Comments
Description
Transcript
報告書 - GNLF
グローバル・ネクストリーダーズフォーラム 2012 年本会議 チュニジア大会 報告書 平成 24 年 12月 グローバル・ネクストリーダーズフォーラム グローバル・ネクストリーダーズフォーラム 2012 年本会議 チュニジア大会 報告書 目次 1. ご挨拶 …………………… p.3 2. 設立趣意 ………………… p.4 3. 開催概要 ………………… p.5 4. 運営体制 ………………… p.7 5. 開催スケジュール ……… p.8 6. 参加国・大学一覧 ……… p.10 7. セッション要約 ………… p.11 総合セッション ……… p.12 ガバナンスセッション1 …… p.15 ガバナンスセッション2 …… p.17 特別講義 ……………………… p.20 ガバナンスセッション3 …… p.22 リーダーシップレクチャー … p.25 ガバナンスワークショップ … p.26 8. 観光・交流 ………………p.28 9. 参加者感想 ……………… p.31 10.海外講師感想 …………… p.32 11.運営フィードバック …… p.33 12.会計報告 ………………… p.40 13.メディア掲載 …………… p.42 14.ご連絡先 ………………… p.43 2 1.ご挨拶 平素よりグローバル・ネクストリーダーズフォーラム(以下 GNLF)に多大なるご支援と ご協力を賜り、誠にありがとうございます。私ども GNLF は無事 2012 年度本会議の全日程 を終了することができました。 GNLF は前会頭森下裕介の声掛けのもと、将来リーダーとなり得る各国の学生たちがリー ダーへと成長する場を提供し、将来的に参加者が各国の官界・政界・財界など様々な分野 のリーダーとなった時に彼らがお互いに協働・協力しながら、一面では良好な国家間の関 係を構築し、また一面では国際的な課題へ対処していく存在となっていくことを目指す団 体であるという理念を掲げ 2010 年にその産声を上げました。2011年に行われた第 1 回 の東京大会では初めての開催、誰もが手探りの状況のなかにありながら、無事成功に終わ ることが出来ました。昨年度出会った人々とは今なお SNS 上で交流を続けております。 それを受けて本年度第2回を開催するにあたり、私は昨年度の会議をより発展させなけ ればならない、GNLF の理念を達成するために活動の内容を深め、広げていかなくてはなら ないと考えておりました。その思いが形となって結実したものが、今年度のチュニジア本 会議であります。昨年度本会議に参加して下さったチュニジアの学生と教授の方々に「ぜ ひ来年は私たちの国でやりたい」と強い決意を持って言っていただきチュニジアで開催す ることが決まりましたが、初の海外開催にあたっては多くの不安がありました。政情不安、 チュニジアの学生との協働に対する不安、そして海外開催に対する昨年度ご支援いただい た企業・関連団体の皆様の反応への不安。昨年度の第 1 回開催以上に先行きは不透明であ りました。しかし、それらの不安は杞憂に終わりました。チュニジアの学生、教授、大使 館の方々の全面的なご協力や、日本の企業・関連団体の皆様の変わらぬご支援がそこには ありました。特にチュニジアの学生運営メンバーと顧問であるスース工科大学准教授キル メン・マルズキ氏、在日チュニジア共和国大使エリエス・カスリ閣下には私たち日本運営 メンバーは感謝という言葉では足りないほどのご協力をいただきました。彼らとの協力体 制無くして今回の成功は無かったと言えます。他にも数えきれないほど多くの方々の親身 なご指導・ご支援なしには実現できないプロジェクトだったと改めて感謝しております。 何を行ったか、どのような内容であったかは報告書の記載に譲りますので、報告書の中 で少しでも私たちが何を考え、何を学んできたかを感じ取っていただければ幸いです。 私は今年で会頭を退きますが、GNLF は理念の達成に向け今後ますます進化してゆきます。 これからもどうぞ皆様の温かいご指導とご支援をいただけますよう心よりお願い申し上げ ます。 平成 24 年 12 月 2012 会頭 田渕寛次朗(首都大学東京3年) 3 2.設立趣意 21 世紀に入り10 年が経ち、米国や中国といった超大国のパワーは、未だ世界を圧倒し ています。しかしグローバリゼーションが急速に進展するこの時代に、それ以外の国々が 10 年後、20 年後を見据え、 未来の繁栄に向けて明確な意思を持ち、人材を育成している かと問われれば、確実に不充分だと言えるはずです。 10 年後、20 年後、確実に世界の形は変化して行くその中で、 政界、財界、学界などど のような分野においても、世界をリードするグローバル・リーダーが必要とされるでしょ う。 そして、その可能性は既存の超大国以外にも限りなく開かれています。これからの数 十年は、劇的な社会構造の変化の中を、 先進国はその生き残りのために、新興国は発展を 確実にするために、途上国は発展を勝ち取るために、 手を組める国々が戦略的にパートナ ーシップを結びつつ、 共に補完的な役割を果たしながら繁栄を勝ち得ることが求められる 時代だといえるでしょう。 すなわち今こそ、様々な地域・文化・社会構造を持つ国々がタッグを組み、ヒト・モノ・ カネ・文化・情報の際限無き越境を前提としたこれからの時代を 各国を代表して世界的に リードする「21世紀型のグローバル・リーダー」達を、 本気になって育て始めなければ ならない時期だといえます。 日本は外交があまり上手ではないことで知られていますが、「国と国との関係も、まず 人と人の関係から」との観点から、 各国の経済界・政界・学界・官界の支援と協力のもと、 将来の世界を担う可能性と意思を持つ大学生同士の交流と研修を通じて、「グローバルな 人脈」 「グローバルな経験」 「グローバルな知見」 の3つを構築することによりグロー バル・リーダーに成長するための基礎を形づくる、 そして活動を毎年積み重ねてゆくこと によって次なるリーダー達の「層」を作ってゆく、このことを趣意として、このプロジェ クトを設立し、実施することといたしました。 2011年4月 森下裕介(GNLF ファウンダー) 4 3.開催概要 会議名: GLOBAL NEXTLEADERS FORUM 2012 TUNISIA CONFERENCE (グローバル・ネクストリーダーズフォーラム 2012年本会議チュニジア大会) 主催団体: グローバル・ネクストリーダーズフォーラム(学生団体) 本部・日本委員会事務局 東京都文京区本郷 4-1-6 アトラスビル 6 階 IBIC 本郷内 会期: 2012(平成 24)年 10 月 2 日~8 日(7 日間) ※日本人運営は 9 月 30 日にチュニジア入り。 会場及び宿泊地: El Mouradi Club Selima Zone Tourstique El kantaoui Port El kantaoui 4089, Tunisia 参加国(五十音): 日本(本部)/チュニジア(ホスト国)/インド/エジプト/キルギス/ブルガリア /南アフリカ 参加人数: 運営学生 23 名(日本 15 名、チュニジア 8 名) 各国学生 2 名 各国教授又は准教授 1 名 議題: 「危機の時代に求められる“Good Governance”とは何か。」 5 【特別後援】 読売新聞東京本社 一般社団法人日本貿易会 国際協力機構(JICA) 【助成】 独立行政法人国際交流基金 公益財団法人双日国際交流財団 【協賛】 三菱商事株式会社 住友商事株式会社 三井物産株式会社 豊田通商株式会社 住友電気工業株式会社 【後援】 駐チュニジア日本大使館 駐日エジプト・アラブ共和国大使館文化・教育・科学局 駐日ケニア共和国大使館 駐日チュニジア共和国大使館 駐日ブルガリア共和国大使館 駐日南アフリカ共和国大使館 公益財団法人中東調査会 公益財団法人日本国際連合協会 財団法人日本国際協力センター 在日南アフリカ商工会議所(SACCJ) 日本アフリカ文化交流協会 日本・モロッコ協会 民間外交推進協会(FEC) 6 4.運営体制 顧問教授: ジョン・ボチャラリ 東京大学大学院総合文化研究科教授 会頭: 田渕寛次朗(首都大学東京都市教養学部 3 年) 事務局: 南部旭彦(東京大学教養学部 2 年)*事務局長 照下真女(東京大学教養学部 3 年) パートナーシップ局:佐野慎哉(慶応義塾大学法学部 3 年)*局長 伊東裕章(東京大学教養学部 2 年) 岩野敬人(東京大学教養学部 1 年) 蒲池晃子(東京大学教養学部 2 年) 三宅梓(東京大学教養学部 2 年) メンバーシップ局: 向山直佑(東京大学教養学部 2 年)*局長 安東慶太(東京大学教養学部 2 年) 杉原真帆(東京大学教養学部 2 年) 久保満希子(首都大学東京都市教養学部 3 年) 宮田佳歩(東京大学教養学部 1 年) プログラム局: 安井真(東京大学教養学部 2 年)*局長 小平真未(東京大学教養学部 2 年) 高椙裕(首都大学東京都市教養学部 3 年) 高橋遼平(東京大学教養学部 1 年) 渡丸慶(東京大学教養学部 1 年) 7 5.開催スケジュール 2012.10.02 (火 ) -午前-各国参加者到着(随時) 17:00-18:00 各国参加者ホテル到着(誓約書記入、部屋へ移動) 19:00-20:30 夕食 21:00-22:30 全体ガイダンス(自己紹介、スケジュール確認、等) 22:45-23:30 運営ミーティング(日本、チュニジア委員会による) 2012.10.03 (水 ) 06:30-08:00 朝食 09:30-11:30 オープニングセレモニー 12:00-12:30 昼食 13:30-17:30 総合セッション (地域協力の未来とPKOの役割:Lyubov Grigorova Mincheva講師) 19:00-20:30 夕食 21:00-22:00 文化交流パーティー (ファッションショー:ホテル内のパーティールームにて) 22:00-22:45 交流(パーティールームにて) 23:00-23:45 運営ミーティング(日本、チュニジア委員会による) 2012.10.04 (木 ) 06:00-07:00 朝食 07:30-09:30 チュニスへ移動(バスによる) 09:30-11:00 バルドー美術館見学 11:15-11:30 メディナへ移動 11:30-13:00 メディナ観光 13:30-14:00 カルタゴへ移動 14:30-16:00 カルタゴ観光(昼食) 16:00-17:00 シディブサイド観光 17:00-19:00 スースのホテルへ移動 19:00-20:30 夕食(ホテルにて) 22:30-23:00 運営ミーティング(日本、チュニジア委員会による) 8 2012.10.05 (金 ) 07:00-08:00 朝食 9:30-11:30 ガバナンスセッション1 (ガバナンスとは:Riham Bahi講師) 12:30-13:15 昼食 14:00-17:00 ガバナンスセッション2 (ガバナンスにおける政府と民主主義: Shefali Balsari-Shah講師) 17:30-18:30 特別レクチャー (グローバルガバナンスに向けた民族紛争の課題:Shirley De Villiers講師) 18:30-20:30 自由時間(ホテルにて) 20:30-21:30 夕食 22:30-23:00 運営ミーティング(日本、チュニジア委員会による) 2012.10.06 (土 ) 07:00-08:00 朝食 08:30-11:00 ガバナンスセッション3 (ガバナンスの成功と失敗:Jamilya Biialinova講師) 12:00-13:00 昼食 13:30-14:30 リーダーシップレクチャー (我々の求めるリーダー像とは:Nadhmi Zouaghi講師) 14:30-17:30 リーダーシップについてワークショップ 18:00-22:00 ザーラシティ観光 23:00-23:30 運営ミーティング(日本、チュニジア委員会による) 2012.10.07 (日 ) 07:00-08:00 朝食 08:00-13:00 スース観光 13:00-14:00 昼食 14:00-16:00 アクティビティ (パラシュート、バナナボート、マッサージ等から選択) 17:00-19:00 ポート・エル・カンタウィ観光 20:00-22:00 夕食‐クロージングパーティ 22:00-24:00 交流(パーティールームにて) 2012.10.08 (月 ) 各国参加者帰国 9 6.参加国・大学一覧 インド:聖ザビエル大学(St. Xavier's College) エジプト:カイロ大学(Cairo University) キルギス:キルギス国立大学(Kyrgyz National University) ブルガリア:ソフィア大学(Sofia University) 南アフリカ:プレトリア大学(University of Pretoria) (各大学より学生 2 名、講師 1 名) チュニジア委員会(8 名):スース大学(ISSATS) 日本人参加者 2 名(東京大学、国際教養大学) 日本本部(15 名) 10 7.セッション要約 GNLF 2012 年本会議チュニジア大会 議題 「危機の時代に求められる”Good Governance”とは何か。」 <議題設定理由> 世界は今、危機の時代にあると言っていいだろう。中東・北アフリカ地域における政治変 革である「アラブの春」から早くも 1 年が経った。今年度の開催地であるチュニジアのよ うに民主化への移行と定着が成功しつつある地域もある一方で、世界を見渡すと、未だに 内情が不安定・内紛状態にある国家や地域も少なくない。また今まさに岐路に立っている EU の崩壊リスクも非常に高まっており、世界大恐慌の再来も危惧されている。それではこ のグローバル化の進む「危機の時代」に必要とされるものは何だろうか。それは端的に「ガ バナンス」であると考えられる。多様な価値観の混在する共同体における公益の実現を目 指す公的ガバナンス、複雑化した問題への対処を社会全体で目指すリスクガバナンス、国 際問題を各国の相互連携により解決していこうとするグローバルガバナンス等、統治機構 による従来のトップダウンの管理システムではなく、集団的ネットワークによる自己統治 システムであるガバナンスが注目されているのは間違いない。しかし一方で、世界銀行に より「ガバナンス」という概念が提唱され始めてから早くも 20 年以上が経過している。そ の間にも、グローバル化・ボーダレス化・情報社会化が進展し、第 1 世代のガバナンス論 では諸問題に対処しきれなくなっていることもまた、事実である。そこで本年度は、グロ ーバル化の進んだ危機の時代における「善き統治」とはなんなのか、それを様々な価値観・ 政治体制を持つ国から集まった学生が一緒に議論し、新しい「グッドガバナンス」を定義 したい。 11 Comprehensive Session ― International Peacekeeping― 1 . セ ッ シ ョ ン 概 要 文責 渡丸慶 最大の国際問題の一つである紛争解決。そ の問題に対する新しい概念として、近年注目 さ れ 始 め た の が 、 R2P (Responsibility to Protect) である。R2P とは、ある国家が自国 民を保護する能力、意志がないとき、国際社 会が彼らの保護責任を負うという概念である。 この概念は、紛争解決の指針に大きな影響を 与えているが、一方でその適用範囲や方法に は慎重にならなければならない。このことを 踏まえ、PKO などの国際機関や EU などの地域 共同体による、紛争解決に対する取り組みに 2 . レ ク チ ャ ー ついて考察した後に、R2P をいかにして紛争 レクチャー1 は、冷戦後の PKO の発展から 問題に適用していけるか考えることを、本セ 始まる。冷戦期、PKO の役割ははっきりと位 ッションの目的とした。 置づけできておらず、米ソの政治的思惑に作 本セッションの構成をまとめると以下のと 用される紛争解決の補助的手段に過ぎず有効 おりである。 に働く場合は少なかった。しかし、冷戦の終 第 1 部 レクチャー1 わりと共に各地で宗教的・民族的対立による 「冷戦後の PKO の課題、動向、展望」 紛争が発生するようになり、PKO が紛争解決 第 2 部 レクチャー2 の手段として大きな期待を持って再考され、 「国境を越えた紛争とそれに対する地域共同 質・量ともに大きく発展した。しかし冷戦後 体の取り組み」 のいわゆる第二世代 PKO は 1993 年のボスニア 第 3 部 グループディスカッション ヘルツェゴビナ紛争と 1994 年のルワンダ大 「R2P から考える紛争問題」 虐殺によって大きな転換を迫られることにな (1)「R2P の紛争への適用方法」 る。共産主義が実質的に瓦解した冷戦後のユ (2)「R2P を適用可能な新たな方法、また R2P ーフォリアの中でナイーブな熱意や理想を背 を強化する手段」 景に行われていた第二世代 PKO は、その実経 (3)「紛争から平和へ移行できる効果的な手段」 験やロジスティクス、統一的指揮系統に欠け (4)「紛争の解決能力を高めるために推奨され たものであることがこれら 2 つのミッション る政策」 両レクチャー含め本セッションは、ブルガ の失敗で明らかになったのである。このこと が、PKO の権限を拡大させ、活動を活発化さ リアのソフィア大学所属の講師 Lyubov G. せる大きな要因となった。 Mincheva 氏に担当して頂いた。 次に、PKO のミッションの対象となる地域 紛争自体へと話題は移る。1995 年以降、紛争 の総数は減りつつあり、21 世紀は平和の世紀 になると思われていたが実際のところ 2001 年以降は増加に転じており、そこには一国内 の集団殺戮や政治的な殺戮も多く含まれてい る。さらに、地域紛争の潜在的な可能性は中 東やアフリカを初めとする多くの地域で根強 12 く残っている。これらの民族紛争や戦争は民 こと、政治的、法律的な制限や拘束を増やす 主主義の機能不全に起因することも多く、そ ことなど、EU のアプローチに触れながら数多 れゆえ我々は民主化について再考していかな くの具体的政策手段が挙げられた。そして武 ければならないという。 力紛争の蔓延を防ぎ、暴力のない状態をデザ 講義は最後に、国家がどのように PKO に関 インしていくことについての効果的と思われ わっていくべきかという話に移る。国家はそ る施策をディスカッションの際考えたいとし の権力を保持すべきであり、国際機関は国家 て、講義は締めくくられた。 の権力からは独立した独自の権力を持つべき であるという。これは国際機関が特定の政治、 3 . デ ィ ス カ ッ シ ョ ン 宗教色を持つことによる不利益を避けるため ディスカッションは、4つの問いに対して、 である。国家が市民を守ることができず、そ 各グループが1問ずつ担当するという形で行 の国が人道主義上の危険にさらされている時 われた。問いとそれらに対する各グループの こそが、国際機関が介入するときであるため、 解答(要約)は以下の通りである。 国際機関には国家とは全く別種の権力を持た せる必要があるのだ。 (1) R2P をコソボやルワンダのような事例に レクチャー2 では国境を越えた紛争や犯 適用していく方法を考えよ。 罪・テロリズムが主要なテーマとして設定さ ―人命を守るため、他国が国家主権の領域に れた。バルカン半島・サブサハラアフリカ・ 介入するというのが R2P の基本原理であるが、 中央アジアなどにおいて紛争は国境を越え地 紛争当事国に介入するに至る意思決定過程に 域紛争化したが、個別の国家を主要な対象と 問題はないだろうか。本当に当該国の国民の する PKO ではあまり考慮されてこなかった。 利益が考えられているか。介入する側の国家 そこで本講義ではそれら地域紛争・国際犯罪 利益に基づいて決定がなされていないか。 /テロリズムネットワークに着目しその歴史 これから R2P が進められる過程に直面したな と現状を描写するとともに、解決への政策的 らば、人々は「これは誰にとっての利益とな 提言が最後に行われた。 るのか」ということを自問すべきだと考える。 国際(地域的)ネットワークを結ぶ紐帯に は二種類あるという。多くの紛争は民族的あ (2)R2P を適用可能な新たな方法があれば示せ。 るいは宗教的なアイデンティティを背景にし また、それを基に、R2P を強化する手段を考 ているが、多くの犯罪組織は経済的動機から えよ。 生まれる事が多い。一方越境ネットワークの ―R2P を巡っては国家の利益追求ばかりが重 形成においても国家は考察の外におくことは 視される恐れがある。それゆえ、あらゆる地 出来ない。なぜなら国家はセルビアのように 域が自らの紛争解決組織を作るべきであろう。 民族紛争に直接関わり、あるいはブルガリア 例えばヨーロッパの様に、そこに属する国々 のように国自体が犯罪国家化することでその が、資源問題や政治的不安定といった地域内 形成に寄与するからだ。 の紛争に関して他地域の力の関与を借りずに これらの問題について、講義はまず越境アイ 自己解決できるようになれば、問1でも述べ デンティティ運動についてクルド人特に PKK られたようなリスクはなくなるのではないか。 を例として説明し、次に犯罪国家化について ブルガリアを例に概説した。 (3)紛争から平和へ移行できる効果的な手段 最後に講義は、国家が出来る政策手段に限 を考えよ。 界があるなか地域的枠組みが紛争やテロの解 ―初めに、歴史という長期的観点も含めた、 決にどう貢献できるかについて考察し提言し 当該紛争に関する問題を洗い出し、次に、当 た。非合法マーケットへの参加機会を減らし 事国の人々自身にその紛争の意義について疑 非犯罪的で合法な経済への参加機会を増やす 問を呈させる段階に進むことが必要であると 13 考える。そして、最終段階としては、教育や 私が考えていた内容と講師の扱いたい内容に 啓蒙の促進を挙げたい。幼少時に形成される は幾ばくかのずれが生じ、本当であれば密な 自国・他国に対する観点や思考法が、上記の やり取りを通じて、一つずつ決めていきたい ような思考プロセスを踏む際に大きく影響す ところではあったが、会期が迫っていたこと るからである。また、対立する当事者を同じ もあり、結果的には、テーマや形式だけを伝 テーブルにつかせ対話させることの重要性、 え、具体的な内容は教授にほぼ丸投げという 完全なる中立組織の創造が紛争解決の鍵とな 形になってしまった。しかし、一方でガイド る可能性も考えた。 ラインやワークシート、フィードバックシー トの作成等を私が行うことで、効率よく準備 (4)紛争の解決能力を高めるために推奨され を行えたと思う。メールという連絡手段に難 る政策を考えよ。 しさを感じつつも、海外の教員と一つのセッ ―各国は経済と政治両面について、安全保障 ションを作り上げられたことは、大きな経験 の関与を抜きにした自由を認めるべきである。 になったと感じる。 また資源の活用法や成長戦略を練ることを筆 頭として、産業面の安定を図ることも重要で 会議当日は、私自身は参加できなかったが、 あろう。 運営メンバー、参加者の声を聞く限り、大き な問題もなく順調に進んだようである。会議 全体で初めのセッションであり、ディスカッ ションはアイスブレイクという意味でも重要 であったが、活発な議論が行え、会議をうま く軌道に乗せられたのではないかと思う。た だ実際にセッションを行ってみて、浮き彫り になる問題点もあり、講師の指摘にもある通 り、時間配分や内容の濃さなどについては改 善の余地が多分にあると感じた。まだ第 2 回 という経験の浅い団体であるからこそ、余計 4. セ ッ シ ョ ン 責 任 者 総 括 に一回一回の会議で学び、次の代に生かせる 私が担当した総合セッションは、今回の会 議のメインテーマである「ガバナンス」に縛 ことが多くあるはずなので、改善点などは大 切に引き継いでいきたいと思う。 られない、自由なテーマ設定から行った。初 最後に、当日のレクチャーはもちろんのこ めは、これからの世界の勢力地図をグループ と、何回ものメールのやり取りを通じて、準 毎に考えるという案もあったが、資料準備の 備を共に行ってくださった Mincheva 氏、セッ 大変さ、時間の制約などから断念した。この ション内容に対して意見をくれた運営メンバ 観点をクリアーし、参加者が学びやすく、大 ーのみんな、そして積極的な参加のおかげで いに学ぶ価値のあるテーマとして設定された セッションを実りあるものにしてくれた参加 のが、紛争問題であった。セッションの担当 教授は、国際紛争や地域協力を専門とする Mincheva 氏にお願いし、メールのやり取りに よる内容の詰めが始まった。この段階で感じ たのが、海外の教員と一つのものを作り上げ ることの難しさである。当然のことながら、 者の方々に感謝の意を表して、責任者総括と する。 Governance Session1 14 ― Introduction of Governance― 文責 安井真 1 . セ ッ シ ョ ン 概 要 GNLF2012 の大テーマである“Governance” "Participation(政治参加)"・"Rule of Law(法 の 支 配 )" ・ "Transparency( 透 明 性 )" ・ を会期中に論じるに当たり、その基本概念を "Responsiveness(応答性)"などが挙げられ、 参加者の間で共有することは絶対に必要であ グッドガバナンスの全体像が帰納的に描かれ ると言える。 た。それぞれの要素についてわかりやすい例 また、一口に“Governance”といっても、 を交えて説明がなされ、随所で学生からの質 国内の“Public Governance”、より地域的な 問やコメントも寄せられる活発な講義が、序 “Local Governance”、世界規模の“Global 盤から展開されていた。 Governance ” や 企 業 統 治 を 意 味 す る 3 番目に、政治参加についての説明がされ “Corporate Governance”まで、その対象範 たが、そこではまず政治におけるアクターを 囲によって”Governance”の性質は大きく異 政府・軍・メディア・学界の 4 つに分け、エ なる。そのため“Good Governance”を論じる ジプトの例を用いて解説された。政府はメデ にあたっても、予めガバナンスの対象範囲の ィアを通じるなどして国内・国際問題の解釈 明確化、および参加者の間での共有が必要と の枠組みを決定することが出来るとの指摘は なる。 鋭く、博士はそれが悪い方向に傾くこともあ 今 回 の 会 議 で は 主 に 国 内 統 治 に お け る れば、アル・ジャジーラがアラブの春に好意 “Good Governance”のあり方を議論する予定 的な報道をしたように良い方向に向かうこと であったため、このセッションにおいては、 もあるとした。また政治参加とは何かという 「Governance の根本概念」とともに、アラブ 点について根源的な問いが発せられ、最低限 の春等を事例に、「国内統治における Good の政治参加とは投票であり、それに例えば投 Governance の要件」また、「Governance にお 書や寄付などの旧来の政治参加形態、ブログ ける女性の役割」を、講義という形の下、参 やフェイスブックなどの新しい政治参加形態 加者で共有した。 が加わって構成されるという答えが提示され 本セッションはレクチャーのみで構成され、 た。博士はこうした新しい政治参加形態のこ エジプトのカイロ大学所属の講師 Riham Bahi とを"Virtual Activism"という言葉を用いて 氏に担当して頂いた。 説明していた。 最後に女性の政治参加について熱いレクチ 2 . レ ク チ ャ ー ャーがなされた。曰く長年抑圧されてきた女 講義には4つのテーマがあり、それはすな 性の状況は今も厳しいことに変わりはなく、 わち「ガバナンスとは何か」・「グッドガバナ 例えばタハリール広場に集った女性たちは暴 ンスの特徴」・「政治参加」・「女性の包摂」で 力を振るわれ、革命後も憲法委員会には女性 ある。 のメンバーはいないという。 「ガバナンスとは何か」というテーマに対 まとめとして、講師から「なぜ革命はブラ し、まず"The process of decision-making and ックアフリカには伝播しなかったのか」・「宗 the process by which decisions are 教と政治を分離することは可能か」などのオ implemented"という一意的な定義が為された。 ープンクエスチョンが発せられた。 その中で政治とは人々の集団意思であり、そ 全体的にエジプト・チュニジアなどアラブ の選択は人々の共通の解決案だと位置づけら の春の渦中にある国からの参加者を中心に、 れた。 熱く意見を交換しあうセッションになったの 次に、「グッドガバナンス」の定義として 15 ではないかと思われる。 不安は全くの杞憂であった。 ガバナンスの概念をしっかりと押さえたう えでの、海外の教員らしい passionate な講義。 講義でありながら参加者を巻き込もうとする 姿勢には非常に考えさせられるものがあった。 一方、気になった点として、その“熱狂” ともいえる講義にはいくばくかの不安も覚え た。というのも、議論をするうえではある程 度の冷静さが必要となるわけだが、そこに情 熱や主義・主張が入ってしまうと、議論とし て成り立たなくなってしまう恐れがあるから である。 3. セ ッ シ ョ ン 責 任 者 総 括 ただ、全体として会議を終えた後で振り返 このセッションはガバナンスセッションの ると、このセッションは参加者も主体的に参 中で唯一、ディスカッションの時間がなかっ 加でき、ガバナンスの基本概念を理解するに た。テーマが”Introduction to Governance” 十二分な講義内容であったと思う。 であるが故なのだが、ディスカッションがな このセッションを担当して、エジプトの講 いということに加え、メインであるガバナン 師とのやり取りにおいて色々とメール文化の スセッションの最初、ということで、参加者 違い(丁寧さ等)を感じることもあったが、 が退屈しないか、きちんと「ガバナンスとは こちらからのテーマ指定に基づき、何度もテ 何か」を参加者がしっかりと把握してくれる ーマ調整をして頂くためにメールのやりとり か、ということを会議前から頭の片隅で懸念 を根気強く続けたことは、私自身にとっても していた。出だしで転んでしまうと、後に続 非常にいい経験であった。 くセッションに対するモチベーションにも影 ガバナンスの基本概念をしっかりと丁寧に 響が出かねないし、 “ガバナンス”に対する前 説明して頂けただけではなく、参加者の積極 提の共有がしっかりとされなければ、全体の 的なセッション参加を促せた、という点で、 議論に影響を与えてしまうことになるからで このセッションの役目を果たすことはできた ある。 のかな、と思う。 実際、講義の前日に講師に講義の内容を確 エジプト講師と今回一緒に協力してセッシ 認した際に、”I will make my power point from ョンを作っていくことができたのは、個人的 now on!”と笑顔で言われた時にはさすがに参 にも、中東・アラブ圏の人々と将来的に協働 ってしまった。 していく上で、様々な教訓を学ぶことができ、 しかし、実際に当日になってみると、その 非常に有意義な活動だった。 Governance Session2 ― Governm ent and Dem ocracy in Governance― 16 文責 高椙裕 1 . セ ッ シ ョ ン 概 要 政府(間)の意思決定は、政府以外の諸ア クターの持つ影響力から自由ではない。その ため政府(間)の意思決定やそれに伴う国際 関係、国内政治の動きを的確にとらえるため には、各国政府の働きだけでなく NGO・NPO や、 民間企業、労働組合、メディアなどといった 様々なアクターの影響をも考慮する必要があ る。 「ガバナンス」という言葉・考えは、こう した非国家的アクターを視野に入れ、政府(間) の意思決定や国際関係、国内政治の動きをと らえるための包括的な概念として登場した。 2 . レ ク チ ャ ー ガバナンスセッション 2 では、このガバナ 本セッションの講師を担当して頂いた ンスという考え方を通して政府の役割につい Shefali Balsari-Shah 氏は、英文学を専攻し、 て再考する。政府以外のアクターによる、政 小説をはじめ映画などポップカルチャーの研 府の意思決定に対する影響を考慮するとき、 究をされている。第 1 部のレクチャーは、ガ 政府の担う役割をどのようなものとしてとら バナンスにおける人々の内面的・精神的な要 えることができるのだろうか。グッドガバナ 素に着目し、第 2 部のレクチャーでは、政府 ンス実現のために政府はなにをすべきだろう の役割を説明した上で国民の果たすべき役割 か。 にも言及するものとなった。 また、ガバナンスが意思決定に関する概念 レクチャー1「ガバナンスと民主主義」では、 である以上、民主主義との関係を無視するこ 『リチャード三世』や『ジュリアス・シーザ とはできない。では、ガバナンスと民主主義 ー』などシェークスピアの文学作品が引用さ はどのような関係にあるのだろうか。 れ、ガバナンスにおける人々の精神的要素の 以上のような問題意識に基づき、本セッシ 重要性が説かれた。 ョンは以下の 3 部構成で行われた。 ガバナンスを客観的事実の連続として捉え 第 1 部 レクチャー1 るのではなく、諸アクターの主観的・精神的 「ガバナンスと民主主義」 作用の織りなす状態と考えるならば、アクタ 第 2 部 レクチャー2 ーの主観面にも着目する必要がある。講師は、 「ガバナンスと政府」 当時の権力にまつわる様々な出来事や登場人 第 3 部 グループディスカッション 物の言動を具体例としつつ、ガバナンスや民 (1)「様々なアクターが政策決定に影響を与え 主主義を考える際には人間のもつ精神的な要 ることができるとき、政府の役割が変化する 素、心の動きをも考慮する必要があると指摘 か否か」 した。 (2)「政府の役割が変化する場合の政府の役割」 レクチャー2「ガバナンスと政府」では、国 両レクチャーを含め本セッションの講師は、 連のミレニアム開発目標(MDGs)や世銀の世 インドのセント・ザビエル大学所属の講師 界ガバナンス指標(WGI)を参考としながら、 Shefali Balsari-Shah 氏に担当して頂いた。 グッドガバナンス実現のための政府の役割が 説明された。グッドガバナンス実現のために 政府は、 「デュー・プロセスの徹底」や「政策 評価」、「国民に対する説明」などにより一層 17 力を入れてゆくべきだという。 上記トピック(1)に関しては見解が分かれ 「デュー・プロセスの徹底」については、 た。 「政府の役割は変化する」というグループ 自国インド・ムンバイで起きた 2008 年の同時 が 3 つ、 「変化しない」というグループが2つ 多発テロの例を用いて説明がなされた。警察 あった。 は、早急なテロ犯の特定を求める国民からの 「変化する」としたグループもトピック(2) 圧力がかかる中でも、宗教差別などを排した に関しての意見は様々で、 「これまで政府が有 適正な手続の下、捜査を行うべきであり、司 してきた権威の多くは多様なアクターに取っ 法捜査に限らずあらゆる場面においてデュ て代わられ、政府の役割は縮小し、最低限の ー・プロセスが貫かれることが、ガバナンス 公共サービスの提供や社会的弱者の保護、人 には不可欠であるとした。 権の保護等にとどまる」とするグループがあ 次に講師は、とりわけ重要なものとして「説 った一方で、 「多様なアクターとの関わりによ 明責任(Accountability)」を挙げた。国民を って政府の役割は当然に変化するが、依然と 含むあらゆる利害関係者に対して、納得が得 して政府は大きな権力を持ち続け、財の再配 られるまで説明を果たすことがグッドガバナ 分等権力的役割を担ってゆく」というグルー ンスには必要であるという。また国民の側と プもあった。 しては、講師は「私たち一人ひとりの声が、 その他にも、南アフリカにおけるアパルト 政府を動かす」と述べ、政府の働きをチェッ ヘイト撤廃運動や、日本における福島第一原 クし、不正に対して声をあげてゆくことも重 発事故後の反原発運動にみられるように、最 要であり、政府が説明責任を果たすと同時に、 も重要なアクターはこのような強力な社会運 様々な立場にある国民一人ひとりが「自分が 動を起こす国民であり、彼らの活動は政府の 政府だったらどうするか」という視点から、 政策を変化させ、役割をも変化させるという 政府に対して能動的に働きかけることで、よ ものや、国連などの国際機構や、日本にとっ り善きガバナンスが実現されるとも指摘した。 てのアメリカなど、国外のアクターも政府の 政策決定に影響を及ぼし、政策の変更をもた 3 . グ ル ー プ デ ィ ス カ ッ シ ョ ン らすといったものなど、多様な意見が出され 上のレクチャーを受け、本セッションでは た。 一方、 「政府の役割は変化しない」というグ 以下のトピックについてグループディスカッ ションを行った。 ループからは、 「多様なアクターがどんなに政 (1)「様々なアクターが政策決定に影響を与え 府へ働きかけを行っても、既存の法律がある ることができるとすれば、政府の役割は変化 以上、政策決定や政府の役割に大きな変化は するだろうか?」 起きない」、「政治形態が異なれば政府の役割 (2)「もし政府の役割が変化するならば、どの も異なるため、例えば、社会主義国が民主主 ような役割を担うのだろうか?」 義国に変化したなどの場合では政府の役割は 変化するが、民主主義国における政府の役割 まず以上の 2 点を 5 つのグループに分かれ だけを考えるのであれば、変化することはな て話し合い、その後、各グループ 5 分程度の い」といった意見が出された。 プレゼンテーションを行った。参加者は、第 1 部・第 2 部のレクチャーの際にも質問をす るなど意欲的な様子だったが、自分の意見を 語り、話し合う本ディスカッションは、それ 以上に精力的に取り組んでいるようだった。 議論も白熱し、ディスカッションの予定時刻 を過ぎてもまだ話し足りないと言う参加者も いた。 18 シェークスピアの文学作品を例にガバナンス における人間の精神的な部分を扱うなど、他 のセッションとは趣を異にするものとなった。 ひとつの学問におさまっていては気づき得な かったであろう新たな視点を与えてくれた。 「ガバナンスにおいて、人間の善の部分に期 待することはただの綺麗事だろうか?」 「私た ち一人ひとりの声が、政府を動かす」 「政府は 私たちそのものだ」といった言葉は、参加者 にも印象深かった様である。 ひとつ反省点を挙げると、そうしたレクチ ャーやディスカッションを通して「ガバナン 4 . セ ッ シ ョ ン 責 任 者 総 括 スと民主主義の関係」や「グッドガバナンス 本 セ ッ シ ョ ン は 、「 ガ バ ナ ン ス と 民 主 主 実現のための政府の役割」といった課題に対 義」・「ガバナンスと政府」という抽象的なテ する一義的な答えを導くことはできなかった。 ーマを扱ったため、レクチャーの内容も抽象 この点、各課題に対する参加者全体としての 的でとらえづらいかもしれない、また、学生 答えを、それがいかに暫定的なものであった 同士のディスカッションも活発に行えないか としても、明確にすべきであったともいえる。 もしれないと懸念された。しかし実際は、レ しかし、こうした課題に対してはもともと必 クチャーは多様な例を交えた具体的なものと ずしも「ただひとつの正解」が存在するわけ なり、それを受けて行われたグループディス ではない以上、各国参加者が自国の事例を交 カッションにおいても各参加者が自国の事例 えながら多様な意見を出し合い議論できたこ を引き合いに出すなど、活発な議論が行われ と自体にも大きな意味があるはずだ。 ていた。 上述のように本セッションは、ガバナンス 今回のフォーラムに参加していただいた先 におけるアクターの主観面に着目した点、ま 生方の多くが政治学や国際関係論を専門とし た、政府の役割を考える上でその表裏をなす ておられるのに対して、本セッションの講師 国民の役割に着目した点、この 2 点において を務めていただいた Shefali Balsari-Shah 氏 特徴的であったといえる。こうした視点を得 は英文学がご専門ということもあり、博士が られたのも、Shefali Balsari-Shah 氏が本セ ガバナンスについてどのように論じられるの ッションの講師を努めてくださったからだ。 か期待された。 最後にはなるが、Shefali Balsari-Shah 氏に Shefali Balsari-Shah 氏のレクチャーは、 19 心から感謝の意を表したい。 Special Lecture ― Global N orm s, Localized Violence : the Challenge of Ethnic Conflict for Global Governance― 文責 高橋遼平 1 . セ ッ シ ョ ン 概 要 アフリカにおける民族紛争を例に取り上げ、 在なしには成立しえず(ex.黒があって初めて 白が意味を持つ)、また差異こそあれそれぞれ 民族意識(ethnic identity)という観点から の価値には本来優劣などない。人間がこの違 ガバナンスについての考察が行われた。どの いに意味を与えてしまうために紛争へとつな ようにガバナンスを利かせれば民族紛争問題 がる優劣が生まれるのだ。後天的アイデンテ が快方に向かうのか、またガバナンスの利か ィティの考えの下では、この優劣は政治的に せ方の問題点に焦点を置かれて講義が行われ 与えられる場合が多いので問題も政治的に解 た。 決されなければならない。しかし、政治体制 この講義を通して、アイデンティティとい が不安定な地域では政治的解決がなされず、 う側面からガバナンスを考察することで多角 結果として暴力による解決が試みられる。こ 的な視座を養うことを目指す。 の時民族の存続のために全ての暴力が正当化 本セッションはレクチャーのみで構成され、 されてしまう。 南 ア フ リ カ の プ レ ト リ ア 大 学 所 属 の 講 師 最後に、ガバナンスとの関連について。ガ Shirley Villiers 氏に担当して頂いた。 バナンスは共通の問題を解決するために多様 なアクターが意思決定に関わるものとして定 2 . レ ク チ ャ ー 義され、目下の最大の国際問題はいかにして この講義は民族意識(ethnic identity)と 人権を守るかである。しかし、国際社会は未 いう切り口からガバナンスを考察するという だにこの問題を解決できずにいる。その原因 ものだった。なぜ民族意識という観点なのか は当事国の主権と国際社会の介入の対立にあ というと、民族紛争は合理的解決に至りにく る。この問題の解決策として R2P が提示され い性質ゆえ争いが長期化しやすく非戦闘員も ている。R2P とは、自国民の保護という国家 巻き込まれるため犠牲者の数が非常に多いか の基本的な義務を果たす能力のない、または らである。 果たす意志のない国家に対し、国際社会がそ 民族意識を理解するためにはまずアイデン の国家の国民を保護する責任を負うという概 ティティ(identity)を理解する必要があり、 念である。しかし、まだ介入方法に問題が残 一口にアイデンティティと言っても実にさま る。交渉という手段に訴えると、交渉相手を ざまな種類のものが存在する(ex.日本人、男 国の代表者と認めることになるので彼らの存 女、大学生…)。ここで重要なのは、民族意識 在に正統性を付与してしまう。制裁という手 は数あるアイデンティティの中でも最も分か 段に訴えると、武力制裁ならば市民を巻き込 りやすいものである、ということである。そ んでしまうし経済制裁であっても結局食糧が してアイデンティティを先天的なものと捉え いきわたらない市民が被害を受ける。 るか、または後天的なものとして捉えるかの また人権問題のみに関わらず、様々な集団 二種類の考え方があり、前者の下では生まれ を内包するコミュニティにおいての力の分配 つきある集団に属し、その所属は生涯変わら も、ガバナンスに関する大きな問題である。 ない。後者の下では、アイデンティティは環 例えば統治において、首相を一つの集団から、 境との相互作用によって形成され再形成され 副首相を別の集団から、議会を他の集団から る余地がある。 …と進めていくと、集団間の隔絶性は増幅さ ところで、あるアイデンティティは他の存 れ、そこでは混ざり合う余地、共生する余地 20 というものが捨象されている。集団間(アフ このレクチャーは南アフリカの講師の意向 リカで言えば民族間)の分離が進んでいく別 により急遽設定されたものであり、メールの の問題は、たとえ非暴力的な弱小国が成立し やり取りでおおまかな内容については伺って たとしても、コミュニティ内の紛争がコミュ いたが、実際に会って細かく話を聞くまでは ニティ間の紛争に移行するだけ、ということ ずっと不安であった。パワーポイントの資料 である。またそこには経済的後退もつきもの も分かりやすいものが用意されていたので私 である。とりわけアフリカの様に多様な民族 の不安も解消され、ガバナンスと関連付けな が混在している場において重要なのは、異な がらの斬新な視点からの講義は参加者からの る集団を取り込んだ社会・政治体制を構築し、 評判も良かったため担当者としては一安心で 共通の問題について共に考える余地を見出す あった。それと同時に、小一時間のレクチャ ことである。 ーではもったいなかったという思いが沸き立 まとめとして教授は、以上の様な状況にお ち、もっと早い段階から連絡が取れていれば いて必要とされる視点を提示した。第一に、 セッションとしてディスカッションまで含め 暴力を防ぎ対話の場を設けるための”peace た有意義な授業が行えていたらと思うと後悔 enforcement”を重視すべきということ。また、 が残る所もある。 前述の通り民族単位で解体しやすい政治を包 個人的には、GNLF の本会議には海外教員を 括的なものにするべく、超民族的な政党づく お招きするという特質を感じた講義であった。 りの動機付けを与えることが求められる。こ 今回の民族紛争というテーマはアフリカが抱 れは様々な職業の人が関与する政党の必要性 えている問題であり、実際にその地に暮らし ということであり、市民社会という大きな視 ている方が挙げる例示は説得力を持つし、学 点からのアプローチが必要である。そして最 生によるディスカッションだけでは到達しえ 後に、議論や政治・社会参加に関する啓蒙を ない視座を講師は提供してくださる。 行うことで、地域社会レベルでの民主化を実 今回の本会議で何度か出てきた R2P という概 現することである。他民族に対し暴力的要素 念はそれだけでも本会議のテーマに出来るも を以て臨むアイデンティティを脱し、対話を のであり、参加国を鑑みてもホットな話題で 以て臨む方向へと変わることこそ、持続可能 あると感じられた。来年以降のテーマ設定の な解決策となるからである。 際の参考にしてもいいかもしれない。 最後になるが、講義を行うことが直前に決 まったにも関わらず素晴らしい講義を用意し てくださった Shirley 講師、そして準備の協 力をしてくれた日本委員会のみんなにこの場 を借りてお礼をさせていただきます。ありが とうございました。 3. セ ッ シ ョ ン 責 任 者 総 括 21 Governance Session3 ― Governance Failure― 文責 小平真未 1 . セ ッ シ ョ ン 概 要 近年ガバナンスに注目が集まり、日本など の一部国家では地方分権という形で推進され、 あるいは NPO や NGO といった民間セクターも その発言力・影響力を強めているように思わ れる。そして、 「ガバメントからガバナンスへ」 という標語にも示されているように、一般的 にガバナンスという概念は肯定的に捉えられ てきた。それは、チュニジアをはじめとした アラブの春における民衆の態度からも窺える。 しかし、ガバナンスは失敗、すなわち機能不 全の可能性を多分に内包していると考える。 ガバナンスセッション 3 では、ガバナンスの 2 . レ ク チ ャ ー 基本に立ち返るとともに、あえて負の側面か まず、ガバナンスとは何かということを学ん らガバナンスを考察することで、ガバナンス だ。基本的にはヒエラルキーではなく水平性 への理解を再構築していくことを目的とした。 を持つ統治形態を表し、ガバナンスの担い手 本セッションは以下の 2 部構成で行われた。 は、政府のほか、非国家主体や民間企業、あ 第 1 部 レクチャー るいは非政府組織・非営利組織なども含まれ 「ガバナンスの失敗」 る。ガバナンスの定義は世界銀行や UNDP など EU の 第 2 部 グ ル ー プ デ ィ ス カ ッ シ ョ ン 組織によって異なり、また、アメリカや 例から国によって実際にガバナンスがどのよ (1)「グローバルガバナンスにおけるガバナン スのジレンマ」 (2)「グローバルガバナンスにおけるアクター うに行われているかの違いが示された。 さらに、ガバナンスの 3 つの形態について 間の不均衡とメタガバナンス」 説明を受けた。1 つ目は、公的権力と民間団 本セッションの講義は、キルギスのキルギ 体 の 政 策 決 定 に お け る 直 接 的 協 働 (direct ス国立大学所属の講師 Jamilya Biialinova 氏 collaboration)、2 つ目は、公的アクターと に担当して頂いた。 私的アクターが公共部門において形成してい る混合ネットワーク(mixed networks)、3 つ 目 は 社 会 的 自 己 調 整 (societal self-regulation)と呼ばれるものである。 ガバナンスの外観に関するレクチャーの後、 実際にキルギスの例からガバナンスの失敗を 考察した。キルギスは 1991 年におけるソ連か らの独立後、経済システムの崩壊から国民の 貧困、闇市場の助長、債務の増加へと連鎖し、 そしてこれらの市場の失敗はその後、国家の 失敗を導いた。そして、ガバナンスの脆弱さ 22 が未だに補強されずグッドガバナンスが行わ ていくべきだということを示唆していた。 れていないのが現状である。この例から、経 Biallinova 講師のまとめとしては、市場も、 済(市場活動)と国家政策には密接で連動的 国家も、そしてガバナンスもすべて失敗し得 な結びつきがあり、その両立が困難であるこ るものであり、ガバナンスの失敗の問題は特 とを学んだ。 に旧来の解決法が適用できないこと、そして、 次に、複雑化したガバナンスを詳細に分析 ガバナンス自体にもまた構造的問題が内包さ するための「ガバナンスの次元」という概念 れていることから、利害関係者が一緒になっ について説明を受けた。1 次元的なガバナン て協働し対話することで新たな解決策を模索 スとは、問題が認識されその解決法が実行さ する必要があると締めくくられていた。 れ得るレベルであり、2 次元的なガバナンス では、1 次元的なガバナンスを内包している 講義後の質疑応答の時間では実に多くの質 制度的仕組みが存在し、アクターは統治者と 問が学生から挙げられた。特にキルギスタン 被統治者という異なる 2 つの役割を果たす。 についての質問が多く、独立時の体制移行や そして 3 つ目は「ガバナンスのためのガバナ 土地の私有化と対外債務、企業文化とその状 ンス」と定義づけられたメタガバナンスであ 況に関するものがあった。いずれに対する回 る。 答も、独立後の政治的、経済的政策の失敗に それでは、グッドガバナンスとはどのよう より、キルギスタンが大きな困難に見舞われ なものなのか。資本主義市場は手続き的な合 たことに帰着していた。講師陣からも質問が 理性(procedural rationality)を有している 挙げられた。1 つにはキルギスにおける合法 一 方 、 政 治 は 実 質 的 な 合 理 性 (substantive 経済と非合法経済の状況について質問があり、 rationality)を有している。市場と国家が良 キルギスの闇経済の問題が説明された。さら 好な関係を保つには、互いに対話することで に、キルギスにおける市民社会の強さについ 情報共有をし、連帯を強めコンセンサスと相 て質問では、2010 年の第二次革命以後、公正 互理解を図っていく必要がある。また、グッ な選挙と透明性を求める運動に市民社会が重 ドガバナンスの前提条件として、政治権力は 要な役割を果たしたとコメントが付された。 全ての人の権益を反映する一方、市民社会は 全体を通じて各国の参加者・講師から積極的 強力な存在として機能的に組織され、異なる な質問が飛び交い、セッションの成功を裏付 役割を持ったアクターが協働することが求め けるとともに参加者・講師の関心の高さを伺 られる。効果的なガバナンスのためには、公 わせた。 的アクターと民間アクターが各自の領域で効 3 . グ ル ー プ デ ィ ス カ ッ シ ョ ン 率的に機能し、公共政策における意思決定に ディスカッションでは、グローバルガバナ おいて協働していかなくてはならない。 ンスに焦点を絞り、ガバナンスのジレンマの 最後に、グローバルガバナンスの失敗の要 中から「協調と競争」と「公開性と閉鎖性」 因になり得るリスクケースを 3 つ紹介された。 を、2 つ目はアクター間の不均衡とメタガバ 1 つ目は「暗黒郷の根源」(Seeds of Dystopia)、 ナンスを取り上げた。 2 つ目は「安全保障がどれほど安全か」(How まず前者について、1つ目のグループは、 safe our safeguards)という問題、そして最 国益に反する協調は成り立たないが、小国は 後のリスクは「インターネット」に関するも そもそも大国との対等な協調に参画できず、 のであった。その後、グローバルリスクに関 互恵的ではないと述べ、双方の望むものが双 するショートムービーを鑑賞した。既知のも 方に分配される仕組みであれば協調は行われ の、あるいは未知のもの(例として 3.11 東日 ると結論づけていた。2つ目のグループは、 本大震災が挙げられていた。) を含む何百も 協調は問題解決などに必要である一方、競争 のファクターが連関し合っており、いかなる は国益を保護するために必要であるとした。 企業も共同体も国も協力して問題解決を行っ また、公開性から成る国益と閉鎖性から成る 23 地球益は二者択一ではなく、同じ次元には存 ただただ難しかった。この一言に尽きる。 在していないと結論づけていた。しかし、論 ガバナンスという概念は、1990 年代のポス 点であるガバナンスのジレンマは抽象的で議 ト冷戦世界の中で登場した。そのため、まだ 論しにくかったようで、議題設定の甘さが露 まだ歴史は浅く、さらに、 「失敗」のような副 呈した結果となった。 次的現象を扱うという話になれば、その研究 次に後者について、1つ目のグループは国 もデータも十分にあるとは言い難い状況であ 内のガバナンスに還元して議論をしていた。 る。しかし、歴史が浅い今だからこそ、絶対 一国のガバナンスにおける不均衡は必ずしも 善であると捉われがちなガバナンスの負の側 是正されるべきものではなく、政府について 面に気付き、そして考えを巡らせてみること 言えばむしろ他のアクターが適切に機能する が重要であると考えた。特に、次世代を担う ための環境を構築する、すなわちメタガバナ リーダーにとって、次世代に普及していくで ンスを担うための強大な力を有するべきだと あろうガバナンスを批判的に考察することは、 した。2つ目のグループは、ファシリテータ 必要不可欠ではないだろうか。そのような思 ーなどの存在の必要性から、アクター間の適 いから、あえてこの難しいテーマに挑戦して 切な不均衡を許容した。そして、適切でない みようと決意した。 不均衡に対してのみメタガバナンスは機能す るべきであると述べている。その後 NIKE の企 このセッションに至るまで、参加学生たち 業システムを例に挙げ、メタガバナンスの困 はやはりガバナンスを盲目的によいものと捉 難さを指摘し、その方法は更なる検討が待た えているような印象を受けた。途上国からの れると結論づけた。両者の意見から考察する 参加者が多く、彼らに共通するのは自国の情 に、アナーキーな国際システムにおけるメタ 勢に対し明確な、あるいは具体的な危機感を ガバナンスの効果的運用が難儀であることが 持っていることである。例えば、キルギスタ 共通意見となっているようである。 ンの失敗は、ともすればどの途上国でも起こ 議題が抽象的でありながらも、学生はそれ りうることであり、自国でのガバナンス適用 を具体的事象に関連づけて白熱した議論を展 可能性を将来の選択肢として有していた彼ら 開していた。明確な結論が出なかったとして に、ある意味ではインパクトを与えることが も、ガバナンスが机上の空論に陥る危険性を できたのではないか。 孕むということに関しては意識してもらえた 逆に私が彼らから学ぶこともあった。一つ のではないか。 は、先進国日本というぬるま湯の中に自分が いかに浸かっていたか、ということである。 日本の情勢に対する漠然とした不安は感じて いるものの、では何をすべきなのかというビ ジョンを全く持っていない自分を恥ずかしく 感じた。また、ガバナンスを題材にしておき ながら、先進国という優位な立場から抜け出 せていないことにも気付かされた。もしかし たら、これはグローバルガバナンス失敗の一 因であるかもしれない。無意識のうちに先進 国主導を前提とする危険性をまざまざと感じ た。 セッションを通して反省点は多々あるが、 4. セ ッ シ ョ ン 責 任 者 総 括 このセッションを担当した正直な感想は、 24 しかし、このセッションによって、彼らがガ バナンスに対して新たな見方をしてくれたら 本望である。最後に、このセッションを担当 してくださった Biallinova 講師と、意欲的に 本当にありがとうございました。 参加してくれた学生全員に謝意を表したい。 Leadership Lecture 文責 南部旭彦 1 . セ ッ シ ョ ン 概 要 その名の通り、リーダーシップに関する講 義を受けた。 「グローバル・ネクストリーダー ズフォーラム」としては、なくてはならない 講義であるといえる。GNLF では、国際問題を 中心とした社会の問題について見識を深め議 論しあう、外向きのプログラムが中心である。 しかしこの講義は、リーダーとリーダーシッ プについて学び、そこから自らを省みるため の、内向きの講義であるといえよう。ここで は、自動車会社のプランニングディレクター である、チュニジアのスース工科大学所属の 講師 Nadhmi Zouaghi 氏に講義を頂いた。 2 . レ ク チ ャ ー Nadhmi Zouaghi 講師は、まずリーダーシッ プとリーダーに関する一般的な講義を行い、 その後グループに分かれてゲーム、そして総 括という具合にレクチャーをされた。 まず講義の部分からまとめる。 冒頭、 「リーダーになるためにはアメリカ大 統領になる必要はないし、大学のトップにな る必要もない」そして「馬に水を飲ませたけ れば、馬に喉が渇いたと思わせろ」という 2 点を、まず学生に再認識させることから講義 は始まった。興味深いいきなりの切り口に、 学生は一気に講義に引き込まれた。 講師はパワーポイントを使った、テンポの 25 良い講義を展開した。まずはリーダーシップ とは何か、リーダーとはどういう存在であり、 何をすべきか、一般的な定義がなされた。そ してその後、リーダーとマネジャーの特徴を 対比させることで、それをより一層明確に説 明された。その後はリーダーに焦点を当て、 専制的リーダーと民主的リーダーとを対比し、 それぞれの特徴を学生も交えて考える双方向 的な講義がなされた。 「リーダーシップスタイ ル 」 と し て 、 Directing, Supporting, Delegating, Coaching を挙げ、Supporting で あり Delegating なものがより民主的なリー ダーであるとした。全体として、明快な説明 がなされ、またユニークな画像やグラフなど が用いられていたため、テンポは速くとも理 解に苦しむこともなく、非常にわかりやすい 講義となっていた。 ここまで一般的な講義を行い、ここから 4 グループに分かれ、リーダーシップをモチー フにしたゲームを行った。それはブロックを 使ったシンプルなゲームであった。チームの 中で顧客が欲する製品のイメージを聞いてく る人、材料を買ってくる人と製品を売りに行 く人を決める。そして講師が顧客として欲し い商品のイメージを提示し、担当者がそのイ メージをチーム全員に言葉のみで伝え、それ をもとにバイヤーが必要な材料(ブロック) を集め、全員で組み立てた。その後講師にで きた製品を持っていき、最初に提示されたも のと同じであった場合に買ってもらえる、と いうものであった。 Nadhmi Zouaghi 講師は各チームに誰がリー ダーシップをとったのか、そして逆に何もし ていなかった人はいなかったかを尋ねた。こ のゲームの難しかったところは、一つのグル ープに多くの人間が属し、しかしその中で役 割を振られている人間は少なかったところに あると思う。必然的にグループの中で積極的 にグループに貢献する人と、傍観しているだ けの人が浮き彫りになるゲームであった。 ゲームののちは、ゲームの事例を引き合いに 出しながら、リーダーシップのあり方につい て総括がなされた。 Governance Workshop ―W hat is good governance?― 文責 南部旭彦 1 . セ ッ シ ョ ン 概 要 分の班はシンガポールの開発独裁などを引き 「グッドガバナンスとは何か?」というテ 合いに出しながら、高水準の経済成長の実現 ーマで、会期唯一のワークショップを行った。 及び維持には迅速な意思決定が欠かせないと ガバナンスというテーマに沿って、学生は会 いう結論に達した。この前提のもと、迅速な 期中に見識を深めた。中には「グッドガバナ 意思決定と親和する要素をリストの中から洗 ンスとは何か?」を定義している部分もあっ い出していった:Indirect Democracy(間接 た。しかし、それはあくまでも理論である。 民 主 政 )・ Watchman State ( 夜 警 国 家 )・ グッドガバナンスの要件は多岐にわたるが、 Two-Party System(二大政党制)・One-Party それを国家が一度に実現できるわけではない Rule ( 一 党 独 裁 )・ Vertically Integrated だろう。それぞれの国家にはそれぞれの文化 Administration(垂直統合モデルの統治ある があり、発展段階がある。参加者の中には、 いは行政) ・Developmental Dictatorship(開 将来国家の政策決定に関わるものもいるかも 発独裁)・Autocratic Leadership(専制的リ しれない。私は、このワークショップにおい ーダーシップ)。これらを見るに、迅速な意思 て、理論をもとにした実践、つまりは具体的 決定を可能にするのが、少数による意思決定 な意思決定、もっといえば「政治」の真似事 であるということが読み取れる。しかし、そ のようなことを行いたかったのである。 もそもなぜ経済成長の実現に迅速な意思決定 国の発展段階がおおまかに 2 段階(高度成 が必要なのかという点については、もう少し 長期と安定成長期)に分けられると仮定し、 検討を要する。おそらく競争の場においては、 それぞれの段階において実現されるべきガバ 決定の正しさよりも決定を下すこと自体の方 ナンスの要件を、優先度順に 5 つ選ぶという が重視されるということだろう。これに対し ワークショップを行った。 て先進国の Good governance は、班のメンバ ーで洗い出しをした結果、途上国の場合とは 2 . ワ ー ク シ ョ ッ プ 対照的に以下の要素によって特徴付けられる ワ ー ク シ ョ ッ プ の テ ー マ は 「 Good ことが分かった:Direct Democracy(直接民 Governance とは何か?」であった。成長の度 主制) ・Deliberative Democracy(熟議民主主 合いに応じて、Good Governance のありかた 義) ・Welfare State(福祉国家) ・Multi-Party は違ってくるという想定のもと、先進国と発 System(複数政党) ・Democratic Leadership 展途上国のそれぞれについてあるべき (民主的リーダーシップ)。しかし、そうであ Governance の姿を、予め設定された軸に沿っ るからといって低成長の先進国には「迅速で て議論した。まずは途上国についてだが、自 ない意思決定」が求められるということでは 26 ないだろう。先進国においては、決定を下す 私の担当する「グッドガバナンスとは何 ことより、決定の正しさが重視されるという か?」というテーマは、今大会のフィナーレ ことである。高度な先進国においては、一般 を締めくくるセッションとなった。このセッ に何が正しいかは個々人の価値観によるとこ ションを作り上げるのには大変苦悩した。自 ろが大きいため、より多くの人々によるより 分なりにガバナンスについて学習し、 「グッド 多くの議論を経て決定された「正しい」もの ガバナンスとは何か?」、まずは自分なりの答 が尊重されるのである。思うに先進国と発展 えを持とうと思った。しかし、自分で勉強す 途上国で Good Governance のありかたが違う ればするほど、そして何がグッドなのかを考 のは、何が Good かに関する観念が異なるから えれば考えるほど、濃い霧の中に迷い込むよ である。発展途上国にとっての Good とは発展 うで、堂々巡りの議論に終わり、答えなど出 つまり経済成長のことであり、それは自明の ないのであった。自分の中に何も答えが見つ あまり民意を問うまでもないものと処理され からないのに、このテーマをそのままディス る。一方、先進国にとっての Good は「当然に」 カッションのテーマにするなどということは 経済成長であるとまでは言えず、何が Good で もちろんできなかった。 あるのかを民意に問わなくてはならない。何 グッドガバナンスの定義は多々存在する。 が Good かという問いは、かつては経済成長と 国連や世銀や OECD などの機関がそれぞれに 答えればよかったものであるが、暮らしが豊 定義している。しかし、それらは単なる理論 かになるにつれて価値観が多様化しために、 であり、理想論であり、絵空事のように私に 一概に答えることができなくなった。それが は思えた。できるだけ多くの主体の意見を取 果たして健康なのか、環境なのか、安全なの り入れ、多様なアクターを政策決定に介入さ か、何なのか・・・先進国の Good は慎重に、 せることはたしかにグッドなように思えるが、 多くの人々を巻き込んでゆっくり検討する必 その状態で機能する国家が想像もつかない。 要がある。意思決定も、迅速さよりも慎重さ そもそもグッドガバナンス、と言っている が要請されるのである。Governance とは本来 が、結局それは何のためのグッドなのか?そ 多くの主体を意思決定の過程に巻き込む統治 こから考え直そうと思った。戦争を防止する を言うものであるが、途上国の学生たちとの ためか?民主主義の擁護のためか?国民の権 議論を通して、彼らにとっての良き 利のためか?しかし元々ガバナンス論という Governance が必ずしもその形を取らないこと のは、先進国から援助を受けた途上国が、思 が明らかになった。 うように発展できないのは、途上国のガバナ ンスが悪く、援助が効率よく使われていない ためだ、という先進国の議論から誕生したも のである。 このことから私は、国家の「成長」のため のグッドガバナンスを考えようと思った。 「成 長」を第一の目標としたときに、ガバナンス のどの要件を学生たちが重視するのか?それ を見たいと思った。国家の発展段階に応じて、 その時々で何が重要かを考えるのは、理論よ りもむしろ実践に近く、政策決定のようなも のになるのではないか。グッドガバナンスの 定義は存在するが、たとえ国家がそれを目指 そうとしても、一挙にそれらを実現すること 3 . セ ッ シ ョ ン 責 任 者 総 括 はできない。理論を基に、自国の置かれてい る状況を鑑み、プライオリティをつけて政策 27 を実行していくのが政治であると思う。グロ 幅に短縮されてしまったのは残念でならない。 ーバル・リーダーにはまさしくそのような能 最後に全体の意見をまとめることができなか 力が求められているのではないだろうか? ったのは、プログラム運営全体における反省 最後に、フィナーレとなったこのワークシ ョップが、急遽のプログラム変更で時間が大 であり、来年に確実に生かしていかなければ ならない。 8.観光・交流 文責 杉原真帆 本年度の GNLF チュニジアカンファレンス では、主に観光面などをチュニジア側に任せ る形となったが、彼らの「チュニジアの魅力 を伝えたい」という意思と行動力によって、 想像していた以上に充実したプログラムとな った。とりわけ評判が高かったバルドー美術 館とスース博物館を中心に取り上げつつ、観 光・交流プログラムの総括をしようと思う。 チュニジアは全体として、中東的要素と南ヨ ーロッパ的要素が混合したような雰囲気を呈 バルドー美術館 しており、カンファレンスを通じて、荒涼と 美術館と博物館では、世界でも有名なチュ した大地、アジア的町並み、青い海とリゾー ニジアのモザイク画を鑑賞した。モザイク画 トなど、一つの国の中で多様な表情に触れる は、色とりどりの細かい四角い石を無数には ことが出来た。同時に、まさに世界史で習う め込んで作られた、大小様々な石板の様なも ような古代を彷彿とさせる遺跡にも恵まれて のであり、これら二つの美術館には、チュニ おり、古代歴史の中心地として持つその独特 ジア一帯の宮殿遺跡の壁画として残っていた な雰囲気によってどの参加者をも魅了してい モザイク画が数多く展示されていた。そのほ たように思う。それが顕著に表れたのが、バ とんどが AD1~4C に作られたものであるにも ルドー美術館、スース美術館、そしてカルタ 関わらず非常に保存状態が良く、また 2000 年 ゴ遺跡だろうか。 近く前の作品でありながらそのデザイン性の 高さには驚かされた。参加者は各々、このチ ュニジアの美術に見入っており、またチュニ ジアの学生が壁画の起源や修復の仕方などに ついて説明している姿も見受けられた。この 光景を見ていると、未知の土地に実際に赴き、 現地の人と交わりながらその文化を肌で感じ る経験というのは、後々までその国の印象な どを形作る貴重な情報になるように思われた。 28 への配慮を称賛していた。また露店が立ち並 ぶ道を抜けると見える景色には一同感動して いた。露店ではラクダ皮のカバンや民族楽器 など様々なものが売られていたが、チュニジ アの学生が丁寧に商品を解説してくれたほか、 一緒になって値切りを行う参加者がいたり、 楽器の音色にこだわる参加者がいたり、と、 各々がチュニジアの思い出をたくさん持って 帰ろうと躍起になっていた。 モザイク画 同じ日に訪問したカルタゴ遺跡も、その自 然と人工の美しい景色で参加者を歴史の中に 引きずり込んだようであった。誰もがカメラ を手放さず、どんなに撮っても撮り足りない といった様子だった。青い海と古代の遺跡の クリーム色のコントラストを見ていると、 「ア ラブの春」以来「中東イスラム圏」として強 く認識されるチュニジアという国が、事実地 中海にも面し、かつてヨーロッパと密接な関 係にあったことを実感することが出来た。 シディ・ブ・サイド カルタゴ遺跡 カンファレンス後半に行った伝統衣装披露 パーティーも、伝統的な踊りを交えたり伝統 その後露店での買い物も兼ねて訪れたシデ 菓子を配ったりと各々工夫を凝らしていた。 ィ・ブ・サイドでは、チュニジア独特の白と 気に入った衣装の交換なども行い、日本の浴 水色の建物を見ることが出来た。建築やデザ 衣はその着付け方法にも興味を持ってもらっ インなどに興味のある参加者はこの街並みを た。この企画は好評であっただけに、反省点 写真に収め、その色合いや、各家のデザイン 等を活かしてより一層の充実を来年度に向け 29 て図りたいと思っている。 子と一緒に回ったりすることで会話が広がり、 知らない間に仲が深まっている、ということ が多かったように思う。 GNLF の様な国際交流プログラムにおいて、 文化交流というのはもちろん学術的側面との 兼ね合いが大切ではあるものの、参加者間の 壁を簡単に取り払い、相手を個人として認識 できるようになることで、その後の学術的議 論においても一役買っていると感じた。そし て何よりも、「他国の人に自国の文化を魅力 的だと感じてもらうことの喜びは非常に大き 伝統衣装披露パーティー いのだ」とチュニジアの学生を見ていて感じ、 GNLF という機会を使って、「イメージすらな またこれはミクロなレベルでの文化交流に かった国」「なんとなくイメージの良くなか なるが、観光を通じて非常に有意義だと感じ った国」「ずっと興味があった国」などを自 たのは、バスでの長距離移動や美術館・遺跡 分の目で把握することは、国同士の関わりの めぐりにおける個人の会話である。同じ部屋 基礎として、正しい他者判断に繋がっていく の子と席を共にしたり、たまたま近くにいた ように思われた。 30 9.参加者の感想 ・セッションについて レクチャーの質、ディスカッションの流れをとっても、概して事前準備がしっかり行わ れていた印象を受けた。国境を越えて様々な文化を背負った人々が一堂に会し、一つの問 題に取り組んだことは、各国の背景を踏まえた多様な考えも聞けたため、非常に刺激的か つ有意義であった。今回のメインテーマである、ガバナンスに関しては、国家間の現制度 の類似点、相違点を学べるとともに、これからのガバナンスは、様々なアクターが各自の 役割を担っていくことで形成されていくという展望を深く理解できた。難易度や時間配分 に関しては、改善の余地があると思うが、今回のセッションも大変満足できるものであっ た。 ・観光、交流について 観光においては、美術館や遺跡巡りなど、チュニジアの文化を肌で感じさせる大変貴重 な経験となった。また、観光を一緒に回ったり、部屋を共有する中で、他国の参加者と各 文化について直接語り合い、お互いのバックグラウンドや置かれている立場も共有できた。 セッションで一つのテーマを共に学ぶこと以外に、このような形で各参加者と存分に交流 できることは、GNLF の誇れる部分だと感じる。ミニマムに見れば、観光の効率化やパーテ ィーの設備等、改善できる点もあったので、次回以降の会議に生かしてより質の高い文化 交流の場を作ってほしいと思う。 ・GNLF 全体について 会議全体を通して、グローバル・リーダーに求められているものが何か、自分なりに考 えを持つことができた。この会議で学び、感じたことは、自国に帰って家族や友人と共有 し、さらに自分の考えを深めていきたいと思う。本会議は終わってしまったが、Facebook などを通して、今回扱った問題を引き続き皆と考えていきたいし、個人的な繋がりも続け 31 ていきたいと思う。各国の同世代の人々との繋がりをさらに広げていくためにも、過去の 参加者が交流できる場に期待している。 10.海外講師の感想 ・運営について 各教授にリエゾンをつけることは事前打ち合わせの便宜的にも、また私自身が日本の文 化をより深くためにも非常に良かった。 全体のプログラムに関する話になるが、午後のセッションが長すぎる。これでは学生の 集中力が持たない。私の講義ではこのために生徒からの質問が少なかったように思える。 講義を連続させる場合は、一人ではなく複数の教授に講演してもらうか、一人の教授に数 日に分けて講演してもらうか、などの工夫をした方がよい。 ・セッションの事前準備について 講義を行う教授との連絡をもっと早いうちから行うべきだった。他の教授の講義内容と の重複のために内容を修正しなければならないこともあったのでセッションの横のつなが りも持たせた方がよいと思う。次回以降の本会議では運営側の希望と教授側のアイデアを もっと入念に刷り合わせたほうがよい。 ・セッションについて 全ての学生が政治を専攻しているわけではないので講義を行って知識を補う意義は非常 に大きいと思う。一方で、政治学の基本的な概念から始めなければならないため時間的制 約との兼ね合いから学生を人文学専攻者に絞ってもいいのではないかとも思う。 各セッションにディスカッションを取り入れ学生にアウトプットを行わせたのは非常に 良かった。しかし、ディスカッションと講義内容の関係性が薄いものも見受けられたので、 そこに関しては改善の余地がある。全てのアウトプットをディスカッションに頼るのでは なく、例えば、講師が学生にある課題を与えて競争させてみるなどしてみるなど、多様な アプローチ方法を考えてみてもいいだろう。 また、1 セッション 1 トピックにしないと論点が曖昧になりやすいと思う。 ・GNLF 全体について GNLF は世界中の学生が交流するための貴重な場だと思う。そして今回出来たつながりを 32 継続させていくためには Facebook のグループで議論を続ける必要がある。各々が興味深い テーマを挙げてみんなでそれについて議論を行えば知見も深まるだろう。 11.運営フィードバック ① 今年度の狙い ② 結果 ③ 課題と改善案 ・組織面 ~組織体制、理念・ミッション~ ・運営面 ~本部のマネジメント、本会議のマネジメント~ ・内容面 ~本会議プログラム内容~ ④ 総括 ⑤ 運営感想 ① <今年度の狙い> 今年度は「国際組織化元年」と銘打ち、初の海外開催を行った。昨年度第 1 回の開催を 本部である日本で行った我々にとって、理念である国際的なネットワークの構築の達成の ためには海外での本会議開催は必然の流れであった(と第 1 回本会議開催直後は考えてい た)。海外開催を行う為には開催国に運営委員会を設立し、日本本部と並行して開催に向 けて活動を行ってもらう必要がある。委員会には当該国の学生が参加して現地で開催に向 けての準備を行う。本会議の開催後も引き続き現地で GNLF に関連する活動(年度毎の参加 学生のリクルーティング、参加資金調達、勉強会や地域会議の開催など)をしてもらう。 それらの活動により GNLF への共同体意識を醸成し、世界各国の参加者が本会議参加後もな お継続した交流を続けていく… 簡潔に言えば海外開催を行う名目で海外委員会を順次設立し、委員会を拠点に海外の各 国の学生にも主体的に GNLF に関わってもらい、息の長い交流を続けていく。これが今年度 海外開催の狙いであった。 ② <結果> 33 良かった点: 海外開催が可能であることが証明されたこと(日本が団体理念・会議内容・ 開催形態を示せば海外の主導でもある程度開催可能であること。海外開催でも海外の学生 を始め海外教員、海外大使館、また日本の企業・財団・官公庁も協力していただけること。 海外開催でも各国の参加者が集まること。開催を希望する国も次々と現れたこと) 悪かった点: 開催中において日本本部が会議の主導的な立場をとることが出来なかった。 本会議の核である講義やディスカッション等の学習プログラムは日本本部が担当したのだ が、海外開催ということで観光等の他のプログラムとの調整不足、海外講師との連携不足 が起こり、思うようなプログラムを実行することが出来なかった。 ③ <課題と改善案> 以上を踏まえて2012年度の GNLF の課題と改善案を提示する。課題に対するアプロー チは3つ。組織体制、理念・ミッションに関わる組織面、事前準備、本会議中のマネジメ ントに関わる運営面、そして本会議のプログラム内容に関わる内容面の3つである。 【組織面】 組織面では海外開催で海外の運営委員会が発足したことで GNLF そのものの理念・ミッシ ョンの不明確性が露わになった。GNLF とは何を目指す団体か、どうあるべきなのかが海外 の運営委員はもちろん日本の運営委員にも浸透していなかったのである。発足2年目の若 い団体であり、そのような経験の無い学生達が規模の大きい学生会議を運営していく必要 に迫られていくうちに、理念の話よりも如何にして開催までこぎつけるかという話にばか り気をかけてしまっていた。それゆえメンバー全員で理念・ミッションの確立と共有を行 ってこなかったのである。これが今年度露わになった最大の課題であろう。 その課題を克服するために、私たちは本会議開催以降 OBOG 含む運営委員全員で意見を出 し合い、時間をかけ議論をしながら一つの理念・ミッションを策定している。2012年 12月24日現在未完成であるが、次年度の企画書及びパンフレットへの掲載を目指し目 下作成中である。また、GNLF の国際的な組織体制を対外的に明示するための国際規約も同 様に作成中である。 【運営面】 [事前準備におけるマネジメント] 今年度の事前準備におけるマネジメントでは週に一度行われる定例ミーティングの在り 方、実働組織の編成の在り方などが課題となった。定例ミーティングでは情報共有・進捗 報告を必ず行っていたのだが、これらに時間がかかりすぎていた。各運営委員の参加具合 にもばらつきがあった。意見者が限定されがちとなり全員から幅広く意見を吸い上げる仕 組みが整っていなかったのである。また組織編成は効率の向上を図るために[プログラム策 34 定][企業・団体渉外][大使館・相手国大学渉外]に分け縦割りの編成をとっていた。しかし 各担当のみでは解決できないタスクも数多く存在し、その際の部局間での協力に大きく手 間取ってしまった。それに関連して本会議大テーマに関する情報が上手く共有できなかっ たことがあり、運営委員の大テーマに関する予備知識の少なさが問題となった。 改善案としては、事前に情報集約を行い全員が確認する時間を設けることが挙げられる。 空いた時間は全体でのプログラム検討や学習の時間に利用する。全体でのプログラム検討 では事前に運営委員一人ひとりに意見を準備してもらった上で検討を行う。これらの方策 によりミーティングでの充実度の向上を目指す。また縦割りの組織編成については先ほど の事前の情報集約と全体でのプログラム検討の時間を利用して、部局間での連携がスムー ズに行える仕組みを構築する。縦割りの編成にしてまだ2年目(2011,2012)で あり、課題があるからとはいえ組織編成そのものを変更する時期ではないと私たちは考え る。組織の編成を変えるのではなく運用方法を変えることにより、効率的な組織運営を目 指していく。 [本会議におけるマネジメント] 本会議におけるマネジメントでは、日本の本部としてのプレゼンスの低さ、そして開催 国委員会との役割分担が課題となった。今年度はチュニジア開催であり、チュニジア委員 会と共催という形をとったわけであるが、土地勘もあり、母国語も使用できるチュニジア 委員会に会議の運営を依存する場面が多くみられた。また今年度は講義やディスカッショ ンといった学習プログラムは日本本部が受け持ち、観光は開催国が受け持ったのだが、そ れら以外のプログラム、例えばファッションショーや懇親会といった交流プログラムは宙 に浮いてしまい、会議中に準備したものの準備不足が目立つ結果となった。 改善案としては、コミュニケーション能力の一層の向上が挙げられる。異国の地でホス トとして参加者をもてなすには英語が話せることに留まらず、異国の文化を理解した上で の英語の運用が求められる。来年度は事前準備の際に英語学習や参加国の文化理解の時間 を設けることが必要になるだろう。また役割分担に関しては早期のプログラムの詳細確定 とひとつひとつの役割分担の明確化が挙げられる。 【内容面】 内容面では本会議全体としてのテーマに対する回答を示すことが出来なかったことが課 題であった。原因は、各講義をそれぞれ独立して分担させたため一貫性に欠けたという点 と、会全体を貫く課題を提示できなかったという点である。なぜそうなってしまったのか というと、海外講師による講義の打ち合わせの際に講義の細かい点まで運営委員が設定し たうえで講師にお願いすることが開催までの日程的に困難であったこと、プログラム局員 が講義ごとで担当を分担されており、一体的なプログラム作成が困難であったこと、海外 講師に内容をある程度丸投げしていたため講義、ディスカッション内容が過度に専門的で あったことが挙げられる。 35 改善案としては、海外講師は大テーマに関する講義に限定せず、総合セッションで自由 な講義を行ってもらう。ディスカッションは専門的すぎる内容を取り扱わず、学部の大学 生でも充実した議論が行えるような内容にする。例えば教育など、学部生にとって実感が 湧きやすいテーマでディスカッションを行う。そしてプログラムはプログラム局が主導す るも本部運営委員全体から意見を求め、練り上げていくことが考えられる。 ④ <総括> 今年度の活動を通じて見えてきたものは、活動を支える理念・ミッションの重要性であ る。第2回にして海外開催を行った私たちであるが、海外開催によって露わになったのは 皮肉にも GNLF が組織として未だ十分に確立されていないという事実であった。GNLF はどの ような目的にフォーカスして運営していくのか、どういった活動をすることで目的を達成 していくのか、国際的にどのような組織体制であるのか・・・2年間組織として活動して きたにも関わらずこのような組織の柱となる点が疎かになっていたのは非常に恥ずかしい 限りであるが、逆を言えば今年度海外で本会議を開催しなければ見えなかった点であるこ とは疑いようのない事実である。海外開催は初の試みであり、初の会議開催であった昨年 度に続いて「開催」を目的にした活動が2年続いていた。それにより理念の在り方につい て考える時間が作れなかったという面は否めなかったと感じている。いずれにせよ今年度 は前年度に引き続き、GNLF の黎明期であった。GNLF は何をすべきで何をすべきでないのか、 どのような方向性に舵を取るべきかについて考え、悩んだ年であった。 昨年度(GNLF2011)は「やることが見えた年」であった。そして今年度は(GNLF2 012)は「課題が見えた年」であった。来年度は再び日本開催を予定している。年明け には目下策定中の GNLF の新しい理念・ミッション、国際規約も完成し、日本と海外で開催 した経験を活かして会議内容の充実も図る。それら制度面・内容面の両方で次年度 GNLF2 013が「団体として確立された年」になることが次年度の目標であり、そうなる為の礎 を準備したことが今年度 GNLF2012 の意義となるであろう。 また、見えてきたものは課題ばかりではない。参加学生や講師の感想では「本年度会議 は意義深いものであった。今後も関わっていきたい」という声が多く寄せられた。このよ うな声をいただけたことは運営として非常に嬉しい限りである。反省点が多く見えた本会 議であったが、参加者が満足する場を提供できた点で大成功と言えるのではないか。次年 度も引き続きそのような会議を運営していくことを目指していきたい。 ⑤ <運営の感想> 36 ・GNLF は設立されてまだ二年目の団体だ。ビジョンはあっても、まだ先例となるものが 少なく、あらゆる活動におけるノウハウも乏しい。また、本部のメンバーは約 15 名と少数。 何をするにしてもその都度一人ひとりが熟考し、メンバー間で議論していく必要があった。 それに加え本年度のチュニジア本会議は、当団体として初となる海外開催。先行き不透明 な状況の下での活動を強いられた。予算、参加者、その他様々な不確定要素があったが、 一番の懸念は「チュニジア側の運営状況」だったと言えるだろう。チュニジア委員会にと って、会議を運営するのは当然これが初めてだ。資金集めや、宿泊先・観光先の決定など、 すべてが順調というわけには行っていない様子だった。また、昨年度の参加者だった者を 除いて直接に日本運営側との面識はなかった。彼らとのコミュニケーションは、メールや Skype 等の SNS を通じてのみ。この条件下で意思疎通も十分とれ、会議成功のためのパート ナーとして信頼関係を築き上げることができた、とは正直のところ言えなかった。チュニ ジアでの移動手段や宿泊先は確保されているだろうか、会議室はどうか、タイムスケジュ ールは適切か。挙げ出すとキリがないほど心配だった。しかし、会期は刻一刻と近づいて くる。その時々に持てる情報を信頼しながら、決断し、準備を進めた。 こうした取り組みが功を奏したのか、心配が単なる杞憂だったのか。いざチュニジアに 乗り込んでみると、チュニジア委員会はこちらが心配していたのがバカらしく思えるほど、 しっかりと準備をして日本運営メンバーを出迎えてくれた。むしろ彼らの頑張りに比べて 自分は運営としてあまり貢献もできず、恥ずかしいくらいだった。今年度の本会議を開催 することができたのも、間違いなく彼らの存在あってのことだ。本当に感謝している。そ うした杞憂と安堵を経て、会議は幕を開けた。 チュニジアでは右も左も分からない私たちは、多分にチュニジア委員会に助けられなが らも、彼らとともに会議を運営していった。本年度の本会議は、会議開催というハードル を越えるだけで満足せず、プログラムの内容にこだわろう、中身の濃い会議にしよう、そ うした目標があった。実際は、スケジュールの関係もあり、会全体といてのまとめの時間 がうまくとれなかったなど、反省すべき点も多々あった。ただ、各国から招いた講師によ るレクチャーはそれぞれ個性的で興味深いものであったし、ディスカッションにおいて各 国の学生間で意見し合うこともできた。セッションに加えて、観光・交流の機会も充実し ていた。この点、会全体としては成功したのではと思う。こうして特に大きな問題もなく、 会議は終了するかに見えた。 しかし、開催5日目の夜、想定外の展開が待ち受けていた。チュニジア委員会と、来年 度以降の活動方針についてミーティングをしていたのだが、チュニジア側と日本側とで、 GNLF としての組織体制や活動内容に対する見解が真っ二つに分かれてしまったのだ。いや、 真っ二つとは言えなかった。なぜなら日本側メンバー間でも、そうした事項に対するコン センサスがとれていなかったからだ。これから GNLF はどこへ向かうべきか、チュニジア側 とはどういう役割分担をしてゆくのか、それは果たして GNLF の理念に沿うのか、夜を徹し て議論した。今振り返れば、少々力み過ぎていた感もあるが、それはそれは白熱した議論 37 だった。上記の問題はいずれも GNLF の将来に大きく影響してくるものだ。一晩の話し合い で答えを出せるようなものではなかったかもしれない。しかし日本側はそこで問題を先送 りにせず、そのとき出しうる最善解を出したのだった。もっとも、ここで下した決断が「正 しい」ものであったかはわからないが、この決断によって GNLF は組織として前進すること ができた。 帰国後、国際規約の作成に取りかかり、また、理念について話し合いをするなど、今後 の GNLF のあり方を再度検討している。本年度の本会議は、チュニジア側の運営状況をはじ めとする不確定要素を抱えながらも決断を下し続けることで、開催が実現した。また、会 議開催中も、今後の GNLF のあり方という大きな問題に対してその時の最善解を出したこと で、GNLF は前進することができた。たとえ答えることが難しい問題であっても、「その時 の答え」を出してゆくことで、はじめて前進することができる。それは組織であろうと人 であろうと同じではないだろうか。今年の春 GNLF に加わった私にとって、この本会議は最 初で最後であった。この数ヶ月、様々な体験を通して多くのことを学んだ。上で書いたこ とはそのごく一部にすぎない。 そのような機会を与えてくれたかけがえのない GNLF の仲間たちに感謝するとともに、多 大なご支援を下さった関係者の方々にお礼を申し上げ、結びとしたい。 ・今振り返ってみると、思いもしなかった地味な思い出が目下、GNLF に対する私の印象 の大きなウェートを占めている。それは「ルールの整備」であり、具体的には GNLF の国際 規約の整備である。もちろん、チュニジアに実際に赴き、自分が幾度となく連絡を取り合 って招待にまでこぎつけた各国の学生や教授と対面し、思う存分話すことが出来たのは、 非常に特異で貴重な体験だったのだが、これはもうおそらく相対的な意外性の度合いの問 題だろう。ルールの整備というのは私にとって未踏の領域であり、かつ初めて、 “法”と 言われるものの意義が実感として把握されていく過程を経験したのだった。 今回のカンファレンスは初の海外開催だった。チュニジア側と Skype とメールだけでや り取りをし、多くの問題と不安が消えず仕舞いだったが、当のカンファレンスは想像以上 に円滑に進んだ。チュニジア委員会の働きはこちらの予想をはるかに超えていて、個人的 には嬉しさ頼もしさ 9 割、拍子抜け 1 割、といったところだったろうか。 しかし非常に重要な問題が、一つ表出した。それは GNLF の在り方に関する日本側とチュ ニジア側の認識の違いであり、昨年から現在に至るまで、共通理解を図っておけなかった ことに起因した。これを多少の痛みと共に解決しないことには、以降の GNLF の活動が至る 所で揺らいでしまう可能性が大きかった。何より私たち日本メンバー自身、GNLF という組 織の在り方・活動方針に確固たる共通理解を持てていなかった。 カンファレンス中に組織の前提や理念を大まかに明確化し、チュニジア側とも話し合っ た。帰国後、具体的な国際規約作りに着手した。大学 1~3 年生が作ることのできる規約な 38 どたかが知れていると言えばそれまでだが、それでも、項目の分類方法やレイヤーの揃え 方、内容漏れの確認、言葉の使用方法などを考えていく作業に頭をフル回転させ、より相 応しい形にするために議論した。これが一つの組織の基本方針を定め、日本だけでなく様々 な国の人々の目にも触れる(つまりは納得してもらえるものでなければならない)と考え れば、細かい点も適当に放置できないのは当然だった。僭越ながら、「条約を定める時も、 偉い人々がこうして試行錯誤しながら一生懸命考えるのなのかもしれない」などと、思っ たりもした。私の中に小さな意識変革が起こったのはそんな中でであった。 今まで属した組織にも規約・規則はあり、第一に学校という組織がその最たるものだ。 そうしたルールを、私は一度たりとも「大切なものだ」という実感と共に読んだことが無 いように思う。それらより幾分か権威的に見える国家の法律にしても、どこか自分の日常 生活とは乖離した、「別次元に存在する面倒くさいもの」と見做してきた。 どうしてルールはあるのか。 これが今回身を以て知ったことだ。ルールは必ずしも、縛るためだけにあるものではな い。「共通理解」として定めておくことで、認識のズレを当事者同士が知らぬまま、物事 が進行してしまうことを防ぐ。それによって、問題が必要以上に肥大化してしまうのを防 ぐ。無用な対立を防ぐ。 別に世の中すべてのルールが、全神経を傾けて意識しなければならないというわけでは ない。けれども、人間が同じ思考回路を持てない以上、「分かっていると思ったのに!」 に端を発する問題は潜在的に存在する。ルール内容自体に多少反発はあっても、それが前 提として共有されているだけ良い。何も定まっていないより、既存のものを修正できる方 がずっと良い。 以上のような考えはまだまだ未熟なのだろうが、生まれたばかりの、しかも「暗黙の了 解」の通じない他国の人々と関わる組織に属していたからこそ、体験できた作業だと思う。 国際交流系学生団体の氾濫する今、その経験から引き出せる感想が似通う中で、自分が想 像していたのとは 180 度も違う感想を得られたことは、密かな満足感を私にもたらした *なお、今年度の運営メンバーの所感は全てブログに掲載しておりますのでもしよろしけ ればご覧ください。 URL http://ameblo.jp/gnlf/ 39 12.会計報告 40 グローバル・ネクストリーダーズフォーラム 2012 チュニジア委員会決算報告 科目 収入の部 合計 備考 (単位:ディナール) 2012 月 9 月 13 日(50 万円) 拠 日本委員会 出 2012 年 9 月 24 日(70 万円) 日本委員会 チュニジア高等教 協 賛 育科学研究省 スース大学 1500 ISSATS 41 18833 All Inclusive(食費等全て込み) 2500 バス(空港―宿泊先)・他 外食費 2880 開会式(軽食)・チュニス観光(昼食)・他 観光費 1505 Zahra City 観光 通信費 1120 携帯電話レンタル 印刷費 1500 書類 雑費 2650 名札・弾幕・T シャツ・パンフレット・他 収支差額 (A)-(B) 31721.09 交通費 支出合計 (B) 5000 Research 2000 Embassy of the Netherlands in Tunisia 滞在費 Ministry of Higher Education and Scientific ンダ王国大使館 支出の部 用 13457.15 交換レート:0.0192245 駐チュニジアオラ 収入合計 (A) 費 9763.94 交換レート:0.0195278 30988 733.09 13.メディア掲載 【新聞】 ・ 読売新聞 (2012 年 5 月 4 日・11 面) 「大学の人材輩出」 ・ 民間外交推進協会機関紙 6 月号 (2012 年 6 月 1 日・1 面) 「グローバル・ネクストリーダーズフォーラム 国際学生会議開催を支援」 ・ 読売新聞 (2012 年 7 月 13 日・24面) 「次世代リーダーのあり方、チュニジアで国際会議」 ・ 読売新聞 (2012 年 12 月 13 日・23面) 「7 か国の学生が国際会議 東京で報告会」 ・ The Japan Times (Sunday December 23, 2012) “TIMES GALLERY” 【ウェブサイト】 ・ 在日南アフリカ商工会議所(SACCJ)(2012 年 5 月 25 日) 「グローバル・ネクストリーダーズ・フォーラム 2011」 Available online at http://www.saccjapan.jp/news.php?ID=32&La=J ・ Embassy of Republic Kenya in Japan (4th July 2012) “KENYA TO PARTICIPATE IN THE GLOBAL NEXT LEADERS FORUM – GNLF2012 INTERNATIONAL CONFERENCE” Available online at http://www.kenyarep-jp.com/news/12/120704_e.html 42 14.連絡先 組織体制は2012年12月1日をもちまして、役員の改選等を行い2013年の組織体 制に移行いたしました。 グローバル・ネクストリーダーズフォーラム 〒113-0033 東京都文京区本郷 4-1-6 アトラスビル 6 階 IBIC 本郷内 公式ホームページ http://gnlf-web.p2.bindsite.jp/ メールアドレス [email protected] [報告書、2012年本会議に関するお問い合わせ] 2012事務局長 南部旭彦 [email protected] [新体制、2013年本会議に関するお問い合わせ] 2013会頭 向山直佑 [email protected] 以上 最終改訂日 2012年12月24日 43