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Agilent 平衡測定の例: 差動増幅器

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Agilent 平衡測定の例: 差動増幅器
Agilent
平衡測定の例: 差動増幅器
アプリケーション・ノート 1373-7
はじめに
Agilent Technologiesは、差動RF回路測定の最も正確な手法
を可能にするソリューションを提供しています。この手
法では、Agilent N444xシリーズ平衡測定システムを使うこ
とにより、従来の2ポート・システムと同レベルの確度で、
マルチポート・デバイスをテストすることができます。
このシステムは差動デバイスのテストにも使用でき、平
衡動作条件での性能(差動モードとコモン・モードのステ
ィミュラス・レスポンス性能)をミックスド・モードSパラ
メータを使って示します。
ポート1
ご注意
2002 年 6 月 13 日より、製品のオプション構
成が変更されています。
カタログの記載と異なりますので、ご発注の
前にご確認をお願いします。
ポート2
ミックスド・モードSパラメータ解析を使うと、差動回
路のデザインに役立つさまざまな情報が得られます。
以下の図に簡単な例を示します。
図1のサンプル回路Aは、完全に対象で、互いに完全に
分離された2つの利得チャネルから構成されています。
この回路のマルチポート・シングルエンドSパラメータ
を図2に示します。増幅器はすべてのポートで完全に整
合しており、各チャネルの利得(S21およびS43)は約8 dB
です。
ポート1
ポート2
ポート3
ポート4
図1: サンプル回路A
これは差動増幅器なので、差動モードとコモン・モー
ドの信号に対する回路の応答も考慮する必要がありま
す。これは図3に示すミックスド・モードSパラメータ
から知ることができます。この場合も、入出力の両方
のポートが、差動モードとコモン・モードの両方の信
号に対して整合しています。差動モードとコモン・モ
ードの利得も約8 dBで一致しています。
周波数(GHz)
図2: サンプル回路AのシングルエンドSパラメータ
2
周波数(GHz)
図3: サンプル回路Aのミックスド・モードSパラメータ
グランドを取り除くと、2つのチャネルの間のアイソレ
ーションがなくなります。図4は新しいサンプル回路B
の回路図です。この例では、回路をシングルエンド・
デバイスとして見た場合、各ポートがそれぞれ他のポ
ートと結合しています。
各ポートから見たインピーダンスは150 Ωとなり、シ
ングルエンド利得は図5に示すように2 dBに低下しま
す。このように、シングルエンドSパラメータだけを見
れば、この回路は前の回路よりも劣るように思われる
かもしれません。しかし、図6のミックスド・モードS
パラメータを見れば、この結論が必ずしも正しくない
ことがわかります。
差動信号の場合、仮想グランドが存在するため、ポー
トは整合しており、利得は前と同様に8 dBです。コモ
ン・モード信号の場合、ポートはオープン回路で、デ
バイスに利得はありません。すなわち、シングルエン
ド性能は差動モードとコモン・モードの性能を複合し
たものを反映しています。これからわかるように、デ
バイスが実際に用いられる動作モードでデータを表現
することが重要なのです。
周波数(GHz)
図5: サンプル回路BのシングルエンドSパラメータ
ポート1
ポート2
ポート3
ポート4
図4: サンプル回路B、チャネル・アイソレーションのない
デバイス
シングルエンド・データからの印象とは逆に、このデ
バイスは前の例よりもはるかに有用です。しかも、コ
モン・モード除去比(差動モード利得とコモン・モード
利得との比)が非常に高いことがわかります。
周波数(GHz)
図6: サンプル回路Bのミックスド・モードSパラメータ
3
差動増幅器の測定
ミックスド・モードSパラメータ解析から得られる情報
をさらに深く理解するには、4端子デバイスのデータを
調べるのが役立ちます。このようなデバイスの例を図7
に示します。
ポート1
ポート2
ポート3
ポート4
図7: 4ポート・シングルエンド・デバイス
デバイスのシングルエンド性能
Agilent N4444A平衡測定システムでサンプル・デバイ
スの性能を測定した結果を、図8に示します。
シングルエンド回路として使用した場合、この増幅器
の2つのチャネルの利得(S21とS43)はともに約14 dBで
す。2つのチャネルの入力インピーダンス(S11とS33)お
よび出力インピーダンス(S22とS44)もそれぞれ同程度
の値です。
2つの入力ポートの間のアイソレーション(S13とS31)、
および2つの出力ポートの間のアイソレーション(S24と
S42)は、周波数によっては10 dBを下回り、ある程度の
結合が存在することがわかります。
デバイスのミックスド・モード性能
2つのチャネルの性能がほぼ同一であり、チャネル間の
アイソレーションがあまり大きくないことから、差動
モードとコモン・モードの性能が異なることが予想さ
れます。図9のSパラメータは、このデバイスのミック
スド・モード性能を示します。
図8: シングルエンド・デバイスのシングルエンド・パラメータ
予想通り、左上部分の2×2の部分行列は、右下部分の
2×2の部分行列と大きく異なっています。これは、差
動モードの性能とコモン・モードの性能とが一致しな
いことを示します。
この例で使用したデバイスは、Analog Devices社の
AD8350-20です。これはRFおよびIF回路向けの高性能
完全差動増幅器です。このデバイスの詳細については、
下記のウェブサイトをご覧ください。
www.analogdevices.com.
図9: シングルエンド・デバイスのミックスド・モード
Sパラメータ
4
コモン・モード除去比(CMRR)
平衡システムは通常、差動モードで動作するように設
計されています。これは差動モードで得られる性能上
の特性を利用するためです。しかし、目的とする差動
モードの信号のほかに、デバイスには必ず意図しない
コモン・モードの信号が存在します。理想的には、差
動デバイスは差動モードの信号だけに応答すべきです。
差動デバイスがどの程度モードを区別できるかの指標
として、コモン・モード除去比(CMRR)が用いられます。
これは、差動モード利得(Sdd21)とコモン・モード利得
(Scc21)との比です。デバイスのコモン・モード利得と
差動モード利得が等しい場合、Sdd21= Scc21となり、
CMRRは0 dBです。
平衡ペアの2つの側の間のアイソレーションが大きい場
合、2つのモードに対するデバイスの応答は一致します。
図10に示すのは、前記の差動デバイスのCMRRです。こ
のデバイスでは、500 MHz以下の動作帯域でのCMRR
が35 dBを超えています。このことから、コモン・モー
ド成分と差動モード成分が等しく含まれる信号をこの
増幅器に入力した場合、出力はほぼ差動モード成分だ
けになることがわかります。これは、差動モード成分
が増幅されるのに対し、コモン・モード成分は減衰さ
れるからです。
平衡デバイスでのモード変換の重要性
差動アプリケーションにとって非常に重要なのが、回
路の対称性です。対称性は、電磁干渉に対するイミュ
ニティ、電源雑音に対するイミュニティ、偶数次高調
波の抑圧などといった利点を実現する上で基本的な仮
定だからです。完全に対称な回路では、モード変換が
発生しません。すなわち、差動入力に対する応答には
差動モード成分だけが含まれ、コモン・モード成分は
存在しません。コモン・モード入力に対する応答には
コモン・モード成分だけが含まれます。したがって、
完全に対称な回路では、ミックスド・モードSパラメー
タ行列のモード変換項はすべて0になります。モード変
換項を調べれば、回路の対称性を直接に評価すること
ができます。
差動モードからコモン・モードへの変換項
モード変換項の1つの例が、図11の右上部分に示されて
いるScd21です。このデータの意味は、差動モードだけ
の信号を回路に入力した場合、パワーの一部がコモ
ン・モード成分に変換されて出力に現れるということ
です。生成されるコモン・モード信号はグランド・リ
ターンにも現れ、放射される可能性があります。した
がって、差動モードからコモン・モードへの変換は
EMIの潜在的な原因となります。
Sdd21/Scd21の比(図11の左下部分に表示)は動作帯域内
で30 dBを超えているので、このデバイスに対する有効
差動入力パワーのうち、コモン・モード出力に変換さ
れるのは1%未満です。
同様の解析が反射パラメータに対しても可能です。
図10: コモン・モード除去比(CMRR)
5
コモン・モードから差動モードへの変換項
コモン・モード信号に対する回路の動作を解析するに
は、各ポートでのコモン・モードと差動モードの応答
を調べます。
すでに述べたように(「デバイスのミックスド・モード
性能」を参照)、この例で使用しているデバイスの性質
上、SdcパラメータはScdパラメータにほぼ一致します。
この2つは一般には等しいとは限りません。
コモン・モード信号が差動モードに変換されると、シ
ステム全体の性能に大きな影響が生じ、EMIによる性
能低下が生じやすくなるおそれがあります。したがっ
て差動回路の場合、モード変換の小ささ(すなわち回路
対称性の高さ)を評価することが重要ですが、このこと
はこれまで非常に困難でした。
図11: モード変換項
6
結論
Agilentは、差動RF回路の測定のための最も正確な市販ソ
リューションを提供しています。この手法では、
Agilent N444xシリーズ平衡測定システムを使用します。
これらのソリューションは、差動モード・デバイスを
評価するために、ミックスド・モードSパラメータの形
でデータを表現します。これにより、差動モードとコ
モン・モードの信号と応答に関する回路の動作を表現
することが可能になります。
関連カタログ
『平衡測定の例: SAWフィルタ、Application Note 1373-5』
カタログ番号5988-2922JA
『Agilentの平衡測定の実例: バラン、Application Note 1373-6』
カタログ番号5988-2924JA
『平衡コンポーネント用測定ソリューション、
Product Overview』カタログ番号5988-2186JA
ウェブ上の主なリソース
Agilentの平衡ソリューションの詳細については、以下のウェ
ブサイトを参照してください。
www.agilent.com/find/balanced
Agilentのコンポーネント・メーカ向けソリューションについ
ては、以下のウェブ・サイトを参照してください。
www.agilent.com/find/component_test
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Copyright 2001
アジレント・テクノロジー株式会社
October 31, 2001
5988-2923JA
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