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特別目的会社の連結をめぐる会計問題
1 4 3 特別目的会社の連結をめぐる会計問題 一一不動産開発型を中心に一一 C o n s o l i d a t i o nProblemo fS p e c i a lPurposeCompanies o rE n t i t i e si nFinancingf o rBigP r o j e c t s 名越洋子 yo koNa k o s h i 1.はじめに 日本では,連結会計基準の改正により,不動産開発型や投資運用型の特別目的会社 ( S P C ; s p e c i a lp u r p o s ec o m p a n y )を連結することが可能となった ω。議決権のない形であってち,実 質的な支配を認め,連結することもあるが,そのような場合,会計理論の面と会計情報の開示に おいては,どのような説明が行われているのであろうか。 本稿では,最初に,特別目的会社の種類を考察し,連結に対して会計基準が示す考え方の変化 を明らか l こする O 次に, 日本の不動産会社を例として,不動産開発型の特別目的会社を連結範囲 に含めるかについて,どのような傾向がみられ,会計基準の変化により,情報開示や特別目的会 社の設立に関わる戦略がどのように変わっていったのかを考察する。 連結範囲の中に特別目的会社を含めることについては,米国での 2001年末のエンロン社の破 たんがきっかけであり,米国の規制の変化の動向が波及していった。特別目的会社の連結をめぐ る米国の会計基準の動向は別稿にゆずりベ本稿では,ぞれが,日本の会計基準と間際財務報告 基準に与えた影響ーを中心にとりあげる。その際, 日本での連結範囲の拡大は,いわゆる投資事業 組合の連結と今回の特別目的会社の連結との三段階があ勺た。また,国際財務報告基準に先立つ 国際会計基準の段階では,ヱンロン社の破たん以後の米閏基準と同様の連結概念であったが, 2007年からの世界的な金融危機により,証券化ビークルなど特別目的会社のリスクが初めて明 らかとなった点が問題となった。 このように,経済面での状況変化が会計基準に与える影響と,会計基準が会社の戦略に与える (1) 企業会計茶準委員会 ( 2 0 1 1 a ) による。また,企業会計基整委員会 ( 2 0 1 1 c ) 及び企業会計基準委員 会 (2011d) も参照のこと。 (2) 特別目的会社の連結に関する米国の会計基準の動向については,かつて,名越 ( 2 0 0 3 a ) 及び名越 ( 2 0 0 3 b ) でとりあげた。さらに,川本 ( 2 0 0 3 ) 及び山地 ( 2 0 0 3 ) が詳しい。 1 4 4 「明大商学論叢』第 9 7巻第 2号 ( 2 1 8) 影響について考察した後に,資金調達の特性を考慮した考え方も提示していきたい。 2 . 特別目的会社の種類と連結除外の論理 日本では,特別目的会社は,元来,資産流動化のために利用されることが多かった。このよう なケースでは,資産の切り離しを目的として特別目的会社が活用されることから,子会社とみな さないこととなっていた ω。 資産の切り離しを目的とする特別目的会社がなぜ連結されないかというと,親会社に該当する 企業から,特別目的会社に資産が移転する資産流動化の取引が,連結上は内部取引にあたり,消 去されてしまうからである。取引が消去されると,資産流動化の前後で連結財務諸表に変化はな く,移転された資産は計上されたままとなる。これでは,資産流動化の効果を会計上表すことは できない。そのことから,資産流動化を目的として設立された特別目的会社は連結から除外,す なわち子会社に該当しないものと推定されたのである。 その後,連結除外により,特別目的会社の実態が見えにくいので,対応策として,子会社に該 当しないものと推定された特別目的会社については,開示対象特別目的会社として,詳細な注記 が開示されることとなった ω。逆に,連結され子会社となれば,開示対象特別目的会社から外れ ることになった。 ただ,特別目的会社の種類には,上記の資産流動化を目的としたもののほか,不動産開発目的 のものと投資運用目的のものとがある。資産流動化を目的としたものが資産を譲渡するために設 立されるに対して,不動産開発を目的としたものは,出資して開発事業を行うために設立される。 不動産開発目的の場合,プロジェクトに必要な資金が特別目的会社によって調達されるものの, プロジェクト終了後には,特別目的会社に出資する企業は,開発持分の売却などにより,開発し た不動産を流動化することが多い。ここでは,不動産の流動化が行われる前に,出資企業が特別 目的会社を連結するか否かが問題になるであろう。 このように,特別目的会社には,資産流動型,不動産開発型,投資運用型という 3種類がある ものの,実務上,連結に関しては, 3種を区別せず,資産流動型の特別目的会社が連結されない ことを理由に,不動産開発型と投資運用型の特別目的会社も連結除外とするという考え方が,あ る時期までは主流であったと思われる。しかし, 2001年末の米国のエンロン社の破たんの原因 が特別目的事業体 ( SPE;s p e c i a lpurposee n t i t y ) ω の損失隠しであったことから,米国,続い て日本で,特別目的会社の連結に対する考え方が変わったのである。 (3) 企業会計審議会(19 9 8 ) による。 (4) 企業会計基準委員会 ( 2 0 0 7 ) による。 ( 5) 日本では特別目的会社 ( S P C ) とよぴ,米国を含む国際的な用語では特別目的事業体 ( S P E ) とよぷ。 E n t i t y ) には,会社 (Company) も含まれる。本稿では, 日本における表現では特別目的会 事業体 ( 社とし,米国や国際的な表現として特別目的事業体として記述する。 (219) 特別目的会社の連結をめぐる会計問題 1 4 5 3 . 特別目的会社の連結までの経緯 3 .1.投資運用型の特別目的会社(投資事業組合)の連結 前述したように,かつて,日本では,不動産開発型や投資運用型の特別目的会社が設立された 際,資産流動型の特別目的会社と同様に,連結除外とする実務が主流であった。しかし, 2001 年末の米国のエンロン祉の破たんの原因が,特別目的事業体の損失隠しであったことから,米国 でそれらの連結への機運が高まったことが日本にも影響を与えたヘ 日本では, 2000年代の初めに,まず,投資運用型の特別目的会社の連結について,投資事業 組合として議論が行われた。日興コーディアル証券やライブドアの損失をめぐる問題の影響もあ り,投資事業組合を支配力基準や影響力基準によって,連結するか否か,また関連会社として処 理するかを判断することができるような規定が実務対応報告として 2006年 に 定 め ら れ た へ そ こでは,投資事業組合に関して,議決権ではなく, I 業務執行権」を,実質支配力を問う尺度と して用いることとされた。 特に,投資事業組合が,複数企業の均等出資あるいは小さい比率での出資で構成されることが 多いため,均等出資する企業のうち,どの企業が,業務上リーダーシップをとるのかが問われ, そのことが業務執行権として議論された。ここでは,業務に関する執行権の過半を有していれば 支配とみているが,業務執行権の 50%以下を有している場合でも,投資事業組合の資金調達額 の過半を融資及び保証したり,投資事業から生じる利益または損失の概ね過半について享受また は負担している場合には,子会社とみることとなった。また,投資事業組合の財務または事業の 方針を決定する出資企業が明らかな場合,その出資企業の子会社に該当しない他の会社を介在さ せて支配していたとしても,投資事業組合は出資企業によって支配されているとみることにな る(8)。 このように,投資事業組合をどの企業の子会社とみるかについては,業務執行権の問題だけで はなく,資金調達額の過半の融資あるいは保証,投資事業から生じる過半のリターンの享受と過 半のリスクの負担に注目し,さらに,投資事業組合の財務上または事業上の方針を決定する出資 企業が問題となるヘ特に,最後の点は,投資運用型の特別目的会社に固有のことではなく,不 動産開発型にも通用するとも思われる。 なお, 2007年には,企業会計基準適用指針により,前述のように資産流動型であることを理 (6) エンロン社破たん後の米国の連結会計基準の動向について,山地 ( 2 0 0 3 ),名越 ( 2 0 0 3 a ) 及び名越 ( 2 0 0 3 b ) を参照のこと。また, FASB ( 2 0 0 3 a ) 及び FASB ( 2 0 0 3 b ) を参照のこと。 (7) 企業会計基準委員会 ( 2 0 0 6 ) による。 (8) 企業会計基準委員会 ( 2 0 0 6 ) Q1に対する答えの 2による。 (9) 実際に投資事業組合の連結が行われたケースの分析 ( 2 0 0 6年度中間期〉として,中野 ( 2 0 11)と吉 井 ( 2 0 0 8 ) が詳し L、。吉井 ( 2 0 0 8 ) では,財務諸表の利用者から見た連結開示の問題点や業務執行権の 暖昧さも指摘されている。 1 4 6 『明大商学論議」第 97巻第 2号 ( 2 2 0) 由に子会社に該当しない特別目的会社について,開示対象特別目的会社として,詳細な補足開示 が義務付けられたのである υ九 3 . 2 . 不動産開発型の特別目的会社の連結 日本では,このような投資事業組合の連結への動き ω の後に, 2011年 3月に,連結会計基準 の改正があり,資産流動型以外の特別目的会社について,連結除外にはしないこととなった。改 正企業会計基準第 22号「連結財務諸表に関する会計基準」では,特別目的会社を子会社に該当 しないものと推定することについて,特別目的会社に資産を譲渡した企業には適用されるが,特 別目的会社への同資食業には,適用されないものどしている(1九この改正された連結会計基準 : 1 以 後 の適用は, 2013年 4月 1日以後開始する連結会計年度の期首とされたが, 2011年 4月 11 開始する連結会計年度の期首からの適用が可能であった。 そこで,不動産開発型の特別目的会社を設立した企業は,どのように対応したのであろうか。 前述のように,特別目的会社の連結を規定した企業会計基準は, 2011年 4月 1日以後開始する 連結会計年度からの適用が可能である O 任意適用であるうちに,連結を選択した企業はあるので あろうか。 また,改正された連結会計基準では,適用初年度における経過的な取扱い(13) として,適用に より新たに連結に含められる子会社については,適正な帳簿価額により評価し,親会社が保有す る子会社投資との差額は利益剰余金に直接加減するものとされている。いわゆる簿価連結である。 他方,時価により評価することもできるとし,時価連結が可能であるという。簿価連結か時価連 結かについては,新たに連結に含められるすべての子会社に一律に適用することとしているが, 一律に適用することが困難な場合には,異なる取り扱いも認められるという。 次節では,不動産開発型の特別目的会社を数多く設立した日本の不動産会社について,特別目 的会社の連結の実情を分析していきた L、。その際,連結会計基準への対応と特別目的会社の設立 にかかわる戦略の変更があったかについても桟目したい。 4 . 不動産会社による特別目的会社の連結の実情 本節では,不動産開発型の特別目的会社の連結について,不動産会社の対応を調査した。調査 対象は,東急不動産,三井不動産,三菱地所,東京建物とし,有価証券報告書を参照した。 4社 とも, 日本の会計主主準を適用している。 ( 1 0 ) 企業会計基準委員会 ( 2 0 0 7 ) による。開示の実態については中野 ( 2 0 1 1 )p .1 2 3が詳し L、。また吉井 ( 2 0 0 8 ) を参照された L 。 、 ( l l ) 中野 ( 2 0 1 1 )p p . 1 2 1 1 2 2および吉井 ( 2 0 0 8 ) を参照されたい。 ( 1 2 ) 企業会計基準委員会 ( 2 0 11 )7 2による。 ( 13 ) 以下の帳簿価額による連結や時価による連結に関する説明は,企業会計基準委員会 ( 2 0 1 1 a )4 4 4 (3)~(5) による。 ( 2 2 1) 特別目的会社の連結をめぐる会計問題 1 4 7 前述のように,連結会計基準では,経過的な取扱いとして,帳簿価額による連結と時価による 連結との両方が認められている。以下では,不動産会社が特別目的会社を連結したのか,その際 にどのような方法をとったのかについて・注目した。なお,特別目的会社が子会社として連結され ると,連結実施年度の前年まで開示対象特別日的会社として詳細な記載が行われていたが,連結 実施年度からは記載は省略されるため,この点も確認しておく。 4 .1.東急不動躍のケース 東急不動産では, 20日 年 4月 1日開始の年度に,特別目的会社の連結を行っている。大手不 動産会社の中では,改正連結会計基準を一番早い時期に適用したことになる。連結子会社に関す る説明の中で,実質支配している匿名組合 2 9社を連結子会社とすることが述べられている。 また,企業結合の説明にも,この匿名組合 2 9社を述結子会社としたことがふれられ,支配獲 得時の純資産を時価評価し,のれんが発生したことが述べられた。なお,のれんの全額は,減損 損失として処理された。他 H,負ののれんも発生し,負ののれん発生益として処理 dれた。みな し支配獲得日は, 2 0 1 1年 4月 1日とされている。 特別目的会社が連結される前の年度までは,開示対象特別目的会社として,詳細な開示が行わ れていた。匿名組合出資金についての詳細な説明においては,議決権のある出資を有していない ことが書かれていた。ノンリコース借入金については, 2011年度以降も長期と短期に分けて注 記で計上されている。 4 . 2 . 三井不動産のケース 三井不動産では, 2012年 4月 1日開始の年度に,特別目的会社の連結を行ったの特別目的会 社 3 0社を連結に含めている。 r s P c連結に関する会計方針の変更」においては,帳簿価額で評 価して連結したと説明されている。特別目的会社の資金調達であるノンリコース借入金は,連結 貸借対照表上に,長期と短期に分けて独立に計上されている。 前年度まで行われていた,開示対象特別目的会社としての詳細な開示は行われていない。 4 . 3 . 三菱地所のケース 三菱地所でも, 2012年 4月 1日開始の年度に,特別目的会社の連結を行った。注記事項には, 特定目的会社 6祉が連結に含まれているとされ,他に,出資の一部償還や他社との吸収合併によ り,連結に含まれない特定目的会社についても説明が行われている。 r s p c連結に関する会計方 針の変更」においては,連結する特別目的会社の資産および負債のすべてを時価により評価した との説明が行われ,ノンリコース借入金は,長期と短期に分けて独立に計上されている。 開示対象特別目的会社としての詳細な開示は,前年度まで行われていたが,連結に伴い,省略 されることとなった。ただし,三菱地所が特別目的会社に対する優先出資を行っていることと, 一部の特別目的会社が発行した特定社債の引受を行っていることが説明され,将来どのように回 1 4 8 『明大商学論叢』第 9 7巻第 2号 (222) 収するかについて,連結された年にも記載が行われている。 4 . 4 . 東京建物のケース 0 1 4年 1月 1日開始の年度に,改正連結会計基準を適用して,特別目的会社 東京建物では. 2 0 1 4年度第一四半期から第三四半期まで,特別目的会社の連 を連結する予定で,現段階では, 2 結が説明されている。それとともに,一部が持分法でも処理されている。 2 0 1 4年度は,帳簿価 額による連結が行われている。 ただし,すでに. 2 0 1 2年度に,特別目的会社 l社が連結されていた。関連会社の状削につい ての説明では,この特別目的会社は特定子会社に該当し,議決権の所有割合が 50%以下である が,実質的に支配しているので連結子会社であるという。なお,この特別目的会社の優先資本金 に対する,東京建物による出資比率は. 100%であるという。 2 0 1 4年度以前は,特別目的会社の多くを連結していないため,開示対象特別目的会社として, 3 4社に関する詳細な開示が行われている。ただし,これらの特別目的会社に対し,東京建物お よびその連結子会社である東京建物不動産販売の両社による出資比率は, 40%以上ではあるが, 議決権のある出資を有していない。 4 . 5 . 特別目的会社の設立に関する戦略への影響 以上より,大手不動産会社に関しては,特別目的会社を連結し,帳簿価額による連結と時価に よる連結のいずれかを選択している。連結されるからには支配に関する説明が行われるが,多く の場合,議決権の所有割合が 50%以下で,議決権のない優先出資の形態がほとんどである。時 には「議決権のある出資は有していな L、」と記述されるが,実質的な支配が存在するという説明 が行われている。 連結されて子会社化されると,詳細な開示が行われないため,特別目的会社に閲する戦略が大 幅に変化したかは明らかではな L、。三菱地所において,出資の償還や吸収合併があったとの記述 がある程度である。また,特別目的会社に特有の資金調達であるノンリコース借入金に閲しては, 独立して計上されることが多い。 不動産開発型の特別目的会社の連結時期については,東急不動産が改正連結会計基準を 2 0日 年度に適用したので一番早かったが,改正連結会計基準の適用前に,東京建物が 2 0 1 2年度に特 別目的会社 I社を連結したことが興味深い。すなわち,東京建物では,適用前に,改正前の連結 基準に従ったうえで支配と見て連結したと考えられるが,この背景としては次のような事情が考 えられる。 不動産開発型の特別目的会社を設立する場合,一般的には資金調達目的であり,担保物件によ る借り入れというより,不動産開発などのプロジェクトの運営によってもたらされる予想キャッ シュフローの評価に基づく資金調達であるといえる。これが,一般的にいう「プロジェクトファ イナンス」である。確かに. 1社で 100%の出資を行っている場合には,連結せざるをえないと (223) 特別目的会社の連結をめぐる会計問題 1 4 9 一般的には考えられるであろう。このような l社の出資による特別目的会祉のリスクは,銀行か ら見て,出資企業のリスクに等しいといえる ω 。つまり,プロジェクトファイナンスと言って も,出資企業が債務保証を行うことと変わりがないともいえる。 2012年度の東京建物による特 別目的会社の連結は,これが理由のーっと思われる。 そこで,次第に,出資割合が限定された,複数の会社による均等出資の特別目的会社を活用し たプロジェクトファイナンスへと移行した。特にノンリコース借入金については,出資持分以上 の責任をとらない形として,連結除外として処理できるようなプロジェクトファイナンスの仕組 みが存在する。ノンリコース借入金のこのような性質については,開示対象特別目的会社として の詳細な開示においては,示されることもある。 例えば,上記のプロジェクトファイナンスの仕組みにおいて,投資事業組合の連結で見たよう に,業務執行権に該当する考え方を援用すれば, もし 3社以上の企業で均等出資しても,ノンリ コース借入金のリスクをどとが負担するかに注目することで,親会社を特定することは可能では ないだろうか。それにより,不動産開発型の特別目的会社のすべてを連結に含めようとすること になるが,ノンリゴース借入金が出資者から法律的にリスクが遮断されているという特性を無視 しているという指摘もなされている白日。 なお, 日本では,資産流動化型を除外するものの,特別目的会社のすべてを連結に含めようと することは,広範囲に連結範囲に網をかける国際財務報告基準(IFRS) の考え方と一致する。 次節では,そのきっかけとなった連結の概念の変化について改めて考察した L凡 5 . 国際財務報告基準の動向と日本企業への影響 5 .1.従来の支配概念と新しい支配概念 従来,連結する際の支配力を問う尺度として, 日本基準,米国基準,国際会計基準において, 議決権を中心とした支配概念が用いられてきた(l九実質的な支配力を問う場合も,意思決定機 関を支配できるかという意味で,議決権は重要な要素であった。しかし,意思決定機関への支配 といっても,議決権による支配の概念に限らないという考え方が出てきた問。 伊!として,議決 権ではなく,契約に基づく取り決めによる支酎が可能であるような特別目的事業体がとりあげら れるのである (18)Q ( 14 ) 森ビ、ル株式会社取締役専務執行役員堀内勉氏へのインタヒ、ュー(聞き手:小林一郎氏) I 森ビルの開 発プロジェクトとファイナンス J~企業会計』第 65 巻第 12 号 (2013) p.47による。また,中野 ( 2 0 1 0 ) では,特別目的事業体の連結拡大が債券担当アナリストの評価に与える影響が分析されている。 ( 1 5 ) 前掲のインタビュー p . 4 8を参照のこと。 ( 16 ) 米国の述給会計某準は,古くから, AICPA ( 19 5 9 ),FASB ( 19 8 7 ) および FASB ( 19 9 9 ) で見られ るように,議決権による支配概念であった。国際会計1;I;> J 牲についても, IASC ( 1 9 9 4 ) と IASC ( 2 0 0 3 ) では,同様の考え方であった。 ( 1 7 ) IASC ( 2 0 0 3 )p a r a .1 3 ( a )-( d )を参照のこど。 ( 1 8 ) IASC ( 2 0 0 3 )p a r a . 1 3 ( b )による。 1 5 0 『明大商学論叢」第 9 7巻第 2号 ( 2 2 4) 0号「連結財務諸表」が公表されたが,その前までは国際会 2 0 1 1年に,国際財務報告基準第 1 計基準第 27号「連結及び個別財務諸表」が規定されたうえで,解釈指針委員会による解釈指針 第1 2号「連結一特別目的事業体J ( l9 ) が適用されていた。国際会計基準第 2 7号が連結の会計基準 であるが,そこでは,特別目的事業体の連結に関しては明確な指針は示されなかったので,この 解釈指針に委ねられた形となったのである。 解釈指針においては,特別目的事業体は,限られた,かっ十分に明確化された目的を達成する ために創設された事業体であり,その目的の例として, リース,研究開発活動,金融資産の証券 化の実行が挙げられていた側。また,この特別目的事業体の継続的な活動に関する方針は,創 設者または出資企業しか変更することができないという条項が付されているとされる。つまり, 特別目的事業体の活動は事前に決定され, I自動操縦JCautopilot) されたものであり,実際に 管理・運営を行う者の意思決定権限には厳しい制限がついているといえる (2九この点は,前述 の契約に基づく取り決めと同じといえる。解釈指針では,特別目的事業体の活動が「自動操縦」 による運営であれば,出資企業による支配が存在すると考えられていた (2九さらに,特別目的 事業体の資本に対する持分をほとんどあるいは全く所有していない場合でも,支配が存在する可 能性が明記されていた (2九加えて,ある企業が,特別目的事業体の便益の大半を獲得する権利 があると事前の契約によって決まっている場合,また,当該企業が,事業体の活動に伴うリスク にさらされているか,あるいはリスクの大半を負担する契約も行っている場合には,当該企業に た (2九 より事業体が支配されているとみることができるとされて L、 解釈指針は, 1998年に公表され,以後改訂が行われ, 2011年の国際財務報告基準第 1 0号の適 用まで有効であり,その間,前述の支配の概念に変わりはな L 。 、 では, 20日年の国際財務報告基準第 1 0号では,どのような支配概念が採用されているのだろ うか。この新しい連結会計基準を構築する過程で,国際会計基準と米国基準において共同プロジェ クトが行われ, 2008年には,親会社と子会社を一つのグループ報告企業とみることが考えられ た(2九そこでは,グループ報告企業を決定する基準として,従来の支配概念を適用した「支配 企業モデル」側の他に,他の企業の活動がある企業の残余持分に影響を及ぼす場合にグループ報 告企業に含めるとする「リスク・便益モデル」聞など複数の考え方が示されていた。このフレー ムワークでは,従来の国際会計基準第 27号が議決権を中心とした支配概念であり, I 支配企業モ ( 1 9 ) IASC ( 19 9 8 ) を参照のこと。 ( 2 0 ) IASC ( 19 9 8 )p a r a .1による。 ( 21 ) IASC ( 19 9 8 )p a r a s .1 , 9and1 4を参照のこと。 ( 2 2 ) IASC ( 19 9 8 )p a r a s .2 , 8and9による。 ( 2 3 ) IASC ( 19 9 8 )p a r a . 9による。 ( 2 4 ) IASC ( 19 9 8 )p a r a .lOによる。 ( 2 5 ) IASB/FASB ( 2 0 0 8 ) による。また,今福 ( 2 0 0 9 )p p . 1 9 4 1 9 6では,エンティティのとらえ方が, いち早く英国の会計基準において検討されていたことが紹介されている。 ( 2 6 ) IASB/FASB ( 2 0 0 8 )p a r a s .6 3, 6 4and6 8を参照のこと。 ( 2 7 ) IASB/F ASB ( 2 0 0 8 )p a r a s .9 8and9 9を参照のこと。 特別目的会社の連結をめぐる会計問題 ( 2 2 5) 1 5 1 デル」であることに対して,解釈指針第 1 2号は便益の享受におけるリスクの負担という観点で 支配が判断されており, Iリスク・便益モデル」である。つまり,二重構造であると指摘されて いた側。国際財務報告基準第 1 0号では,単一の連結基準の適用をはかるために,支配概念の再 構築をはかったといえる。 しかし, I 支配企業モデル」と「リスク・便益モデル」の併存という二重構造の否定だけが新 しい連結モデルの構築の理由にはならないであろう。米国基準が, 2001年末のエンロン社破た ん後に特別目的事業体 ( SPE) を変動持分事業体 ( V I E ) として定義しなおし,連結に関する解 釈指針を公表したように(闘う国際財務報告基準は 2007年に始まった世界的な金融危機の影響を 考慮したのである。そこでは, 2007年以後の金融危機により,認識されていない証券化ビーク ル(導管体)に関するリスクが問題となり,それには企業が設立あるいは出資したものが含まれ ていた倒。ここで, ピークルは特別目的事業体と同じであるが, ビークルを認識するような会 計や開示についての要請が,国際会計基準審議会に強く寄せられたことは明記されている (31)。 結果として新しく構築された支配の概念によれば,投資企業が投資先企業へ関与する際の内容 にかかわらず,その関与により生じる変動リターンに対するリスク負担や権利を有し,投資先企 業に対するパワーにより当該リターンに影響を及ぼす能力を有している場合には,支配とみるこ とができるという。ここでいうパワーとはどのようなものであろうか。意思決定機関への支配力 とは異なるのであろうか。 5 . 2 . 投資先に対するパワーと関与により生じるリターンの変動 国際財務報告基準によれば,ノ fワーは権利から生じるが,パワーとは,議決権のほか,投資先 企業の経営陣の選任・解任権や管理契約に基づく意思決定権などが含まれるという(田)。そこで は,関与の内容ではなく,支配しているかどうかが問題となる。議決権だけで単純に評価できる 場合もあるが,複数の要因を考慮する必要がある場合もあるという(田)。 また, リターンには,配当や投資価値の変動など所有に関わる便益だけではなく,手数料,タッ クスベネフィット,規模の経済性,コスト削減なども含まれる(剖〉。投資企業のリターンが,そ の関与により,投資先企業の業績の結果によって変動する可能性がある場合,投資先企業への関 与により生じる変動リターンに対するエクスポージャー(リスク負担〉または権利を有している。 他方,投資先企業を支配できるのは一つの投資企業のみであるが,複数の企業が投資先企業の リターンを共有する場合もありうる。国際財務報告基準では,支配が複数企業による場合も想定 ( 2 8 ) ( 2 9 ) ( 3 0 ) ( 31 ) ( 3 2 ) ( 3 3 ) ( 3 4 ) IASB ( 2 0 1 1 )I N 4を参照のこと。 FASB ( 2 0 0 3 a ) および FASB ( 2 0 0 3 b ) による。 金融危機後の証券化ビークルの連結問題については,伊藤 ( 2 0 1 3 ) と藤田 ( 2 0 0 9 ) が詳しい。 IASB ( 2 0 1 1 )I N 5を参照のこと。 IASB ( 2 0 1 1 ) B15を参照のこと。また,山地 ( 2 0 1 4 )p . 1 4 7を参照されたい。 IASB ( 2 0 1 1 )p a r a .1 1による。 IASB ( 2 0 1 1 ) B57を参照のこと。また,山地 ( 2 0 1 4 )p . 1 4 7を参照されたい。 『明大商学論叢』第 9 7巻 第 2号 1 5 2 (226) して共同支配に関する概念が構築されている倒。 本稿で主題としている不動産開発型の特別目的会社のケースでは,議決権の過半数そ有してい ないがほかの契約上の取り決めから生じる権利附により,投資先のリターンに重要な影響を及ぼす ような営業上および財務上の活動を指図することができるため, この基準の支配の概念から考察で きる。 しかし,従前の解釈指針ですでに述べられていたように,特別目的会社の設立・出資企業のみ が事業上及び財務上の活動の方針を決定・変更することが可能であり,実際に管理・運営する者 の意思決定権限には制限がある。この点を考慮し,設立・出資企業を本人,管理・運営する者を 代理人として,国際財務報告基準では定義を行っている。 5 . 3 . 意思決定権を有する投資企業が本人か,代理人かという問題 国際財務報告基準では,パワーとリターンとの関連で,意思決定権を有する者は,自らが本人 であるか代理人であるかを決定しなければならないという (3九代理人とは,本人である当事者 に代わってその便益のために行動することを主とする者であり,意思決定権を行使した時に投資 先を支配しているとはいえない (3九つまり,このような場合,仮に投資先へのパワーを代理人 が有している場合にも,代理人が行使可能であっても,それは本人の代理に過ぎない。ここでは, 代理人の意思決定により,本人が便益を受ける形となり,本人が投資先を支配しているのである。 意思決定者は,投資先への関与により生じるリターンの変動性へのエクスポージャー(リスク 負担)が大きいほど,本人である可能性が高く,代理人ではないと考えられる。代理人関係を判 定する擦に, リターンの変動性に対する意思決定者のエクスポージャーは,議決権で支配されて いる場合とは異なり,必ずしも意思決定者のパワーの量と相関しな L、。投資先企業への関与によ り生じるリターンに影響告及ぼすように,投資先企業に対するパワーを用いる能力がある場合, 投資先企業を支配しているといえる。 従前の解釈指針では,複数の投資企業による共同支配の概念はとりあげられず,また,本人か 代理人かの論点は,特別目的事業体の条項との関連で述べられていたが,明確ではなかった。逆 に,国際財務報告基準では,それらの論点が盛り込まれたものの,解釈指針で用いられていた 「自動操縦」という言葉が消え,テクニカルな表現となっている。 5 . 4 . 日本企業への影響 9 9 8年に解釈指針。〕中で特 特別目的会社の連結に閲して,古くは,国際会計基準において. 1 別目的事業体の連結がリスク・便益モデルによる支配として規定されており,また米国のエンロ ( 3 5 ) ( 3 6 ) ( 3 7 ) ( 3 8 ) すでに. IASB/FASB ( 2 0 0 8 ) で,共同支配モデルは構築されていた。 IASB ( 2 0 1 1 ) B38-B40を参照のこと。 IASB ( 2 0 1 1 )p a r a . 1 8による。 IASB ( 2 0 11 )B 58を参照のこと。 ( 2 2 7) 特別目的会社の;iili結をめぐる会計問題 1 5 3 ン社の破たん後の 2003年に,米国基準において連結が強く規定されていた。この時点において, すでにみたように,以上の動きにより,投資事業組合とよばれる投資運用型の特別目的会社の連 結が日本でも行われることとなった。 しかし, 日本の特別目的会社の始まりが資産流動型であり,子会社とはみなさない上,また米 国基準でも資産流動型の特別目的事業体が連結除外であることから側, 2011年の国際財務報告 基準第 1 0号とのつンパージェンスの一環ともいえる H本基準の改訂まで,実務上も不動産開発 型の特別目的会祉の連結も行われていなかったと思われる。特に,投資運用型とは異なり,不動 産開発型の場合,資金調達後は長期にわたって収益の獲得が見込めないため,前述のように出資 者からリスクが遮断されるように設計されたノンリコース借入金が貸借対照表上負債として認識 されることに対して,後ろ向きになったのである。 6 . おわりに一一今後の課題一一 本稿では,不動産開発型の特別目的会社の連結をめぐる会計問題について,同際財務報告基準 の動向と日本企業への影響を考察してきた。その際,連結を規定した日本の会計基準が,米国の エンロン社の破たんやその後の世界的な金融危機に基づく社会的な要請から改訂された国際財務 報告基準の影響を受けたことを明らかにした。 しかし,不動産開発型の特別目的会社に特有のノンリコース借入金による資金調達の際,銀行 による出資企業に対するリスク評価の可能性を考慮し,プロジェクトファイナンスの仕組みを設 計することもできる O おそらく,銀行以外に,債券相当アナリストも同様のリスク評価を行うは ずである。そとで,対応策として,複数企業の出資により特別目的会社を設立し,ノンリコース 借入金のリスクが出資企業から法律的に遮断されるような仕組みも考案されてきた。その仕組み について開示されていたとしても, もし,連結するとなると,連結上負債が計上されることが債 券担当アナリストの判断に影響を与えるということも考慮し,連結に対して後ろ向きになるのか もしれない。 しかし,開示対象特別目的会社で見られるように,特別目的会社や証券化ピークルのファイナ ンスの仕組みを情報開示することで,連結の代わりとすることも考えられる。あるいは連結され るからこそ,詳細な開示がリスク評価に対してプラスに働くかもしれない。閏際財務報告基準に ついては,その適用をめぐる議論が行われることが多いが,特別目的会社を用いた不動産開発は, 日本独自というよりは,不動産開発という事業活動の性質やノンリコース借入金などプロジェク トファイナンスの特性がみられるため,特性を考慮した会計基準や連結の考え方が必要であると 思われる。 今後の課題として,特別目的会社を連結するか否かの議論のほかに,不動産開発型の場合,複 ( 3 9 ) FASB ( 2 0 0 0 ) および FASB( 2 0 0 9 ) による O 1 5 4 『明大商学論叢」第 9 7巻第 2号 (228) 数の企業による設立のケースも多いこと,またリスクが出資企業から遮断されるようなプロジェ クトファイナンスの仕組みの構築が可能であることから,今まで考察対象としていなかった共同 支 配 モ デ ル に つ い て 積 極 的 に 考 察 す べ き で あ る よ う に 思 え る (4ヘ そ こ で は , 特 別 目 的 会 社 が , プロジェクトファイナンスのためのピークルであることに注目すると,意思決定権限と便益をめ ぐる,本人か代理人かの議論とともに,連結されるべき親会社を一つに決めるかの問題も重要で あろう。 参考文献 AICPA( 19 5 9 )ARB N o .5 1 :C o n s o l i d a t e dFi 仰 n c i a lS t a t e m e n t s . FASB( 19 8 7 )SFASN o .9 4 :C o n s o l i d a t i o n0 1a l lM a j o r i t y O w n e dS u b s i d i a r i e s . FASB( 19 9 9 )FASBE x p o s u r eD r a l t( R e v i s e d ) :C o n s o l i d a t e dF i n a n c i a lS t a t e m e n t s :P u r p o s eandP o l i c y . FASB ( 2 0 0 0 ) SFAS N o . 1 4 0 :A c c o u n t i n gl o rT r a n s l e r s and S e r v i c i n g0 1FinancialAssets and E x t i n g u i s h m e n t s0 1Lia b i l i t i e s . FASB( 2 0 0 2 )FASBE x p o s u r eD r a l t :P r o p o s e dI n t e ゆr e t a t i o n :C o n s o l i d a t i o n0 1CertainS ρe c i a l P u ゆo s e E n t i t i e s :ani n t e ゆr e t a t i o n0 1ARBNo.5 1 . FASB( 2 0 0 3 a )FASBi n t e ゅr e t a t i o nN o .4 6 :C o n s o l i d a t i o n0 1VariableI n t e r e s tE n t i t i e s- ani n t e ゆr e t a - t i o n0 1ARBNo.51 . FASB( 2 0 0 3 b )FASBi n t e ゅr e t a t i o nN o .46( R e v i s e d ) :C o n s o l i d a t i o n0 1VariableI n t e r e s tE n t i t i e s- an i n t e ゆr e t a t i o n0 1ARBNo.5 1 . FASB( 2 0 0 9 a )SFASN O . 1 6 6 :Amendmentst oFASBI n t e ゅr e t a t i o nN o .46( R ) . FASB( 2 0 0 9 b )SFASN O . 1 6 7 :A c c o u n t i n gl o rT r a n s l e r s0 1FinancialAssetsanamendment0 1SFAS α N o .1 4 IASB/FASB( 2 0 0 8 )D i s c u s s i o npψ ,e r :P r e l i m 伽 η V i e ωso nanim ρr o v e dC o n c e ρt u a lFrameworkl o r F i n a n c i a lR e p o r t i n g :TheR e p o r t i n gE n t i t y . IASB( 2 0 1 1 )IFASN o .1 0 :C o n s o l i d a t e dF i n a n c i a lS t a t e m e n t s . IASC( 19 9 4 )IASN o .2 7 :C o n s o l i d a t e dF i n a n c i a lS t a t e m e n t sandA c c o u n t i n gl o rI n v e s t m e n t si nS u b s i d i - a r z e s . IASC( 19 9 8 )SICN o .1 2 :C o n s o l i d a t i o n- S ρe c i a lPu r p o s eE n t i t i e s . IASC( 2 0 0 3 )IASN o .2た C o n s o l i d a t e dandS e p a r a t eF i n a n c i a lS t a t e m e n t s . 伊藤長 ( 2 0 1 3 ) ISF AS1 6 6( 1 債権譲渡の会計処理」の改訂)および SFAS1 6 7( 1 変動持分事業体の連結」 の改訂)の影響 ( 2 0 1 0年) Jr 公正価償測定とオフバランス化.1 (中央経済社〕第 8章収録 p p.277-319 r 今福愛志 ( 2 0 0 9 )1 新しい事業体とエンティティ概念J 企業統治の会計学一ー IFRSアドプションに向け て . 1 (中央経済社)第 1 3章収録 p p . 1 9 1 2 0 1 r 川本淳 ( 2 0 0 3 )1 連結の範囲と企業結合のエンティティー J 企業会計」第 5 5巻第 l号 p p . 6 5 7 1 企業会計基準委員会 ( 2 0 0 6 ) 実務対応報告第 2 0号「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の 適用に関する実務上の取扱 L 」 、 2 0 0 7 ) 企業会計基準適用指針第 1 5号「一定の特別目的会社に係る開示に関する適 企業会計基準委員会 ( 用指針J ( 4 0 ) この点について,川本 ( 2 0 0 3 )p p .6 6 6 7では,特別目的会社が,ある企業により支配されていると みなされて連結される場合には,その企業としか連結されない点が二分法であるとして問題にしている。 他方,共同支配は,それとは異なり,持分法や比例連結の可能性が指摘されていた。 (229) 特別目的会社の連結をめぐる会計問題 1 5 5 企業会計基準委員会 ( 2 0 1 1 a ) 改正企業会計基準第 2 2号「連結財務諸表に関する会計基準」 2 01 lb ) 改正企業会計基準適用指針第 1 5号「一定の特別目的会社に係る開示に関 企業会計基準委員会 ( する適用指針」 企業会計基準委員会 ( 2 0 1 1 c ) 改正企業会計基準適用指針第 2 2号「連結財務諸表における子会社及び関連 会社の範囲の決定に関する適用指針」 企業会計基準委員会 ( 2 0 1 1 d ) 改正実務対応報告第 2 0号「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力 基準の適用に関する実務上の取扱い」 r 企業会計基準委員会 ( 2 0 1 3 ) 特別目的会社の連結範囲等に関する検討の中間取りまとめ」 r 1 9 9 8 ) 連結財務諸表制度における子会社及び関連会社の範囲における見直しに係る具 企業会計審議会 ( 体的な取扱い」 中野貴之 ( 2 0 1 0 ) rSPE (特別目的事業体)の連結拡大が利用企業に与える影響J~会計・監査ジャーナル」 第6 6 1号 p p . 9 0 9 6 中野貴之 ( 2 0 1 1 ) rSPEの連結と開示 J~法政大学キャリアデザイン学部紀要J 第 8 号 pp.117-139 名越洋子 ( 2 0 0 3 a ) r企業統治の会計の展開」今福愛志編著「企業統治の会計~ (中央経済社〕第 7章収録 p p . 1 2 7 1 4 5 r r 名越洋子 ( 2 0 0 3 b ) コーポレート・ガパナンスと会計の相互関係 J コーポレート・ガパナンス年報』第 6集(日本コーポレート・ガヴァナンス・フォーラム) pp.1-15 藤田敬司 ( 2 0 0 9 )r 特別目的事業体 ( S P E ) の連結問題一一エンロン事件と金融危機を中心として一一」 ~M&A の会計システム J (中央経済社)第 1 1章収録 p p . 2 0 1 2 1 6 山地範明 ( 2 0 0 3 ) r FASBr 変動持分事業体の連結」の考え方JW 企業会計』第 5 5巻第 8号 p p . 2 5 3 1 山地範明 ( 2 0 1 4 )r 財務報告の主体と範囲」平松一夫・辻山栄子責任編集「会計基準のコンパージュンス』 (中央経済社)第 4章収録 p p . 1 1 9 1 5 1 r 吉井一洋 ( 2 0 0 8 ) 利用者からみた連結開示の問題点 JW 企業会計」第 6 0巻第 1 0号 pp.44-54