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島根県立大学総合政策学部総合政策学科 卒 業 研 究 題 目 21 世紀型

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島根県立大学総合政策学部総合政策学科 卒 業 研 究 題 目 21 世紀型
島根県立大学総合政策学部総合政策学科
卒
題
目
業 研 究
21 世紀型貿易
~フェアトレードを日本で根付かせるために~
所
属
沖村理史教授
入学年度
平成18年度
学籍番号
11060662
氏
加藤貴昭
名
総合演習
指導教員
沖村理史教授
提 出 日
平成22年12月15日
要約
21 世紀に入りグローバル化が進み私たちは世界中の国々で生産された物を貿易
により、容易にかつ低価格で入手できるようになった。しかし、その貿易の背景に
あるのは低賃金、そして劣悪な環境で働かさられている生産者の存在をなしでは語
れない。現代においても強い立場の業者、弱い立場の生産者といった図式が成り立
っており後者は常に苦渋を舐めさせられている。
その中で 20 世紀中旬、欧州でフェアトレードという新たな貿易システムが始ま
った。フェアトレードとは、発展途上国で作られた作物や製品を、適正な価格で継
続的に取引することによって、生産者の持続的な生活向上を支える仕組みである。
また、このシステムは今までの発展途上国への支援と違い、私たち消費者が自分の
気に入った商品を購入することでできる、身近な国際協力の形である。
この「21 世紀型貿易」といえるフェアトレードが今、欧州を中心に広まってい
る。英国では大手スーパーが積極的にフェアトレード商品を扱う等、市民にとって
生活の一部となっている。日本ではどうだろうか。日本でも年々市場規模が拡大し
様々なイベントが催されている。しかし、私の住む島根県においてそれらの商品を
見ることはほとんどなく、都会以外の地域を見ても商品を購入できる所は稀である。
本論ではフェアトレードを日本で根付かせるためにはどのような解決策がある
のか、という問題提起の元進めた。方法として、フェアトレード発祥国であり認識
率の高いイギリスと日本を比較し、そこから導き出される問題点をまとめ、根付か
せるための仮説を立てた。この仮説を検証する為に、2 つのフェアトレードショッ
プへ聞き取り調査を行い、筆者が作成したアンケート調査と自由回答を元に店舗が
考える根付かせる為の方法について考えた。
その結果、日本でフェアトレードが根付く為には①フェアトレードを知らない
人・興味のないひとでも足を運ぶようなイベント作り、②学校教育で教える、③職
場でのフェアトレード製品の使用、④大手スーパーで取り扱う、⑤商品価格の値下
げ、という結論を導き出した。またイギリス発祥のフェアトレード・タウン運動に
おいては、現在日本で認定された地域が無く、効果がある策とはまだ言えない。
また調査対象の 2 つのフェアトレードショップが考える根付かせるための方法
がそれぞれの目的によって違う事が本論の中で分かった。前者は固定客の確保を通
じて根付かせるという案で、後者は人の広がりを通じ、フェアトレード・タウンに
認定されることにより根付かせるという案である。鈍化したフェアトレード市場規
模の打開するために新たな運動の盛り上がりが必要と考えられることから、私は後
者の意見を支持するという結論に至った。
【目次】
要約
目次
1.はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
(1)意義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
(2)構成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
2. 世界の貿易体制・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
(1)世界の貿易体制の現状と課題・・・・・・・・・・・・・・・・2
(2)フェアトレードの利点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
3. フェアトレード・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
(1)フェアトレード・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
1)定義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
2)歴史・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
3)基準・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
(2)イギリスの取り組み・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
1)イギリスのフェアトレード・・・・・・・・・・・・・・・8
2)フェアトレード・タウン運動・・・・・・・・・・・・・・9
3)職場でのフェアトレード運動・・・・・・・・・・・・・・11
(3)日本の取り組み・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
1)日本のフェアトレード・・・・・・・・・・・・・・・・・11
2)国連地球生き物会議(COP10)・・・・・・・・・・・・・・13
3)大学売店でのフェアトレード商品販売・・・・・・・・・・14
(4)比較検証・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15
4. 日本で根付くための解決策・・・・・・・・・・・・・・・・・・16
(1)消費者側の問題点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16
(2)店側の問題点・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17
(3)仮説・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17
5. フェアトレードショップへの調査・・・・・・・・・・・・・・・19
(1)方法論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19
(2)el espacio feliz への調査・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
1)概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
2)調査結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・21
3)検証・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23
(3)らぶらんどエンジェルへの調査・・・・・・・・・・・・・・・25
1)概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25
2)調査結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26
3)検証・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28
6. 結論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30
謝辞・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33
引用・参考文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33
1.はじめに
(1)意義
昨今、私たちの身の回りで 100 円ショップなどの激安店が氾濫している。なぜこ
んなにも高品質の商品が安く購入できるのだろうか?という疑問を持った人も多
くいると思う。私もその中の一人である。商品はアジア圏だけでなく世界中から輸
入されている。しかし海外からの輸送費を含んでいるのにもかかわらず、なぜ消費
者に低価格で提供できるのだろうか。そこには一次生産者が労働に見合わない賃金
しか受け取っていないという理由が大きく関わっている。資本主義、そしてグロー
バル化が進む中、企業は成長し続けなければいけない。そのため経費を削れるだけ
削るという発想のために、このような問題が生じてしまっている。チョコレートの
原料であるカカオの生産を手がけるガーナの農園では、子供たちが不当に働かされ、
小額な賃金しか貰えず、その上、自分が育てているカカオからできるチョコレート
すら知らないというのが現状である。
そんななか 1960 年代、欧米を中心に生まれたのがフェアトレードである。直訳
すると「公正な取引」である。簡潔に言うと、発展途上国の人たちが作る製品へ正
当な価格を保障し、それを買う私たち消費者と生産者のパートナーシップを大切に
する貿易の仕組みである。この仕組みは生産者がその土地で継続的な活動が出来る
ように環境に負荷のかからない方法で生産し、エコや食の安全・安心にもつながり
がある。
しかし現状はどうだろうか。尐しずつ知名度は上がってきているとは思うが、日
本では一般的なスーパーなどで見かけることはほとんどなく、フェアトレードの商
品が身近に感じることはないといっても過言ではない。「フェアトレード」という
言葉をもっと身近に、もっと進んで選ぶようになるためにはどういったことが必要
なのかを追求しようと思ったため、この論文で提言しようと考えたのである。
(2)構成
論文の構成は、第二章で現在の貿易体制を調べ、生産者の現状を紹介していく。
第三章では日本の取り組みと、フェアトレード先進国であるヨーロッパとを比較す
る。第四章では、三章までに出た根付くための課題を消費者側、生産者側に分けて
考えそこから導き出される仮説を立てる。第五章では、フェアトレード商品を扱う
ショップへ私の立てた仮説が正しいのか検証するとともに、現場から見た根付かせ
る方法についても調査する。そして第六章では五章までをまとめ、どのような方法
を用いる事で、日本においてフェアトレードが根付く事が出来るのかについての提
言をする。
1
2.世界の貿易体制
(1)世界の貿易体制の現状と課題
フェアトレードとは第一章で述べたとおり、「公正な取引」という意味である。
20 世紀に入り、コミュニケーション革命、輸送手段の多様化により世界のグロー
バル化が進んだ。それにともない世界を巻き込んだ貿易体制である自由貿易が発達
した。その結果企業はより安く製品を作ることを目的とし、消費者はつねにより安
い商品を追い求めるようになった。
世界銀行は、2000 年の時点で「1 日 2 ドル以下で生活している人々の数は、1980
年と比較して 50%増の 28 億人に達しており、これは世界の人口の約半分にあたる。
そして、これはまさに自由化がもっとも推進されてきた時期と一致する」と報告し
ている1。グローバリゼーションによって一番の被害がかかるのは紛れもなく立場
の弱い生産者達である。
今日私たちが一房 100 円~200 円で買っているバナナを例で見ると、輸送費など
の中間経費が 9 割を占めており、生産者の手に渡るのは 1 割前後と見積もられてい
る2。しかも、バナナは大半がプランテーションで栽培されるため、農園主の受け
取り分 1 割のうち、はたしてどれだけが農園労働者の手に渡るのだろうか。また、
バナナは、どの先進国でも人気があり、スーパーは安い価格で仕入れる事が可能な
輸入業者からのバナナを求めており、故にバナナにおいて価格戦争が繰り広げられ
ている。輸入業者は自社の船を持つことや、効率よくバナナを流通させることでコ
ストを削減しようとしているが、安いバナナを提供する最も効率的な手段としてと
られているのは、途上国で働く生産者に払う賃金を引き下げることである。実際バ
ナナの輸入平均価格は 1973 年から 2001 年の間に 1.4%も減尐している3。約 30 年
間生産者が受け取る賃金はほぼ同額、もしくは減尐していることが分かる。
また、国連食糧農業機関(以下 FAO)の 1999 年の統計によると「深刻な飢餓状
態」にあるとされた人々は 3000 万人と報告されている4。そして、FAO と国連世界
食糧計画(WFP)の発表によると、2010 年 9 月現在「慢性的な栄養不良」とされ
ている人々は 9 億 2500 万人いる5。地域別の人口に占める飢えた人々の割合はアフ
リカで 35%、東南アジアで 18%、ラテンアメリカとカリブ海地域で 14%と発表さ
1
FLO(国際フェアトレード認証機関)
、IFAT(国際フェアトレード連盟)
、NEWS!(ヨーロッ
パ・ワールドショップ・ネットワーク)
、EFTA(ヨーロッパ・フェアトレード協会)編『これ
でわかるフェアトレードハンドブック―世界を幸せにする仕組み』フェアトレードリソースセ
ンター翻訳、合同出版、2008 年、54 頁。
2
ジェラード・ガレルー『武器としての食料』黒木葦時訳、TBS ブリタニカ、1984 年、73 頁。
3
FLO 他 前掲書、130 頁。
4
ジャン・ジグレール『世界の半分が飢えるのはなぜ?』合同出版、2003 年、23 頁より再掲。
5
World Food Program 「飢餓人口 減尐するも依然高水準」http://www.wfp.or.jp/pr/(2010 年 11
月 30 日アクセス)
。
2
れている6。場所的に見ると「深刻な栄養不良」の状態にあるとされる人々の 75%
が農村に住んでおり、残りの 25%が発展途上国の大都市とその周辺に住んでいる
人々とされている7。
今現在、総務省の統計局によると 2010 年の世界の人口は 69 億人8と発表されて
いる。FAO によると「農業がこのままの水準で発達していけば、地球は問題なく
120 億人を養える。」
(1984 年)と発表している9。このことから豊かな食糧がある
にもかかわらず、それらが公平に分配されていない事がわかる。しかし、貧しい人々
は食糧を入手するための経済的手段を持っておらず、そのために不平等な食糧分配
しか行われず、貧困がさらに進行しているのが現状である。
これらのことからわかるように、貧困問題を解決するには農村にすんでいる人々
への支援が必要不可欠である。そして貧困打開のためにまずなすべきことは、現在
の生産者にとって不平等な貿易システムの打破、そしてそれに伴い、安定した収入
を得るということが大切なのではないか。
(2)フェアトレードの利点
フェアトレードとは、発展途上国で作られた作物や製品を適正な価格で継続的に
取引することによって、生産者の持続的な生活向上を支える仕組みである。これま
での一方的な資金援助は、援助する側の都合によって左右され、継続性に欠けると
いう問題点が存在した。それに対し、フェアトレードは、私たち消費者が自分の気
に入った商品を購入することでできる身近な国際協力の形であり、この方法なら、
援助する側の負担も尐なく、無理なく継続的な援助をすることができる。
フェアトレード認証製品の世界全体の推定市場規模は、2007 年は、23 億ユーロ
(約 3,700 億円、1 ユーロ 160 円計算、2007 年)と前年比 47%の伸び、2008 年の
推定市場規模は、29 億ユーロ(約 4000 億円、1 ユーロ 135 円計算、2008 年)と拡
大している。その 4000 億円のうち生産者が、通常のマーケットで販売するより約
240 億円多くを受け取っていると推定されている10。
またフェアトレードは私たち消費者にとっても利点があり、生産者から消費者へ
渡る間に幾重もの企業が係わらない為、私たち消費者はどこで、誰が、どのように
して作っているか等の情報がすぐにわかり、商品の安全性が保障されている利点が
6
ジャン・ジグレール 前掲書、23 頁より再掲。
WFP 国連世界食糧計画「よくあるご質問」http://www.wfp.or.jp/faq/index.html#question5(12
月 13 日アクセス)
。
8
総務省統計局ホームページ「世界人口・年齢構成の推移(1950~2050 年)
」
http://www.stat.go.jp/data/sekai/02.htm#h2-03(12 月 7 日アクセス)
。
9
「FAO1984 年発表」なお、ジャン・ジグレール 前掲書、23 頁より再掲。
10
わかちあいプロジェクト「フェアトレードとは」http://www.wakachiai.com/shop/fairtrade.html
(2010 年 11 月 28 日アクセス)
。
7
3
ある。またフェアトレード商品を通して私たち先進国の人々は、発展途上国の現状
を知る事が出来る。
次に生産者の利点としてあげられるのは、生産者がその土地で持続的に仕事・生
活するために、土地を脆弱させることや、環境破壊につながるような生産方法は取
らないなど、持続可能社会の象徴的な生産方法をとっている。また、フェアトレー
ド輸入業者が守るべき基準として、フェアトレード・プレミアム(奨励金)という
制度がある。これは輸入業者が購入量に応じて生産者組合に保証しなければいけな
い金額である。生産者組合は民主的に使途を決定し、組合や地域の経済的・社会的・
環境的発展に役立てることができる。また、市場価格が下落していても必ず輸入業
者が生産者組合に保証しなければならない最低価格が設定されており、市場価格が
フェアトレード最低価格を上回る場合は、市場価格以上を支払わなければならない。
この保証があることで、生産物の市場価格が急落しても、フェアトレードの取引に
よって生産者は、持続可能な生産と生活に必要な価格を得ることができる。その他
の生産者への補償として定められているのは、生産者の要求があれば一部料金の前
払いに応じる。長期的な計画かつ持続的な生産を可能にする事という事が、守るべ
き基準として定められている11。
最低価格の補償という面において、最近の例で述べると、近年のカカオ豆の国際
市場価格の高騰や生産国での生産・生活コストの上昇などを受け、2010 年 10 月 12
日、FLO(Fairtrade Labelling Organizations 以下 FLO)はカカオのフェアトレード最
低価格改定を敢行することになった。2011 年 1 月 1 日よりカカオ豆のフェアトレ
ード最低価格は、現在の基準である US ドル 150/トンから US ドル 200/トンに改定
され、カカオ豆(非有機)のフェアトレード最低価格は現在の基準には US ドル
1,600/トンから US ドル 2,000/トンへ変更されることになった12。
また、フェアトレードの貿易販売会社であるプレス・オルターナティブが取り扱
っているチョコレート(写真 1)は、スイスにあるフェアトレード団体が生産して
おり、原材料のカカオを中米のドミニカ共和国で生産している。この団体はドミニ
カ共和国の小規模農家を支援しており、仲介人を通さない買い取りシステムを確立
しただけでなく、品質向上のために共同でカカオの発酵・乾燥施設を建設し、そし
て専門家による化学肥料に頼らない栽培技術指導も行っている。カカオ農家たちは
生産したカカオを安定的に購入してもらえるようになった結果、余剰資金で学校を
作るなど、コミュニティー全体の利益にも貢献している13。
11
フェアトレード・ラベル・ジャパン「国際フェアトレード基準」
http://www.fairtrade-jp.org/about_fairtrade/standard/ (12 月 10 日アクセス)
。
12
フェアトレード・ラベル・ジャパン「カカオのフェアトレード価格」
http://www.fairtrade-jp.org/whats_new/000151.html(11 月 23 日アクセス)
。
13
チョコレート(輸入元プレス・オルターナティブ地球食)裏表紙「カカオ品質向上プロジェ
クト」
。
4
写真1 スイスチョコレート
12 月 5 日筆者撮影。
以上のことから分かるようにフェアトレードは生産者、そして消費者にとって互
いに利点がある。この仕組みが貧困・格差・環境破壊等といった我々人類が抱える
問題を解決し得る新しい貿易「21 世紀型貿易」の形だといえる。
3.フェアトレード
(1)フェアトレード
1)定義
まず、本題に入る前に、フェアトレードという言葉の定義を明確にする必要があ
る。フェアトレードという言葉は、人や国によって様々な使われ方をされている。
例えば、アメリカをはじめとする先進国政府、新自由主義経済学者たちは、関税や
非関税障壁などによって自由な経済活動が阻害されることのない貿易のことをフ
ェアトレードと呼んでいる14。よってこの解釈が示すのは「自由かつ公正(free and
fair)」な貿易であり、自由に貿易できることが公正であるための最重要な用件であ
る。それに対して、多くの途上国政府や市場万能主義に懐疑的な経済学者たちがい
うフェアトレードは、発展段階など様々な差異のある諸経済主体にたいして「特別
かつ差異のある待遇」を積極的に認める「公正かつ正義(fair and just)」の貿易の
ことである15。
以上は、国際貿易一般の公正なあり方についての二つの考え方であるが、それら
14
渡辺龍也「フェアトレードの形成と展開―国際貿易システムへの挑戦―」
『現代法学』14 号、
2007 年、4 頁。
15
渡辺龍也 前掲論、3 頁。
5
と違うもう一つのフェアトレードの概念がある。それは、阻害された途上国の生産
者や労働者が搾取されること無く、自立して人間らしい暮らしが出来るように、彼
らに正当かつ公正な対価を払う「オルタナティブな」貿易の実現を目指すものであ
る。今回、この論文では後者の意味合いで、フェアトレードについて論じることに
する。
2)歴史
フェアトレードの始まりについては諸説あるが、現在の様な活動になったのは
1960 年代のヨーロッパといわれている。イギリスの NGO オックスファムが途上国
の生産者組合や村の発展を支援するという目的で、1950 年代、中国の難民が作っ
た手工芸品を輸入し、国内のオックスファム・ショップやカタログを通して販売し
たのが起源である16。その後資本主義、グローバル経済による自由な貿易に対して、
途上国の人々の生活向上を目指す貿易が各国で生まれはじめた。
1970 年代には、イギリスのトレードクラフト、ドイツのゲパといったヨーロッ
パを代表するフェアトレード団体が生まれ、フェアトレードの手工芸市場は成長し
ていった。しかし、1980 年代になると成長は低迷し、NGO や団体は事業展開を見
直していった。前後して、砂糖やコーヒーなどの農産品の国際価格が暴落した。そ
れをきっかけに、途上国の農業生産者たちを支えるのもフェアトレード活動の一環
だとして、多くの NGO や団体は商品の取り扱いを農産品にも広げ、紅茶、コーヒ
ー、ドライフルーツ、ココア、砂糖などといった商品が次々と市場に登場していっ
た。
1990 年前後からフェアトレードのラベル運動が起こり、商品に認証ラベルが付
けられるようになると、消費者にも徐々に知られていくようになっていった。ラベ
ルが付けられるようになったことで、消費者は安心してフェアトレード商品を買う
ことが可能になっていった。その後、欧米を中心に生協を初め大手スーパーでフェ
アトレードの商品が販売されるようになり、農産品が手芸品を上回る取扱量になる。
今現在では様々なグローバル企業も業界に参入し始めて、フェアトレードが世界中
に拡大していっている。
日本国内においては、1986 年に第 3 世界ショップが、コーヒーの輸入を始め、
その後多くのフェアトレード団体が設立され活動している。現在では大手企業もフ
ェアトレード商品を扱うなど日本国内においても市場規模が年々増加している。
3)基準
フェアトレードが徐々に広がる中、個々の団体をまとめる国際的な組織が必要と
16
フェアトレード・ラベル・ジャパン「フェアトレードとは」
http://www.fairtrade-jp.org/about_fairtrade/fairtrade/(11 月 30 日アクセス)
。
6
されてきた。現在複数の国際ネットワークが存在しているが、本稿ではその中で「世
界フェアトレード機関」について触れてみる。
世界フェアトレード機関(World Fair Trade Organization、 以下 WFTO)は、途上
国の立場の弱い人々の自立と生活環境の改善を目指す世界中のフェアトレード組
織が 1989 年に結成した国際的なネットワークである。欧米や日本の輸入団体、ア
ジア、アフリカ、中南米の生産者団体、合わせて 70 カ国 350 団体が加盟し、情報
を共有しながら公正な貿易の普及を目指している。生産者の労働条件、賃金、児童
労働、環境などに関して国際基準を満たしていることが認証された団体は「WFTO
マーク(図 1 参照)」を取得することが出来る。この WFTO の掲げる基準をフェア
トレードの基準として捉えている団体も多い。
出典)WFTO
図 1 WFTO マーク
http://www.wfto.com/(12 月 1 日アクセス)。
WFTO の掲げるフェアトレードとは、貧困の無い公正な社会を作るための、対話
と透明性、お互いの敬意に基づいた貿易のパートナーシップであり、アジア、アフ
リカ、中南米などの農村地域や都市のスラムなどに暮らす人々に仕事の機会を提供
することで貧しい人々が自らの力で暮らしを向上させることを支援することであ
る。同時に WFTO は小規模農家や手工芸職人に継続的な仕事をつくり、農薬や化
学肥料に頼らない自然農法や、生産地で採れる自然素材と伝統技術を活かした生産
によって持続可能な社会を目指すとしている。私が本節第一項の「フェアトレード
の定義」で述べた多義性に加え、WFTO は特定の貧困が進んでいる地域に視点を向
けた上で、環境問題にも配慮した、その土地独自の産品の生産に取り組んでいるこ
とが分かる。以下の表 1 で、WFTO の掲げるフェアトレード基準についてまとめて
みた。
7
表 1
WFTO のフェアトレード基準
WFTO のフェアトレード基準
1、生産者に仕事の機会を提供する。
経済的に弱い立場の生産者が収入を得て自立できるように支援する。
2、事業の透明性を保つ。
生産者、消費者などすべての関係者に対し公正に接し情報を提供する。
3、生産者の資質の向上を目指す。
生産者の技術向上や商品の流通を支援。継続的な協力関係を築く。
4、フェアトレードを推進する。
活動の広報や啓発を行い、消費者に生産背景の情報を提供する。
5、生産者に公正な対価を支払う。
生産者自身が望ましいとする水準の生活を保てる公正な対価を支払う。
6、性別に関わりなく平等な機会を提供する。
文化や伝統を尊重しつつ性、宗教、年齢などの差別の無い賃金を支払う。
7、安全で健康的な労働条件を守る。
生産地の法律や ILO(国際労働機関)で定められた条件を守る。
8、子供の権利を守る。
子供の健全な成長や安全、教育を妨げない。
9、環境に配慮する。
可能な限り持続可能な原料を使用し、すべての工程で環境負荷に配慮する。
出典)World Fair Trade Organization “Charter of Fair Trade Principles”
http://www.wfto.com/index.php?option=com_content&task=view&id=1082&Itemid=334
(12 月 2 日アクセス)、を元に筆者作成。
(2)イギリスの取り組み
1)イギリスのフェアトレード
まず対象国としてイギリスを選んだ理由として、フェアトレードが発祥した地で
あり、フェアトレード・ラベルの認知率も高いためである。また、後の節で触れる
が、イギリスでのフェアトレード運動が本論の結論に生かせるのではないかと考え、
対象国として選ぶことになった。
第三章二節で述べた通り、フェアトレードの発祥は 1960 年代に行われた NGO
のオックスファムが起源とされている。そして今現在イギリス国内におけるフェア
トレード・ラベルの識字率は 82%17を超えており、フェアトレードは確実にイギリ
17
Alter Trade Japan「フェアトレードの現状と課題」http://www.altertrade.co.jp/05/05_23.html(11
月 28 日アクセス)
。
8
ス人の日常生活に根付きつつある。
また、イギリスのフェアトレード製品の売り上げは、1998 年では 4.8 億円だった
が、2006 年では 70 億円にまで伸び、さらに 2007 年には 120 億円(1 ポンド=230
円換算、2007 年)18にまで成長しており、2009 年時での日本の売り上げ約 15 億円
とは雲泥の差がある(1 ユーロ=135 円計算、2009 年)19。また表 2 を見て分かる
ように、イギリスでは大手スーパーなどが積極的にフェアトレード商品を取り扱う
ことによって、消費者にとってそれらを購入することや、他の人に購入を進めるこ
とも難しいことではなくなっている。
なぜここまでイギリスにおいてフェアトレードが根付いているのか。そこでイギ
リスで実際に行われているフェアトレード運動を通して考えてみることにする。
表 2
イギリスの主なスーパーでのフェアトレード商品取り扱い
スーパー名
イギリス生協
主なフェアトレード商品取り扱い
コーヒー、チョコレート、バナナの全てをフェアトレード商品に
変更。
Mark&Spencer 2006 年に紅茶、コーヒーの全商品をフェアトレード商品に変更。
2007 年にはジャム、砂糖の全商品をフェアトレード商品に変更。
他の製品と含めると 100 種類以上の認証製品を取り扱っている。
Sainsbury
2007 年に全てのバナナをフェアトレード商品に変更。
2010 年までに自社ブランドのコーヒー、紅茶製品を全てフェア
トレード認証商品に切り替えることを宣言している。
出典)フェアトレード・ラベル・ジャパン「海外のラベル運動」
http://www.fairtrade-jp.org/movement/foreign_countries/(11 月 15 日アクセス)、を元
に筆者作成。
2)フェアトレード・タウン運動
フェアトレードをサポートすることを宣言した市町村、郡、県などの地方自治体
を「フェアトレード・タウン」と呼ぶ。フェアトレード・タウンの市民団体、学校、
企業、そしてそこに住む住民は、フェアトレード認証製品を積極的に購入・販売し、
フェアトレード啓発イベントを開催するなどして、フェアトレードの意義とフェア
トレード認証ラベルを広めるための活動を積極的に行っている。
「フェアトレード・タウン運動」の発起人は、人口 4 千人のイギリスの小さな街、
18
Fair Trade Advocacy Office “Fair Trade Facts & Figures
2007”http://www.european-fair-trade-association.org/efta/Doc/FT-E-2007.pdf
(11 月 29 日アクセス)
。
19
FLO “AnnualReport2009”
http://www.fairtrade.net/fileadmin/user_upload/content/2009/resources/FLO_Annual-Report-2009_kom
plett_double_web.pdf(11 月 22 日アクセス)
。
9
ガースタング(Garstang)に住むブルース・クローザーさんである。彼は 2000 年 4
月、フェアトレード・タウン運動を考え出し、地元ガースタングのオックスファム
グループと共に地域に働きかけ、ガースタングをフェアトレード・タウン世界第一
号として誕生させた。フェアトレード・タウンになるためには、英国フェアトレー
ド財団によって作られた 5 つの基準(表 3 参照)を満たすことが条件20であり、現
在では、その条件を満たした市町村が全世界で急速な広がりをみせ、2009 年 4 月
時点で、650 の自治体(市町村、区、島、郡、州)21が「フェアトレード・タウン」
として宣言しており、その中にはロンドン、ダブリン、ローマ、サンフランシスコ
といった大都市も含まれている22。アイルランドとスコットランドは「国」単位で
宣言する準備を進めている。世界中へこのイギリス発祥の運動が拡大していく事で、
フェアトレードの認知率が上昇するとともにさらなる発展が今後期待できる。
表 3
フェアトレード・タウンになるための5つの基準
フェアトレード・タウンになるための 5 つの基準
1 自治体議会がフェアトレードを促進するための議決案を可決し、議会、職場、
地方庁舎などでフェトレード認証製品(コーヒー・紅茶等)を使用する。
2 様々なフェアトレード認証製品が地域のショップ(スーパー、コンビニ、雑
貨店等)や飲食店で購入できる。
3 地域の企業や商店、教会や学校といった地域組織へフェアトレード認証製品
を浸透させる。
4 メディアの報道やイベントを通して、フェアトレードに対する地域住民の理
解を広めサポートを獲得する。
5 議員や企業、学校や教会、地域住民などから委員を選出してフェアトレード
推進運営委員を設置し、フェアトレード推進活動を継続して行う。
出典)フェアトレード・ラベル・ジャパン「フェアトレード・タウン」
http://www.fairtrade-jp.org/movement/fairtrade_town/(11 月 16 日アクセス)、を元に筆
者作成。
3)職場でのフェアトレード運動
Fairtrade Foundation が中心になって「職場でフェアトレード」キャンペーンを繰
り広げており、British Telecom(電話会社)や Accenture(コンサルティング会社)、
20
なごや環境大学「なごやのフェアトレード~フェアトレード・タウンを目指して」
http://www.n-kd.jp/modules/xfsection/article.php?articleid=272(12 月 14 日アクセス)
。
21
FLO“annual report2008-2009”
http://www.fairtrade-jp.org/download/FT_ANNUAL_REPORT_08-09.pdf(12 月 12 日アクセス)。
22
フェアトレード・ラベル・ジャパン「フェアトレード・タウン」
http://www.fairtrade-jp.org/movement/fairtrade_town/(11 月 16 日アクセス)
。
10
KPMG(監査法人)、Microsoft などがフェアトレード産品を職場に取り入れている。
他国でも、ドイツのフォルクスワーゲンやアメリカにある世界銀行などの大企業・
組織に広がっている
また、サービス産業もフェアトレード産品へと切り替えている。例えばイギリス
のユースホステル協会は、2004 年から国内 200 以上のユースホステルで提供する
コーヒー・紅茶をすべてフェアトレード産品に切り替えた。2006 年にはイギリス
の新鋭の鉄道会社 VirginTrains が車内販売するコーヒー、紅茶、ココアをすべてフ
ェアトレード産品へと変更した23。
(3)日本の取り組み
1)日本のフェアトレード
2008 年 11 月、チョコレボ実行委員会による、全国の 20 歳~59 歳の男女を対象
に全国規模でのフェアトレード認知率調査を実施した。その結果、「フェアトレー
ド」という言葉を認知し、かつ貧困や環境に関するキーワードだと認識している人
は 17.6%24という結果になった。
このことから分かるように、イギリスとのフェアトレード認識率の差は歴然であ
る。また、先ほど紹介した FLO の 2009-2010 年次報告書の中でフェアトレード認
証製品の売上高の推移では、2009 年から 2010 年の増加率はイギリスではすでに市
場規模が 100 億円以上あるにも関わらず 14%の伸びであったが、日本はわずか2%
にとどまっており、報告書に載っている 25 カ国中最下位の伸び率であった25。な
ぜここまで先進国である両国で差が生じているのか。その答えを日本のフェアトレ
ード史を通して探っていき、筆者が興味を持った日本でのフェアトレード運動をい
くつかあげてみることにする。
日本のフェアトレードは、1986 年に株式会社プレス・オルターナティブの「第 3
世界ショップ」に始まる。1989 年にオルター・トレード・ジャパン(ATJ)が設立
され、主として生協内でフェアトレードを広げていった。1990 年代にはいくつも
のフェアトレード団体が生まれ、日本各地でフェアトレードショップができていっ
た。1993 年にいくつかの市民団体(NGO)と教会組織が集まってトランスフェア
ジャパンが設立され、その後 2002 年にはスターバックスがコーヒーの販売を始め、
23
フェアトレードリソースセンター「フェアトレードの形成と展開」
http://www.ftrc-jp.org/report/keisei.pdf(11 月 29 日アクセス)
。
24
チョコレボ実行委員会「全国フェアトレード認知率速報!」
http://www.choco-revo.net/pdf/pr_chocorevo_08ftreport_081211.pdf(11 月 12 日アクセス)。
25
FLO “Annual Report2009-2010”
http://www.fairtrade.net/fileadmin/user_upload/content/2009/resources/FLO_Annual-Report-2009_ko
mplett_double_web.pdf(11 月 25 日アクセス)
。
11
2003 年にイオンもコーヒーの販売を始めるなど大手企業が続々と参入26しており、
市場規模も年々上昇している(図 2 参照)。また図 3 においては、国内認証製品の
販売量の推移として、コーヒー、紅茶のデータである。フェアトレード商品で人気
のあるコーヒーは、年々販売規模が増している事が読み取れる。
図 2 フェアトレード認証製品市場の推移
出典)フェアトレード・ラベル・ジャパン「ライセンシー企業数及びライセンス料の
推移」
http://www.wakachiai.com/shop/img/2008.pdf(12 月 3 日アクセス)、を元に筆者作成。
26
フェアトレード「フェアトレードの歴史」http://fairtrade2009.web.fc2.com/rekisi.html(11 月
18 日アクセス)
。
12
図 3 日本国内フェアトレード認証製品の販売量推移
出典)フェアトレード・ラベル・ジャパン 同ホームページ、を元に筆者作成。
2)国連地球生き物会議(COP10)
2010 年 10 月に愛知県で開催された国連地球生き物会議(COP10)において、フ
ェアトレードファッションショーが行われた。ファッションショーは、フェアトレ
ードの普及に取り組む名古屋在住のタレント、原田さとみさんによるプロデュース
で、途上国で作られた素材にデザイン性を加えておしゃれになった衣類 38 点が紹
介された27。原田さとみさんのキーワードは「エシカル」(論理的な、人道的な)
であり、今回のファッションショーも「エシカルファッションショー」と題して行
われた。原田さとみさんは自身のブログの中で、「エシカルファッション」とは倫
理的で持続可能であり、人だけでなく生きものすべてにとって優しく、そして地球
の自然環境を思いやるファッションのことである、と述べている。今回のファッシ
ョンショーで使用された服は、エコロジカルで安全な素材・染料の使用、正しい労
働環境が守られ、公正な賃金で生産・発注がされており、地域に伝わる製法や伝統
技術を後世に残す努力をしているというフェアトレードの条件を満たされて作ら
れている。原田さとみさんは、これらのモラルを守り、メッセージを持った商品を
一人でも多くの人のところへ届けるには、さらにデザイン性も確かであることが重
要だと述べている28。
27
「フェアトレード衣装、ショーで PR」
『朝日新聞』
、名古屋:朝日新聞社、2010 年 10 月 18
日、19 頁
28
原田さとみプライベート公式ブログ「原田さとみイベントインフォメーション」
13
3)大学売店でのフェアトレード商品販売
2007 年 6 月時点において全国で 30 の大学が売店でフェアトレード商品の販売を
行っている。フェアトレードに関心がある学生たちのネットワーク「Fair Trade
Student Network(以下 FTSN)」事務局長の小川琢弘さんによると、大学内で商品が
扱われるようになったのは 2002 年に龍谷大学生協が取り扱ったのが始まりである。
小川さんが近畿大学在学中の 2005 年に京都市と東京で、大学での販売のノウハウ
を講義し、そこに参加した学生たちが各自の学校で実践することによって広まりを
見せている。東京の立教大学にはフィリピン産のドライマンゴーやボリビア産のコ
コアクッキーなどが並んでいる29。
また、この取り組みの中心である FTSN はフェアトレードの発展を目指す学生に
よる団体で、2004 年に創設された。フェアトレードを、途上国の貧困問題や環境
問題を乗り越えるひとつの手段として、また人々がこれらの問題の根本にある社
会・経済構造そのものに目を向けるひとつのきっかけとして位置づけ、日本におけ
るフェアトレードのさらなる普及を目指している30。FTSN の掲げる目的、活動内
容を表 4、5 にまとめてみることにする。
表 4
FTSN が掲げる目的
FTSN が掲げる目的
1 きっかけ作り。
フェアトレードを通して、貧困問題や環境問題といった、世界の問題に目を
向けるきっかけを作る。
2 フェアトレードを広める。
日本国内におけるフェアトレード認知の拡大に貢献する。
3 コンサルタントの役割を担う。
学生を中心として、フェアトレードを知りたい、広めたいという人たちの窓
口的存在となる。
出典)FTSN「FTSN 規約」http://www.econakoto.net/ftsnjapan/article/69(2010 年 12
月 10 日アクセス)、を元に筆者作成。
http://satomiharada.com/?cat=21(12 月 3 日アクセス)
。
29
「大学売店で途上国支援 フェアトレード商品販売広がる」
『朝日新聞』、夕刊、朝日新聞社、
2007 年 6 月 19 日、14 頁
30
FTSN「FTSN とは」http://www.econakoto.net/ftsnjapan/article/69(12 月 10 日アクセス)
。
14
表 5
FTSN の活動内容
FTSN の活動内容
1 情報を発信・共有する。
メーリングリスト、メールマガジン、HPまたはブログなどのメディアによ
る情報共有・発信を行う。
2 フェアトレードを広める場を作る。
イベントやキャンペーンなどを開催し、自らフェアトレードを広める場を作
る。
3 繋がりを作る。
フェアトレード推進活動を行う人たち(主に学生)を繋げ、互いにそれぞれ
の活動を高め合い、より大きなムーブメントを作り出すきっかけを作る。
4 学ぶ場を作る。
勉強会や合宿などを通し、フェアトレードの知識を増やし、議論する場を作
り出す。
出典)FTSN
前掲ホームページを元に筆者作成。
(4)比較検証
先ほどのイギリス、日本におけるフェアトレード史でもわかったように両国では
フェアトレードの歴史の差があまりにも開いている事が分かった。イギリスでは
1960 年代からフェアトレードが行われており、かたや日本では 1986 年から始まっ
ている。日本においても様々な企業がフェアトレード商品の販売に力を注いできて
おり、図 2 を見てもわかるように年々市場規模が拡大しているのが分かる。それに
加え、前章で述べたように、近年フェアトレードを発展させるためのイベントや運
動が盛んに行われている。しかし、第三節で紹介した FLO2009-2010 年次報告書
で日本は最下位の成長率である。なぜここまで日本において流行らない、根付いて
いかないのか?やはりそれには認知率の低さが関係しているのだと思う。イギリス
では生活の一部として常にフェアトレード商品が関わっており、興味のない人でも
自然と日常生活において目にしており、時にはフェアトレード商品を食べていたり
触れていたりすることもあるはずだ。イギリスでのフェアトレード運動の中で私が
特に注目すべき点に思うのがフェアトレード・タウン運動である。この運動に関し
て、本節でも述べたように、国民生活の一部になっていることである。
これらの運動が日本で生かせないのであろうか。また日本独自の普及策はあるの
か。以下の章から、第三章までを踏まえ日本で根付いていない理由を消費者側、店
側に分類して考え、その後どのような方法を用いれば日本で根付くのか、という仮
説について考えてみることにする。
15
4.日本で根付くための解決策
(1)消費者側の問題点
私が消費者側に立ってフェアトレードが流行っていない理由として 1 点目にあ
げるのは、フェアトレードがまだ普及していない為、言葉、意味を知らない人々が
大勢いるということだ。第三章三節でふれたように、「フェアトレード」という言
葉を認知し、かつ貧困や環境に関するキーワードだと認識している人は 17.6%しか
いない。この認識率では、まず普及することはない。私自身も大学生になりフェア
トレードのイベントに参加するまでその言葉自体知らなかった。
2 点目の理由としてフェアトレードショップやイベントに参加していないとい
う事があげられる。これは 1 点目の理由として上げられた、フェアトレードという
言葉、意味を知らないという事も理由の一つにあげられる。それを消費者が知り得
る手段としてあげられるのが、テレビ・雑誌等のメディアやフェアトレードショッ
プへ足を運ぶ事の他に、イベントへの参加等があげられる。テレビや雑誌で近年、
記事を見かけるようになったが、それでも未だ認識率は低水準である。また、主に
フェアトレードショップが主催するイベントには、私の実感として、若者の参加率
が尐ないように感じた。参加する人の顔触れをみると女性が多く、男性は毎回尐数
派である。
3 点目の理由として商品価格が高いということがあげられる。一般的な既製品の
チョコレートは 100 円であるのに対して、第二章二節にある写真 1 のスイスチョコ
レートは、450 円で売られていた。フェアトレードは適正な対価を生産者に支払い
貿易しており、原材料もこだわりのある生産方法で作られているので、450 円とい
うのは当然の値段である。しかし、安い既製品に慣れてしまった私たちにとって
450 円という値段は、あまりにも高いと感じる人が多いのではないか。この値段設
定では毎日のようにチョコレートを買いたくても、私の様な学生には買うことがで
きず、富裕層のみが継続して買うことのできる唯一の消費者となっているのではな
いか。
以上が私の考えた消費者側の理由である。これらの理由を表 6 にまとめてみるこ
とにする。
表6
消費者側の問題点
消費者側の問題点
1
フェアトレードという言葉、意味を知らない。
2
フェアトレードショップ、イベントに足を運ばない。
3
安い既製品を選ぶ。
出典)本論を元に筆者作成。
16
(2)店側の問題点
店側の問題点として 1 点目にあげられるのは、フェアトレード市場が小さいとい
うことである。都会ではフェアトレード商品を扱う店舗が徐々に増えている実感が
あるが、私の住む島根県浜田市では購入できる場所がほとんどない。他の地域を見
ても、商品を扱う店舗数は決して多くはない。そういった地域では、消費者にとっ
てフェアトレードに対し、興味を持つきっかけがないのではないか。
2 点目にあげられるのは、身近にフェアトレード商品が無いという事だ。例えば
第三章二節のイギリスのフェアトレードで取りあげたように、イギリスでは大手ス
ーパーでフェアトレード商品を扱っている。仮に日本において、身近な所で商品が
あるとしたのなら、消費者としても目につき興味・関心を持つ人が増えるはずであ
る。
3 点目の理由としてフェアトレードを知らない人、興味のない人を引き付けられ
ていない事があげられる。先ほどの消費者側の問題点でも触れたように、イベント
への参加者は、限られた年代、性別の人々が大多数であり、新規の人々を引き付け
られるようなイベントの開催など、魅力のあるイベント作りというのが必要ではな
いのか。
そして 4 点目には商品価格設定があげられる。もう尐し消費者側の事を踏まえた
価格設定が必要なのではないか。高い商品は継続して買う事が出来る層、年代は限
られる。特に私の様な学生にとってフェアトレード商品はどれも手がでない。
以上が私の考えた店側の問題点である。これらの理由を表 7 にまとめてみること
にする。
表7
店側の問題点
店側の問題点
1
フェアトレード市場が小さい。
2
身近にフェアトレード商品がない。
3
フェアトレードを知らない人、興味のない人を引き付けられていない。
4
商品の価格が高い。
出典)本論を元に筆者作成。
(3)仮説
前節で消費者側、店側における問題点を考えてみた。これらの事を踏まえた上で
私が考えたフェアトレードが根付くための仮説を第三章までを踏まえ、定義してい
くことにする。
まず、消費者側の問題点である、「フェアトレードの言葉・意味を知らない」と
いう点に対して検討してみることにする。これには様々な要因が重なっており、解
17
決策もいくつかある。1 点目に、フェアトレード商品を大手スーパーで取り扱うと
いう点があげられる。仮に商品が身近にあるスーパーなどにあるとしたなら、目に
つく機会も格段に増えるうえ、興味・関心を持つ人々も尐なくないはずである。2
点目に学校教育でフェアトレードについて教えるという事が考えられる。第二章二
節でも触れたように世界の貿易関係の不平等、そしてその問題の解決策であろうフ
ェアトレードについて教えることにより、認知率の上昇につながるはずである。3
点目に職場でフェアトレード製品を使用することが考えられる。これは第三章二節
で触れたイギリスで実際に行われている取り組みである。職場という毎日通う場所
で提供されるコーヒーがフェアトレード商品なら、おのずと目に止まる。それに加
え、品質の高いフェアトレードコーヒーを飲むことによって、ファンになる人も多
くいるだろう。
次に「フェアトレードショップ・イベントに足を運ばない」という点と、「安い
既製品を選ぶ」という 2 点について検討してみることにする。この 2 つの問題点で
一番重要な要因は、消費者の意識を変えることである。これらの解決策として考え
られるのは、一点目でもあげた、教育という手段が最重要になるのではないか。教
育をすることによって消費者の意識を変え、イベントに参加してみようという傾向
が生まれる。また貿易の不平等さを唱えることで、安い既製品を選択するという意
識から、消費者が生産者に払うべき当然の対価を支払うべき、という意識へと変化
することになる。
次に店側の問題点を検討してみることにする。初めに「フェアトレード市場が小
さい」、
「身近にフェアトレード商品がない」という 2 点について検討してみること
にする。この 2 点への解決策として、消費者側と同様、身近なスーパーにフェアト
レード商品を置く、ということが考えられる。第三章一節で述べたように、イギリ
スでは大手スーパーがフェアトレード商品を幅広いジャンルで販売しており、消費
者にとって、それらを買い求めることは容易いことである。これらのことが、消費
者の認知率向上にもつながり、最終的には市場の拡大へと向かっていく。
次に「フェアトレードを知らない人・興味のない人を引き付けられていない」と
いう点について、検討してみることにする。この問題の解決策として、足を運びた
くなるようなイベント作りという事が考えられる。第三章二節で触れた COP10 で
のフェアトレードファッションショーといった運動は非常に有効な手段である。こ
の運動によってフェアトレードに対して興味のない人々でも、ファッション面から
アピールする事が出来た。また、COP10 という人が集まる場所でのイベントを開
催することによって、多くの人々がフェアトレードに対して興味・関心をもっても
らえたのではないか。
次に、「商品の価格が高い」という点について検討してみることにする。この問
題の解決策として、価格を下げる事が考えられる。価格を下げることでフェアトレ
18
ードの利点がなくなる恐れも懸念されるが、消費者にとって高い商品は継続して買
うことは厳しい。もう尐し価格を下げ、量を販売することで利益も出すことができ、
その上継続して買う顧客も増えるのではないのか。
これらの事が私の考えた問題点に対する、フェアトレードが根付くための解決策
である。また、全ての問題の解決策として、第三章二節、三節で述べたイギリスで
のフェアトレード・タウン運動が有効ではないかと考えられる。世界中で広まりを
見せているこの運動だが、未だ日本において認定されている地域はない。フェアト
レード・タウンに認定されるには、表 3 にある 5 つの基準を満たす必要がある。こ
の基準を満たすためには、行政・地域・市民が一体となって取り組む必要がある。
私の立てた、消費者側・店側の問題点が、この 5 つの基準全てを満たす事で、解決
することが出来る。この運動が日本で広まれば、効率的にフェアトレードが日本に
おいて根付く事に繋がるのではないか。
以上の事が私の考えた仮説である。これらの解決策を以下の表 8 にまとめてみる
ことにする。
表 8
フェアトレードが日本で根付くための解決策(仮説)
フェアトレードが日本で根付くための解決策(仮説)
1
大手スーパーなどで取り扱う。
2
学校教育で教える。
3
職場でのフェアトレード製品の使用。
4
フェアトレードを知らない、興味のない人でも足を運びたくなるようなイ
ベント作り。
5
商品価格の値下げ。
6
フェアトレード・タウン運動。
出典)本論を元に筆者作成。
5.フェアトレードショップへの調査
(1)方法論
前章でまとめたのが、私の考えたフェアトレードを日本で根付かせるための仮説
である。これらのことを踏まえ、私の立てた仮説を検証していくことにする。方法
論として、フェアトレードショップに対し、私が考えた 6 つの仮説(表 8 参照)を
提示し「効果がある」、
「どちらとも言えない」、
「効果が無い」の 3 点で評価しても
らった。また、私が作成したアンケート(表 9 参照)を実施してもらい、消費者の
傾向や根付く可能性についても調べた。また、アンケート調査、そして店の方との
会話から得られたショップの人が考えるフェアトレードが日本で根付く方法につ
いても、分析してみることにした。以下の表 9 が私の作成したアンケート表である。
19
表 9
アンケート票
アンケート票
1
フェアトレード商品の価格は妥当ですか?
2
フェアトレード商品を買う人の年齢層、性別は?
3
一般の商品と比べてどちらがよくうれていますか?
4
売れ筋の商品は何ですか?
5
お客さんから「こういうフェアトレード商品があったらいいのに」とい
ったご要望はありますか?またそれは何ですか?
6
私の住む島根県などの田舎ではフェアトレードショップ・商品がないの
ですがそういった人々へはどうアプローチしていくとお考えですか?
7
フェアトレードを根付かせるために何か取り組みをしていますか?
8
フェアトレードに対して関心のない人を呼び寄せる工夫はしています
か?それはどういったものですか?
9
日本でフェアトレードが根付くにはどういった事が大切ですか?
10
フェアトレード商品を扱うようになったきっかけはなんですか?
11
インターネット、新聞、雑誌などのメディアを使っていますか?また、
効果はありましたか?
12
日本でフェアトレードが根付く可能性はあると思いますか?
出典)本論を元に筆者作成
(2)el espacio feliz への調査
1)概要
今回 el espacio feliz さんを調査対象とした理由は、私が住む島根県で 2 つしかな
いフェアトレードショップであり、そしてフェアトレード商品が私自身ほとんど身
近に感じることのない場所で、どうアプローチしているのかという視点で調査対象
に選んだ。以下は el espacio feliz さんの概要である。
店長の大庭さんは 2004 年 12 月島根県益田市でフェアトレード製品と雑貨を扱う
店、「el espacio feliz」をオープンした。espacio とはスペイン語で「空間」、feliz は
「幸せな」という意味で、「幸せな空間」を提供するという意味合いで名付けられ
た。店内には数々のフェアトレード食品や雑貨、そしてその他にも天然酵母で作ら
20
れたパンや地元産のジャム等、こだわりのある商品販売を行っている。フェアトレ
ード商品は第 3 世界ショップと、Verda の 2 社から仕入れており、チョコレートか
ら靴下、そして写真 2 の様なデザイン性のある洋服、バックなど様々な商品を取り
扱っている。大庭さんは商品について、フェアトレード商品にこだわるのではなく
て自分が本当に美味しいと思うもの、機能性、デザイン性が優れているものを取り
扱っているという。私が訪問した 12 月 5 日にはショップ内でイベントの開催、そ
して前々日の 12 月 3 日には小学校へのフェアトレード講座などフェアトレード普
及へ向けて尽力されている方である。
写真2
el espacio feliz さん内のフェアトレード服・カバン
2010 年 12 月 5 日筆者撮影。
2)調査結果
以下の、表 10 は私が立てた仮説の検証を大庭さんにして頂いた結果である。そ
して表 11 はアンケート調査の結果である。
21
表 10
仮説の検証
仮説の検証
効果がある
・フェアトレードを知らない、興味のない人でも足を運びたく
なるようなイベント作り。
・学校教育で教える。
・職場でのフェアトレード商品の使用。
ど ち ら と も 言 ・大手スーパーなどで取り扱う。
えない
・フェアトレード・タウン運動。
効果がない
・商品価格の値下げ。
出典)調査結果を元に筆者作成
大庭さんは、「フェアトレードを知らない、興味のない人でも足を運びたくなる
ようなイベント作り」、
「学校教育で教える」、
「職場でのフェアトレード商品の使用」
の 3 点は日本でフェアトレードが根付くための解決策となりえると答えてくれた。
どちらとも言えないでは、「大手スーパーなどで取り扱う」、「フェアトレード・
タウン運動」をあげられた。「大手スーパーなどで取り扱う」事に関しての理由と
して、大きな店舗だと商品説明が疎かになってしまう恐れがあるためだと述べられ
た。「フェアトレード・タウン」運動の理由として、未だ日本で認定された地域が
ないためどちらとも言えないと述べられた。
効果がないと考えられた解決策では、「商品価格の値下げ」をあげられた。理由
としてあくまでも価格より品質が最優先であり、品質が良かったら多尐高くても消
費者は選んでくれると言う。
表 11
el espacio feliz さんへのアンケート結果
Q1
フェアトレード商品の価格は妥当ですか?
A
ほぼ妥当だと思う。もう尐し高くてもよい。
Q2
フェアトレード商品を買う人の年齢層は?
A
30~50 代の人々で女性がメイン。
Q3
一般の商品と比べてどちらが良く売れていますか?
A
同じジャンルの商品を扱っていないため分かりません。
Q4
売れ筋の商品はなんですか?
A
チョコレート、ヤギ革製品など。
Q5
お客さんから「こういうフェアトレード商品があったらいいのに」といっ
たご要望はありますか?またそれは何ですか?
A
特にありません。
22
Q6
私の住む私の住む島根県などの田舎ではフェアトレードショップ・商品が
ないのですが、そういった人々へはどうアプローチしていくとお考えです
か?
A
フェアトレードを前面に出すのではなく、まずは作られた過程やおいしさ
でアプローチしている。
Q7
フェアトレードを根付かせるために、何か取り組みをしていますか?
A
フェアトレードが先ではなく、美味しさ、そして作られた背景を知っても
らうことが行く行くは根付くことに繋がる。
Q8
フェアトレードに対して関心のない人を呼び寄せる工夫はしていますか?
またそれはどういったものですか?
A
興味のない人々にまず美味しさ、デザインの良さを知ってもらう事が大切
だと思うので試食をしてもらうなどの工夫をしている。
Q9
日本でフェアトレードが根付くにはどういった事が大切ですか?
A
様々な場面でまず味わって頂くことが大切。
Q10 フェアトレード商品を扱うようになったきっかけはなんですか?
A
店を始める前から好んで買っていたチョコレートがたまたまフェアトレー
ドチョコレートであったから。
Q11 インターネット、新聞、雑誌などのメディアを使っていますか?また、効
果はありましたか?
A
積極的には使っていない。取材の依頼があれば受けるようにしている。
Q12 日本でフェアトレードが根付く可能性はあると思いますか?
A
都心部ではだいぶ根付いている。可能性はあると思う。
出典)調査結果を元に筆者作成
3)検証
まず、私の立てた根付くための仮説だが、「商品価格の値下げ」が棄却された。
理由としては調査結果の節でも触れたように、あくまでも品質優先であり、品質が
良かったら多尐高くても選んでくれるとの説明を頂いた。アンケート調査の結果で
は、「もう尐し高くてもよい」と答えられている。やはり一般の大量生産・大量消
費で作られた既製品との「差別化」という点を大庭さんは重要視していると感じた。
また、フェアトレード本来の目的は、「発展途上国に暮らす人々が、自立して人間
らしい暮らしが出来るように、彼らに正当かつ公正な対価を払う事」である。もし、
価格を下げたのなら、その目的から離れていくとともに、価格競争の波に巻き込ま
れていく恐れもある。また価格を下げることにより品質が下がってしまうのなら、
話にならない。現代の消費者にとって価格は二の次であり、あくまでも高品質の物
23
を提供していく事が、今後フェアトレードが成長していく鍵であるのだ。
次にどちらとも言えない対策では「大手スーパーなどで取り扱う」、
「フェアトレ
ード・タウン運動」をあげられた。私はイギリス同様、大手スーパーで取り扱えば
自然と認知率が上昇し、購入する人も増え根付いていくと考えていた。しかし、大
庭さんはそういう見方も出来るとした上で、根付かせるとなるとしっかりとした商
品説明が重要であり、大型店だとそれらの説明が出来ないとの見解を示した。大型
店で十分な商品説明がされていないと、一時的な顧客になってしまう恐れがあり、
これでは私の問いである「根付かせる」とは異なってしまう。そのためには、消費
者にフェアトレードの背景、特に生産者への理解を深めるという事が継続的に購入
してくれるようになる術である。
最後に効果がある対策として「フェアトレードを知らない、興味のない人でも足
を運びたくなるようなイベント作り」、
「学校教育で教える」、
「職場でのフェアレー
ド商品の使用」をあげられた。大庭さんの店では、フリーマーケットやリンゴフェ
スタと銘打った様々なリンゴ製品を並べたユニークなイベントの開催など、お客さ
んに来店してもらう努力を怠っていない。そのようなイベントが集客効果となり、
店に並んでいるフェアトレード商品との出会いに繋がるのだろう。「学校教育で教
える」点に関して、この章の概要で述べたように、大庭さんは地域の学校へ赴き、
フェアトレード講座を開催している。このような活動により「若者が貧困問題につ
いて尐しでも考えてくれればいい」、と述べている。こうした活動が若者の意識変
化へとつながり、そうすることによって既製品の物からフェアトレード商品へと意
識が変わり、最終的には「根付く」になるのではないか。「職場でのフェアトレー
ド製品の使用」に関しては、身近な所に商品があれば、その分良さに気付く人が出
てくるとの見解を示された。
次にアンケート調査の結果について考えてみる事にする。Q3 の質問に対して女
性が主に購入するという。男性へのアプローチが今後必要不可欠になるのではない
か。また年齢的に見ても、家庭があり一定の収入がある層だといえる。10 代、20
代にはフェアトレード商品が高いという印象があるのではという印象を抱いた。ま
た、10 代、20 代と 60 代以降の年代においては、そもそも認知率が 30~50 代に比
べて劣っているのではないかという考えを抱いた。
また、Q11 の質問に対して大庭さんは、都心部ではだいぶ根付いており、日本に
おいても根付く可能性はあるとしている。本論を進めるにあたって、私自身も都心
部ではフェアトレードショップの数が増加しているという印象を持った。課題とし
てあげられる、地方でいかにショップ数を増やすかということだが、大庭さんのよ
うにイベントを開催し、地域の学校で教育する事によって、消費者意識も変わり始
め、ショップ数や取り扱う店舗も今後増えていくだろう。地方においても根付く可
能性は十分にあるのではないか。
24
最後にアンケートを総評して、大庭さんはフェアトレードを根付かせる方法とし
て、まずは消費者に商品を気に入ってもらうことが、重要だと考えていることが分
かった。大庭さんがフェアトレード商品を扱うようになったきっかけが、自身のお
気に入りのチョコレートがフェアトレード商品であったからとしている。最初に商
品の事を気に入った後、フェアトレードに対し興味を持ったのだとアンケートで答
えている。その自身の経験も踏まえて、大庭さんが取っている根付くための方法と
して、アンケートと自由回答を通して考えてみる。まず消費者に商品自体を気に入
ってもらう事が前提にあり、その商品の背景、意義等を説明する。そうすることに
よって消費者にフェアトレードに対しての理解を深め継続して買ってもらう=「根
付く」という方法をとっている(図 4 参照)
。この図から読み取れる事として、大
庭さんはリピーターの獲得を主として考えており、「継続して買ってもらうために
は」
、という視点で根付かせようとしている事が分かる。
また大庭さんは最後に、フェアトレードは生活が厳しい人への同情心から寄付の
代わりに買うのでは続かないと述べている。根付かせるためにはフェアトレード商
品を気に入ってもらう事が最重要であるという事が今回の el espacio feliz さんへの
調査で分かった。
大庭さんの考えるフェアトレードが根付くための方法
フェアトレード商品を気に入ってもらう
十分な商品説明
継続して購入、固定客の増加
フェアトレードが根付く
図4
大庭さんの考えるフェアトレードが根付くための方法
出典)本稿を元に筆者作成
(3)らぶらんどエンジェルへの調査
1)概要
らぶらんどエンジェルは熊本で唯一のフェアトレード専門ショップである。今回
このショップを対象にした理由は、代表である明石さんが中心となり、熊本を日本
初、アジア初のフェアトレード・タウンにしようとしており、今一番フェアトレー
25
ドに対し、行政と一貫して広まっている地域なため調査対象に選んだ。
らぶらんどエンジェルは、代表である明石祥子さんが、息子さん達とのアジア旅
行、そして 10 年間のボランティア活動を経て、1993 年 10 月 1 日、熊本でフェア
トレードショップの経営を始めた。らぶらんどエンジェルの商品は「途上国の生産
者と公正に貿易する」、
「仕事では、性別、人種、民族、文化で差別しない」などの
8 項目あるフェアトレードポリシーと「農薬や化学肥料を使わない有機農法を応援
する」、
「自然の材料を使った草木染めを復活させる」などの 8 項目あるエコポリシ
ーにのっとった商品を取り扱っている。また、フェアトレードを知ってもらうため、
ファッションショー等のユニークな企画を実施している。2004 年からフェアトレ
ード・タウンへ向けての取り組みをしており、2009 年には約 300 名の人々が発起
人となりフェアトレード推進委員会を立ち上げた。そして同年に 1 万人の署名を集
める等、日本初、アジア初のフェアトレード・タウンを目指し活動を行っている。
図 5 は推進委員会のマークである。また、12 月 4 日、5 日には「みんなのフェアト
レ文化祭」と銘打ったイベントを行い、フェアトレードの衣類を身にまとった熊本
県内の大学生モデルによる「2010 秋冬ファッションショー」等の企画を行った。
図 5 フェアトレードシティー推進委員会マーク
出典)らぶらんどエンジェル http://loveland2010.otemo-yan.net/(12 月 7 日アクセ
ス)。
2)調査結果
らぶらんどエンジェルさんへの調査を el espacio feliz さん同様の方法で行った。
また、今回は熊本という事で現地に行く事が出来ず電話でのやり取りのみとなって
いる。
26
表 12
らぶらんどエンジェルさんへの仮説の検証
仮説の検証
効果がある
・フェアトレードを知らない、興味のない人でも足を運びたく
なるようなイベント作り。
・学校教育で教える。
・職場でのフェアトレード商品の使用。
・大手スーパーなどで取り扱う。
・フェアトレード・タウン運動。
・商品価格の値下げ。
出典)調査結果を元に筆者作成。
表 13
らぶらんどエンジェルさんへのアンケート結果
Q1
フェアトレード商品の価格は妥当ですか?
A
お客さんからは高いと言われる。明石さんは生産者が製作している現場を
知っているので高いとは思わない。
Q2
フェアトレード商品を買う人の年齢層は?
A
イベント時は子供からご年配まで広い層の人々が来店する。普段は主婦が
主に来店する。
Q3
一般の商品と比べてどちらが良く売れていますか?
A
店内の商品のほとんどがフェアトレード商品なため比べられない。
Q4
売れ筋の商品はなんですか?
A
チョコレート、ヤギ革製品、コーヒー。
Q5
お客さんから「こういうフェアトレード商品があったらいいのに」といっ
たご要望はありますか?またそれは何ですか?
A
お手ごろ感のあるもの。
Q6
私の住む私の住む島根県などの田舎ではフェアトレードショップ・商品が
ないのですがそういった人々へはどうアプローチしていくとお考えです
か?
A
ショップ数や扱っている店舗を増やす事が大切。通信販売という点もある
が、手にとって見られない為、服等といった商品を買えない。
Q7
フェアトレードを根付かせるために何か取り組みをしていますか?
A
フェアトレードシティーの認定を目指している。そうすることで認知度が
上がる。
27
Q8
フェアトレードに対して関心のない人を呼び寄せる工夫はしていますか?
それはどういったものですか?
A
様々な種類のイベントの開催している。熊本県にある 13 の大学全てでフェ
アトレードファッションショーの実施をしている。月に一度熊本県が市民
に配る市政だよりで毎月フェアトレード特集される。
Q9
日本でフェアトレードが根付くにはどういった事が大切ですか?
A
根付かせようとする意志を持った人が増えていく事。
Q10 フェアトレード商品を扱うようになったきっかけはなんですか?
A
フェアトレード専門ブランドであるピープル・ツリーの代表サフィアさん
との出会い。
Q11 インターネット、新聞、雑誌などのメディアを使っていますか?また、効
果はありましたか?
A
月に 5,6 回店舗の事や、フェアトレード・タウンを目指す取り組みについ
て取材を受けている。効果はある。
Q12 日本でフェアトレードが根付く可能性はあると思いますか?
A
絶対根付くと思う。
出典)調査結果を元に筆者作成
3)検証
私の立てた結論だが、全て効果があるのではという答えを頂いた。その中で一番
重要だと考えられたのは「学校教育で教える」という事をあげられた。イギリスで
はフェアトレードスクールが存在する程、フェアトレードに対する教育がしっかり
している。そのためイギリスでは認知率が高いのではと述べられた。明石さんは「将
来的にはお店で商品説明が要らなくなるようになればいい」と答えている。
「職場でのフェアトレード商品の使用」、
「大手スーパーなどで取り扱う」、
「商品
価格の値下げ」も同様、効果があると答えられた。これらの事をすることで手にと
る機会が増え認知率が上昇するのではないかと理由づけている。また、商品価格の
面では、今後取り扱う店舗数が拡大していく事で市場規模が大きくなれば値段も尐
しずつ下がり、消費者にとって買いやすくなるのではという見解を示した。
「フェアトレードを知らない、興味のない人でも足を運びたくなるようなイベン
ト作り」、
「フェアトレード・タウン運動」の二つは明石さんが力を入れて取り組ん
でいる事で、アンケート調査でも紹介したように、熊本県内にある 13 の全ての大
学でフェアトレードファッションショーを開催した。その他にもイベントは欠かさ
ず、多い年では年間 80 回以上イベントを開催、参加した年もあったそうだ。消費
者にフェアトレードを知ってもらうためには、イベントは欠かせないと明石さんは
28
述べている。また明石さんを中心に熊本県を日本・アジア初となる「フェアトレー
ド・タウン」への認定に向けて取り組んでいる。目指すきっかけとなったのは、2004
年フェアトレードの有料講演会を開いた際、多くの聴講者が集まり、「これだけ多
くの人がお金を払ってまでフェアトレードに対して興味を持ち足を運んでくれて
いる」と考え、その席上で決意したと述べている。議会へ提出する為の署名活動に
は、熊本県にあるサッカーチーム「ロアッソ熊本」の選手も参加しており、最初は
300 人の発起人しかいなかったが、今では熊本県全体でフェアトレード・タウン認
定に向かって盛り上がりを見せている。早ければ来年 3 月の議会で承認される予定
であると述べられていた。
次にアンケート調査の結果について検証してみたい。商品価格について、お客さ
んから高いという意見をもらっているそうだ。しかし、明石さんは現場の生産者が
商品を作っている現場を見学したため、この価格が正当であると感じている。しか
し、フェアトレードが今後普及する為には、価格を下げる事が一つの要因であると
述べている。そのためには市場を大きくすることで現在の価格から、一般的な既製
品の価格に近づける事が重要であるとしている。
次に人気商品として el espacio feliz さん同様、ヤギ革製品をあげている。これ
には理由として、ヤギ革製品は比較的安いと述べている。その上 Q5 に対する回答
として「お手ごろ感のあるもの」と答えている。商品価格の質問に対する回答も含
めて考えると、消費者は高い商品より安いものを求めているということが読み取れ
る。根付くとなると価格の面も大切な要因であるといえる。
また、Q5 の質問に対して「男性の商品が圧倒的に尐ない」と述べている。私が
el espacio feliz さんへ取材に行った際、男性向けの服といった商品がほとんどな
いというイメージをもった。また 2 つの店舗共に、Q2 の質問に対して「女性が主」
と答えている。今後は男性向けの商品の開発・販売といった事も根付くための要因
であるといえる。
また明石さんは Q12 の質問に対し、
「絶対に根付く」と述べている。それには意
識を持った人が増える事が重要であると Q9 で答えている。明石さんが始めた、熊
本をフェアトレード・タウンにしようとする運動にしても、最初は 300 人の発起人
で始まったが、今では熊本県全体を巻き込み認定されようとしている。明石さんの
取り組みが人々の意識を変え、そして行政までも変えていった。
最後にアンケート調査、自由回答を通して明石さんのフェアトレードが根付く方
法を考えてみることにする。まずイベントや学校教育をすることによって認知率を
高める。そこから、地域の人々の意識が変わっていき、市民運動につながる。最終
的にはフェアトレード・タウンへ認定される事で、「根付く」に繋がると考えてい
る(図 6 参照)。この図から読み取れる事として、明石さんは人の広がりを重視し
ていると言え、最終的にはフェアトレード・タウンに認定される事が、根付くため
29
の重要な要素であると考えている事が分かる。
明石さんの考えるフェアトレードが根付くための方法
イベント、学校教育
認知率の上昇、意識変化
市民運動→フェアトレード・タウン認定
フェアトレードが根付く。
図6
明石さんの考えるフェアトレードが根付くための方法
出典)本稿を元に筆者作成
6.結論
第五章までをまとめ、日本で根付かせるためには、どのような解決策があるのか、
結論付けることにする。第四章において私が出した仮説を、2 つのフェアトレード
ショップに検証してもらった結果、①フェアトレードを知らない、興味のない人で
も足を運びたくなるようなイベント作り、②学校教育で教える、③職場でのフェア
トレード商品の使用の 3 点は両方の店で効果があるとされた。これらの解決策は認
知率をあげる効果があるとともに、フェアトレードが行われている背景を知っても
らう事で、消費者側の意識改革にもつながる。
また、らぶらんどエンジェルさんで効果があるとされながらも、el espacio feliz
さんでは、どちらとも言えない、効果がないとされた仮説は④大手スーパーなどで
取り扱う、⑤フェアトレード・タウン運動、⑥商品価格の値下げであった。④につ
いては商品説明が出来なくなるという理由があるが、②をすることによって、その
否定理由を解消する事ができる。現在イギリスでは大手スーパーがフェアトレード
商品を扱う事により、市場規模が年々上昇していることやイギリスでの認識率の高
さを踏まえて考えると、効果がある施策と言えることができる。⑤においては日本
でまだ認定された地域がないため、現段階では効果がある施策としてはどちらとも
言えない。今後熊本が日本で初となるフェアトレード・タウンに認証され、フェア
トレードがその地で根付いていく結果になったのなら、効果がある施策としてとら
える事が出来る。⑤においては今後の経過を待つ必要がある。⑥についてはアンケ
30
ート調査を検証した結果、お客さんは価格が安い商品を求めている事が分かった。
根付く為には、継続して買ってもらう事が一つの大きな要因であり、その為には品
質がいい商品の提供のみではなく、価格面も重要であると考え、効果がある施策と
して捉えることができる。
以上が本論の問いである「日本でフェアトレードを根付かせるために」の解決策
である。今回私は「根付く」には認知率を上げる事で新規の客を獲得するという視
点で主に考えていたが、一番大切なことは新規の客を獲得した上で、継続して買う
人の増加が重要であるということが調査を通して分かった。その為には、認知率の
上昇、そして消費者が継続して買いたくなるような要素が、今後日本に根付く上で
重要であると言える。
また、根付くための方法として大庭さんの考える順序は、まず消費者に商品の
味・品質といった良さをしってもらい、その後十分な商品説明を通して継続して購
入してもらう客の増加が「根付く」になるとしている。次に明石さんの方法として、
イベントの開催、学校教育により認知率が上がる。それと同時に地域に住む人々の
意識が変化し、それが運動になる。そして、その高まりによってフェアトレード・
タウンに認定され、最終的に「根付く」に繋がるとしている。この二つの方法は前
者において、根付かせる為には継続して購入する「固定客」の獲得を重視している
のに対し、後者は「人の広がり」という面を重視している。同じフェアトレードシ
ョップであるのに対し、目的の違いがあることがここから読み取ることができる。
大庭さんは地域を基盤とするリピーター重視の経営を目的としているのに対し、明
石さんはフェアトレード・タウン認定へ向けて、広く普及することを目的としてい
る。故に両者において違いが生じる結果となった。
私の意見としては明石さんの方法を支持したい。大庭さんの方法は、確かな固定
客を確保でき、根付く上で理想の形であると言えるかもしれない。しかし、必ずし
も全員がフェアトレード商品を気に入るわけではない。価格面で手が出せないと考
える消費者に対しては、アプローチする事すら出来ない。またフェアトレード市場
が小さい事により、商品を手に取ることや、味わう事が出来る機会が尐ないため、
気に入るきっかけもない。この方法は、フェアトレードに対する門戸が尐し狭いの
ではないかと考えられる。それに対して明石さんの方法は、人の広がりを目的とし
ており、フェアトレードファッションショーといったイベントは、消費者にとって
も興味を持つきっかけとして最適である。また、根付くための手段として、フェア
トレード・タウンに認定される事をあげている。まだ日本で認定された地域がなく、
本論では根付くための解決策としての明言は避けた。しかし、熊本が認定されるこ
とによって、日本において鈍化した成長率を見せるフェアトレード市場が、イギリ
スの様な伸び率を記録する可能性もある。現在の日本の成長率・認知率を考えると
何か革新的な方法が必要であり、それこそがフェアトレード・タウン運動であると
31
筆者は考える。まずは熊本が日本における初の認定都市になり、その後この運動が
日本全国で広まることで、日本において根付いていく事を期待し、本論を締めくく
るとする。
32
謝辞
この研究を卒業論文という形にする事が出来たのは、取材に協力してくださった、
el espacio feliz の大庭さん、らぶらんどエンジェルの明石さん、執筆に当たり指導
と助言をしてくださった沖村先生とゼミの同期の皆さんのおかげです。ここで皆様
に感謝し、謝辞に代えさせて頂きます。
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35
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