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インドネシア・カラワン工業団地

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インドネシア・カラワン工業団地
Special
伊藤忠商事株式会社
インドネシア・カラワン工業団地
(Karawang International Industrial City)
日系企業の旺盛なインドネシア進出ニーズに合わせて拡張
伊藤忠商事株式会社は、1992 年にインドネシアで最大規模となるカラワン工業団地の開発を開
始しました。インドネシア有数の財閥シナルマスグループと共同で出資・運営する本事業は昨年、
20 周年を迎えています。
カラワン工業団地( KIIC )は首都ジャカルタ中心
部から東へ約 55㎞という好立地に位置し 、総開発
面積約1,200ha に現在、約130 社の企業が入居し
ジャワ島東部 、西ジャワ州( 州都はバンドン)に
ています。20 年に及ぶ管理・運営実績に基づいた
位置するカラワン県は、200万人以上の人口を擁し
成熟度・安心感の高さから、入居企業の 8 割以上が
ており、豊富な労働力の確保が可能です。
日系企業となります。日系企業の進出をサポートす
カラワン県は西ジャワ州有数の穀倉地帯ですが、
るための付帯施設を充実させることに加え、賃貸工
近年はジャカルタ周辺での工場進出先の最有力地
場事業にも着手し 、多様な進出形態にも対応して
として注目が集まっています。
います。
インドネシアの内需の高まりを背景に、日系企業
また、ジャカルタ地域の新国際貿易港の予定地
及び新国際空港の有力候補地もカラワン県にあり、
のインドネシア進出意欲は旺盛です。そのニーズに
今後も工業地域として更なる充実・発展することが
合わせるべく、追加の開発用地取得を計画していま
期待されています。
す( 一部実行済み)
。
20
カラワン県について
ARES 不動産証券化ジャーナル Vol.13
伊藤忠商事株式会社
インドネシア・カラワン工業団地(Karawang International Industrial City)
カラワン工業団地(KIIC)案件概要
場所・規模
: ジャカルタ市内よりに約 55km( チカンペック高速道路 、直結の IC あり)
西ジャワ州カラワン県に立地 、カラワン市( 県庁所在地 )
中心部まで車で約 15 分。国
際空港スカルノ・ハッタまで約 80km 、国内最大貨物港タンジュン・プリオクまで約 60km。
KllG 全体開発面積約 1,200ha( 東京都千代田区に相当 )
経 緯
: 1992 年にシナルマスと JV 契約
1993 年から第 1 期 、1995 年に第 2 期 、2009 年に第 3 期に着手
昨年( 2012 年 )、20 周年記念式典開催
事業形態
: 事業主体:伊藤忠 50% 、シナルマスグループ 50%
PT.MaligiPermataIndustrialEstate
( MPIE 社 )
PT.HarapanAnangBakri&Son's
( HAB 社 )
PT.KarawangTatabinaIndustrialEstate
( KTB 社 )
( ※全体を3 期に分けて各期毎に別会社にて運営 )
入居企業
: 全 136 社( 内日系企業 114 社 、日系企業比 84% )
自動車・家電・食品・日用品他製造関連各社
(トヨタ、松下電子工業 、ヤマハ 、いすゞ、
シャープ 、P&G 、東洋紡 、三菱電機 、
ユニ・チャーム、味の素 、大日本印刷 、住友建機 他 )
インフラ
: 電力:電力公社( PLN )
と優先契約を締結し、安定供給体制を実現
工業用水:独自の工業用水・廃水プラント施設あり
( 供給能力3 万トン / 日、排水処理能力2.7 万トン / 日)
通信:電話一ジャカルタ・カラワン局番併設可 、光ファイバーケーブル埋設
インターネット:ISDN 、ADSL 専用線可能
その他併設施設:日本食レストラン( 2ヵ所 )、インドネシアレストラン( 1ヵ所 )、コンビニ、
銀行 3 行( 内日系 2 行 )、体育館 、ガソリンスタンド、サービスアパートメント他
日本人スタッフによるバックアップと充実のセキュリティ体制
常駐日本人スタッフ( 計 8 名 )、24 時間警備体制( 警備員130 名 )、消防自動車・救
急車保有。自治会組織 、CSR 活動も充実。
【レンタル工場 】
2013 年よりレンタルエ場の賃貸開始。建築面積約 1,500㎡、約 3,000㎡の2タイプ。
新たに建設の賃貸工場( 全 3 棟 )
については、2014 年から賃貸にて計画中。
【 サービスアパート「 Puri 」】
敷地 7,904㎡、延床 14,332㎡、168 室( 22 ~ 72㎡)
1998 年 8月完工 、施工:東急建設 、2012 年 8月増設完工:竹中工務店
May-June 2013
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Special
Interview
鈴木 隆氏
伊藤忠商事株式会社 住生活・情報カンパニー 建設・金融部門
建設第三部長
伊藤忠の工業団地開発
中国と東南アジアは日系企業進出において情報
当社は約 40 年前より国内で工業団地開発を開
と経済の格差が存在しており、アービトラージを利
始し、それ以来、国内外で多数開発を行ってきた。
用して高いリターンを得られる可能性があると見て
商社にとって工業団地は、マンションなどと同じ開
いた。途上国ならばアフリカ大陸や南米にも選択
発セクターの 1 つ。もともと商社の扱う事業は多岐
肢はあり得るだろうが、日系企業との親和性が高
にわたり取引企業も多種多様。工業団地を開発す
く、かつ経済成長が目に見えて著しいアジア市場
る際には、その地域の団地ならどの産業に適して
が、長期継続的に投資する先としては相応しいと
いるのかなど、分析と先読みが必要とされる。こう
考えている。当社は中国での経験も活かして、東
したことから、工業団地は商社にとっては取り組み
南アジアの不動産開発においても、当社の別部門
やすい開発メニューだったと言える。また、工業団
とも長年取引をしている現地の財閥系企業とパー
地の分譲後には工場建設を受注し、工場操業のた
トナーシップを組む戦略を立てた。信頼関係が既
めの機械等の資器材販売、最近ではスマートシティ
に構築できていることに一日の長があると考えてい
化など、ビジネスを複層的に行うことで利益を得て
る。
いる。
22
東南アジアに相次いで進出した。
当時は、東南アジアに進出を希望する日本企業
工業団地開発は、経済のトレンドや進出事業者
は十分な情報・サポートが入手できず、逆に日本の
側が求めているものに上手く対応していけるかどう
メーカーを誘致したい東南アジアの政府や企業側
かが付加価値に繋がっていく。例えばある地域に
も暗中模索の状態だった。日本側は現地のインフ
量販店がドミナント出店するという情報を手に入れ
ラ・法制度がどうなっているか分からないし、東
れば、その物流拠点として相応しい立地の土地を
南アジア側はどのようなメーカーが経済発展に必要
探すように、工業団地においても進出事業者が求
なのか、どのようにアプローチすべきか分からな
めることにうまく合致できるものが良い開発と言え
かった。そうした状況で、当社にはパートナーと共
よう。
に、日本企業と東南アジア双方の情報を整理する
アジア進出の背景
役割が求められ、その役割を果たすことができた。
カラワン工業団地はインドネシア有数の財閥・シ
当社の海外不動産取組は、1970 年代の東南ア
ナルマスグループとの 50 対 50 の合弁事業。用地
ジア(インドネシア)における投資でスタートし、
選定、土地購入、許認可まではシナルマスの能力
その後中国を含む他のアジア諸国に拡大してきた
に負うところが大きい。一方、開発後に日系企業を
が、工業団地取組に関しては、1980 年代に中国、
誘致して、進出企業数を増やしていくのは当社の
ARES 不動産証券化ジャーナル Vol.13
伊藤忠商事株式会社
インドネシア・カラワン工業団地(Karawang International Industrial City)
受け持ちである。シナルマスとはアジア通貨危機な
コミュニティの場合、近隣の企業と情報を共有した
ど苦しい時も共に乗越えてきた信頼に足る重要な
いという要望が強く、労務問題などに対処する際
パートナーだ。
も企業同士で足並みを揃える傾向がある。カラワ
カラワン工業団地の優位性
ンでは日本人スタッフ 8 人(サービスアパートスタッ
フ含む)が常勤し日本語で相談に対応し、現地の
ジャカルタから東に約 55km、高速道路の IC 至
法制度等が変更になった場合は外部の講師による
近に立地している。進出企業の 8 割以上が日系企
セミナーを開催し情報を共有するなど、きめ細やか
業だ。1993 年販売開始の第一期から多くの二輪、
な情報管理・情報共有を行っている。そのような
四輪関連の企業進出に恵まれ、1995 年販売開始
一連のサービスが日系企業に高く評価されている。
の第二期にはトヨタ自動車(1997 年進出)のほか
高度成長期にあるインドネシア
生活消費財メーカーにも進出して頂いた。トヨタ自
動車については当時 100ha という広大な土地を探
個人的な感覚では、日本の 30 ~ 40 年前を見て
しておられ、カラワンはその要望に応じることがで
いるようだ。ジャカルタは民度が高い。経済発展
きたこと、また高速道路の IC から至近の好立地も
は次の段階へと移り、これから爆発的な高度成長
評価して頂けたと考えている。団地内には、日本
が始まっていくという印象を持っている。今後、都
人スタッフのいるサービスアパートメントも 168 戸整
市部で不動産の高度利用が進めばさらに人口も増
備しており、満室稼動中だ。レンタル工場について
加する。また、ジャカルタの平均年齢は 20 代後半
も、試験的に操業したい企業や、すぐにでも操業
といわれており、所得の伸びとあわせて多種多様
を行いたい企業向けに増設を予定している。こう
な業態で好況が続くのではないか。
した付加価値を高めることで、日系企業を中心に
好評を博している。
一方で、さらなる経済成長のためにはインフラの
拡充が不可欠だ。とりわけ道路整備は喫緊の課題
日系企業の高い需要に応えるため、昨年度は約
である。高速道路の混雑が激しいため、都市部で
200ha の土地の買い増しを行うことでパートナーの
は各対策が検討されているようだが、今後、日本
シナルマスと合意、現在土地取得に向けプロジェク
からもイオンやファミリーマートなど小売店の進出・
トを推進中である。カラワンの立地優位性は、ジャ
拡大が予定されており、一般市民の生活消費レベ
カルタでの発展が見通せる限り揺るがないと考えて
ルの質・量併せた向上に伴って物流網の強化が欠
いる。カラワンに入居する日系企業の多くは、イン
かせなくなる。今後も、アジアの経済成長に対す
ドネシアの内需向けに製造しており、大消費地に
る日系企業の動向を見極めながら、堅実に事業を
近いカラワンは優位だ。
行っていきたい。
動き出す歯車
カラワンの証券化の可能性
一つの例を挙げれば、日系の大手二輪・四輪メー
合弁事業なので、パートナーの考えも尊重しな
カーに入居頂くと、次々と関連企業にも進出頂ける。
がら検討していくが、将来的な選択肢の 1 つとして
日系企業が工業団地の大勢を占めるようになると日
は考えられる。我々は常に効率の良い資産に置き
本的な管理がしやすくなり、当社が国内で培って
換えていくことが宿命であり、どこかでこの事業に
きた運営ノウハウも使えるようになる。日本的な管
も次のステージへと区切りを付ける必要がある。将
理とは、日本食レストランといった付帯設備面から
来、賃料収入で安定的な運営に移行することが実
日系企業同士の横の連絡を行うソフト面まで、万
現できれば、上場等による持分の流動化も選択肢
全のフォロー体制を敷くことだ。例えば日系企業の
のひとつ。
May-June 2013
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