネルギーへの変換,
変換によって生成される再生資源(資材,エネルギー)の貯蔵・運搬,利用,廃棄をトー
タルにとらえた,「現状把握」と「(複数の)計画案作成」を行い,それらの物質・エネルギ
ー収支の健全性・持続性,環境への影響,経済性等を評価し,計画を固めていくことにな
る。再生資源に関しては,品質,量が利用者のニーズに合うことが重要である。合わせて,
バイオマス利活用に係わるそれぞれの役割を担う組織をつなぐことが必要である。
バイオマス利活用の構想・計画づくり,事業の主体(推進役,担当者)は多様であり,
多くの組織が関わることになる。行政が主体の場合もあるし,企業団体や NPO が主体の場
合もある。計画は,地域の問題解決を重視する場合や,高きビジョンのもと未来の創造を
目指す場合がある。対象とするバイオマスの種類,変換の方法も千差万別である。
バイオマス利活用は地域特性に大きく委ねられ,地域独自の創意工夫や合意形成を図っ
ていくプロセスが大切である。構想策定の初期段階では,地域の中で何をしたいか,何を
すべきかを明確にすることが重要である。このことが十分になされていないと思われる場
合は議論をまきおこすべきである。あるべき地域の姿を描くことから始め,しっかりした
理念をもたないと,目的と手段を取り違えかねない。単にバイオマスを利活用するという
ことと,バイオマスタウンをつくるということには大きな差がある。全般的な留意点を表
1に示した。これは,担当者のメモとして加筆・修正していって頂きたい。
市町村が中心的役割を果たして市町村バイオマス活用推進計画を策定する方法は,現実
的には,①市町村の担当者が情報の収集と分析を踏まえて素案を作り,協議会などの場で
ブラッシュアップしていく,②中核となる事業者の提案を受けて,それを軸に組み立てる,
③本格的な市民協働を目指し,丁寧なヒヤリングやワークショップを踏まえる,などが考
えられる。市町村の担当者が研修を受けてノウハウを習得したり,バイオマス活用アドバ
イザーなどの力を借りたりする場合もある。
作成手順は,図4に示すようになる。①バイオマス利活用を将来の地域像の中に位置づ
ける,②地域の中で何が化石資源を使って製造される資材やエネルギーの代替になるかを
見極める,③現状把握とともに複数の計画案を診断しスクリーニングする,④適用技術,
変換施設の規模・配置及び運営組織を検討する,などが重要事項である。先行利益の取得
を目指したビジネス化と地域の中での資源配分の全体最適確保のバランスをとることが望
まれる。表2は,個別の原料バイオマスの利用を検討する場合の作業シートの例である。
市町村の立場としては,何らかの税金,公的資金を使うことになる場合は計画の内容を
説明し理解を得る必要がある。使わない場合においても,上位計画,関連計画との整合性
をとり,事業推進に効果があること,少なくともマイナスの影響がないことを確認する必
要がある。このため,議会の場での議論や住民に対しての広報広聴がなされる。様々な場
で,外部経済効果(波及効果や副次的効果と呼ばれたりする場合もある)についても議論
がなされると思われる。同時に,事業推進によるリスクも議論になると思われる。
20
表1
バイオマス利活用の推進にあたっての留意点(チェックリスト)10)
適正な利活用システムの探究
再資源化(変換)施設の計画
○本当に有用な物質やエネルギーが効率的に生成でき
るシステムになっているか。単一のマテリアル利用だ
けでなく,エネルギー利用やバイオマスリファイナリ
ーを目指しての多段階(カスケード)利用を模索して
いるか。
○化石資源を極力使わず環境への負荷が小さいシステ
ムになっているか。
○堆肥やメタン発酵消化液(液肥)などの再生資源は化
学肥料に比べて相対的に重く嵩が大きいため,輸送や
農地への散布にコスト,エネルギー,時間がかかるこ
とを認識しているか。
○求められる化学肥料代替物質の特徴を考えているか。
農地の土壌は,かつてのリン不足からリン過剰の傾向
にある。新しい施肥設計に基づき計画が練られている
か。
○生成される農業生産資材を用いることにより有機農
産物認証が得られるか。
○再生資源は,価値があっても流通に乗らなければ廃棄
物となることを認識しているか。
○品質を保持した状態でバイオマスを収集・
運搬・貯蔵できる方法が選択されているか。
○副資材や副産物に関する情報も集めているか。
○生態系保全への貢献(少なくとも悪化防止)が図られ
ているか。
○低利用にも意味があることを認識しているか。
○規模・配置は適切か。
○需要と供給の安定性は確保されているか。
○目標年次を意識しているか。
○再資源化の方法によって,連続運転するものと
バッチ運転するものがある。後者の場合は,人
件費の削減を考えて,単位時間当りの変換能力
を大きくして1週間に1日の稼働とすべきも
のもあることを認識しているか。
○再資源化施設全体及びパーツの耐用年数を長
く見込みすぎていないか。
○廃棄物が出ることを忘れていないか。
○ユーザーの立場に立った信頼できるメーカー
から情報を入手しているか。
安全性
○堆肥等には Cd,Zn,Cu などの重金属が含ま
れている。これらが長期にわたって,土壌の管
理基準以下になるように施用できる計画にな
っているか。
○有害物質,POPs,病原菌などの挙動に留意し
ているか。
○悪臭,騒音,振動に関する対策の必要性を検討
しているか。
○低温炭化の場合には自然発火に注意している
か。
諸手続き
○活動を楽しめているか。
○数々の法規制があり,どの手続きが必要かを判
断することから始めなければいけない。リスト
や手順を整理しているか。
○再生資源の生産を目指している場合でも,産業
廃棄物処理としての手続きが求められること
があることを理解しているか。
○時間がかかることを計算に入れているか。
構想作成
実施のタイミング
○迷惑施設と捉えられる側面を忘れていないか。
○廃棄物系バイオマスに関わる既存の流通ルート,利害
関係を認識し,調整をつけているか。
○最初から理想を追いすぎていないか。
○地域は,地理的に連続していない場合もあり得ること
を念頭においているか。
○行政コスト低減のための工夫をしているか。
○技術革新や政策・制度の動向,社会的インフラ
の整備状況を見極めて実施のタイミングを決
めているか。
○政策の動向により,再生資源の価値や利活用シ
ステムの収益性が変化することを予見してい
るか。
○他の関連事業で原料としてのバイオマスが先
行予約されていないか。
組織・体制
○総力を結集できる体制が整っているか。
○全体を統率するリーダーが存在しているか。
○役割分担と信頼に基づき適切なタイミングでリーダ
ーシップを発揮しあえる組織が集っているか。
注)安全性に関しては,
〔16〕に記載。
21
①地域課題と将来のあるべき姿の展望
地域の状況と課題
将来のあるべき姿のイメージ
②対象バイオマスの選定
③変換技術の選択
・バイオマスの種類
・発生場所
・分布状況
・収集の可能性
④需要先の把握
需要先
変換技術
バイオマス
⑤利活用方策の検討
・利用する場所
・代替エネルギー
の可能性
・新マーケット
複数代替案の作成
収支計算
利活用方策の決定
⑥需要側から利活用計画を再評価
図4
表2
項目
生産(発生)
収穫・収集
バイオマス利活用計画の作成手順 11)
バイオマス利活用検討のための作業シート(例)
搬送
貯蔵
変換
(エネルギー・資材)
貯蔵
(保管)
搬送
利用
(需要)
処分
メモ
内容
配慮事項
量・面積
担い手(誰が)
場所(どこで)
収入(誰から誰へ)
支出(誰から誰へ)
公約資金(or 外部経済)
環境影響
備考
農業などの産業と環境にプラスの影響を及ぼし,かつ一定の利益が得られるバイオマス
タウン構築のためには,環境保全に軸足をおいた地域・経済構造への変革に向けた取組み
を産学官・市民が連携して進める必要がある。バイオマス利活用に係わる施策や活動が,
心の豊かさ,時間のゆとりの確保,健康増進につながり,真に循環型社会の形成に貢献す
ることを常に意識する必要がある。先行事例に学び,人材と情報をうまく活用しつつ,地
域独自の計画を立てるという気概を大切にしたい。
2.持続可能性
バイオマス利活用の持続可能性に係わる問題の所在と解決方策を表3にとりまとめた。
バイオマス利活用を推進する初期段階においては,補助金・交付金などの公的資金の投入
22
や優遇措置などを背景に,政策による誘導が必要となるが,最終的には地元ネットワーク
の総意がバイオマスタウンの方向性を決めるべきである。公的資金による助成に頼りきっ
た事業は健全であるとはいえず,助成金の大量投入は行政コストの増大を招く。地域のレ
ベルでも,環境保全的な方法でバイオマスを生産している者,合理的なバイオマス変換施
設を運営している者など,公共の利益に資し,理にかなったバイオマス利活用を推進する
者が正当な利益を受けられる仕組みを構築していくべきである 12)。
表3
農地・農畜産業
林地・林業
地域・ライフスタイル
バイオマス利活用事業
バイオマス利活用の持続可能性に係わる問題と解決方策 12)
問題点の所在の認識
解決方策
現在の農業システムは石油に大きく依存し
ている。必要量以上の肥料・農薬の投入は環
境悪化を招く。持続性のある営農である水稲
作がコメの生産過剰で大幅に制限されてい
る。畜産のための飼料は大部分を輸入に頼っ
ている。現時点では,農作物の見栄えの良さ
を重視せざるを得ない状況にある。中山間地
域を中心に担い手不足が深刻である。
木材をその成長量以上に採取することはで
きない。適切な伐採を行わない植林は森林環
境の悪化を招く。間伐材の収集・運搬には相
当のコストがかかる。
大量生産・大量消費・大量廃棄に基づく経済
合理主義の価値観は,近々通用しなくなる。
生活系ゴミの処分も限界に近づいている。環
境保全に関わる地域住民,地球市民としての
役割がより一層不可欠になってきている。
バイオマスから得られる価値以上のエネル
ギー投入はすべきでない。実際に収集可能な
原料バイオマス量,実際に利用可能なバイオ
マス再生資源量と一致しない事業計画は破
綻する。交付金や補助金がプラントの建設に
限定されている。
マテリアル・エネルギーバランス,生態系へ
の影響を理解した生産活動の展開。食品の安
全は最低要件とし,品質とサービスで競争す
るシステムの整備。地域で得られる農業生産
資材やエネルギーを利用する環境保全型農
業への飛躍的転換。飼料稲の栽培による耕畜
連携,資源作物生産の推進。バイオマスの積
極的利活用を可能にする基盤づくり。
森林機能の保全を念頭に置いた木質系バイ
オマス利活用計画の策定。材木の生産,エネ
ルギー利用など利用目的に応じた樹種の選
定,伐採方法の検討。
食やエネルギーの地産地消の推進。使い捨て
社会から循環型社会への移行。見かけだけを
重視しない農作物の購入によるコストと廃
棄物発生量の軽減。省エネ,社会コスト低減
への市民としての貢献。
廃棄物処理の延長からの脱却。バイオマスの
発生・生産,収集・輸送から変換技術の選定・
設計,得られる製品・エネルギーの需要まで
を考慮した一貫した計画策定。プラントの運
転管理への公的支援。
3.役割と担い手
バイオマス利活用に必要な役割は,原料バイオマスの生産(発生),その収集・運搬・貯
蔵,変換,再生資源(資材,エネルギー)の貯蔵・運搬,利用,廃棄,諸手続き,経理,
広報広聴,コーディネート,監査,事務局等である。地域の中には,カリスマ的にリーダ
ーシップを発揮される方がいる場合,熱心な市町村長や担当者がいる場合,NPO や教育・
研究機関が後押ししている場合,部分的であれ関係者間の交流がある場合など,状況は様々
である。
バイオマス利活用事業の中心となる担い手が誰であるのかということは重要なポイント
である。地方公共団体,水土里ネット,農業振興センター,廃棄物処理業者,農業団体な
どには,資源循環を新たな重要任務と位置づけることが期待される。いずれにしても単独
の既存組織での運営には限界があり,生産者や住民を含んだ地域のネットワーク形成が重
要な課題となる。利害関係者の範囲も,表4のように様々である。抜けがないようにする
ことが大切である。関係者毎の基本情報,抱えこんでいる問題,ニーズ,ニーズノット,
強み,弱み,可能性,想定される事業による対応策を分析しておくことが望ましい。
23
コーディネータ役,アドバイザー役は,合意形成の手法を理解しておくべきである。委
員会,協議会,学習会,シンポジウム,ワークショップ,先進地視察,アンケート,ヒヤ
リング,説明会,パンフレット,広報誌,イベント等の利用が考えられる。ワークショッ
プにも様々なやり方がある 13)。タイムリーに使い分ける必要がある。
表4
バイオマス利活用に係わる利害関係者 14)
行政
住民・農業
役場(農政,清掃,財政,企画部門),議会, 一般家庭,自治会,女性会,
農業委員会,一部事務組合,3セク(農業 消費者団体,畜産農家,耕種
公社他),県機関(農業改良普及センター, 農家,農業団体,NPO
農業試験場)
民間セクター
JA,民間試験機関,コンサ
ルタント,商工会議所,食
品関連業者,流通業者,プ
ラントメーカー,廃掃業者
4.プロジェクトデザインマトリックス
PDCA は,参加型計画立案,進行管理(モニタリング)
,中間・事後評価を繰り返してい
く手法である。ある程度,機が熟したら,アドバイザー等が中心となりプロジェクトデザ
インマトリックス(PDM:Project Design Matrix)をつくることが望まれる。PDM の構造を
表5に示す。PDM の作成に際しては,①地域の「どのような問題」を「どのように解決」
しようとしているのかが明確で,②それについて関係者全員が共通理解を持ち,③バイオ
マス利活用の活動内容に合意していることが前提となる。もっとも,現実にはこれらの条
件を整える間もなく事業が「走り出す」ことも多い。このような状況であっても,関係者
が協力して PDM を作成することを通じて,課題に対する共通理解が深まることが期待でき
る。PDM 作成のメリットは次のとおりである。
・各課題間の関係が明瞭になり事業の全体像が容易に把握できる。
・関係者の位置づけや役割が明瞭になる。
・関係者間のコミュニケーションが促進される。
・あるメンバーが途中で交代しても事業の継続性が担保される。
・事業の透明性が確保され説明責任が果たせる。
・事業を成功に導くための外部条件が明瞭になる。
・目標達成までの道筋と条件が明瞭に整理されているので,事業計画を立てる段階で複数
の代替案を検討していれば,計画の修正も容易になる。
表5
上位目標
PDM の論理
評価指標及びそのデータベース
事業目標
④
外部条件
期待される成果
③
外部条件
②
外部条件
活動
投入
24
①前提条件
〔5〕SWOT 分析
SWOT 分析は,事業の導入あるいは展開を検討するに当って,内部要因を強みと弱みに,
外部要因を機会と脅威に分けて,冷静に事業の方向性を見出すことを目的とする手法であ
る。SWOT は,Strengths(強み),Weaknesses(弱み),Opportunities(機会),Threats(脅威)
の略である。詳細は専門書 15)を参考にして頂きたい。
地域実証研究の対象としている都市近郊農畜産業地域において豚ぷん尿が水処理されて
いる現状をメタン発酵に切り替えることについて SWOT 分析を行った結果を表6に示す 9)。
本地域がメタン発酵導入に優位な点としては,気象条件に恵まれ様々な農作物の生産が可
能であること,農作物の市場との距離が近いこと,若い農業経営者が多くチャレンジ精神
が旺盛であること,専門性を要する技術を使いこなす人材を確保しやすいことなどがあげ
られる。メタン発酵により生成される消化液の農地利用は,主要検討事項である。消化液
利用の弱みを克服し,強みを活かす方向性としては,創意工夫を加えて消化液の品質向上,
運搬・散布に関わるコストの低減を図りつつ,土壌診断技術をベースに堆肥利用と連動さ
せ,適正施肥による環境保全への貢献を含めた消化液利用農作物のブランド化を促進する
ことが有効と考えられる。周到に計画が練られると,実施できる可能性が高い。
表6
SWOT 分析による豚ぷん尿のメタン発酵導入の評価
外 部 要 因
機
強
み
会
脅
威
・放流水質基準の改訂
・家畜排せつ物の地域内余剰
・再生可能エネルギーへの注目
・高収入原料の争奪
・周年栽培可能な畑地の存在
・不安定なエネルギー,農業政策
・第2次,第3次産業との近接
・高レベルの新技術との競合
〔強みを活かす〕
〔縮小〕
内 部 要 因
・若い耕畜専業農家集団 ・農畜産物の品質向上,ブランド化 ・適正規模の再検討
・土壌診断技術保有
・堆肥と消化液の組み合わせ促進
・ネットワークの再構築
・消費者とのつながり
・地域(経済)活性化
・広域の強化
〔弱みを克服〕
〔撤退〕
・高額の建設費負担
弱
み
・各種補助制度の活用
・新技術システムへの転換
・プラント管理能力
・シルバー人材活用,若手人材養成
・搬送・散布労力確保
・低コスト化,省エネ化
25
〔6〕地域バイオマス利活用診断ツール
バイオマス利活用は,地域の自然条件,社会基盤,産業社会構造を色濃く反映したもの
になる。原料と再生資源の種類にもよるが,運搬や地縁・生活圏の問題から,概ね 10~30
㎞以内の空間規模で議論が進むことが多いと思われる。どのような構想や計画の提案につ
いても,現状を正しく認識した上で,効果や正負の影響を早い段階で分析する必要がある。
この作業は,
「地域診断」と呼ばれている 16)。地域診断の目的は,バイオマス利活用が持続
的で健全であることを見極め,何か深刻な問題があれば別の方法の検討に切りかえること
にある。このため,現状の分析,複数案の比較,対象地域の範囲の検討,再資源化(変換)
方法や組合せの検討,再資源化(変換)施設の規模・配置及び機能分担の検討,需要と供
給の量及び時空間バランスの確認などを行う。
再生資源需要量のポテンシャルと実際に利用できる量には大きなギャップがある場合が
多いので,再生資源の需要量予測は,慎重に行う必要がある。また,地域内で強引に循環
を進めるより,広域連携や一部の原料や生成物を廃棄処分する方が望ましい場合があるこ
とを念頭におく必要がある。
「地域バイオマス利活用診断ツール」17)-19)の基本モデルを図5に示す。対象とする空間
レベルは,実際に資源循環が機能する場であると考えられる1~数市町村からなる任意の
空間である。対象とするバイオマスは,家畜糞尿,農作物残さ,資源作物,食品加工・流
通残さ,林・水産廃棄物,生ごみ,生活系廃水汚泥など有機性資源全般である。対象物質・
要素は,窒素(N),リン(P),カリウム(K),炭素(C)及び重量(生)である。
モデルは,「発生・生産」量,「フロー」(移動)量,「バランス」(流入量と流出量の差)
量及び「賦存」量で構成されている。「賦存」量は初期値として与えられるが,定常状態に
なると変化しない量である。
「賦存」量と「バランス」量の和が計算結果として得られる「ス
トック」(現存)量となる。地域の中でストックが生じる部門を「コンパートメント」と称
している。「農地」,「畜産施設」,「森林・林業・製材所」,
「人間の居住空間」,「食品加工・
マーケット」,「再資源化施設」,「水域」,「大気」が基本コンパートメントである。ほとん
どの発生・生産量やフロー量は,原単位と統計データ等によるフレーム値の積として求め
る。
バイオマスエネルギーを効率的に獲得するシステム構築が目指される場合には,エネル
ギー源である炭素とともに収奪される N,P,K が安全かつ有用な形で土壌に戻される方法
が組み込まれていることの確認が必要である。堆肥やメタン発酵消化液(液肥)を農地に
施用する場合には,窒素やリンが過剰に蓄積され環境へ大きな負荷を与えることのないよ
う注意が必要である。基本的には,作物吸収に見合う量を供給することにより,環境負荷
を小さくする。窒素,リン,カリウムの1つが必要量に達した時点で成分を自由に調整で
きない堆肥等の供給は停止し,不足成分は単肥の化学肥料で補うことになる。肥効率は堆
肥等の種類によって大きく異なること,また,連用により変化することを認識しておかな
ければいけない。
東京大学生産技術研究所は,「バイオマスタウン設計・評価支援ツール」を開発している
20)
。地域レベルでより望ましいバイオマス利活用法を発見できる。
26
揮散
副産物
ガス
バイオ燃料
製造施設
糞尿
ガス
副産
物
飼料敷料
化学肥料・堆肥
溶脱
農地
浸透溶脱
家畜
副産
廃棄へ
物
糞尿
食材
ガス
人間
生ごみ
汚泥
生ごみ
浄化槽
生ごみ
し尿
汚泥
ガス
し尿
処理場
処理水
集落排水
ガス
生活排水
公共
下水道
汚泥
水域
ガス
希釈水
処理水
集落・
緑地・
街路樹 流出水
処理水
水道水
雑排水
森林・
林業・
製材所
農地排水
降雨
農地排水
下流域
外水域
廃棄
図5
地域バイオマス利活用診断ツールの基本モデル
27
製材副産物
刈草剪定枝
尿汚水
処理施
設
生ごみ 尿汚水
化学肥料
・堆肥
窒素固定
光合成
降雨
大気
ガス
加工屑
ガス
窒素固定
光合成
かんがい水
資源化
センター
食材
コンポスト
もみ殻
敷料
ガス
上流域
外水域
降雨
ガス
廃棄へ 副産
物
地域内
利用
食品
産業
水
田
浸透溶脱
堆厩肥
畜産物
食材
降雨
化学肥料
・堆肥
水田以外
農地
残渣
木
材 光合成・
窒素固定
かんがい水
かんがい水
ガス
飼料敷料
食
材
原料
コンポスト
畜産食材
ガス
食
材
資源作物用
農地
堆肥
製品
飼料敷料
系外に出荷
河川水
〔7〕社会実験(地域実証研究)
本格的なバイオマス利活用事業の実施前には,地域実証研究などの形で社会実験を行う
ことが望ましい。それにより,「人と技術と制度」をつなぐトレーニングができる。また,
構想・計画案を軌道修正すべき事項が明らかになる。
千葉県香取市では,原料バイオマスの生産(発生)・収集・運搬・貯蔵,変換,再生資源
の貯蔵・運搬,利用を適切に組み合わせた「地域バイオマス利用モデル」の作成と,その
一部を具現化するためにバイオマス変換プラント群(「山田バイオマスプラント」と称する)
を試作・設置しての実証研究が行われた。山田バイオマスプラントへ投入される原料は,
合併により香取市ができる前の旧山田町で発生するバイオマス量の約 1/100 である。
本実証研究は,地域の中で発生(生産)し,山田バイオマスプラントへ持ち込まれる原料
バイオマスを変換プロセス間における中間生成物や駆動エネルギーのやりとりによって,
化石資源を極力使わずに使い尽くし,有用な資材やエネルギーを製造し利用する仕組みづく
り(バイオマス・リファイナリー)12)を基本コンセプトとした。
具体的には,構想作成,推進・運営体制の整備,諸手続の実施,プラントの設計・試作・
設置,運転・性能試験,物質・エネルギー収支の解析,環境への影響評価などを行い,シ
ステムの有効性と課題及びその解決方向がとりまとめられた
21)-25)
。要素技術としては,メ
タン発酵,メタン吸蔵,炭化,水蒸気爆砕,堆肥化,コジェネレーション等を用いている。
例えば,メタン発酵プラントへ乳牛ふん尿や野菜残さなどの原料バイオマスを5t/日投入す
ると,98%以上に精製されたメタンガスが 65Nm3/日できる設計である。精製されたメタン
ガスは,炭化,メタン自動車,コジェネレーションの燃料として使っている。また,メタ
ン発酵消化液は,さまざまな作物に有機液体肥料(液肥)として使われている。メタン発
酵システム部分をとり出すと図6のようになる。メタンガスの精製と貯蔵には,活性炭を
用いた吸着技術が使われている。メタンガスの貯蔵と利用の概要を表7に示す。
(プラント内で利用)
乳牛ふん尿
3~5t/d
電気
野菜残さ
0.5~2t/d
熱
コージェネレーション設備
(加 温用)
60%CH4
+
40%CO2
98%CH 4
CH4
3.5m3/h
120 m 3/d
メタン発酵槽
CH4
メタン精製装置(PSA)
吸着式メタ ン貯蔵装置
炭化装置
CH 4
消化液
液肥として農地で利用
図6
定置式メタン充填設備
地域実証したメタン発酵システム
28
表7
貯蔵タンク
移動式ボンベ
軽トラック
フォークリフト
構内作業車
バイク
メタンガスの貯蔵とメタン自動車での利用
容量
フィルター
圧力
(kgf/cm2)
貯蔵可能量
(m3)
貯蔵能力*
(倍)
20m3
120L(30×4)
50L(25×2)
162L
75.4L(37.7×2)
20L(14+6)
活性炭
活性炭
活性炭
活性炭
6
120
120
9.9
9.9
9.9
500
14.4(0.12×120)
6
8.1
3.77
1
25
120
120
50
50
50
(注):10kgf/cm2(at)=0.98Mpa. ;
* : メタン貯蔵可能量/タンク容量
山田バイオマスプラントのメタン発酵部分は 2005 年7月から運転を開始し,現在に至る
まで連続運転している。プラントの運転は,化学プラントの運転管理の経験がある場長1
名と5~6名のスタッフ(うち,3名はシニア世代)で行っている。一部のスタッフはフ
ォークリフト運転免許,危険物取扱者等の資格を有している。場長の業務は作業の統括,
対外調整,見学者対応等,スタッフの業務は原料の運搬・投入,機材・機器の点検・保守・
清掃,消化液の運搬・散布,運転データの記録等である。消化液の運搬・散布を除いた施
設・設備の運転に関係する業務は,1日あたり約 1.5 人で行われている。
この山田バイオマスプラントを活用し,研究に参画している農事組合法人和郷園からみ
た資源循環がもたらす地域経済活性化への貢献状況は図7に示すように整理されている。
グループ
企業A
グループ
企業B
グループ
企業C
グループ
企業D
(レストラン)
畜産農家
ふん尿
廃食用油
農産物出荷
商品
3~5t/d
インターネット通販
関連
株式会社
農産物出荷
製品出荷
消費者
取引先
農事組合
法人
(生産農家)
堆肥・液肥・
車両燃料
製品出荷
農産物出荷
山田バイオマス
プラント・
リサイクル
センター
残さ
2~10t/d
冷凍加工
センター
パック
センター
カット
センター
残さ
残さ
(注)緑色の背景は農事組合法人からみた地域内の関連組織である。
図7
資源循環と地域経済活性化 23)
29
この地域実証研究の経験を踏まえ,バイオマス利活用の社会実験を行うに当ってのチェ
ックリストの例を以下に示す。社会実験を実際の事業に活かすために参考にして頂きたい。
□上位目標・コンセプト:
□研究に適用する要素技術(組み合せ):主体機関保有の技術+他の提案
□推進体制(組織):
□プロジェクトマネージャー:○○○○(フォローアップまで責任を持てる者)
□現場責任者:○○○○
□アクセル型監査役:○○○○(監事に相当)
□事務局(資金獲得と執行,契約,諸手続,ロジを含む):(研究チーム+事務方)
□社会実験と呼べる適正規模:○t/d(原料または生成物)
□必要な法制度上の手続き:
□研究実施における実務上の課題の整理:
□研究を行う場所(周辺設備を含む):○○○○(△△m2)
□必要な設備・装置の調達法:
□原料の調達法:
□必要なエネルギーの調達法:
□生成エネルギーの利用法:
□生成マテリアルの利用または処分法:
□現場モニタリング法:
□物質・エネルギーフロー及び収支 (設計):
□装置群の規模・配置計画:
□ライフサイクルコスト(試算):
□実験計画(期間,内容,体制,資金):
□安全衛生管理:
□達成目標とその評価指標:
□進捗度評価指標:
□ビジネスモデル:
□社会実験成立性の事前評価 (必要に応じ環境アセスメント):
□うまくいかなかった場合の撤退の基準:
□プロジェクト立ち上げの広報(プレスリリース):
30
〔8〕変換施設の規模と地域の空間的なまとまり
バイオマス利活用事業を実施する場合,変換施設の規模・位置(配置),対象地域の範囲
を決める必要がある。市町村が主導的な役割を果たす場合は,行政界が範囲となる場合が
多い。志や利害を共有するグループが主体となる場合は,空間的なまとまりはやや希薄に
なるが,実質的な組織連携が進みやすい。
ここでは,〔7〕で紹介した地域実証研究に参画した農事組合法人和郷園(以下,
「W 法
人」と記す)を仮想例に,バイオマス利活用を「牛ふん尿のメタン発酵及び生成される消
化液の農地利用」に単純化して解析した例を紹介する。W 法人の約 90 戸(2005 年時点)の
組合員農家は,全て専業農家である。畜産農家は,1戸のみである。牛ふん尿は堆肥化さ
れて,組合員農家で使われている。実証研究が始まってからは,その一部がメタン発酵の
原料に回り,消化液が生成されている。
W 法人の組合員農家が W 法人としての商品(野菜等)を栽培している畑や施設園芸の総
面積は 134.3ha,筆数は 810 である。メタン発酵を行う山田バイオマスプラントを基点とす
る圃場分布は図8のとおりで,累計圃場数(筆)と累計面積及び距離の関係は図9のよう
に要約される。地図の表示は,2005 年時点のものである。2006 年 3 月 27 日に佐原市,小
見川町,山田町,栗源町の 1 市 3 町が合併して香取市が誕生している。
図8
山田バイオマスプラントを起点とする W 法人組合員圃場の位置 20)
31
140
35
累計面積
距離
30
100
25
80
20
60
15
40
10
20
5
0
0
200
400
600
累計圃場数(筆)
図9
800
最遠圃場までの距離(km)
累計面積(ha)
120
0
1000
W 法人の圃場分布
ここで,山田バイオマスプラントへ牛ふん尿が持ち込まれ,消化液が生成され,それを農
地で利用することを考える。牛ふん尿の排出量は一頭あたり 50kgN/年とし,この窒素がそ
のまま消化液へ移行するとする。また,消化液は,山田バイオマスプラントから近い圃場
(端数が出ない範囲内で,字単位で計算)から利用されるとする。図9の情報から,牛の
飼養頭数分に見合う農地面積算出,必要な施用農地面積に見合う牛の頭数算出,単位面積
当りの消化液施用可能量算出ができる。これら3つの観点から行った解析の結果は図 10 の
300
30
250
25
200
20
150
15
100
10
50
5
0
0
150
( km )
( kg N/h a )
(頭)
とおりである。
牛の頭数(頭)
施用量(kgN/ha)
最も遠い農地までの距離(km)
0
25
50
75
100
125
農地面積(ha )
図 10 消化液の利用に関する解析
図 10 の〔■〕は,山田バイオマスプラントを基点とした累計農地面積と最も遠い農地ま
での距離を表している。図 10 の〔 〕は,消化液の施用量を 100kg/ha とした場合について
の牛の頭数と累計農地面積の関係である。その農地面積と最も遠い農地までの距離が連動
している。100 頭の牛ふん尿に含まれる窒素量を 50tN/年とし,施肥設計を 100kgN/ha とす
ると,消化液を施用する農地面積は 50ha になる。山田バイオマスプラントを基点とすると,
50ha の農地の筆数は 249,最も遠い農地までの距離は 6.4km となる。牛の頭数が倍の 200
頭になると,農地面積は 100ha,筆数は 606,最も遠い農地までの距離は 15.6km となる。図
32
10 の〔▲〕は,牛の頭数を 200 頭にした場合について,消化液の施用量(kgN/ha)と累計
農地面積の関係を表している。これらから,畜産経営と農地面積の規模のあるべきバラン
スが理解できる。W 法人の例では,100~200 頭規模の畜産農家が1戸あれば,約 90 戸の農
家の需要量とオーダー的にバランスすると言える。需要が時期的に集中するであろうこと,
筆数が多いこと,山田バイオマスプラントから距離の遠い圃場も多く,運搬に時間とコス
トがかかり環境負荷が高まる場合があることに留意する必要がある。なお,消化液の運搬・
散布計画 26)27)については,念密な検討を行う必要がある。
策定したバイオマス活用推進計画を一気に実現することは困難である。大規模な事業計
画の実施には長い時間と膨大な初期投資を要する。農畜産業型バイオマスタウンにおいて
は,農地利用の再生資源(堆肥,液肥,土壌改良材など)に確実かつ安定した需要がない
とリスクが大きい。構想策定からハード事業の完成までに5年以上たつと,地域の産業構
造や担い手の変化や技術革新が起こる。バイオマスタウンとしての空間的まとまり・広が
りや組織連携の方法は,バイオマスの生産(発生)と再生資源の需要の質・量及び時・空
間分布に左右されるため,事業の進展に伴い柔軟に変化させられる計画づくりが望まれる。
当初は,W 法人のようなグループによる取り組みを先行させ,徐々に空間的なまとまりを
広げ,広がりすぎたら再編していくという考え方もある。
変換施設の規模や位置は,原料及び再生資源の運搬に必要なライフサイクルでのコスト,
エネルギーを計算に入れて,決めることが大切である。
33
〔9〕評価指標の設定と進捗度管理
バイオマス利活用を公的資金を用いて推進する場合には,説明責任を果たして社会的合
意を得ること,施策の進捗度,達成度を定量的に評価することが求められる。施策の実施
は,物質収支,エネルギー収支,環境への影響,安全性,経済性,運営組織からみた妥当
性,地域の社会・経済への波及効果などから総合的に判断される。評価に際しては,評価
目的,比較対象及び手順を明確にしておく必要がある。
バイオマス利活用に関わる評価指標には,少なくとも次の条件が含まれていることが望
ましい。
① 評価目的に適合し,わかりやすい。
② 持続性が検討できる。
③ ライフサイクルコストが比較できる。
④ 常識的な信頼度をもつデータが入手できる。
⑤ 外部経済促進や外部不経済解消への貢献が評価できる。
持続性は根本的な評価指標である。経済性は,建設費,減価償却費,維持管理費を全て
含むライフサイクルコストで評価すべきである。環境負荷回収コストを加えたフルコスト
で評価すべきという考え方も出てきている。地域での負担という観点からは,国や県から
の助成金を差し引いて計算する場合がある。評価に際しては,バイオマス利活用システム
の境界設定の妥当性が常に問題となる。地域の総意になり得る努力目標が数値で示される
ことが重要である。
価値観に関わり定量化しづらいが,地域の景観形成・イメージアップ,地域への愛着・
誇り・自信の醸成,自然愛・人間愛の醸成,活動への参画による達成感・満足感の実感な
ど,物量で表現される以外の指標も大切にしたい。バイオマス利活用により,公害や感染
症の発生を未然に防止し,健康予防に役立つとすれば,それは,人の生命に係わる視点と
なる。
バイオマス利活用の目的は地域によって異なるため,表8に示すような各々に適合した
施策による効果が把握できる指標とその算出方法を設定する必要がある。まずは,表8を
参考にしつつ,自らの地域のバイオマス利活用に適する指標とその内容を考えていこう。
指標の選択と重み付けは地域の主体的な取組みを促進する観点から,毎年度点検において
柔軟に改善を図るべきである。達成目標は,技術革新,資金調達,国レベルの制度・規制
の動向を踏まえた設定となり,外部要因,前提条件を付記することにより目標に対する実
績の評価に説明性,納得性が高まる。この点で,〔4〕の4.で紹介した PDM は役立つ。
施策評価の中で,何を外部経済効果として扱うかは,議論の余地が大きいと考えられる。
表8では最下欄に外部経済効果の内容を例示したが,それより上の欄の内容も外部経済効
果として扱うべき場合もある。バイオマス利活用の推進による地域経済の発展を考える場
合には,バイオマス利活用施設における経営だけでなくバイオマス利活用システム全体の
各工程で,地域住民・企業のかかわり,キャッシュフロー,地域としての収入増(支出減)
を評価していく必要がある。環境保全の側面では,現状の地域内活動が法律違反をしてい
なくても環境に大きな負荷を与えるものが,バイオマス利活用を通して改善されるならば
34
積極的に評価していくべきと考えられる。農山漁村活性化プロジェクト支援交付金費用対
効果算定要領 28)には,参考となる方法が示されている。
表8
地域バイオマス利活用の施策評価指標と算出方法 9)
評価の視点(**)
指 標
内 容
算出の方法等
①
②
バイオマス利用
率
市町村バイオマス活用推進計画の直接的なモニタ
地域で発生(生産)する原料バイオマス毎の賦存
リング.最終廃棄処分の削減量の計測.ツール(*)
量に対する利用率(重量,C,N,P)
の活用.
A
化石資源代替量
バイオマス由来のマテリアル・エネルギー利用に 地域内での利用量を積算し,代替化石資源量を熱
よる化石資源使用の削減量
量換算.ツール(*)の活用.
A
地産地消率
新資源創出量
GHG 排出削減量
水質負荷削減量
地域経済効果
外部経済効果
(*)
③
④
B
地域で発生(生産)する原料バイオマスを変換し 上記2指標を当該地域に限定して適用.ツール
の活用.
て地域内で利用する率
C
食料生産と両立できる方法での資源作物等の生産 ナタネ,ススキ,早生樹,微細藻類などの栽培・培
によるマテリアル及びエネルギーの創出量
養により産み出される利用可能な資源量を算出.
C
A
LCA.バイオマス由来マテリアル利用,省エネ,
節エネ,吸収・貯留源の増進による効果もカウン
ト.
C
A
地域内での窒素収支を比較.ツール(*)の活用.
B
地域産業連関表による分析.イベント開催による
経済効果算出方法を参考にする.
A
B
仮想評価法,経済環境統合勘定,デルファイ法な
ど.定量化が困難な項目もリストアップする.外
部不経済解消効果を含める.
A
B
新たなバイオマス利活用の取組みによる削減量
バイオマス変換施設・土地からの地表排水及び地
下排水の水質負荷量
当該施策により地域にもたらされる収入,雇用の
維持・創出,新産業の創出,業務内容の変更
コミュニティー活性化による地域づくり,農林業
の発展,6次産業化への貢献,耕作放棄地対策,
鳥獣害防止対策,健康,食育,福祉などとの相乗
効果
A
B
B
(*)地域バイオマス利活用診断ツール,バイオマスタウン設計・評価支援ツール。第 150 回農林交流センターワークショップ
(2010 年 10 月)でβ版が公開されている。
(**)①:地域活性化,②:循環型社会形成,③:温暖化対策,④:新産業創出。視点の重みは,A>B>C の順。
表8の中には,地域バイオマス利活用診断ツール,LCA,仮想評価法等の活用が指標の
算出の方法として記されている。これらを使いこなすためには相当の努力が必要である。
専門家に委ねる方法もあるが,PDCA は長期戦になるので,自分たちで使いこなせない算出
方法は採用しない方がよい。表8に示す指標と同じ内容を手計算ベースで算出することは
可能である。大切なことは,指標,その算出式,算出を行うためのモニタリングと記録を
同時に考えていくことである。
取組効果の検証の作業手段と方法としては,以下を推奨する。
①現状(基準年次)の状態の認識
取組効果を評価するに当っては,比較対象となる基準が必要である。通常は,計画策定
時において「現状」とした年次でのバイオマス利活用の状態が相当する。これは,変るも
のではないが認識の確認を行う。また,新たな施策(取組内容)を評価するに当って比較
できる状態の情報が無い場合は,それを推定または仮定する。原料バイオマス毎に現状で
の賦存量,仕向け量(利用量)を推定しておくことは必須である。
②取組内容,目標,スケジュール,評価指標(式)及び算出方法の確認
これらは,計画策定時に定められておくべきもので,それぞれについて確認を行う。情
勢の変化やよりよい方法が見出せたら,あるいは前提条件,外部要因が変化したら,改訂
を行う。取組結果をよく見せるために修正は行うべきでない。
③取組内容の状態確認
それぞれの取組内容が,策定した計画において,表9の A(建設),B(運営),C(廃棄)
のどの時間ステージにあるかを①~⑤の工程別に整理する。表9は,全ての建設が終わり
35
運営中の例で,最下欄に担い手の情報を入れている。担い手が持続的にビジネスとしての
取組みを続けられるかどうかの確認は重要である。
表9
A 建設
取組状況の確認(例)
①発生 or 生産 ②収集・搬送 ③変換・貯蔵
④搬送
⑤利用
備考
済(2010)
済(2010)
済(2010) 済(2010) 済(2010) P,Q 社
B 運営
進行中
C 廃棄
B の担い手 R,S,T 団体
進行中
(2020?)
U 株式会社
進行中
(2025?)
U 株式会社
進行中
進行中
最下欄
(2020?)
予定
U 株式会社 Y 生産法人
④物質,エネルギーフローの算出
バイオマス利活用による物質・エネルギーフローの算出は,様々な評価のベースとなる
数値であり,必須である。作業は大変であるが,作業を通して,説明責任を果たしたり,
節約の方法を見出したり,環境保全効果の評価につなげたり,人・組織の新たな連携をま
ちづくりに活かすなどのインセンティブを持ちたい。
⑤キャシュフローの算出
経済性はライフサイクルで,表9の①~⑤の担い手毎に,コスト(支出)と収入を整理
する。これは,地域経済への影響を明らかにするために必要な作業である。補助金,交付
金等の税金の投入は明記する。
⑥取組効果の計算方法
検証の手順による具体的な計算は,次の2項目となる。
1)進捗度の計算(スケジュール,予算・決算額,原料供給量,変換量,需要量,廃棄量)
2)取組効果の計算(評価指標に対して)
指標の例として,「バイオマスの地産地消率」をとりあげる。図 11 において,ある原料
からある製品を製造して利用する場合,原料が地域内のもので,製品が地域内で消費され
る場合を地産地消とすると,
(Xi+Xo)α=Yi+Yo という連続条件のもと,地産地消率は,
以下のように算出される。但し,αは変換率(単位換算係数を含む)である。
地産地消率=Yi/(Xi+Xo)α
(投入原料)
Xi 地域内
Xo 地域外
<変換> (製品=エネルギー,資材)
α
地域内
Yi
地域外
Yo
図 11 バイオマスの地産地消率を説明するためのフロー
この例では,④の物質,エネルギーフローの算出が重要になる。地産地消率の目標とし
ては,運営段階での絶対値あるいは現状からの上昇率などが設定されていると思われるの
で,その計算を行うことになる。
36
〔10〕農業からみた評価指標
バイオマス利活用は,水域や大気の環境へ正・負の影響を及ぼす
29)-36)
。水域への負荷と
大気への負荷はトレードオフになる場合が多い。環境への影響評価にあたっては,何と何
を比較するかという設定と,評価の範囲(時・空間及び項目)の設定が重要である。N や P
は,作物生産に必要な物質でもあり,環境汚染物質でもある。水域への排出は地表排水と
地下排水を,大気への排出は温室効果ガスと NH3 の揮散を考慮する必要がある。作物生産
において化学肥料を堆肥,メタン発酵消化液(液肥),土壌改良材に代えても環境負荷が小
さくなるということはない。負荷削減のためには,土壌モニタリングに基づく施肥設計,
肥効成分の作物への吸収率向上対策が必要である。堆肥や液肥などのバイオマス再生資源
は化学肥料に比べて相対的に重く嵩が大きいため,運搬や農地への散布にコスト,エネル
ギー,時間がかかることを考慮しておく必要がある。
農業を軸として考えた場合の評価指標としては,単位面積当りの堆肥・液肥の利用によ
る化学肥料代替度,土壌の適正肥沃度,有機性廃棄物の最終処分量の減少度及び再資源化
率の増加度,農地・畜産施設から水域への流出負荷量の減少度及び温室効果ガス発生量の
減少度,耕種農業への投入化石資源の減少度,地域内食料・飼料自給率の上昇度などが考
えられる。
農業において,どういう状態が持続的と言えるか(どういう状態が持続的でないと言え
るか)を考えると,「百年,千年の単位で,必要に応じて一定の作物ローテーションのもと
で,一定の品質を保った収量を確保し続けることができること」が重要と言える
37)
。それ
には,生産環境(土壌)の維持,環境への悪影響が小さいこと(NO3-N 溶脱濃度が 10mg/L
,農業におけるエ
以下,吸収した CO2,N2,から CH4,N2O,NH3 を極力出さないこと等)
ネルギーの「生産/消費」比が大きいこと(化石エネルギー消費量が小さいこと),水を含
む生産資材が確保されること,経済性の確保が必要となる。
農業・農地が持続的であるためには,土壌の物理・化学・生物性が適切であり続ける必
要がある。これらは土壌診断に委ねられる。持続性が保たれるためには,地域の自然・土
壌条件,栽培作物の種類や連作状況に応じて投入する農業生産資材(堆肥,液肥,土壌改
良材,農薬など)の質及び量が調整される必要がある。再生資源を利用する農業生産が持
続的であるためには,所定の作物収量と収入を確保しつつ,化石エネルギーの消費と環境
負荷をできるだけ抑制する農法が必要で,一部は農業者の意志によって目指され,また社
会的にも要請されている。但し,現時点で,どういう状態を維持することが持続的なのか
という明確な基準はない。
化学肥料の代わりに堆肥や液肥を利用するにあたって注意すべきことは,「肥効率」につ
いての理解である。例えば,同じN含有量でも化学肥料と堆肥では作物への吸収度が異な
る。堆肥中のNは土壌に蓄積され,徐々に作物に吸収される形態に変化していく。このた
め,堆肥を連用していくと肥効率が上昇する。化学肥料の一部を堆肥等に代える場合には,
土壌中の可給態肥料成分量が適正範囲になるように,毎年,施肥設計を見直していく必要
がある。液肥施用にあたっては,温室効果ガスやアンモニアの揮散をおさえる営農上の対
策が必要である。また,重金属や病原菌の問題に留意する必要がある。
37
資源作物の栽培にあたっては,高投入高収量と低投入低収量方式の選択,前者の場合は
水や肥料をたくさん使うことになるので環境負荷削減対策が必要になる。また,食料との
競合は起こしてはいけない。何より,エネルギーの「生産/消費」比が大きいこと(化石
エネルギー消費量が小さいこと)が不可欠である。この場合,「面積・年当たりの」という
条件がつく。
慣行農業(通常の方法で営まれている農業)にバイオマス利活用を取り込んだ場合に,
確認すべき事項は次のように整理される。
① 複数年を単位とした連作栽培体系で,農地から基準収量が得られ続けられる営農になっ
ているか。
② 作物栽培前後で,土壌の理化学性(物理・化学・生物学的特性)が大きく変化していな
いか。
③ バイオマス再生資源である堆肥や液肥の連用によって変化する肥効率を考慮した肥効成
分(N,P,K)量が都道府県が定める施肥基準量に見合っているか。
④ 有害な重金属や病原菌が土壌に一定量以上残留していないか。
農地を持続的に利用していくには,各肥料成分の可給態量や土壌の理化学性,汚染物質
の排出量など個別の項目に関しての基準値を守る必要があるが,それぞれの項目に注意を
払いながら各作業をおこなうことは農家にとって大きな負担であり,さらに,基準値の策
定が困難な項目も多い。そこで,現実的には,各都道府県が設定している,「施肥基準」や
「栽培指針」を用いて持続性を維持する方法が有効であると考えられる。施肥基準とは,
土壌の養分環境が基準値の範囲内にあるような圃場で,対象となる作物が正常に生育して
正当な収量を上げるのに必要な養分施用量であり,栽培指針とは,そのときの栽培方法で
ある。近年は,環境負荷低減のために,できるだけ少ない施肥で十分な収量を実現するた
めの試験研究も行なわれ,新たな施肥基準が提案されている現段階では,これらの施肥基
準を守ることにより,可給態量だけでなく,環境負荷に関しても「適正範囲」に収まって
いると考えるのが妥当である。さらに,一歩踏み込むと,GAP(Good Agriculture Practice)
38)
に基づき,土壌モニタリングを踏まえた施肥設計等を行うと,生産者と消費者を安全・安
心でつなげる。
38
〔11〕トータルコストアセスメント
メタン発酵を軸とするバイオマス利活用の実証研究
21)24)
を発展させた事業を想定して,
トータルコストアセスメント(TCA)がワークショップ形式で開催された 39)。TCA は,バ
イオマス利活用の全プロセス,関係者及び影響を受ける社会を総合的に捉えて,どこでど
のようなコストと便益が生じるかを確率の考え方も用いて算出する方法である。このアセ
スメントの中には,変換プラントの建設費,プラントの減価償却費,原料や製品の価格,
様々なリスクなどが幅をもった値または確率として入力されており,プラントの運転年数
と収益の関係が理解できるようになっている。このような分析は,ビジネスの成立性を検
討する上で重要である。
ワークショップでは,物質・エネルギー収支,キャッシュフロー以外に以下の情報が求
められた。設問には答えにくいものも含まれるが,数値に幅を持たせるとともに,経験・
感覚的にもっともらしい数値を議論を踏まえながら導き出すという形がとられた。
① 事業実施に伴うリスクの種類と発生確率
② 主体(プラント経営者,耕種農家,畜産農家,コミュニティー)別にみた事業の展望
③ 環境負荷物質排出に伴う社会コスト
情報に基づき,平均,最小,推定確率毎(例えば,5,25,75,95%)の推定値が次の
項目について図 12 のような形式で示された。
① バイオマスプラントの正味現在価値(NPV)の経年変化
② バイオマスプラント建設にかかわる補助率の影響
③ バイオマスプラント運転 20 年後における主体毎の NPV
これらは,施策実施の判断材料になる。また,地域産業やコミュニティーへのプラスの
影響は外部経済効果と解せるものも含まれる。ワークショップの企画・運営と解析には専
門的知識を有するが,試みる価値がある。
図 12
TCA の解析結果(イメージ)
39
2030
2025
2020
2015
0
2010
収
益
Min
5%
25%
50%
Mean
75%
95%
Max
〔12〕ライフサイクル的評価
バイオマス利活用の施策の評価は,図 13 に示すような原料バイオマスの発生(生産)・
収集・搬送・貯蔵,資材やエネルギーへの変換,変換により生成する資材やエネルギーの
貯蔵,利用場所への搬送及び利用,廃棄の全工程を対象に,コスト,化石エネルギー消費
量,環境負荷量をライフサイクル的に扱うことが望まれる 40)。
バイオマス利活用を積極的に進めることによるライフサイクルでのコスト(LCC:Life
Cycle Cost)と化石エネルギー消費量(LCFEC:Life Cycle Fossil Energy Consumption)の削
減のイメージを図 14 に示す。比較対象は,それぞれの地域でのバイオマス利活用の現状,
事業が始まっている地域においては事業開始前の状況である。例えば,バイオマス利活用
システム全体の総合耐用年数△t の期間において,現状の方法による LCC,LCFEC(L)に
比べて,これらが△L 削減(△L/L>0.2)できるシナリオ(モデル)の提示が目標とされる。
図 14 において,「現状」のトレンドはわかりやすくするために直線で表わしている。t
0で
計画が現状を上回るのは,施設建設の初期投資による。現状の変換施設を新しい変換施設
にする場合には,前者の廃棄も含まれる。その後,計画が現状を下回るのは新技術により
維持管理時のコスト及び化石エネルギー消費量が低減されるためである。また,△t1 と△t2
期間と比べると,さらなる新技術の開発により△L2>△L1×2.0 となる。
バイオマス利活用システムの LCC と LCFEC の計算に当っては,まず,前提条件とシス
テム境界の設定を行う必要がある。コストやエネルギー消費は,「変換」に係る部分が中心
となるが,「搬送」に係わる部分も大きい。バイオマス変換プラントの性能,総合耐用年数
が大きな影響を及ぼす。許容される環境負荷量の上限や再生資源の利用を,現行法規の枠
内で考えるか,あるべき環境像,資源循環像をベースに考えるかでも計算値が異なってく
る。マンパワーの計算法,求められる再生資源の製造効率(原料からの回収率や時間),変
換プラントの規模・配置の影響も大きい。対象地域外とのモノのやりとりも多い。計算方
法は確立されていないので,全体像を見失わないようにしつつ一定の取捨選択が必要であ
る。
初期投資+廃棄
初期投資+廃棄
▲投入バイオエネルギー
(直接)+(間接=資材)
▲投入バイオエネルギー
▲投入バイオエネルギー
△投入化石エネルギー
△投入化石エネルギー
△投入化石エネルギー
(直接)+(間接=資材)
(直接)+(間接=資材)
(直接)+(間接=資材)
<原料バイオマスの生産(発生)>
<収集・搬送・貯蔵>
<バイオマス変換>
図 13 バイオマス利活用の全体構成 40)
40
外部利用
初期投資(基盤を含む)+廃棄
生成物
LCC または LCFEC
△ L2
「現状」
△ L/L>0.2が目標
更新
△ L1
「計画」
L1
耐用年数
耐用年数
△ t1
△ t2
t0
t2
t1
(year)
図 14 LCC と LCFEC 削減のイメージ 40)
千葉県香取市を仮想の対象地域とし,5つのバイオマス利活用のシナリオを設定して
LCC と LCFEC を試算した結果の例を図 15,図 16 に示す。解析条件の妥当性やデータの信
頼度を吟味していくことが重要である。この評価法と解析例の詳細は,本手引き書の姉妹
編「市町村のためのバイオマス活用計画の評価ガイド」
(農村工学研究所,2012 年3月)41)
及び農工研技報 42)43)をご覧頂きたい。この資料では,図 15,図 16 を精査し,担当者が自ら
計算できる説明をしている。
原料バイオマスの生産(発生)
800,000
600,000
400,000
200,000
0
収集・輸送・貯蔵
実態
0
バイオマス変換
200,000
生成物の輸送・貯蔵
400,000
600,000
生成物の利用
800,000
乳牛ふん尿
の堆肥化
豚ふん尿の浄化
処理
生ゴミ・生活廃水汚泥,食品
残さの焼却
収入(千円/年)
ランニングコスト(千円/年)
規格外甘しょ鋤込み・食品
残さの焼却
休耕田の維持
(外部経済効果)水質保全
原料バイオマスの生産(発生)
(外部経済効果)雇用の創出
収集・輸送・貯蔵
バイオマス変換
生成物の輸送・貯蔵
生成物の利用
(外部経済効果)CO2排出量削減
800,000
600,000
400,000
200,000
0
計画
0
200,000
400,000
600,000
乳牛ふん尿のメタン発酵
豚ふん尿のメタン
発酵
収入(千円/年)
生ごみ・生活廃水汚泥・食
品残さのメタン発酵
ランニングコスト(千円/年)
規格外甘しょ・食品残さの
飼料化
休耕田での多収量米
栽培+エタノール生成
図 15 ライフサイクルでの収入と支出
41
800,000
原料バイオマスの生産(発生)
80,000
60,000
40,000
20,000
収集・輸送・貯蔵
実態
0
バイオマス変換
0
生成物の輸送・貯蔵
20,000
40,000
生成物の利用
60,000
80,000
乳牛ふん尿
の堆肥化
豚ふん尿の浄化
処理
エネルギー生産(GJ/年)
エネルギー消費(GJ/年)
生ゴミ・生活廃水汚泥,
食品残さの焼却
規格外甘しょ鋤込み・食品
残さの焼却
休耕田の維持
原料バイオマスの生産(発生)
80,000
60,000
40,000
20,000
0
収集・輸送・貯蔵
計画
バイオマス変換
0
20,000
生成物の輸送・貯蔵
40,000
生成物の利用
60,000
乳牛ふん尿の
メタン発酵
豚ふん尿のメタン
発酵
エネルギー生産(GJ/年)
生ごみ・生活廃水汚泥・食
品残さのメタン発酵
エネルギー消費(GJ/年)
規格外甘しょ・食品残さの
飼料化
休耕田での多収量米
栽培+エタノール生成
図 16 ライフサイクルでのエネルギー生産とエネルギー消費
42
80,000
〔13〕環境への影響評価
メタン発酵消化液を利活用する技術
44)
の開発と普及は農村地域のバイオマス利活用にお
ける大きな命題である。全国各地で消化液の利活用の取組みが進んできている。ここでは,
メタン発酵消化液の液肥利用過程における温室効果ガス排出量を例に,環境への影響評価
について述べる 24),32)-36)。
メタン発酵において,原料に含まれる肥料成分の窒素(N),リン(P),カリウム(K)は,
ほぼ全量が消化液に移行するので,消化液には多くの肥料成分が含まれる。また,消化液
に含まれる窒素の約半分は速効性であるため,化学肥料を代替できる液肥として利用でき
る。しかし,消化液を施用するための農地がメタン発酵プラント周辺に十分になく,液肥
利用が困難な場合には,消化液を排水処理し,浄化した水を河川等に放流することになる。
排水処理を行う場合,多大なコストとエネルギーを要し,それに伴い温室効果ガス(GHG)
が排出される。一方,液肥利用においても,消化液の輸送・散布車両の燃料消費に伴い温
室効果ガスが発生する。また,肥料を施用した農地土壌からは温室効果ガスである亜酸化
窒素(N2O)が発生するが,消化液を散布した圃場の土壌からも同様に亜酸化窒素の発生が
ある。そこで,液肥利用が温室効果ガス排出に及ぼす影響を評価するために,消化液の全
量を液肥利用しているメタン発酵プラントである山田バイオマスプラントを対象として,
消化液の液肥利用に伴う温室効果ガス排出量を算定し,既往の文献より求めた排水処理に
伴う温室効果ガス排出量との比較を行った(図 17)。
山田バイオマスプラントで生成される年間約 1,500t の消化液は,ほぼ全量が液肥利用さ
れて農家圃場で利用されている。消化液はバキューム車(タンク容量 3.7m3)で圃場に運ば
れ,液肥散布車(タンク容量 1.6m3)で散布される。液肥散布車の輸送は2t トラックで行
われる。
消化液の液肥利用に伴う温室効果ガス排出量は,山田バイオマスプラントでの運転実績
をもとに算定した。具体的には,温室効果ガス排出量は,輸送・散布車両の燃料消費量,
プラントから圃場までの距離,輸送に用いた軽油の温室効果ガス排出係数より求めた。消
化液施用圃場からの亜酸化窒素発生量は,箇所の圃場での実測値の平均値とした。
2008年の山田バイオマスプラントにおける消化液の輸送・散布過程と消化液散布圃場か
らの温室効果ガス排出量を図18に示す。消化液散布圃場までの平均輸送距離は12kmであっ
た。液肥利用に伴う温室効果ガスの排出量のうち,輸送,散布,圃場での亜酸化窒素の発
生の割合は,それぞれ,62%,20%,18%であり,液肥利用に伴う温室効果ガスの排出量
の中では輸送車両からの排出の割合が高かった。排出量削減のためには,近傍圃場への散
布量を増やし,圃場までの輸送距離を短縮することが有効であり,輸送距離を5kmまで短
縮できた場合,排出量は消化液1tあたり約5.2 kg-CO2eqまで削減できる。さらに,輸送距離
を1km短縮するごとに,消化液1tあたり約0.42 kg-CO2eq削減できる(図19)。
文献値から算定された消化液を排水処理した場合の温室効果ガス排出量は消化液1tあた
り約18 kg-CO2eqであり,液肥利用を行った場合に比べて排出量が多かった。
以上より,消化液の液肥利用は,メタン発酵プラントの近隣圃場への散布を行うことが
できれば,肥料成分の有効利用や運転コストの削減といったメリットに加えて,温室効果
43
ガス排出量を大幅に削減できることが示された。しかし,四季を通してプラントの近くに
散布圃場を確保することは簡単ではないため,プラント側と近隣の農家,地元の自治体等
の関係者が密に連携することが重要となる。
液肥利用プロセスからの温室効果ガスの排出
どの過程での排出割合が高い?
N2O
消化液の貯留
消化液・液肥散布機
の輸送
土壌からの亜酸
化窒素の発生
液肥散布車による
消化液の散布
作物の栽培
どちらの排出量が多い?
排水処理プロセスからの温室効果ガスの排出
消化液の固液分離
消化液の貯留
河川等へ放流
排水処理
図 17 消化液の液肥利用プロセスと排水処理プロセス
NO
輸送過程での排出割合が高い.
2
液
N2N
O2O
バ
バキューム車
由来の排出
0
液肥散布車
由来の排出
2t トラック(散布車の輸
送用)由来の排出
2
4
6
8
消化液施用圃場
からの亜酸化
窒素発生
10
温室効果ガス排出量(kg-CO2eq./消化液 1t)
図 18 液肥利用プロセスにおける温室効果ガス排出量(山田バイオマスプラント)
温室効果ガス排出量(kg-CO2eq./消化液 1t)
排出量は,散布圃場ま
での距離が約 30km 以
内であれば,液肥利用
の方が少ない.
20
排水処理を行った
場合の排出量
15
10
輸送距離を 1km 短縮す
るごとに,消化液 1t あ
たり約 0.42 kg-CO2eq
削減できる.
5
0
0
10
20
30
40
圃場までの輸送距離(km)
図 19 メタン発酵プラントから消化液散布圃場までの距離と温室効果ガス排出量
44
〔14〕外部経済効果の評価
1.外部経済効果の位置づけ
農林水産関係用語集によると,「ある経済主体の経済活動が,市場を介さずに,他の経済
主体の経済活動に及ぼす影響を外部効果といい,それがよい効果である場合は外部経済と
いい,悪い効果である場合は外部不経済と呼ぶ」とある。バイオマス利活用の評価項目の
中に外部経済効果を含めるべきかどうか,そもそも何を外部経済として認識するかについ
ては議論のあるところである。これまでに,環境・経済統合勘定などを含め,様々な方法で
評価が行われてきた 29),45)-48)。ここでは,産業活動に伴って生じるキャッシュフローでは直
接的に表現できない環境保全,にぎわいの創出,参画感や愛着心の向上,まちの好感度ア
ップなどの効果を外部経済と捉える。外部経済効果の評価方法や評価結果の用い方につい
ての議論を総合的に解釈すると,地域(経済)活性化や環境の改善に対する効果を把握す
るという点での価値は大きいと言える。一方,バイオマス利活用施設の経営などバイオマ
ス利活用システムを構成する個々の主体の経営という観点からは,外部経済効果を利益と
してカウントするのは危険と言える。
バイオマス利活用がもたらす潜在的な外部経済効果の発掘・評価は,図3の*印部分に
相当する。外部経済の発揮や外部不経済の解消の効果を適切に評価することは,ステーク
ホールダーの意欲を高め,バイオマス利活用推進の駆動力になる。また,市町村が主体的
に計画策定を行い,地域資源の利用における全体最適を図るという意義の正当化につなが
ると考えられる。
地域活性化は,外部経済の大きな要素である。ブレーンストーミング,各種イベントで
発掘されたアイデア及びこれまでの取組みによる知見を入れ込んだバイオマス利活用によ
る地域活性化のための構図を図 20 のように作成した 9)。様々な活動への多様な主体の参画
が要点と言える。
伝統技術
の継承
新技術
の導入
民間の参入
(CSRを含む)
地域産業
の発展
雇用拡大
定住人口の確保
地産地消率の
向上(食,資材,
エネルギー)
地域経済
への貢献
環境保全
地域ブランドの
育成(モノ,プラ
イド,愛着)
コミュニティー
促進(学ぶ,つ
ながる,つくり
出す)
健康,教育,福
祉などとのコラボ
(サブストリームであるバイオ
マス利活用を起爆剤にする)
戦略会議
(企画・運営・評価)
行財政
外部との
交流
地域資源
(人材,機能,資材,生産基盤,社会資本)
図 20 バイオマス利活用による地域活性化の図式 9)
45
地域活性化(
にぎわい・
地域力)
(
理念)の確立
組み入れた地域ビジョン
バイオマス利活用を
バイオマスタウン構想
(市町村バイオマス利
活用推進計画)の策定
新しい公共
の力の発揮
2.外部経済効果の説明例と効用
外部経済効果説明する例を以下に示す 9)。
(1)社会コストの軽減効果
各種の活動が法令遵守で行われても環境へ負荷を与えている場合が多い。例えば,水質
環境の保全において事業者に課せられる排水基準と公共用水域に設定されている環境基準
の濃度には大きな開きがある。その間(はざま)の水質浄化は公的機関が担うことになり
コストが生じる。水処理が消化液利用に置き換わる,焼却処分がエネルギー生産に置き換
わるとなれば,公的負担(社会コスト)を抑えられる。
バイオマス利活用を通しての省エネや創エネの推進は化石資源の枯渇に対応する取組み
になる。また,GHG 排出量の削減に寄与することが期待できる。食とエネルギーの地産地
消の推進は,セキュリティーの向上にも貢献する。
(2)地域経済活性化効果
バイオマス利活用の推進は,その仕組み方により,地域のある主体の支出が,地域の別
の主体の収入になる構造をつくり出すことができる。異業種交流による産業連関の拡大,
新産業創出である。これにより,雇用の拡大,定住人口の確保,税収の増加が期待される。
取組の内容によっては,主産業へ付加価値をもたらしその発展へ寄与するとともに,耕
作放棄地対策,鳥獣害防止対策,健康・食育・福祉などの増進など,他案件との相乗効果
が期待される。 バイオマスを含む再生可能エネルギーが高い価格で安定して買い取られる
制度ができれば,経済的インセンティブが増す。
(3)まちの好感度アップと地域への愛着心の醸成
バイオマス利活用は,時代の要請にマッチした取組みである。これに住民あるいは事業
者として参画することにより,達成感・満足感を享受できる。時には,外部からの評判で
良さに気づく。取組みが成長していることの実感は,まちへの愛着心や誇りを醸成する。
バイオマス利活用は,これを契機としたコミュニティー活性化による地域づくりに発展
させやすい分野である。環境行動の社会心理が好循環を生み出す。住民や事業者による「新
たな公」の力の発揮が期待され,子供たちやシニア世代の活躍が組み込まれると,地域に
希望をもたらす。
外部経済効果の項目が,市町村バイオマス活用推進計画策定の過程でリストアップされ
検討されることは,後々の事業推進を円滑に進めることにつながる。効果の認識は,バイ
オマス利活用に対する関心,支持を高める。また,バイオマス利活用の取組みに要する経
費の一部を公的セクターから支出することを容認する理由付けになる。さらに,これらの
バックアップにより使命感を持てる事業推進が可能になる。
バイオマス利活用に関する提案,マッチングの場が設定され,協働の機会と出番がつく
られると,当事者意識が高まる。当事者意識は,生ごみの分別など市民に期待される役割
の遂行に対し,精神的インセンティブが増す。バイオマス利活用は,一度決めた計画を一
定期間同じように進めるというより,民間ビジネスとして随時計画を見直し柔軟に進める
という性格が強いため,新たな連携や新技術の導入が新たな外部経済効果を生み出す。市
町村は,外部経済効果がより多く発揮されるように誘導すべきと思われる。
46
〔15〕地域活性化戦略
まず,バイオマス利活用の推進によりもたらされる効果を,一般論として,「農業」,「経
済」,
「社会」
,
「個人」
,
「環境」という枠組みで,表 10 に包括的に整理した 49)。目的や内容
が多岐にわたるバイオマス利活用の潜在的な効果の抽出作業と位置づけられる。この中で,
「見通し」は,事業が着手されれば短期的に獲得できると思われる項目である。
「期待」は,
中・長期的にソーシャルキャピタル(SC; Social Capital)が機能し地域社会がよりよい方向
に進んだときに具現化すると思われる項目である。
表 10 バイオマス利用の推進による効果 49)
農業
経済
社会
個人
環境
(高品質で安全な食料 (地域経済,行財政健全 (信頼,参加,地元愛) (健康,生きがい, (資源,エネルギー,
生産,公益的機能)
化,公正な分配)
プライド)
生態系)
見 通し
資源循環,カーボン・
オフセット, JGAP,
新食材,産品のブラ
ンド化,6次産業化
雇用の拡大,税収
の増加,広域ネッ
トワーク,訪問者
増
期待
若者の参入,食の地 異 業 種 連 携 , 諸 施
産地消,農業生産基 策 連 動 , マ ー ケ ッ
盤の安定,輸出産業 ト・イン,持続的競
争優位,まちのブ
ランド化,社会基
盤の安定
お宝発見,循環型社
会,低炭素社会,人的
ネットワーク,まち
の好感度,障碍者の
参画
新しい公共,プラ
チナ社会,相互扶
助,市民協働,世代
協働,安全・安心,
豊かさの共有
経験・技術を活か
す,頼られる幸
せ,注目される喜
び,使命感,仲間
づくり
U・I ターン,モラ
ル向上,かっこよ
さ,安らぎ,出会
いと成長,おしゃ
れな生き方,生涯
現役
水質保全,良質な
飲料水の確保,化
石資源代替,悪臭
の軽減,土壌の質
の維持
自然共生,生きも
のの賑わい,エネ
ルギーの地産地
消,美しい景観,ス
マート・ビレッジ
ここでは,地域活性化とは最も距離がありそうな豚ぷん尿の利用をとりあげる。豚ぷん
尿の利用は,畜産経営に求められるふん尿処理を適切に行うことが最優先の目的となるが,
消化液を液肥利用することにより,表 10 の中であてはまる項目数が大幅に増える。
豚ぷん尿の利用が,事業化されるきっかけとしては,畜産排水基準の見直しに伴う対応,
メタン発酵施設整備に対する補助金や融資制度の充実,養豚農家の既存水処理施設の更新
時期の到来,養豚に必要な化石資源由来のエネルギー及び資材の高騰,耕種農家の施肥作
業の労働軽減,消化液の効用の認識の拡大とニーズの急増が考えられる。
豚ぷん尿の水処理に当っての排水基準は,例えば T-N は 900mg/L 以下である。これは,
水質汚濁防止法に基づく一律排水基準が 100mg/L と定められているが,2013 年 6 月末日ま
での暫定値である。次回の見直しにおいては,より環境保全向きの値が求められると考え
られる。畜産経営にとっては負担増と思われる事態を,提案によって地域貢献と経営改善
につなげることができるかどうかが大きな試金石である。
地域活性化の戦略は,図 21 に示すように描くことができる。ライフサイクルでの経済性
については第 12 章で紹介したが,バイオマス利活用の工程毎に時系列で示すと判断がしや
すくなる。何故なら,多くの取組みは,改善目標を達成するために短期的な収益性の悪化
に耐える必要があるが,そのリスク対応方策の検討が容易になるからである。現状に比べ
て提案(計画)の方が確実に経済性を見込める場合は,地域全体での調整・工夫で事業化
を目指したい。豚ぷん尿に加えて食品系残渣さや生ごみも原料にすると,原料受入費を獲
得できるとともに,原料単位重量当たりのエネルギー生産効率を向上させることができる。
47
リキッドフィーディングとの組合せも検討の余地がある。これらが加わると人的ネットワ
ークは大幅に拡大する。
雇用の拡大は,被雇用者の家族を含め地域社会の中での人的ネットワークを強化させ,
SC の増加を誘導する。シルバー世代が社会に貢献するという生き甲斐をもって若手世代に
技術と経験を継承する体制がとれると世代間連携となる。新たな人的ネットワークは,他
施策との相乗効果を発現させる。一見無関係と思われるものとも繋がってくる場合が多い。
物質・エネルギー収支の健全性を確保することは意外と難しい。原料バイオマスの供給
量と消化液の利用量の時期的調整のために貯蔵が行われる。貯蔵設備の規模・配置計画,
運営段階にあっては変換施設と消化液の散布農地の距離,散布面積,一日のうちで順番と
人員配置等が重要である。これらは経済性にも影響を及ぼし,データや経験を積み重ねて
の改善余地が大きい。変換工程での生成熱は,メタン発酵槽の加温と消化液の殺菌に用い
られる。後者における節約が可能になる場合は,地域内での熱需要の発掘が新たな連携を
生むことになる。
消化液を液肥利用する新たな農業体系は,適切な土壌診断に基づく施肥設計が行われる
と,水処理に比べて環境保全的である。水質保全と GHG 排出量の削減に貢献する。良質の
農地土壌の確保にも役立つ。また,耕畜連携を大幅に進め,プレミア農産物を生み出す可
能性をもっている。そこから農業の6次産業化が芽生え,地域経済活性化を拡張する。新
たな挑戦は人を呼びこむ。
余剰電力は,系統連携に加えて自立運転が行える装置を組み込んでおくと,災害等で停
電が続いた場合のエネルギーセキュリティー確保に貢献する。また,他の再生可能エネルギ
ーとの組み合わせで,エネルギー生産型の農業・農村の構築の一助ともなる。
住民満足度の向上
SCの増加
定住人口の維持・増加
(新たな人的ネッ
トワーク,ビジネ
スの形成)
他施策との連
携による相乗
効果の発揮
提案バイオマス利用
システムの推進
ライフサイクル
での経済効果
の維持
地域経済
活性化
物質・エネルギー
収支の健全性向上
環境保全,資源
の持続性,公益
的機能の発揮
+
成長
新しい農業体系
の構築
図 21
(
外部経済効果発現の見える化)
地域社会,
個人を良い
方向へ導き
競争力の
高い農業
への発展
地域活性化の戦略 49)
いずれにしても,現状からの改善効果の抽出とその説得性が事業化に向けた動機付けに
なる。様々な効果の「見える化」による気づき,地元市民の雇用や地元業者への発注など取
48
組みによって生じるコスト(支出)の地域への収入化,耕畜連携,農産物のプレミアム化,
農業の6次産業化,耕作放棄地対策,鳥獣害防止対策,健康,食育,環境教育,福祉,防
犯,減災,地域エネルギーセキュリティー,観光など他施策との連携による相乗効果の発
揮が重要と考えられる。人的ネットワークの拡大・深化による SC の増加が駆動力となる。
逆に,SC の豊かな地域社会では他施策からバイオマス利用が誘導される可能性が大きいと
言える。
ところで,図 21 における地域活性化の戦略は,よい提案の作成から始まる。周到に準備
された計画がなければ,単なる豚ぷん尿の処理の問題にとどまり,水処理の負担が地域の
主要産業である畜産業に大きな打撃を与え,水質環境保全も十分には進まない。適切な資
源循環と人的ネットワークの構築が肝要である。提案の着手には,①困っている者や積極
的に営利を追求する者が自己単独で問題解決できず,地域に応援を求める必要に迫られて
推進するケース,②市町村長や行政担当者が,まちづくりのビジョンを実現する手段とし
て推進するケース,③想いのある者が地域の発展を願って推進するケース等がある。いず
れの場合もバイオマス利活用には総合力が求められるので,多くの関係者の参画が必要に
なる。地域内に適任者・機関が不在の部門には,外部から企業,専門家,コーディネータ,
ファシリテータに入ってもらうことを躊躇すべきでない。地域活性化を念頭におく場合,
提案の初期段階から多くの関係者に声をかけて事業計画のレベルを上げることが重要であ
る。昨今では,ソーシャルメディアの活用も有力な手段になり得る。バイオマス利活用の
担い手(事業主体)あるいは全体のコーディネータが地域社会との関わりを重視してある
べき資源循環やビジネス拡張のための連携協力の範囲を広げ,関連事業と相乗効果を得る
ことによって地域社会からの支持が拡大する。また,バイオマス利活用に関わる地域社会
の中での協働の機会が増えると SC が高まる。これが地域社会や個人を良い方向に導き,様々
な地域振興に関わる取組みを好循環させる。
49
〔16〕安全衛生保持
1.原料に由来する安全衛生問題
有機性廃棄物を変換し,飼料や堆肥として利用するにはリスクを伴う。重金属,環境ホ
ルモン,ダイオキシン,BSE など生きもの安全を脅かす物質の生成が危惧される現在,バ
イオマス利活用は安全と安心を支える信頼関係の構築無しには成立しない。運命共同体と
しての信頼性とコスト高を覚悟したトレーサビリティーによる安全性検証の実施のバラン
スを検討すべき時期にきている。作業者の安全・衛生の確保も重要である。ISO14001 や
HACCP など品質管理やリスク管理の考え方が参考になる。
安全性に関しては,重金属,有害物質,POPs(Persistent Organic Pollutants の略称。残留
性有機汚染物質と訳され,難分解性,高蓄積性,長距離移動性,人の健康・生態系に対す
る有害性を持つ物質のことを指す。例えばダイオキシン類や PCB,DDT といった化学物質
があげられる。),病原菌などの挙動に留意する必要がある。悪臭,騒音,振動の対策が必
要になる場合もある。
化学肥料や各種堆肥には Cd,Zn,Cu などの重金属が微量ながら含まれている。これらは,
長期にわたって,土壌の管理基準以下になるよう施用されなければいけない。Zn,Cu は作
物にとって微量必要であるが,Cd は有害なので特に注意が必要である。また,土壌への蓄
積状況とともに,作物中の含有量も確認する必要がある。肥料取締法における重金属等の
含有許容量,日本の土壌の現状は,それぞれ表 11,表 12 のとおりである。
表 11 肥料取締法における含有を許容される有害成分の最大量 14)
規制根拠
肥料取締法
カドミウム
5
ヒ素
50
鉛
100
クロム
500
(単位:mg/kg) 水銀
ニッケル
2
300
表 12 日本の農耕地土壌の重金属濃度(平均値)14)
重金属名
平均濃度
カドミウム
0.3~0.44
銅
41.7
鉛
30.8
クロム
69
(単位:mg/kg) ニッケル
亜鉛
31.8
118
注)平均値であり,カドミウムは文献によって異なる。(環境保全型農業大辞典,2005.3.31より)
堆肥化時の高温により大部分の病原菌,病原虫,通常の種子等は死滅するが,一部の病
原菌(白紋羽菌等)や乾燥状態にある種子などは完全に死滅するとは限らない。そのため,
病原菌の蔓延や不要種子の発芽の可能性について検討しておくべきである。未成熟な堆肥
は,農地に鍬込んだ後での発酵によるガスの発生により農産物へ被害を及ぼすとともに,
悪臭問題も引き起こしかねないため注意が必要である。
2.変換技術に起因する環境負荷量と安全特性
変換技術毎にバイオマスの利活用における環境負荷と安全特性についてとりまとめた例
を表 13 に示す。 変換プラントの安全性は,総務省からの指導,情報を十分に確認する必
要がある。
50
表 13 変換技術の環境負荷および安全特性 50)
項 目
安全特性
懸念される環境負荷
再生資源/副産物の安全性
発酵に伴う臭気の発生。酸性雨の
原因となるNH3 ,地球温暖化の原
因となるCH4 ,N2Oの揮散。農地に
堆肥化
施用した堆肥の溶脱による地下水
の硝酸汚染。
消化液の利用先が確保できない場
合は排水処理が必要。農地に施用
した消化液の流出・溶脱による水
バイオガス化 域の富栄養化及び地下水の硝酸
汚染。臭気の発生。液肥貯留槽か
らのCH4の揮散。
炭 化
重金属の動態
発酵の過程で 重金属が濃縮され
る。含有量は,肥料取締法で定め
られた基準値の遵守が必要。農地
への施用に際しては土壌管理基準
を満たす必要がある。
消化液:病原菌等を死滅させるた 消化液中へ重金属が移行する。
め,中温メタン発酵では,殺菌工程
を設ける必要がある。
排ガスの発生。加熱方式や排ガス 炭:炭化の過程で高温となるので 炭化の過程で 重金属が濃縮され
の処理方式によってはダイオキシ 安全。貯蔵に際して自然発火に留 る。
ンの発生。プラントの運転エ ネル 意する必要がある。
ギー生成に伴うCO2の発生。
処理工程で発生する臭気。
飼料化
CO2及びダイオキシンの発生。
焼却(燃焼)
堆肥:発酵過程で65℃,48時間以
上を確保し,病原菌,寄生虫卵,植
物種子などを死滅させる必要があ
る。
飼料:乾燥過程で高温になるので
安全。発酵による方法では温度管
理が重要である。品質を保持期間
が 短 い こ と に 注 意 す る 必要 があ
灰:焼却の過程で高温となるので
安全。
埋立に伴う負荷。
飼料は家畜などが直接食べるの
で,原料中に混入しないようにする
必要がある。
減容率が他の再資源化技術と比
較し大きいため重金属の含有率が
最も高くなる。焼却灰などは重金属
が溶出しないように対策を取り埋
立処分する必要がある。
3.小規模メタン発酵施設に対する考察
バイオマス変換プラントの運転管理における安全衛生保守の例として,小規模メタン発
酵施設に潜在する危険要因を認識した安全衛生対策を施設設計及び維持管理に活かすため,
山田バイオマスプラントでの事例及び関係法令等の既存文献に基づいて考察した 51)。
メタン発酵施設は,表 14 に示すように,燃料となる可燃性・爆発性を有するメタンガス
などの危険性を有する物質を生成するために,施設の安全衛生管理はそこで働く作業者の
生命・健康とともに施設存続にも係わる重要事項である。
表 14
メタン発酵施設で生成される主な物質の危険性 51)
メタン
爆発濃度
(Vol%)
5.3~14.0
発火点
(℃)
537
硫化水素
4.3~45.0
260
アンモニア
16.0~25.0
(132)
物質名
その他
無色・無臭
中毒で人が死
に至る危険有
り
人の粘膜を著
しく侵す
(1)労働安全衛生法の観点
作業者の健康や安全衛生を確保するものとして,労働安全衛生法(昭和 47 年法律第 57 号)
及び同法に基づく政令・規則が定められている。同法に基づく主な安全管理体制は図 22 の
とおりである。同法に基づく体制では,事故災害の防止対策,作業者の健康管理,職場環
51
境整備と幅広く対応しているが,図 22 では,小規模メタン発酵施設で重要と考えられる事
故災害の防止対策を中心に抜粋した。そこでは,安全衛生管理の責任者を明確にするとと
もに,管理部門からの所謂“押しつけ”的なマニュアルの策定にとどまらず,責任者,作
業者,専門家(産業医等)で構成される安全衛生委員会を設置して,作業の危険因子の洗い出
しや対策を話し合うことが求められている。
同法では,常時勤務者 10 人以上または 50 人以上の事業所を対象としているため,小規
模メタン発酵施設では同法の規定を直接適用されることはないが,同法の趣旨である作業
者の安全確保の体制や考え方は,小規模メタン発酵施設に多くの危険要因が存在している
ことから,十分に参考とすべきである。
特に小規模メタン発酵施設の運転管理は,原料の投入,メタン発酵プロセスのモニタリ
ング,農地への消化液の輸送散布と多岐にわたり,天候や原料の性状など変動要因に対し
て臨機応変に効率的な作業実施に努める必要があり,一度マニュアルを定めたらそれに従
って作業を単純に実施すればよいというものでない。図 23 に示されるような常に潜在する
危険要因の洗い出しに努め,計画(Plan),実施(Do),評価(Check)及び改善(Act)の「PDCA
サイクル」を繰り返すことが求められる。
事業者が行う労働衛生対策
健康確保対策
職業性疾病予防対策
基本的対策
●心身両面にわたる
●高気圧障害,酸素欠乏症等,電離放
射線障害,騒音障害,振動障害,腰痛,
VDT作業,熱中症等の防止対策
●粉じん対策の実施
●石綿ばく露防止対策
●新規化学物質の有害性の調査
●化学物質へのばく露防止対策
●危険有害性情報の伝達(表示,M
SDSの交付)
●危険性・有害性等の調査及びそ
の結果に基づく措置・継続的労働
衛生管理
●雇入れ時,作業内容変更時,危
険有害業務の就業時等の教育等
●健康診断,事後措置,保健指導
●作業時間の適正化,作業方法等
の改善,保護員の使用等
●衛生委員会の設置
●作業環境測定の実施,評価及び改善
●総括安全衛生管理者,衛生管理者,
産業医,安全衛生推進者等の選任
52
健康の保持増進
物理的因子による疾
病。酸素欠乏症等の
防止対策
粉じん障害防止対策
石綿による健康障害
防止対策
化学物質による健康
障害防止対策
労働安全衛生マネジ
メントシステム
リスクアセスメント
労働衛生教育
健康管理
作業管理
作業環境管理
労働衛生管理体制
図 22 労働衛生対策の体系(抜粋)51)
(略)
事業者による安全衛生方針の表明
基本要素
PDCAサイクル
危険性又は有害性等の
調査の実施(P)
体制の整備
安全衛生目標の設定(P)
実施事項の
決定(P)
緊急事態への
対応等(P)
安全衛生計画の
作成(P)
安全衛生計画の実施等(D)
計画の進捗状況の日常的な点検,
改善,労働災害発生原因の調査等
(C,A)
システム監査の
実施(C)
労働者
の意見
の反映
明文化
記録
改善(A)
システムの見直し
(注)
図 23
P:Plan(計画),D:Do(実施),C:Check(評価),
A:Act(改善)
労働安全衛生マネジメントシステム 51)
(2)運転管理及び危険要因
①臭気
施設に到着した際,まず臭いに注意を払う。これは正常な運転時と臭いに相違がないか,
嗅覚が慣れてしまう前に行う。メタンは無臭であるが,メタン発酵施設ではアンモニアや
硫化水素等の臭いを有するガスが発生しており,臭気が正常時と異なる場合,ガス管路系
統の漏れ,脱硫剤の破過等何らかの異常を疑って調査すべきである。
②作業用着の着用
作業時に原料バイオマスや消化液が衣服に付着して,それを介して病原菌や有害物質に
よる汚染が拡散しないように,作業時には,衣服は作業用着に着替える。作業終了後,作
業用着は洗浄・殺菌を行う。
また,原料バイオマスや消化液を取り扱う際には,ビニル製等の手袋の着用,特に原料
バイオマスや消化液が飛散する可能性がある作業では,マスク及び防護メガネを着用する。
③異音・振動
臭気と同様に夾雑物脱水機等の機器類からの異音や異常な振動の発生に注意を払う。異
音・異常な振動の原因としては,機器の可動部の潤滑に不具合,異物の巻き込みがあるな
どのことが考えられる。異音・異常な振動の発生場所を聴覚で特定し,外部から観察する。
異音の原因の如何にかかわらず,機器の点検を行う場合は機器を停止する。機器の停止は,
電気の場合ブレーカーを落とす。また燃料の供給の場合も同様に完全に停止する。さらに,
点検中に同僚が誤って機器を再稼働させることがないように,電気のブレーカーや燃料供
53
給のスイッチ等に「点検中(稼働不可)」等の表示を行う。もちろん,異音・異常な振動が
激しいものであれば,速やかに当該機器を停止し,上記の手続きで点検を実施する。
④清掃の励行
メタン発酵施設は,原料バイオマスを密閉された槽内で発酵反応させるので,悪臭の発
生箇所は限られるが,原料投入する受け入れピット周辺にこぼれた原料バイオマスや作業
過程でこぼれた消化液は,速やかに受け入れピットに流し込むなどして清潔に保つ。施設
内に不用意に放置されたバイオマスは腐敗して悪臭,害虫や有毒ガスの発生源となる。速
やかな清掃の励行は,これらの発生を最小限とできる。
⑤感電防止
清掃は水で洗い流すことが多く,その後作業者が濡れた手で機器の電源スイッチを取り
扱ってしまう懸念がある。対策として,電源スイッチ脇にウエスを常備して,手や手袋の
水分を取り除いてから電源スイッチを操作するようにする。また,清掃によって床面に水
がたまった状態が続かないように,床面は水平とせず1%程度の緩い傾斜をつけるとともに,
排水溝を適当な間隔で配置するなどして,作業者の靴底が水に接している状態を短時間と
なるようにして,感電事故の発生を防止する。
⑥ガス漏れ対策
メタン発酵施設では,表 14 に示したように可燃性ガス・有毒ガスを生成しているので,
ガス漏れに関しては特に注意を払わなければならない。
1)火災・爆発防止:少量の漏れたガスは,火種がなければ大気に放出されている限り,引
火,爆発の危険は少ない。このため,発酵槽やガスホルダーなどの周辺は火気厳禁のエ
リアとして,喫煙や火気を使った作業は禁止する。これは作業者とともに,メタン発酵
施設への見学者にも事前に厳命する。なお,火気を使った作業が,やむを得ず必要な場
合には,ガス漏れがないことを確認するなどの対策を十分に取って実施する。
2)酸素欠乏症・硫化水素中毒の防止:メタン発酵施設で生成するガスでは,火災・爆発の
危険性の他に酸素欠乏症・硫化水素中毒に注意を払う必要がある。なお,酸素欠乏症の
防止には空気中の酸素濃度 18%以上,硫化水素中毒の防止には空気中の硫化水素濃度
10ppm 以下とそれぞれする必要がある。
これらに対応するために,個々のガスの性状を理解して対応する必要がある。
a. メタン:表 13 に示したように無色・無臭で,メタンガスそのものは無害である。空気
より軽い(空気に対する比重 0.55)ため,開放状況では大気に拡散して危険は少ない。室
内などの閉鎖空間で充満すると酸素濃度を低下させ酸素欠乏症を発生させる。注意を要
するのは排気口が低部にある場合,排気口より上の部分で酸素濃度の低い空間を形成し
ている可能性がある。
b. 二酸化炭素:装置からのガス漏れ以外に,装置外部でもバイオマスや消化液の有機物が
分解される際に発生する。無色・無臭であるが,メタンと同様に閉鎖空間で充満すると
酸素濃度を低下させ酸素欠乏症を発生させる。空気より重い(空気に対する比重 1.53)ため
に,上部が開放されていても,ピット等の底部に酸素濃度の低い空間を形成している可
能性がある。
54
c. 硫化水素:二酸化炭素と同様に装置からのガス漏れ以外に,装置外部でもバイオマスや
消化液の有機物が分解される際に発生する。やはり空気より重い(空気に対する比重 1.19)
ために,上部が開放されていても,ピット等の底部に硫化水素濃度の高い空間を形成し
ている可能性がある。硫化水素は,腐卵臭を有し毒性が強いため,同臭いを感じると,
直ちにその場から待避して安全な場所で対応を検討する。
なお,酸素欠乏症・硫化水素中毒の危険場所での作業の実施は,専門資格(酸素欠乏危険
作業主任者)が必要であり,上記の酸素欠乏症・硫化水素中毒の防止対策は,あくまでも一
般の作業で酸素欠乏症・硫化水素中毒に遭遇しないための予防的な対策である。
⑦脱硫剤交換時の安全対策
バイオガスには,前項に示すように有毒な硫化水素が含まれる。硫化水素は,通常脱硫
プロセスを設けてバイオガスから除去する。山田バイオマスプラントでは,酸化鉄を主成
分とした脱硫剤を充填した脱硫槽を設け,バイオガスを通過させて硫化水素を除去してい
る。脱硫性能を維持するためには,定期的(約1回/年)に脱硫剤の交換が必要である。
使用済み脱硫剤は,マニフェスト伝票発行による産業廃棄物としての厳格な処分が必要
なため,交換も含めて専門業者に委託することになることが多いと考えられる。使用済み
脱硫剤は,空気に触れると熱や亜硫酸ガスが発生するために,ドラム缶などの耐熱性の容
器内に水封する。また,脱硫剤を交換するために脱硫槽を開封する前には,窒素ガスを注
入して槽内に残留するメタンガス濃度を爆発濃度以下にする。
(3)安全保持の徹底
小規模メタン発酵施設では日常的な維持管理作業に携わるための資格等が無く,作業者
の安全衛生への意識のばらつきが懸念される。小規模メタン発酵施設は,労働安全衛生法
の各種規定を直接適用されることはないが,同法の安全衛生管理の趣旨は尊重すべきであ
る。なお,ここで言う運転管理に関する資格とは,日常的な維持管理作業に従事する資格
を示し,フォークリフト,高圧ガスや電気設備等に関しては,小規模メタン発酵施設にお
いても諸法規に該当する有資格者による対応が求められる。
安全で衛生的な作業の実施は,単に運転管理段階で対処するだけでなく,施設の計画設
計・建設段階から安全で衛生的な作業の実施が容易なように対応されなければならない。
事業立案者は「安全はただ」でないことを認識し,施設の安全な運転管理には,そのため
の設備と作業者への安全衛生に関する情報の伝達・研修など,それ相応の時間とコストを
要することを当初から考慮した事業計画の策定を行う必要がある。
55
〔17〕トラブルからの教訓
バイオマス利活用の事業開始後は,図3に示すように,モニタリングと毎年点検により
事業の方法を改善していくことが望まれる。バイオマス利活用施設で起こりうるトラブル
を予見し,未然に防ぐことができれば,施設を安定して運転することができる。トラブル
からの教訓の蓄積である。願わくは,社会実験の段階で教訓を洗い出したいものである。
施設におけるトラブル事例の報告は,あまり見あたらない。事例を積み上げていく必要
がある。メタン発酵(原料投入量5t/d)を中核技術とするバイオマス利活用施設である山
田バイオマスプラントの運転開始から約4年間に起きたトラブル(ここでは,メタン発酵
プラント内で起こる,プラントの安定的な運転に支障を与える出来事と定義する)を解析
し,安定運転を実現するための情報として整理した
52)
。この整理は,現在も継続中で7年
以上にわたっている。メタン発酵プラントの運転管理者,メタン発酵の導入を検討してい
る地方自治体の担当者,バイオマス利活用を専門とする研究者にとって参考となる情報で
ある。各プラントにおいてトラブルリストの作成することにより,トラブル防止が可能と
なり,プラントの安定的な運転に寄与できる。情報は次のように要約される。
① 山田バイオマスプラントの約4年間に発生した 28 のトラブルは,表 15 のように整理さ
れる。それぞれについて,
「日時」,
「事象・原因」,
「対策とその結果」
,
「教訓」等を記し
ている(表 16)。
② 運転開始当初は,メタン発酵の原料である乳牛ふん尿に想定以上の割合のオガクズ(敷
料として利用されているもの)が混入していたことによる脱水機等の詰まり等のトラブ
ルが発生した。同じ畜種のふん尿でも,飼養形態によって排出されるふん尿の性状が異
なることを認識してプラントの設計をすべきことが示唆される。
③ 2005 年の冬には凍結により管路が破裂,流量計が破損するなどのトラブルが見られ,管
路に保温チューブをまく,クーリングタワーに常時通水する等の凍結防止対策を行った。
山田バイオマスプラントが立地する千葉県は温暖な気候であると想定していたため,低
温対策についてあまり考慮していなかったが,プラントが窪地に立地しているため,周
囲より低温になりやすく,上記のようなトラブルが起きた。気温等の気象条件は,周辺
の気象観測データだけではなく,微地形等を考慮に入れた検討が必要であることが示唆
される。
④ 脱硫剤の交換が遅れたため,脱硫塔の能力破過が起こり,脱硫塔を通過したバイオガス
中の硫化水素濃度が上昇した。さらに,その対処が遅れ,約2カ月間,硫化水素濃度の
高いバイオガスが下流側に流れ,メタン精製装置(PSA)等の機器が不調となった。硫
化水素は,機器に対して重大なダメージを与えるため,脱硫剤の消耗度を予測し,脱硫
剤は早めに交換する必要がある。
⑤ 運転開始後2年を経過した頃から部品の消耗や長期運転による影響が原因とみられるト
ラブルが急激に増加した。そのことを見越し,交換部品の用意等の対応をとっておくこ
とが必要である。
56
表 15 山田バイオマスプラントで起きたトラブル一覧表 52)
年
2
0
0
6
(5年目)
2
0
0
9
(4年目)
2
0
0
8
(3年目)
2
0
0
7
(2年目)
※
2
0
0
5
(1年目)
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
トラブルの原因(分類)
(乳牛ふん尿に含まれる)オガクズ
(乳牛ふん尿に含まれる)オガクズ
(乳牛ふん尿に含まれる)オガクズ
(乳牛ふん尿に含まれる)オガクズ
その他
凍結(気象)
凍結(気象)
凍結(気象)
その他
その他
その他
硫化水素
その他
部品の消耗・長期運転の影響
部品の消耗・長期運転の影響
部品の消耗・長期運転の影響
部品の消耗・長期運転の影響
部品の消耗・長期運転の影響
部品の消耗・長期運転の影響
部品の消耗・長期運転の影響
部品の消耗・長期運転の影響
部品の消耗・長期運転の影響
部品の消耗・長期運転の影響
部品の消耗・長期運転の影響
部品の消耗・長期運転の影響
硫化水素
硫化水素
その他
件 名
設計値と比較してバイオガス発生量が少ない
夾雑物搬出量が多い
夾雑物脱水機の詰まり
消化液オーバーフロー管の詰まり
消化液貯留槽満杯
ライン凍結,配管の破損
バイオガス流量計故障
バイオガス配管の凍結による水封水の吸引
メタン濃度計の不良
うじ虫(ハナアブの幼虫)の発生(2007,2009 にも発生)
配管の閉塞
脱硫塔の能力破過の見過ごし
メタンガス貯留タンクが満杯
加温ヒーターのショートによる部分停電発生
フレアスタックが点火せず
PSA 装置の真空ポンプのダイヤフラムの破損(1回目)
コンベアーロール摩耗
夾雑物脱水機の不調
受入ピットのスノコの腐食
PSA 装置での空気作動弁の不調
脱硫塔内のパンチングメタルの腐食
PSA 装置の真空ポンプのダイヤフラムの破損(2回目)
メタンガス充填設備のブースターの不調
受入ピット底部にたまった沈殿物による夾雑物脱水機の不調
受入ピットへの原料以外のものの混入
PSA 装置でのメタン収率の低下
製品ガス流量計の不調
脱硫塔パッキン不良
2005 年 7 月から運転を開始した。本表は,2005 年 7 月から 2009 年 7 月までに発生したトラブルを示す。
表 16 トラブルリスト(例)52)
事例番号
件名
事象・原因
対策とその結果
教訓
備考
写真
25
日時
2009.3
分類
部品の消耗・長期運転の影響
受入ピットへの原料以外のものの混入
原料受入ピットの清掃を行った結果,原料以外の異物(手袋,石,釘,工具等)が見つかった。
・原料供給者に原料の管理の徹底を依頼する。
・定期的な清掃が必要。
・原料供給者に原料の管理の徹底を依頼する。
・一方,ある程度の異物混入はやむをえないので,ピットの構造で異物を分離できるようにし,機器へ
の致命的なダメージを避ける。
受入ピットは原料に混入する異物を分離する役割を果たしている。
左:受入ピット清掃の様子,
右:受入ピットの底から出て
きた異物
(石,釘等)
57
〔18〕バイオガス発電の自立運転
災害等により地域一帯が数日間にわたり停電になった場合に,バイオガスプラントが自
立して運転を継続できるか,あるいは再起動できるかどうかは,連続運転が必要な生物反
応によるプラントであるが故に重要である。緊急時の近隣地域への電力や熱の供給は社会
貢献になる。
そこで,乳牛ふん尿を原料とし,25kW のコジェネを2台併設するメタン発酵システムを
図 24 のように設計した。乳牛ふん尿 25t/日は,牛 500 頭分に相当する。
熱
2464 MJ/日
乳牛ふん尿
25 t/日
(ふん16.8t/日)
(尿7.4t/日)
(敷料0.7t/日)
ポンプ
夾雑物脱水機
夾雑物
4.7 t/日
含水率
70 %
メタン発酵槽
ポンプ
管路(ポンプ)
熱
1765 MJ/日
堆肥化
バイオガス
635 m3 /日
メタン濃度
65 %
消化液殺菌槽
管路
管路
脱硫剤
脱硫塔
消化液貯留槽
堆肥
3.1 t/日
含水率
64 %
消化液
19.5 t/日
含水率
97 %
2987 kg/年
412.5 CH 4Nm 3/日
バイオガス発電
熱
7020 MJ/日
電力
施設内利用
1200 kWh/日
施設内利用
4229 MJ/日
382 kWh/日
余剰熱
余剰電力
818 kWh/日
2791 MJ/日
売電可能電力
746 kWh/日
図 24 メタン発酵システムの物質・エネルギー収支(設計例)
バイオガス発電において,系統連系運転と自立運転を切り替えられるシステムフローは
図 25 のようになる。また,表 17 に示すように,3つのタイプ毎のコスト比較を行った。
1基(25kw)の機器本体価格及び工事費の合計は約 2,000 万円である。系統連携運転,自立
運転ができるようにするためには,約 300 万円の追加が必要になる。遠隔監視を含む保守
費は,約 90 万円/年(10 年)である。
これらの情報は,メタン発酵システムのコジェネ部分に系統連系や自立運転の機能を持
たせるかどうかをライフサイクルコスト及びリスクマネジメントの面から判断する材料に
なる。
58
連携運転時
連系出力
C P25B GZ
発電機
エン ジン
( 運転)
③受電盤改造工事
自立運転時
ZPC-T
自立ユニット
商用電力
電磁接触器は系統の
電圧で連系側に保持
受変電設備
IN V
バッテリー
VT
。。
。
②接続盤
①コジェネユニット+自立
ユニット
CT
T D
運転許可
コイ ル切替
電源
自立出力
。
。
。
。。
。。
。。
。
。
。 。
。
。
。
。
。
連系負荷
分電盤
連系負荷
自 立 負荷
自 立 負荷
自 立 負荷
自 立 負荷
。
。
。
。
モータ
。
。
ポンプ
連系負荷
あらかじめ選定した自立負荷
図 25 コジェネのシステムフロー(連系運転時,自立運転時)
表 17 バイオガス発電機導入のためのタイプ別コスト比較
項目
タイプ
1.機器費構成
2.工事費
①バイオガスコジェネ(型式:CP25BG-TF)
25KW、3相3線200V、インバータ発電方式
搭載機能:ガスエンジン発電機、制御機、排熱回収設備、
放熱用ラジエータ、排気消音器、遠隔監視発信器
付属品:システムコントローラ・ガスブロア
②同上 自立・停電対応(自立主回路、始動装置)
③自立ユニット盤(屋外形)
(系統⇔自立)主回路切替器、配電用ブレーカ(200、100V用)
④連系ユニット盤(屋外形)
⑤補機動力盤(屋外形、ガスブロア・温水循環ポンプ回路)
⑥ガスブロア起動装置(停電時)
⑦温水循環ポンプ
⑧試運転調整費
⑨諸官庁手続助勢費(経済産業局、消防署、電力会社)
機器費小計(千円)
①基礎工事
②搬入・据付工事
③配管工事
④配線工事(共通)
⑤配線工事(自立運転)
⑥配線工事(系統接続)
工事費小計(千円)
3.保守費・遠隔監視費
4.特徴と留意点
積算額
(千円)
12,500
タイプ1
タイプ2
系統接続で使用
(売電可能)
系統分離で使用
(自立運転)+停電時可能
●
●
タイプ3
タイプ(1)+(2)
●
1,200
-
●
●
1,000
-
●
●
1,030
1,000
600
100
500
500
●
●
-
●
●
●
16,230
●
●
●
●
-
●
4,100
-
●
●
●
●
●
18,000
●
●
●
●
●
-
3,300
●
●
1,000
300
1,000
800
200
1,000
(基本条件)
1.バイオガスがガ
スホルダーに貯
留できる。
2.自立運転(停
電時)に使用する
発電機負荷は小
容量の集合体と
する
59
フルメンテ(10年)
900千円/年
(遠隔監視費を含む)
全量買取制度を活用し、
系統との接続により売電
する。バイオガスがある
限り発電可能。接続及び
計量に費用を要す。停電
時は使用できない。
●
●
●
19,030
●
●
●
●
●
●
4,300
フルメンテ(10年)
フルメンテ(10年)
930千円/年
930千円/年
(遠隔監視費を含む)
(遠隔監視費を含む)
電力会社の系統とは接 タイプ1に加え、停電時も
続せず、コジェネユニッ ト 使用可能。
のみで自立運転する。発
電機で賄う負荷は小容
量の集合体とする必要
がある。
〔19〕実務のヒント
1.自分の立ち位置をつくる
まずは,この「手引き書」を手にとって頂いている「あなた」の立ち位置についてであ
る。担当者になった経緯,在職年数,年令,性別,性格は様々でしょう。バイオマス利活
用の推進は両刀の剣である。周到な計画と適切な運営があってはじめて効果があがる。中
途半端だと失敗する。担当者になると何かと事業化に結びつけたいであろうが,冷静な分
析を踏まえて,新たなことをしないという選択肢を残しておくべきである。本格的なバイ
オマスタウンをつくるという意志と覚悟を持つことができたら,仲間とともに粘り強く取
り組みたい。
何を自分たちでやり,何を外注するかはよく見極めたい。外注しても結局自ら作業を行
うことになってしまっては無駄である。身内の組織を大切にすることは心がけるべきであ
る。身内に人材がいるのに外部の人に頼るのはチームワークに反する。地域の若者の発想
をとりこむこと,よそ者からの指摘で地域の強みと弱みに気づくことは重要である。やる
からには,ためらわずに有名人になって取組みを盛り上げるべきである。積極的に情報発
信していくと必ずリアクションがある。
2.外部人材の活用
外部有識者としてのアドバイザー,コーディネータに支援を求める場合がある。特定の
1人がバイオマス利活用にかかわる全ての知識を持っていることはあり得ない。できれば
得意分野の異なる3名程度に声をかけ,遠慮なく期待する役割を伝えることが大切である。
あまり例がないと思うが,事業について,先行する地域の現場を動かしている実務者(プ
ラントの場長など)から率直なコメントを頂いておくことをおすすめする。
全国でバイオマス利活用がうまく進んでいると言われている市町村には共通して,魅力
的な担当者がいる。その担当者は与えられた職務に対して,立ち位置を考えて行動してい
るというより,立ち位置をつくり上げ,多くの人をまきこみまちづくりにバイオマス利活
用を使っているように思われる。
3.アドバイザー(コーディネータ)の役割と心構え
市町村内の身内,あるいは外部人材の場合にも,アドバイザー(コーディネータ)役の
存在は,事務局機能を果たす担当者とともに,計画策定に係わる検討の流れを大きく左右
する。担って頂きたい役割と心構えの例を以下に整理した。
・バイオマス利活用の意義と位置づけをていねいに説明する。
・部局間連携と司令塔の重要性を説く。
・行政部局の担当者に極度の負担感と個人的責任感を与えない。
・具体的例示を行う。
・黒衣に徹するときもある。
・実証プラント及びフィールドで展示する。
・シンポジウムやワークショップを開催する。
60
・説明・相談は相手に応じ役割分担して行う。
・失敗を含めた経験(ノウハウ)を紹介する。
・副次的効果を含む地域への貢献を示す。
・想定されるリスクとその回避法を説明する。
・事業実施のタイミングや準備すべき事項,なすべき社会実験,技術開発の動向,想定さ
れる PDCA を説明する。
・組織(人),技術,制度,資金それぞれの専門家が協力して総合的にバックアップする。
・実務に近い関連団体や NPO と連携・協働する。
・自らの居住地または出身地も舞台とする。
・明るく楽しく世論形成を行う。
4.効率的な情報収集
収集すべき情報は多岐にわたる。目的を明確にし,絞り込んでおかないと情報収集だけ
で疲れてしまう。ここでは,情報の種類を概観し,効率的な情報収集の方法を検討する。
①情報収集の目的の再確認
収集すべき情報は,バイオマス利活用に関する構想や計画の煮詰まり具合による。例え
ば,可能性検討段階と提出された複数のアイデアの評価段階では自ずと異なる。ネックと
なる事項の抽出,先行事例の調査,組織・人脈・意志決定者・利害関係者のリストアップ,
法制度(諸手続き)の理解,利用できる事業スキームなど目的を絞った情報収集を行う段
階もある。モノに関する情報に限れば,ポテンシャルとしてのバイオマス賦存量,発生・
生産量,利用可能量(ポテンシャル),需要見込量,安全性,変換技術の評価,経済性が重
要となる。これらの情報は,現時点と計画目標年次について整理されることが望まれる。
②諸手続き
手続きは極めて煩雑である
21)53)
。その方法は各々のバイオマス利活用システムによって
異なり,必要な手順を具体的に明確に示している資料は見当たらない。何の法規制に該当
し,どのような手続きが必要かについては,解釈・運用による違いなどもあり,その影響
力と責任が重いため明記しづらいと推測される。運用が県や市町村によって異なる場合が
ある。
バイオマス利活用を進めようと思う者にとっては煩わしさを感じる諸手続きであるが,
基本的に現行法規は必要なものである。法規制は,
「悪いことや危険から国民や環境を守る」
ことを第1に考えており,この原則は守らなければならない。一方,
「バイオマスから人間
や自然界にとって有用な資源をつくり出す」という眼鏡で見ると歯痒い点も多い。おおよ
そ世の中に受け入れられると思われるバイオマス利活用の推進に際しても,該当の可能性
が定かでないものも含めて検討すると,手続きに2年以上の時間を要すると言われている。
早めに情報を収集し,スケジュールをしっかり組むことが重要である。
近年では,食の安全,環境保全の重要性が消費者のみならず生産者及び流通業者にも強
く意識されるようになり,トレーサビリティー,HACCP,適正農業規範(GAP),農業環境
規範への取り組みが進みつつある。これらとの関わりについても十分に検討していく必要
61
がある。
③段どり
情報は,担当者が 1 人で集めなければならない場合と,多くの担当部局が協力して集め
る体制が整っている場合がある。前者の場合にも多くの関係機関の協力が必要なことは言
うまでもない。効率的に情報を集めるためには,調査の段取りを含め情報収集のための設
計(作戦)をしっかりたてる必要がある。項目としては必要であるが,全体にあまり影響
を及ぼさない情報は仮おきするか,後まわしにすべきである。
効率的な情報収集の基本は,まずは全体像をつかみ,重要度の高いものと低いものに分
けるということである。組織の力を活用しつつ,「全体」>「詳細」>「補強」という流れ
が望ましい。例えば,物質フローについては,状況を概略的かつ網羅的に捉えることから
始め,利活用計画策定に大きく関わる項目について精緻化を図っていくということになる。
再生資源の需要量ポテンシャルと実際に利用できる量には大きなギャップがある場合が多
いので,需要量予測は慎重に行う必要がある。情報の種類によってインターネットの利用
や人脈の活用などを使い分けることが大切である。収集できる情報の精度についても理解
しておく必要がある。情報収集後は,情報そのものとともに,情報源や情報の信頼性につ
いても記録しておくべきである。
④メモの蓄積
情報収集と整理における留意点に関するメモを少しばかり示す。担当者には,明らかに
なった留意点や気づきの点を追記し,情報の蓄積と共有化を図っていただきたい。
・畜産統計とセンサスデータの区分の相違
・統計による集計期間の相違(重複に注意)
・GIS データとセンサスデータの面積の相違
・モノの存在場所に基づく情報とモノの所有者の住居に基づく情報の存在
・単位(乾物と生重,P か P2O5 か)に注意
・市町村担当者自らがやるべきことと外注が望ましいことの種分け(外注は無駄使いで労
力軽減にならない場合がある。上手な外注の方法とは?)
・モノに関わる連続条件の確認方法
・単純ミスの発見(直感で常識を判断できる単位系への置き換え)
5.プロポーザル方式導入の検討
市町村からの事業発注においては,バイオマス変換プラントの設計・建設・運営を一貫
して行う競争的なプロポーザル方式が注目され実施事例が出てきている
54)
。これにより,
相当なコスト削減が可能になる。このためには,的確な業務仕様書を作成し,プロポーザ
ルを読みとる力が必要であり,バイオマス利活用推進協議会の中に,専門部会を設置して
進めるのが効果的と思われる。
6.税金をあまり使わない取組みへ
2011 年 12 月現在,一般的なバイオマス利活用について,国から補助金または交付金が新
62
たに準備されるという情報はない。今後のバイオマスタウンの構築と運営は,市町村がま
ちづくりの一施策として展開する方向で進める必要がある。自ずと公的資金をあまり使わ
ないで,よい取組みを進めることが中心になる。また,公的資金を使う場合には,進捗管
理や達成度評価がより厳格に求められる。
つくば 3E フォーラム委員会「バイオマスタスクフォース」では,温室効果ガス排出量の
削減という目標に対して,バイオマス利活用の推進の観点から貢献するため,様々な取組
みを進めている
55)56)
。注目すべきは,藻類バイオマス利用という最先端の挑戦と,まちづ
くりにつながる検討をメンバーがボランティアベースで参画して進めていることである。
予算がないときは,知恵を出し合い汗を流して一歩を踏み出していくことが大切である。
生ごみの資源化に限っても,これをまちづくりにつなげた福岡県大木町での取組み
栃木県茂木町での取組み
48)
,山形県長井市での取組み
57)
,
58)
など,参考になる例は多々ある。
先行事例からしっかり学びつつ,独自色を出す余地は十分にある。
7.地域資源の発掘と起業
NPO 法人「えがおつなげて」を主宰している曽根原久司さんの取組みには,まさに地域
資源を発掘し,その活用をビジネスとして成立するまでにもっていっている。その書籍 59)60)
からのメッセージは実践に裏付けされているので説得力がある。どこかで一緒に「開墾モ
リモリ!」をやった人も多いであろう。土佐の森林救援隊を立ち上げた中嶋健造さんに共
感した取組みも全国展開されてきている。お2人の活動ぶりはネット上でも広がり,類似
の取組みを加速させている。有名になったので特別な2人とみられるかもしれないが,誰
しも最初はゼロからなので,まずは始めることの重要性が理解される。
8.ソーシャルシフトにのった取組推進
ここでは,バイオマス利活用の取組を,ソーシャルシフトを意識して展開する方法を紹
介する。ソーシャルシフトとは,ソーシャルメディア(Facebook,Twitter など)が誘起す
るビジネスのパラダイムシフト(マーケティング,リーダーシップ,組織構造)で,斉藤
61)62)
はその変化を,規律から自律へ,統制から透明へ,競争から共創へ,機能から情緒へ,
利益から維持へ,と表現している。Vision, Mission, Values(行動指針)を明確にした協働
によるコミュニティー,社会づくりが各地で始動している 63)64)。情報化のための基盤の充
実と価値観の変化が社会を変えようとしている。
バイオマス利活用による地域活性化の効果は,雇用拡大や環境保全を通しての定住人口
の維持・増加と住民満足度の向上に帰着すると考えられる 49)。ソーシャルキャピタル(Social
capital(SC);人々の協調行動が活発になることにより,信頼,規範,ネットワークが強まり,
社会の効率性を高めるという社会的仕組みの重要性を示す概念)については,①SC の存在
により地域内での協力が必要なバイオマス利活用のきっかけが生まれ,円滑な運営に資す
る,②バイオマス利活用が新たな人間関係,信頼関係を生み出したり醸成したりして SC を
高める,③高まった SC がバイオマス利活用の水準を向上させる,との仮説がたてられる。
図 26 は,バイオマス利活用を豊かな地域,コミュニティーの創造に役立て,育くまれた
63
SC でバイオマス利活用の取組水準を上げようという戦略の構図である。●印は,ソーシャ
ルシフトにのった SNS(Social Networking Service)の活用の場を示している。オンライン(ネ
ット上でのつながり)活動とともに,頻度は少なくともオフライン(直接出会ってのつな
がり)活動による信頼がベースとなる。地域づくりの観点では,すそ野を広げる取組,環
境コミュニティビジネスとしての展開
は,プロボノ
60)65)66)
が望まれる。当時者だけで解決が困難な課題
67)
(Pro Bono;社会的・公共的な目的のために,自らの職業を通じて培ったス
キルや知識を提供するボランティア活動)の力を借りるという方法も有望になってきてい
る。従来のやり方で展望が持てない場合は,ソーシャルシフトを強く意識し,新しい組織
体制で共創していく方法を選択するべきと思われる。
潜在する
地域資源
ソーシャルキャピタル
<PDCA の実施>
・バイオマス利活用推進
・再生可能エネルギー導入
(人・技術・制度・情報・
資金をつなげる)
・資源循環
・環境保全
・ビジネス
連携と相乗効果の
発揮
〔他施策〕
産業創出,雇用創出,廃棄物適正処理,
環境保全,教育,福祉,少子・高齢化
対策,健康,医療,防犯,防災・減災,
エネルギーセキュリティー,交通,交
流,文化,芸術,観光
協働・共感の質・量
の向上,
新たな公の発現
豊かな地域,コミュニ
ティーの創造
(人口,自然,社会
基盤・資本)
(うち,農業関係施策)
生産基盤の整備,創エネ,省エ
ネ,耕畜連携,農産物のプレミ
アム化,農業の6次産業化,耕
作放棄対策,鳥獣防止対策
図 26 ソーシャルシフトにのったバイオマス利活用の取組推進による豊かさの創造
このことを念頭において,つくば国際戦略総合特区事業の1つとして推進している藻類
バイオマス利用のワークショップにおいて,次のメッセージを発信した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
つくば市には,美しい自然,水と土,伝統・文化,科学技術があります。何よりの地域
資源は人材,そして大切にしたいのは子供たちの笑顔,歓声,夢です。
人・技術・制度・情報・資金をつなげて,バイオマスの利活用を進めます。藻類バイオ
マス利用などの最先端技術の開発・実証,裾野を広げる身近な取り組みの両方を進めるこ
とが重要です。
様々な活動や技術のコラボが新たな人の交流を生み,ソーシャルキャピタルを高めます。
それは地域の元気と賑わいの源になります。
あなたに,出番と役割があります。つくば環境スタイルで,ともに,宝ものを発掘し,
磨き,未来を拓いていきましょう。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
64
〔20〕農が輝く地域社会
バイオマス利活用が目指すべきことは,地域資源
68)
をフルに活用した農業活動と賢明な
消費行為により,農村地域がエネルギーの地産地消を推進し,多面的機能を発揮しつつ食
料自給力を高めることである。循環型社会形成,低炭素社会,自然共生がキーワードにな
る。大胆な創エネ,節エネが必要である
69)
。社会インフラとしての農業生産基盤の維持,
担い手の確保は前提である。
農業・農村の魅力は,人の営みとともに育まれている。とくに,水田農業は社会システ
ムの中で成立している。実感をもてる範囲内で水田農業と農村社会の時代評価を試み,方
向性を表 18 に示した。農が輝く地域社会を構築するためには,効率と心の豊かさの追求が
両立する必要がある。
表 18 水田農業と農村社会の時代評価
化石エネルギー使用量
余暇・娯楽時間
環境負荷
人口
年齢構成
公共活動・行事
社会インフラ
自然災害
教育力
事故・事件
医療・福祉
幸福・満足度
多
高
高
少
多・少・少
大
短
多
高
高
少
短
少
多
良
多
低
多
中
少
低
中
少
低
中
中
中
小
多
少
低
低
中
少・多・多
小
長
少
低
低
多
多
多
少
悪
少
高
中
中
多
高
中
多
高
小
大
少
中
少
多
中
高
中
中・中・中
中
長
中
低
中
中
多
少
中
良
中
高
中
高
少
高
高
炭水化物・たんぱく質・脂肪比率
少
摂取熱量
大
環境負荷
多
労働時間
少
産出/投入化石エネルギー
大
洪水・渇水頻度と被害
高
収量(単位面積当り)
地産地消率(資材・エネルギー)
会
エンゲル係数
社
寿命
村
世帯人数
農
地産地消率(食)
暮らし
食糧自給力
食
生物多様性
産
食糧自給率
生
多
農地利用率
時代
過去
農地面積
指標
(1960)
現在
(2011)
未来
(2030)
方
向
性
土地生産性と労働生産性が先人たち
の努力により格段に上がった。それ
は,基盤整備,化石エネルギーの大量
使用,機械化,化学肥料や農薬の使用
によるところが大きい。環境負荷が増
大し,生物多様性は損じられた。これ
からは,生産基盤の維持,低投入で自
然と共生できる生産システムの構築
を進めたい。
食べるのに不自由する時代
は終わったが,食料自給率
が低下し,健康によくない
食生活が進んでいる。これ
からは安全・安心の質の高
い食を,できるだけ地産地
消,旬産旬消で楽しみたい。
家族が協力しあって,働いて働
いて糧を得る時代から少々ゆ
とりも生まれてきた。そのみか
えりに,化石資源の枯渇が心配
されるようになった。徹底的に
効率を追求した部分と心の豊
かさを重視した部分を時間と
空間を別にして使い分けてい
きたい。
地縁,血縁をベースとした共同社会から
個々の価値観を尊重する社会への転換が
進んだ。社会インフラの整備も進んだ。
一方,信じられないような犯罪も多発し
ている。共通の利益,幸福のために,高
い理念のもと,あるべき社会像をデザイ
ンしていきたい。
バイオマス利活用は,目指すべき我が国の農業像,農村像を再考する機会になる。従来
の食料・木材等の生産という枠を超えて,農村地域の活性化,雇用確保,休耕田や耕作放
棄地の再生に役立ち,農林業の新たな領域の開拓をもたらす。グリーンバンクとしての土
地活用,コントラクター方式の導入等,新しい営農体系を取り入れての取り組みが望まれ
る。いつでも食料生産への切り替えが可能な資源作物の栽培体系は,社会資本としての生
産基盤を維持・保全する手段の1つになり得ると思われる。地域資源をフル活用したバイ
オマスタウンづくりは, 一定の収入と達成感・満足感の共有による賑わいをもたらす農村
復興へのプロセスでもある。
農業におけるエネルギー収支の相対値を,過去(江戸時代を想定),現在,未来(2030 年
を想定)について記したイメージを図 27 に示した。国民生活の基本的要素である「食」を
支える農業システムは,エネルギー生産型にすべきである。しかも,食料安全保障から考
65
えると,投入する直接及び間接エネルギーはできるだけ国産であることが望ましい。図 28
は,目標達成に向けての展開方向の例である。
「産出/投入化石エネルギー」を 1.3 以上に
することが目標である。農業システム内における物質循環の強化,省エネ,再生可能エネ
ルギー由来の燃料・資材の使用が大きな役割を果たす。省エネにもつながる環境保全技術
の推進,革新的技術開発,長期的視点での取組を支える PDCA や制度設計,様々なシステ
ム化を組み合わせ,叡智を集めて実現したい。
農村地域に存在する再生可能エネルギーを活用したエネルギーの自給体制の確立と地域
住民が参画した「新たな公共」による管理が行われる「スマート・ビレッジ」70)という考え
方は,まさに合致する。革新的な環境関連技術の導入により社会システムを改善するグリ
ーン・イノベーションに活路を見出し,バイオマス,太陽光,風力,小水力,地熱などの
ベストミックスによる自然エネルギータウンを誕生させたい。それは,再生可能エネルギ
ー割合 70%の心豊かなコミュニティーである。創エネ,節エネの観点からも,最近提唱さ
れてきている「コンパクトシティ」という新しい社会システムは推進すべきと考えている。
農村で創エネを考える場合に,木質バイオマスの影響力は大きく,取組を一気に加速化
したい 71)。
農村地域に存在する再生可能エネルギーの賦存密度は化石資源に比べて小さいため,適
正空間規模は自ずと限られる。このため,小規模分散利用に適した小型高効率エネルギー
変換技術,輸送・貯蔵技術の開発,個別技術のシステム化が求められる 72)。
実行に移すためには,地域のエネルギー戦略がマーケット・インの発想により持続的経
済優位を確保すること,他施策とのコラボにより相乗効果を上げていくことが肝要である。
図 28 を地域の実情に合わせて適用していくことを考えると,手順は次のようになろう。
① 農業生産と農村での生活における消費エネルギー,資材の種類と量に関する丁寧な洗い
出し
② 化石資源由来のものを,どこで,どのように,どれだけバイオマスを含む再生可能エネ
ルギーで代替していくかの検討
③ 新たなシステムに対応する生産基盤,生活基盤の更新・整備と管理
<過去>
〔投入〕 人力・畜力
<未来>
<現在>
化石エネルギー由来
燃料・資材
1
化石エネルギー由来
燃料・資材
100
30
再生可能エネルギー
由来燃料・資材
60
☆
〔産出〕
10
30
40
過去(江戸)
現在
未来(2030)
10/1
30/100
40/90
産出/投入化石エネルギー
∞
30/100
40/30
管理面積(ha/人)
0.3
2
30
産出/投入
図 27 農業におけるエネルギー収支(イメージ)
66
<環境保全技術の推進
=省エネの推進>
・施肥技術の改善
(作物の肥料利用率の向上)
・防除技術の改善
・水管理技術の改善による収量
増及び節水
<技術開発>
・エネルギー変換技術の
高度化
・太陽光の立体的利用
・トリジェネ(電気、熱、CO2)
による光合成能力のアップ
<ソフト対策>
・食生活・消費行動の適正化
・3R(Reduce, Reuse,
Recycle) の徹底
・予防保全・PCM・制度設計
<地域の再生可能エネルギー
の利用推進>
・バイオマス/太陽光/風力/小
水力/地熱の総合的利用
・森林・里山・緑地の保全と
資源利用
・多収安定栽培できる資源
作物の導入
・藻類からのエネルギー獲得
<波及効果>
・食糧自給率向上
・資源循環型農業
・環境保全型農業の
推進
・地球温暖化抑制
・地域活性化
・耕作放棄地解消
目標:「産出/投入化石エネルギー」
→ 最大化(少なくとも1.3)
<システム化>
・複数技術の融合
・営農の集団化 ・耕畜連携 ・地域連携 ・産業連携
・スケールメリット発揮、適正規模診断
・輸送・保管に関わる消費エネルギー・時間の削減
・ライフサイクル的分析(エネルギー、環境、コスト)
図 28 エネルギー生産型農業システムへの展開
2011 年3月 11 日に発生した東日本大震災では,リスクマネジメントの必要性と難しさを
痛感させられた。再生可能エネルギーが改めて脚光を浴びることになったが,容易でない
ことは誰もが承知している。再生可能エネルギーをつくり出すためにも化石資源を使う。
災害や事故等に対するバックアップを強化するとコスト増になる。困難を克服するために
は,「強い意志」が必要である。逆境に立ち向うという点で東日本大震災からの復興へのプ
ロセスを大きなきっかけとしたい。
福島県飯舘村を紹介した「までいの力」という本が出版された
73)
。東日本大震災で危機
に立たされている村である。美しい自然と心が紹介されている。「繋がっていれば,決して
負けない」というキャッチが付いていた。復興には,地域の人,自然,文化,歴史,未来
への愛が大切である。エネルギー供給源の確保とともに,人の生き様が問われている。
67
〔21〕予行演習
ある地域で,図 29 に示す2つのバイオマス利活用のアイデアが提案されたとする。地域
の属性は,表 19 のとおりである。担当者としての「あなた」は,どのような段取りで,こ
れらも活かして計画づくりを進めるか。この「手引き書」を参考に,実現性の高い市町村
バイオマス推進計画の策定,そしてバイオマスタウンの構築と運営をシミュレーションし
て頂きたい。
家畜ふん尿
(メタン発酵)
生ごみ
汚泥
消化液
消化液の直接利用
消化液の変換
(変換エネルギー源)
・成分抽出(固体化)
・炭への吸水(固体化)
・濃縮液肥化
・成分調整液肥化
利用
農業用水・営農雑用水
排水(資源未回収液) 集落排水処理施設
河川等へ放流
メタン(多種のエネルギー源;電気,熱,メタン燃料)
(一部)
木質系バイオマス
(炭化)
炭(土壌改良材,脱臭剤,調湿剤,防除剤,消化液吸水
媒体,インテリア素材)
,(固体燃料)
(一部)
酢液(工業原料,防除剤)
熱・蒸気・電気(エネルギー源)
メタンガス
エサ(輸入)
飲料・
洗浄水
牛舎
メタン発酵
敷料
(飼養)
糞尿
その他
エサ(自給)
化学肥料
<水田>
(飼料稲)
or
固体残さ
堆肥化
消化液
(一部)
車両用燃料
プラント稼動用燃料
コジェネ(電気,熱)
水域
水処理
(表 層 )
水分調整
堆肥
副資材
<牧草地>
(牧草)
水域(表層,地下)
農地
化学肥料
水域(表層,地下)
図 29 提案されたバイオマス利活用のアイデア
68
表 19 仮想地域の属性
面積
森林面積
耕地面積
農作物作付
面積
人口
農家人口
水田
普通畑
樹園地
牧草地
稲
麦類
かんしょ
豆類
果樹
野菜
工芸農作物
飼肥料作物
その他作物
51.54 ㎢
1,530ha
1,300ha
1,010ha
17ha
2ha
1,086ha
1ha
402ha
81ha
16ha
387ha
26ha
35ha
116ha
11,249 人
5,937 人
合併浄化槽(集排を除く)
1,279 人
単独浄化槽(し尿のみ)
6,264 人
生活排水処理
屎尿処理場
1,715 人
区分別人口
農業集落排水
724 人
し尿自家処理
1,395 人
一般廃棄物ごみ量(し尿を除く)
730t/年
乳牛(搾乳牛)
1,042 頭
乳牛(2歳未満)
201 頭
肉牛(雄2歳以上)
1,004 頭
肉牛(乳用種)
495 頭
種おす豚
6,422 頭
家畜飼養頭数
肥育豚
40,065 頭
採卵鶏(6ヶ月未満)
136,130 羽
採卵鶏
596,252 羽
ブロイラー
70,900 羽
食品産業製品出荷額
1,125 百万円/年
木材生産量
690 ㎥/年
間伐材量
570 ㎥/年
69
〔22〕農村工学研究所によるお手伝い
農村工学研究所では,農研機構プロジェクトの1つとして,他の機関と協力しながら,
「地
域資源を活用したバイオマス循環利用システムの開発」という課題を推進している。その
内容は,「地域において,食料生産機能を維持しつつ,農業副産物,資源作物,畜産由来バ
イオマス等をエネルギーや資材として総合的に利用する技術を開発する。これにより,本
格的なバイオマスタウン構築につながる地域循環利用システムを設計する。さらに,モニ
タリングに基づきバイオマス利活用技術の有効性の検証やエネルギー生産型農業・農村構
築のための条件解明を行い,地域資源管理と一体的な低投入型バイオマス利活用システム
を提示する。
」である。市町村バイオマス活用推進計画の策定を積極的に手伝う。
Q
「手伝う」とのことであるが,具体的にはどのようなお願いができるのか。必要経費
はいかほどか?
A
問い合わせには誠意をもって応えるよう努力しております。農工研の担当者が全ての
問い合わせに対し満足頂ける回答を準備できるとは思いません。自分たちがわからない
ことは,より適切な答えを持ち合わせていそうな方を紹介するなど,情報や人のコーデ
ィネータ役も果たします。農研機構内の他の内部研究所のほか,地域環境資源センター,
日本有機資源協会,畜産環境整備機構,共同研究を行っている大学などとよく連携して
おります。各種委員や研修講師も,時間の許す限り,喜んでお引き受けします。お気軽に
電話やメールをください。電話やメールでのやりとりに経費はいただきません。お伺い
して調査や打合せという段階になると,当所の研究として位置づけられるものは当所の
予算で伺います。また,受託出張という制度があります。外部からの問い合わせ窓口は
移転推進室長で,手続き事務は会計チームが行っております。以下が,その手続きの公
式な方法です。この中でも,この手続きよりも優先して,前広に研究者との直接やりと
りをすすめられております。ワークショップの企画・運営のお手伝いもできます。
「つくば藻類バイオマス利用ワークショップ 2012」
http://eeeforum.sec.tsukuba.ac.jp/bio.html
「つくばバイオマスワークショップ 2010」
http://eeeforum.sec.tsukuba.ac.jp/material/biomass-tf_report201011.pdf
DVD
ワークショップ「ゴーゴー バイオマス 2009 in Tsukuba」
「バイオマス利用と Plus 価値創造農業を体験する(茨城県つくば市)」
,慶応大学福澤諭
吉記念文明塾(2012)
「バイオマス利活用で地域経済を活性化させる!(千葉県香取市)」,慶応大学福澤諭吉
記念文明塾(2011)
「バイオマスのフル活用~地域活性化のためのバイオマス利活用方策のデザイン~」,
AGRI-COCOON バイオマス利用研究ゼミナール(2010)
70
................................................................................
受託出張の手続きについて
簡単な調査・技術指導・講習等派遣及び委員会委員の派遣(受託出張)
農業農村整備事業の実施にあたっては,今後とも農村工学研究所を有効に活用いただく
ようよろしくお願いたします。
① 事業(務)所等,国などからの場合
該当する研究者を事業の実施現場等に派遣し,調査・指導,あるいは,軽微な試験の実
施や指導等する場合に該当します。原則として移転推進室へ事前にご連絡いただければ,
該当する研究者と日程調整等を行い回答いたします。該当する研究者をご存知の場合は,
研究者の氏名をお知らせ下さい。
事業(務)所が,委員会を設置し,直接該当する研究者の委員への就任,委員会の出席
を依頼する場合においても,原則として移転推進室へ事前にご連絡いただければ,該当す
る研究者と調整等を行い回答いたします。また,該当する研究者をご存知の場合は,研究
者の氏名をお知らせ下さい。
いずれの場合においても事業(務)所長等からの正式な依頼文書により該当する研究者の
派遣を決定します。また, (独)農業・食品産業技術総合研究機構規程等により謝金は不要
ですが,旅費,日当や調査等に要した経費については依頼をした側で負担していただくこ
とになります。
② 民間(財団法人,社団法人を含む)からの場合
上記の手続きと同様ですが,旅費,日当に加えて間接経費も頂くことになります(30%)。
また,国からの委託を受けたコンサルタント等が実際は負担する例がありますが,その
場合は,コンサルタント等からもらう「○○現地調査・調査(委員会参加)への派遣につ
いて(依頼)
」に国等の依頼や契約に基づく要請である旨を明記した文書を書き加えて,も
らって下さい(独法として特定の民間業者に協力するのは好ましくないので)。
なお,くれぐれも,出張を要請されている研究者との日程調整,集合場所,事前の
関連資料の送付などは,本手続きよりも優先して,前広に研究者と直接行って下さい。
................................................................................
Q
バイオマス事業化戦略によると,家畜ふん尿や食品残さを原料としてメタン発酵によ
りエネルギーや消化液を生産・利用するシステムはビジネス性が高いと紹介されている。
消化液の利用について紹介したわかりやすい資料はないか?(「問い合わせ」の例)
バイオマス活用推進会議:バイオマス事業化戦略,2012
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/biomass/b_kihonho/pdf/senryaku.pdf
71
A
農工研では,農水省のプロジェクト研究等で得られた知見を冊子にまとめています。
これは主として畑作物を対象にしたものです。専業農家集団である農事組合法人和郷園
の方々による試行の賜物です。地域資源循環技術センター,畜産環境整備機構が作成し
たマニュアルも有用です。水田での消化液利用については,熊本県山鹿市,福岡県大木
町,京都府南丹市などの経験が参考になると思います。また,消化液の輸送・散布計画の
策定支援モデルもつくっております。先行事例の現場に出向いて直接見聞きすることが
早わかりになりますが,是非,私たちにも声をおかけください。
農村工学研究所:メタン発酵消化液の畑地における液肥利用,2012
http://www.naro.affrc.go.jp/nkk/introduction/files/ekihiriyou.pdf
地域資源循環技術センター:メタン発酵消化液の液肥利用マニュアル,2010
畜産環境整備機構:メタン発酵消化液の濃縮・改質による野菜栽培利用マニュア
ル,2013
概要は,以下のように説明しています。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
メタン発酵消化液(消化液)は,メタン発酵でエネルギーとしてのメタンとともに生成
される液体で,液肥としての利用が期待される。水田と比べて作付け時期が分散している
畑地で利用できれば,消化液の輸送・散布労力を分散できる。消化液は,無機態の肥料成
分を含むという点で化学肥料と似ているが,施用後の動態は化学肥料とは異なる部分があ
る。そこで,畑地において環境負荷を増加させずに消化液に含まれる肥料成分を有効利用
するために,アンモニア揮散特性,地下への窒素溶脱特性など,表 20 に示した一連の情報
を整理したうえで施用方法を提案している
74)75)
。なお,ここに記載する結果は,乳牛ふん
尿を主原料の消化液(平均値 T-N 3,400mg/L, NH4-N 1,800mg/L)を使用した試験による。
○消化液を土壌表面に施用すると,消化液中のアンモニア態窒素の一部が揮散し,その量
は施用後3時間以内が多い。しかし,施用後速やかな土壌との混和などのアンモニア揮
散を抑制できる施用方法(揮散抑制型施用方法)の採用により,アンモニア態窒素の多
くを肥料として利用できる。表面施用のまま放置すると,アンモニア態窒素の多く(30
~60%)が揮散により失われるが,その量は環境条件に左右されるため予測が難しい。
○揮散抑制型施用方法を用いることにより,有機態窒素の無機化分(約 20%)を含めて,
消化液に含まれる窒素の約6割程度を速効性成分として利用できる(図 30)。
○施用された窒素のうち土壌に蓄積される窒素以外の割合に着目すると,土壌に保持され
た消化液由来のアンモニア態窒素の動きは,硫安等の化学肥料由来成分と大きな差異は
ない(図 31)
。作物による窒素吸収量に対する溶脱量の割合が消化液・硫安で同等である
ことから,化学肥料を消化液で代替しても地下水への負荷は増加しない。
○消化液を施用した土壌からの亜酸化窒素の発生量に関しては,消化液施用量が多くなる
につれて,施用窒素のうち亜酸化窒素として発生する割合が高まる傾向があるため,過
72
剰施用は避けることが望ましい。一方,メタンの発生量はほとんどない。
○消化液に含まれる炭素の一部は安定的な形態で,施用後土壌表面に蓄積される(5年間
連用後の蓄積量は施用された炭素の 43%)。そのため,消化液の連用は一定の炭素貯留効
果があるといえる。
○施用量の決定にあたっては,施用畑の土壌診断結果や地域の施肥基準に基づき,カリな
どの養分過剰に留意することや1回の施用量を施肥ムラが生じない程度にとどめること
に留意する必要がある。
表 20 消化液の肥料効果や環境影響に関する検討項目
検討項目
アンモニア揮
散量
有機態窒素の
無機化量
地下への窒素
溶脱量
消化液に含まれる窒素
土壌からの温
室効果ガス発
生量
消化液連用に
よる土壌への
影響
評価のポイント
消化液に含まれる有機態窒素のうち、
施用後にどの程度がアンモニアとして
揮散するか。
消化液に含まれる有機態窒素のうち、
どの程度が無機化するか。
作物に吸収されずに下方へ移動する割
合はどの程度か、地下水質に及ぼす影
響はどうか。
消化液の施用により、土壌からの温室
効果ガス(メタン、亜酸化窒素)の発
生特性は変化するか。
消化液の連用により、消化液に含有す
る炭素や窒素はどの程度蓄積するか。
土壌の物理性は変化するか。
短期的には無機
化しない有機態
窒素等
アンモニアとして
揮散するアンモニ
ア態窒素※
約 60%
35%
~50%
揮散抑制型施
用方法の場合
(混和施用な
ど)
表面施用
の場合
短期的(1 カ月~1
カ月半を想定)に
作物が利用できる
窒素量
※ 表面施用時のアンモニア
揮散量は風速、気温、施肥か
ら耕起までの時間等により
左右される。
図30 消化液由来窒素の利用可能割合
73
消化液(混和施用)
の場合
硫安の場合
作物吸収 28%
表層土壌(0-30c
m)への蓄積11%
作物吸収 33%
表層土壌(0-30c
m)への蓄積2%
溶脱
44%
溶脱
47%
不明 17%
不明 18%
試験方法:ライシメータ法
使用土壌:淡色黒ボク土
栽培作物:コマツナ,ホウレンソウ
図31 施肥された窒素の動態(4年間の窒素収支)
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
Q
p.41の図15を見る限り,ほどんどの試算ケースで「収入-コスト」がマイナスになって
おり,事業化は難しいという印象を受ける。どういう評価結果だったら事業化のための詳
細な検討に入れるのか,判断基準や目安はあるか?(「問い合わせ」の例)
A
バイオマス利活用の目的は事業毎に異なります。家畜排せつ物や生ごみなど廃棄物系
のバイオマスを原料とする場合,その事業単独で利益を生み出すことはほぼ不可能です。
廃棄物の適正処分にはお金がかかるわけですから,単純な処分に比べて赤字が解消され
環境保全にも繋がるのであれば,事業化の価値があると判断してよいと思います。負担
を強いられることになる関係者が納得するのであれば,収入に外部経済効果を加算する
のもいいでしょう。エネルギーの生産を目的とする計画の場合は,生産エネルギーが消
費エネルギーより余裕を持って大きいことが前提になります。
「市町村のためのバイオマ
ス活用計画の評価ガイド」41)には,バイオマス利活用のどういうところでどのくらいのコ
ストがかかる,収入が得られるか,あるいはエネルギーを消費する,エネルギーを生産
するかなどの情報例を示しています。考えておられる内容に近い例を参考に,自らの地
域の情報を丹念に入れ込んでいただけますと,有望なものかどうかをスクリーニングで
きるかと思います。その作業を通して,課題が明らかになったり,問題解決のアイデア
が浮かんだりするでしょう。
農村工学研究所:市町村のためのバイオマス活用計画の評価ガイド,2012
http://www.naro.affrc.go.jp/nkk/introduction/files/biomass_guide.pdf
74
付属資料A
バイオマスの賦存量と利用量の推定法
バイオマス利活用を検討するに当って必要な地域情報は,地域に存在するバイオマスの
種類,賦存量,発生・生産量,移動量,再生資源の利活用量及びそれらの時空間分布等で
ある。これらは,既存の統計データ及び研究成果,聞き取り,補完的な現地調査によって
収集する。ここでは,主として堆肥化やメタン発酵を意識して,その収集方法を検討する。
農村地域で発生・生産される原料バイオマスを収集・変換して,再生資源(堆肥や液肥な
ど)を利用するというイメージである。
1.公表されているデータの収集
データの種類は,次のように分類できる。
① 解析対象とする地域状況データ(物質量,面積,人口,家畜頭羽数など)
② 物質量を算定するために必要な原単位データ(物質量が地域状況データとして入手でき
れば不要)
③ 成分量データ(炭素・窒素・リン率など)
④ 月別の割合を示すデータ
原単位,成分量,月別割合には,地域固有データと全国平均的データが存在する。デフ
ォールト値として県の平均値あるいは全国平均的な値を準備しておき,地域固有の値が入
手できれば,これを入れ替える方法が現実的である。
データの重要性を3水準に区分し,第1水準は地区(市町村)固有の必須データ,第2
水準はデフォールト値の検討が必要なデータ,第3水準はデフォールト値を採用しても精
度上ほとんど問題がないと考えられるデータと見なし,データ収集の重み付けをする手も
ある。第1水準及び第2水準データのうち地域により比較的変動が大きく入力が必須また
は望ましいデータとその入手方法の例を付表 A1 に示す。
2.ヒヤリング・調査
関係自治体での調査項目を主体に,調査先,必要性区分,そして物量・成分などの直接
データがない場合の代替(原単位法)データを付表 A2 に示す。時間単位は,状態(現状)
を表すものを除いて年単位を基本とする。情報源情報の把握は,効率的な情報収集の第一
歩である。
3.データを用いての計算
物質移動量は統計データを組み合わせるなどして,計算する場合が多くなる。地域内で
移動する量と地域外へ移動する量に分ける。計算方法は,物質ごとに異なる。地域の移動
量を直接算出するデータが無い場合があり,このときはより広い範囲(例えば県単位)の
データから,原単位を計算して地域の移動量を求める。統計データから求められる物質移
動量は,年単位のデータがほとんどである。このため,まず年単位の物質量を計算する。
これに成分比率を乗じ,炭素,窒素,リンなどの年単位成分量を求める。さらに月単位の
75
情報が必要な場合は,別途調査して求める月別の移動量比率を乗じて,月単位の物質量と
成分量を計算する。移動量の計算方法の概要を付表 A3 に示す。
付表 A1 データの入手方法
データ項目
詳細
データ入手方法,主な資料
備考
市町村面積
県別の農林水産統計年報など 入力必須
森林面積
県別の農林水産統計年報など 入力必須
耕地面積
田,普通畑,樹園地,牧草地に区 県別の農林水産統計年報など 入力必須
分
稲,麦類,かんしょ,雑穀,豆類,果 県別の農林水産統計年報など 入力必須
樹,野菜,工芸作物,桑,飼料作
物,その他作物に区分
農作物作付け延面積
土壌統別面積と土壌の状 深さ,容積重,全窒素,全炭素,有 県別の地力保全基本調査総合 入力必須
態
効態リン酸,置換性カリ,水田面
成績書
積,水田以外面積
化学肥料施用量及び時期 窒素,リン酸,カリ,炭素に区分
農地への堆肥など有機物
施用量及び時期
主要農作物の作付面積と
収穫量
主要農作物の作付け・収
穫時期
人口
田,普通畑,樹園地,牧草地に区
分
作目別に入力する
地域の施肥基準,営農指導書
営農関連図書
地域の施肥基準,営農指導書
営農関連図書
県別の農林水産統計年報など
農家人口,非農家人口
営農指導書
入力が望ましい
営農関連図書
県別の農林水産統計年報など 入力必須
生活排水処理区分別人
口
施用量はデフォルト値
採用可能
入力が望ましい
入力必須
合併浄化槽(集排を除く),単独浄 自治体の生活排水処理計画な
化槽(し尿のみ),屎尿処理場,集 どを参照
落排水,公共下水,し尿自家処理
に区分
都道府県における食品産 動植物性残さ発生量,有機性汚泥 都道府県の産業廃棄物統計,
業の状況
発生量,食品産業の出荷額(販売) 都道府県の工業統計など
一般廃棄物ごみの量(し
市町村聞き取り
尿を除く)
市町村の食品産業製品
市町村の工業統計または聞き
出荷金額
取り
家畜飼養頭羽数
畜産統計の区分別に頭羽数を入力 市町村聞き取り
入力必須
家畜尿汚水処理率
市町村聞き取り
入力必須
家畜尿汚水処理の除去
率
原木出荷量
市町村聞き取り
デフォルト値採用可能
水域関係データ(1)
水域関係データ(2)
木材,間伐材に区分
市町村,または森林組合にて
聞き取り
減水深,河川の比流量とそれに対 灌漑計画書
応する対象地区内面積
近辺の河川,降雨水質データ
(県の環境白書など)
山林流出率,集落流出率,域内灌 灌漑計画書
漑比率,灌漑水還元率,非灌漑期 農業排水計画書
流出率,域外流出率,降雨水質, 近辺の河川,降雨水質データ
灌漑水の水質,河川の水質
(県の環境白書など)
76
入力必須
入力必須
入力必須
入力必須
入力必須
入力必須
デフォルト値採用可能
付表 A2 データ収集方法一覧(1/2)
分類
耕種農業
必要なデータ
単位
調査先
水稲の裏作で畑作物を耕作する面積
水稲の裏作で飼料作物を耕作する面積
水稲の二期作面積
農産物の品目別副産物のうち廃棄される量
(田畑に還元されない量)
ha
ha
ha
t
○
○
○
△
農林部局
農林部局
農林部局
農林部局
地域内製造(センター以外)堆肥の施用量,施用時
同上成分 N,P,K,C
地域外製造堆肥の施用量
施用時期
同上成分 N,P,K,C
センター堆肥施用量,時期
同上成分 N,P,K,C
化学肥料施用量,施用時期
上記成分(肥料の種類)
N,P,K,C
主要農産物,飼料作物の出荷時期
t
△
△
△
農林部局
農林部局
農林部局
△
○
○
△
△
農林部局
農林部局
農林部局
農林部局
農林部局
t
t
t
○
特産物の成分
放牧地
牧草全生産量
畜産
家畜に食べられた牧草量
畜産農家からの畜種別出荷量
食品産業
区分
○
t
データがない場合に推
定するためのデータ
廃棄率でも可
標準モデルではもみがら,ピーナッツ殻,桑の枝を廃
もみがら,ピーナッツ殻, 棄としている。
桑の枝以外で廃棄され
るものが多い場合は○
堆肥センターがある場合
施肥基準は○
施肥基準は○
全国平均的デフォール 文献調査も可能
ト値あり
特産物がある場合
文献調査も可能
生産量が少ない場合は, 特産物生産を考慮しなくて
も影響は小さい。
標準モデルでは, 放牧を畜舎飼養と同等と見なして
いる。放牧頭数が多い場合は, 検討が必要。
同上
△
農林部局
t
頭羽
t(牛乳)
畜種別家畜ふん尿の地域内での堆肥化・生利用 t
家畜ふん尿の地域内堆肥化のための材質別副 t
資材量のうち地域内入手。
家畜ふん尿の地域内堆肥化のための材質別副 t
資材量のうち地域外入手
畜種別家畜ふん尿の地域内での堆肥化・生利用 t
諸元
以外の農地利用方法と量
△
△
農林部局
農林部局
△
△
農林部局
農林部局
△
農林部局
○
農林部局
畜種別家畜ふん尿の地域外での利用量
t
畜種別家畜ふん尿の農地以外での利用(燃料な t
諸元
ど)
畜種別家畜ふん尿廃棄量
t
畜種別家畜尿汚水処理量
t又はm3
同上原水水質
BOD,T-N,T-P,T-K
同上処理水質
BOD,T-N,T-P,T-K
畜種別家畜尿汚水処理発生汚泥総量
t又は
m3
同上成分
BOD,T-N,T-P,T-K,水分率
畜種別家畜尿汚水処理発生汚泥地域内利用量 t又はm3
△
○
農林部局
農林部局等
△
△
△
農林部局
農林部局,保健所 処理率は○
農林部局,保健所
△
地域内外区分は困難と思われ,不明ならば地域内
発生量を超える部分を地域外入手としている。
同上
堆肥化・生利用以外の農地利用がある場合。
標準モデルでは, 家畜ふん尿の農地利用を堆肥
化・生利用としている。
農地以外での利用がある場合。標準モデルでは,
廃棄以外を農地利用としている。
○
農林部局,保健所 平 均的 成 分除 去 率は 処理方法別処理量と除去率がわかれば,なおよ
○
い。
農林部局,保健所
○
農林部局,保健所
○
農林部局
食材の種目別出荷量
食材の種目別仕入れ量
生ごみ排出総量
t
t
t
×
×
△
不明
不明
厚生部局
生ごみ個別堆肥化地域外利用量
t
△
厚生部局
生ごみ個別堆肥化地域内利用量(あれば)
廃水処理放流量
t
t又は
m3
△
×
厚生部局
保健所,廃水水質
基準別に必要
廃水水質基準
保健所
水 質 は BOD の み
か?
産 廃 処 理 業 者 又 県の汚泥発生量と対象
は保健所
産業出荷額県は○
地 域の 食 品産 業 出荷
額は○
成分は不明か? 文献推定
同上水質T-N,T-P,T-K,BOD
廃水処理汚泥発生量
×
t又は
△
3
m
同上成分 N,P,K,C
t又は
m3
備考
△
77
データ入手は困難と思われ,不明ならば対象としな
同上
県 の動 植 物残 渣 発生
量と対象産業出荷額は
地 域の 食 品産 業 出荷
額は○
地域内外区分は困難と思われ,不明ならば地域内
としている
同上
データ入手は困難と思われ,不明ならば対象としな
い
同上
付表 A2 データ収集方法一覧(2/2)
分類
人間 集排
t又は
m3
△
t又は
m3
△
データがない場合に推
定するためのデータ
農 林 部 局 又 は 保 定住人口は○
健所
農林部局又は保
健所
農林部局又は保
健所
農林部局又は保
健所
農林部局
△
△
農林部局
厚生部局
必要なデータ
集落排水流入量
単位
t又は
m3
同上水質T-N,T-P,T-K,BOD
集落排水放流量
△
上記成分 N,P,K,C
し尿処理 し尿処理放流量(地域に処理場がある場合)
同上水質T-N,T-P,T-K,BOD
し尿処理汚泥発生量
上記濃度,成分 N,P,K,C
下水道 下水道流入量
同上水質T-N,T-P,T-K,BOD
下水道放流量(地域に処理場がある場合)
同上水質T-N,T-P,T-K,BOD
下水道汚泥発生量
上記濃度,成分 N,P,K,C
生ごみ 生ごみ発生総量
上記成分 N,P,K,C
生ごみ堆肥化センター搬入量(あれば)
上水道 上水道給水率
上水道水質
公園,ゴルフ場, 芝生量
樹木体積
街路樹
剪定枝葉量
堆肥の地目別施用量
同上成分 N,P,K,C
地域内(堆肥センター以外)製造堆肥の地目別
同上成分 N,P,K,C
堆肥センター堆肥の地目別施用量
同上成分 N,P,K,C
地目別化学肥料施用量
製材業
降雨
灌漑水
上記成分(肥料の種類)
N,P,K,C
原木入荷量 地域内より
原木入荷量 地域外より
原木出荷量
残材廃棄(焼却)量
残材リサイクル利用量
月別降水量(数ヶ年の平均)
上記水質T-N,T-P,T-K,COD
月別灌漑水量
農地排水
上記水質T-N,T-P,T-K,COD
月別排水量
上記水質T-N,T-P,T-K,COD
地域の水量
主要河川の平水時比流量
t又は
m3
t又は
m3
t又は
m3
t又は
m3
t又は
m3
t
t
t又は
m3
t又は
m3
t
t
t
t
m3
m3
m3
m3
m3
mm
m3又は
mm
m3
調査先
備考
対象人口は○
△
△
厚生部局
△
△
厚生部局
下水道部局
△
△
△
下水道部局
同上
同上
同上
△
下水道部局
同上
△
△
△
○
○
△
△
下水道部局
厚生部局
厚生部局
厚生部局
厚生部局
厚生部局
道路部局その他
△
×
×
×
×
○
○
×
産廃処理業
道路部局
道路部局その他
道路部局その他
道路部局その他
道路部局その他
道路部局その他
道路部局その他
道路部局その他
×
道路部局その他
△
△
○
△
△
△
△
△
農林部局
農林部局
農林部局
農林部局
農林部局
△
×
△
対象人口は○
または面積,本数
下水道統計 行政編で調査可
不明の場合成分0としても精度上問題は少ない。
標準モデルでは, 賦存量の対象を街路樹としてい
る。
一般廃棄物総量は○
データ入手は困難と思われ,不明ならば対象としな
同上
同上
同上
堆肥センターがある場合
データ入手は困難と思われ,不明ならば対象としな
い
同上
デフォールトは原木出荷量から推定
デフォールト値使用可
実績:土地改良区 月別減水深は○
計画:県など
河川水質は○
県環境白書
か ん が い 水 還 元 率 は デフォールト値使用可
○
河川水質,県環境白書
△
河川水質,県環境白書
デフォールト値使用可
t
○
○
堆肥化センターがある場合
同上
t
○
○
○
○
同上
同上
同上
同上
m3/s/
100km2
上記水質T-N,T-P,T-K,COD
堆肥化センター 種目別搬入量
上記混合物の成分
N,P,K,C
堆肥生産量
上記の成分 N,P,K,C
地域外への出荷量
副資材量,種類
△
△
同上水質T-N,T-P,T-K,BOD
集落排水汚泥発生量
区分
t
t
78
付表 A3 移動量の計算方法の概要(1/2)
分類
農地
名称
食材(系外出荷)
起点
農地
終点
系外
計算の考え方(例)
耕種農業収穫量から農家の自給消費量
を差し引く
食材(農家自給分) 農地
人間
飼料敷料系外出荷 農地
系外
農家の自給消費量を農家へのアンケート アンケートデータは県単位
データより求める
人口×単位自給消費量
牧草地、飼料畑の収穫量から自家利用分 収穫量は作目毎の統計値
を差し引く
自給飼料敷料
家畜
農地
もみがら(堆肥利用)農地
デフォルトデータの状況
収穫量は作目毎の統計値
畜産農家の消費量から求める
単位自給消費量は県単位ア
家畜頭羽数×単位自給消費量
ンケートデータの参照可
飼料作物、稲わら、麦わらなど
堆肥化施設 堆肥生産量からもみがら必要量を水分率
などをもとに計算(一例)
副産物総量を算出し、有効利用分を差し 副産物比率は全国値
引く
廃棄副産物
農地
廃棄
農地からのガス発生
農地
揮散
農地面積×作目別脱窒率など
ガス発生率は別途計算結果より
農地からの浸透・
溶脱
購入堆肥施用
農地
溶脱
農地面積×作目別浸透・溶脱率
浸透・溶脱率は別途計算結果より
地域外肥料 農地
農地面積×作目別単位施肥量
化学肥料施用
地域外肥料 農地
農地面積×作目別単位施肥量
施肥量は県単位のアンケート
データの参照可
施肥量は県等の営農指導書
より
化学肥料は全て購入とする
窒素固定
大気
農地
農地面積×作目別窒素固定率
窒素固定率は別途計算結果より
副産物生産
農地
副産物
農地への副産物還元
副産物
農地
果樹以外:主産物生産×作目別副産物率 副産物比率は全国値
果樹:栽培面積×単位副産物生産量
副産物生産量-副産物廃棄量
光合成
大気
農地
「主産物+副産物」の炭素量から求める
畜産食材自家利用 家畜
人間
副産物量=農作物主産物量×副産物比率
畜産施設
(家畜)
畜産食材系外販売 家畜
自家利用家畜ふん 家畜
尿
農家の自給消費量を農家へのアンケート アンケートデータは県単位
データより求める
系外
畜種別に畜産物生産量を算出し自家利 単位当り生産量は全国統計
用分を差し引く
生産量=頭羽数×単位当り生産量
地域内利用 総ふん尿量×自家利用ふん尿率
総ふん尿量は全国値
(堆肥・生)
自家利用ふん尿率は県単位
アンケートデータの参照可
ふん尿地域内販売 家畜
交換
総ふん尿量は全国値
地域内利用 総ふん尿量×販売交換ふん尿率
(堆肥・生) 地域内利用(堆肥・生)コンパートメントがマイナス 販売交換ふん尿率は県単位
となる場合に販売交換ふん尿を地域内利用(堆
アンケートデータの参照可
ふん尿系外販売交 家畜
換
ふん尿堆肥化施設 家畜
利用
ふん尿廃棄量
家畜
系外
肥・生)と系外に割り振る
同上
同上
堆肥化施設 堆肥化施設を計画する場合にセンター用
と廃棄に分ける
廃棄
廃棄ふん尿総量から尿汚水処理量を差し 総ふん尿量は全国値
引く
廃棄ふん尿率は県単位アン
廃棄ふん尿総量=総ふん尿量×廃棄ふん尿量 ケートデータの参照可
総ふん尿量は全国値
尿汚水処理 総ふん尿量×尿汚水分離率×処理率
尿汚水分離率は県単位アンケート
施設
尿汚水処理量
家畜
購入飼料敷料
系外
家畜
購入飼料敷料は地域外から購入すること 購入飼料敷料は地域外から
とした
購入することとした
家畜からのガス発生
家畜
揮散
頭羽数×単位排出量
データの参照可
森林・林業・ 製材木材
製材所
堆肥利用加工屑
森林・林業 系外
呼吸, げっぷ, 屁による
原木出荷量データを収集
森林・林業 地域内利用 堆肥化利用に必要な量を家畜ふん尿量な おがくず必要量は全国値(推
定)
(堆肥・生) どから求める
ふん尿量のうち自家利用分×おがくず必要量
廃棄加工屑
森林・林業 地域内利用 加工屑総量から堆肥利用分を差し引く
(堆肥・生) 加工屑総量=原木出荷量×副産物率
※水田と水田以外農地を合わせて農地と表示
79
副産物率は全国統計
付表 A3 移動量の計算方法の概要(2/2)
分類
人間の居住
空間
名称
堆肥化施設利用生
ごみ
生ごみ廃棄量
起点
終点
計算の考え 方(例)
デフォルトデータの状況
人間
堆肥化施設
堆肥利用量データを収集
人間
廃棄
農家、非農家別に排出量を計算し、堆肥利
用量と農地直接利用を差し引く
排出量=人口×単位排出量
単位排出量は全国統計
農地直接利用生ご
み
人間
農地
直接利用量=人口×単位直接利用量
単位直接利用量は全国統計
雑排水無処理量
人間
水域
雑排水無処理人口×排出原単位
排出原単位は全国値
生活排水処理量
人間
処理施設
処理区分別に排出量を計算
処理区分別人口×排出原単位
排出原単位は全国値
工場排水は別途計算必要
人間からのガス発生
人間
揮散
人口×単位排出量
呼吸による
緑地・街路樹
刈草剪定枝廃棄量
緑地街路樹
廃棄
一般廃棄物量×刈草剪定枝率
刈草剪定枝率は全国統計
食品産業
地域の食材購入量
食品産業
人間
単位購入食材摂取量は全国ア
ンケートデータ
食品産業廃棄生ご
み
食品産業廃棄汚泥
食品産業
廃棄
食材摂取量に生ゴミ量を加え、自給分を差
し引く
食材摂取量=人口×単位購入食材摂取量
産業廃棄物量のうち動植物性残渣量
食品産業
廃棄
産業廃棄物量のうち有機性汚泥量
購入食材
地域外
食品産業
食品産業の収支
堆肥施肥量
地域内利用
(堆肥・生)
地域内利用
(堆肥・生)
堆肥化施設
農地
農地面積×作目別単位施肥量
揮散
地域内利用(堆肥・生)への流入量からガス
量を計算する
施要する農地面積を推定し
農地面積×作目別単位施肥量
堆肥化施設からの
ガス発生
堆肥化施設
揮散
流入量からガス量を計算する
廃棄汚泥
生活排水処
理
生活排水処
理
廃棄
処理区分別に排出量を計算
処理区分別人口×排出原単位
水域
処理区分別に排出量を計算
処理区分別人口×排出原単位
生活排水処
理
揮散
収支計算より
地域内利用
(堆肥・生)
堆肥化施設
生活排水処
理施設
堆肥化によるガス発
生
堆肥
処理水
処理施設からのガス
発生
水域
農地
県の動植物性残渣量を販売金
額換算
県の有機性汚泥量を販売金額
換算
施肥量は県単位のアンケート
データの参照可
施肥量は県単位のアンケート
データの参照可
排出原単位は全国値
工場排水は別途計算必要
排出原単位は全国値
工場排水は別途計算必要
河川水
水域
系外水域
面積×比流量(平水)
かんがい水
水域
農地
農地排水
農地
水域
面積×単位かんがい水量
単位かんがい水量は期別減水深から計算
面積×単位かんがい水量×排出率
排出率は全国値
降雨
大気
農地、森林
集落、水域
面積×降雨量
降雨量は気象官署別データ
流出水
森林、集落
水域
面積×降雨量×流出率
流出率は全国値
4.各論
①農業(耕種)関連
農林水産統計年報(都道府県の農林水産統計協会)を資料室や近隣部局から入手する。
このほか,都道府県別地力保全基本調査総合成績書,都道府県別の施肥基準,営農指導書
を自治体関係部局から入手する。
対象地域に特殊な農産物がある場合は,日本食品標準成分表を書店で,地域の特産物の
収穫時期,肥料施用量,肥料施用時期が分かる資料(養賢堂など営農関連文献,営農指導
書)などを資料室,自治体関係部局等から入手する。ただし,その農作物の全体に占める
割合が小さい(5%以下程度)場合には,省略しても問題ないと考えられる。
化学肥料の使用状況は,JA の販売量から推定することが考えられるが,販売量データは
整理されておらず,また混合肥料の種類が多いため,成分量の把握は困難である。このよ
80
うな場合には,施肥基準から推定する。
②畜産関連
畜産関連の統計データについては,畜産統計に表示される区分での頭羽数を,自治体関
連部局などから入手する。付表 A4 には,代表的と思われる原単位も記している。
畜産関係の尿汚水処理施設の計画廃水量・水質は,ともに保健所に届けられているが,デ
ータは整理されていない場合が多い。
糞尿の堆肥化センターなど再資源化施設の有無は自治体関係部局に聞き取り,あれば搬
入量,副資材量と入手先,製品量と成分,利用先などを調査する。
付表 A4 家畜の区分と原単位
糞尿原単位
糞尿量
窒 素
リ ン
t/年
kg/年
kg/年
乳牛
搾乳牛(牛乳)
18.69
159.8
18.72
乾乳牛
9.45
35.04
6.28
2歳未満
8.94
57.89
5.88
未経産牛
14.93
53.55
5.99
肉用牛
肉牛(雌1歳未満)
3.61
20.91
2.48
肉牛(雌1歳)
10.62
44.42
4.89
肉牛(雌2歳以上)
10.4
44.17
6.9
肉牛(雄1歳未満)
3.61
23.8
2.37
肉牛(雄1歳)
8.72
54.13
5.69
肉牛(雄2歳以上)
9.2
49.28
8.1
乳用種
8.14
61.1
5.66
交雑種
7.99
57.09
5.29
豚(子取り用)
3.18
13.65
4.09
豚
種おす豚
2.92
23.14
5.8
肥育豚
2.41
18.69
3.18
その他豚(子豚)
0.88
4.42
1.13
採卵鶏
採卵鶏(6ヶ月未満)
0.02
0.33
0.05
採卵鶏(成鶏)
0.04
0.81
0.18
ブロイラーブロイラー(前期)
0.02
0.28
0.04
ブロイラー(後期)
0.06
0.91
0.12
畜種
区分
頭羽数
③食品産業
食品産業に関わるデータの入手は一般に困難である。対象地域内における食品廃棄物の
状況が整理されていない場合,都道府県単位のデータを都道府県から入手する。これによ
り販売金額の原単位を求める。
廃水処理施設は,計画値が都道府県保健所に届けられているが,整理されていない場合
が多い。
生ごみの堆肥化センターなど再資源化施設の有無は自治体関係部局に聞き取り,あれば
搬入量,副資材量と入手先,製品量と成分,利用先などを調査する。
④人間の生活関連
生活排水処理区分人口は自治体の生活排水処理状況調査による。また,下水道,農業集
落排水,合併浄化槽などは総務省公共施設状況調査のデータがある。漁業集落排水,林業
81
集落排水,コミニュティープラントの原単位は農業集落排水に準じてよい。
公共下水道処理施設,集落排水処理施設,屎尿処理場への流入量,放流量,水質,汚泥
発生量は,自治体でデータ整理されている場合が多い。汚泥については,汚泥濃度で物量
が大きく異なることに注意を要する。公共下水道では,(社)日本下水道協会から下水道統
計(行政編)が出版されており,詳細なデータが記載されている。
汚泥など有機性廃棄物が再利用されている場合は,自治体調査による。
⑤緑地・街路樹関連
樹木現存量の体積(重量),芝面積及び剪定枝,刈り草など廃棄物量は自治体関係部局調
べによる。剪定枝,刈り草量については自治体の一般廃棄物総量から推定する方法もある。
⑥林業関連
原木生産量は農林水産統計年報に県単位で記載されている。出荷先の地区内外区分は困
難である。製材所の情報は,電話帳で調べるという方法も考えられる。
⑦その他の情報
降雨量は,気象庁の気象官署(気象台,測候所)で求められている月別平年降水量を整
理して用いる。このデータは,降水量データであるので,降雨だけでなく降雪を含んだデ
ータである。降雨水質は,都道府県環境白書などによる。灌漑水諸元は,実績を関係土地
改良区で入手することが望ましいが,計画値でも問題ないと思われる。水質は都道府県環
境白書などで入手する。
市町村別の土地利用面積比率は,国土数値情報を用いて集計することもできる。
次頁には,デフォールト値として使用することが可能なバイオマス賦存量の原単位
示しているので,参考にして頂きたい。
82
76)
を
地域バイオマスの賦存量を把握するための基礎データ一覧(2010.10.12版)
【目的】
本表は,地域のバイオマス賦存量の把握に当たって必要となる情報の例を整理したものです。バイオマスタウン構想の作成などの際に活用する情報の共有を目的としています。
【データ利用のための留意点】
①取り上げているバイオマス(種類)は,関東都市近郊農業地域(千葉県K市)のバイオマスタウン構想を例としてリストアップしました。
②地域内のバイオマス賦存量を推計する際の「算定方法例」を示しています。入手しやすいデータを用いて推計できるように原単位の例を記載しました。
③バイオマス種類によっては,複数あるいは類似の原単位例を記載しています。目的や入手可能なデータに応じて参照してください。
④バイオマスタウン構想の利活用目標(炭素換算)の算定に必要な炭素率(%)を示しています。数値の次のセルが(生)とあるものは生重量当たり,(乾)とあるものは乾物当たりの(%)です。
⑤農地への還元が考えられるバイオマスについては,窒素率(%)を示しています。数値の次のセルが(生)とあるものは生重量当たり,(乾)とあるものは乾物当たりの(%)です
⑥現在の利用方法・利用量の調査や,今後の利用方法を検討する際の参考として,「利用可能性」の欄に候補を記載しました。
⑦原則としてデータの有効数字を2桁として記載しています。小数点にご注意ください。
⑧できるだけ正確なデータを入力するよう努めていますが,情報の完全性を保証するものではありません。また,このデータ一覧から得た情報の利用によって,万が一損害や第三者との紛争等が発生した場合でも,農村工学研究
所資源循環システム研究チームはそれらに関する一切の責任を負えません。
ここに挙げた算定方法や原単位はあくまでも一例であり,実際のバイオマスタウン構想作成の際には,地域の実態や求める精度に応じて,他の算出方法を適用したり,調査を行うことが必要です。
【利用者へのお願い】
情報の精度や利用しやすさの向上のため,よりよいデータがあれば,データ根拠(条件や引用元)とともにご提供ください。随時更新していきます。(2010.10.12第1回更新。更新リストは表の末尾に掲載)
とりまとめ責任者:清水夏樹
連絡先:[email protected]
※は,複数あるいは類似の項目の原単位が示されているもの
バイオマス名
※乳牛ふん尿
※乳牛ふん尿
※肉牛ふん尿
※肉牛ふん尿
※豚ふん尿
※豚ふん尿
採卵鶏ふん
ブロイラーふん
家庭生ごみ
算定方法例
原単位名
※ふん(搾乳牛)
※尿(搾乳牛)
※ふん(乾乳牛)
※尿(乾乳牛)
家畜種別排出原単位(ふん,尿,敷
※ふん(2歳未満)
料別)×頭数
※尿(2歳未満)
※ふん(未経産牛)
※尿(未経産牛)
敷料(全種共通)
※ふん(搾乳牛)
※尿(搾乳牛)
家畜種別排出原単位(ふん,尿別) ※ふん(乾乳牛・未経産牛)
×頭数
※尿(乾乳牛・未経産牛)
※ふん(2歳未満)
※尿(2歳未満)
※ふん尿(肉牛雌1歳未満)
※ふん尿(肉牛雌1歳)
※ふん尿(肉牛雌2歳以上)
※ふん尿(肉牛雄1歳未満)
※ふん尿(肉牛雄1歳)
家畜種別排出原単位(ふん,尿,敷
※ふん尿(肉牛雄2歳以上)
料別)×頭数
※ふん尿(乳用種)
ふん尿(交雑種)
敷料(肉牛雄雌1歳以下)
敷料(肉牛雌2歳以上)
敷料(肉牛雄2歳以上,乳用種,交雑種)
※ふん(2歳未満)
※尿(2歳未満)
家畜種別排出原単位(ふん,尿別) ※ふん(2歳以上)
×頭数
※尿(2歳以上)
※ふん(乳用種)
※尿(乳用種)
※ふん(子取り用)
※尿(子取り用)
ふん(種おす豚)
尿(種おす豚)
家畜種別排出原単位(ふん,尿,敷
※ふん(肥育豚)
料別)×頭数
※尿(肥育豚)
ふん(その他豚)
尿(その他豚)
敷料(全種別共通)
※ふん(肥育豚等)
家畜種別排出原単位(ふん,尿別) ※尿(肥育豚等)
×頭数
※ふん(子取り雌豚(繁殖豚))
※尿(子取り雌豚(繁殖豚))
ふん(採卵鶏(6ヶ月未満))
家畜種別排出原単位×羽数
ふん(採卵鶏(成鶏))
ふん(ブロイラー前期)
家畜種別排出原単位×羽数
ふん(ブロイラー後期)
1人1日当たりの生ごみ発生量原単
位×人口×365日
1人1日当たりの生ごみ排出量
飲食店従業者1人当たりの生ごみ発
飲食店(産業大分類Iのうち中分類60(一般飲食
生原単位×該当事業所グループの
店),61(その他の飲食店))厨芥発生源単位
従業者数
原単位
単位
13
5.8
7.3
2.2
6.5
2.4
12
2.4
0.54
16.61
4.89
11
2.2
6.5
2.5
3.6
11
10
3.6
8.7
9.2
8.1
8.0
0.31
0.47
1.6
6.5
2.4
7.3
2.5
6.6
2.6
0.62
2.6
1.1
1.8
0.58
1.8
0.15
0.73
0.018
0.77
1.4
1.2
2.6
0.016
0.044
0.016
0.057
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/頭/年
t/羽/年
t/羽/年
t/羽/年
t/羽/年
217 g/人/日
炭素率(%)
窒素率(%)
含水率(%) (生重量当たり/乾 (生重量当たり/乾
86
99
80
99
78
99
78
99
物質による
85
100
85
100
85
100
78
78
78
78
78
78
78
78
物質による
物質による
物質による
78
100
78
100
78
100
72
100
72
100
72
100
72
100
物当たり)
物当たり)
6.9
0
6.9
0
6.9
0
6.9
0
44
35
39
35
39
35
39
4.0
5.4
5.6
4.0
4.5
4.9
4.4
4.5
0.13
46
9.8
35
39
35
39
35
39
13
0
13
0
13
0
13
0
0.6
1.4
0.2
1.0
0.5
1.1
0.2
1.3
0.43
(生)
(生)
(生)
(生)
(生)
(生)
(生)
(生)
(生)
(乾)
(乾)
(乾)
(乾)
(乾)
(乾)
(生)
(生)
(生)
(生)
(生)
(生)
(生)
(生)
(生)
(生)
(生)
(乾)
(乾)
(乾)
(乾)
(乾)
(乾)
(生)
(生)
(生)
(生)
(生)
(生)
(生)
(生)
(生)
(生)
(生)
(生)
(生)
(生)
(生)
(生)
(生)
0.58
0.42
0.43
0.66
0.62
0.54
0.75
0.71
0
0.42
0.011
(生)
(生)
(生)
(生)
(生)
(生)
(生)
(生)
(生)
(生)
(生)
0.35
0.45
0.42
1.00
1.5
0.56
3.6
0.39
(生)
(生)
(生)
(生)
(生)
(生)
(生)
(生)
堆肥化など利用・処理方法につい
てのアンケート調査(酪農組合な
ど)
メモ
飼養形態により敷料の混合状況や性状が異な
る。
(*1)は,農村工学研究所webサイトにて配本
中
(http://nkk.naro.affrc.go.jp/soshiki/soshiki0
4sogo/07_shigenjyunkan/biomass_town.html)
原単位は引用文献によって様々であるため,
算出目的や入手可能な家畜種別に従い原単
位を選択する。
農林水産バイオリサイクル研究「シ
堆肥化,液肥化,生利用/未利用
ステム実用化千葉ユニット」編
(2007):アグリ・バイオマスタウン (水処理,廃棄)
構築へのプロローグ(*1)
堆肥化など利用・処理方法につい
てのアンケート調査(肉牛組合な
ど)
通常,ふん尿と敷料は混合して発生する。
原単位は引用文献によって様々であるため,
算出目的や入手可能な家畜種別に従い原単
位を選択する。
農林水産バイオリサイクル研究「シ
ステム実用化千葉ユニット」編
堆肥化,液肥化,生利用/未利用
(2007):アグリ・バイオマスタウン (水処理,廃棄)
構築へのプロローグ(*1)
堆肥化など利用・処理方法につい
てのアンケート調査(養豚組合な
ど)
一般的な処理方法は,スノコ豚舎(敷料なし)→
固液分離→液分は汚水処理後放流,固分は
堆肥化。
肥育豚に多い「敷料踏み込み式豚舎」では,ふ
ん尿と敷料は混合して発生するため,地域デー
タとして,「踏み込み式豚舎がどれくらい採用さ
れているか?」を把握すると利用率が捉えやす
い。
物質・飼養形態による
72
100
72
100
70
70
70
70
90
41
33
41
33
13
13
13
13
(乾)
(乾)
(乾)
(乾)
(生)
(生)
(生)
(生)
44 (乾)
2.0
1.9
1.7
1.7
(生)
(*1)におなじ
(生)
(生)
(*1)におなじ
(生)
八都県市廃棄物問題対策委員会
(2000):生ごみ等の処理及び有効
1.4 (乾)
利用に関する調査報告書,平成12
年11月(※1)
3.9 (乾)
775
g/従業者
/日
5.0 (乾)
デパート・スーパー従業者1人当たり
デパート・スーパー(産業大分類Iのうち中分類
の生ごみ発生原単位×該当事業所
54(各種商品小売業))厨芥発生源単位
グループの従業者数
1322
g/従業者
/日
90
44 (乾)
原単位は引用文献によって様々であるため,
算出目的や入手可能な家畜種別に従い原単
位を選択する。
財団法人畜産環境整備機構
(1998):家畜ふん尿処理・利用の
手引き(JORA提供情報)
ホテル・旅館(産業大分類Lのうち中分類75(旅
館・その他の宿泊所))厨芥発生源単位
g/従業者
983
/日
農林水産バイオリサイクル研究「シ
ステム実用化千葉ユニット」編
堆肥化,液肥化,生利用/未利用
(2007):アグリ・バイオマスタウン (水処理,廃棄)
構築へのプロローグ(*1)
利用量・方法の調査方法
財団法人畜産環境整備機構
(1998):家畜ふん尿処理・利用の
手引き(JORA提供情報)
g/従業者
/日
食品小売店従業者1人当たりの生ご 食品小売店(産業大分類Lのうち中分類50(飲食
事業系生ごみ
(ただし学校,病 み発生原単位×該当事業所グルー 料品卸売業),56(飲食料品小売業))厨芥発生
プの従業者数
源単位
院は除く)
利用可能性
財団法人畜産環境整備機構
(1998):家畜ふん尿処理・利用の
手引き(JORA提供情報)
1205
ホテル・旅館従業者1人当たりの生
ごみ発生原単位×該当事業所グ
ループの従業者数
原単位出典
堆肥化,生利用,肥料原料として
販売/未利用(廃棄)
堆肥化など利用・処理方法につい
てのアンケート調査
堆肥化など利用・処理方法につい
てのアンケート調査
家庭用コンポスト機械の補助事業
堆肥化,飼料化/未利用(燃焼,廃 を行っている場合は,補助申請世
棄)
帯数を把握
堆肥化,生利用,肥料原料として
販売/未利用(廃棄)
5.4 (乾) 羽原浩史・松藤敏彦・田中信壽
(2002)事業系ごみ量と組成の事
業所種類別発生・循環流れ推計法
飼料化やコンポスト機械の導入実
堆肥化,飼料化/未利用(燃焼,廃
5.4 (乾) に関する研究,廃棄物学会論文
績があれば事業所数を把握(大手
棄)
誌,Vol.13,No.5,pp.315-324
スーパー,ファミリーレストランなど)
(※2)
食品以外の小売店従業者1人当たり 食品以外の小売店(産業大分類I,Lのうち中分
の生ごみ発生原単位×該当事業所 類48,49,51,52,,53,55,58,59)厨芥発生
グループの従業者数
源単位
983
g/従業者
/日
5.4 (乾)
その他サービス業等従業者1人当た その他サービス業等(産業大分類Lのうち中分
りの生ごみ発生原単位×該当事業 類76(娯楽業),93(宗教),95(その他のサービ
所グループの従業者数
ス業))厨芥発生源単位
1025
g/従業者
/日
5.4 (乾)
食品製造業従業者1人当たりの生ご 食品製造業(産業大分類Fのうち中分類12(食料
み発生原単位×該当事業所グルー 品製造業),13(飲料・たばこ・飼料製造業)厨
プの従業者数
芥発生源単位
2216
g/従業者
/日
1.4 (乾)
平飼いの場合は敷料が混ざることがある。
(※1)ごみ組成調査等を基にした7都県市の値
http://www.re-square.jp/data/index.html
(※2)本論文は札幌市における調査(1997)を
基に,各事業所の実際の活動内容を考慮して
従業者数に重みをつけて(たとえば,飲食業に
も事務所があるため,飲食店業務に従事する
割合を乗じている)発生原単位を示している。
業種ごとのリサイクル率も示されているが,調
査年次が古いため,データの利用には注意が
必要。
※学校等給食残 ※学校等給食残さ発生原単位×提
小学校給食残飯
供食数(児童生徒・教員数合計)
さ
0.06 kg/人/日
75
46 (乾)
※病院・介護施 ※病院給食残さ発生原単位×病床
病院給食残飯及び調理くず
数
設等給食残さ
0.23
kg/病床/
日
79
45 (乾)
※学校等従業者1人当たりの生ごみ 学校(産業大分類Lのうち中分類90(社会保険・
※学校・福祉施
発生原単位×該当事業所グループ 社会福祉),91(教育),92(学術研究機関))厨
設等生ごみ
の従業者数
芥発生源単位
293
g/従業者
/日
90
44 (乾)
267
g/従業者
/日
90
44 (乾)
(※4)5病院のサンプリングによる(給食残飯は
堆肥化など利用・処理方法につい 0.24~0.43,調理くずは0.09~0.30と幅があ
てのヒアリング,アンケート調査。 り,中間値を合計している)
堆肥化,飼料化/未利用(燃焼,廃
多量排出事業者については,「一
棄)
般廃棄物減量化等計画書」の提出
3.1 (乾) 羽原浩史・松藤敏彦・田中信壽
を行っているところもある。
(2002)事業系ごみ量と組成の事
(※2)に同じ
業所種類別発生・循環流れ推計法
窒素率は,西谷ら論文から引用
に関する研究,廃棄物学会論文
3.6 (乾) 誌,Vol.13,No.5,pp.315-324
90
44 (乾)
1.4 (乾)
0.78 kg/人/年
0
71 (乾)
2.0
kg/世帯/
年
0
71 (乾)
ファミリーレストランの年間発生量
4800
kg/箇所/
年
0
71 (乾)
千葉県モデル・バイオマスタウン設
計業務調査報告書
小売店廃食用油 小売店数×発生原単位
スーパーマーケットの年間発生量
kg/箇所/
4800
年
0
71 (乾)
千葉県モデル・バイオマスタウン設
計業務調査報告書
学校等給食廃食
給食提供食数×発生量原単位
用油
学校給食廃食用油年間発生量原単位
0.53 kg/人/年
0
71 (乾)
千葉県モデル・バイオマスタウン設
計業務調査報告書
病院・介護施設
地域内の病床数×発生量原単位
等給食廃食用油
病院の廃食用油年間発生量原単位
1.6 kg/床/年
0
71 (乾)
千葉県モデル・バイオマスタウン設
計業務調査報告書
※病院生ごみ
※病院等従業者1人当たりの生ごみ
病院等(産業大分類Lのうち中分類88(医療
発生原単位×該当事業所グループ
業),89(保健衛生))厨芥発生源単位
の従業者数
※厨芥類
※市町村などの地域単位で一般廃
棄物を収集している場合,クリーンセ 一般廃棄物処理量(家庭系,事業系別であれば
ンターのごみ組成調査結果を基に算 なおよい)×ごみ組成調査による厨芥類割合
出する場合もある。
【候補1】一人当たり排出量×人口
1人当たり排出量
家庭系廃食用油発生量(9~11万
t)は,全国油脂事業協同組合連合
会による推計(H21年度)。人口は
H20.10.1現在の人口(127,692千
人)。世帯数は平成17年国勢調査
結果による(49,063千世帯)
家庭廃食用油
【候補2】世帯当たり排出量×世帯数 世帯当たり排出量
飲食店廃食用油 飲食店数×発生原単位
(※4)幼稚園2園,小学校48校のサンプリング
による
3.1 (乾) 西谷隆司,池田由起,山本攻,立
道誠,新居広隆(2005)病院,学校
等の公共施設における食品廃棄物
の排出実態と資源化の検討,生活
3.6 (乾) 衛生,vol.49,No.1,pp.35-43(※4)
直接燃焼,バイオディーゼル燃料
化,石けん化/未利用
83
市町村での回収実績があれば参
照。NPOや生協団体,授産施設等
での取り組みが見られる。アンケー
同報告書では,ヒアリング値に基づいて百貨
ト調査やヒアリングによる把握。
店,スーパー,惣菜小売り店,大手ホテル,
ファミリーレストラン,ファーストフード,食品工場
(畜産食品),テーマパーク,病院,学校給食に
ついて1店当たりの年間発生量原単位が示さ
れているが,規模が一定ではないため全ての
原単位をそのまま利用するのは難しい。
バイオマス名
算定方法例
原単位名
家庭剪定枝・刈
草
市町村などの地域単位で一般廃棄
物を収集している場合,クリーンセン
ターのごみ組成調査結果を基に算出
する。
例)一般廃棄物処理量(家庭系,事業系別であ
ればなおよい)一般廃棄物中に含まれる「木・
竹・ワラ類」×一般廃棄物処理量(ごみ組成調
査の方法は地域によって異なることに注意)
街路樹剪定枝
①千葉県の街路樹剪定枝量(各種道路延長×道路種別発生原単位×緑化率14.4%)
②①×市の街路樹本数/千葉県街路樹本数
公園剪定枝
都市公園面積×剪定枝発生原単位 剪定枝発生原単位(千葉県のもの)
公園刈草
都市公園面積×公園刈草発生原単
公園刈草発生原単位(千葉県のもの)
位
原単位
単位
窒素率(%)
炭素率(%)
含水率(%) (生重量当たり/乾 (生重量当たり/乾
物当たり)
52 (乾)
0.39 (乾)
堆肥化,チップ化,飼料化,燃焼/
未利用(焼却)
57
52 (乾)
0.39 (乾)
堆肥化,チップ化,燃焼/未利用
(焼却)
1.8 t/ha/年
57
52 (乾)
0.39 (乾)
千葉県モデル・バイオマスタウン設 堆肥化,チップ化,燃焼/未利用
計業務調査報告書
(焼却)
4 t/ha/年
80
41 (乾)
2.28 (乾)
千葉県モデル・バイオマスタウン設
堆肥化,燃焼/未利用(焼却)
計業務調査報告書
80
41 (乾)
2.28 (乾)
食品加工残さ(産 市内の食品加工工場へのヒアリング
(市町村調べ)
業廃棄物)
国産広葉樹バーク発生比率
スギ・ヒノキ鋸屑+プレーナー屑発生比率
製材工場残材
(鋸屑・プレー
ナー屑)
カラマツ鋸屑+プレーナー屑発生比率
(素材消費量(m3)×樹種別鋸屑,プ
レーナー屑発生比率(%))×樹種別容 エゾマツ・トドマツ鋸屑+プレーナー屑発生比率
積密度(t/m3)×係数(鋸屑0.26,プ
レーナー屑0.1)
アカマツ・クロマツ,その他国産針葉樹鋸屑+プ
レーナー屑発生比率
国産広葉樹鋸屑+プレーナー屑発生比率
スギ・ヒノキ背板+端材+べら板発生比率
18 %
17 %
13 %
40~50
52 (乾)
利用量・方法の調査方法
メモ
クリーンセンターなどに持ち込まれ
チップ化されたものなどは把握可
窒素率は,剪定枝(くり,びわ,まつ)の平均値
能。
とした
クリーンセンターなどに持ち込まれ
チップ化されたものなどは把握可
能。作業委託された造園業者が
チップ化している場合もある。
都道府県,市町村など委託元となる部局で,
伝票等から把握することができるが,管理部局
が国・都道府県・市町村と複数になるため作業
手間がかかる。
窒素率は,剪定枝(くり,びわ,まつ)の平均値
とした
クリーンセンターなどでのサーマル
リサイクルも視野に入れる。(他の
可燃ごみも同様)
堆肥化,飼料化,燃焼/未利用(焼 利用者がいればアンケート調査ま
却)
たはヒアリングによる把握。
K市の場合,肉牛組合が刈り取りした草のう
ち,天日乾燥し,ロールべーラーで収集して肉
牛粗飼料として利用した量を算出。
対象事業者(※3表下に記載)への
事業所数や求める精度に応じて算出検討(県
堆肥化,飼料化/未利用(燃焼,廃
アンケート調査またはヒアリングに
データの生産量or出荷額按分など)。
棄)
よる把握。
物質による
スギ・ヒノキバーク発生比率
カラマツバーク発生比率
(素材消費量(m3)×樹種別樹皮発生
エゾマツ・トドマツバーク発生比率
比率(%))×樹種別容積密度(t/m3)
アカマツ・クロマツ,その他国産針葉樹バーク発
×係数0.19
生比率
利用可能性
57
道路・河川敷刈
県土木事務所へのアンケート調査
草
製材工場残材
(樹皮)
原単位出典
物当たり)
0.06 (乾)
0.45 (乾)
堆肥原料,家畜敷料,燃料
16 %
21 %
0.13 (乾)
27 %
23 %
23 %
40~50
52 (乾)
0.13 (乾) 伊神裕司・村田光司(2003):製材 家畜敷料,キノコ培地,燃料
工場における木質残廃材の発生と
利用,森林総合研究所研究報告,
vol.2,No.2,111-114
33~50
52 (乾)
0.05 (乾)
15
52 (乾)
0.05 (乾)
23 %
25 %
森林組合や製材工場(地域によって
は製材工場の組合もあり)へのアン
ケート調査やヒアリング。
平成17年木材需給報告書には,木
質バイオマス利用実態調査も含ま
れており,標本調査ではあるが残
材の利用種類別量が記載されてい
る。
25 %
製材工場残材 (素材消費量(m3)×樹種別木くず発 カラマツ背板+端材+べら板発生比率
エゾマツ・トドマツ背板+端材+べら板発生比
(端材・背板・べ 生比率(%))×樹種別容積密度
率
(t/m3)×係数0.57
ら板)
26 %
34 %
アカマツ・クロマツ,その他国産針葉樹背板+
端材+べら板発生比率
26 %
国産広葉樹背板+端材+べら板発生比率
34 %
製紙用チップ,燃料,集成材利用
千葉県建設副産物実態調査(H12)
建設廃材
下水汚泥
生活排水処理汚泥量原単位×下水
濃縮汚泥(下水道)の発生原単位
処理人口
農業集落排水汚 生活排水処理汚泥量原単位×農業 濃縮汚泥(農業集落排水・合併浄化槽)の発生
集落排水対象人口
原単位
泥
千葉県モデル・バイオマスタウン設 製材用チップ,ボード原料,再利
計業務調査報告書
用,燃焼/未利用(焼却・埋立)
産業廃棄物であるため,都道府県
窒素率は,スギ木屑と同じとした。
担当部局への問い合わせが必要。
堆肥化,セメント原料・骨材化,レン 各浄化センターでの濃縮汚泥発生
0.14 (生)
ガ化,メタン発酵,燃焼/未利用(焼 量を市町村で調べるのが妥当。
バイオマス資源循環利用診断モデ 却,埋立)
ル
堆肥化,セメント原料・骨材化,レン 農業集落排水処理施設での濃縮
0.20 (生)
ガ化,メタン発酵,燃焼/未利用(焼 汚泥発生量を市町村で調べるのが
却,埋立)
妥当。
0.55 t/人/年
97
0.98 (生)
0.23 t/人/年
97
1.11 (生)
9
37 (乾)
0.53 (乾)
バイオマスタウン構想では,「すきこ
飼料化,堆肥化,マルチ利用,畜
み」は未利用とカウント。JA,農家
産敷料,わら加工,その他/未利用
へのアンケート,ヒアリングにより把
(焼却,すき込み)
握。
0.32 (乾)
JA,農機具利用組合等ライスセン
敷料,園芸資材利用,マルチ利
用,堆肥化,くん炭,暗渠資材,燃 ターに対するアンケート調査、ヒアリ
ングにより把握。
料/未利用(焼却等)
稲わら
原単位×収穫量
稲わら発生率
kg/収穫
1.2 物1kg/1
作
もみ殻
原単位×収穫量
もみ殻発生率
kg/収穫
0.30 物1kg/1
作
9
35 (乾)
麦わら
原単位×収穫量
麦わら発生率
kg/収穫
1.8 物1kg/1
作
14
42 (乾)
kg/収穫
0.94 物1kg/1
作
86
39 (乾)
kg/収穫
1.5 物1kg/1
作
87
41 (乾)
3.7 (乾)
飼料化,堆肥化,メタン発酵,燃焼 JA,農家へのアンケート,ヒアリン
/未利用(すき込み,焼却)
グにより把握。
例3)秋冬ねぎ副産物係数×収穫量 秋冬ねぎ副産物係数
kg/収穫
0.26 物1kg/1
作
94
41 (乾)
3.4 (乾)
飼料化,堆肥化,メタン発酵,燃焼 JA,農家へのアンケート,ヒアリン
/未利用(すき込み,焼却)
グにより把握。
ゴルフ場の数(ホール数)×刈芝発生
刈芝発生原単位
原単位
t/年・18
600
ホール
23
46 (乾)
高見澤一裕(岐阜大学応用生物科
学部)(2008):都市とバイオエタ
堆肥化,燃焼/未利用(焼却,放
1.5 (乾)
ノール,生活衛生,vol.52,No.5, 置)
267-273
57
52 (乾)
0.05 (乾)
千葉県モデル・バイオマスタウン設 堆肥化,チップ化,燃焼(薪利用), 森林組合へのアンケート,ヒアリン
窒素率は,スギ木屑と同じとした。
計業務調査報告書
素材利用/未利用(焼却,放置)
グにより把握。
57
52 (乾)
0.05 (乾)
間伐されたが,用材としての利用価値がありな
がらコストの折り合いがつかず山から出せない
千葉県モデル・バイオマスタウン設 堆肥化,チップ化,燃焼(薪利用), 森林組合へのアンケート,ヒアリン
もの,山から出せるが用材としての利用価値が
計業務調査報告書
素材利用/未利用(焼却,放置)
グにより把握。
ないものなど。窒素率は,スギ木屑と同じとし
た。
58
52 (乾)
2.0 (乾)
52
37 (乾)
0.05 (乾)
0.51 (乾) 千葉県農林総合研究センター提供
の副産物係数より算出。副産物係
数に関わる研究成果は,千葉県農
林総合研究センターに帰属する。
(数値の使用には許可が必要)
例1)ばれいしょ副産物係数×収穫
量
野菜等非出荷部 例2)かんしょ副産物係数×収穫量
ゴルフ場刈芝
ばれいしょ副産物係数
かんしょ副産物係数
林地残材(例:ス 県素材生産量×(該当市町村のスギ人工林面積/都道府県スギ人工林面積)×0.3(残材率)×0.81(製材比重)
ギ)
間伐残材
(県間伐未利用材積/県間伐面積)×市間伐面積×1.3(バイオマス比率)×0.81(生材比重)
被害木(まつくい
虫被害木,枯損 発生状況に応じて調査(市町村調べ)
木,風倒木など)
竹林面積×(平均蓄積量50t/ha÷伐採周期5年)より算出(期待値)
竹材
例)ナシ収量1kg当たりの1年生枝剪定量
0.19
kg/収穫
物1kg
57
52 (乾)
例)ブドウ収量1kg当たりの1年生枝剪定量
kg/収穫
0.23
物1kg
57
52 (乾)
該当する果樹収量1kg当たりの1年生
枝剪定量または剪定枝重量×収量
果樹剪定枝
飼料化,堆肥化,敷料,わら加工・ JA,農家へのアンケート,ヒアリン
0.70 (乾) 千葉県農林総合研究センター提供
の副産物係数より算出。副産物係 園芸等/未利用(焼却,すき込み) グにより把握。
数に関わる研究成果は,千葉県農
林総合研究センターに帰属する。
飼料化,堆肥化,メタン発酵,燃焼 JA,農家へのアンケート,ヒアリン
2.4 (乾) (数値の使用には許可が必要)
/未利用(すき込み,焼却)
グにより把握。
0.51 (乾)
みかん剪定枝
4.10 t/ha
33
50 (乾)
ゴルフ場への調査
千葉県モデル・バイオマスタウン設 堆肥化,チップ化,燃焼(薪利用), 市町村の農業、公園関係の部局が
窒素率は,ササと同じとした。
計業務調査報告書
素材利用/未利用(焼却,放置)
把握していることが多い。
千葉県モデル・バイオマスタウン設 園芸利用,素材利用/未利用(焼
計業務調査報告書
却,放置)
堆肥化,燃焼/未利用(焼却)
竹林所有者または竹材利用者へ
のヒアリングなどにより把握。
よく利用されている算定方法だが,あくまでも
期待値であり,発生量はもっと少ないのが実態
と思われる。
果樹農家へのアンケート調査,ヒア
窒素率は,剪定枝(くり,びわ)の平均値
リングなどにより把握。
木質バイオマスエネルギーの地域
別利用可能性に関する研究,佐
野・三浦,2003(JORA提供情報)
含水率,炭素率,窒素率について,黒文字は原単位出典と同じ
オレンジ文字のデータ:中村真人・柚山義人(2005):各種バイオマス成分のデータベース整備,農工研技報,No.203,57-80
緑文字のデータ:千葉県モデル・バイオマスタウン設計業務調査報告書
(※3)産業廃棄物としての食品加工残さには,以下のものが該当する。
【動物性残さ】魚・獣の骨,皮,内臓などのあら,ボイルかす,うらごしかす,缶詰・瓶詰不良品,乳製品精錬残さ,卵から,貝がら,羽毛など。
【植物性残さ】ソースかす,しょうゆかす,こうじかす,酒かす,ビールかす,あめかす,糊かす,でんぷんかす,豆腐かす,あんかす,茶かす,米・麦粉,大豆かす,果実の皮・種子,野菜くず,薬草かす,油かすなど。
○2010.10.12更新
・炭素率,窒素率について,生重量当たり,乾物当たりのいずれかを明記しました。
・農業集落排水汚泥の炭素率,窒素率の値を訂正しました。
・牛ふん尿,豚ふん尿,みかん剪定枝の原単位例を追加しました。
84
付属資料B
バイオマス変換技術
バイオマス利活用には,廃棄物処理の側面が強いものとマテリアル・エネルギー生産の
側面が強いものがある。マテリアル利用のための変換技術は,実用化されているものが多
い。エネルギーに変換する技術は,熱化学的変換技術と生物学的変換技術に分類すること
ができる。一般に,含水率の低いバイオマスほど前者を適用する方が有利であり,含水率
が高くなると水の蒸発に消費されるエネルギーが多くなるため,後者を適用する方が有利
となる。変換技術の概要を付表 B1 に示す。
付表 B1 実用化されている変換技術の概要 77)
名称
堆肥化
メタン発酵
炭化
飼料化
バイオディーゼル燃
料化
概要
対象原料
好気性微生物を利用してバイオマスを分解し,作
物の生育にとって有用で,農作業者にとっても取
扱いやすく,安全なものにする技術
嫌気性微生物を利用してバイオマスを分解し,メ
タンガスを回収する技術
バイオマスを低酸素雰囲気下で加熱し,熱分解
(乾留)し,炭を作る技術
バイオマスを乾燥,液状化し,飼料を作る技術
エステル化反応により廃食用油などの食用油を
軽油代替燃料に変換する技術
エタノール発酵
発酵,蒸留,脱水等によりエタノールを作る技術
直接燃焼
バイオマスを直接燃焼し,蒸気タービンで発電す
る技術
ガス化
バイオマスをガス化することにより,減量化処理
と発電をする技術
固形燃料化
バイオマスを木質ペレット,RDFなどの固形燃
料に変換する技術
利用態様
家畜排せつ物,食品廃棄物
肥料,土壌改良材
家畜排せつ物,食品廃棄物
電気・熱(ガスエンジン発電)
家畜排せつ物,食品廃棄物
肥料,土壌改良材,燃料
食品廃棄物
廃食用油(使用済み天ぷら油
等),資源作物
資源作物,作物残さ,木質系
バイオマス
木質系バイオマス,農産廃棄
物,鶏糞
食品廃棄物(生ごみ),一般廃
棄物,産業廃棄物,下水汚泥,
し尿汚泥
木質系バイオマス(木質ペレ
ット化),食品廃棄物(RD
F化)
飼料
ディーゼルエンジンの燃料
バイオエタノール(ガソリン
代替)
電気・熱(蒸気タービン発電)
電気,熱(蒸気タービン発電),
溶融物(スラグ,メタル)
固形燃料
①マテリアル(製品)利用
堆肥や畜産・養魚用の飼料化は既に実用化されている技術であるが,利用者から見た品
質の安定や利便性の向上に課題が残っている部分もある。
木質系廃材・未利用材については,量的に多いことから従来より様々な技術開発が行わ
れてきており,木質系廃材を粉砕してから再構成する再生木質ボードや木材-プラスチッ
ク複合素材は既に広く利用されている。さらに,リグニン(木材を構成する成分の1つで,
微生物分解を受けにくい安定した構造をしている)と古紙との複合による木質プラスチッ
クの製造技術が実証レベルにあり,グラファイト(黒鉛)を始めとする木質系素材の製造
技術開発ついても精力的に取り組まれている。
また,近年,生分解性素材について,従来のプラスチックと異なり微生物により分解さ
れるという特性等に強い関心が寄せられており,バイオマス由来の乳酸やでんぷんを原料
としたバイオマス・プラスチックについては,既に一部商業生産が開始されている。今後,
廃棄,リサイクル時の環境面における影響等に十分配慮し,耐熱性や強度等の物性の改良
が進めば,用途と需要の拡大が期待される。
さらに,水産廃棄物,農作物非食用部等から機能性食品や化学製品の原料を製造する技
術も期待されており,例えば,機能性食品の原料となる DHA(ドコサヘキサエン酸),EPA
(エイコサペンタエン酸),γ-アミノ酪酸,食物繊維,甲殻類を原料として抗菌繊維の原
85
料として利用されるキトサン及び化粧品の原料となるコラーゲンを抽出する技術について
は既に実用化されている。現在,様々な機能を有し医薬品や新素材の原料となりうる各種
物質を製造するための技術開発が実証段階若しくは基礎段階で進められている。
②エネルギー利用
バイオマスのエネルギー化技術のうち,実用段階にあるもの,実証や研究の段階であっ
てもその導入の必要性が高いと思われるものについて付表 B2 に整理した。熱化学的変換技
術のうち,木くず焚きボイラーやペレットストーブ等による直接燃焼,固形燃料化につい
ては北欧諸国で多くの実績がある。炭化と RDF 化(ゴミ固形化燃料;Refuse Derived Fuel)
は国内での実績がある。ガス化については種々の方法が研究されているが,部分酸化やガ
ス化経由のメタノール合成技術の実現可能性が高いと考えられる。廃食用油からバイオデ
ィーゼル燃料(Bio Diesel Fuel)を作り出すエステル化技術については実用段階にあり,デ
ィーゼル機関用の代替燃料として有望視されている。一方,生物学的変換技術については,
実用段階にあるものは家畜排せつ物等を原料とするメタン発酵と糖・でんぷん系を原料と
するエタノール発酵である。将来的には,水素生産に係る技術が有望と考えられる。藻類
バイオマスについても注目が集まっている。
付表 B2 バイオマスのエネルギー化技術 77)
種類
熱
的
変
換
技
術
または生成物
対象バイオマス
木質系
炭化,固形燃料化
炭,木質ペレット,RDF
エステル化による
メチルエステル(ディーゼル機関
廃食用油
用燃料)
バイオディーゼル油合成
直接燃焼
ガス化(部分酸化)
生
物
的
変
換
技
術
変換によって得られるエネルギー
メタン発酵
エタノール発酵
嫌気性発酵による水素生産
食品廃棄物
熱(ストーブ,ボイラー),
木質系
電気・熱(蒸気タービン発電)
電気・熱(蒸気タービン・ガス
タービン発電),合成メタノール 木質系
(自動車用燃料)
家畜排せつ物
電気・熱(ガスエンジン発電)
食品廃棄物
エタノール(自動車用燃料)
電気・熱(水素ガス→燃料電池)
光合成による水素生産
段階
実用
実用
実用
実証
実用
糖・でんぷん系
実用
木質系
実証
糖・でんぷん系
研究
家畜排せつ物
農畜産業系バイオマスは,飼料,堆肥,液肥,炭化物などのマテリアル利用を主とする
が,地域にこれらの需要がない場合にエネルギー化を考えるというスタンスが一般的であ
る。家畜排せつ物,食品加工残さ,生ごみ,生活廃水汚泥及び農林業残さに対して,適用
性の高いバイオマス変換技術は付表 B3 に示すように整理される。
86
付表 B3 適用性の高いバイオマス変換技術 77)
対象バイオマス
変換技術
堆肥化
家畜排せつ物
炭化
○
混合
○
○
○
乳牛糞尿
分離
○
○
○
混合
○
○
○
豚糞尿
分離
○
○
○
混合
○
○
○
鶏糞
ブロイラー
○
○
○
○
飼料化
バイオディ
ーゼル燃料
○
直接燃焼
ガス化
固形燃料化
○
○
焼酎粕(芋)
○
○
○
○
精糖残さ(バガス)
○
○
○
○
○
○
生ごみ
○
○
○
○
○
○
可燃ゴミ
○
○
○
○
○
廃食用油
ゴミ
乾式
メタン発酵
肉牛糞尿
おから(豆乳粕)
食品加工残さ
湿式
メタン発酵
○
下水汚泥
○
○
○
汚泥類
し尿
○
○
○
浄化槽汚泥
○
○
○
農林業残さ
林産残さ(木くず)
○
○
農産残さ(もみ殻)
○
○
○
バイオマス変換に関する情報としては,何を原料に,どのくらいの量から,何がどのく
らい生成できるか,そのために必要なエネルギーやコストはいかほどか,環境への負荷は
いかほどかなどの整理が重要である。
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〒305-8609 茨城県つくば市観音台 2-1-6
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究所
柚山(ゆやま)義人
Mail:[email protected]
Tel:029-838-7507
Fax:029-838-7609
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