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資料1 ヘッジファンドの変遷と金融システムに及ぼす影響

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資料1 ヘッジファンドの変遷と金融システムに及ぼす影響
資料1
∼ヘッジファンド研究会∼
ヘッジファンドの変遷と
金融システムに及ぼす影響
日本銀行 金融機構局
大手金融グループ担当総括
清水 季子
本日の講演内容
Ⅰ. ヘッジファンドについて
Ⅱ. サブプライム住宅ローン問題について
1
Ⅰ. ヘッジファンドについて
1. ヘッジファンドの特徴
2. ヘッジファンドの変遷
3. 国際金融市場の効率性とリスク:ヘッジファンドが
もたらしたもの
4. 金融当局の役割
5. 日本におけるヘッジファンド
6. アジアのヘッジファンド業界
2
1. ヘッジファンドの特徴
ヘッジファンドの仕組み
投資家
投資家
投資
投資マネージャー
基本的な構成要素
投資家
ヘッジファンド
取引執行・決済
有価証券・資金貸付
取引管理
純資産額計算
投資資金が蓄積される法的「器」
(=ビークル)と、ファンドから委託を
受け投資判断を行うマネージャー。
プライムブローカー
アドミニストレーター
投資指示
投資
世界各国の
金融市場
東京
株式
NY
債券
為替
・・・
デリバティブ
通常ビークルを指すが、投資マネー
ジャーを含めて用いることもある。
カストディアン
資産保管
ロンドン
「ヘッジファンド」
・・・
ビークルの位置付け
米国投資家を対象とするファンドは
通常、リミテッド・パートナーシップ形
式で米国に置かれる。その他のファ
ンドは、ケイマン等のタックス・ヘイ
ブンに置かれる場合が多く、投資法
人、信託、リミテッド・パートナーシッ
プ等の法形式を採る。
3
1. ヘッジファンドの特徴
ヘッジファンドの特徴:他の市場参加者との比較
①投資戦略の自由度の高さ
−通常の投資信託(ミューチュアルファンド)などと比較して、金融派生商品の利用等によるショート
ポジション構築やレバレッジの活用を弾力的に行うことができる
−最低投資期間の設定や解約期間への制約により、資金を一定期間自由に投資することが可能
②市場環境によらない収益の追求
一般にヘッジファンドは、株式・債券等の市場環境によらず一定水準以上の収益獲得を目指す
(投資家もそれを期待している)と言われている
4
1. ヘッジファンドの特徴
ヘッジファンドの特徴:他の市場参加者との比較(続き)
③業績連動型の報酬体系
ヘッジファンドの投資判断を行う投資マネージャーの報酬体系は、典型的にはファンド純資産の
2.0%程度の固定の運用手数料に加え、ファンドの純利益の20%程度の業績連動型報酬を
受け取る仕組みになっている。
→ヘッジファンドには多様な報酬体系が導入されている。その効果について最近の研究成果に
よれば、リスクテイクを増幅させる可能性と抑制させる可能性がそれぞれ指摘されており、必ず
しも最適な報酬体系を見出すには至っていない (馬場・郷古〔2006〕 “Survival Analysis of
Hedge Funds” 日本銀行ワーキングペーパーシリーズ 等)。
→また、投資マネージャーは自己資金をファンドに出資しているケースが多く、過剰なリスク
テイクが抑制される仕組みとなっている。
5
1. ヘッジファンドの特徴
ヘッジファンドの特徴:破綻リスク
データベースへの報告を停止したファンドの割合
単独ファンド
ファンド・オブ・ヘッジファンズ
16%
16%
14%
14%
12%
うち清算ファンド割合
10%
10%
8%
8%
6%
6%
4%
4%
2%
2%
0%
0%
1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004
うち清算ファンド割合
12%
1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004
(注)清算等による運用の停止や他ファンドによる買収等により、Lipper Tassデータベースからのコンタクトが不可能になったファンドの比率。
(出所)Tremont Capital Management
ヘッジファンドは、「優勝劣敗が速やかに決する」ビジネス。
例:年初に存在していた単独ファンドの5%が年末までには清算(2004年)
⇒投資家は、特定のヘッジファンドへの集中投資を回避
⇒取引先金融機関は、リスク管理上の対策を実施
・個々のファンドへのエクスポージャーを時価評価した上で、ネッティング後の評価を行う
・高流動性資産を担保として差し入れさせ、常にエクスポージャーをカバー
6
2. ヘッジファンドの変遷
①1990年代前半
特定のマクロシナリオに賭け、巨額の資金を投じて高収益を狙う投資主体との位置付け:
ジョージ・ソロスのクオンタムファンド等が有名
②1990年代後半
転機としてのLTCM巨額損失(1998年):高水準のレバレッジ活用により各金融市場で裁定
ポジションを構築していたが、1998年8月のルーブル切り下げ・対外債務支払い猶予宣言を
契機とした「質への逃避」による流動性枯渇により経営危機に瀕した
→最終的にはLTCMへの大口与信先(14先)による協調融資(36億ドル)が行われた
③2000年代
多様な投資手法を駆使して、国際金融市場において幅広くリスクを分散しつつ広範な市場に
おいて投資活動を行う主体となっている
7
2. ヘッジファンドの変遷
アジア通貨危機、LTCM危機とヘッジファンド
1997年7月∼
タイ・バーツの切り下げ後、韓国、香港、台湾など東アジア諸国、および、南米の新興市場に
混乱が伝播。通貨危機において、ヘッジファンドが、市場や経済に不安定化をもたらしたとの
見方が台頭。
1998年8月
ロシアのルーブル切り下げと対外債務支払猶予宣言を契機とした「質への逃避」が生じた結
果、市場流動性が枯渇。高水準のレバレッジを有するLTCMが経営危機に直面した。
仮に同ファンドが破綻した場合、取引相手が債権保全のため、無秩序かつ一斉にポジション
の清算や担保売却などに動くことで、市場環境の悪化に拍車がかかることが懸念されたが、
NY連銀のイニシアチブの下、LTCMへの大口与信先(14先)による協調融資(36億ドル)が
行われ、LTCMは破綻を免れた。
1999∼2000年
通貨危機やLTCM危機の教訓として、米国当局・国際機関等により多くの報告書が発表された。
<報告書の概要>
・ヘッジファンドの取引先金融機関へのモニタリングを通じ、レバレッジの過剰積み上げを防ぐべき
・ヘッジファンド業界に対し、透明性の向上を促すべき
・上記の間接的取組が奏功しない場合には、免許制などによる直接的規制の導入を検討すべき
8
2. ヘッジファンドの変遷
運用資産残高の推移
60,000
(百万ドル)
1,200,000
純資産額(右目盛)
資金フロー(左目盛)
50,000
1,000,000
40,000
800,000
30,000
600,000
20,000
400,000
10,000
200,000
0
機関投資家の投資拡大
2000年代に入り、株式・債券等
との相関の低さや絶対収益型の
投資手法に着目した機関投資
家(年金基金・保険会社等)によ
る投資拡大がみられ、運用資産
残高は急速に増加
0
-10,000
00/4Q
01/1Q
-200,000
4Q02/1Q
4Q03/1Q
4Q 04/1Q
4Q 05/1Q 05/4Q
06/1Q 06/4Q
(注)Lipper TASS Databaseに登録のあるファンド。データベースに登録のない
ファンドも含めた運用資産残高推定値は1.49兆ドル(06/12月末)。
(出所)Tremont Capital Management
9
2. ヘッジファンドの変遷
投資戦略の内訳 (戦略別運用資産残高比率:06/12月末)
D・ショート
バイアス
マルチ
ストラテジー
CB
アービトラージ
株式
ロングショート
マネージド
フューチャーズ
株式マーケット
ニュートラル
債券
アービトラージ
エマージング
市場
グローバル
マクロ
イベント
ドリブン
◇最も残高比率が高いのは株式ロングショート戦略。
特に日本を含むアジアにおいては大半のファンドが
同戦略を採用。
− A社株式の購入とB社株式の空売り 等
◇次いで残高比率が高いのがイベント・ドリブン戦略
− 合併の公表を受けた被買収会社株式の購入と
買収会社株式の空売り 等
◇1990年代後半に残高の3割を占めたグローバル
マクロ戦略の比率は低下
− 1990年代のクオンタム・ファンド(ジョージ・ソロ
ス)、タイガー・ファンド(ジュリアン・ロバートソン)
等が有名
◇かわって残高比率上昇が顕著な戦略は、エマージ
ング市場戦略、マルチストラテジー等
(出所)Tremont Capital Management
10
2. ヘッジファンドの変遷
リスク/リターンの推移
40
(%)
収益率(年率換算)
リスク/リターンの変化
30
ヘッジファンド全体としてみると、
LTCM危機が起こった90年代
20
後半と比較して、リスクを抑制し
ながら収益確保を目指すミドル
リスク・ミドルリターン型の運用
主体に変化
10
0
標準偏差(年率換算)
-10
96/1
98/1
00/1
02/1
04/1
06/1
月
(注)12ケ月後方移動平均。直近は07/1月
(出所)Credit Suisse/Tremont
11
2. ヘッジファンドの変遷
伝統的資産との比較:収益率
ヘッジファンドと株式の収益率比較
60%
60%
50%
40%
30%
50%
国内株式(TOPIX)
ヘッジファンド
ヘッジファンド
30%
20%
20%
10%
10%
0%
0%
-10%
-10%
-20%
-20%
-30%
米国株式(S&P500)
40%
-30%
1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004
1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004
ヘッジファンドと債券の収益率比較
30%
30%
25%
国内債券(野村BPI総合)
25%
米国債券(シティ世界BIG)
20%
ヘッジファンド
20%
ヘッジファンド
15%
15%
10%
10%
5%
5%
0%
0%
-5%
-5%
1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004
1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004
(出所)CSFB/Tremont、Bloomberg
12
2. ヘッジファンドの変遷
伝統的資産との比較:ボラティリティ
ヘッジファンドと株式のボラティリティ比較
8%
8%
7%
国内株式(TOPIX)
7%
6%
ヘッジファンド
6%
5%
5%
4%
4%
3%
3%
2%
2%
1%
1%
0%
米国株式(S&P500)
ヘッジファンド
0%
1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004
1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004
ヘッジファンドと債券のボラティリティ比較
4%
4%
米国債券(シティ世界BIG)
国内債券(野村BPI総合)
3%
ヘッジファンド
ヘッジファンド
3%
2%
2%
1%
1%
0%
0%
1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004
1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004
(出所)CSFB/Tremont、Bloomberg
13
2. ヘッジファンドの変遷(最近の状況)
近年観察されているヘッジファンド投資行動の変化
①収益特性の変化:市場リスクファクターへの収益依存度の高まり
投資資金流入が継続する一方、金融市場における裁定機会には限りがあることから、各ヘッジ
ファンドが収益源の多様化を図り、市場の方向性をとらえた機動的な投資により収益獲得を
目指す動きが拡大した可能性
②投資対象市場の拡大
リスク分散や期待収益率の高さといった観点から、伝統的市場以外の市場(例えば新興国
市場、商品先物市場)へ投資を行うヘッジファンドが増加
③投資行動の均質化
戦略が異なるヘッジファンドの間で収益率の相関が高まる傾向
14
2. ヘッジファンドの変遷(最近の状況)
収益特性の変化
ヘッジファンドと伝統的資産との相関係数
国内株式
0 .3 2
ヘッジファンド
0 .1 2
CBアービトラージ
デディケイテッド・ショート・バイアス
- 0 .5 0
0 .2 0
株 式 マーケット・ニュートラル
0 .4 7
イ ヘ ゙ ン ト ・ ド リ フ ゙ ン
0 .2 0
債 券 アービトラージ
0 .0 4
グローバル・マクロ
0 .3 9
株 式 ロング・ ショート
- 0 .1 9
マネージド・フューチャーズ
フ ァ ン ト ゙・ オ フ ゙・ヘ ッ シ ゙フ ァ ン ス ゙
0 .5 1
米国株式
0 .4 8
0 .1 1
- 0 .7 8
0 .4 6
0 .5 5
- 0 .0 3
0 .1 8
0 .5 7
- 0 .2 1
0 .7 2
国内債券
- 0 .1 3
0 .0 7
0 .2 2
0 .0 6
- 0 .1 4
- 0 .0 9
- 0 .0 6
- 0 .1 7
0 .1 2
- 0 .1 4
米国債券
0 .1 0
0 .0 6
0 .0 9
0 .1 7
- 0 .1 0
0 .0 6
0 .2 0
0 .0 5
0 .4 3
- 0 .0 5
(注1)相関係数は、1997年1月から2005年3月までの月次収益率を使用して計算。ただし、ファンド・
オブ・ヘッジファンズとの相関係数については、2004年12月まで。
(注2)国内株式はTOPIX、米国株式はS&P500、国内債券は野村BPI(総合)、米国債券はシティグ
ループ米国BIG債券インデックスを使用。ヘッジファンドはCSFB/Tremont、ファンド・オブ・ヘッジ
ファンズはHedge Fund Research社作成の指数を使用。
(出所)Bloomberg、CSFB/Tremont、Hedge Fund Research
ヘッジファンド戦略インデックスの株式インデックスに
対する月次収益率の連動性(β)
2002∼03
2003∼04
2004∼05
2005∼06
エマージング市場
0.28
0.40
0.36
1.05
株式ロングショート
0.11
0.39
0.55
0.80
イベントドリブン
0.07
0.14
0.35
0.38
グローバルマクロ
0.04
0.04
0.17
0.38
インデックス全体
0.05
0.22
0.36
0.51
(注)9月から翌年8月(12ケ月間)の月次データを元に算出
(出所)Tremont Capital Management、Bloomberg、日本銀行
主要ヘッジファンド戦略インデッ
クスのMSCI世界株式インデッ
クスに対する収益率の連動性
は上昇傾向にある。
背景には株式市場の方向性
(上昇期待)に着目した投資が
拡大している可能性。
15
2. ヘッジファンドの変遷(最近の状況)
投資対象市場の拡大
運用資産残高推移 (エマージング市場・マネージドフューチャーズ)
(10億ドル)
120
2003年以降、エマージング市場戦略、
100
マネージドフューチャーズ戦略を採用する
ヘッジファンドに対する急速な資金流入が
みられる
80
マネージド
フューチャーズ戦略
60
40
20
エマージング市場戦略
0
01/1Q
02/1Q
03/1Q
04/1Q
05/1Q
※マネージドフューチャーズ戦略:各国の先物
市場(株式・金利・商品・通貨等)で投資を行う。
テクニカル指標等を基にシステマティックに取引
を行うファンドが多く含まれる。
06/1Q
(出所)Tremont Capital Management
16
2. ヘッジファンドの変遷(最近の状況)
投資行動の均質化
ヘッジファンド戦略間の収益率相関係数推移
1.0
残高上位4戦略の月次収益率の相関係数
(平均値)は0.8程度まで上昇している
0.8
0.6
→ヘッジファンドの投資戦略、投資行動が
徐々に均質化している可能性
0.4
0.2
0.0
01/1
02/5
03/9
05/1
06/5
月
(注)12ケ月後方移動平均。株式ロングショート、イベントドリブン、
グローバルマクロ、エマージング市場各戦略間の相関係数の平均値
(出所)Credit Suisse/Tremont、日本銀行
17
3. 国際金融市場の効率性とリスク:
ヘッジファンドがもたらしたもの
金融市場におけるヘッジファンドの貢献
①金融市場への市場流動性供給
投資自由度の高さにより、他の市場参加者が取りにくいポジションを構築したり、市場参加者の
少ない市場へ参入することが可能であり、市場流動性の向上に寄与
②価格発見機能を通じた市場効率性向上
投資対象とする市場における銘柄間のミスプライシングに注目した取引や、各市場間での裁定
取引により、価格の適正水準への収斂をうながし、市場の効率性向上に寄与
③市場機能向上の促進
多様な投資戦略を駆使し、頻繁にトレードを行うタイプのヘッジファンドは、低コストで早く正確な
取引を行い得る市場を選好
⇒そのようなニーズに応えるため、取引所等における市場インフラの整備が促進される
18
3. 国際金融市場の効率性とリスク:
ヘッジファンドがもたらしたもの
ヘッジファンドと国際金融市場
ヘッジファンドは国際金融市場において市場流動性供給や効率性向上といった重要な
貢献をしている
一方で、①市場の方向性に賭けた取引や、②流動性の低い市場への投資、③多くの
ヘッジファンドによる類似の投資戦略・手法の採用、等により、その投資行動が特定の
市場/取引に集中する場合には、ストレス時の市場価格変動を増幅する可能性も否定
できない。
※ヘッジファンドは他の投資家に比べ取引頻度が高いことやレバレッジを活用するケースが多いこと
に加え、運用資産残高も急速に拡大していることから、ヘッジファンド全体としての国際金融市場に
対する影響力は高まっている可能性がある
19
3. 国際金融市場の効率性とリスク:
ヘッジファンドがもたらしたもの
ヘッジファンドに関連するリスク
①大型ヘッジファンドが破綻した場合の取引金融機関への直接的な損失波及
LTCMの巨額損失を契機とした金融機関のリスク管理高度化や、ヘッジファンド自身のリスク管理
高度化により低下しているとみられる
しかしながら、一部ファンドへの資金の集中等によりファンドの大型化が進むなど、破綻規模自体は
拡大している可能性があり、引き続き注意が必要
ファンドの大型化によりLTCM型の問題解決へのアプローチ(取引金融機関による事後的な協調融資)
は従来以上に難しくなっている可能性があり、取引金融機関や投資家を通じた市場規律(後述)により
リスクを抑制していく必要がある
20
3. 国際金融市場の効率性とリスク:
ヘッジファンドがもたらしたもの
ヘッジファンドに関連するリスク(続き)
②ファンドのポジション解消に伴う市場価格変動増幅や市場間でのショックの伝播
比較的小規模な市場での、複数のファンドによる短期間での連鎖的なポジション解消に伴う価格下落
や、複数の市場に対してエクスポージャーを有するファンドの、一部の市場での損失をカバーするため
の他市場での資産売却によるショックの伝播
⇒従来以上に顕著になってきている可能性があり注意が必要(深刻な事態には至らなかったものの、
2006年5∼6月にかけてみられた世界的なリスク資産の価格同時下落(次ページ)は、ヘッジファンド
等による市場横断的な投資活動がショックの伝播をもたらし得ることを示すエピソード)
取引金融機関や投資家を通じた市場規律に加え、金融当局による、国際金融市場全体に対する
リスクのモニタリングと適切な対応が重要
21
3. 国際金融市場の効率性とリスク:
ヘッジファンドがもたらしたもの
2006年5∼6月のエピソード(グローバル・リスク・リダクション)
130
(2006/1/2=100)
昨年5月から6月にかけて、世界各国
120
の株式市場(先進国、新興国)、および
コモディティ市場においてほぼ同時期
に価格の急速な下落が観察された。
110
100
90
80
70
06/1
ヘッジファンド等による市場横断的な
投資が拡大する中、価格下落を受けて
その投資ポジションが急激に巻き戻さ
れたことが背景のひとつと考えられる
MSCI世界株式
MSCIエマージング株式
ロイターCRB総合コモディティ
06/3
06/5
06/7
06/9
月
(出所)Bloomberg
22
3. 国際金融市場の効率性とリスク:
ヘッジファンドがもたらしたもの
投資行動変化の影響
ポジションの集中、複数市場での同時価格下落の可能性
例.Amaranthの天然ガス市場における巨額損失(昨年9月)
市場規模と比べて大きなポジション
ディレクショナル・ベット
相場の予想外の変動による巨額損失
しかしながら
取引先金融機関経由での損失の連鎖
価格下落の他市場への伝播
は見られなかった
23
4. 金融当局の役割
国際的な議論
国際的な議論の方向性としては、ヘッジファンドに対する直接的な規制ではなく、取引金融
機関や投資家の監視(市場規律)により金融市場全体としてのリスクを抑制することが有効
かつ現実的であるとの意見に収斂しつつある
中央銀行を含む金融当局に求められる役割としては、市場参加者による市場規律を補完
する形で、国際金融システム全体としてのリスクをモニタリングすること
取引金融機関・
投資家
ヘッジファンド
中央銀行を含む
金融当局
個々のヘッジファンドの投資行動
国際金融システム全体としてのリスク
個々のヘッジファンドのポジションなど
の情報については、取引金融機関や
投資家がそれぞれのリスク管理の目
的等に応じて取得することが有効
市場参加者全体としてのポジションの
動向や市場流動性の状況については
中央銀行等の金融当局がモニタリング
し、必要に応じて機動的に対応するこ
とが求められる
24
4. 金融当局の役割
Financial Stability Forum報告書
2007年5月に公表されたFinancial Stability Forumによる報告書(2000年4月に公表
された報告書のフォローアップ)では、ヘッジファンド等に関連する国際金融市場における
リスクを抑制するための方策として、以下の5点が提言された。
規制当局
①主要金融機関がヘッジファンド等に対するリスク管理を継続的に強化するための方策
を講じる
②主要金融機関が市場流動性の低下に対する抵抗力を向上させるべく、各金融機関と
協力する
③ヘッジファンド等に対する主要金融機関のリスク量情報収集の有効性を検討する
25
4. 金融当局の役割
Financial Stability Forum報告書(続き)
取引金融機関・投資家
④投資資産の評価についての正確な情報の取得やリスク情報の開示を含め、ヘッジファンド
等に対する市場規律が有効に機能するように行動すべき
ヘッジファンド業界
⑤現状の市場慣行が当局や民間の期待に照らし適切なものであるか常に検討し、より
優れたものとするよう努めるべき
− 2005年9月に、規制当局、およびデリバティブ・ディーラーの代表による会合が開かれ、OTCデリバ
ティブ(とりわけクレジット・デリバティブ)のバックログ増加等に対し市場慣行見直しが検討された結果、
2007年1月までに30日超のバックログの94%削減、取引電子化の進展等の成果がみられた
〔参考資料〕大統領金融市場作業部会(The President’s Working Group on Financial Markets)報告書
①”Hedge Funds, Leverage, and the Lessons of Long-Term Capital Management”(1999年4月)
②”Principles and Guidelines regarding Private Pools of Capital”(2007年2月)
26
4. (参考)ヘッジファンド業界による自主規制
AIMAの取り組み
約900社のヘッジファンド・マネージャー、サービス・プロバイダー等が加盟する
AIMAでは、以下2本のSound Practicesをはじめ、ヘッジファンドにかかる
行動規範を様々な形で策定。
9「Guide to Sound Practices for Hedge Fund Valuation(2005年版の改訂)」
<Sound Practicesの概要>
(a)詳細な評価額算定方針について、他の利害関係者との協議を経て役員の承認を得る(書面化が必要)
(b)独立した有能な第三者に評価額の算定を委託することが、利益相反を回避するための最善策
(c)NAVの計算について、投資家は、ファンド・マネージャーに情報開示を行うことを期待する権利がある
(d)評価額算定のプロセスをコントロールする主体は、投資プロセスに関与する主体から切離されているべき
(e)ポートフォリオにおける各ポジションの評価の適切さを照明するため、可能な限り複数の情報を用いるべき
・・・など15項目
9「Guide to Sound Practices for European Hedge Fund Managers(2002年版の
改訂)」
<Sound Practicesの対象>
(a)ヘッジファンドの組成・管理
(b)投資プロセスとポートフォリオ・リスク管理
(c)ポートフォリオ管理とオペレーショナル・コントロール
(d)資金調達と投資家との関係構築
(e)ヘッジファンドの構造
27
4. (参考)ヘッジファンド業界による自主規制
HFWGの取り組み
英国に拠点を置く主要ヘッジファンド・マネージャーからなるHFWG(Hedge Fund
Working Group)では、本年10月、Best Practicesを提案(現在、パブリッ
ク・コメントを募集中)。来年1月、最終版を策定予定。
<Sound Practicesの概要>
¾運用資産の評価方法
時価評価が難しい資産へのエクスポージャーを有する場合や、評価プロ
セスにおいて何らかの形での利益相反が存在しうる場合には、その点を
開示するなど、健全かつ透明性の高い評価方法を採用すること
¾リスク管理
特に流動性が低下する局面など、ストレスがかかる環境にも対応できる
よう、リスク管理体制を構築すること
¾ガバナンス体制
ファンド・マネージャーと投資家の利益相反を防ぐようガバナンス体制を
整備すること
¾アクティビズム
ファンド・マネージャーは、議決権行使方針を策定すること。また、デリバ
ティブを通じた投資先企業へのポジションについて、公表すること
28
5. 日本におけるヘッジファンド
日本におけるヘッジファンドの活動
①日本におけるヘッジファンドの活動は活発化しており、市場への影響力も大きい
市場の効率性向上等のプラスの側面と市場変動増幅の可能性等のマイナスの側面の両面をもつヘッジ
ファンドの投資活動が日本でも既に活発化しており、適切な対処が現実的な課題となっている
②日本市場を投資対象とするヘッジファンドの多くが海外拠点から投資
海外の投資マネージャーに加え、多くの日本人マネージャーも海外に拠点を置く場合が多い
③日本の銀行・機関投資家による投資は拡大傾向
金融庁の調査報告によれば、2006年3月末時点でヘッジファンドへの投資実績がある金融機関
(銀行、年金基金、保険会社等)は348機関、投資残高は7.4兆円(2005年3月末対比+22%増加)
29
5. 日本におけるヘッジファンド
金融市場時価総額とヘッジファンド運用資産のグローバルシェア
日本は世界有数の規模の金融市場をもつ一方で、日本国内に投資拠点を置くヘッジファンドの
運用資産残高シェアは小さい (日本市場を投資対象とするヘッジファンドの多くが海外に拠点を
置いていることが理由のひとつ)
株式市場
その他
17.7%
債券市場
日本
9.1%
日本除く
アジア
4.3%
日本除く
アジア
15.8%
米国
33.4%
ユーロ
圏
16.8%
英国
7.2%
その他
5.7%
HF運用資産残高
日本
15.5%
ユーロ
圏
27.2%
日本除く
アジア
5.7%
ユーロ
圏
8.3%
その他
2.4%
英国
22.4%
英国
4.6%
日本
0.5%
米国
60.8%
米国
42.7%
(注)株式市場規模は07年4月、債券市場規模は05年末、HF運用資産残高は06年推計値
(出所)IMF、IOSCO、OECD、Bloomberg
30
5. 日本におけるヘッジファンド
日本銀行の取り組み
①日本市場におけるヘッジファンドの活動活発化・市場での影響力拡大への対応
ヘッジファンドの投資行動を理解し、システミックリスクにつながり得る市場の変調を把握
することを目的とした市場関係者からの情報収集、およびデータベース等を活用した分析
(ヘッジファンドのリスク特性やわが国金融市場への影響等)とレポートとしての公表
②日本の金融機関によるヘッジファンド投資拡大への対応
金融機関への考査やモニタリング、金融高度化センターの活動などを通じて、各金融機関
によるヘッジファンド投資にかかる適切なリスク管理を促すことにより、ヘッジファンド破綻
等が個別金融機関や金融システム全体に深刻な影響を及ぼすことを回避
③国内外の金融当局との、より緊密な連携体制の構築に向けた取り組み
ヘッジファンドの活動がクロスボーダーで行われており、金融システム安定に向けた取り
組みも国際的な舞台で議論されることを踏まえ、日本市場に投資するヘッジファンドのマ
ネージャーの多くが拠点を置く香港・シンガポールを含め、各国の中央銀行・金融当局と
の連携体制の拡充に向けた取り組みを実施
31
5. 日本におけるヘッジファンド
今後の取り組み
①ヘッジファンドの投資活動に対する一層の理解促進
金融市場における価格形成メカニズムの理解や金融市場の安定性確保の観点からの
ヘッジファンドの投資活動に対する継続的な情報収集・分析
②ヘッジファンドを含む全ての国内外の市場参加者が安心して自由にイノベーティブな
金融活動を行い得る環境の整備
国際金融センターとしての東京市場活性化の一環としての、国内外の市場参加者が活動
しやすい環境の整備
32
6. アジアのヘッジファンド業界
アジアのヘッジファンド業界は、株式市場への投資拡大に伴い、
存在感を増しつつある
金融市場(株式・債券)とヘッジファンド運用資産残高のグローバルシェア
株式市場
その他
17.7%
債券市場
日本
9.1%
日本除く
アジア
4.3%
日本除く
アジア
15.8%
米国
33.4%
ユーロ
圏
16.8%
日本
15.5%
ユーロ
圏
27.2%
日本除く
アジア
5.7%
ユーロ
圏
8.3%
その他
2.4%
日本
0.5%
英国
22.4%
英国
4.6%
英国
7.2%
その他
5.7%
HF運用資産残
米国
60.8%
米国
42.7%
投資対象地域別ファンド数比率
戦略別投資対象地域比較
戦略別比率
エマージング
日本 アジア 3.9%
3.6%
欧州・英国
8.9%
その他
エマージング
2.0%
グローバル
35.8%
北米
25.7%
複数地域
20.1%
株式ロングショート
株式マーケット エマージング市場
ニュートラル
グローバル
複数地域
北米
欧州・英国
日本
エマージングアジア
その他エマージング
単独地域合計
33%
49%
62%
87%
92%
41%
13%
65%
グローバル
複数地域
北米
欧州・英国
日本
エマージングアジア
その他エマージング
単独地域合計
株式
72%
85%
82%
93%
95%
97%
80%
87%
6%
10%
42%
85%
8%
イベントドリブン
マネージド
フューチャーズ
グローバルマクロ
債券裁定
その他
9%
18%
14%
10%
7%
11%
32%
6%
4%
2%
2%
8%
6%
6%
3%
3%
4%
11%
11%
13%
8%
6%
2%
9%
通貨
58%
38%
7%
38%
47%
42%
31%
21%
平均AUM
($mil)
307
270
179
247
199
207
178
196
平均
レバレッジ
189%
239%
157%
182%
151%
107%
98%
155%
投資対象資産(重複あり)
債券
コモデティ
58%
28%
46%
12%
37%
6%
23%
1%
15%
27%
11%
44%
2%
32%
5%
(出所)Tremont Capital Management
33
6. アジアのヘッジファンド業界
2000年1月から2006年12月のデータを見ると、アジアを投資先とするヘッジ
ファンドのパフォーマンスは、リターンの水準が相対的に高く、グローバル株
式市場との相関が小さい
投資先別ヘッジファンドの平均リターン・標準偏差
30%
各国・地域の株式指数推移
平均リターン(年率換算)
200
175
その他エマージング
25%
MSCIエマージング株式指数
平均リターン 10.9%
標準偏差 20.8%
(99年12月末=100)
150
20%
TOPIX
平均リターン -0.4%
標準偏差 15.6%
125
北米
エマージングアジア
100
15%
欧州・英国
10%
S&P500
平均リターン -0.6%
標準偏差 14.3%
75
グローバル
50
日本
5%
0
99/12
0%
0%
5%
10%
15%
標準偏差(年率換算)
FT100
平均リターン -1.8%
標準偏差 13.5%
25
01/4
02/8
03/12
05/4
06/8
20%
月
下記の分析結果を見ると、投資対象地域に拠点を置くことで高いパフォーマンスを
実現できる可能性
⇒アジア拠点のヘッジファンドが増加する方向か
拠点別パフォーマンス比較(日本を投資対象とするヘッジファンド)
ファンド数
在日本ファンド(A)
9
海外ファンド(B)
23
A−B
-
平均収益率 標準偏差
α
(年率換算) (年率換算) (年率換算)
14.96%
8.80%
5.13%
(1.54)
11.05%
8.10%
0.83%
(0.37)
3.91%
5.25%
4.30%
(1.37)
β1
β2
β3
自由度修正済
決定係数
DW
0.466
(7.54)
0.482
(11.63)
-0.016
(-0.27)
0.217
(2.34)
0.263
(4.21)
-0.045
(-0.52)
0.009
(0.05)
0.002
(0.01)
0.007
(0.05)
0.573
1.752
0.773
1.850
-0.059
1.812
※カッコ内はt値
34
Ⅱ. サブプライム住宅ローン問題について
1. 米国サブプライムローン問題の構造と広がり
2. 本邦金融機関への影響
3. 教訓
35
1.サブプライム問題の構造①
Distribution
Origination
②Moody’s がサブプ
ライム関連 ABS を格
下げ(6/15 日)。
モーゲージバンク
モーゲージ証券
投資家
RMBS
①New
Century、
HSBC が貸倒
引当金増額を
発表(2/8 日)。
年金
クレジットリスク
証券化ビークル
サブプライム層向け住宅ローン
〔Conduit, SIV〕
LBO 用 SPC 向けローン
ABCP
ABS
シンジケートローン
〔レバレッジド・ローン〕
銀
行
投資
銀行
・
・
・
CDO
CLO
流動性リスク
信用リスク
組成リスク
⑦ ABCP の 流
動性補完要請
を受けて、一部
行で資金繰り
タイト化。
⑥ 米 国 ABCP
市場で初の償
還延期(8/6 日)。
ファンド
HF
MMF
SWF
・
・
・
⑤独 IKB の巨額
損失および KfW
による経営支援
報道(7/30 日)。
組成リスク
中央銀行
⑧ECB が同時多発テロ以来と
なる定率無制限資金供給オペ実
施(8/9 日)。
④Boots 等大型 LBO
シンジケーション失
敗 (7/25 日)。
③ Bear Stearns 傘 下 ヘ ッ ジ フ ァ ン ド へ の
margin call (6/8 日∼)。Bear Sterns 16 億ド
ルの信用供与を決定(6/26 日)。
36
サブプライム問題の構造②
米国住宅ローン 9.7兆ドル
RMBS 6.7兆ドル
(06年12月末)
(06年12月末)
プライム・ローン
7.0兆ドル
一般世帯向け
(FICOスコア 720以上)
住宅ローン会社
金融機関
4.9兆ドル
プライムRMBS
0.7兆ドル
Alt-A RMBS
Alt-Aローン
1.2兆ドル
やや信用力の
劣る世帯向け
住宅ローン会社
金融機関
(FICOスコア 660以上)
証
ローン(A)
券
シニア債
ローン(C)
金融機関
(FICOスコア 660未満)
投
資
家
に
販
売
ローン(B)
化
サブプライム・ローン
住宅ローン会社
1.5兆ドル
信用力の低い
世帯向け
1.1兆ドル
サブプライムRMBS
(HEL-ABS)
メザニン債
エクイティ
(注2)プライム、Alt-A、サブプライムに確固たる
定義はないが、ここではFICO(Fair Isacc社のク
レジット・スコア)の一般的な点数を表示。プライ
ムには、Agency MBSとJumboを含む。
(注1)各市場の正確な残高統計はなく、市場関係者の推計に
も幅がある。ここでは、そうした推計値のうち概ね平均的
と思われるものを採用。相互に整合的ではない。
<参考>サブプライムローンの延滞率(60日以上延滞)の推移
(固定金利型)
(ARM型)
25%
25%
20%
2004
2005
20%
15%
2006
2007
15%
10%
10%
2004
2005
5%
5%
2006
2007
0%
0%
1
5
9
13
17
21
25
29
33
37
41
45
49
(経過月数)
(出所)JPMorgan、 Intex.
1
5
9
13
17
21
25
29
33
37
41
45
49
(経過月数)
37
サブプライム問題の構造③
RMBS 6.7兆ドル
CDO・ABS 0.24(∼0.49)兆ドル
(06年12月末)
ABCP conduit/SIV等 1.1兆ドル
(06年12月末)
(06年12月末)
その他
クレジット資産
RMBS(A)
CDO・ABS(A)
RMBS(B)
購入
シニア債
シニア債
CDO・ABS(B)
購入
RMBS(C)
ABS (D)
RMBS (C)
メザニン債
エクイティ
ABCP
RMBS (D)
購入
メザニン債
購入
エクイティ
その他ABS約4兆ドル
その他CDO約3兆ドル
消費者ローン
商工業ローン担保
キャッシュCDO 1.6兆ドル
シンセティックCDO 1.5兆ドル
購入
購入
バックアップ・ライン
金融機関
<参考>証券化・再証券化の例
ハイグレードCDO
RMBS
キャッシュフロー
AAA
サブプライム
ローン債権
AAA
AA/A
トランシェ
債権
(サブプライム
以外)
AA/A
BBB
エクイティ
AA
メザニンCDO
A
BBB
BB/B
エクイティ
BBB
トランシェ
債権
(サブプライム
以外)
AAA
AA/A
BBB
エクイティ
38
ABCP市場への波及
◇ 米国ABCP市場の発行残高
1,500
(10億ドル)
ピーク:1兆1,952億ドル(8/8日)
直近:7,910億ドル(12/12日)
―― ピーク比▲34%
1,000
500
01/1
02/1
03/1
04/1
05/1
06/1
07/1
(注1)週次データで、12月12日まで。
(注2)季調済。
(出所)FRB。
◇ 米国ABCP1ヶ月物の流通金利(対Liborスプレッド)
110
(bps)
90
70
50
30
10
-10
07/1
07/2
07/3
(注1)週次データで、12月7日まで。
(注2)A1/P1/F1格。
(出所)Bloomberg。
07/4
07/5
07/6
07/7
07/8
07/9
07/10
07/11
39
レバレッジド・ローン市場への波及①
◇ レバレッジド・ローン市場の動向
―― 本年6月以前 vs. 現在の状況
リスクの高い買収資金の
調達を事前にコミット
現在の状況
投資家︵
CLO、ヘ
ッジファンド、保険等︶
買収目的会社
P E フ ァンド
出資
大手銀行︵
商業銀行・
投資銀行︶
本年6月までの市場動向
リスクの高まり
・買収案件の巨額化
・融資基準の緩和(コベナ
ンツライト等)
・負債/EBITDA比率の上昇
ローンの組成・販売
投資資金
ローンの組成・販売難
B/S上に多額のローン
を抱えざるを得ない状態
クレジット市場への
不信感の高まり
サブプライム・ローン問題
◇ レバレッジド・ローンとコベナンツライトのローンの組成額
1,800
(10億ドル)
(10億ドル)
1,500
150
その他
欧州
米国
コベナンツライト(右目盛)
1,200
900
180
120
90
600
60
300
30
0
0
99
00
01
02
03
04
05
(注1)07年のレバレッジド・ローン組成額は、1∼9月中旬まで。米国はカナダを含むベース。
(注2)07年のコベナンツライトのローンの組成額は、1∼6月まで。
(出所)レバレッジド・ローン組成額は、Thomson Financial。コベナンツライトのローンの組成額は、
IMF(原典はS&P)。
06
07
40
レバレッジド・ローン市場への波及②
◇ 欧米におけるM&AとLBOの推移
◇ 米国のローン価格の推移
【M&A】
3.0
(兆ドル)
105
2.5
<ピーク>
5/22日:100.6
EU
2.0
米国
100
<直近>
12/18日:95.0
1.5
1.0
0.5
95
4Q
3Q
2Q
07/1Q
06
05
04
03
02
01
00
99
98
0.0
90
【LBO】
7,000
<ボトム>
7/27日:92.1
07/5
(億ドル)
EU
4,000
米国
07/7
07/8
07/9
07/10
07/11
07/12
(注1)日次データで12月18日まで。
(注2)LCDX・シリーズ8(流動性の高い第一抵当権付きローン債権100銘柄を対象債権とするCDSの価格)
で、5月22日より新登場。
(出所)Markit。
6,000
5,000
07/6
3,000
2,000
1,000
4Q
3Q
2Q
07/1Q
06
05
04
03
02
01
00
99
98
0
(注)07/4Qの計数は、M&AおよびLBOともに、10・11月の合計額を1.5倍した四半期換算値。
(出所)Thomson Financial。
41
最近の金融市場動向
▽サブプライム・ローン証券化商品のスプレッド
8,000
(bps)
7,000
AAA
AA
A
BBB
6,000
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
07/1
07/2 07/3
07/4 07/5
07/6 07/7
07/8
07/9 07/10 07/11
(注1)週次データで11月29日まで。
(注2)ABX. HE 2006-2(2006年上期に実行されたサブプライム・ローンが対象)。
(出所)JP Morgan、Markit。
▽為替レートの推移
140
▽株価の推移
(円)
(円)
175
ドル/円(左目盛)
ユーロ/円(右目盛)
130
160
(出所)Bloomberg。
17,500
17,000
16,500
120
100
07/1 07/2 07/3 07/4 07/5 07/6 07/7 07/8 07/9 07/10 07/11 07/12
(円)
18,000
170
165
110
18,500
16,000
15,500
155
150
日経平均
15,000
14,500
07/1 07/2 07/3 07/4 07/5 07/6 07/7 07/8 07/9 07/10 07/11 07/12
(出所)Bloomberg。
42
2. 本邦金融機関への影響
▽ 証券化商品に対する投資家として
▽ 証券化商品、LBOシ・ローンの組成業者として
▽ ABCP conduitの流動性供給銀行として
43
3. 教訓
(1)マクロの視点から
① repricing / deleverageの過程はいつ終わるか。
② 過度のleverage拡大の背後にあったものは何か。
③ 「銀行セクター外へのリスク分散は金融システムの安定に
寄与する」
との見解をどう評価するか。
④ originate and distribute型金融ビジネスモデルはどこに
向かうか。
44
(2)ミクロの視点から
① 証券化商品に対する適切なvaluationをどう確保するか。
(市場流動性の低さ、モデルリスク等への対応)
② 組成リスクをどう把握・管理するか。
③ 流動性リスクをどう管理するか。
④ 金融機関経営の透明性をどう高めるか。
(証券化商品に対する会計上の評価)
45
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