...

北海道の食虫植物

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北海道の食虫植物
北方山草 8 (1989)
北海道の食虫植物
D
J
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j市 外 山 雅 寛
1.食虫植物とはどんな植物
H
三を有し、炭素同化作用を常むが、根の発
A
. 食虫植物という言葉・定義
育が不完全でi
也'
1
'から十分な養分が取れな
進化論で著名なチャーノレズ・ダーウィン
いので虫を捕えて養分を補う」と舎かれて
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sDarwin氏が最初の詳細な食虫柄物
います。少し古い師範科の教科書ですが、
の書物Jを作り上げたことは、食虫槌物を研
食虫植物の定義としては卜分と思います。
:
J外には知らない方がおられ
究している人 )
るかも知れません。
I
I 北海道の食虫植物の分類
l
l
:
ダーウィンが「食虫植物」という本を j
〈食虫植物の分類〉
に出したのは 1
8
7
5年(明治 8年)で、主主名
北海道は食虫植物の分布上で極めて興味
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s伊(食虫械物)と
深い地です。そこでは常識では考えられな
なっています。そして、これが食虫梢物
いような熱,貯性の食虫植物が分布し、 しか
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t という言葉が使用さ
も偶産種(一過性の分布)としてではなく、
れたはじまりというのがこれまでの定説と
完全に士着種としてその分布が認められる
なっております。この本の複製版(インド
のです。
北海道に産する食虫植物は大きく 2つに
で刊行のもの)を小宮定本先生からいただ
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きましたカヘモウセンゴケ d
大別することができます。その一つはタヌ
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aについて 2
2
3P にもわたって記~!k し
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eで、他の一つ
キモ科植物 L
ているのは驚きであります。
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eです。
はモウセンコケ科植物 D
食虫植物のほかに、同年(18
7
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) モーレ
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e (タヌキモ科h
直物)は
由化吸収するこ
ン Morren氏は肉片までも i
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北海道に産するものとして、 P
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とから肉食植物(C
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a(タヌキモ
シトリスミレ属)と U
いう青葉を使いました。(原典は Morren,
属)の 2属を含んでいます。
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e (タヌキモ科)
さて、「食虫植物J の定義ですが、 r
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範教
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a (ムシ卜リスミレ属)
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植物 J (大日本同書株式会社昭和
科「新品J
北海道に於ける分布ではーー属一精
6年版)には「葉または葉の変形してでき
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た捕虫器官によって虫類を捕えて養分とす
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rムシトリスミレのみの分布が
るものを食1
1¥植物という」と記されていま
確認されているだけです。
す。さらに誌が加えられ、「食虫植物は葉線
9
9
北方山草 8 (1989)
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.Utricularia (タヌキモ属)
1
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《解説〉
ダーウィン著、 I
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sPlants"の I部分〈インド複製版、東京都、小宮定志先
3
3ちページを必要とした驚くべき著書です。
生より)モウセンゴケのみでも 2
1
0
0~-
北方山草 8 (1989)
タヌキモ属にはミミカキグサ類とタヌキ
Droseraceae (モウセンゴケ科)
北海道に産するモウセンゴケ科植物とし
モ類が含まれています。
をするミミカキグサ類はムラサ
北海道に 1
ては Droserar
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キミミカキグサ(U
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a (ナガパノモウセンゴケ)
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・ シ ロ パ ナ ミ ミ カ キ グ サ (U
の 2種を認めることができます。そして、
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a (ムラサキミミカ
サジパモウセンゴケ (Droserax obovata
キグサの自花品) ・ホザキノミミカキグサ
Mert.e
tKoch)は、モウセンコケとナカノ〈
(U
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acaeruleaし)が認められまし
ノモウセンゴケとの自然交配種であります。
Droseraceae (モウセンゴケ科植物)に
た。そのうち北海道から絶種したものは、
m品としては
ホザキミノノカキグサで、道 1
ついてはその形態のちがいによってただち
外山の培養品が残っているだけです。
に同定可能なものばかりです。
i
大に道産として確実に分衡が認められる
タヌキモ委員は、 ヒメタヌキモ(U
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1lI.道産食虫植物の解説
minorL.)・コタヌキモ(U
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e (タヌキモ科植物)
media Hayne) ・タヌキモ(U
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@ムシトリスミレ P
macroceras(
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)Herder
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.)の三種のみであります。
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コタヌキモにはヤチコタヌキモ(U
北海道産 1属 l種の食虫械物で北方系の
mediaf
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)Komiya)
が
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ものです。北方系のものでカラフトムシト
ヒメタヌキモには、ナガレヒメタヌキモ
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aしの名が知られ
リスミレ P
(U.minorf
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sKomiya)・フトヒメタ
ていますが、その分布地として北海道は除
ヌキモ(U.minorf
.
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aKomiya)を合ん
外され、これまてい分布が確証されたことが
でいます。
ありません。
以上あげたものは、いずれも標本によっ
mの葉を地I
伺に桜してのばし、そ
長さ数 c
て北海道に分布することが実証されている
には腺毛
の葉は肉質・黄緑色をなし、表面i
ものです。
が也、生していますロ腺毛から粘液を,~H して
これらのタヌキモ類は、いずれも水生植
小昆虫をとらえ、消化して養分を吸収して
物 (Aqu
a
t
i
cPlants) で、道内の湿原や i
也
しまいます。中心部から花柄をのばし、紫
i
鹿に生息しています。
色の花をつけます。花期が終わるとやがて
池消には富栄養湖と貧栄養湖とがありま
冬芽をつくります。
すが、タヌキモ類の生息する所は後者の食
悶内では北海道のほか中部山岳地帯に自
胡で善通水質は弱酸性を示すような環
栄養i
生するものです。国外では広〈北半球に分
境に自生するものです。
布 ヨーロッパ及ひ台北アメリカに自生が知l
られています。
1
0
1
北方山草 8 (1989)
@ムラサキミミカキグサ U
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るのに対して、本種ではそれよりもまばら
に白生しているのが普通のようです。
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湿原に自宅する一年草。北海道では稔子
本種の自花品は北海道に採集の記録が全
で越冬します。元来は熱帯悼の食虫植物で
くなく過去にも分布しなかったようです。
mほどのへら状の葉をつけ、 7月に
す
。 6m
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@タヌキモ U
mの花茎を上げ、 8月に人ると紫
なると数 c
水生の食虫植物で、 j
芋i
梓烈のみが認めら
色の小さな花を数例咲かせます。花Ji月は 8
れ、根もない植物です。水中茎は途中で分
月 ~9 月。道内で刊行の閃鑑には多年草と
I
本では、
岐することがあります。大形の佑J
なっていますが、その記述内容は明らかに
数本の呼吸校の存夜を見ることがあります。
誤リです(熱帯減や暖地に限って~if.草と
水中葉の先端部に殖芽(Trion)が形成
され、嫡芽で越冬、苫小牧市柏原 i
星原では
しての存在が認められています)。
{~~花冠 F 唇がちり上がり、
上唇は下特
4月に航芽の発芽が認められました。
より小さい。~p.は 11)錐形で普通はド向きで
水中菜の長さは数 10cm~
す。花茎に数{聞の鱗片葉があります。
1m以仁のもの
もあり十勝管内笠頃阿]では 2m60cmの似体
地下部本体は糸状で、捕虫のうが比較的
が記録されました。北方に大きな個体が多
たくさんついています。 捕虫のう内の吸収
いようで、アラスカでも戸ー大なものが見ら
毛は 2又です。口辺部には単ー棒状毛があ
れるそうです。葉につく十iIi虫のうの数は産
ります。
地の環境によって違いが見られ、十勝管内
. u
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シロパナミミカキグサ U
には無捕虫のう typeの Lのも認められます。
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aMakinoち同一で花色は白色である
自然状態では水面近くに i
'
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持するのが普通
だけのちがいです。
です。
.caeruleaL
@ホザキノミミカキグサ U
前種と同じく熱帯性の食虫植物で、
令
年
草。種子で越冬するのですが、熱帯域・暖
葉は互生し、基古15 で 2 而に分かれ、
4回羽状に分裂。
J
市虫のう内を検鏡すると、多数の X字状
吸収毛を観察することができます。
m
o 7月に数回1の花茎
す。葉はへら状で数 m
を上げ 8 月に開花。花期は 8 月 ~9 月。
鱗片葉が花茶にありますが、前穏ていは沿
t
市虫のうは卯状扇球形を
なし、日部両 {
J
聞に突起があります。
地では多年草。地下部本体は糸状で、捕虫
のうの数は前積よりはるかに少ないようで
2~
ま糸状で、裂片の先端部に小刺毛
葉裂片 l
があります。裂片の!対辺部には歯状突起が
1毛が生えています。
あって、それぞれ小東)
1
1
t
:
J
J
I
I:
J8~ 9月です。
着、本積では楯状に者くのが特徴です。花
昌号色。 N
eはj
j
i
j方
は数花を咲かせ、花色は車l
@コタヌキモ U
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aHayne
を向いています。姉虫のう内の!吸収毛は前
前穂と異なり本穏は水中茎から地中茎を
種が 2又であるに対して、本種では 4又と
のばして判剖着生活をするタヌキモ類の I
i
種が群生す
なっています。白4:状況では首j
種です。水中菜は白色で、多数の揃虫のう
1
0
2
.
北方山草 8 (1989)
をつけています。評通は水深の比較的浅い
尼土に園者します。比較
ら地中茎を出して j
所に植生しています。
<
i
架の浅い所で見られますが、北海道で
的
ノ!
はごく限られた産地が知られているもので
葉は水中茎に立牛ーし、無柄です。タヌキ
モの葉が 2而であるに対して、本種は 1陸i
す
。
霊阪では開花状
花期は 6-7月。新篠津i
であるのが特徴です。北海道では嫡芽で越
冬するのは本州と同じでありますが、
1
E
f
去
は積 fもみのる多年草です。
況が認められました。コタヌキモより花冠
[
j
は
円
!
i
f
t
形で下向きとなるのが
は小型で、 R
葉片は円形一臣、卵形に広がりを見せます。
特徴です。水中卒に葉が互生し、葉に 1-
2
1
1
1
1の1
f
l
i虫のうをつけます。(捕虫のうは水
水中茎が分岐するものも見られます。
葉片は 3-5回 2又状に分岐、最終葉裂
中茎の近くに着いているのが書通です)。コ
片はテープ状で、先端はまるい形をしてい
タヌキモの最終葉裂片の先端はまるいので
ます。先端部には普通 1木の小刺毛をもち、
すが、ヤチコタヌキモの最終葉裂片の先端
周辺には歯状突起があり、それぞれの突起
はとがっています。葉裂片の歯状突起はコ
から上向きの小刺毛が会 I本生えています。
タヌキモよりもはるかにfI¥[会っているのも
捕虫のうは広卯扇球状をなし、日部の両
特徴です。捕虫のう内の吸収毛はコタヌキ
4Xで平行ですがヤチコタヌキモで
端に I対の羽状に分岐したとげがあります。
モでは
!苅種タヌキモの吸収毛が X字状であるに対
は 4又で X字状をなしています。
して、本種の吸収毛は 4又、ド行します。北
国内分布では、本州(尾瀬ヶ原、霧ヶ案、
海道における花期は 6月初旬 - 7月までで、
八甲出 1
1
1)、北海道の分布が知られ、国外で
まれにそれ以降でも花が見られる年もあり
は、ヨーロソパ北部、イギリス、グリーン
ます。
らt
Lています。
ランドカ£知I
、
花茎は数 cm-20cm位
@ヒメタヌキモ U
t
r
i
c
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a
r
i
am
i
n
o
rL
.
1- 3倒の小さな
寒地性の水生の食虫植物て'
7
1
く中茎から地
鱗片が見られます。
花茎の上方には沓1f国が認められます。
中茎をだして泥十一に固着しています。
m位い)、花冠は、 1.5cm
がくはI下 2片(3m
内外で、
地中茎は白色で多数の捕虫のうをつけて
上唇は崩[阿形で、下昏は上唇より
います。コタヌキモは地中茎にほとんど葉
大きくなっています。下唇の中央部はふく
をつけませんが、本種は地中茎にも小さな
れ上がり仮面状をなしています。距はf!!錐
葉をつけるのが特徴です。
形に似てド唇にほぼ平行しています。朔来
ì)~ 土におろした地中茎がきれて水中に浮
はほぼ球形となります。
i
砕するものも見られ垂直分布にはかなりの
t
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af
@ヤチコタヌキモ U
はばが見られます。
では開花することは珍しく、北海道
本外l
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R
.H
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.
)K
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a
fì~fi主コタヌキモの 1 品種で、寒地性のも
では非常によく開花します。一般的に浅水
のです。コタヌキモと同じように水中菜か
菜水中ではほとんど開花
中でよく開花し、 i
1
0
3ー
北方山草 8 (1989)
がのぞめません。浮併するものも開花は困
B
.Droseraceae (モウセンゴケ科植物)
難です。北海道での花期は 6 月 ~7 月でま
@モウセンゴケ Droserar
o
l
u
n
d
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f
o
l
i
aL
れに 8 ・9月にも花が見られることもあり
ます。先に述べたコタヌキモと花期の
禁は根生する多年草で、全体が赤褐色を
都びています。長柄をもった薬は円形で、
致
を見ます。葉裂片の周辺に歯状突起も刺毛
表面に赤色の線毛がたくさん生えています。
も認められず、その先端に l刺があるのが
夜を出して、小重脱却をとら
この腺毛から粘I
特徴で種同定の重要なきめ子となるもので
えることはよく知られているところです。
す。ホ中葉はコタヌキモよりもまばらで X
開花期は 7 月 ~8 月で、数本の花茎をあげ
1
1虫のう内の吸
I
良端には偏 I
flJJ'性の総状花序をつけます。花
状に 2~ 6因分裂します。
収毛は π烈または X字烈をなしています。
は白色、がくは 5つに浅裂、長柄fIj形で鋭
花茎は水中茎より綱〈、高さ 4~20cmÙL 、
頭をなしています。花弁は 5枚で、さじ状
花茶には数個の卯状三角形の小鱗片をつけ
I
形をなし、朔果 (i;
長楕 '
lj形。〈補i
宣
〉
の倒。J
ます。花茎の k方には数個の花をつけ総状
花茎は平滑で、まれに 1
0数本の花茎を上げ
花序となります。官の形態は鱗片葉とほと
1.ど、作I
らかの防(
木
[l
による
ることカずあるけ i
!k黄色です。がく片
んど同形岡大、花冠は i
異常奇形と推定されます。この場合花茎は
r
.唇は小さく、
2裂、花元L
異常に帯化し、分岐します。
下界は角ばった
この花茎の帯化、異常$花はユリの仲間
広卯形、 E巨[ま鋭い円 ~U~ で下向きとなりま
す。朔果は球形となり種子がみのります。
やセイヨウタンポポにもまれに見ることが
@フトヒメタヌキモ U
l
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a minor L
あります。ユリの場合は、ウイルスが原因
f
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.s
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c
l
aKomiya
のようですが、モウセンゴケの場合は原因
ヒメタヌキモの富栄養型!とされているも
不明です。花はつはみの時ピンクのものが
のでい水中茎が太く、葉を密につけた地中茎
あります。
がある。小葉は主軸が通っていて、 7向ほ
@ナガパノモウセンゴケ Drosera a
n
g
l
i
c
a
ど分裂するもの。
Huds
@ナガレヒメタヌキモ U
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aminorし
J
J
l
j名チシマモウセンゴケの名のあるこの
f
r
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m
.nalansKomiya
柄物は氷河時代の遺存柄物で、寒地性食虫
ヒメタヌキモの貧栄養烈で、地中茶の発
柄物の代表的なものです。モウセンコケと
芋i
t
iすることが普通のもの。葉
達が貧弱で1
は、さじ状長線形の葉によって明らかに区
1
'
茎はややジグ
は微細で 2~ 4[,可分岐、水 '
打樺太、北樺太、
別されるものです。分布は i
ザクを呈しますがそうでない場合もありま
北海道、本州(尾瀬)カムチャソカ、シベ
す。これまで、道南部の分布のみが知られて
')ア、ヨーロッパ、北アメリカと北半球に
いましたが、北海道に広く分布するものの
広〈自生するものですが、同内に於いては、
ようです。花をつけることはないようです。
低地帯の自生地は限られ、ほとんど高山に
見られます。北海道におけるかつての低地
1
0
4
北方山草 8 (1989)
での白生地
江)
)
1
)市、美 l
唄市の自生地も i
問
学紀姿、第 7号
、 1
9
7
8
) ・ 「日本歯科大学
えてからもう相当な時代の流れがありまし
坐物学教室食虫植物}貼葉標本目標 J(日本歯
た。恐らく低地の確実な自生地は現夜では
4号
、 1
9
8
5年)に基づき、
科大学紀要、第 1
名
サロベツ湿原にとどまるのでしょう。取l
それらに外山探集の標本を加えて、最新の
j
,竜禰氏(18
9
8年)によるものです。
は川 f
分布を明らかにしておくことにしました。
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aX o
b
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@サジパモウセンゴケ D
なお、外山採集標本については I部分に
Mer.
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ついて原典も不すように配慮しました。
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aと D
.
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モウセンゴケ D
*
*
*
@ムシトリスミレ P
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.va
.
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との自然交雑種がサジパモウセンゴケです。
1
9
0
3
1
9
0
9年にかけて Rosenbergはその雑
macroceras(
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ik
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)H
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9
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1'1三島村環氏によって Fサ
種↑生をとなえ、 1
Kamuimetokl
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i,I
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i,I
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ジパモウセンゴケの細胞学的研究、特にそ
TAI(
1
9
1
5
);
M
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.Ash
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e,Koizumi
の雑荷性に就いて j が発表され、本種が中
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1
9
5
1
);
Mt
.Y
ubari,S
.I
toSAP(
19
1
3
)
.,
間雑種であることが実証されました。
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1
9
3
4
),Toyokl
1n
iTNS1
1
0
6
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7
(
1
9
5
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)
. Kawano M
A
I
(
1
3
1
5
5
1(
19
ま綬出し、長い葉柄をもち、葉は名の
葉l
ごとく「さじ状 J で、モウセンゴケとナガ
5
8
);Mt
.P
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e,Koyamae
ta
l
パノモウセンゴケとの中聞の形態を示して
TNS-303224(
1
9
7
1
),
Mt
.Y
ubari,1570ma
lt
.
昆
います。北海道サロベツ湿原では 3種の j
Michikawa'1
9
7
4
8,NDC-3409(
19
8
3
.8
.
2
)
;
体分布が認められます。
T
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1i
d
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a Tokl
1n
aga e
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oD.rotundifolia-染色体の基本数10、n=
SakamotoSAP(
19
2
9
.9
.
3
);Mt
.Yl
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H.Yanagisawa&A I
1amana(
1
9
1
9
.
1
0、 2n=20
。
oD.anglica-染色体の基本数 10、n=20、
8
.
6
) Mt
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, M. Kikl
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6
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(
1
9
5
8
.7
.
)
;Mt.Yubaridake,
S
.
2n=40"
oD.obovata-染色{本の基本数10、n=(10+
N
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aSAP(
1
9
1
3
.8
.
7-9
,
)
, H.Yanagト
2
0
)/
2、 2n=30
。
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I
(
1
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.
8
)
.H.KiharaTAI(
1
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.
8
.
7
)
.S
.KawanoM
A
I
(
1
3
1
5
5
1(
1
9
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8
.7
.
2
7
),
W 北海道産食虫植物の分布
Mt
.P
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.
d
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日
,1
5
0
0-1700ma
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,
.
tH
KoyamaTNS-303322(
1
97
1
.7
.
2
5
)
.1600m
この項では道産として標本てー実証された
l
[
i
t
i
:
丈なものを百己主ましておくことにしました。
a
l
,
.
t H.KoyamaT
NS-303275(
1
97
1
.7
.
2
5
)
;
資料の多くは小出定志・柴間千品共著にな
C
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1i
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.WatanabeM
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主要標本w:を網革産された叩Dis
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apan" (日本
※前掲文献の他、小宮定,t
i先生より御教示
、1
9
8
0
)• "D
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i
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歯科入学紀要、第 9号
を受けていたものも含めて示しておきま
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apanか(日本歯科大
した。
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北方山草 8 (1989)
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ToyamaNDC-3408
-ムラサキミミカキグサ U
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・ヒメタヌキモ U
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, KawakamiSAP
Urausu,
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,Yo
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),Komiya NDC
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, MiyabeSAP(
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) ;Ebetsuc
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, Tokl
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, Komiya
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, KomiyaNDC-3479-3480
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Tomakomai,
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が蓄積されますと、ほほ完全な形で北海道
分布が明らかになるものと忠われます。
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u,ToyotmiT
.,YoshidaSAP
しかし、これまであげた標本の産地です
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9
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でに自生地が失われているのもたくさんあ
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HornobeT
.,
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1
9
3
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ります。特に最近は自然破壊が急迷に進ん
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でおり、実態がほとんどわからぬままに、
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4
4(
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9
3
4
) ;Mt
. Numano.
自然が姿を消しつつあり、緊急な調査も待
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たれている現状にあります。
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i,Okamoto KYO (
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V 北海道産食虫植物の同定方法
特にタヌキモ類を中心として
ムシトリスミレやモウセンゴケ科の植物
Rで見分けがつきますが、
Hotta KYO・1
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2
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1
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), M
については、ひと
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7
2
8 MAK-63149 (
1
9
6
6
. 8
.
1
0
),
タヌキモの類については、これまで詳細な
Sarobetsu.Moor,
KomiyaN
D
C
.
5
0
7
4
.
5
0
7
7
折l
定書がないために、ずい分誤伺定なども
(
1
9
6
9
.9
.
4
) Sl
kl11 f
r
ol11 P
a
n
k
e
.
n
l
ll11a,
多かったようです。それぞれのなかまの植
Sarobetsu.Moor,HoronobeT
.,Toyal11a
物に同定のポイントがあるといわれますが、
NDC.5910(
1
9
8
8
)
司定にもポイントとなること
タヌキモ類の i
@サジパモウセンゴケ D
r
o
s
e
r
aX o
b
o
v
a
t
a
均すらがあり、そ hらをしっ古、りつカ、まえて
Mer
.
te
tKoch
しまうと容易に、しかも!日在に同定するこ
Sarobetsu.Moor, Toyotol11i '
1
'
.
, T
e.
とができるものです。
s
h
i
o
.
g
u
n,YosidaS
A
P
.
4
2
2
8
5(
19
5
3
),Ko
タヌキモ類は環境によって忍、名のように
miyaNDC.5197(
1
9
6
9
)
;Maruyama.1
1
1
0
0
r,
姿を変えますが、なれてくると同定はむず
HoronobeT
.,Hara'
1
'1(
1
9
3
4
)
;Mt
.NUl11a
かしいものではありません。
nohora,
T
a
i
s
e
t
s
u
z
a
n,
T
o
y
o
k
l
l
n
iSAP.3614
(
19
5
1
);Slkl11 fromPanke.nul11a,Saro
A 同定の基本
b
e
t
s
l
l
.
M
o
o
r,HoronobeT
.,ToyamaND
@たくさんの個体にふれ、タヌキモ類の変
異のはばを知!っておくと i
!
l
i
利です。
C
.
5
91
l(
1
9
8
8
)
*
*
*
以上のように道内に於ける食虫柄物の分
@肉眼だけにたよると同定上で,思わぬ失敗
をすることがあります。 1
0
倍ー 1
5倍のフ
布の詳細を示しておきましたが、そのほと
ォーカスルーペを常に携行すべきです。
んどが小宵定志・柴同千品両先生による主
@特別な場合を除いて顕微鏡は必要ーありま
要標本庫調査の業績の上にまとめられたも
のです。これによって今後採集された標本
一 111
せん 0
・それぞれの積を見分けるポイント(後述)
北方山草 8 (1989)
B.やさしい完壁な同定方法
をしっかりと心得ておくことは重要です。
@品種までを同定する場合はよく生長した
タヌキモ類を中心として
個体によって同定するのが無難です。
同定をする前にタヌキモ類の各部の名称、
をおぼえておかなくてはなりません。そこ
で代表的な種 デヌキモ・コタヌキモ・ヒ
メタヌキモをとりあげて各部の名称を示し
ておくことにします。
タヌキモ類白各部白名称
地中i
乞ある部牙
ご
合5
1
2
2
2
7詰弔問哨号 Ja v Mltteleuro叫 ))
口 タヌキモ(道産:守l
山保集品)
1
1
2
北方山草 8 (1989)
コタヌキモの小羽片の部分名称、(外山原図)
以上タヌキモ類の各部の名称を凶解して
〈地中茎〉
おきましたが、これらは最小限度に必要と
地中茎の有無やその状態も種を同定する
思われることを図示したものです。
ための重要な手がかり(ホ。イント)になり
r
n
]定の本論ではさらに必要なものを追加
ます。
することにしたいと思います。(殖芽〉
タヌキモ類(特に道産のもの)は水中茎
(
1
) タヌキモ類同定のポイント
に殖芽をつけます。これもまた種によって
ちがいがありますから同定の時には役に立
〈葉〉
葉の形態はタヌキモ類を同定する時には
ちます。
重要なポイントになり、それぞれ種によっ
*
ただし、例体変興(環境による)の多い
植物であることは先に述べた通りです。
〈捕虫のう〉
*
*
r
n
)定の重要事項について記しましたが、
て葉のつき方や形態が異なっています。
実際に種を i
司定する場合には植物全体を見
て同定するのが最も完壁な結果が得られま
す
。
捕虫のうのつき方、その内部の構造など
典型的なものについては肉眼でも正確に
車虫のうの
も大切な日のつけどころです。 J
同定することができますが、個体変異が多
数も環境によって同一種でも非常なちがい
く、肉眼では判定不可能な場合があり、そ
が見られます。
のような時にはルーペ(フォーカスルーペ)
を必ず使別します。
qd
北方山草 8 (1989)
〈占z) 図説ヲヌキモ類同定の実際
O
葉によるタヌキモ類の同定
てよってのみタヌキモ類を同定するととは,十介とはいえ在いかもしれ主せん
葉の形態V
が,タヌキモ類の葉I'L I
組の特徴がよ〈現われているととは事実であって,同定上の有
力左手がかりと在るものです。
道産タヌキモ類 3種の葉の形態の特徴を示す
上図はすべてコタヌキモ Utricularia intermedia
の葉を示したものです。
A-D:タ
WJ
原図( I
食虫植牧研究会会誌JVo1.36
'.
;
f
o
/より)
日一一:GlukJ)j翻( Biologische Untersuchungen Uber
Vasser und Sumpfgewachse.Bd,I
I
I
./906より引用〕
1
1
4ー
北方山草 8 (1989)
H
G
-・歯伏突起では左い
F-Jヒメタヌキモ(F:外山原図 G-J
三オ探函より外山安湾)
K-Mタヌキモ (M 夏葉・ L一秋葉・ K 葉端)
戸
1 G-J:深泥池産
Nーサルフツ産タヌキモー同一場
所から葉が二面ずつ出るとと
を示した(出葉様式のご面性〕
ー道産のタヌキモ類で他訴重K二
面性を現わすもの在し
1
1
5
北方山草 8 (1989)
O
道産:$1)(キモ類三種の葉裂片ー特徴
コヲヌキモ型
ヒメヲヌキモ型
ヲヌキモ型
-業製片のはばがほぼ同一で
-葉裂片白はばが先端部~
-葉裂片白はばが先端部V
亡
テーフ状を左 l
.先端部の
近〈在る Kつれて除々 K
近〈在る t
てつれてせばま
近〈で急V
て古る〈在る。
せばまり,先端は釘顕在
り,先端部は鈍頭を在す
-歯状突起は,あまりめだた
在い。
-演端と歯状突起から/一。2
ヰの小事局が生えている。
在す。
-禽状突起はよ〈発達し,
-歯状突起が認められ在い
-偽分枝が認められる
-葉は全線で周辺K荊隠が
認められ在い
やや斜め外側 K突出する
-葉の頂端と齢伏突起から
/ー数本りノH
i
!
屈
l が生え
ている。
-小車!屈は偽分校の先端と
葉の現点のみに認められ
る
し 一
O
道産ヲヌキモ類三種の完盛正確な同定資料
コタヌキモ・ヒメタヌキモ・タヌキモの同定は,とれ全で記した棄の形態のみでほ正んど
正確在同定ができますが,左晶、正確V
ては下記白同定表を参考U
てきれるとよいで L工う。
水中』て浮瀞するか,地中茎(泥ヰ殺)を
ナベて水中 K浮激する
骨ろして一部介を固着する
-葉裂片 D形態はコタヌキモ
型
-葉裂片の形態はヒメタヌキ
モ型
-花茎は黄緑色,花冠は鮮黄
色.まれ K花4':上部紫かっ
型
•f
主E
は上部紫かっ色,花は
小形で黄白色
虫のうをつけ左い
-花茎は黄緑色,花冠は鮮
黄色で仮面部陀赤色のす
色のものあり
-水中茎の葉Kはほとんど捕
-葉裂片の形態はタヌキモ
じり和財輩がある
-水中窪田葉K捕虫のうをつ
ける
-水中茎の葉K捕虫白うを
つけるのが普通
甫 -地中茎は無色で,水中棄の
-地中茎は無色で,事数回f
-水中葉から呼吸枝(白色
虫のうを房状U
てつけ,棄は
小菅在ものをまばら Kつけ
の糸状体〉をのばすとと
ほとんど欠〈
f
甫虫をつけている
-水中葉は一面准
-水中葉は一面性
あり
-すべて地中茎を欠〈
-水中棄は普通二面性
コタヌキモ
ヒメタヌキモ
タヌキモ
総 合
矢印以下は「種」以下Kランクする
FQRMAの同定を示したものです
1
1
6
北方山草 8 (1989)
前ベージから FORMAの同定へと続〈
ヒメタヌキモ
コタヌキモ
i
コタヌキモ白うち,水中葉i'L1一
。2
個
ヒメタヌキモ白うち地中茎が極めて細
ほどの捕虫のうをつけるものをヤチコ
<.葉裂片が徴細で .1ータ回文状十て
タRキモとして区別するととがあり,
分岐するも白をナガレヒメタヌキモと
葉裂片の形態 V
てもコタヌキモ(基本と
して区別古れます。
在る種← form.intermedia )
地中茎の発達が在〈浮世毒性といわれ
とのちがいを認めるととができ古す。
ますが.~l頒道では地中茎をつける場
後K示す標本図版 E/-2は典型的左
合が事いようです。後K示す樗泳図版
ヤチコタヌキモで,北漉道ではコタヌ
D(雨竜沼曹渡-NDO)はその典型
キモとの混生介布が見られます。
的在もので,ヒメタヌキモの貧栄養型
..・栄養体白 -ljヨ態型 ~cotype)
ヤチコタヌキモは,基本種コタヌキ
モの下Kランクづけされる一つのフオ
ルマ
と見在古れるもりです。
(FORMA 品種)で,栄養体の
同定する時は,十分 K生長した個体
生態型 (ecotype)と考えられるも
i'Ll:るのが無難です。
きらi'L.水中茎が太< .
葉K主軸が
のですが,とれを独立<D~I胞とみ在す
学説がヨ
あり .7
回ほど分岐する富栄議型のも
ロッパ V
亡事いようです。
きらi'L.ヨーロッパ産のヤチコタヌ
のを 7 トヒメヲヌキモ Utricula-
キモが日本産のものと同じものか,ち
ria minor L
.form.stri
←
がうものかという論議がありますが,
cta KOMIYAとして区別すると ξ
結論は得られてい宮せλ心
があり告す。
三木茂侍士が「深泥池産」として「山
城水草誌Ji'L描かれたヒメタヌキモ (U
フトヒメヲヌキモの
葉の分樹賦図
multispinosa MIKI n.sp.)
はフトヒメタヌキモと思A
つれます。
主軸をもったとの主
う在分岐様式はフト
ヒメタヌキモ『てのみ
認められるものです.
水中茎
1
1
7
北方山草 8 (1989)
ヤチコヲヌキモの葉の形態
A:
:
$
'
I
山原図ー空無期間けす
中の沼産の生体よりス
クッチしたもの
・コタヌキモよりも樹伏
突起が目立ちます
B 外山原図一江J
I
巾!日東
野路星原産の生体より
スクヅチしたもの
〆イ
LH-aFU ,
puρUHMφt
1
1
8
e一a
ノ
、
(ドイツ産)
・
sbeo
lrib
-teo
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mhe
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thoc
s c s干
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p
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la-drur﹂
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eer ら /
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e 仁 ex
udBX
-nr(
'kue-cedn-n
uαsac
-ngms
日 untl
-kur-oltae
genHs
utue
HBtRG
C:Gluck 原図
北方山草 8 (1989)
3場
員
詰
G
8
タヌキモ Utricularia australis R.Br.
1
1
9
北方山草 8 (1989)
B
I:
t
.
1
」一、「一一ノ
前年の殖芽
ヒメ
Fヌキモ Utricularia minor L
-120
北方山草 8 (1989)
G
コタヌキモ Utricularia
.
•,~.・
1
2
1
intermedia Hayne
。
北方山草 8 (1989)
ナガレヒメタヌキモ
Utricularia minor L
.
forma natans KOMIYA
1
2
2
北方山草 8 (1989)
監
ヤチコタヌキモ
Utricularia intermedia Hayne
forma ochroleuca(RHart
m
.)
目
KOMIYA
勾
e
理
-
F
o
1
2
3ー
2
北方山草 8 (1989)
標 本 図 版 デ " y
A一世ヌキモ Utricularia australis R.Br.
A← 1;
十勝管内中)
1I
期 間 前 外 山 NDO(/9cfcf.cf.IO)
〈付記〉全長。2m6タ cm
の巨体の一部を奴断して樗泳を作製
A-02:北見江差君開封ム村浅茅野湿原舛凶 NDO(/9cfcf.7.;
l,9)
A←3-6:勇払郡厚真町育皆申沼外山 NDO(/9cfcf.o
.目
。2
0
2)
A←7-d
"
:十勝管内中)1I陪s:J!数期工外山 NDO(/9cfcf.cf.IO)
A-9:北見江差剥猿払村浅茅野湿原外山 NDO(/9cfcf.7.029)
A-Iθ:十勝管内中川陪怪裟買町外山 NDO(/9cfcf.cf.1θ)
Bーヒメ"yヌキモ Utricularia minor L
.
2
:新 調 苫 小 牧 市 柏 原 湿 原 刷J NDO(/9cf7.6.0202)
Bー /- 0
B-3-~; 勇払郡岳j、牧市字樽前森田沼外山 NDO(l9
c
f
c
f
.6./02)
B-5:勇 糊E
厚真町無名の沼外山 NDO(/9cfcf目.0.
029)
鹿 沼 外 山 NDO(l9
c
f
c
f
..
o
.1.0)
B-6←ア:勇払君目厚静T
B-cf:勇払郡苫小牧市字齢官森田沼外山 NDO(/9cfcf.6./02)
Cーコヲヌキモ Utricularia intermedia Hayne
0-/:勇払郡厚真町奥井沼外山 NDO(/9cf6.o
..023)
く付記〉水深 1mの深所f'L地中茎を晶、ろしていた
0-02-6;劇 団s
;
'
5
,J
牧市俗称「海岸沼j 外山 N
DO(/9cfcf.o
..029)
く付記〉上記標本のうち, 0-6は水中葉V
ても捕虫のうをつけているととは注目
すべきととである。
Dーナガレヒメタヌキモ Utricularia minor L.form.natans KOMIYA
D-/:雨竜芳百雨竜沼 タ~ NDO(/9cf7.cf./9)
く付記〉新分布一 f0r
m
.mi
n0r f0r
m
.natansが混生介布しているのが確認
I
された.
Eーヤチコタヌキモ日 tricularia intermedia f.ochroleuca
(
R
.Haltm)KOMIYA
E-/: サロベッ湿原豊富町小宮
NDO-020233(/969.9.~)
E-02:サロベツ湿原豊富町小宮 NDO←
。2
0233(1969.9.4
ど)
く 付 記 )E-I.o
2 とも K典型的在ヤチコタヌキモ
1
2
4
北方山草 8 (1989)
今岡は山草誌ではほとんどとりあげられ
筆者は、過去 6年間、土曜、 H曜、祝祭
ることのなかった北海道の食且寸直物につい
日のすべてを北海道各地のタヌキモ類の鋭
て詳細l
をまとめることができました。
祭に当ててきたー入、同じ i
J
l
.
l
!
i (新篠i
章湿
このテー 7 を選んだ理由はいくつかあり
原)に年間百度以上も現地観察したことは
ますが、その主在環由は三つです。その一
今は忘れ得ぬ思いIilとなっています。
つは、最近特に水中に住む食虫刷物の自生
その地は長い間手っかずの状態が続いて
地である沼地や湿原が急速に失われつつあ
いたためにムシトリスミレを除く道産のタ
り、少しでもそれらの槌物に関心をもって
ヌキモ宇件前物(L
e
n
t
i
b
u
l
a
r
i
a
c
e
a
e
)の全てを
もらいたいこと。二つめは、水中にすむ食
産する所であり、かつての石狩泥炭湿原の
虫植物Jを初心者でも容易に、しかも正確に
縮図がそこに横たわっておりました。
I
n
J定できる文献が身近になかったこと。三
当時は伊l
定書も一般に流布したものがな
つめは、道産の食虫梢物の分布に米知の部
く、ずい分苦労したものですが、ミミカキ
分が多く、文献を無批判に引きうつしたた
グサ妻J
iを道内から再確認したことから食虫
めの誤りが散見されることをあげることが
納物分類学を専門とされている小広定志先
できます。
生と知り合い、標本の作製法から同定、そ
タヌキモ類の大宝旅は苫小牧・厚真町に
の他について教わることができました。こ
見られますが、開発によってそれらの自生
れからもハイスピードで失われつつある水
地は将米失われようとしております。
中の食虫植物達と開発との追いかけつこと
サロベツ i
毘原・釧路湿原などの国立公園
その記録化が続きそうです。
文で綴る
だけでなく、 i
映像としての記録化も!!
でさえその保存には様々な問題をかかえて
いるのが現状で自然環境は悪化の傾向にあ
気の速くなるような計画ですが、筆者の
踏査は全道を i
召単位まで落として、分布の
ります。
北海道のある湖沼が鳥たちの聖域として
有無を明らかにしようとしています。そし
ラムサー lレ条約が結ばれようとしているこ
て、分イhしないことを証明することに多大
とは明ましいことでありますが、北海道で
な労 }
Jを必要とすることを知らされます。
は水中にすむ食虫植物j
圭に Rを向ける人が
世紀前の人々は馬に乗って調査旅行を
ほとんどいないことは、どういうことなの
しましたが、交通機関・道路網の発達がi
l
l
でしょうか。
単位の調査を可能にしました。
水中の食虫植物は水環境に非常に敏感で
〈後記〉
す。水環境が悪化すれば、それらはすめな
重ねて申しますが、本編は小宵定志・柴
くなります。それらがすめなくなるという
ことと人聞の生活とは密桜な関係があり、
田千品両先よ十一(日本歯科大学)による調査
水環境の悪化は人聞の生活に危機をもたら
の士台の上に成り立ったものです。両先生
すでしょう。
にはi
架く感謝の意を表します。
1
2
5
北方山草 8 (1989)
これを機会にして、水中の食虫I
仇物に関
それによってさらに記録の精細を図るこ
とが可能になるからであります。
心を深められ、会員の方々や会員外の方々
北海道の多くの方々からの情報をJl
J
I待し
より情報等が得られますなら、本編をまと
めた意義は果たされるものと考えています。
て、ベンを置くことにします。
庭で咲かせたい花 3種
千葉市木暮
翠
'/11¥宅の庭にある植物は、主に蝶の幼虫た
リれ雲岳石室へ行ってくる途中だが、大雪
ちの餅になるものである。多年にわたって
山はそれ以来賛っていないものだからこま
r
媒」のことに興味をもちつワけてきたも
かい場所は思いIlうせない。その初めての大
のだから、いつかはいろいろの種類の蝶を
雪1
1
1は、往路が yゲスっているなかを、!国主主
飼育できるように、との思い入れでそうな
峡の加藤さんというアイヌ人のおじさんに
ってしまった。おそらく植物愛好会のよう
案内してもらってひたすら歩いた
な方たちから見たらあきれられてしまうこ
ら{可もわからなかった。
とだろう。
Lのだか
州日主はうって変わって上天気に恵まれ、「あ
しかし、蝶の採集に行った山野に咲く花
れが北鎮岳J、「こちら 1
Mが黒岳」などと友
を兄れば、やはりその美しき・可憐さに見
人と少しのんびり加減に歩いた。そうした
とれてしまうのは白然のなりゆきであって、
なかでかなり大きなコ 7 クサ 1
下落を見かけ
「もし自宅の庭でこれらの花を咲かせられ
たわけで、これは大感激せざるを得ない。
たらどんなにすてきなことか」と思ったり
するとその友人は「群落の中に寝そべるか
もする。山野草を千葉のようなところで栽
ら写真を f
最ってくれJ と弓う o 大胆という
培することは簡単ではないので、それらの
かロマンチックというか、こういう発想は
咲いている場所を白分の庭にみたてて会い
ちょっとないことだと思うが、彼はその頃
に行くのが賢明かもしれない。
婚約中か新絡まもないときで、多分口 7 ン
そんな矛盾を気持ちの中にかかえながら
チソクな気分に浸っていたのだろう。ちな
の出会いを書きつづってみた。街l
笑覧いた
みに彼の名誉のためにつけ加えておくが、
だければ幸いでhある。
コ7 クサの l株もふみくだくことなく実に
うまく寝そべったので、これまた感心させ
(1)コマクサ
られたことであった。
コ7 クサの 1
下落を見たのは 3
0年くらい前、
その後、自生のコ 7 クサを見た経験は余
大雪 1
1
1がはじめてであった。層雲峡から入
り多くないが、しかもそのいずれでも大雪
1
2
6
Fly UP