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コトノハ通信試し読み版

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コトノハ通信試し読み版
1
3
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き
し
騎士〉のほうを見る。
と
かたわ
せいどう
そして、心からの信頼を持つ相手にだけ許す、微
え
笑みを浮かべた。
どりつくことすら出来なかっただろう。
支えてくれなかったら、
〈 勇 者 〉 は、 こ の 場 所 へ た
ここへ来るまでの途で出会った、この女性騎士が
ほほ
踵でしっかりと地に立っていた。傍らに立つ〈聖堂
かかと
〈勇者〉の足は、わずかによろめいていたが、両の
――これで、全てが解決する。
そう。〈魔王〉……。
この黒き建造物の中には、かの者がいるのだ。
の安堵があった。
あん ど
恐怖などは微塵もない。ただ純粋な決意と、ある種
み じん
澄んだ瞳に、憎しみや憤りの色はなく、もちろん
いきどお
彼女は〈勇者〉であった。
ゆうしゃ
その瞳で、眼前にそびえる黒き建物を見上げる。
――その少女は、澄んだ瞳の持ち主だった。
す
Q:ここでは、Q&Aをやることになりました。さっそくですが、セツナさん。
『勇者屋』の仕事ってどこからとってくるんですか?
白銀の鎧に身を包み、輝く長い金髪の〈聖堂騎士〉。
その姿は教会の壁画にあるような、美しき銀鎧の聖
乙女を思わせた。
強い意志を秘めた目をしていたが、勇者に比べる
と、いくらか気後れしていたことは否めない。
――果たして、この場所に足を踏み入れるのは、
正しい選択であるのか……。
しかし、〈勇者〉の満身の笑みを向けられると、〈聖
堂騎士〉のわずかな迷いも、振り払われたようであ
る。揺るぎない目で、〈勇者〉を見返し、そして無
言でうなずいた。
――ゆこう。
ふたりは黒い建物をいままた見据え、その扉に手
をかけ、思い切って開け放つ。そして〈魔王〉の待
つ暗がりへと、足を踏み入れていった――。
A:王宮のウルダンからの斡旋もあるけど……どこからってわけじゃなくて、
長い間かけてつくった色んなコネね。ユーシスくんもいずれわかるわ。うふふ。
4
そう。君自身がトラップを仕掛けた部屋なのだから、間違いない。(6へ)
そう言うと、フランチェスカは『魔王の肖像』に拳をふりあげた。
(98 へ)
君もうなずく。
など、できぬ!」
5
「う~ん。いかにもトラップがありそうな部屋って感じですね!」とは、勇者見習いのメイ。
「うむ。しかし、私は正義に仕える聖堂騎士。たとえワナを回避するための偽りだとしても、魔王に忠誠を誓う
君たちは、扉を開けて部屋に入る。
メイが心配そうに言ったが、フランチェスカはゆずらなかった。
さあ、いよいよ、ダンジョン探索のはじまりだな!」聖堂騎士フランチェスカが意気をあげた。
「ええっ。なぐるんですか? だいじょうぶかなあ。なんかタタリがあるかも……」
「いやその、私は、少し遠慮してはどうかと思った
のであるが……」
〈聖堂騎士〉フランチェスカは、美しい金髪の頭を
かきながら、決まり悪そうに言った。
「メイどのが、死にそうな顔をして、ふらつく足で
き づか
むこうを歩いていたのでな」
してるが、目の前のクッキーの皿には礼儀程度しか
「なるほど、さすれば〈回復の泉〉のようなものだな。これぞ魔境に神。さきほどのトラップで消耗した体力を
「行きましょう、勇者さま!」アイボリーも魔法の杖をかまえて、うなずいた。
回復することにしよう」
「いや……」ピエールだけが小声でつぶやく。「あの看板は『魔王屋』と書いてあるような……建物も小さいです
Q:〈コトノハ〉っていう世界名ですが、これは日本語の「言の葉」から来て
るんですか?
「――あれっ。どうしたの、ふたりとも?」
ま おう や
魔王――〈魔王屋〉の店主ユーシスは、扉を開け
て入ってきたふたりに気がつき、声をあげた。
表の通りに比べれば、店内は暗い。もっとも、油
ランプを照明具とするこの街では普通のことだ。
〈勇者〉メイは、ふらつく足で建物内に足を踏み入
手をつけていない。
ユーシスの気遣いで、彼女もお茶のカップを手に
れ、しぼり出すように言った。
「ははっ。いつものことですからね。僕も慣れまし
「ユーシス、さん……」
「お、お腹がすきました……。な、なんか、食べさ
たよ」
ドラゴンテイル
さきほどまでは、このシッポもうなだれていたよ
仔馬の尻尾というより、竜の尾という印象。
ポ ニ ー テ イ ル
オレンジかかった赤毛を無造作にしばっているが
すっかり元気になったメイが声をあげる。
ず返しますから!」
「ユーシスさん。このお礼は、この勇者メイが、必
ユーシスは肩をすくめた。
せてくださいぃ~」
★ ★
「ううっ、生きかえりましたぁ~」
数刻後……。
ユーシスが用意した、パンやおにぎり、干し肉、
そしてあわててつくったスープなどを平らげたメイ
うに見えたが、いまでは元気よくブンブンと振り回
ニッコリと満身の笑みを浮かべた。
し……」
「さあっ、いくぜ!」アッシュは勇ましく、その建物へと向かった。果たしてそこには!(130 へ)
この湯には毒も仕掛けもなかったと思い出し、君も安心していた。いい気分でお湯に入る。
(18 へ)
は、ようやく人心地に戻った声で言った。
はっ き
さりとて肉体労働のほうを任せても、とんだドジ
ぶりを発揮する。うっかり棚の整理や掃除を頼んだ
さんばかりの勢いだ。
「近いうちに、かならずや立派な勇者になって、出
おかげで、壊された商品は数知れない。
さく ご
貨店〈魔王屋〉にとって、もっとも損害が少ないと
こうしてタダでゴハンを食べさせるのが、この雑
世払いで!」
元気いい声で、調子のよいことを口にする。
「あー、いいよ、そんな気にしなくて」
き けつ
いうのが、数々の試行錯誤を経てユーシスが至った
経済上の帰結であった。
ユーシスは苦笑いする。メイは〈勇者〉を名乗っ
ているが、言ってみれば〈1レベル勇者〉、見習い
「う~ん。そうですかぁ~」
う存在は、まったくもって、少しもちっとも、珍し
「わかりました。じゃあ、やっぱり出世払いですね!
メイはちょっとばかり口をとがらせたが、すぐに
勇者という立場である。
コトノハ
くないのである。
よぉし」
メイは、腹ごなしも兼ねてか、立ち上がって剣を
そして、この世界においては、〈勇者〉などとい
「えーと。……じゃあ、とりあえず、この〈魔王屋〉
振るような真似をはじめた。
言われたユーシスは苦笑いし、肩をすくめた。
て、〈魔王〉を倒しますから!」
「期待しててくださいっ。いつか立派な勇者になっ
笑うユーシスに、メイは真顔で言いかえした。
「ははっ。期待しないで待ってるよ」
で、お手伝いしてお返しを!」
今度はそう言うが、ユーシスは苦笑いした。
「あ。まあ……そのうちまた、頼むね」
そう。メイときたら、本人は大真面目で善意に溢
れているのだが、なにぶん読み書きも出来ないから、
帳簿はもちろん、店番も危なっかしい。
A:『ダークロ』最終刊の後書きにも書きましたが「その世界の『世界』を意
味する言葉と『言葉』を意味する言葉は同じ言葉」という設定です。
(続く)
「あれが〈魔王の城〉だな。看板に『魔王なんとか』とか書いてあるから間違いねぇ!」とアッシュが息巻く。
6
男湯と女湯も分れているし。これは安心して入っていいってことじゃないですか」
7
アッシュたちの前には、黒い建物がそびえていた。
「フランチェスカさんも疑りぶかいなあ」メイが笑った。
「ほら、脱衣カゴと、手ぬぐいもありますよ。ちゃんと
ユーシスは、実は〈魔王〉であった。
存在まっしぐらのふたりには秘密にしていたが……
勇者と聖堂騎士という、正義と光に満ちあふれた
れた皿を片付けにかかった。
( 続 き ) つ ま り、 具 体 的 に ど ん な 言 葉 な の か 公 表 し て な い し 設 定 し て な い ん で
すね。現地で何と呼ばれているかは皆さんそれぞれで想像してみてください。
「ふむ。ユーシスどの」
その態度を見ていたフランチェスカが口を開いた。
「そうやって、頭ごなしに馬鹿にしたものでもない
もっとも、言ってみれば〈1レベル魔王〉、見習
い魔王という立場である。
と私は思うがな」
聖堂騎士は笑顔で、メイの味方につく。
(そういえばメイくんの心配なんかしてる場合じゃ
この世界においては、〈魔王〉などという存在は、
コトノハ
はやく、僕も立派な魔王にならないと……)
ないんだけどね……。
戦士としての実力を持つフランチェスカは、もち
ろんメイの実力は熟知していたが、その言葉に皮肉
てんしんらんまん
はなかった。メイに命を救われたこともあって一目
おいているし、この天真爛漫な勇者見習いには、好
意と友情を感じていたのである。
0
0
0
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まったくもって珍しくない。〈勇者〉同様それを称
0
「メイどのが〈魔王〉を倒す勇者にならぬと、誰が
0
している者も数多くいる。
これは、そんな世界の、そんな時代の物語。
からこのかた現れてはいない。
けれども……本当の〈勇者〉と〈魔王〉は百年前
0
断言できようか、いや」
フランチェスカは、ユーシスの店のなかを見つめ
て、ふふと笑った。
「案外、魔王と縁があるかもしれぬぞ。なにしろこ
の店の名も〈魔王屋〉であることだしな」
8
・幻影(28 へ)
9
「ははは……」
ユーシスは愛想笑いを返して、きれいにカラにさ
・吊り天井(106 へ)
さて、君がこの部屋に仕掛けた〈トラップ〉はなんだったろうか?
・魔王の肖像(16 へ)
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