...

第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会 プログラム・抄録集

by user

on
Category: Documents
56

views

Report

Comments

Transcript

第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会 プログラム・抄録集
第9回
日本カプセル内視鏡学会学術集会
プログラム・抄録集
目 次
会 長 挨 拶 中村 哲也(獨協医科大学
医療情報センター)……………………………………
1
理事長挨拶 寺野 彰(学校法人獨協学園) ………………………………………………… 2
日程表……………………………………………………………………………………… 3
プログラム一覧…………………………………………………………………………… 6
交通・会場のご案内……………………………………………………………………… 18
学術集会参加の皆様へ〈お知らせとお願い〉………………………………………… 20
特別講演 カプセル内視鏡の治験から世界初の学会−そして将来へ…………… 23
教育講演 カプセル内視鏡ガイドラインをめぐって………………………………… 27
J-POP Study報告 ………………………………………………………………………… 31
スペシャルシンポジウム カプセル内視鏡における他科連携……………………… 35
特別企画 読影支援における診断精度向上とは……………………………………… 41
主題演題 大腸カプセル内視鏡における診断精度向上……………………………… 49
主題演題 病理診断に基づいたカプセル内視鏡の診断精度向上…………………… 57
特別パネルセッション 大腸カプセル内視鏡レジメン……………………………… 67
一般演題Ⅰ 原因不明消化管出血(OGIB)…………………………………………… 73
一般演題Ⅱ 前処置等…………………………………………………………………… 79
一般演題Ⅲ NSAID関連病変および腫瘍 ……………………………………………… 85
一般演題Ⅳ 炎症性腸疾患……………………………………………………………… 91
一般演題Ⅴ 大腸用カプセル内視鏡①………………………………………………… 97
一般演題Ⅵ 大腸用カプセル内視鏡②……………………………………………… 101
一般演題Ⅶ 小腸カプセル内視鏡…………………………………………………… 105
一般演題Ⅷ パテンシーカプセル…………………………………………………… 111
一般演題Ⅸ 条虫症…………………………………………………………………… 117
ハンズオンセミナー…………………………………………………………………… 121
開催記録………………………………………………………………………………… 123
1000
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
ご挨拶
会 長挨拶
ご 挨 拶
獨協医科大学 医療情報センター長・教授
中村 哲也
第9回日本カプセル内視鏡学会(JACE:The Japanese Association for Capsule Endoscopy)学術集会を、2016年2月27日
(土)
〜28日
(日)に新宿の京王プラザホテルにおいて
開催させていただくことになりました。当学会(JACE)は、カプセル内視鏡に興味を持
つ同学の士を募ることを目的として、2008年から活動を始めた日本カプセル内視鏡研究
会を発展させる形で、2012年に設立された世界で初めてのカプセル内視鏡の学会です。
第9回学術集会は、
前回と同様GI Weekとして第12回日本消化管学会総会学術集会(会長:
獨協医科大学消化器内科主任教授、平石秀幸先生、2月26日〜27日)に引き続き、第48
回胃病態機能研究会(会長:慶應義塾大学医学部外科学教授、北川雄光先生)と合同で
開催いたします。
内視鏡とは、主に人体内部を観察することを目的とした医療機器のことを指し、現代
の西洋医学で用いられている内視鏡の原型は筒型で硬性鏡と呼ばれ、19世紀に登場しま
した。20世紀になってチューブ型の軟性鏡が開発され、ファイバースコープを経て現在
では電子内視鏡が主流になっています。カプセル内視鏡は、被検者がみずから飲み込む
だけで消化管の検査ができるカプセル型の小型内視鏡で、2001年に欧米で認可されまし
た。硬性鏡を第一世代、軟性鏡を第二世代とすると、カプセル内視鏡は21世紀に登場し
た第三世代の内視鏡ということになります。
2001年に獨協医科大学光学医療センター内視鏡部門が開設された際に、私は当学会理
事長である寺野彰先生(当時消化器内科主任教授、現学校法人獨協学園理事長)に呼ば
れて異動しました。最初の使命は、カプセル内視鏡を日本に導入することでした。幸い
にも2003年から日本で最初のカプセル内視鏡の治験を担当することができました。2007
年に日本国内において薬事承認を受け、保険適用となったカプセル内視鏡の発展と普及
については、皆様よくご存じのことと思います。カプセル内視鏡は、暗黒大陸と呼ば
れていた小腸に光を当てた新しい内視鏡ですが、その光源には白色の発光ダイオード
(LED:light emitting diode)が使用されています。実は、白色LEDは、日本人がノーベ
ル物理学賞を受賞して話題となった青色LEDに蛍光体を組み合わせたものです。私は
カプセル内視鏡と平行して、レーザー光による診断と治療の臨床研究を続けてきました
(http://jslsm36.umin.jp/)
。LEDの光はレーザー光と異なり単色ではありませんが、紫色
のLED光と腫瘍親和性物質との組み合わせで蛍光診断(PDD:photodynamic diagnosis)
が行えることがわかっています。将来的にはカプセル内視鏡によるPDDが実現し、
LEDの光がさらに高出力になれば治療も可能になるのではないかと期待されます。
第9回学術集会は、
「診断精度向上を目指して」というテーマにさせていただきました。
カプセル内視鏡は自動的に消化管内の画像を撮影するため、撮影された何万枚という写
真を動画あるいは静止画として読影する必要があります。読影は、カプセル内視鏡が撮
影した画像の所見を拾い上げ、それが異常か否かについて解釈し、重複した所見を確認
した後に診断の推定を行います。そして、バルーン内視鏡など必要な追加検査や治療方
針についてコメントを追加することも重要です。カプセル内視鏡検査による診断は、読
影によって得られた所見の病理検査結果または、治療を行った結果にもとづく最終経過
によって初めて確定されます。そこで今回の学術集会では、病理検査結果や治療後の最
終経過によって確定された診断をカプセル内視鏡画像にフィードバックする作業を通じ
て、診断精度向上を目指すことを目的にしました。医師だけでなく、読影支援技師を目
指す準会員の方々にとっても役立つ企画を考えていますので、多くの方々のご参加を心
よりお待ちしています。
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
1
ご挨拶
理 事 長挨拶
第9回日本カプセル内視鏡学会
第8回日本カプセル内視鏡学会
学術集会によせて
日本カプセル内視鏡学会
学校法人獨協学園 理事長
学校法人獨協学園
獨協医科大学 名誉学長
理事長
寺野 彰
寺野
彰
今年の第9回日本カプセル内視鏡学会(JACE)学術集会は、獨協医科大学医療情報
センター長・教授中村哲也先生の主催で、GI Weekの一環として開催される。GI Week
も2度目ではあるが、次第に会員の皆様のご理解を得て、全国に浸透してきているよう
である。JACEは世界初のしかも現在でも世界唯一のカプセル内視鏡の学会である。国
際的にも注目されている。カプセル内視鏡(CE)の我が国への導入は、2003年であるが、
認可され健康保険収載となったのは、実に4年あまり後の2008年であった。この間、日
本カプセル内視鏡研究会として、国際的な情報を得ながら、認可後の準備をしてきたの
である。この間の中村教授のご努力は大変なものであり、彼なしには我が国のCEの発
展はなかったと言ってよい。その中村教授が今回の学術集会の会長であることは当然の
こととはいえ、深い意義のあることである。その後、東京慈恵会医科大学の田尻久雄教
授によって学会へと発展したのである。
さて、我が国のCEも昨年の大腸CE導入により、大きな転換期を迎えた。この大腸
CEの導入は、世界初であり、この点の当局の識見には敬意を評するが、保険適用の範
囲に関しては大きな問題が残っている。この辺りについても本学会で検討されよう。さ
らにCEの将来については、まだまだたくさんの課題が残っている。なんといってもま
ず解決されなければならないのが、体外からのコントロールである。これなしには、
CEの将来は明るくないといってよい。Biopsyや治療への応用はまだ時間がかかるであ
ろうがいずれ解決されねばならない。これらの情報が我が国から世界に発信されること
を祈り、本学会が重要な任務を持っていることを会員の先生方にご認識いただきたい。
もう一つの重要課題は、画像の読影である。小生も先般講習会に2日間出席したが、
大きく進歩しているとはいえ、まだまだ改善すべきことが多い。e-Learnigや読影技師養
成などが進んでおり、これらも本学会の重要課題となっている。
幸い、第12回日本消化管学会総会学術集会の会長も獨協医科大学の平石秀幸教授であ
り、協力し合って実りある学会としていただきたい。
学会の成功を祈ります。
2
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
2 月27 日(土)
日 程 表
第9回日本カプセル内視鏡学会学術集会
第48回胃病態機能研究会
第1会場 南館5F「エミネンスホール」 第2会場 本館4F「花AB」 第3会場 本館4F「花C」
南館4F「錦」
8:30
日程表
9:00
9:30
10:00
10:30
11:00
11:30
12:00
12:30
13:00
第12回日本消化管学会総会学術集会
13:30
14:00
14:30
15:00
15:30
16:00
16:30
※プログラムの詳細はホームページをご覧ください。
http://www.keiso-comm.com/12jga/index.html
17:00
17:30
18:00
18:10~19:20 18:30
19:00
19:30
20:00
20:30
第9回日本カプセル内視鏡学会学術集会
第48回胃病態機能研究会
合同イブニングセミナー
上部消化管症状と胃分泌
司会:荒川哲男 演者:鈴木秀和
共催:エーザイ株式会社
19:30~21:00
第9回日本カプセル内視鏡学会学術集会
第48回胃病態機能研究会
合同懇親会
会場:南館4F「扇」
21:00
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
3
日 程 表
2 月28 日(日)
第9回日本カプセル内視鏡学会学術集会
第1会場 南館5F「エミネンスホール」
第2会場 本館4F「花AB」
8:30
日程表
9:00
9:30
8:55~9:00 開会式
9:00~10:55 主題演題
大腸カプセル内視鏡における診断精度向上
司会:加藤智弘、山田篤生
9:00~10:55 主題演題
病理診断に基づいたカプセル内視鏡の診断精度向上
司会:大宮直木、塩谷昭子
ミニレクチャ-:八尾隆史
10:00
10:30
11:00
11:30
12:00
12:30
13:00
13:30
14:00
14:30
15:00
15:30
16:00
16:30
17:00
11:00~11:50 特別講演
カプセル内視鏡の治験から世界初の学会−そして将来へ
司会:中村哲也
演者:寺野 彰
12:00~12:50 ランチョンセミナー1
小腸病変に対する最強タッグ∼CE & DBEを併用した診断・治療戦略∼
司会:矢野智則 演者:三井啓吾、藤森俊二
共催:富士フイルムメディカル株式会社
代議員会 13:40~14:40 教育講演
カプセル内視鏡ガイドラインをめぐって
司会:藤本一眞
演者:樋口和秀、山本博徳
14:45~15:25 J-POP Study報告
15:30~17:00 スペシャルシンポジウム
カプセル内視鏡における他科連携
司会:大塚和朗、久松理一
演者:葛原正樹、中山佳子、太田和寛、細江直樹、角川康夫
共催:コヴィディエン ジャパン株式会社
協力:富士フイルムメディカル株式会社
17:00~17:05 閉会式
第1会場「エミネンスホール」前にポスターパネルを掲示
特別パネルセッション 大腸カプセル内視鏡レジメン 共催:コヴィディエン ジャパン株式会社
19:30
20:00
20:30
21:00
4
13:30~15:00 小腸カプセル内視鏡ハンズオンセミナー
講師:渡部宏嗣
事前登録制:定員100名(技師向け)
共催:コヴィディエン ジャパン株式会社
協力:富士フイルムメディカル株式会社
司会:松井敏幸
演者:渡辺憲治、中村正直、大森鉄平
18:00
19:00
カプセルによるIBDマネジメントの最前線
司会:穂苅量太 演者:小林 拓、藤浪 斗
共催:コヴィディエン ジャパン株式会社
協力:富士フイルムメディカル株式会社
13:00~13:30
17:30
18:30
12:00~12:50 ランチョンセミナー2
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
15:30~17:00 大腸カプセル内視鏡ハンズオンセミナー
講師:能田貞治
事前登録制:定員100名(技師向け)
共催:コヴィディエン ジャパン株式会社
協力:富士フイルムメディカル株式会社
第9回日本カプセル内視鏡学会学術集会
第48回胃病態機能研究会
第3会場 本館4F「花C」
南館4F「錦」
8:30
9:30
10:00
9:00~10:55 特別企画
読影支援における診断精度向上とは
司会:田村君英、阿部 孝
基調講演:野崎良一
指定演者:河上真紀子、松平美貴子、松本裕子、出野憲由、
渡部宏嗣
日程表
9:00
8:55~9:00 開会式
9:00~9:18 一般演題1 手術①
座長:和田則仁
9:20~9:44 一般演題2 手術②
座長:掛地吉弘
9:45~11:05 主題1
機能温存術式の適応とその評価
座長:草野元康、國崎主税
10:30
11:00
11:05~11:29 一般演題3 食道
座長:藤原靖弘
11:30
11:30~11:54 一般演題4 ピロリ
座長:城卓志
12:00
12:10~13:00 ランチョンセミナー
炎症に基づく胃がん幹細胞発生機構の解析と予防戦略
座長:北島政樹 演者:佐谷秀行
共催:武田薬品工業株式会社、大塚製薬株式会社
12:30
13:00
13:30
14:00
14:30
15:00
15:30
16:00
16:30
17:00
13:00~13:24 一般演題Ⅰ 原因不明消化管出血(OGIB)
座長:勝木伸一
13:25~13:49 一般演題Ⅱ 前処置等
座長:松田知己
13:50~14:14 一般演題Ⅲ NSAID関連病変および腫瘍
座長:遠藤宏樹
14:15~14:45 一般演題Ⅳ 炎症性腸疾患
座長:岡 志郎
14:46~15:04 一般演題Ⅴ 大腸用カプセル内視鏡①
座長:佐川 保
15:05~15:23 一般演題Ⅵ 大腸用カプセル内視鏡②
座長:半田 修
15:25~15:49 一般演題Ⅶ 小腸カプセル内視鏡
座長:川野誠司
15:50~16:14 一般演題Ⅷ パテンシーカプセル
座長:江㟢幹宏
13:10~14:20 主題2-1
食道・胃接合部疾患の診断と個別化医療の応用①
座長:内藤裕二、馬場秀夫
14:30~15:10 アフタヌーンセミナー
抗血栓薬起因性消化管出血の現状と予防戦略
座長:三輪洋人 演者:塩谷昭子
共催:第一三共株式会社、アストラゼネカ株式会社
15:20~17:00 主題2-2
食道・胃接合部疾患の診断と個別化医療の応用②
座長:木下芳一、瀬戸泰之
16:15~16:33 一般演題Ⅸ 条虫症
座長:林田真理
17:00~ 閉会式
17:30
18:00
18:30
19:00
19:30
20:00
20:30
21:00
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
5
プログラム(27日 合同企画)
南館4F 錦
18:10∼19:20
第9回日本カプセル内視鏡学会学術集会
第48回胃病態機能研究会
合同イブニングセミナー
上部消化管症状と胃分泌
哲男(大阪市立大学大学院医学研究科 消化器内科学)
秀和(慶應義塾大学医学部 医学教育統轄センター)
共催:エーザイ株式会社
プログラム
(合同企画)
司会:荒川
演者:鈴木
南館4F 扇
19:30∼21:00
第9回日本カプセル内視鏡学会学術集会
第48回胃病態機能研究会
合同懇親会
6
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
プログラム(28日 第1会場)
南館5F エミネンスホール
8:55∼ 9:00
開会式
中村 哲也(獨協医科大学
9:00∼10:55
主題演題
大腸カプセル内視鏡における診断精度向上
司会:加藤
山田
智弘(東京慈恵会医科大学大学院 消化器内科学)
篤生(東京大学医学部附属病院 消化器内科)
大腸カプセル内視鏡におけるポリ−プの性状と読影力が診断精度に与える影響
横浜市立大学 肝胆膵消化器病学 加藤
SC-2
当院における大腸カプセル内視鏡検査(CCE)の診断精度の検討
愛晋会中江病院 内視鏡治療センター 中路
SC-3
幸之助 p51
大腸カプセル内視鏡検査の精度検証:2cm以上の表面型病変を発見できるか?
福島県立医科大学会津医療センター 小腸大腸肛門科 歌野
SC-4
崇史 p54
CO2送気下観察でカプセル内視鏡の診断精度は上がるか?
札幌整形循環器病院 消化器内科 太田
SC-7
一秀 p53
大腸カプセル内視鏡読影における画像強調システムFICEの有用性について
藤田保健衛生大学 消化管内科 大森
SC-6
健一 p52
当科における大腸カプセル内視鏡施行例の臨床的特徴
松山赤十字病院 胃腸センター 岩㟢
SC-5
孝征 p50
英敏 p55
大腸カプセル内視鏡による潰瘍性大腸炎粘膜治癒の評価
慶應義塾大学病院 消化器内科 宮永
亮一 p56
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
7
プログラム
(第1会場)
SC-1
医療情報センター)
9:00∼10:55
特別パネルセッション
大腸カプセル内視鏡レジメン
共催:コヴィディエン
ジャパン株式会社
南館5F「エミネンスホール」前にてポスター展示、主題演題「大腸カプセル内
視鏡における診断精度向上」にてレジメンを紹介
※ポスターは17:00まで展示します。
当院の大腸カプセル内視鏡レジメンについて
P-1
名古屋大学大学院 消化器内科学 佐藤
淳一 p68
飲まずに出来る大腸カプセル内視鏡検査を目指して
−内視鏡的洗浄液注入法を使用して−
P-2
医療法人社団 芦屋三戸岡クリニック 三戸岡
英樹 p69
大腸カプセル内視鏡レジメンにおけるガストログラフィン併用の有用性
プログラム
(第1会場)
P-3
小樽掖済会病院 消化器病センター 藤田
朋紀 p70
経鼻内視鏡を使用した新しい大腸カプセル内視鏡の前処置法(CCE-NE法)
P-4
医療法人厚生会虹が丘病院 増田
淳一 p71
当施設における大腸カプセル内視鏡の腸管前処置およびブースターの工夫
P-5
国立がん研究センター中央病院 内視鏡科、がん予防・検診研究センター検診部 角川
11:00∼11:50
康夫 p72
特別講演
司会:中村
哲也(獨協医科大学
医療情報センター)
カプセル内視鏡の治験から世界初の学会−そして将来へ
学校法人獨協学園 寺野
12:00∼12:50
彰 p24
ランチョンセミナー1
小腸病変に対する最強タッグ〜CE & DBEを併用した診断・治療戦略〜
司会:矢野
智則(自治医科大学
消化器内科)
共催:富士フイルムメディカル株式会社
演者
8
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
日本医科大学 消化器内科 三井
啓吾 日本医科大学千葉北総病院 消化器内科 藤森
俊二 13:00∼13:30
代議員会
13:40∼14:40
教育講演
カプセル内視鏡ガイドラインをめぐって
司会:藤本
一眞(佐賀大学医学部
内科学)
小腸内視鏡検査診療ガイドラインの概要
カプセル内視鏡を中心に
大阪医科大学 第二内科 樋口
和秀 p28
自治医科大学 内科学講座消化器内科学部門 山本
博徳 p29
小腸内視鏡検査診療ガイドラインの概要
バルーン内視鏡を中心に
プログラム
(第1会場)
14:45∼15:25
J-POP Study報告
司会:松井
敏幸(福岡大学筑紫病院
消化器内科)
J-POP Studyの概要とクローン病追加調査の解析結果について
大阪市立総合医療センター 消化器内科 渡辺
憲治 p32
J-POP Study一次調査の解析結果について
名古屋大学 消化器内科 中村
正直 p33
J-POP Studyの有害事象に関する追加調査の解析結果
東京女子医科大学 消化器内科 大森
15:30∼17:00
鉄平 p34
スペシャルシンポジウム
カプセル内視鏡における他科連携
司会:大塚
和朗(東京医科歯科大学附属病院 光学医療診療部)
理一(杏林大学医学部附属病院 消化器内科)
共催:コヴィディエン ジャパン株式会社
協力:富士フイルムメディカル株式会社
久松
カプセル内視鏡検査における内科と外科の連携
三重大学医学部附属病院 光学医療診療部 葛原
正樹 p36
小児のカプセル内視鏡−消化器内科・小児外科との連携−
信州大学医学部附属病院 小児科 中山
佳子 p37
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
9
循環器疾患患者におけるカプセル内視鏡検査の有用性
春秋会 城山病院 消化器内科/大阪医科大学 第2内科 太田
和寛 p38
慢性維持透析患者における小腸病変
慶應義塾大学医学部 内視鏡センター 細江
直樹 p39
カプセル内視鏡を用いた腸管GVHD診断
国立がん研究センター中央病院 内視鏡科 角川
17:00∼17:05
閉会式
中村 哲也(獨協医科大学
プログラム
(第1会場)
10
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
医療情報センター)
康夫 p40
プログラム(28日 第2会場)
本館4F 花AB 9:00∼10:55
主題演題
病理診断に基づいたカプセル内視鏡の診断精度向上
司会:大宮
塩谷
ミニ
レクチャー
SP-1
直木(藤田保健衛生大学 消化管内科)
昭子(川崎医科大学 消化管内科)
小腸疾患の病理
順天堂大学大学院医学研究科 人体病理病態学 八尾
藤田保健衛生大学 消化管内科 鎌野
SP-2
俊彰 p59
当院における、小腸腫瘍性病変に対する小腸カプセル内視鏡および
小腸内視鏡の有用性の検討
東京慈恵会医科大学 内科 消化器・肝臓部門 永田
祐介 p61
小腸腫瘍におけるカプセル内視鏡検査と造影CTの病変発見率の検討
北海道がんセンター 消化器内科 岡川
SP-4
当院におけるCTで描出されなかった小腸腫瘍についての検討
杏林大学医学部 第三内科 林田
SP-5
紗代子 p64
大腸カプセル内視鏡のpolypに対する診断能の検討
大阪医科大学 第二内科 能田
SP-8
啓志 p63
小腸follicular lymphomaの進展範囲診断にカプセル内視鏡は有用か?
−ダブルバルーン内視鏡施行例との比較検討から−
広島大学病院 内視鏡診療科 國原
SP-7
真理 p62
当院の消化管悪性リンパ腫における小腸カプセル内視鏡検査の有用性
川崎医科大学 食道胃腸内科 松本
SP-6
泰 p61
貞治 p65
カプセル内視鏡で診断し得た大腸平坦型腫瘍3例の経験
岐阜赤十字病院 内視鏡科 髙橋
裕司 p66
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
11
プログラム
(第2会場)
SP-3
隆史 p58
ダブルバルーン内視鏡の内視鏡所見・病理所見からみたカプセル内視鏡の
有用性
12:00∼12:50
ランチョンセミナー2
カプセルによるIBDマネジメントの最前線
司会:穂苅
量太(防衛医科大学校病院 消化器内科)
ジャパン株式会社
協力:富士フイルムメディカル株式会社
共催:コヴィディエン
潰瘍性大腸炎診療におけるカプセル内視鏡の可能性
北里大学北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療センター 小林
拓 クローン病マネジメントにおける小腸カプセル内視鏡のポジション
富山大学附属病院 光学医療診療部 藤浪
13:30∼15:00
斗 小腸カプセル内視鏡ハンズオンセミナー
共催:コヴィディエン
ジャパン株式会社
協力:富士フイルムメディカル株式会社
若宮渡部医院 渡部
講 師
プログラム
(第2会場)
15:30∼17:00
宏嗣 p121
大腸カプセル内視鏡ハンズオンセミナー
共催:コヴィディエン
ジャパン株式会社
協力:富士フイルムメディカル株式会社
大阪医科大学 第二内科 能田
講 師
12
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
貞治 p122
プログラム(28日 第3会場)
本館4F 花C 9:00∼10:55
特別企画
読影支援における診断精度向上とは
司会:田村
阿部
君英(医療法人社団卓秀会平塚胃腸病院)
孝(宝塚市立病院)
基調講演
大腸肛門病センター高野病院 野崎
良一 p42
当院におけるカプセル内視鏡の現状と内視鏡技師の関わり
川崎医科大学 内視鏡・超音波センター 河上
真紀子 p43
カプセル内視鏡導入前からの取り組みおよび読影支援の実際と効果について
大腸肛門病センター高野病院 松平
美貴子 p44
カプセル内視鏡読影支援において診断精度向上のため当院での取り組み
宝塚市立病院 消化器内視鏡センター 松本
裕子 p45
独立行政法人労働者健康福祉機構大阪労災病院 中央検査部内視鏡部門 出野
憲由 p46
治療につなげる読影支援
若宮渡部医院 渡部
13:00∼13:24
一般演題Ⅰ
原因不明消化管出血(OGIB)
座長:勝木
OSⅠ- 1
伸一(小樽掖済会病院
消化器病センター)
遺伝性出血性末梢血管拡張症の経過観察において小腸カプセル内視鏡が
有用であった一例
自治医科大学 内科学講座消化器内科学部門 宮原
OSⅠ- 2
晶子 p74
当院でのOGIBに対する小腸カプセル内視鏡検査の使用経験
NTT東日本関東病院 消化器内科 瀧田
OSⅠ- 3
宏嗣 p47
麻衣子 p75
PC導入によるOGIB診療アルゴリズムの変化に関する検討
山口大学大学院医学系研究科 消化器病態内科学 橋本
真一 p76
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
13
プログラム
(第3会場)
大腸カプセル内視鏡読影支援における診断精度向上を如何に図るべきか?
ー読影支援センターの経験からー
OSⅠ- 4
カプセル内視鏡読影センターにおけるOGIB939例の検討
ブラザー記念病院 消化器内科 本田
13:25∼13:49
一般演題Ⅱ
前処置等
座長:松田
OSⅡ- 1
知己(仙台厚生病院
消化器内視鏡センター)
当院における大腸カプセル内視鏡検査の前処置の工夫
三重県立総合医療センター 外科 岩田
OSⅡ- 2
プログラム
(第3会場)
13:50∼14:14
NSAID関連病変および腫瘍
宏樹(横浜市立大学
内視鏡センター)
SLCO2A1遺伝子多型とNSAIDs起因性小腸傷害の関係の解明
日本医科大学 消化器内科学 小杉
友紀 p86
NSAIDs起因性小腸粘膜障害におけるPPIの影響についての検討
岩見沢市立総合病院 消化器内科 大森
OSⅢ- 3
宗威 p83
一般演題Ⅲ
座長:遠藤
OSⅢ- 2
紗代 p82
当院でのPillCam®SB3使用における電波干渉の実態とMGベストの使用経験
大阪医科大学 第二内科 井口
OSⅢ- 1
貴博 p81
カプセル内視鏡嚥下困難例に対するトラブルシューティング
〜オーバーチューブ併用が有用であった1例〜
静岡県立静岡がんセンター 内視鏡科 伊藤
OSⅡ- 4
沙織 p87
腸管症型T細胞リンパ腫の小腸病変をカプセル内視鏡にて観察し得た一例
山形大学医学部 内科学第二(消化器内科学)講座 佐々木
OSⅢ- 4
悠 p88
カプセル内視鏡を施行した回腸神経内分泌腫瘍の一例
JCHO群馬中央病院 消化器内科 岸
14
崇 p80
カプセル内視鏡挿入補助具の使用が有用であった好酸球性胃腸炎の一例
旭川厚生病院 消化器科 伊藤
OSⅡ- 3
亘 p77
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
遂忠 p89
14:15∼14:45
一般演題Ⅳ
炎症性腸疾患
座長:岡 OSⅣ- 1
志郎(広島大学病院
内視鏡診療科)
クローン病の小腸病変評価;カプセル内視鏡所見とX線所見の相関
福岡大学筑紫病院 消化器内科 二宮
OSⅣ- 2
風夫 p92
当院におけるクローン病患者へのカプセル内視鏡使用経験
琉球大学大学院医学研究科 感染症・呼吸器・消化器内科学講座(第一内科)
田中
OSⅣ- 3
照久 p93
腸管Behçet病におけるカプセル内視鏡の臨床的有用性
平塚市民病院 消化器内科 有本
OSⅣ- 4
当院におけるクローン病患者に対する小腸カプセル内視鏡検査の現状
浜松医科大学 第一内科 高野
OSⅣ- 5
岡山済生会総合病院 岡本
雄貴 p96
増子記念病院 肝臓内科 堀田
直樹 p98
一般演題Ⅴ
大腸用カプセル内視鏡①
保(北海道がんセンター
消化器内科)
透析患者における大腸カプセル内視鏡の検討
当院における大腸カプセル内視鏡施行例に関する検討
おばら消化器・肛門クリニック 小原
OSⅤ- 3
邦彦 p99
当院における大腸内視鏡カプセルの使用経験について
兵庫医科大学病院 内科学消化管科 小川
15:05∼15:23
一般演題Ⅵ
大腸用カプセル内視鏡②
座長:半田
OSⅥ- 1
智広 p100
修(京都府立医科大学
消化器内科)
大腸カプセル内視鏡施行時に電波干渉発生した場合の対処法
医療法人厚生会虹が丘病院 増田
淳一 p102
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
15
プログラム
(第3会場)
座長:佐川
OSⅤ- 2
亮佑 p95
小腸クローン病の経過観察にカプセル内視鏡が有用であった一例
14:46∼15:04
OSⅤ- 1
純 p94
OSⅥ- 2
タブレット端末を用いた大腸カプセル内視鏡説明の取り組み
医療法人厚生会虹が丘病院 庄司
OSⅥ- 3
奈津子 p103
当院における大腸カプセル内視鏡の使用経験と課題
浜松医科大学 第一内科 佐原
15:25∼15:49
一般演題Ⅶ
小腸カプセル内視鏡
座長:川野
OSⅦ - 1
誠司(岡山大学病院
消化器内科)
小腸カプセル内視鏡導入初期における全小腸観察への試み
広島市立安佐市民病院 消化器内科 青山
OSⅦ - 2
プログラム
(第3会場)
15:50∼16:14
パテンシーカプセル
幹宏(九州大学
病態機能内科)
パテンシーカプセル施行後にカプセル内視鏡検査を施行しイレウスを発症した
腸結核の1例
国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター 消化器内科 今川
秀之 p113
当院で施行したカプセル内視鏡検査に関する検討
上尾中央総合病院 外處
OSⅧ - 4
宏樹 p112
当院の小児・若年者に対するパテンシーカプセル及びカプセル内視鏡の検討
JA北海道厚生連帯広厚生病院 消化器内科 柳澤
OSⅧ - 3
敏彦 p109
一般演題Ⅷ
座長:江㟢
OSⅧ - 2
恵万 p108
当初セリアック病が疑われた、慢性下痢症の一例
辻仲柏の葉病院 外科 星野
OSⅧ - 1
真二 p107
全身性エリテマトーデス(SLE)の小腸カプセル内視鏡所見の検討
九州大学大学院 病態機能内科学 鷲尾
OSⅦ - 4
大輝 p106
カプセル内視鏡で経時的に小腸病変を観察しえた
Henoch-Schönlein紫斑病の1例
弘前大学大学院医学研究科 消化器血液内科学講座 太田
OSⅦ - 3
真道 p114
当院におけるパテンシーカプセルの有用性
杏林大学医学部 第三内科 池崎
16
秀 p104
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
修 p115
16:15∼16:33
一般演題Ⅸ
条虫症
座長:林田
OSⅨ- 1
真理(杏林大学医学部
第三内科)
カプセル内視鏡検査が治療方針の決定に有用であった条虫症の2例
藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院 内科 鳥井
OSⅨ- 2
カプセル内視鏡が治療前後の診断に有用であった日本海裂頭条虫の一例
香川大学医学部附属病院 総合内科 谷内田
OSⅨ- 3
淑敬 p118
達夫 p119
カプセル小腸内視鏡が発見および治療効果判定に有意であった
日本海裂条虫症の1例
医療法人川崎病院 消化器内科 西田
悠 p120
プログラム
(第3会場)
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
17
交通・会場のご案内
交 通 案内図
●新宿駅西口より徒歩
約5分(JR・京王線・小田急線・地下鉄)
新宿駅西口より都庁方面への連絡地下道をまっすぐ5分ほど
所要時間 約80分
お進みください。地下道を出てすぐ左側にホテルがござい
ます。
●都営大江戸線都庁前駅より徒歩
所要時間 約100分
地下道B1出口よりすぐ
改札を出てJR新宿駅方面に進み、B1出口階段を上がってす
ぐ右側にホテルがございます。
●リムジンバス
所要時間 約60分
交通・地図
フロアマップ
成田空港、羽田空港との直通リムジンバスがございます。
京王プラザホテル 〒160-8330 新宿区西新宿2-2-1 TEL. 03-3344-0111(代表)
学術集会当日(2月28日)は東京マラソン2016開催のため、交通規制が実施されます。
詳細は東京マラソンホームページ(http://www.marathon.tokyo/info/traffic/)をご参照ください。
18
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
会 場 案内図
花 AB
錦
花C
2月28日(日)
2月28日(日)
第9回日本カプセル内視鏡学会
学術集会 第2会場
第9回日本カプセル内視鏡学会
学術集会 第3会場
2月27日(土)
イブニングセミナー
2月28日(日)
第48回胃病態機能研究会
4F
花 AB
花C
PCセンター
受付
錦
化粧室
かえで
本館
扇
かえで
南館
扇
本部・事務局
2月27日
(土)懇親会
エミネンスホール前
2月28日(日)
特別パネルセッション および 企業展示
交通・地図
フロアマップ
5F
化粧室
エミネンス
ホール
本館
エミネンスホール
2月28日(日)
南館
第9回日本カプセル内視鏡学会学術集会
第1会場
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
19
学術集会参加の皆様へ(お知らせとお願い)
1.参加受付
当日の受付のみとなります(事前登録は行いません※1)。
日 時 2016年2月27日(土)
17:30〜19:30
2016年2月18日(日)
8:00〜16:00
場 所 京王プラザホテル 本館4階「花」前
参加費 医師・一般………………………………………………………7,000円(※2)
コメディカル……………………………………………………3,000円(※3)
学生(学部生・修士学生のみ。博士過程は含まない) ……………無料
※1 ハンズオンセミナーのみ事前登録制となります。なおハンズオンセミナー参加者も、学術集会の参
加受付は必要となります。当日、参加受付にて、参加費をお支払ください。ハンズオンセミナーの
詳細はP121〜122をご参照ください。
※2 医師・一般の方は、上記の参加費にて第48回胃病態機能研究会へご参加い ただけます(第12回日本
消化管学会総会学術集会への参加には別途受付が必要となります)。
※3 コメディカルの方は、上記の参加費にて第12回日本消化管学会総会学術集会と第48回胃病態機能研
究会へご参加いただけます。
参加受付にてネームカードを受け取り、所属・氏名をご記入のうえ、ネームカードを見え
る位置に着用してください。ネームカードのない方のご入場はお断りいたします。
医師・一般以外の方は身分を証明できるものをご持参ください。
2.プログラム・抄録集
日本カプセル内視鏡学会(JACE)会員の方には事前に発送しておりますので、当日は必
ずご持参ください。別途購入をご希望の場合は1部2,000円にて販売いたします。
※2015年12月1日現在の会員対象
3.ランチョンセミナー
お知らせと
お願い
ランチョンセミナーに参加される方にはお弁当を用意しております。各会場前にてお受け
取りください。なお、数に限りがございますので、予めご了承ください。また、必ずラン
チョンセミナー会場内で食事をお済ませください。
※整理券の配布はございません。
5.その他注意事項
会場内では、携帯電話の電源をお切りいただくか、マナーモードに設定してください。
20
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
◆講演に関するお願い
1.座長・司会の皆様へ
1)担当セッションの開始15分前には、会場内右手前方の「次座長席」にご着席ください。
2)時間厳守をお願いいたします。
2.口演発表の皆様へ
1)本館4階「花」前にて8時から16時の間、PC受付をご用意しております。ご発表の30分
前までにPC受付をお済ませください。
2)会場内の左手前方が次演者席となります。次演者の方は、前の演者の方の講演開始後、
次演者席にご移動ください。
3)プログラムの円滑な進行のため、発表は時間厳守でお願いいたします。
4)発表時間はセッションによって異なります。事務局からの個別のご案内をご参照くだ
さい。
《口演発表方法》
口演発表は、コンピュータープレゼンテーションのみとなります。下記の要領に従ってご準備
ください。
1)会場には液晶プロジェクター(解像度1024×768)を準備いたします。
2)会場で用意するPCのOSはWindowsのみとなります。
※Macintoshの方は必ずPC本体をご持参ください。
3)アプリケーションはPower Point 2003以降Power Point 2013まで対応しております。
4)発表データはPC本体をお持ちいただくか、USBフラッシュメモリでお持ちください。
どちらの場合もバックアップ用のUSBフラッシュメモリを必ずご用意ください。
5)Macintosh、Windows8及び動画をご使用の場合は、ご自身のノートPCをお持ち込み
ください。
6)ご自身でPCを持ち込む場合、会場でご用意するPCケーブルコネクタの形状はMiniDsub15ピンとなりますので、このケーブルコネクタにあったPCをご用意ください。ま
た、このケーブルコネクタに変換するコネクタを必要とする場合も必ずご自身でご用
7)動画に音声が入っている場合には、必ず、事前に運営事務局までお知らせいただきま
すようお願いいたします。
8)発表データのフォントは文字化けを防ぐために下記フォントに限定させていただきま
すのでご了承ください。
日本語:MSゴシック、MS Pゴシック、MS明朝、MS P明朝等の標準フォント
英 語:Century、Century Gothic
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
21
お知らせと
お願い
意ください。PC本体のACアダプタも必ずご持参ください。
9)発表の際は演台に用意してあるリモートシステム(モニター、キーボード、マウス)
を使って、演者ご本人で操作をお願いいたします。尚、お持ち込みのPCはオペレータ
ー席に置きますので、Power Pointの「発表者ツール」はご使用になれません。
10)コピーしたデータは、学会終了後、当学会にて責任を持って消去させていただきます。
■発表演題に関する利益相反(COI:Conflict of Interest)状態の開示について
本学会では、学術集会等における臨床研究に関する発表演題での公明性を確保する
ため、演題の筆頭発表者ならびに研究責任者より、利益相反状態に関する自己申告
を行っていただくこととしております。
つきましては、日本カプセル内視鏡学会のホームページより開示書式(PPT形式)
をダウンロードして必要項目を記載し、スライドの2枚目または最後に提示してく
ださい。
※日本カプセル内視鏡学会ホームページ:https://the-jace.org/coi/
お知らせと
お願い
22
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
特別講演
第 1会場
南館5階 エミネンスホール
11:00~11:50
カプセル内視鏡の治験から世界初の学会
−そして将来へ
司会:中村
哲也 獨協医科大学
演者:寺野
彰 学校法人獨協学園
医療情報センター
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
23
特別講演
特別講演
カプセル内視鏡の治験から世界初の学会−そして将来へ
寺野 彰
学校法人獨協学園
2001年、イスラエルよりカプセル内視鏡(CE)が発表されたときは、全世界の消化器病学
が沸き返った。それだけでなく、先進医療あるいは医療のinnovationとして、国際的に注目さ
れた。1880年頃から、イスラエルのミサイル学者Iddan博士が、様々な苦難を乗り越えてつい
に完成した新たな内視鏡であった。このCEは、これまでの内視鏡とは無関係と言ってよいほ
ど、新しい発想に基づくものであった。このCEが日本に上陸したのは、2003年であり、最初
の臨床治験は獨協医科大学において施行された。厚労省、PMDAからの要求は、クローン病
患者におけるレントゲン写真との比較対照試験であった。中村哲也博士を中心に、他施設の協
力を得ながらなんとか優位な結果を得た。その成績に基づいて、認可申請を提出したのである
が、それからの経緯が大変であった。PMDAからの要求は、理不尽とも言えるものが多く、我々
を苦しめた。最大の問題は、滞留であった。2%程度の発生率で、狭窄によるイレウスなどは
認められなかったが、狭窄部位に2週間以上滞留する症例について様々な要求を出してきた。
それらに対しては適切に回答したが、今度は、改めて腐食実験をやれとか、果ては、カプセル
から出るわずかな電波が電波法に関与するので、総務省と交渉しろとか理不尽かつ無責任な要
求が続いた。今思えば滑稽千万であるが、そのおかげで認可には4年もかかってしまい、国際
的遅れをとったのである。これらの点に関しては、PMDA改革という形で対応したが、我が
国治験体制の最大の問題である。そのためか、大腸CEの際は、驚くほど認可が早く、保険収
載も迅速であった。この間、日本医科大学坂本教授により日本カプセル内視鏡研究会が創設さ
れ、学問的活動を開始していたが、第5回研究会の際に、東京慈恵会医科大学の田尻教授によ
って、第1回日本カプセル内視鏡学会が誕生した。これはCEに関する世界初で、かつ世界唯一
の学会である。現在認定医、認定技師などを養成し、教育セミナーやe-Learningなどを展開し
ている。
さて、CEの将来についてであるが、それはCEの現段階での課題を語ることで自ずから明ら
かになる。まず第一に、CEは体外からcontrollableにならなければならない。あらゆる将来が
ここから出発する。第二に、生検ができない分、なんらかの形で、がんなどの組織診断に代
わる手段が案出されなければならない。それは、biomarkerでもいいし、顕微鏡あるいはレー
ザー、超音波などでもいい。第三に、いうまでもなく内視鏡治療が可能とならなければならな
い。ハサミ、ナイフあるいは注射器などをカプセルにつけるのは当面不可能であるから、これ
に代わる治療方法を工夫する必要がある。レーザーなどはその有力な候補である。このような
innovativeな診断・治療方法が我が国から特に本学会から発信されることを祈る。
24
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
特別講演
演者履歴
寺 野 彰
勤 務 地 〒321−0293 栃木県下都賀郡壬生町北小林880番地 獨協医科大学
Tel)0282−86−1111㈹ Fax)0282−86−5678
学歴・学位等
昭和41年 3月 東京大学医学部医学科 卒業
昭和48年10月 司法試験合格
昭和58年 4月 医学博士(東京大学)
職 歴 等
昭和43年 4月 聖隷浜松病院勤務
昭和50年 4月 最高裁判所司法研修所司法修習生(〜昭和52年 3月)
昭和52年 4月 東京大学医学部第2内科
昭和54年10月 アメリカ合衆国ミズーリ大学、カリフォルニア大学留学
昭和59年 4月 日本国有鉄道中央鉄道病院消化器内科部長
昭和63年 1月 東京大学医学部第2内科講師
平成 6年 4月 獨協医科大学第2内科(現内科学(消化器))教授
(〜平成16年 3月31日)
平成14年 4月 獨協医科大学病院長(〜平成16年 3月31日)
平成16年 4月 獨協医科大学学長(〜平成23年 3月31日)
平成18年 4月 獨協大学法科大学院教授(医療と法)(現在に至る)
平成18年 4月 学校法人獨協学園理事長(学長兼務)
平成23年 4月 同 理事長(専任)
(現在に至る)
平成23年 4月 獨協医科大学名誉学長、名誉教授、特任教授
平成25年 5月 日本私立医科大学協会会長
審 議 会 等
前栃木県医療関係裁判連絡委員会委員
前厚生労働省保険医療専門審査員
前厚生労働省薬害性肝炎防止委員会座長
前厚生労働省個人情報保護法委員会委員
前厚生労働省臨床研究の倫理指針専門委員会委員
前文部科学省マイナンバー法委員会委員
日本私立医科大学協会副会長
同 法務委員長
全国医学部長病院長会議相談役 他多数
学 会 等
日本内科学会(認定医:指導医:評議員:前理事)
日本消化器病学会(指導医:財団評議員:前理事)
日本消化器内視鏡学会(専門医:指導医:評議員)
日本消化管学会(前理事長)
日本カプセル内視鏡学会(理事長)
国際観光医療学会(理事長)
アメリカ消化器病学会国際会員 他所属学会多数
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
25
26
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
教育講演
第 1会場
南館5階 エミネンスホール
13:40~14:40
カプセル内視鏡ガイドラインをめぐって
司会:藤本
一眞 佐賀大学医学部
演者:樋口
和秀 大阪医科大学
第二内科
山本
博徳 自治医科大学
内科学講座消化器内科学部門
内科学
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
27
教育講演
小腸内視鏡検査診療ガイドラインの概要
カプセル内視鏡を中心に
教育講演
樋口 和秀
大阪医科大学 第二内科
21世紀に入りカプセル内視鏡、バルーン内視鏡の開発が進み、深部小腸を含めた小腸全域が
内視鏡検査の対象となり、実臨床の現場で小腸内視鏡が日常診療として行われる時代となって
いる。カプセル内視鏡は、被検者が自らカプセル型の小型内視鏡を嚥下することによって低侵
襲に消化管の検査を行うことができる内視鏡機器で、上下部消化管内視鏡検査で汎用されてい
るチューブ型の内視鏡機器と異なる形態の機器である。カプセル内視鏡により連続的に撮影さ
れた静止画像は、無線で体外の記録装置に送信され、リアルタイムでその画像を観察すること
も可能である。記録装置の画像は専用ワークステーションにダウンロードされ、専用ソフトに
よってビデオ画像等として読影に用いられる。原因不明の消化管出血(OGIB)患者に対する
全小腸内視鏡観察率は85%との報告がある。近年の機器開発により、画質の向上、撮影範囲の
拡大、読影の効率化、撮影時間の延長などが図られると共に、食道や大腸など対象臓器の拡大、
パテンシーカプセルによる小腸適応疾患の拡大も行われた。
2007年に本邦で保険収載されたカプセル内視鏡の適用は、狭窄性病変によるカプセル内視鏡
滞留の危惧から、上部及び下部消化管の検査(内視鏡検査を含む)を行っても原因不明の消化
管出血を伴うOGIB患者に限定されていた。2012年にパテンシーカプセルが現在のコヴィディ
エンジャパン株式会社製カプセル内視鏡に対して保険承認され、消化管狭窄の疑いがある被検
者に対して消化管開通性確認用カプセル(PillCamパテンシーカプセル)による事前の消化管
開通性検査を行うことによって、
「小腸疾患が既知又は疑われる患者」と適応拡大がなされた。
世界中で一番認可適応範囲が広くなった。しかし、既知の高度消化管狭窄を有する症例や腸閉
塞例、腹部放射線照射歴を有する患者、ペースメーカー植込み患者、嚥下障害患者、妊婦、滞
留時にカプセル内視鏡回収に同意しない患者などは、禁忌ないし慎重に適用を判断する必要が
ある。なお、2015年1月より、カプセル内視鏡を嚥下することができた患者において、滞留等
の不具合発生に年齢による差異は認められないとの結果を受け、18歳未満の患者は使用上注意
すべき対象から外れ検査することが可能になった。このことにより、小児から成人まで幅広く
使用することが可能となり、小腸疾患の診断、治療経過観察などに力を発揮している。さらに
本講演では、疾患別の使用の特徴などについても触れる。
28
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
教育講演
小腸内視鏡検査診療ガイドラインの概要
バルーン内視鏡を中心に
教育講演
山本 博徳
自治医科大学 内科学講座消化器内科学部門
深部小腸は従来内視鏡の到達できない所謂暗黒大陸と称されていたが、21世紀に入りカプセ
ル内視鏡、バルーン内視鏡の開発が進み、深部小腸を含めた小腸全域が内視鏡検査の対象とな
った。小腸内視鏡検査が日常診療として行われるようになり、既に10年以上経過しており、小
腸内視鏡を適切に臨床で活用するための指針の必要性が指摘されていた。
このような背景でこのたび日本消化器内視鏡学会、日本消化器病学会、日本消化管学会、日
本カプセル内視鏡学会が共同して「小腸内視鏡検査診療ガイドライン」を作成した。
本ガイドラインは従来のガイドブック等とは異なり、科学的な手法に基づき、エビデンスや
コンセンサスに基づいた正統的な「ガイドライン」としてまとめたものである。
小腸内視鏡検査としてはカプセル内視鏡とバルーン内視鏡に絞り、まず核技術の特徴・手技・
偶発症を総論として解説し、その後、各論として臨床的に重要な病態ごとに臨床的疑問に答え
られるようなステートメントとその解説をまとめている。
本講演では今回作成・出版された小腸内視鏡診療ガイドラインの概要を特にバルーン内視鏡
を中心に解説させていただく。
バルーン内視鏡の最大の特徴は比較的低侵襲に小腸全域における内視鏡観察を可能とする優
れた挿入性と深部挿入後も保たれる操作性である。これらの特徴に加え、鉗子チャンネルも有
するため、生検や超音波内視鏡、マーキングの他、様々な内視鏡治療も可能である。バルーン
内視鏡には、内視鏡先端にもバルーンがついたダブルバルーン内視鏡と、内視鏡のバルーンが
ないシングルバルーン内視鏡がある。これらバルーン内視鏡の普及により多くの小腸疾患の診
断治療に革命がもたらされた。例えば小腸出血に対する内視鏡的止血術、小腸狭窄に対するバ
ルーン拡張術、Peutz-Jeghers 症候群に対する内視鏡的ポリープ切除術、小腸内異物の内視鏡
的回収などが挙げられる。
バルーン内視鏡を安全かつ効率的に活用するためのガイドラインをObscure gastrointestinal
bleeding、狭窄、小腸腫瘍、炎症性疾患、その他に関して解説させていただく予定である。
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
29
30
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
J-POP Study報告
第 1会場
南館5階 エミネンスホール
14:45~15:25
司会:松井
敏幸 福岡大学筑紫病院
消化器内科
J-POP Studyの概要とクローン病追加調査の解析結果について
大阪市立総合医療センター 消化器内科 渡辺
憲治
J-POP Study一次調査の解析結果について
名古屋大学 消化器内科 中村
正直
J-POP Studyの有害事象に関する追加調査の解析結果
東京女子医科大学 消化器内科 大森
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
鉄平
31
J-POP Study報告
J-POP Studyの概要と
クローン病追加調査の解析結果について
渡辺 憲治1)、大宮 直木2)、平井 郁仁3)、松井 敏幸3)
大阪市立総合医療センター消化器内科、2)藤田保健衛生大学消化管内科、
1)
福岡大学筑紫病院消化器内科
3)
J-POP Study
報告
【背景・目的】
RFIDタグを除いたPillCam Patency Capsule(PC)は世界で初めて本邦に導入され、カプセ
ル内視鏡(CE)滞留リスクがある症例の消化管開通性評価に汎用されている。大規模PC使用
実態調査により、PCの適正使用、検査精度の向上に寄与することを目的に全国多施設共同前
向き研究を行った(一次調査)
。また一次調査終了後に、PCに関連する有害事象(AE)クロ
ーン病(CD)に関する追加調査を行った。
【方法】
一次調査とAEに関する追加調査は、名古屋大学の中村先生と東京女子医科大学の大森先生
から報告させて頂く。CDの追加調査は、一次調査(2014年5月までに参加38施設でPCを施行
された1096例)のうちCEが施行されたCD確診例ないし疑診例に対し、CDの診断や治療方針
へのCE所見の寄与を調査表にて調査した。
【結果】
471例(CD確診例366例、疑診例105例)を調査対象とした。抄録記載時点での結果では、本
邦のCD診断基準の各所見は、①4〜5cm以上の縦走潰瘍は28例(CE実施の7.2%)、②敷石像も
28例(CE実施の7.2%)
、③広範囲に認める潰瘍やアフタは150例(CE実施の38.6%)、④特徴的
な胃・十二指腸病変は12例(CE実施の3.1%)に認めた。各所見を有した症例のうち、確定診
断に有効とされた症例は①で27例(96.4%)
、②で25例(89.3%)、③で88例(58.7%)、④で9
例(75.0%)であり、治療方針決定に有効とされた症例は①で27例(96.4%)
、②で21例(75.0
%)
、③で112例(74.7%)
、④で8例(66.7%)であった。一方、CD診断基準に含まれない所見
として、⑤4cm未満の縦走潰瘍は81例(CE実施の20.9%)
、⑥アフタや潰瘍の縦走配列は71例
(CE実施の18.3%)
、⑦狭窄は38例(CE実施の9.8%)に認めた。各所見を有した症例のうち、
確定診断に有効とされた症例は⑤で72例(88.9%)、⑥で53例(74.6%)、⑦で13例(34.2%)で
あり、治療方針決定に有効とされた症例は⑤で73例(90.1%)、⑥で54例(76.1%)、⑦で24例
(63.2%)であった。62例(CE実施の16.0%)でCD診断基準に含まれない所見を根拠に治療内
容が変更されていた。CD疑診例のうち最終診断がCDとなったのは36例で、広範囲に認める潰
瘍やアフタ(77.8%)
、4cm未満の縦走潰瘍(41.7%)
、アフタや潰瘍の縦走配列(41.7%)を多
く認めた。CEの盲腸到達率は、CD疑診例で97.9%(92/94例)、CD確診例で91.7%(264/288例)
であった。一次調査における有害事象は18/471例(3.8%)であった。内訳はCoating膜遺残9例
(1.9%)
、イレウス(サブイレウスを含む)6例(1.3%)、CE滞留4例(0.8%)、腹痛2例(0.4%)、
その他嘔気、排出時肛門部違和感を各1例ずつ認めた(0.2%)
。また1例はCE滞留に関連し外科
手術が施行されていた(0.2%)
(各有害事象内に重複あり)。
【結論】
今回検討したCE所見はCD治療方針の決定に高く寄与しており、CDに対するCE検査は治療
方針決定に有効な検査法の一つである。疑診例を含むCDに対するCEは、診断基準の広範囲に
認める潰瘍やアフタの他に、4cm未満の縦走潰瘍、アフタや潰瘍の縦走配列を多く認め、診断
の一助となる可能性が示唆された。
32
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
J-POP Study報告
J-POP Study一次調査の解析結果について
中村 正直1)、渡辺 憲治2)、大宮 直木3)、平井 郁仁4)、後藤 秀実1)、松井 敏幸4)
名古屋大学 消化器内科、2)大阪市立総合医療センター 消化器内科、
1)
藤田保健衛生大学 消化管内科、4)福岡大学筑紫病院 消化器内科
3)
カプセル内視鏡(CE)の消化管開通性を確認するAgile Patency Capsuleは欧米で先行導入
されていたが、RFIDタグを抜いたPillCam®パテンシーカプセル(PC)は本邦で初めて導入さ
れた。これを契機にPillCam®SB2 plus,3の保険適用が全小腸疾患(疑い含)に広がり、現在3年
が経過したが、その状況や成績の詳細は十分には把握されていない。本研究の目的は、臨床現
場でのPC使用実態調査を全国多施設共同前向き研究で行い、その解析結果からPCの適正使用、
機器改良に寄与することである。
【方法】
方法はCE導入施設において本試験に対しての倫理委員会承認が得られた後、PCを行う患者
をエントリーした。PCとCEに関する調査表を事務局へFAX、集計し解析した。主要評価項目
はPCで消化管開通性が証明された症例におけるCEの滞留発生率である(UMIN000010513)。
【結果】
2013年4月から2014年5月の間に38施設から1096例のエントリーを得た。PC-CEの使用目的は
病変存在診断875例、病変活動性の把握495例、病変分布の把握が450例(以上は重複あり)と
多かった。消化管開通性は974例(88.8%)で確認され、975例(89.0%)でCEが施行された。
抄録記載時点の疾患別では炎症性疾患精査が724例(66.0%)と最も多く、既知のクローン病
366例、クローン病疑い105例、NSAID内服患者の精査93例の順であった。腫瘍性疾患は147例
で悪性リンパ腫精査が44例と最も多かった。PCが必要とされた原因不明の消化管出血精査は
127例、腹痛または腹部癒着が76例、腸閉塞後16例、蛋白漏出性胃腸症9例であった。腹部手術
歴は399例(36.4%)
、他画像狭窄を241例(21.9%)で認めた。PCの禁忌とされるイレウス症
状
(腸閉塞16例含)
でのPC施行を48例で認めた。PC体外排出最終確認方法は目視575例(52.1%)、
単純Xp 250例、CT131例、その他140例であった。PCにおける消化管開通に関わる有意な因子
はクローン病、狭窄症状、画像狭窄、判定時間であった(P<0.0001, 0.0039, <0.0001, <0.0001)。
CE結果の臨床への寄与は、病変の確認によるものが803例(73.2%)と高率であった。開通性
確認後のCE滞留は5/1096例(0.45%)で認め、クローン病が最も多かった。
【結論】
PCで開通性が得られた場合においてもCE滞留が約0.5%で起こり得るため、CTによる大腸
到達の確認の徹底や開通性確認後すみやかにCEを行う等の方策が必要である。
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
33
J-POP Study
報告
【背景・目的】
J-POP Study報告
J-POP Studyの有害事象に関する追加調査の解析結果
大森 鉄平1)、渡辺 憲治2)、大宮 直木3)、平井 郁仁4)、松井 敏幸4)
東京女子医科大学 消化器内科、2)大阪市立総合医療センター 消化器内科、
1)
藤田保健衛生大学 消化管内科、4)福岡大学筑紫病院 消化器内科
3)
J-POP Study
報告
【目的】
J-POP Study参加施設でパテンシーカプセル(PC)による開通性評価を行った症例における
有害事象(AE)を追加調査し、PCの適正使用に寄与することを目的とした。
【対象と方法】
J-POP Study参加施設にAEに関する追加調査アンケートを送付し、一次調査に加え、2015
年3月までに発生したPCに関するAE報告を集積した。AEは各施設のPC総検査数を母集団と
して解析した。またPC検査後にカプセル内視鏡検査(CE)の滞留を生じた例は、その詳細を
検討した。
【結果】
追加調査アンケートはJ-POP参加施設のうち41施設から回答を得た。2015年3月までに各施
設で行ったPC検査総数は2578例で、AEは62/2578例(2.4%)であった。41施設中19施設にお
いてAEは生じていなかったが、PC検査数はAEを生じた施設(80.9±54.8)で有意にAEを生
じていない施設(42.0±46.5)より多かった(p=0.0034)
。内訳はCoating膜遺残23例(0.89%)、
イレウス(サブイレウスを含む)23例(0.89%)、CE滞留11例(0.42%)、腹痛6例(0.23%)、嘔
気3例(0.11%)、その他に誤嚥、排出時肛門部違和感、出血、33時間以内のPC崩壊を各1例ず
つ認めた
(0.04%)
。また10例
(うち4例はCE滞留に関連)に外科手術が施行されていた(0.39%)
(各
有害事象内に重複あり)
。イレウス症状を認めたうち16/23例(69.5%)はPC服用以前より腹痛
を自覚していた。また16/23例(69.5%)は腸管安静のみでイレウス症状は軽快していた。外科
手術の10例中4例は PC検査中にイレウス症状を発症しており、うち3例は以前より腹痛の自
覚があった。CE滞留11/2578例(0.42%)
(ただし4例はCE施行後2週間以内に内視鏡的に回収)
は全例でPC原型排出は確認できず、開通性評価判定法は9例が腹部単純X線撮影のみ、1例が
CT検査を、1例が透視下検査を追加して行われていた。開通性判定時間が48時間後であった1
例では、単純X線撮影で体内に確認できず既排出と判断されたが、CEは空腸で滞留した。こ
の1例を除く10例のPC局在は大腸と判定され、CEが施行されたがCE滞留は空腸2例、回腸6例、
結腸回腸吻合部口側2例で生じていた。結腸回腸吻合部で開通性ありと判定した2例はCT検査・
透視下検査を追加した症例であった。滞留11例中9例で内視鏡的にCEが回収され、1例は滞留
後のサブイレウス症状で、1例は内視鏡的回収困難で各々手術が行われた。またCEの内視鏡的
回収後2例が手術適応狭窄と判断され手術が行われた。小腸外の滞留事例として、PC局在はス
トマ手前のS状結腸と判定されCEを施行したが、CEが同様にS状結腸で滞留し大腸内視鏡で回
収した1例を認めた。
【まとめ】
PCに関連する主なAEはCoating膜遺残、イレウス、CE滞留である。イレウスを生じた症例
の多くは事前の腹痛があり、問診が重要である。結腸回腸吻合部を有する症例は開通性評価を
慎重に行う必要がある。CE滞留の主な原因はPC開通性判定の誤りで、正確な判定で大半のCE
滞留は回避できると思われる。Coating膜遺残やイレウスを生じないPCの改良が期待される。
34
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
スペシャルシンポジウム
第 1会場
南館5階 エミネンスホール
15:30~17:00
カプセル内視鏡における他科連携
司会:大塚
久松
和朗 東京医科歯科大学附属病院 光学医療診療部
理一 杏林大学医学部附属病院 消化器内科
共催:コヴィディエン
ジャパン株式会社
協力:富士フイルムメディカル株式会社
カプセル内視鏡検査における内科と外科の連携
三重大学医学部附属病院 光学医療診療部 葛原
正樹
小児のカプセル内視鏡−消化器内科・小児外科との連携−
信州大学医学部附属病院 小児科 中山
佳子
循環器疾患患者におけるカプセル内視鏡検査の有用性
春秋会 城山病院 消化器内科/大阪医科大学 第2内科 太田
和寛
慢性維持透析患者における小腸病変
慶應義塾大学医学部 内視鏡センター 細江
直樹
国立がん研究センター中央病院 内視鏡科 角川
康夫
カプセル内視鏡を用いた腸管GVHD診断
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
35
スペシャルシンポジウム
カプセル内視鏡検査における内科と外科の連携
葛原 正樹
三重大学医学部附属病院 光学医療診療部
当院は、2012年1月に現在の新病院が開院となり、消化器肝臓内科(光学医療診療部を含む)
と消化管外科(IBD)が同じ病棟にて診療を行えるようになった。両診療科が連携し、日々情
報の交換・共有を密に行うことによって、炎症性腸疾患(IBD)に特化した専門的な治療を行
うことが可能となった。2週間に1回の合同カンファレンスでは外来および入院患者の診断、治
スペシャル
シンポジウム
療方針を検討し、内視鏡検査が必要な症例について外科側からの検査依頼や内科側からの提案
が積極的に行われている。現在では、バルーン小腸内視鏡検査、小腸カプセル内視鏡検査の全
てを当科で担当している。
当科では小腸カプセル内視鏡を2009年から導入し、2015年10月までに439例(重複含む)施
行している。当科のカプセル内視鏡の実施状況及び他科連携として当科と外科(IBD)との関
わりについて以下に示す。当科のカプセル内視鏡の検査理由の内訳はOGIB 231例(52.6%)、
IBD(疑い含む)53例(12.1%)
、腹痛・下痢精査39例(8.9%)、CT etc 画像検査異常22例(5.0
%)
、その他 94例(21.4%)であった。紹介元は、市中病院237例(総合病院217例、クリニッ
ク20例)であり、院内(当科90例を含む)は203例であった。当科を除いた院内診療科113例の
内訳は、消化管外科(IBD)32例(28.3%)が最も多く、続いて循環器内科19例(16.8%)
、血
液内科12例(10.6%)
、
小児外科11例(9.7%)
、
その他39例(34.5%)であった。消化管外科(IBD)
32例の疾患内訳は、IBD25例(クローン病17例、潰瘍性大腸炎7例、腸管ベーチェット病1例)
、
その他6例(消化管ポリポーシスを含む)であった。クローン病は手術症例14例(術後1年以内
7例、1年以降7例)
、非手術症例3例で、有症状/無症状10/7例であった。10例(58.8%)で有所
見(縦走潰瘍5例、潰瘍5例、びらん1例)で、5例で追加治療が行われた。潰瘍性大腸炎は大腸
全摘後7例(出血4例、小腸病変検索3例)に施行された。また小児への適応拡大以降に小児外
科から依頼され施行したカプセル内視鏡11例のうちIBDを3例(クローン病2例、潰瘍性大腸炎
1例)に認めた。症例数は少ないものの、IBD診療において、カプセル内視鏡を有効に使用し
た診療科の連携を行うことは重要であると考えられた。
36
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
スペシャルシンポジウム
小児のカプセル内視鏡−消化器内科・小児外科との連携−
中山 佳子
信州大学医学部附属病院 小児科
2015年2月に小腸用カプセル内視鏡の添付文書から「18歳未満の患者では安全性が確認され
ていない」との注意喚起が削除され、小児への適応が拡大した。これまで内視鏡以外の画像検
査による間接的な診断、そして外科的手術によって確定診断ならびに治療が行われること多か
った小児の小腸疾患が、小腸カプセル内視鏡(SBCE)を用いることで非侵襲的に評価可能と
日本小児小腸内視鏡検討会による国内17施設から集積された約250件の小児SBCE後方視的
症例研究では、本邦小児の最年少例は10か月(体重7.4kg)
、5歳以下は全例上部消化管内視鏡
スコープによるカプセル留置が行われており、滞留は4例(1.6%、5〜14歳)で低年齢における
合併症の増加は確認されなかった。
小児のSBCEは、①カプセルの嚥下が可能であるか又滞留した場合にバルーン内視鏡が可能
であるかを、患者の年齢・体格や基礎疾患を考慮して事前に慎重に判断しなくてはならない、
②嚥下できない症例への内視鏡留置、滞留した場合のバルーン内視鏡による回収時には鎮静ま
たは全身麻酔を必要とする、③海外の小児において既知のIBDでやせが強い症例では滞留率が
43%と高率であるとの報告があり、パテンシーカプセルなどによる適切な小腸開通性の評価方
法、
④小腸疾患としてクローン病、
先天性疾患(メッケル憩室など)、遺伝性疾患(Peutz-Jeghers
症候群など)が多い、といった特徴がある。このため小児内視鏡の経験の豊富な施設であって
も、各施設の診療体制に応じて消化器内科・小児外科・麻酔科との連携が必須となる。
また、カプセル内視鏡画像の読影および診断精度の向上という観点では、我々小児科医も今
迄以上に本学会の教育プログラムや学会活動を通じ、さらなるスキルアップが必要となってい
くであろう。
小児におけるカプセル内視鏡の今後の展望として、大腸用カプセル内視鏡による大腸疾患の
診断や炎症性腸疾患の治療効果判定が挙げられる。一方、小児患者でも容易な消化管前処置法
またカプセルの嚥下ができない小児への対応策など検討すべき課題も多い。
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
37
スペシャル
シンポジウム
なった恩恵は計り知れない。 スペシャルシンポジウム
循環器疾患患者におけるカプセル内視鏡検査の有用性
太田 和寛1、2)、原 あずさ2)、小嶋 融一2)、能田 貞治2)、竹内 利寿2)、嶋田 芳久3)、
福本 仁志3)、東野 健1)、樋口 和秀2)
春秋会城山病院 消化器センター 消化器内科、2)大阪医科大学 第2内科、
1)
春秋会城山病院 心臓血管センター
3)
循環器疾患患者の多くは抗血栓薬の内服が必要であるが、それによる消化管出血を度々経験
する。また、消化管出血による貧血が循環器疾患を悪化させることもある。抗血栓薬の中でも
スペシャル
シンポジウム
特に低用量アスピリン(LDA)は、出血傾向だけでなく、消化管粘膜傷害作用も有し、消化
管出血のリスクが高い。高齢化が進む中、抗血栓薬内服患者は増加しており、消化管出血に対
するマネジメントは重要である。LDA内服中患者を対象にCEを施行し、小腸粘膜傷害の有所
見率を検討した大阪医科大学主導の臨床試験結果(中間解析)では、39例中全例に何らかの粘
膜傷害を有していた。ただし、粘膜傷害の程度とヘモグロビン値に相関は無く、治療対象とす
るかは今後更なる検討が必要である。
今回、LDAによる小腸粘膜傷害の検討結果、LDAによる消化管粘膜傷害に対する循環器医
の意識調査の結果、当院での経験例から市中病院での循環器疾患患者におけるカプセル内視鏡
(CE)の役割について述べる。
当院循環器科医11名に対しLDAによる消化管粘膜傷害についての意識調査の結果を示す。
すべての医師がLDAにより全粘膜傷害が全消化管に生じうることを認知していたが、予防方
法はPPIで十分と考えていた。前述の試験結果が示すようにLDA服用患者では高率に小腸粘膜
傷害を有すること、一部の胃粘膜保護薬がLDA起因性小腸粘膜傷害に有効と報告されている
ことを、我々消化器内科医が循環器科医へ啓蒙することが重要と考えられた。
続いて、市中病院である当院(全299床)でのCEの経験例について述べる。尚、当院にはバ
ルーン内視鏡は有していない。2014年4月以降、19名の循環器疾患患者に対し小腸出血の精査
目的でCEを施行した。うち18名に抗血栓薬の内服があった。結果、13例に小腸病変を認め、3
例で小腸病変の除外が可能であった。診断が確定できていない1例は大腸内視鏡検査未施行
で、機器不具合と夜間譫妄にて2例で検査が正常に実施できなかった。小腸病変13例の内訳は、
LDA起因性粘膜傷害9例、血管性病変3例、ポリープ1例で、LDAによる粘膜傷害の症例には自
院で粘膜保護薬の投与で対応し、血管性病変やポリープの症例については転院のうえ加療を行
った。CEは、小腸病変の診断と治療方針の決定に有用であり、LDAを含めた抗血栓薬内服患
者が多くなる今日、バルーン内視鏡を持たない市中病院においても重要な役割を成すモダリテ
ィと考えられた。
38
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
スペシャルシンポジウム
慢性維持透析患者における小腸病変
細江 直樹
慶應義塾大学医学部 内視鏡センター
原因不明消化管出血に対するカプセル内視鏡VCE(Video capsule endoscopy)の有用性は数多
く報告されている。一方、慢性維持透析患者は年々増加し、2013年末の報告では、30万人を超
えている。また、慢性維持透析患者の死因の2%程度は消化管出血によるものである(日本透析
医学会ホームページより)。原因不明消化管出血を主訴とする患者の中で、慢性維持透析患者
亡原因となった出血の一部は小腸出血であると推察され、慢性維持透析患者の消化管病変、特
に上部、
下部内視鏡検査で観察することのできない小腸を検索することは重要である。そこで、
慢性維持透析を行っている患者に対しVCEを施行し、慢性維持透析患者における小腸疾患の
頻度を調査することを目的とし、横断研究を行った。方法は2010年3月より、東京都多摩市に
ある外来透析クリニック(多摩永山腎・内科クリニック)の外来維持透析患者112人を対象と
し、除外基準(複数回の手術歴、腹膜透析の施行歴、高度の心不全、呼吸不全など)に該当する
患者19例を除く文書による同意を得た56例にVCEを施行した。また、カプセル内視鏡所見の
臨床的な意義を検討するために、カプセル施行後一年間の観察期間を設け、そのアウトカムを
記録した。結果は、本試験に起因する有害事象は認められず、64.8%で小腸に何らかの所見を
認めた。一年間の経過観察期間の間、1例で、VCEで指摘された小腸潰瘍、輪状狭窄に対し手
術を施行した。カプセルの排出は最終的に確認されたが、5例で30分以上食道にカプセルが停
滞、2例で胃に8時間以上カプセルが停滞した。小腸以外にも胃出血、大腸潰瘍などが認められ
た。今後さらなる検討が必要であるが、腎臓内科医と連携を取りながら、慢性維持透析患者に
対しVCEを施行することは有用であると考えられた。
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
39
スペシャル
シンポジウム
の占める割合は高いといわれているが、その頻度は不明な部分が多く、慢性維持透析患者の死
スペシャルシンポジウム
カプセル内視鏡を用いた腸管GVHD診断
角川 康夫、福田 隆浩、斎藤 豊
国立がん研究センター中央病院 内視鏡科
造血幹細胞移植は血液悪性疾患の根治的治療法として、その治療成績の向上に大きく寄与し
ている。しかしながら、この治療法は毒性が強く致死的となることも少なくない。代表的なも
のに移植片対宿主病(graft-versus-host disease: GVHD)が挙げられる。この消化管GVHDの好発
部位は回腸末端である。腸管内腔にわたってびまん性に広がる絨毛萎縮、絨毛脱落はGVHDに
スペシャル
シンポジウム
特異的所見である。この消化管GVHDと鑑別が必要なものに消化管cytomegalovirus(CMV)
感染症が挙げられる。散在性のびらんを呈することが多い。造血幹細胞移植後の消化管CMV
感染症では深掘れ潰瘍(punched-out ulcer)は意外と少ない。
これらの診断は主に上下部消化管内視鏡検査で得られる生検組織の病理学的診断によるが、
カプセル内視鏡の活用については十分明らかとなっていない。
小腸カプセル内視鏡の最大の利点は苦痛を伴わないことであり、全身状態が不良の造血幹細
胞移植症例においても躊躇なく行える。私たちは造血幹細胞移植後の症例の消化管検索にカプ
セル内視鏡を積極的に活用している。未だ十分に報告されていないカプセル内視鏡のGVHD肉
眼像について画像を提示し概説する。この侵襲の少ない小腸カプセル内視鏡が造血幹細胞移植
の分野で果たす役割は今後さらに大きくなってくるだろう。
40
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
特別企画
第 3会場
本館4階 花C
9:00~10:55
読影支援における診断精度向上とは
司会:田村
阿部
君英 医療法人社団卓秀会平塚胃腸病院
孝 宝塚市立病院
基調講演
大腸肛門病センター高野病院 野崎
良一
当院におけるカプセル内視鏡の現状と内視鏡技師の関わり
川崎医科大学附属病院 内視鏡・超音波センター 河上
真紀子
カプセル内視鏡導入前からの取り組みおよび読影支援の実際と効果について
大腸肛門病センター高野病院 松平
美貴子
カプセル内視鏡読影支援において診断精度向上のため当院での取り組み
宝塚市立病院 消化器内視鏡センター 松本
裕子
独立行政法人労働者健康福祉機構大阪労災病院 中央検査部内視鏡部門 出野
憲由
治療につなげる読影支援
大腸カプセル内視鏡読影支援における診断精度向上を如何に図るべきか?
−読影支援センターの経験から−
若宮渡部医院 渡部 宏嗣
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
41
特別企画
基調講演
野崎 良一
大腸肛門病センター高野病院
【はじめに】
カプセル内視鏡検査(CE)の進歩と普及にともない、検査の円滑な運用、読影や研究の円
滑化を図ることを目的として、2014年CEの専門知識と読影技術を備える技師を「カプセル内
視鏡読影支援技師」として認定する資格制度が発足した。2014年から小腸カプセル内視鏡、
2015年から大腸カプセル内視鏡の読影支援技師が誕生している。今後、CEの更なる普及のた
めには、読影支援技師の養成と精度管理が重要である。
【読影支援技師の養成】
各施設における実地臨床、日本カプセル内視鏡学会(JACE)主催の読影ハンズオンセミナ
特別企画
ーはCE機器の操作、基本的事項の習得に有用であることは論じるまでもない。読影技術の修
練にはeラーニングが大変有用であり、CE初学者の技師の読影能力向上に寄与することが報告
されている(渡辺ら、2014)
。小腸CEではびらん・潰瘍、血管性病変、腫瘍性病変、大腸CE
ではポリープ・がん病変の診断に習熟することを目標とする。
【精度管理】
CEの精度管理すなわち診断精度向上のためには大腸内視鏡検査で示されているような
quality indicatorの設定が今後必要と思われるが、現時点でCEに関しては国内外ともに確立
したものはない。診断精度向上のためには、小腸CEに関して、リアルタイムビューワーの活
用、前処置の工夫、読影精度の向上(読影熟練者2人によるチェック)が挙げられる(塩谷ら、
2013)。大腸CEに関しては、ブースターを含めた腸管前処置法の標準化(腸管洗浄度、肛門か
らの排出率向上)
、CE所見と大腸内視鏡画像の対比(特に表面型腫瘍)
、読影精度の向上(読
影熟練者2人によるチェック)が必要である。さらにはコンピュータ読影支援(CAD)の実地
診療への導入が精度向上として期待される。
【診断精度向上への当院の取り組み】
ハード面として、CE説明用資材、同意書、患者用クリニカルパス、スタッフ用チェックリスト
(行動チェック表、手順書)などを作成して運用した。ソフト面では、JACE主催の読影ハン
ズオンセミナー、学会への参加、医師・技師による合同勉強会開催、eラーニングの受講など
を行った。読影に関しては、一次読影を読影熟練者である認定支援技師、二次読影を指導医が
行っている。最近は、一次読影を読影初心者の技師、二次読影を読影熟練技師、三次読影を指
導医が行い、トリプルチェックにより読影技師の養成、診断レベルの向上を図っている。
42
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
特別企画
当院におけるカプセル内視鏡の現状と内視鏡技師の関わり
河上 真紀子1)、塩谷 昭子2)、春間 賢2)、本多 啓介3)、畠 二郎4)
川崎医科大学附属病院
内視鏡・超音波センター、2)消化管内科、3)総合診療部、
1)
検査診断学(内視鏡・超音波)
4)
【背景】
当院ではRAPID®リアルタイム、PillCam®SB2を導入し、撮影時間の延長や、画像の鮮明
さの向上などにより精度の高いカプセル内視鏡検査を実施できている。また、2013年度よりカ
プセル内視鏡読影支援技師制度が制定され、小腸・大腸とともに内視鏡技師によるカプセル読
影の技術向上が進められてきている。
【目的】
カプセル内視鏡検査の精度向上のための工夫と内視鏡技師による読影について検討した結果
【方法】
大腸・小腸カプセル内視鏡検査を行った患者のカプセル画像を、内視鏡専門医2名と内視鏡
技師1名で読影し、病変検出率および見落とし病変について比較検討した。
【結果】
リアルタイム導入後では盲腸到達率(86%)および病変検出率(80%)は有意に上昇し
たが、SB2の導入後、盲腸到達率は93.4%とさらに改善した。内視鏡技師は内視鏡専門医読
影初心医師より有意に病変を検出でき、内視鏡専門医読影熟練医師と同定度に病変を検出し
た。内視鏡技師による読影時間は、小腸カプセル(平均28分)と比較して大腸カプセル(平均46
分)の方が長かった。
【結論】
内視鏡技師がカプセル内視鏡の説明、患者チェックイン・装着・リアルタイムビューアによ
る胃・小腸・大腸到達のチェック・ダウンロード・読影等に関わることによって、医師の負担
を軽減し、検査精度の向上に貢献できる。大腸カプセル嚥下後のブースター磁気の決定を含め
た積極的な介入および読影支援は、全大腸観察率及び精度向上に不可欠と思われる。読影支援
技師の取得により、e-ラーニングで学ぶことは、読影制度の向上にもつながっている。
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
43
特別企画
を報告する。
特別企画
カプセル内視鏡導入前からの取り組みおよび読影支援の
実際と効果について
松平 美貴子1)、西坂 好昭1)、宮本 光輝1)、野崎 良一2)
大腸肛門病センター高野病院
内視鏡技師、2)医師
1)
【はじめに】
当院は熊本県下の民間病院の中で初めてカプセル内視鏡システムを導入した。導入する2年
前から、担当医師とともに勉強会やセミナー・読影トレーニングに参加しノウハウを習得した。
そのため、始めから一次読影は内視鏡技師が行っている。当院における一次読影の実際とその
効果について報告する。
また、メディカルスタッフ対象の読影セミナーの講師を担当したことがあり、その上で今後
の読影支援技師育成へ向けての考察および問題点を述べる。
【導入前の取り組み】
特別企画
①勉強会やセミナー・読影トレーニング参加、②部門別勉強会の開催(職員全体・内視鏡ス
タッフ・医局対象)
、③医師使用の資料作成(I.C用説明書・同意書)④患者用クリニカルパス
の作成、⑤スタッフ用資料の作成(行動チェック表・手順書)。
【一次読影の実際】
準備・検査の実施・カプセル到達部位の確認・一次読影など一連の流れは内視鏡技師が施行
している。一次読影後に医師が読影し最終診断を行う。一次読影は可能であれば業務調整する
が、ほとんどが時間外勤務になっている。一次読影を一人の技師が担当する場合は、必ず2回
見ている。2人が対応できる場合は、経験が浅い技師が先に読影しダブルチェックをしている。
気になる画像はサムネイルに保存し、コメントは適宜入力し、レポートも可能な限り入力して
いる。
【読影支援技師育成へ向けての考察および問題点】
これまでにメディカルスタッフ向けの読影トレーニングセミナーの講師を2回務めた。参加
者のほとんどが看護師で、PCに慣れていない人が多く、PC操作の基本から教える必要があり
予想以上に時間を要した。各地域でのメディカルスタッフ向けのハンズオントレーニングの開
催が必要であると考える。さらに、各施設のスタッフ間で相談や助言をし合えたり、ダブルチ
ェックができるような地域単位のネットワークの構築が望まれる。
【結語】
CE普及のためには、メディカルスタッフがCEに携わり一次読影を行うことは必要不可欠で
あると思われる。今後、メディカルスタッフ(特に看護師)の育成に向けて、勉強会・セミナ
ー・ハンズオントレーニングの開催やサポートシステムの構築を期待する。
44
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
特別企画
カプセル内視鏡読影支援において診断精度向上のため
当院での取り組み
松本 裕子1)、村上 雅也1)、畑 真理子1)、山㟢 之良2)、李 兆亮2)、田村 公佑2)、
柚木崎 紘司2)、宮崎 純一2)、阿部 孝2)
宝塚市立病院 消化器内視鏡センター
内視鏡技師、2)医師
1)
【背景・目的】
当院では2010年7月に、小腸カプセル内視鏡検査(以下CE)を導入した当初より、読影支援
には技師が携わっている。2014年度より、
「カプセル内視鏡読影支援技師認定制度」が開始さ
れた。当院でも3人の内視鏡技師が読影支援技師に認定され、読影支援において診断精度向上
に努めている。今回、カプセル内視鏡読影支援において診断精度を上げるために、当院で取り
組んでいる内容について報告する。
【対象・方法】
CEの読影支援においては、3人の担当技師を配属している。CEの読影支援において、技師は
下記を担当している。①ランドマークのキャプチャ。②サムネイルの作成。③サムネイルコメ
ント入力。④検査情報・所見の入力。⑤カルテより紹介理由の入力。⑥他の技師が再度画像を
確認(ダブルチェック)
。上記終了後、CE担当医師が①から⑤を確認。2015年3月までは、医
師が画像をすべて確認していたが、
所見の拾い上げで拾い漏れはなく、所見の解釈(異常か否か)
や診断の推定に関しても相違はなかった。さらに、医師の業務を軽減するため、2015年4月から、
医師は拾い上げた所見を確認し、必要と判断した部分のみ画像を確認するという方法に変更し
た。2015年4月から2015年8月までにCE 25件の読影支援を施行した。
【結果】
必 要 部 分 の 画 像 確 認 を 行 う こ と で、 診 断、 追 加 検 査、 治 療 方 針 の 判 断 に 問 題 は な か
った。
【考察】
読 影 を 技 師 で ダ ブ ル チ ェ ッ ク す る こ と で、 拾 い 漏 れ な ど の リ ス ク が 減 少 し た。 さ ら
に、読影支援の精度向上へと繋がった。絶対的医行為以外を読影支援することで、医師の業務
が軽減できた。
【結論】
今後も読影支援を行うことにより、診断精度が向上できるよう、より一層努力していきたい
と考えている。
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
45
特別企画
当院では、院内でCEを年間約120件施行、他院から年間約120件の読影依頼を受けている。
特別企画
治療につなげる読影支援
出野 憲由、 榎本 毅
独立行政法人労働者健康福祉機構大阪労災病院 中央検査部内視鏡部門
【目的】
内視鏡技師(臨床検査技師)における読影支援について、読影精度を向上させる取組みに加
えて、治療内視鏡へつなげる読影支援技師の関わり方を報告する。
【当院の現状】
小腸カプセル内視鏡(以後CE)は2009年4月より導入した。当初は年間CEが10件ほどであ
ったが、現在では週1件(平成27年度上半期30件)と増加し、総計133件である。
大腸カプセル内視鏡(以後CCE)は2014年6月より導入し、2015年9月末総計22件。
検査説明:CEは内科外来看護師、CCEは内視鏡技師(臨床検査技師)が担当している。
特別企画
検査実施:問診、アンテナ装着、カプセル嚥下を含め一貫して内視鏡技師(臨床検査技師)が
行う。
【読影】
①必ず2名の内視鏡技師が時間を変えて行うことを原則としている。(デュアルの表示スピー
ド10〜15を使用)②出血原因精査などで出血が疑われる場合には、レコーダダウンロード後に
できる限り速やかに読影をクワッドで開始し、出血の有無などを30分以内に主治医に仮報告を
行い、当日中にデュアルでプレ読影を行っている。
【精度向上への取り組み】
検査説明・問診を丁寧に行い、各個人に合わせた工夫をすることもあり、きれいな撮像を撮
ることを心掛けている。読影ではJACEのe-ラーニングの活用は基本として、DBEやCSの施行
中に画像をよく見ることに加えて、所見の内視鏡画像と病理結果について、技師間で定期的に
目あわせをして確認を行っている。
【まとめ】
技術的精度の向上に加え、治療開始までの時間短縮を行うことで、迅速な治療につなげる読
影支援ができると考える。
46
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
特別企画
大腸カプセル内視鏡読影支援における診断精度向上を如何に
図るべきか? −読影支援センターの経験から−
渡部 宏嗣
若宮渡部医院
【背景】
2014年1月、大腸カプセル内視鏡検査(Colon capsule endoscopy: CCE)が保険適用となっ
た。我々は保険適応当初より、CCE読影支援センター(first CE reading support center; 以下
FCERC)を開設し、読影支援業務を行っている。開設より現在までのところ、読影支援業務
は順調に行われている。FCERC開設当初は、全国の他施設と同様に、読影支援者自身のCCE
の経験も十分ではない状況であった。そのような状況の中で、安全かつ高品質な読影支援を実
施するための、我々の取り組みを紹介する。
【読影支援の実際】
読影支援は以下の手順により行っている。①CCE実施各施設より、連結不可能匿名化された
センター)
に送付して頂く。②C社サポートセンターは、CCEデータに新たなIDを付与した上で、
匿名化データを外部サーバーにアップロードし、読影依頼が発生した旨を、FCERCに連絡する。
③FCERCにおいては、読影の質を担保するため、3名の消化器内科医師が独立してCCEの読影
を行う。3名の内訳は、
非認定医(小腸CE読影20例)1名、CE暫定認定医(小腸CE読影500例以上)
1名、CE暫定指導医(小腸CE読影500例以上)1名である。各読影医師が、外部サーバーにア
クセスし、各自が読影した上で、レポートをアップロードした。④2名以上が指摘した場合は
病変とした。1名しか指摘していない場合は、暫定指導医が再読影し、病変かどうか判断した。
⑤FCERCからC社サポートセンターに読影が終了した旨を連絡し、C社サポートセンターから、
電子メールにより、最終レポートを依頼施設に送付した。
【結果】
2015年8月までに87例の読影支援を行った。依頼元は全国25施設であった。集計的解析同意
症例は80例(平均年齢 63.2±14.4才)であった。48例(60%)において、全大腸観察が達成
されていた。大腸撮影時間は7分〜956分とばらつきを認めた(平均358.9±295.7分)大腸ポリ
ープを53例(うち、6ミリ以上のポリープ:34例)に認めた。52例(65%)において、追加検査
を勧告した。
【考察】
CCE読影支援においては、複数施設で実施された症例の集合であり、その検査理由も多岐に
渡ることから、大腸撮影時間、観察条件、発見病変のいずれも非常に多彩である。様々な状況
に対応するためには、読影者各個人の経験を増やすことが最も重要であると思われる。CCE
導入初期の段階では、複数の読影者による独立した読影を行うことにより、診断能の向上が可
能になると思われる。今後読影支援のニーズは更に増加すると思われ、コメディカルスタッフ
による読影を含めた読影支援体制の確立が必要である。その為にも、コメディカルスタッフを
対象とした読影トレーニングの機会を確保する必要がある。
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
47
特別企画
CCEデータを依頼状と共にCovidien社内に設置された読影支援センター(以下、C社サポート
48
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
主題演題
第 1会場
南館5階 エミネンスホール
9:00~10:55
大腸カプセル内視鏡における診断精度向上
司会:加藤
山田
智弘 東京慈恵会医科大学大学院 消化器内科学
篤生 東京大学医学部附属病院 消化器内科
SC -1
大腸カプセル内視鏡におけるポリープの性状と読影力が診断精度に与える影響
SC -2
当院における大腸カプセル内視鏡検査(CCE)の診断精度の検討
SC -3
大腸カプセル内視鏡検査の精度検証:2cm以上の表面型病変を発見できるか?
SC -4
当科における大腸カプセル内視鏡施行例の臨床的特徴
SC -5
大腸カプセル内視鏡読影における画像強調システムFICEの有用性について
SC -6
CO2送気下観察で大腸カプセル内視鏡の診断精度は上がるか?
SC -7
大腸カプセル内視鏡による潰瘍性大腸炎粘膜治癒の評価
横浜市立大学 肝胆膵消化器病学 加藤
愛晋会中江病院 内視鏡治療センター 中路
孝征
幸之助
福島県立医科大学会津医療センター 小腸大腸肛門科 歌野
松山赤十字病院 胃腸センター 岩㟢
藤田保健衛生大学 消化管内科 大森
札幌整形循環器病院 消化器内科 太田
慶應義塾大学病院 消化器内科 宮永
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
健一
一秀
崇史
英敏
亮一
49
SC - 1
大腸カプセル内視鏡におけるポリープの性状と
読影力が診断精度に与える影響
加藤 孝征、遠藤 宏樹、中島 淳
横浜市立大学 肝胆膵消化器病学
【目的】
大腸カプセル内視鏡(CCE)が保険収載されたが、前処置法や読影などまだ課題は多
い。CCEのメインターゲットが腫瘍性病変となることは間違いなく、これらの病変の診断精
度や読影で注意する点を十分理解しておくことが臨床上非常に重要である。今回我々はCCE
による大腸ポリープ診断精度および読影力が診断精度に与える影響について検討した。
【方法】
当院で2014年3月〜2015年1月の期間に大腸ポリープに対する内視鏡治療目的で入院した患者
のうち治療前のCCE検査に同意された19名を対象とした。1)ポリープ診断精度は、読影セミ
ナーを受講した医師2名が、まずポリープ情報(部位、大きさ、形態)を盲検化して読影(初
回読影)
、次に内視鏡治療の結果を確認後再読影(二次読影)し、それぞれ内視鏡治療時のポ
リープ所見との一致率を解析した。2)読影力が診断精度に与える影響については、上述した2
名の医師の読影結果と読影セミナー未受講(CCE読影経験なし、小腸カプセル読影は200例以
主題演題
上)の医師が読影した結果を比較した。さらにどのような大きさ・部位・形態のポリープが見
落としやすいかについても検討した。
【成績】
前処置不良であった2名を除く計17名の大腸ポリープのうちCCE到達範囲で観察可能であっ
た計32病変を対象として解析した。1)初回読影のポリープ同定率は81.2%(26/32)で、二次
読影でのポリープ同定率は93.7%(30/32)であった。初回読影で見逃した6病変のうち4病変
は平坦型病変であった。二次読影で見逃された2病変は前処置不良域にあり、かつカプセルが
短時間で通過しており、CCEで検出不可であった病変と判断した。2)読影セミナー受講医の
ポリープ同定率が84.3%であったのに対しセミナー未受講医の同定率は71.8%(23/32)であっ
た。読影トレーニングにより、ポリープの大きさ、部位、形態に関わらず読影精度は改善し、
特に平坦型病変の同定率が改善した。
【結論】
CCE読影初学者は平坦型病変の読影に特に注意すべきである。CCEによるポリープ診断精
度には腸管洗浄度やカプセル通過時間が影響する可能性が示唆され、読影スピードを十分に下
げるなどの対応が必要かもしれない。
読影トレーニングによりポリープの診断精度は上昇した。
今後CCE読影に携わる医師・読影支援技師は読影技術の向上に努めていく必要がある。
50
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
SC - 2
当院における大腸カプセル内視鏡検査(CCE)の
診断精度の検討
中路 幸之助1)、中江 遵義1)、熊本 光孝1)、葛本 琢哉1)、藤田 篤代1)、
塩谷 昭子2)、兵庫 佳代3)、朝守 奈緒美3)、鈴村 滋生4)
愛晋会中江病院 内視鏡治療センター、2)川崎医科大学 消化管内科、
1)
愛晋会中江病院 看護部、4)浦河赤十字病院 内科
3)
【目的】
大腸カプセル内視鏡検査(CCE)の診断精度を検討する。
【対象と方法】
2013年11月より2015年6月まで当院で施行したCCEの82例を対象に後方視的に検討した。前
処置は治験時のレジメンに準じて統一して行われた。読影は1名の看護師(大腸CE読影支援
技師)が最初の読影に加わり、最終的に1名の指導医が所見を作成した。
【成績】
平均年齢は61歳
(19歳から89歳)
、
男性37例、
女性45例であった。洗浄度は21症例までは軽食(こ
んにゃく)を1パック併用したため、視野の妨げになる場合があり評価は困難とした。22症例
以降はこんにゃくの使用を半量に減量、69例以降はこんにゃくの使用を中止した。その結果、
評価可能となり、洗浄度は優が37例/61例(60%)、良が19例/61例(31%)、可が4例/61例、不
可が1例/61例であり、全大腸観察率は78例/82例(95%)であった。よって本研究はCCEの診
大腸LST病変1例、大腸血管拡張2例、大腸アフター病変2例、大腸憩室39例、潰瘍性大腸炎5例、
虚血性大腸炎2例であった。異常なしと診断されたのは2例のみで、有病率は97%であった。19
例にCCE後CSおよびBAEが施行された(基準は6㎜以上のポリープ、3個以上のポリープがあ
る場合とした)
。合計40病変が指摘され、そのうち不一致が11病変に認められた。うち2か所
はCCEで指摘されたが通常内視鏡では認められなかった(小腸ポリープとSの7mm大のポリー
プ)。1例は生検で腺癌と診断され外科的に切除された。CCEで認められずCSで発見されたポ
リープ病変はCが3個、Aが2個、Sが4個で平均7mm大(2mm−8mm)であった。22病変に内
視鏡的切除が施行され、1例に早期がんを認めた。滞留などの有害事象は認められなかった。
【考察】
CSフォローがあった19例における陽性的中率は、本研究では、18例中18例(100%)であった。
1例はポリープ陰性でCSでも陰性であるから陰性的中である。よってCCEは陽性的中率を向上
させ、偽陽性を低下させることで一定の穿孔等のリスクのあるCSによるハザードを低下させ
る可能性が示唆された。ただし、陰性的中率を診断するためには、すべてのCCEのポリープ
陰性例に確認のためのフォローアップCSを施行しなければならず、倫理的に難しいかと考え
られた。
【結論】
CCEの診断精度の検証のためにはCCEのみならず、いかにフォローCSを増やすかが重要と
考えられた。
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
51
主題演題
断精度を評価するのには妥当と考えられた。CCEにより観察された病変は大腸ポリープ35例、
SC - 3
大腸カプセル内視鏡検査の精度検証:
2cm以上の表面型病変を発見できるか?
歌野 健一1)、藤田 朋紀2)、根本 大樹1)、松田 知己3)、満崎 克彦4)、
勝木 伸一2)、冨樫 一智1)
福島県立医科大学会津医療センター小腸大腸肛門科、2)小樽掖済会病院消化器病センター、
1)
仙台厚生病院消化器内視鏡センター、4)済生会熊本病院予防医療センター
3)
【目的】
大腸カプセル内視鏡検査(CCE)が保険収載されてから1年半以上が経過し、CCEをめぐ
る諸問題は徐々に明らかになりつつある。ガストログラフィンをboosterとして用いること
により排出率は90%以上に達したが、CCEの診断能に関する本邦発のデータは少ない。特
に、CCEによる表面型病変の発見能については、国際的にも明らかとなっていない。本研究
では、2cm以上の表面型病変に対するCCEの診断能について検討したので報告する。
【方法】
2014年9月以降、福島県立医科大学会津医療センターまたは小樽掖済会病院において、2cm
以上の表面型病変が発見され、
内視鏡的粘膜下層剥離術のため紹介を受けた患者を対象とした。
具体的な表面型病変としては、側方発育型腫瘍非顆粒型(LST-NG)と側方発育型腫瘍顆粒均
一型(LST-G-H)とし、側方発育型腫瘍顆粒混在型(LST-G-M)は除外した。紹介を受けた2
主題演題
施設で、ガストログラフィンを用いたregimenによりCCE施行後に大腸内視鏡検査を行なった。
CCEの読影は、他施設のCCE専門医が担当した。大腸内視鏡所見をstandard referenceとし、
一致の診断基準(matching criteria)は、部位は隣接segmentまで、腫瘍径は50-150%以内で
あれば一致とした。
【成績】
30症例、32病変(LST-NG 14、LST-G-H 16、その他2; 平均最大径25mm; 右結腸23、左結腸
6、
直腸3)でCCE後に大腸内視鏡検査が実施された。カプセル排出率は97%(29/30)であった。
多くの病変は、CCE上、隆起型病変として描出された。2cm以上の表面型病変は、84%(27/32)
で大腸内視鏡所見と一致した。一致しなかった5病変のうち4病変は、右結腸のLST-NG 比較
的小さな病変(25mm、25mm、25mm、35mm)であった。残りの1病変は、右結腸のLSTG-H、25mmの病変であった。
【結語】
2cm以上の表面型病変はCCE上隆起型を呈する傾向があった。多くの2cm以上の表面型病変
はCCEにより発見できた。大腸内視鏡所見と一致しなかった5病変については、今後の詳細な
検討が必要と考えられた。
52
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
SC - 4
当科における大腸カプセル内視鏡施行例の臨床的特徴
岩㟢 一秀、原田 英、蔵原 晃一
松山赤十字病院 胃腸センター
【目的】
当科では2014年4月に大腸カプセル内視鏡(CCE)を導入し2015年7月まで21例に施行したが、
その臨床的特徴を遡及的に検討し報告する。
【方法】
当科でCCEを施行した21症例を対象として、その患者背景、検査理由、既往歴、前処置、
CCE排出率、大腸通過時間、大腸洗浄度、TCS施行例におけるCCEとTCSの所見一致率を検
討した。CCEはPillCam COLON2を採用しており、前処置・ブースターのレジメンは数例施行
後変更し現在は、前日:大腸検査食3食(朝・昼・夕)、20時マグコロールP、当日:朝モサプ
リド4錠内服後、まずCCE嚥下させ1時間後に小腸内に位置していることを確認後モビプレッ
プ1000ml+水500mlを1時間で内服、1時間毎にモビプレップ500ml+水250mlを30分で内服、同
様にモビプレップ500ml+水250mlを30分で内服、10mgテレミンソフト座薬挿入、それら終了
後の1時間後より食事摂取可能とした。
【成績】
下血4例、経過観察目的2例、リンパ節腫大1例、下痢症1例であり、CCEを選択した理由とし
ては、開腹手術歴のあるTCS挿入困難例が21例中19例(90%)を占め、残り2例は解離性大動
脈瘤の患者で通常のTCS施行は危険と判断した症例であった。CCE排出率は初期前処置では
66%(14/21)で、排出されなかった7例の到達位置は横行結腸1例、S状結腸5例、小腸1例で
あった。大腸通過時間は中央値229分(7-532)
、大腸洗浄度はExcellent 43%(9/21)、Good 33
%(7/21)
、Poor19%(4/21例)などであった。21例中6例(29%)で内視鏡的治療適応となる
6mm以上の病変を認め後日EMR目的にバルーン小腸内視鏡スコープを用いて盲腸までTCSを
施行した。CCE後に施行したTCSを基準とすると6例中1例でCCEにおいて指摘されていなか
った6mm未満でポリープを1個認め、別の1例ではCCEで6mm以上の治療適応となるポリープ
を指摘されたがTCSでは指摘できなかった。その他の4例ではCCEとTCSはポリープ個数と所
見の一致をみとめている。全6例とも6mm以上のポリープについてCCEで指摘されなかった病
変を認めることはなく、治療適応となる病変の検出は良好であった。学会当日までに更なる多
数例での検討を報告予定である。
【結論】
CCEは排出率のさらなる改善が望まれるものの、挿入困難例だけではなく、解離性大動脈
治療中などTCSの施行riskが高い症例に対しても安全に施行可能で、かつ、治療適応となる病
変の検出率も良好であり、更なる適応拡大が期待される。
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
53
主題演題
21症例の平均年齢67.3歳(37-89)
、男性7例、女性14例であった。検査理由は、便潜血陽性13例、
SC - 5
大腸カプセル内視鏡読影における画像強調システムFICEの
有用性について
大森 崇史、城代 康貴、大宮 直木
藤田保健衛生大学 消化管内科
【背景・目的】
大 腸 用 カ プ セ ル 内 視 鏡( 以 下、CCE) は、 現 在 全 大 腸 内 視 鏡 観 察 不 可 能 ま た は 困 難
例のみが保険適用であるが、今後は大腸がん検診のモダリティーの1つと期待されてい
る。CCEのターゲットは主に大腸腫瘍であるため、その診断精度は担保されなければならず、
今まで以上の診断精度向上が必要である。これまで通常光でのポリープ検出能は多数報告され
てきたが、ソフトウェアRAPID®8搭載の画像強調システムFICEを用いたCCE読影の有用性
については報告がない。今回、我々はCCE読影におけるFICEの有用性を検討した。
【方法】
2014年12月〜2015年8月までに臨床研究または保険適用でCCEを施行し、その後4か月以内に
大腸内視鏡検査(以下、CS)を施行した23例のうち、CSでポリープを認めなかった3例、多発
ポリープ症例3例、CSで指摘されたポリープの部位までCCEが到達しなかった症例1例を除外
した16症例を対象とした。1例につき異なる読影者2名が独立して通常光単独読影(以下、
主題演題
CCE-WL)及びFICE単独読影(以下、CCE-FICE)を行った。CS所見をゴールドスタンダー
ドとして、両群間におけるポリープの腫瘍径別・病理別・肉眼型別にポリープ検出感度を比較
した。なお読影者はJACE主催の大腸用カプセル内視鏡セミナーを受講した医師4名とした。
【結果】
16症例でポリープを計57病変認めた。ポリープ最大径中央値は4mm(1-30mm)
、5mm未満
/5mm以上が32/25病変、腺管腺腫/過形成性ポリープ・鋸歯状病変が28/29病変、0-Ⅱa型/0-Ⅰ
型/LSTが44/10/3病変であった。腫瘍径別では5mm未満の病変におけるポリープ検出感度は
CCE-WL/CCE-FICEが40.6/68.8%、5mm以上の病変ではCCE-WL/CCE-FICEが68.0/88.0%であ
った。病理別では、腺管腺腫の検出感度はCCE-WL/CCE-FICEが53.6/85.7%、過形成性ポリー
プ・鋸歯状病変ではCCE-WL/CCE-FICEが51.7/69.0%であった。また肉眼型別では、0-Ⅱa病
変検出感度はCCE-WL/CCE-FICEが43.2/70.5%であった。両群間のポリープ検出感度について
統計学的検討を行ったところ、5mm未満の病変/腺管腺腫/0-Ⅱa病変においてはCCE-WLに比
べてCCE-FICEのほうが有意にポリープ検出感度は高値であった(P =0.02/0.008/0.009)。CCEFICEにおいてはポリープ自体や周囲の血管途絶が明瞭となることでCCE-WLでは見逃された
ポリープを拾い上げることが可能であった。
【結語】
FICE機能はCCEにおける大腸ポリープの診断精度向上に寄与することが示唆された。
54
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
SC - 6
CO2送気下観察で大腸カプセル内視鏡の診断精度は
上がるか?
太田 英敏1)、勝木 伸一2)、佐川 保3)
札幌整形循環器病院 消化器内科、2)小樽掖済会病院 消化器センター、
1)
北海道がんセンター 消化器内科
3)
【背景】
現在のカプセル内視鏡は動きを腸管蠕動と重力に依存しており、観察部位を思うままにコン
トロールできない、残便があっても洗浄吸引ができない、などの理由で通常の内視鏡に比し、
見落としが多いと懸念されている。しかし、大腸領域では前後にカメラがついたこと、前処置
の検討が進み、少ない量で良好な洗浄度が得られる前処置が確立されつつあり、通常内視鏡よ
り見方によっては、襞裏観察が容易なことから、感度はむしろ高いとする考えもある。診断精
度が低下するのは水浸観察のため、色調変化があまくなる、平坦型腫瘍では起伏変化が低下す
るなどにより、見落とす可能性が指摘されている。排出率の問題はあるがCO2注入によりこれ
ら要因を排除し、大腸カプセル内視鏡(CCE)の診断精度が向上するかについて基礎的検討
を行った。
【方法】
リアルタイムビュアーのCCE画像を参考にスコープを挿入し、盲腸到達後CCEを鉗子口を利
用し送り出す。炭酸水を盲腸内に注入後、通常通り大腸内視鏡でCO2送気を併用しながら観察
を行う。CCE像は、blindで別の医師が後程読影し、所見を比較する。ボランティア7名を対照
に大腸通過時間(排出時間)を調べるとともに、所見、画質を比較し、診断精度を検討した。
【結果】
通過時間は大腸検査の鎮静やCO2の送気量が影響するため、条件を同等にするのは難しいが、
当院でのこれまでの大腸カプセル内視鏡検査における平均大腸通過時間3.5時間に対し、平均
4.1時間とやや延長する結果であった。画質は通常カプセルの水浸状態に比べ鮮明で、通常内
視鏡とほぼ同等であるが、周辺はレンズの焦点距離、視野角の関係上やや歪でいた。観察され
た病変24か所に対して感度は92%であり、通常のCCEと統計学的な有意差を確認できなかっ
た。
【結論】
自走型カプセル内視鏡の肛門挿入をも展望し、カプセル内視鏡のCO2送気による精度の改善
の有無を検討したが、CO2単独での改善は期待できず、やはりカプセルの動きを制御する機能
が付加されることが診断精度向上には必要と考えられた。
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
55
主題演題
通常大腸内視鏡時に、先端フードを装着し、カプセルを吸着固定しDeliveryとして応用した。
SC - 7
大腸カプセル内視鏡による潰瘍性大腸炎粘膜治癒の評価
宮永 亮一1)、細江 直樹2)、豆塚 好美2)、森 清人1)、中里 圭宏2)、
三枝 慶一郎1)、南木 康作1)、松岡 克善3)、長沼 誠1)、緒方 晴彦2)、金井 隆典1)
1)
慶應義塾大学病院 消化器内科、2)同 内視鏡センター、3)東京医科歯科大学 消化器内科
【背景】
潰瘍性大腸炎(Ulcerative colitis: UC)の長期予後において内視鏡的寛解が重要であること
が報告されている。2014年、大腸カプセル内視鏡(Colon capsule endoscopy: CCE)が保険収
載され大腸癌、大腸腺腫のサーベイランスに使用されているが、UCに対する有用性の報告は
少ない。今回、CCEにより、UCの粘膜治癒評価が可能について検討した。
【方法】
2011年3月から2012年2月までUCに対してCCEにて全大腸観察であった26例の内視鏡活動度
(5セグメント)をMayoスコアに準じて評価し、通常内視鏡をゴールドスタンダードとして、
CCEの感度、特異度、診断正確度を検討した。通常内視鏡は施行医、CCEは2人の検者が活動
性を評価し、内視鏡的寛解(Mayo0)に対するCCEの有用性について検討した。
【結果】
主題演題
CCEの平均大腸通過時間は71分、平均242分で排出された。24例(92%)は5ASAのみで治
療され、21例が検査施行時臨床的寛解例であった。118セグメントにおけるCCEの内視鏡寛解
(Mayo0)診断能は感度94%(72/77)
、特異度68%(28/41)、PPV85%、NPV85%であり、診
断正確度は85%であった。患者別の評価では通常内視鏡でMayo0と判断された9例全例でCCE
でも診断可能であり、感度、特異度、PPV、NPV、診断正確度は100%、82%、75%、100%、
88.%であった。検者2人のκ係数は0.74、CCEと通常内視鏡の相関係数は0.64であった。
【結語】
少数例での検討であるがCCEは内視鏡粘膜治癒評価に有用であることが示唆された。
56
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
主題演題
第 2会場
本館4階 花AB
9:00~10:55
病理診断に基づいたカプセル内視鏡の診断精度向上
司会:大宮
塩谷
ミニ
レクチャー
直木 藤田保健衛生大学 消化管内科
昭子 川崎医科大学消化管内科
小腸疾患の病理
順天堂大学大学院医学研究科 人体病理病態学 八尾
隆史
SP -1
ダブルバルーン内視鏡の内視鏡所見・病理所見からみたカプセル内視鏡の
有用性
藤田保健衛生大学 消化管内科 鎌野 俊彰
SP -2
当院における、小腸腫瘍性病変に対する小腸カプセル内視鏡および
小腸内視鏡の有用性の検討
SP -3
小腸腫瘍におけるカプセル内視鏡検査と造影CTの病変発見率の検討
SP -4
当院におけるCTで描出されなかった小腸腫瘍についての検討
SP -5
当院の消化管悪性リンパ腫における小腸カプセル内視鏡検査の有用性
SP -6
小腸follicular lymphomaの進展範囲診断にカプセル内視鏡は有用か?
−ダブルバルーン内視鏡施行例との比較検討から−
広島大学病院 内視鏡診療科 國原 紗代子
SP -7
大腸カプセル内視鏡のpolypに対する診断能の検討
SP -8
カプセル内視鏡で診断し得た大腸平坦型腫瘍3例の経験
東京慈恵会医科大学 内科消化器・肝臓部門 永田
祐介
北海道がんセンター 消化器内科 岡川
杏林大学医学部 第三内科 林田
川崎医科大学 食道胃腸内科 松本
大阪医科大学 第二内科 能田
岐阜赤十字病院 内視鏡科 髙橋
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
泰
真理
啓志
貞治
裕司
57
ミニレクチャー
小腸疾患の病理
八尾 隆史
順天堂大学大学院医学研究科 人体病理病態学
小腸には、
奇形・先天異常(メッケル憩室、
異所膵など)、感染症(ランブル鞭毛虫などの原虫、
結核など)、血管性病変(虚血、血管奇形、血管炎など)、全身疾患の一部としての小腸病変
(膠原病、アミロイドーシスなど)
、慢性炎症性疾患(Crohn病、結核、Behçet病、単純性潰瘍、
薬剤性腸炎、慢性出血性小腸潰瘍症、放射線性腸炎など)、上皮性腫瘍(腺腫、癌)、非上皮性
腫瘍(悪性リンパ腫、GIST、脂肪腫、血管腫、カポジ肉腫、リンパ管腫など)などさまざま
な疾患が存在する。小腸内視鏡の発達によりこれまで観察できなかった像に加え、一つの疾患
でもさまざまな時期の像も観察可能になってきた。さらに、生検も可能となったことから、臨
床と病理像の対比による鑑別診断の技術が向上してきたと思われる。ただし、それぞれの疾患
の頻度が少ないためか、臨床病理学的特徴が十分理解されているとは言い難い。
本講演では、これらのうち病変の成り立ちや組織像の理解が、X線造影や内視鏡像からの臨
床的鑑別診断に有用と思われる疾患を中心に解説する。
主題演題
58
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
SP - 1
ダブルバルーン内視鏡の内視鏡所見・病理所見からみた
カプセル内視鏡の有用性
鎌野 俊彰、大森 崇史、城代 康貴、宮田 雅弘、生野 浩和、小村 成臣、
中野 尚子、長坂 光夫、中川 義仁、大宮 直木
藤田保健衛生大学 消化管内科
【目的】
従来困難とされてきた小腸全域の内視鏡がカプセル内視鏡(VCE)とダブルバルーン小
腸内視鏡(DBE)により可能となった。今回、当院でVCEとDBEの両者施行した症例に対
して、DBEの内視鏡所見・病理所見に基づいたVCEの有用性を検討した。
【対象・方法】
2012 年 8 月 か ら 2015 年 8 月 ま で に VCE は 277 症 例(334 件 )、DBE は 160 症 例(226
件)施行した。そのうち検査間隔56日以内でVCEとDBE両者施行した49症例(VCE73件、
DBE93件・経口59件・経肛門34件)の患者背景、内視鏡所見、病理所見を検討した。
【結果】
49例の内訳は男性30例、女性19例、平均年齢56.9(14〜87)歳。カプセル内視鏡診断は出
血病変17例、小腸炎15例、クローン病(CD)4例、Peutz-Jeghers症候群3例(PJS)、悪性リ
ンパ腫2例(ML)
、メッケル憩室2例、潰瘍性大腸炎(UC)術後1例、脂肪腫1例、粘膜下腫瘍
(SMT)2例、非特異性多発小腸潰瘍症1例、家族性大腸腺腫症1例(FAP)。血管性病変出血17
例はVCEで出血を確認、DBEで出血病変認識は12例、止血処置は11例で3例は不明であった。
小腸炎15例はVCEでびらん・潰瘍あり、DBEで12例は病変認識されたが、3例は不明であった。
VCEでCD疑い1例と小腸腫瘍1例はDBEで病変認識されず、49症例中8例はVCE病変がDBEで
非特異性多発小腸潰瘍症1例に対するDBE下生検は非特異的炎症の結果であったが、VCEでそ
れらの病変は認識されていた。腫瘍性病変はPJS3例、ML2例、FAP1例、腺腫1例、脂肪腫1例、
SMT1例。生検・切除からSMT1例以外はすべて病理診断が可能で、VCEでも病変は認識が
されていた。
【結語】
一部VCEとDBE所見は乖離していたが、DBEで病理所見が得られた症例はVCEで概ねその
存在診断が可能であった。
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
59
主題演題
認識されなかった。病理検査は31例に施行された。出血伴う小腸炎17例、CD3例、UC術後1例、
SP - 2
当院における、小腸腫瘍性病変に対する
小腸カプセル内視鏡および小腸内視鏡の有用性の検討
永田 祐介1)、澤田 亮一1)、筒井 佳苗1)、岩㟢 哲良1)、井出 大資1)、
光永 眞人1)、猿田 雅之1)、有廣 誠二1)、松岡 美佳1)、斎藤 彰一2)、
加藤 智弘1、2)
東京慈恵会医科大学
内科 消化器・肝臓部門、2)内視鏡科
1)
【目的】
当院における、腫瘍性病変に対する小腸カプセル内視鏡および小腸内視鏡検査の有用性につ
いて検討した。
【対象と方法】
2008年4月から2015年7月までに、当院で小腸内視鏡(Balloon-assited enteroscopy; BAE)を
施行した610症例、および小腸カプセル内視鏡(capsule endoscopy: CE)を施行した480症例
のうち、腫瘍性病変を指摘された症例は46例であった。男性 27名、女性 21名、年齢中央値 62
歳であった。小腸腫瘍性病変の確定診断が可能であった症例に対して、特にCEの診断、並び
に他modalitiesでの診断について比較検討を行った。
【結果及び考察】
BAEおよびCEで小腸腫瘍性病変46症例のうち、20症例でCEが施行され、うち16症例(80%)
で腫瘍性病変が検出された。その内訳は転移性を含む小腸癌5例、悪性リンパ腫4例、と半数以
上が悪性疾患であった。また、CTやMRI等の画像診断では指摘できなかったが、CEで指摘で
きたものは6例(40%)あった。いずれも比較的微小な病変であり、さらにBAEでの精査によ
り確定診断可能であった。CEはCTやMRIで検出できない微小な小腸粘膜病変のスクリーニン
主題演題
グでは、特に優れたmodalityと考えられ、さらにBAEによる精査を組み合わせることで、小
腸内腫瘍の診断は80%と高かった。
【結語】
小腸腫瘍性病変の診断では、特に粘膜の微細病変ではCEが有用であり、 BAEなどの他
modalitiesを組み合わせることで、確実な小腸腫瘍性病変の診断を期待できる。
60
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
SP - 3
小腸腫瘍におけるカプセル内視鏡検査と造影CTの
病変発見率の検討
岡川 泰、佐川 保、濱口 京子、田村 文人、林 毅、藤川 幸司、高橋 康雄
北海道がんセンター 消化器内科
【背景】
小腸腫瘍の診断において、通常の造影CTでの腫瘍発見率は低いとされ、診断がしばしば遅
れていた。カプセル内視鏡は他のmodalityに比較して小腸病変の発見率が高く、小腸腫瘍にお
いてもその有用性が期待される。しかし、現時点で腫瘍の大きさや形態からどのような腫瘍が
カプセル内視鏡で発見しやすく、また見逃しやすいかは十分な検討がされていない。今回、カ
プセル内視鏡および造影CTを施行した小腸腫瘍症例を解析し、小腸腫瘍の発見率および他の
modalityとの比較を含め検討した。
【方法】
対象は2011年6月から2015年3月までに当科で小腸腫瘍が疑われ、カプセル内視鏡および造
影CT検査を施行した14例とした。カプセル内視鏡および造影CTの病変検出率を比較し、また
FDG-PET、バルーン内視鏡を施行した症例の検出率を検討した。
【結果】
小腸腫瘍の内訳は、リンパ腫4例、他臓器癌小腸転移8例、小腸癌1例、小腸GIST1例であった。
カプセル内視鏡では14例中13例(92.9%)に病変を指摘可能であったが、造影CTで指摘可能で
あった症例は5例(35.7%)のみであり、有意にカプセル内視鏡で発見率が高かった。カプセル
内視鏡で指摘できなかった症例は、30mm大の粘膜下腫瘍の形態をとる病変であった。また造
ーン内視鏡は13例中11例(84.6%)に病変を指摘可能であった。
【結論】
今回の検討では、通常の造影CTでは50mmを超える大きな腫瘍でなければ指摘は困難であ
ったが、カプセル内視鏡の病変発見率は高く、積極的にカプセル内視鏡を施行すべきであると
考えられた。しかし粘膜下腫瘍の形態をとる腫瘍では、カプセル内視鏡で見逃す可能性があり、
他のmodalityと組み合わせて診断することが望ましいと考えられた。
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
61
主題演題
影CTでは50mm未満の腫瘍はすべて指摘不能であった。FDG-PETは12例中9例(75%)
、バル
SP - 4
当院におけるCTで描出されなかった小腸腫瘍についての
検討
林田 真理、三浦 みき、三井 達也、池崎 修、齋藤 大祐、櫻庭 彰人、
徳永 健吾、小山 元一、森 秀明、久松 理一、高橋 信一
杏林大学医学部 第三内科
【目的】
今回当科でカプセル内視鏡(CE)とダブルバルーン内視鏡(DBE)導入後に病理学的に診
断された小腸腫瘍の中で、CTで指摘されなかった病変について検討した。
【対象・方法】
2004年4月〜2015年7月までに、消化管ポリポースを除き、当科で病理学的に診断された小腸
腫瘍は36例(男:女 4:5、平均年齢 63歳)であった。今回CTで小腸腫瘍を指摘されなかった7例
(男:女 3:4、平均年齢 63歳)を対象とした。当科ではCTは全例で施行されており、診断目的で
さらにCEやDBEの両検査、あるいはいずれかの検査が施行された。
【結果】
全小腸腫瘍の検査契機は原因不明消化管出血22例(OGIB:overt previous 21例、on going 1
例)、腹痛9例、その他5例に対し、CTで病変を指摘されなかった症例の検査契機はOGIB 6例
(OGIB:overt previous 5例、on going 1例)とその他1例であり、腹痛などの腹部症状は認めな
かった。当科で診断された全小腸腫瘍の内訳は、GIST 11例、小腸癌 8例、悪性リンパ腫 6例、
転移性小腸腫瘍4例、脂肪腫1例、NET 1例、毛細血管性血管腫1例、平滑筋腫1例、腺腫1例、
過誤腫1例であった。CTで病変を指摘されなかった7例の内訳は、平滑筋腫1例、悪性リンパ腫
2例、脂肪腫1例、転移性小腸腫瘍1例、腺腫1例、過誤腫1例であった。全例でまずCEが施行され、
下部小腸の脂肪腫1例を除きCEで病変を確認出来た。腺腫と過誤腫は隆起性病変として、それ
主題演題
以外のCEで確認出来た小腸腫瘍は、全例で潰瘍を形成していたため、病変として捉えられる
ことが可能であったと考える。DBEは、CEの結果に基づき、全身状態不良のため追加検査が
施行出来なかった悪性リンパ腫1例を除き6例で計画的に施行され、全例で病変を確認すること
が出来、CEで指摘出来なかった下部小腸の脂肪腫も確認することが出来た。平滑筋腫と転移
性小腸腫瘍、脂肪腫では小腸部分切除術、悪性リンパ腫は化学療法、腺腫と過誤腫では、それ
ぞれ内視鏡的治療が施行された。
【結論】
OGIBの原因としてCTで病変が指摘されない疾患も存在するため、腹痛や消化管の閉塞症状
を認めない場合は、CEの禁忌事項を確認した上で、患者にとって負担の少ないCEを先行し、
病変の情報をまず把握することが有用であると考えられた。しかし、従来から指摘されている
とおり、粘膜下腫瘍などCEで指摘できない病変も存在するため、患者のPSや臨床経過を考慮
した上で、CEで病変が指摘できなかった場合に、DBEや他の追加検査については、症例毎に
慎重に検討する必要があると考える。
62
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
SP - 5
当院の消化管悪性リンパ腫における
小腸カプセル内視鏡検査の有用性
松本 啓志1)、塩谷 昭子1)、本多 啓介1)、春間 賢1、2)
川崎医科大学 食道胃腸内科、2)川崎福祉大学 臨床栄養学部
1)
【背景】
消化管悪性リンパ腫は消化管悪性腫瘍の中では1〜8%と稀であるが、節外性リンパ腫の30〜
40%を占める重要な疾患である。組織型ではびまん性大型B細胞リンパ腫、MALT(mucosaassociated lymphoid tissue)リンパ腫が多い。最近では、腸管濾胞性リンパ腫の頻度が増加し
ている。
【目的】
今回我々は当院における消化管悪性リンパ腫の診療において、小腸カプセル内視鏡検査の有
用性を検討し、リンパ腫のカプセル内視鏡所見と組織型の関連性について検討を行った。
【対象】
川崎医科大学附属病院で消化管悪性リンパ腫と診断された症例で、かつ小腸カプセル内視鏡
検査が行われた23例について後ろ向き観察研究を行った。
【結果】
平均年齢 64.7歳(37-85歳)男14名、女性9名であった。リンパ腫の病型は、濾胞性リンパ腫
(follicular lymphoma:FL)9例、Mucosa-associated lymphoid tissue:MALTリンパ腫7例、びま
ん性大細胞性リンパ腫 diffuse large B cell lymphoma:DLBCL5例、NK/T細胞リンパ腫1例、血
管免疫芽球性T細胞リンパ腫1例であった。カプセル内視鏡でリンパ腫(疑い病変を含む)認
瘍、びらんを呈しているものもあった。MALTリンパ腫およびDLBCLは、小粘膜下腫瘍と認
めているものが多く、FLによる隆起よりもやや大きい傾向にあった。T細胞リンパ腫は、大
きい潰瘍を形成していた。
【考察】
消化管悪性リンパ腫は小腸病変を認める可能性が高く、微細な病変も検出できる小腸カプセ
ル内視鏡検査は、消化管悪性リンパ腫の診療には必須の検査である。
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
63
主題演題
めるものは18例であった。濾胞性リンパ腫は白色顆粒状粘膜を呈することが多かったが、小潰
SP - 6
小腸follicular lymphomaの進展範囲診断にカプセル内視鏡は
有用か?−ダブルバルーン内視鏡施行例との比較検討から−
國原 紗代子1)、岡 志郎1)、田中 信治1)、井川 敦2)、中野 誠2)、茶山 一彰2)
広島大学病院
内視鏡診療科、2)消化器・代謝内科
1)
【背景】
消化管follicular lymphoma(FL)は、ルーチンの上部消化管内視鏡検査で十二指腸下行部
に白色顆粒状隆起として病変を指摘され発見されることが多く、空腸・回腸にも病変が進展す
る頻度が高いことが知られている。深部小腸のFL進展範囲診断に関してはバルーン内視鏡に
よる生検診断がgold standardである。
【目的】
十二指腸FLと診断された場合の診断ストラテジーについて、当科におけるカプセル内視鏡
検査(CE)およびダブルバルーン内視鏡検査(DBE)の診断成績から検討し、小腸FLに対す
るCEの位置づけを明らかにする。
【対象と方法】
当科および関連施設にて十二指腸に病変を認め組織学的にFLと診断され、2003年8月から
2015年8月までに小腸精査目的でCEまたは/かつDBEを行った75例のうち、両検査施行しいず
れも全小腸観察が可能であった26例(全例治療前)を対象とした。今回、白色あるいは正色
調の顆粒状隆起の集簇あるいは融合として認められるものを内視鏡上のFLとした。これらに
ついて、CE/DBEの診断率、十二指腸水平脚/ 空腸/ 回腸/ 回腸末端部別の病変指摘率、DBE
による各部位別でのFL生検診断率に関して検討を行った。なお、病理組織診断は、CD10、
CD20、bcl2等の免疫染色を行って評価した。
主題演題
【結果】
《DBEによる病変指摘率》小腸病変の診断率は22例(88%)であった。部位別検討では、十
二指腸水平脚12例(45%)
、空腸16例(62%)
、回腸8例(30%)、回腸末端部11例(42%)であ
った(重複あり)
。
《CE/DBEの診断一致率》CEおよびDBEの診断一致率は92%(24/26)であり、
病変部位は全て一致していた。不一致であった2例はCEで回腸に病変を認めなかったがDBEで
は病変を指摘できた症例であった。
《DBEによる各部位別のFL生検診断率》DBEによる各部
位別の内視鏡上FL病変に対する局在別の生検診断率は、十二指腸水平脚100%(12/12)
、空腸
100%(16/16)
、回腸88%(7/8)
、回腸末端部54%(6/11)で、回腸末端部で有意に低かった。
FL以外の組織診断は全てリンパ濾胞の過形成であった。
【考察】
小腸FLにおける十二指腸水平脚〜空腸への進展範囲診断にCEはDBEと同等に有用と考えら
れた。ただし、回腸(特に回腸末端部)でFLを疑う病変はリンパ濾胞過形成との鑑別が難し
く生検診断が必須である。
64
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
SP - 7
大腸カプセル内視鏡のpolypに対する診断能の検討
能田 貞治1)、井上 拓也1)、比嘉 克成2)、柴森 直也2)、阿部 真也2)、
依藤 直紀1)、井口 宗威1)、太田 和寛1)、坂中 太輔1)、藤原 薫1)、
江戸川 祥子1)、小嶋 融一1)、岡田 俊彦1)、柿本 一城1)、川上 研1)、
竹内 利寿1)、樋口 和秀1)
大阪医科大学 第二内科、2)大阪医科大学 内視鏡センター
1)
大腸カプセル内視鏡(以下CCE)は、平成26年1月より保険認可された。しかし、CCEでの
ポリープに対する診断能については、まだまだ不明な点が多い。そこで、当科で腫瘍性病変の
スクリーニングを目的に施行したCCE症例においてCCEのポリープに対する診断能について
検討を行った。CCEを行った症例は、全例において過去に大腸内視鏡検査(以下CS)の経験
があり、回盲部まで観察できていないことがある13症例であった。13症例の検査の目的は、大
腸ポリープの加療歴6例、便潜血反応5例、腹痛1例、便通異常1例であった。CCEでポリープ
を指摘した症例は8例で、うち7例でCSを施行した。CCEとCSを施行した症例では、CCEで指
摘したポリープは計15病変で、1病変はCSで指摘できず、CCEの偽陽性例であった。14病変に
ついては、CSにてEMRあるいは生検処置を行ったので、これらを対象にCCEの診断能につい
て検討を行った。ポリープのサイズについては、CCE:3‐20mm、CS:4‐20㎜であった。サ
イズの不一致例は8例あったが、6例は1mm、2例は3mmの差で概ね一致が得られていた。大き
さ3mmの差の2症例は、CSで径10mm、18mmの病変であり、臨床的には問題がない差と考え
られた。形態については、CCEはⅠs 12病変、Ⅰsp 1病変、Ⅱa 1病変であったのに対し、CS
はⅠs 9病変、Ⅰsp 1病変、Ⅱa 4病変で、形態の不一致例3症例は、いずれもCSでのⅡa病変が
であった。CCEのpolyp画像において、FICEとblue modeで観察したところ、腺腫例では12病
変中9病変で色調の変化が確認され、過形成性ポリープでは、2病変とも色調の変化は得られな
かった。
【まとめ】
CCEとCSでは、概ねpolypの指摘数に差はなく、サイズについても大きな差はみられなかっ
た。形態については、CCEとCSに大きな差はなかったが、一部のCSで平坦な病変がCCEで隆
起性病変に捉えられていることがあった。FICEおよびblue modeで色調の変化がみられる場
合は腺腫が考えられたが、色調の変化がない場合でも腺腫であることがあり、今後更なる検討
が必要と考えられた。
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
65
主題演題
CCEでⅠsと判断されていた。病理診断の結果では、12病変が腺腫、2病変が過形成性ポリープ
SP - 8
カプセル内視鏡で診断し得た大腸平坦型腫瘍3例の経験
髙橋 裕司1)、髙橋 理沙2)、大野 陽子2)
岐阜赤十字病院
内視鏡科、2)内視鏡センター
1)
【はじめに】
大腸カプセル内視鏡(以下CE-C)が臨床応用されその有用性が多く報告されている。保険
収載当初より6mm以上のポリープの検出感度は85-90%、特異度は90%以上とされており、臨
床上問題となる5-6mm以上の病変の指摘は良好である。一方平坦型腫瘍は通常内視鏡検査や
CT colonographyでも診断困難となる事が多く経験される。今後カプセル内視鏡の診断能力の
問題は平坦型腫瘍の診断能に集約されると推測する。今回CE-Cで診断し得た平坦型腫瘍を経
験したので報告する。
【症例1】
40歳代男性 便潜血陽性精査。過去に大腸内視鏡未施行でCE-Cを希望。CE-Cで上行結腸に約
11mm大(PSE)の2a病変を認めた。色調はやや赤色調で腺腫病変を疑った。大腸内視鏡検査
ではCE-Cと同部位に病変を認めEMRを施行。病理診断は軽度異型腺腫であった。
【症例2】
60歳代男性 便潜血陽性精査 過去に大腸内視鏡検査を受けるも挿入困難+疼痛であり今回
CE-Cを希望した。CE-Cで上行結腸(IC valveより1半月ひだ肛門側)に平坦型腫瘍を認めた。
形態は2aでサイズは12mm(PSE)大、色調はやや白色調でCE-C上はSSA/Pを疑った。大腸内
視鏡検査ではCE-Cと同部位に病変を認めた。EMRを施行し病理診断は軽度異型腺腫であった。
主題演題
【症例3】
40歳代女性、便潜血陽性精査。婦人科で複数の手術歴があり大腸内視鏡挿入困難例。過去の
内視鏡ではS状結腸より口側の観察はできなかった。CE-Cで横行結腸肝彎曲部近傍に14mm大
(PSE)の平坦型腫瘍を認めた。一部に結節像を認めLST(G)と診断した。しかし病変に粘液
が付着し病変表面粘膜の観察は不能であった。大腸内視鏡検査ではCE-Cと同部位に病変を認
めた。形態はCE-C診断と同様であったが、平坦部は開2型pitを呈しSSA/Pと診断した。EMR
を施行し病理診断はSSA/Pであった。
【結語】
CE-Cは通常内視鏡に比し大腸壁が等〜弱伸展状態かつ水浸下で観察される事が多い。自験3
例の報告ではあるが、平坦型腫瘍はCE-Cの観察条件下では腫瘍の高低差がより強調されて観
察され、存在診断が困難であるとは思えなかった。またSSA/Pは通常内視鏡観察でも病巣に
付着する粘液で存在診断されることが多いが、CE-Cでも粘液付着と血管透見像の異常に注目
することで診断可能と思われた。
66
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
特別パネルセッション
第 1会場
南館5階 エミネンスホール前
9:00~17:00
大腸カプセル内視鏡レジメン
共催:コヴィディエン
ジャパン株式会社
P-1
当院の大腸カプセル内視鏡レジメンについて
P-2
飲まずに出来る大腸カプセル内視鏡検査を目指して
−内視鏡的洗浄液注入法を使用して−
P-3
大腸カプセル内視鏡レジメンにおけるガストログラフィン併用の有用性
P-4
経鼻内視鏡を使用した新しい大腸カプセル内視鏡の前処置法(CCE-NE法)
P-5
当施設における大腸カプセル内視鏡の腸管前処置およびブースターの工夫
名古屋大学大学院 消化器内科学 佐藤
医療法人社団 芦屋三戸岡クリニック 三戸岡
小樽掖済会病院 消化器病センター 藤田
医療法人厚生会虹が丘病院 増田
国立がん研究センター中央病院 内視鏡科、がん予防・検診研究センター検診部 角川
淳一
英樹
朋紀
淳一
康夫
9:00〜17:00
南館5階 エミネンスホール前にてポスター展示
9:00〜10:55
第1会場(南館5階 エミネンスホール)
主題演題「大腸カプセル内視鏡における診断精度向上」においてレジメンを紹介
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
67
P- 1
当院の大腸カプセル内視鏡レジメンについて
佐藤
吉村
水谷
大野
淳一1)、中村 正直1)、渡辺 修1)、山村 健史2)、前田 啓子1)、松下 正伸1)、
透1)、中野 有泰1)、大島 啓嗣1)、松浦 倫三郎1)、齋藤 雅之1)、
泰之1)、澤田 つな騎1)、丹羽 慶樹1)、石川 恵里1)、舩坂 好平2)、
栄三郎1)、宮原 良二1)、川嶋 啓揮1)、廣岡 芳樹2)、後藤 秀実1)
名古屋大学大学院 消化器内科学、2)名古屋大学医学部附属病院 光学医療診療部
1)
特別パネル
セッション
【総論】
当院では2014年3月から大腸カプセル内視鏡(CCE)を導入し、2015年8月までに合計83例
施行している。導入初期は総水分摂取量を3.0Lとし、患者負担を軽減させるため推奨レジメン
よりも少ない水分量で開始した。しかし患者受容度は高いものの排出率が低いことが問題視さ
れた(57.1%:20/35)
。排出率を上げるため、負担は多くなるが総水分摂取量を4.5Lとした。ま
た未排出例では右半結腸または左半結腸での停滞が多いことからブースタを改良し現在は下記
レジメンで運用している。排出率上昇と患者受容度を意識し、右側大腸では腸管を水で満たす
こと、左側大腸では腹圧をかけることによるCCE停滞回避に心がけている。
【前処置レジメン】
検査2日前にセンノシド(24mg)内服。
検査前日は低残渣食。就寝前にクエン酸マグネシウム(34g)高張液投与とセンノシド(24mg)
を内服。
検査当日にPEG溶液を1L+水0.5L内服後にCCEとモサプリドクエン酸塩(20mg)を内服。
CCE内服1時間後に胃内であれば更に1時間後に再検、それでも胃内であった場合はメトク
ロプラミド(10mg)筋注。
小腸到達後に残りのPEG溶液1L+水1Lを混ぜ2時間以内で内服(1stブースタ)
。アメ・ガム
は許可。
「*リアルタイム観察で右側結腸もしくは管腔が広がって見える場合は2ndブースタを、左側
大腸もしくは壁当たりの場合は左腹部圧迫5秒5セット・階段昇降・歩行・体位変換・腹筋運動
を行う。
」
ピコスルファートナトリウム水和物製剤(48mg)を内服(2ndブースタ)
。30分後にリアル
タイム観察を行い、3rdブースタへ(適宜*の項目を行う)。
クエン酸マグネシウム(34g)等張液を2時間以内で内服(3rdブースタ、適宜*の項目を行
う)。
以降は追加飲用、軽食、刺激性坐剤、浣腸、メトクロプラミド筋注など被験者と相談のうえ
行う。
【結果】
2例は小腸のみの観察であったため除外し46例で検討とした。
排出率は80.4%(37/46)であった。
平均総水分摂取量は4038mL(排出例:3820mL、未排出例:5000mL)であった。
排出例の平均全検査時間は255分(75-600分)
、平均全大腸通過時間は148分(3-529分)であ
った。
洗浄度は93.9%で適切で、右半結腸94.6%、横行結腸97.3%、左半結腸94.6%、直腸88.9%であ
った。
未排出例の最終到達部位は右半結腸1例、左半結腸8例であった。
次回CCEと大腸内視鏡のどちらを受けたいかというアンケート質問では78.3%がCCEと回答
した。
【結論】
レジメンを変更したことにより排出率は上昇したが、まだ改良の余地はあると思われる。排
出率向上とともに患者受容度を改善させる必要がある。
68
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
P- 2
飲まずに出来る大腸カプセル内視鏡検査を目指して
−内視鏡的洗浄液注入法を使用して−
三戸岡 英樹
医療法人社団 芦屋三戸岡クリニック
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
69
特別パネル
セッション
【背景】
大腸カプセル内視鏡検査(CCE)の従来の前処置法では多量の腸管洗浄液飲用が必須であり、
その普及を妨げている最大の要因である。当院では洗浄液の飲めない患者のために大腸内視鏡
の前処置として内視鏡的洗浄液注入法を考案し2010年1月から現在までに200例以上の患者に安
全に施行し受容性は良好でリピート率100%である。この方法を応用し飲まずに出来るCCEを
目指している。
【目的】
CCEの前処置としての内視鏡的洗浄液注入法の有用性を検討する。
【対象と方法】
2014年10月から2015年8月まで当院で施行したCCE10例(男性4例 女性6例 平均42.3歳)を対
象、検査理由は健常ボランティア8例、検診目的2例。前日は昼より低残渣食および眠前にプル
セニド内服。当日は絶食で来院し大腸カプセル内服後、上部内視鏡を挿入、まず胃内のカプセ
ルを把持し十二指腸下行部に誘導、その後洗浄液を内視鏡の鉗子チャンネルから十二指腸下行
部と胃内に注入した。注入中の記憶をなくすため手技は鎮静下(Midazolam iv)で行った。排
便反射の生じるタイミングを見計らって拮抗薬(Flumazenil iv)を投与し覚醒を促し排便に支
障のないようにした。最初の8例で洗浄液注入法のみではカプセル排出時間にばらつきがあっ
たため以後の2例では内視鏡挿入時に経鼻チューブを胃内に留置、それを利用してブースター
としての洗浄液注入も追加した。受容性はアンケートを行なった。
【結果】
洗浄液は9例でマグコロールP、1例でモビプレップ使用。総注入量中央値2757ml(2000〜
4000)
。記録時間内カプセル排出率100%(10/10)、小腸通過時間中央値116.2min(91〜155)、
大腸通過時間中央値338min(27〜646)
、全検査時間中央値457.8min(168〜804)。経鼻チュー
ブ胃内留置2例では総注入量中央値3435ml(2870〜4000)、小腸通過時間中央値130.5min(106
〜155)
、大腸通過時間中央値67.5min(27〜108)、全検査時間中央値228min(168〜288)。洗
浄度は全例問題なく、患者受容性は注入に関しては全例良好であったが検査時間に対する不満
が長時間例であった。
経鼻チューブ留置2例の受容性は注入、検査時間共に良好。発見病変は大腸ポリープ6例、大
腸憩室4例、毛細血管拡張症2例。
【まとめ】
内視鏡的洗浄液注入法のみを利用したCCEは多量の洗浄液の飲用から患者を開放すること
に寄与するがカプセルの排出時間にばらつきがあり長時間の検査を余儀なくされる例があっ
た。
この点を解決するために考案した内視鏡的洗浄液注入法+経鼻チューブ注入法は多量の洗浄
液飲用、長時間の検査時間から患者を開放しCCEの受容性を確実に向上させる可能性が示唆
された。
P- 3
大腸カプセル内視鏡レジメンにおける
ガストログラフィン併用の有用性
藤田 朋紀1)、歌野 健一2)、今川 貴之1)、小松 悠弥1)、安保 文恵1)、
北岡 慶介1)、和賀 永里子1)、勝木 伸一1)、根本 大樹2)、五十畑 則之2)、
遠藤 俊吾2)、冨樫 一智2)
小樽掖済会病院消化器病センター、2)福島県立医科大学会津医療センター小腸大腸肛門科
1)
【目的】
大腸カプセル内視鏡検査(以下大腸CE)において、推奨前処置によるカプセル排出率は
70-90%と報告されており、検査時間が長いことも本検査の普及の妨げとなっている。最近、
アミドトリゾ酸ナトリウムメグルミン液(商品名ガストログラフィン:以下商品名で表記)を
含んだ前処置により、高い排出率が報告されている。本研究では、ガストログラフィンを用い
た大腸CE前処置法の有効性について検討を行った。
【対象】
2014年6月〜2015年7月の間に保険診療上大腸CEの適応基準を満たす39症例(年令中央値64
歳、
女27・男12)を対象とした。大腸CEの検査理由は、開腹歴あり22症例・内視鏡困難24症例(重
複あり)であった。
【方法】
前日:昼より低残渣食開始、モビプレップ1L+水0.5L、就寝前ラキソベロン10mL。当日:
モビプレップ1L+水0.5L服用後、ガスモチン・プリンペランシロップとともにカプセルを服用。
1時間後boosterとしてマグコロールP 0.9L+ガストログラフィン 50mLを服用。1時間空けて2
回服用とした(総飲量4.9L)
。カプセル未排出時、ガストログラフィン100mL・マグコロール
P 0.6L・ベサコジル坐薬を順に追加した。
【成績】
カプセル排出率は97.4%(38/39)
。全消化管通過時間は中央値4時間20分(1時間9分〜10時
特別パネル
セッション
間11分)・大腸通過時間は中央値2時間30分(16分〜8時間34分)であり、従来の報告と比較し
て高い排出率、短い全消化管通過時間・大腸通過時間であった。腸管洗浄度は全例で良好であ
り、十分な読影が可能であった。Boosterの量は平均1970ml(600〜2600)
・検査当日の飲用量
は3470mlであり、前処置の負担も軽減できた。また、66.7%(26/39)で6mm以上の大腸ポリ
ープが発見された。
【結語】
ガストログラフィンを追加した大腸CE前処置法により、CE排出率の向上・検査時間の短縮
化が図れた。当日の飲用量の軽減により、被験者の受容性が改善することが期待される。
70
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
P- 4
経鼻内視鏡を使用した新しい大腸カプセル内視鏡の前処置法
(CCE-NE法)
増田 淳一1)、堤 卓也1)、大仁田 賢3)、竹島 史直2)、中尾 一彦
2)
医療法人厚生会 虹が丘病院、2)長崎大学 消化器内科、3)長崎大学 光学医療診療部
1)
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
71
特別パネル
セッション
【背景】
2014年1月に保険診療が可能となった大腸カプセル内視鏡(CCE)は「痛くない」
「恥ずかし
くない」など、患者さんにとってはメリットの多い検査である。当院でも2014年6月からCCE
を開始したが、大腸内視鏡と比較すると「前処置薬の量が多い」
「時間がかかる」などの問題
点も浮き彫りとなってきた。当院ではこれらの問題点を解決し、患者さんの「胃内観察も同
時にしてほしい」というニーズに応えるべく、経鼻内視鏡を使用した新しい前処置法(CCENasal endoscopy法:以下CCE-NE法)を検討した。
【対象方法】
2014年6月 か ら2015年9月 ま でCCE施 行 し た46人。 前 処 置 薬 を 全 て 経 口 摂 取 し たA
群、CCE-NE法は以下のB群、C群に分けた B群:カプセル内服後胃経鼻内視鏡施行し胃内で
カプセルキャッチし十二指腸球部でリリース+内視鏡で前処置薬注入、C群:カプセル内服後
胃経鼻内視鏡施行し内視鏡で前処置薬注入(キャッチ&リリースなし)
。A群31人、B群7人、
C群8人で比較検討した。
【基本検査レジメン】
(*)部分がA群、B群、C群で違いあり
【検査前日】
低残渣食、クエン酸マグネシウム50g(高張液 水加えて180ml)+ピコスルファートナト
リウム水和物10ml
【検査当日】
6時 モビプレップ 1L+水500ml、モサプリドクエン酸4T+大建中湯2P内服
8時30分 大腸カプセル内視鏡内服
(*)ブースターとしてモビプレップ 1L+ガストログラフィン100ml 14時30分 マグコロール 1P+水600ml
16時 マグコロール 1P+水600ml & グリセリン浣腸120ml
【結果】
全検査時間平均はA群(経口摂取のみ)5時間28分、B群(経鼻+キャッチ&リリース)6時
間56分、C群(経鼻から注入のみ)4時間27分であった。検査完遂率はA群90.3%、B群85.7%、
C群100%であった。排便状態は上行結腸で比較したがGood以上の十分観察可能な割合はA群
93.5%、B群71.4%、C群100%であった。
【考察】
CCE-NE法で前処置薬を注入するだけであるC群は経口摂取のA群と比較して全検査時間1時
間短縮、検査完遂率100%、排便状態も良好であった。
【結語】
経鼻内視鏡を使用した新しい大腸カプセル内視鏡の前処置法(CCE-NE法)は、検査時間平
均4時間27分、検査完遂率100%、排便状態も良好であり前処置として有用な可能性が示唆され
た。また経鼻内視鏡使用することで(1)前処置薬の減量(2)
「ガストログラフィン」の経
口摂取回避(3)胃内視鏡を同時施行(4)消化管狭窄スクリーニングのためにCT撮影すると、
一度の検査で腹部臓器すべてを観察できるなど、多くのメリットを有する前処置であると考え
られた。
P- 5
当施設における大腸カプセル内視鏡の腸管前処置および
ブースターの工夫
角川 康夫1、2)、居軒 和也1)、高丸 博之1)、松本 美野里1、2)、松田 尚久1、2)、
斎藤 豊1)
国立がん研究センター 中央病院内視鏡科、
1)
国立がん研究センター がん予防・検診研究センター検診部
2)
特別パネル
セッション
【背景・目的】
大腸カプセル内視鏡で用いる下剤の分量は通常の大腸内視鏡検査で用いるそれのほぼ2倍で
ある。そのため、受容性の点から減量が求められるが、減量は腸管洗浄度不良とバッテリー時
間内排出率低下の可能性を伴う。そのため、良好な洗浄度と高い排出率を維持しながら、服用
量の減量に取り組むことが不可欠である。しかし、その方法は容易ではなく、いまだ確立され
たものはない。そのため現時点での私たちが行っている腸管前処置方法およびブースターの取
り組み・工夫について紹介する。
【方法】
検査前日の食事は低残渣食とする。夕食後1-2時間後にマグコロールP®高張液50g/180mlを
服用する。就寝時にプルゼニド®2錠を服用する。
検査当日はガスコン®を少量含んだモビプレップ®1リットルを服用、その後、水あるいはお
茶を500ml飲水する。排便状況が良好となったらいったんこれで飲水を終了し、そこから45分
後をめどに大腸カプセルを服用させる。この間にプロナーゼ水(プロナーゼMS ®4万単位、重
曹2g、ガスコン®ドロップ80mg/4ml、水100ml)100mlとモサプリド®1錠を服用させる。もし
排便状況が良好とならない場合は下剤を追加投与し、完全に良好な状態となったことを確認後
に同様の対処をする。
大腸カプセル内視鏡の服用1時間後にリアルタイムでカプセルが小腸に到達していることを
確認し飲水を再開させる。この時点でモサプリド®1錠を服用させる。以降、水分(水やお茶な
ど)は多めに摂取するよう促し、かつ可能であれば歩行、階段昇降、体操などといった身体を
動かす動作を組み込むように指導する。リアルタイムでの小腸到達確認の3-4時間後にブース
ターとしてのモビプレップ®1リットル(ガスコン®少量含有)と水分(水あるいはお茶)
500mlを飲水させる。その後、さらにモサプリド®1錠を服用させる。以降、カプセル内視鏡が
体外へ排出されるのを待つ。カプセル内視鏡が体外へ排出された時点で検査は終了となる。
ブースターとしての下剤があらかた排出された後もカプセルがまだ体外へ排出されないとき
は、大腸カプセル施行目的がTotal colonoscopy(TCS)出来ないための場合は、ここで検査終
了とする。それ以外の目的の場合はS状結腸鏡を行いカプセルで観察できていない領域の検査
を行う。
【結果】
上記方法での水・お茶を含めた下剤の総摂取量は4000mlであった。水・お茶の分量を除いた
場合は2280mlであった。
【結論・考察】
当日は当施設の取り組み・工夫を詳細に図解し掲示する。今後、さらなる改良が必要と考え
る。
72
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
一般演題Ⅰ
第 3会場
本館4階 花C
13:00~13:24
原因不明消化管出血(OGIB)
座長:勝木
伸一 小樽掖済会病院
消化器病センター
OSⅠ-1
遺伝性出血性末梢血管拡張症の経過観察において小腸カプセル内視鏡が
有用であった一例
自治医科大学 内科学講座消化器内科学部門 宮原 晶子
OSⅠ-2
当院でのOGIBに対する小腸カプセル内視鏡検査の使用経験
OSⅠ-3
PC導入によるOGIB診療アルゴリズムの変化に関する検討
OSⅠ-4
カプセル内視鏡読影センターにおけるOGIB939例の検討
NTT東日本関東病院 消化器内科 瀧田
麻衣子
山口大学大学院医学系研究科 消化器病態内科学 橋本
真一
ブラザー記念病院 消化器内科 本田
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
亘
73
OSⅠ-1
遺伝性出血性末梢血管拡張症の経過観察において
小腸カプセル内視鏡が有用であった一例
宮原 晶子、坂本 博次、井野 裕治、林 芳和、矢野 智則、宇賀神 ららと、
永山 学、竹澤 敬人、砂田 圭二郎、山本 博徳
自治医科大学 内科学講座消化器内科学部門
【症例】
65歳女性 【主訴】
貧血 【現病歴】
30歳頃から鼻出血を繰り返し、近医にて鉄欠乏性貧血に対して鉄剤投与されていた。65歳時
に貧血が悪化したため当科紹介となった。
【既往歴】
急性腎炎、急性虫垂炎、関節リウマチ
【家族歴】
息子:幼少時に鼻出血認めたが未精査
【経過】
小腸カプセル内視鏡(CE)にて空腸粘膜に矢野山本分類type1bのangioectasiaが多発し、血
性腸液を認めた。手指に毛細血管拡張病変も認め、遺伝性出血性末梢血管拡張症(HHT)と
診断した。経口ダブルバルーン内視鏡(DBE)下にangioectasiaに対するアルゴンプラズマ凝
固術(APC)を施行したところ、貧血の改善を認めた。6ヶ月後にCE再検したところ、空腸か
ら回腸にangioectasiaが多発しており、貧血の進行も認めたため、経口、経肛門DBE下にAPC
施行した。その後も6ヶ月から1年程度の間隔でCEを施行し、angioectasiaの数が明らかに増加
し、貧血の進行を伴う際にはDBEを施行し、APCによる止血を行っている。その際CE所見を
挿入ルート選択の参考にしている。
【考察】
HHTは常染色体優性遺伝、皮膚粘膜や内臓の多発性末梢血管拡張、反復する出血を3主徴
とする疾患である。有病率は5000〜8000人に1人と推定されており、しばしば消化管出血を伴
一般演題 Ⅰ
う。多発する小腸angioectasiaに対するAPCによる止血は短期的には有効だが、その後も新た
なangioectasiaが出現するため、出血を繰り返すことが多い。本症例の経験により、HHTの小
腸angioectasiaに対する内視鏡的治療完了後に、DBEの必要性を判断するサーベイランスにCE
を行うことで、より侵襲の高いDBEを行う回数を減らすことが出来る可能性が示唆される。
74
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
OSⅠ-2
当院でのOGIBに対する小腸カプセル内視鏡検査の使用経験
瀧田 麻衣子、大圃 研、三角 宜嗣、綱島 弘道、田島 知明、港 洋平、
酒井 英嗣、村元 喬、松山 恭士、野中 康一、松橋 信行
NTT東日本関東病院 消化器内科
【背景】
当院では保険収載前より小腸カプセル内視鏡検査を行っており、現時点までで800例近い経
験を有している。原因不明消化管出血(以下OGIB)に対する施行も多数に及び、その転帰に
ついて後ろ向きに検討した。
【方法】
2004年5月から2013年12月までにOGIBに対する出血源検索目的で小腸カプセル内視鏡を施行
されたのべ548例について患者背景、検査結果、臨床経過を後ろ向きに検討した。OGIBは上下
部消化管内視鏡検査で出血源が同定されない消化管出血とした。
【結果】
男性361例、女性187例、平均年齢は61.5歳(15‐90歳)で、overt OGIBが272例、occult
OGIBが106例であった。腹部手術歴を有する症例は108例、糖尿病を有する症例は50例あった。
低用量アスピリンの内服を85例、NSAIDsの内服を43例で行っていた。全小腸観察は437/548
例(79.7%)で可能であり、腹部手術歴もしくは糖尿病を有する症例(101/141例)は有さない
症例(336/407例)と比較して有意に全小腸観察率が低い結果であった(p=0.005)。全小腸観
察が可能であった症例における胃通過時間の中央値は28分(0分‐627分)、小腸通過時間の中
央値は242分(27‐637分)であった。得られた所見としてはびらんが144例、潰瘍が84例、腫
瘍が66例、血管異形成が102例、原因不明出血が18例であり、異常なしが155例、観察不十分が
14例であった。腫瘍の質的診断に至った症例のうち、良性腫瘍は5例(過誤腫2/血管腫3例)、
悪性腫瘍は16例(小腸癌7/転移性小腸腫瘍5/GIST3/胃癌1例)であった。なお、検査を契
機にクローン病と診断されたものが9例あり、
小腸以外からの出血の診断となったものが6例(胃
3/十二指腸1/大腸2例)あった。合併症としてパテンシーカプセルの保険適応前に3例の滞留を
認めたが、いずれも背景疾患により小腸狭窄を有する症例であり、全例が後日自然排出を得た。
【考察】
OGIBに対して小腸カプセル内視鏡検査を行うことで悪性腫瘍あるいはクローン病の診断の
契機となった症例があった。また、小腸以外からの出血の診断となった症例もあった。滞留は
腸カプセル内視鏡検査は低侵襲な検査であるが、その結果の解釈においては偽陰性が問題とな
る。診断の感度を上げるには全小腸観察が必須であるが、蠕動の低下が予想される腹部手術歴
や糖尿病を有する患者では検査時間内に盲腸への到達を確認できないことが多く、検査時間の
延長や蠕動促進薬の併用が検討された。
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
75
一般演題 Ⅰ
狭窄をきたす背景疾患を有する症例で起こっており、ある面では診断の一助となっていた。小
OSⅠ-3
PC導入によるOGIB診療アルゴリズムの変化に関する検討
橋本 真一、河郷 亮、白澤 友宏 横田 恭之 坂井田 功
山口大学大学院医学系研究科 消化器病態内科学
【目的】
OGIB診療において、カプセル内視鏡(CE)とバルーン内視鏡(BE)の適応や施行順序は
出血の程度や患者の全身状態だけでなく、各施設での診療体制にも大きく左右されているの
が現状である。また、パテンシーカプセル(PC)の導入により、消化管狭窄の存在が疑われ
る症例に対しても、CEを使用することが可能となり、OGIB診療アルゴリズムに変化をもたら
している。さらに当科では、小腸を等張性緩下剤で拡張してCTを撮影するCT enteroclysis/
enterography(CTE)を導入しており、OGIB症例にも積極的に施行している。本検討の目的
はCE、BEにCTEを加えた当科におけるOGIB診療において、PCがもたらした変化について検
討することとした。
【方法】
2007年11月から2014年12月までに当科にて経験したOGIB症例に対して施行したCE、BE、
CTEに関して、検査施行回数および先行した検査の特徴やPC導入前後の変化について検討し
た。
【成績】
OGIB 248例に対してCE 285件、BE 191件、CTE 128件を施行し、症例1例に対する平均検
査施行回数は2.4回(1〜22回)であった。検査1回のみの症例が112例(45.2%)と約半数を占
めたが、2回以上の症例も136例(54.8%)存在した。2種類以上の検査手技を用いた133例で先
行した検査について検討したところ、
PC導入前の94例ではCE 42例(44.7%)、BE 14例(14.9%)、
CTE 38例(40.4%)であったが、導入後の39例ではCE 23例(59.0%)、BE 4例(10.2%)、CTE
12例(30.8%)とCEを先行する症例が増加した。
【考察】
PC導入後は、OGIBに対してCEを最初に使用する症例が増加しCTEは減少したが、これは
PC導入前にはCEの滞留を避けるために、CTEで消化管狭窄を除外していたためと考えられた。
【結論】
一般演題 Ⅰ
PCの導入により、OGIB診療におけるCEの役割はさらに拡大したことが示された。
76
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
OSⅠ-4
カプセル内視鏡読影センターにおけるOGIB939例の検討
本田 亘1)、中村 正直2)、後藤 秀実2)
ブラザー記念病院 消化器内科、2)名古屋大学附属病院 消化器内科
1)
【背景】
小腸用カプセル内視鏡(PillCam®SB, Given Imaging Ltd. Video Capsule Endoscopy:VCE)
は2007年10月に原因不明の消化管出血(OGIB)に対し保険収載がなされ、2012年7月1日より
PillCam®SB2plusを使用することで小腸疾患が疑われるすべての患者にVCEが適用拡大され
た。ワークステーションの各施設への導入をスムーズにし、またVCE検査の水準を一定に保
つ目的で保険診療が開始された2007年10月より当院ではカプセル内視鏡読影センターの運営を
開始し約8年が経過した。
【目的】
当センターで読影を行った1550例中、検査契機がOGIBであった939例について報告・検討す
る。
【対象と方法】
1室にワークステーションと管理事務部を置き、読影メンバーはVCE読影100例以上の2名の
医師で構成した。ワークステーションを有する各施設(22施設)でVCEを施行後、ロック付
USBメモリにデータを収め当センターへ郵送し、読影後USBメモリを各施設へ返却する。また
名古屋大学附属病院・画像管理室とNTT専用回線で全画像データの交信が可能である。2007
年10月から2015年4月までに1550例のVCE読影を施行し、OGIBは939例であった。
【結果】
OGIB939例の平均年齢65±15歳、男/女:579/360、平均Hb7.8±.2.6(2.3-17.1)。何らかの
基礎疾患を有す474例(50.5%)
。抗凝固剤もしくはNSAIDs内服339例(36.1%)。有所見率は
67.8% (635/939)で内訳はびらん・潰瘍性病変397例(31.6%、びらん208例、潰瘍・潰瘍瘢痕
120例)
、血管性病変137例(14.6%、Angiodysplasia126例、静脈瘤10例、デュラフォイ病変1例)、
活動性出血166例(17.7%)
、腫瘍性疾患66例(7.0%、SMT30例、ポリープ21例、癌7例、悪性
リンパ腫4例)
、小腸外活動性出血38例(4.0%)
、その他の小腸疾患43例(4.6%)、胃・食道内検
査終了13例(1.4%)であった。
小腸活動性出血は17.7%と多く、小腸外活動性出血も4.0%に認めた。当センターはスムーズ
な読影を可能とすることで、適用拡大されたカプセル内視鏡検査の普及に貢献している。
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
77
一般演題 Ⅰ
【結語】
78
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
一般演題Ⅱ
第 3会場
本館4階 花C
13:25~13:49
前処置等
座長:松田
知己 仙台厚生病院
消化器内視鏡センター
OSⅡ-1
当院における大腸カプセル内視鏡検査の前処置の工夫
OSⅡ-2
カプセル内視鏡挿入補助具の使用が有用であった好酸球性胃腸炎の一例
OSⅡ-3
カプセル内視鏡嚥下困難例に対するトラブルシューティング
〜オーバーチューブ併用が有用であった1例〜
OSⅡ-4
当院でのPillCam®SB3使用における電波干渉の実態とMGベストの使用経験
三重県立総合医療センター 外科 岩田
旭川厚生病院 消化器科 伊藤
静岡県立静岡がんセンター 内視鏡科 伊藤
大阪医科大学 第二内科 井口
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
崇
貴博
紗代
宗威
79
一般演題 Ⅱ
OSⅡ-1
当院における大腸カプセル内視鏡検査の前処置の工夫
岩田 崇1、2)、池田 哲也1、2)、尾嶋 英紀1、2)、大村 悠介1)、山本 晃1)、
渡部 秀樹1)、横江 毅1)、小西 尚巳1)、伊藤 秀樹1)、井上 英和2)、登内 仁1)
三重県立総合医療センター 外科 2)三重県立総合医療センター 内視鏡センター
1)
【背景】
当院では2014年1月から大腸カプセル内視鏡検査を施行している。導入当初の前処置は当
時メーカーが推奨していた一般的な前処置法(以下 旧法)を採用していたが、検査時間内
(9時から18時まで)カプセル排泄率が不良であったため、各施設で施行されていたものを参考
に2014年12月から当院独自の前処置法(以下 新法)に変更している。
【対象と方法】
2014年1月から2015年8月までに当院で大腸カプセル内視鏡検査を施行した27例を、前処置の
異なる旧法19例 新法8例の2群に分けて後方視野的に比較検討を行った。
【前処置法】
旧法:前日は低残渣食、21時にピコスルファートナトリウム10mlを内服。当日は来院
後、カプセル嚥下前にモビプレップ配合内用剤(以下モビ)200mlと水分100mlを排便がほ
ぼ透明(透明度5)になるまで繰り返し内服。カプセルの小腸到達を確認した時点でクエン
酸マグネシウム等張液(以下マグコ)700mlとモサプリド(10mg)4錠を内服。小腸到達
1・2時間後にマグコ700mlずつ内服。4時間で排泄されない場合はモビ200mlと水分100mlを繰
り返す。その他刺激性坐剤、軽食などを適宜追加する。新法:前々日21時にセンノシド(12mg)
3錠を内服。前日は旧法に加えて大建中湯(15g)2包を毎食後に、20時にクエン酸マグネシウ
ム高張液180mlを内服。当日は旧法に加えて朝8時、来院前に大建中湯2包およびモサプリド4
錠を内服、小腸到達1時間後に大建中湯2包を内服とした。またカプセル嚥下可能な便透明度を
緩和(3+〜4)した。
【結果】
検査時間内カプセル排泄率は旧法42.1%(8/19例)新法87.5%(7/8例)であった。全27症例
での来院からカプセル嚥下までの平均時間は旧法164分 新法138分、嚥下後から大腸到達まで
の平均時間は旧法196分 新法100分であり、検査時間内排泄15例中の大腸平均通過時間は旧法
188分 新法136分であった。また検査当日の平均水分摂取量は旧法4205ml 新法3288ml、大
腸洗浄度が適切(excellentかgood)と判定したものは旧法78.9% 新法87.5 %であった。
【まとめ】
新法への変更により、カプセル嚥下開始時間、大腸到達時間、大腸通過時間はそれぞれ短縮
され、検査時間内排泄率の改善が得られた。また水分摂取量の減少、洗浄度の改善も得られた。
80
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
一般演題 Ⅱ
OSⅡ-2
カプセル内視鏡挿入補助具の使用が有用であった
好酸球性胃腸炎の一例
伊藤 貴博、高橋 慶太郎、河本 徹、藤永 明裕、佐藤 智信、後藤 充、
斎藤 義徳、柳川 伸幸、折居 裕
旭川厚生病院 消化器科
症例は20歳代女性。
他院からの紹介でH20年頃より好酸球性胃腸炎で当院に通院していた。H.pylori の関係しな
い十二指腸潰瘍を何度も繰り返しており、小腸型クローン病の除外目的で小腸カプセル内視鏡
検査を予定した。十二指腸上十二指腸角に潰瘍瘢痕がありそのままではカプセルは通過せず胃
内でカプセルをスネアで把持し十二指腸の狭窄部を通過させるよう試みたが失敗した。
上十二指腸角の潰瘍廏痕・狭窄に対し内視鏡的バルーン拡張術を施行し15mmまで拡張後、
アドバンスカプセル内視鏡挿入補助具を使用しカプセルを十二指腸水平脚まで運搬しリリース
した。小腸カプセル内視鏡で全小腸を観察することができ、クローン病を疑う所見を認めなか
った。
小児や高齢者などの嚥下困難例でアドバンスを使用したカプセル内視鏡挿入例が報告されて
きている。当院ではこれまでクローン病確定および疑い患者24名に小腸カプセル内視鏡検査を
施行しているが滞留もなく安全に施行できている。十二指腸狭窄により通常ではカプセル内視
鏡検査を施行できないような症例であってもアドバンスを使用することで可能になることがあ
りこうした症例にも有用な方法であると考えられた。
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
81
一般演題 Ⅱ
OSⅡ-3
カプセル内視鏡嚥下困難例に対するトラブルシューティング
〜オーバーチューブ併用が有用であった1例〜
伊藤 紗代、堀田 欣一、今井 健一郎、吉田 将雄、岸田 圭弘、滝沢 耕平、
角嶋 直美、田中 雅樹、川田 登、松林 宏行、小野 裕之
静岡県立静岡がんセンター 内視鏡科
【はじめに】
カプセル内視鏡検査は嚥下困難症例には一般的に禁忌とされているが、実臨床においては、
検査前の嚥下困難の診断や適応外とする症例の拾い上げは困難で、非侵襲的な小腸検査として
施行しているのが現状である。今回、我々はカプセル内視鏡(以下、CE)を誤嚥した症例に
対するトラブルシューティングとして、オーバーチューブを併用し内視鏡誘導下に安全に挿入
し得た1例を経験したので報告する。
【症例】
60歳代男性。血便精査目的に全大腸内視鏡検査を施行したところ直腸生検からアミロイドー
シスと診断されたため、小腸病変の評価目的でCE検査を予定した。胆管癌cStage IVa(膵頭
十二指腸切除後)
、PS4、繰り返す消化管出血のため経口摂取不良な期間が長くなり、著明な
ADL低下を認めていた。検査当日は嚥下力の低下も示唆されたが、中止の判断はできず検査
を開始した。CEが嚥下できず主気管支に誤嚥してしまったが、呼吸状態の悪化なく咳反射に
て自力排泄した。検査継続のため、まずオーバーチューブを挿入し、CEをオーバーチューブ
内に挿入し、内視鏡を用いて胃内に誘導した。さらに胃内の停滞時間を短縮するため十二指腸
まで誘導した。全小腸の観察はできなかったものの、小腸にはアミロイドーシスの所見が確認
された。
【考察】
CE検査の偶発症としては滞留が最も多く、誤嚥は稀であるとされているが、本症例では
偶発的に誤嚥を認めた。呼吸状態が悪化することもあるため、自然排泄されない場合には内
視鏡を用いた回収を直ちに行うべきである。また、CE嚥下困難例に対する挿入の工夫とし
て、delivery deviceや回収ネットで誘導する方法や透明ロングフード内にCEを固定し、リア
ルタイムビューアで視野を確保しながら挿入する方法が報告されているが、これらは視認性の
低下と処置の煩雑さが問題となる。嚥下困難例に対するカプセル挿入法として、オーバーチュ
ーブは簡便で確実かつ安全な方法と思われた。
82
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
一般演題 Ⅱ
OSⅡ-4
当院でのPillCam®SB3使用における電波干渉の実態と
MGベストの使用経験
井口 宗威1、2)、能田 貞治1)、竹内 利寿1)、比嘉 克成3)、柴森 直也3)、
阿部 真也3)、依藤 直紀1)、太田 和寛1)、坂中 太輔1)、藤原 薫1)、
江戸川 祥子1)、小嶋 融一1)、井上 拓也1)、樋口 和秀1)
大阪医科大学 第二内科、2)大植会葛城病院、3)大阪医科大学 内視鏡センター
1)
小腸用カプセル内視鏡は、PillCam®SB3が登場し、画質の向上とAdaptive Frame rate の付
加により、より診断能が向上した。しかし、電波干渉により画像の記録がされないことがみら
れ、これにより病変の見落としに繋がることが懸念される。そこで当院でのPillCam®SB3使
用における電波干渉の実態を調査し、また、電波干渉の対策として電磁波防護服:MGベスト
の使用を行っているのでその使用経験について報告する。
当科では2014年8月よりPillCam®SB3の使用を開始し、2015年8月までに計80件の検査を行
っていた。外来検査が45件(以下外来群)
、入院検査が35件であった。MGベストは、2015年6
月以降の入院検査で6件に使用していた(以下MG群)
(入院検査でMGベスト未使用を以下入
院群(29件)とする)
。
外来群と入院群群では、検査時間は511.2±60.7分(mean):611.2±250.6分と2群間に差はな
かったが、電波干渉がみられた症例は、4.4%(2/45)、41.4%(12/29)で、有意に入院群で多
くみられた(P<0.05)
。また、干渉がみられた症例における画像の記録障害の時間は、外来群
4.5±0.7分:入院群30.2±28.6分で、入院群で長かった。また、入院群では、電波干渉により検
査が途中で終了したと考えられた症例が3例(10.3%)あった。
MG群は6例で、いずれの症例も電波干渉は確認されなかった。
【考察】
PillCam®SB3の使用において、入院検査は外来検査に比べて、電波干渉の頻度が多く、干
渉される時間も長いため、病変の見落としに繋がる可能性が高いと考えられる。また、入院検
査では電波干渉により検査が途中で終了してしまうケースもあり、注意を要する。これらの電
波干渉は、
テレメトリー式心電送信機による影響が大きいと考えられるが、その使用状況は日々
変化するため、同一の病室で検査を行っても干渉の有無にばらつきがみられる。MGベストは、
これらの電波干渉に対して有効な可能性が示唆された。
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
83
84
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
一般演題Ⅲ
第 3会場
本館4階 花C
13:50~14:14
NSAID関連病変および腫瘍
座長:遠藤
宏樹 横浜市立大学
内視鏡センター
OSⅢ-1
SLCO2A1遺伝子多型とNSAIDs起因性小腸傷害の関係の解明
OSⅢ-2
NSAIDs起因性小腸粘膜障害におけるPPIの影響についての検討
OSⅢ-3
腸管症型T細胞リンパ腫の小腸病変をカプセル内視鏡にて観察し得た一例
OSⅢ-4
カプセル内視鏡を施行した回腸神経内分泌腫瘍の一例
日本医科大学 消化器内科学 小杉
岩見沢市立総合病院 消化器内科 大森
友紀
沙織
山形大学医学部 内科学第二(消化器内科学)講座 佐々木
JCHO群馬中央病院 消化器内科 岸
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
悠
遂忠
85
OSⅢ- 1
SLCO2A1遺伝子多型とNSAIDs起因性小腸傷害の
関係の解明
一般演題 Ⅲ
小杉 友紀1)、藤森 俊二1)、莚田 泰誠2)、花田 隆造3)、林田 真理4)、
櫻井 俊之5)、岩切 勝彦1)、坂本 長逸1)
日本医科大学 消化器内科学、2)理化学研究所 統合生命医科学研究センター、
1)
相生会墨田病院、4)杏林大学 第3内科、5)国立国際医療研究センター病院 消化器科
3)
【目的】
非特異性多発性小腸潰瘍症の原因遺伝子としてSLCO2A1の異常が明らかとなった。S
LCO2A1遺伝子はプロスタグランディントランスポーターをコードしており、NSAIDs
起因性小腸傷害においてもその遺伝子多型が表現型に影響している可能性がある。そこで
NSAIDs起因性小腸傷害を検討した対象者で、SLCO2A1の遺伝子多型による小腸傷害の
程度を検討した。
【方法】
150例の健常成人に対して、採血等の検診で異常がないことを確認後カプセル内視鏡(CE)
を施行した。全例を無作為にCEL 200mg/dayを投与するCEL群と、LOX 180mg/dayに加え
て上部消化管傷害を予防するためにlansoprazole 15mg/dayを同時投与するLOX群にランダム
に分けた。薬剤はカプセルに充填しプラセボを用意した。薬剤投与は14日間行い、投与終了
後に再びCEを施行した。投薬前後のCEを比較した。この試験の詳細はJCG 2015 E-pub参照。
NSAIDs投薬後の粘膜欠損増加の程度とSLCO2A1遺伝子多型を比較検討した。本試験の
採血は試験前に遺伝子検査に対する対象者の同意を得て行った。本試験は当大学、理化学研究
所、医療法人相生会倫理委員会・遺伝子倫理委員会の承認を得ている。
【結果】
SLCO2A1遺伝子コーディング領域に8か所のsingle nucleotide variation(SNV)を認め、
R297G、
R389C、
A396Tの3箇所はアミノ酸置換を伴う変異であった。R297G、R389Cにおいては、
変異アレルのヘテロ接合体が1例ずつ見られたのみであった。A396Tは比較的頻度が高いSNP
であり150例中9例に変異アレルのホモ接合体が認められたが、小腸傷害程度との関連は認めら
れなかった。
【結論】
2週間のNSAIDs服用で生ずる小腸粘膜傷害とSLCO2A1遺伝子多型に関連を認めなか
った。
86
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
OSⅢ- 2
NSAIDs起因性小腸粘膜障害における
PPIの影響についての検討
一般演題 Ⅲ
大森 沙織1)、加藤 元嗣2)
岩見沢市立総合病院 消化器内科、2)北海道大学病院 光学医療診療部
1)
【背景】
非ステロイド系抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs: NSAIDs)の上部消化管
粘膜傷害に対するプロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor: PPI)の予防投与は有用性が
示されており、日本消化器病学会でまとめられた消化性潰瘍ガイドラインでもPPIの併用が推
奨されている。一方、NSAIDs起因性小腸粘膜傷害に対するPPI予防投与の有用性は示されて
いない。Wallaceらはラットの研究でPPIをあらかじめ投与することにより小腸粘膜障害が増
悪したと報告した。ヒトにおいて、NSAIDs起因性小腸粘膜傷害に対するPPIの影響について
直接検討した報告は少なく、増悪を示した報告はまだない。今回ヒトにおいて、PPI併用によ
りNSAIDs起因性小腸粘膜傷害の増悪がみられるのか、プラセボ対照比較試験を行った。
【対象と方法】
本研究は北海道大学病院自主臨床研究審査委員会の承認を受けた。健常ボランティア30名を
Omeprazole群(O群)とPlacebo群(P群)に無作為に割り付けた。各群ともジクロフェナク
錠(25mg)を1日75mg、14日間投与し、投与の前後でカプセル内視鏡検査所見、血液検査所
見について検討した。カプセル内視鏡検査は一人の内視鏡専門医が、盲検法で読影した。病変
は一定の領域をもつ粘膜欠損を潰瘍、領域をもたない粘膜欠損をびらん、絨毛のない一定の広
がりをもつ絨毛欠損、膜用狭窄に分類し、その他の所見とあわせて記載した。また小腸は通過
時間を3等分し、口側・中間・肛門側にわけて検討した。
【結果】
対象は平均年齢25.5歳、男性24名、女性6名であった。研究期間中、重大な有害事象はみら
れなかった。病変増加数は平均値でO群18.3、P群6.47であり、O群で多い傾向にあるものの、
有意差はみられなかった。主病変である潰瘍とびらんについてもO群14.9、P群3.4であり、有
意差はみられなかった。各部位別の病変増加数においても両群間に有意差はみられなかった。
【結論】
ヒトにおいてはNSAIDs起因性小腸粘膜障害に対し、PPIの影響は少ない可能性が示唆され
た。病変の程度については個人差があり、その他の要因については今後の課題である。
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
87
OSⅢ- 3
腸管症型T細胞リンパ腫の小腸病変を
カプセル内視鏡にて観察し得た一例
一般演題 Ⅲ
佐々木 悠1)、野村 栄樹1、2)、阿部 靖彦1)、佐藤 剛司3)、岩野 大輔1)、
吉澤 和哉1)、八木 周1)、作田 和裕1)、西瀬 祥一1)、上野 義之1)
山形大学医学部 内科学第二(消化器内科学)講座、2)仙台市立病院 消化器内科、
1)
山形大学医学部附属病院 光学医療診療部
3)
消 化 管 原 発 のT細 胞 性 リ ン パ 腫 の 一 つ で あ る 腸 管 症 型 T 細 胞 リ ン パ 腫(Enteropathyassociated T-cell lymphoma, EATL)は非常に稀であり、早期発見が困難で、腸閉塞や穿孔な
どの急性腹症を契機に発見されることが多く、また治療抵抗性で予後不良の疾患である。今
回、我々は、慢性下痢にて診断に至ったEATLを経験し、その小腸病変をカプセル内視鏡にて
観察し得たので報告する。症例は53歳、男性。3か月前から1日10行の水様下痢が続くため紹介
受診した。既往症は、高血圧症、脂肪肝、胆嚢結石。喫煙は1日15本、機会飲酒。腹痛はなく、
体表リンパ節は触知しなかったが、3か月で5kgの体重減少があった。血液検査では、低蛋白
血症と軽度の貧血を認めたが、白血球数・分画はほぼ正常、sIL-2Rに有意な上昇はなく、炎症
所見、HTLV-1、EB-VCA IgMおよび抗ヘリコバクターピロリ抗体は陰性であった。便培養は
Normal flora。下部消化管内視鏡検査では、終末回腸に縦走潰瘍瘢痕と顆粒状の粗造粘膜、横
行結腸には浅い地図状潰瘍も見られた。上部消化管内視鏡検査では、噴門を取り囲むように易
出血性の発赤顆粒状の不整粘膜が見られ、十二指腸には潰瘍瘢痕や不整粘膜が見られた。カプ
セル内視鏡検査では、小腸は全体に浮腫状で、粗造顆粒粘膜や地割れ様の粘膜、粘膜欠損様の
帯状発赤が見られた。特に回腸では白色絨毛が目立ち、終末部では輪状から地図状に広がる潰
瘍が指摘された。生検組織像では、上皮内および周囲への中型の異型リンパ球の著明な浸潤
がみられた。浸潤したリンパ球は、免疫組織学的にCD3陽性、CD8弱陽性、CD20や23、79a、
57、4は陰性、S-100蛋白陰性、Ki67陽性であった。胸腹骨盤部造影CT検査では回腸や胃噴門
部の壁肥厚は認めたが、有意なリンパ節腫大を認めなかった。PET-CT検査でも、胃噴門部や
回腸、結腸にFDGの集積があったが、リンパ節や他臓器浸潤は指摘できなかった。骨髄生検
では異型リンパ球は指摘できなかった。以上のことから、EATL、type2と診断した。CHOP
療法を開始し、3クール終了後のPET-CTでFDG集積の低下がみられた。EALTは極めて稀な
疾患であり、そのカプセル内視鏡像の報告はほとんどなく貴重な症例と考え報告する。
88
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
OSⅢ- 4
カプセル内視鏡を施行した回腸神経内分泌腫瘍の一例
一般演題 Ⅲ
岸 遂忠1)、大塚 晴彦2)
JCHO群馬中央病院 消化器内科、2)JCHO群馬中央病院 内視鏡室
1)
【はじめに】
既知の回腸病変をカプセル内視鏡(CE)で指摘できた神経内分泌腫瘍の一例を報告する。
【症例】
70歳代女性。検診の便潜血反応が陽性だったため、下部消化管内視鏡検査(CS)を施行し
たところ、終末回腸に15mm大の粘膜下腫瘍を認めた。腫瘍の一部にはびらん形成を認めた。
生検で神経内分泌腫瘍(NET G1)と診断した。EGDでは萎縮性胃炎を認めた。全腹部造影
CT検査では、造影効果のある腫瘤を終末回腸に認め、PET/CTでは同部位にFDG集積を伴
う腫瘤を認めた。CT、PET/CTではリンパ節転移を認めなかった。小腸多発病変の除外のた
めCEを施行したところ、全小腸の観察が可能であり、他病変は認めず、既知の終末回腸病変
は発赤調粘膜下腫瘍様病変として指摘できた。リンパ節廓清を伴う回盲部切除を行い、回腸
NET(T2N1M0 sStageⅢb)と診断した。固有筋層に達した腫瘍は、核分裂像を認めず(2mm2
あたり1個以下)
、MIB-1による増殖細胞のLabeling Indexは1%以下であり、NET G1の所見で
あった。術後補助化学療法は行わず、術後1年4か月間の無再発を維持している。
【考察】
本邦の消化器NETに占める小腸NETの割合は低率(空腸1.6%、回腸0.6%)である。また、
小腸NETは腸管内に多発することがあるため、全小腸に対する検索が必要である。本症例は
CSで病変を指摘されていたため、回腸病変を指摘する事は困難では無かったが、希少な病変
の読影を経験することで今後同様の病変を指摘する事が可能になると考える。
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
89
90
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
一般演題Ⅳ
第 3会場
本館4階 花C
14:15~14:45
炎症性腸疾患
座長:岡
志郎 広島大学病院
内視鏡診療科
OSⅣ-1
クローン病の小腸病変評価;カプセル内視鏡所見とX線所見の相関
OSⅣ-2
当院におけるクローン病患者へのカプセル内視鏡使用経験
OSⅣ-3
腸管Behçet病におけるカプセル内視鏡の臨床的有用性
OSⅣ-4
当院におけるクローン病患者に対する小腸カプセル内視鏡検査の現状
OSⅣ-5
小腸クローン病の経過観察にカプセル内視鏡が有用であった一例
福岡大学筑紫病院 消化器内科 二宮
琉球大学大学院医学研究科 感染症・呼吸器・消化器内科学講座(第一内科)
田中
風夫
照久
平塚市民病院 消化器内科 有本
浜松医科大学 第一内科 高野
岡山済生会総合病院 岡本
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
純
亮佑
雄貴
91
OSⅣ-1
クローン病の小腸病変評価;
カプセル内視鏡所見とX線所見の相関
二宮 風夫、山岡 梨乃、高田 康道、金城 健、大門 裕貴、佐藤 祐邦、矢野 豊、
平井 郁仁、八尾 建史、植木 敏晴、松井 敏幸
福岡大学筑紫病院 消化器内科
一般演題 Ⅳ
【背景】
従来までクローン病(CD)の小腸病変の評価には、主に小腸X線検査が行われてきた。近年
カプセル内視鏡(CE)が開発され、非侵襲的に全小腸の観察が可能となった。2012年に本邦で
パテンシーカプセル (PPC) が保険承認され、CDを含め幅広い小腸疾患に対しCEは施行可能
となった。しかし、CDにおけるCEと小腸X線検査の位置づけは確立していないのが現状であ
る。
【目的】
CDにおけるCE検査及び小腸X線検査の有用性、問題点を検討した。
【対象】
2009年1月から2015年7月までに当院でCEを施行し、CECDAIとLewis score(LS)の算出が
可能で、かつ他の臨床的パラメータ(CDAI、CRP、Hb、Alb)及び小腸X線検査による病変の
評価が全て検討可能であるCD症例24例を対象とした。大腸型CD及びCEが大腸に到達しなか
った症例は本検討から除外した。対象の内訳は男性13例、女性11例で、平均年齢は21.8歳であ
った。病型はアフタ型7例、小腸型7例、小腸大腸型10例であった。
【方法】
CEにおける活動性はCECDAIとLSで算定し、小腸X線における活動性はFukuoka index(FI)
を用い算定した。各画像検査と臨床的パラメータについての相関を解析した。
【結果】
CECDAIとLS、CECDAIとFIには正の相関を認めたが、FIとLSには相関は認めなかった。
CECDAI、LS、FIとCDAIに相関は認められなかった。CDAIが150未満の寛解期10例のうち、
LSが135以上の炎症を認めるものは5例(50%)存在し、CRPが0.3mg/dl未満の7例のうち、LS
が135以上の炎症を認めるものは5例(71%)存在した。
【考察】
内視鏡スコア (CECDAI) とX線検査スコアにおいて正の相関を認めるものの、X線検査
における下部回腸の病変検出不良のため、一部には乖離を認める症例も存在し、単独検査での
病勢の判定は困難と考えられた。また、臨床的寛解と思われる症例にも、約半数には小腸病変
が存在することが示唆された。
92
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
OSⅣ-2
当院におけるクローン病患者へのカプセル内視鏡使用経験
田中 照久1)、大平 哲也2)、金城 徹1)、金城 渚2)、金城 福則3)、外間 昭2)
琉球大学大学院医学研究科 感染症・呼吸器・消化器内科学講座 (第一内科)、
1)
琉球大学医学部附属病院 光学医療診療部、
2)
社会医療法人仁愛会 浦添総合病院 消化器病センター
3)
クローン病におけるカプセル内視鏡の有用性が近年報告されており、今回当院におけるクロ
ーン病患者へのカプセル内視鏡使用状況を報告する。
【対象・方法】
当院にて平成25年1月から平成26年12月の期間において、クローン病診断にカプセル内視鏡
を使用もしくはクローン病と診断されている患者にカプセル内視鏡を使用した患者を対象と
し、年齢、性差、使用目的、病型、カプセル内視鏡所見に関してレトロスペクティブに比較・
検討した。カプセル内視鏡はPillCamⓇSB2以降の世代を使用した。
【結果】
対象となった患者は6名であり、性差は男性5例、女性1例、検査施行時の平均年齢は19.8±
10.3歳(12-41歳)であった。4例が小腸大腸型、2例が小腸型であった。クローン病診断目的で
の使用が5例、小腸病変の経過フォロー目的での使用が1例であった。3例では事前に小腸造影
検査(バリウム経口法を含む)を行っており、パテンシーカプセルにて狭窄の評価を行った
のは1例であった。またカプセルの滞留は0件であった。カプセル内視鏡検査の所見としては、
縦走潰瘍4例、敷石像1例、びらん5例、潰瘍3例、粘膜のひきつれ・潰瘍瘢痕6例であった。
【まとめ】
従来の小腸造影検査では描出できない細かい病変の評価や、若年症例にも比較的侵襲が少な
く検査が行えるなど、カプセル内視鏡検査はクローン病診断に有用であると思われる。今回症
例の提示・若干の文献的考察を含め報告する。
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
93
一般演題 Ⅳ
【はじめに】
OSⅣ-3
腸管Behçet病におけるカプセル内視鏡の臨床的有用性
有本 純1)、遠藤 宏樹2)、加藤 孝征2)、梅沢 翔太郎2)、冬木 晶子2)、
内山 詩織2)、日暮 琢磨2)、大久保 秀則2)、野中 敬2)、松橋 信行3)、
厚川 和裕1)、中島 淳2)
平塚市民病院 消化器内科、2)横浜市立大学附属病院 肝胆膵消化器病学、
1)
一般演題 Ⅳ
NTT東日本関東病院
3)
【目的】
Behçet病は原因不明の全身性炎症性疾患であり、そしてその中で消化管病変が臨床像の中
心である場合を腸管Behçet病(腸管BD)という。回盲部潰瘍が腸管BDの定型病変として知ら
れているが、
近年カプセル内視鏡(CE)の登場で小腸にも病変があることが分かってきている。
しかし、全ての腸管BD患者の小腸を評価すべきか、評価する場合のタイミングなど、腸管BD
におけるCEの位置づけは定まっておらず、CEの臨床的意義について検討した。
【方法】
腸管BDまたは疑いと診断されたBD群19名と通常ボランティアのコントロール群19名を対象
としてCE所見を検討した。診断と病型分類には厚生労働省研究班の診断基準を用いた。完全
型1例、不全型14例、疑い4例であった。所見は発赤、びらん、潰瘍に分類し、その頻度と個数
について解析、また小腸粘膜炎症の重症度の評価としてルイススコアを使用した。また、腸管
BDの小腸病変の意義について更に詳細に検討するため、小腸クローン病患者19名のCE所見と
比較した。
【結果】
腸管BD群では19名中18名で発赤、15名でびらん、9名で潰瘍を認め、発赤、びらん、潰瘍全
てのCE所見で2群間の有所見率に有意差を認めた。病変数においても同様に有意差を認めた。
ルイススコアの中央値で比較してもBD群:237 (0-768)
、コントロール群:8 (0-135)と有意
差を認めた。クローン群とBD群では比較すると、クローン群:393(147-4900)
、BD群:237
(0-768)と有意にクローン群の方がルイススコアが高かった。
【考察】
今回の研究ではCEを用いて腸管BD患者の小腸病変について検討した。今回認めた小腸病変
全てが腸管BDによるものかは不明だが、腸管BDでは小腸病変が多いことは示された。クロー
ン病と比較すると小腸病変を評価する意義は高くない可能性が示唆されたが、BDでも小腸病
変は多く、クローン病とは違って滞留の危険度が高くないことを考慮するとCEは非常に有用
な評価方法であると言える。BD群ではほとんどの患者に何らかの小腸病変を認めており、腸
管BDの患者は全例でCEを施行することが望ましいと考えられた。
94
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
OSⅣ-4
当院におけるクローン病患者に対する
小腸カプセル内視鏡検査の現状
高野 亮佑1)、大澤 恵3)、佐原 秀1)、岩泉 守哉1)、濱屋 寧2)、高垣 航輔1)、
古田 隆久4)、杉本 健1)
浜松医科大学 第一内科、2)臨床腫瘍学講座、3)光学医療診療部、
1)
臨床研究管理センター
4)
小腸カプセル内視鏡(SBCE)は簡便かつ低侵襲であり、2012年7月より本邦でもパテンシ
ーカプセル(PC)の登場に伴い診断確定済みのクローン病(CD)や疑診例、加えて狭窄を疑
う症例に対しても開通性が確認されればSBCEが施行可能となった。しかし、CD患者の実臨
床における利用は検討課題である。
【目的】
PC、SBCEの使用状況と臨床的有用性を検討した。
【方法】
対象は当院で2012年9月から2015年7月までに事前にCD確定診断された患者と疑診例の患者
に施行したPC 29例(男性19、女性10)とし、臨床背景、通過判定法、時間内排出率、不通過
例、有害事象、検査目的、Lewis score(LS)を用いたSBCEにおける所見の内訳を検討項目と
した。
【成績】
対象の内訳は平均年齢39.2歳で、17例が外来施行、確定診断済みCD23例(手術歴有り12例)、
CD疑診6例であった。PC施行時のCDAI平均値は138で、PC開通性ありと判断しSBCEを施行
したのは23例(79.3%)であった。PCの時間内目視排出確認は12例(41.3%)で、CTまで用い
た症例は9例(31.0%)であった。開通性なしと評価された6例のうち4例は手術歴があり、PC
による有害事象は1例で軽度の腹痛を生じた他には見られず、開通性ありと判定しSBCEを施
行した症例において滞留を含む合併症は認めなかった。SBCE可能であった症例の検査目的
としては、病変範囲診断を主とした。臨床的活動期6例(平均CDAI 259)
、臨床的寛解期13例
(平均CDAI 65)
、術後(1年以内)再発評価4例(平均CDAI 136)に対してのSBCE所見をLS
平均値で評価すると,前者より657、565、860であった。
【結論】
PC使用によって合併症なくSBCEを安全に使用することが可能であった。SBCEは微小なCD
病変の描出に優れ、病型診断と粘膜寛解評価の利用に有用性が期待できる。内視鏡的活動性評
価法に関してはさらなる検討が必要と思われた。
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
95
一般演題 Ⅳ
【背景】
OSⅣ-5
小腸クローン病の経過観察にカプセル内視鏡が
有用であった一例
岡本 雄貴、伊藤 守
岡山済生会総合病院
一般演題 Ⅳ
症例は50歳代男性。18歳で痔瘻の手術、24歳で膀胱直腸瘻のため回腸、上行結腸、膀胱壁切
除術を施行された。その後通院せずに経過したが38歳、39歳で腹直筋直下膿瘍のため入院し、
この頃にクローン病と診断された。42歳で腸閉塞にて入院、退院後、腹壁の瘻孔が開口し腹
痛、排尿時痛、腸内溶液漏出のため何度か入退院を繰り返した。45歳時にインフリキシマブ投
与開始し、瘻孔閉鎖し治療効果を認めた。その後プレドニゾロン、アザチオプリン、アミノサ
リチル酸製剤にて加療を継続したが症状再燃、瘻孔再開通し皮下膿瘍形成を認めた。当院での
加療を希望され、当院紹介となる。腹部CTでは下腹部前壁側に広範に膿瘍、蜂窩織炎を認め、
皮下に多数の瘻孔を認め、
膀胱壁前壁にも連続していた。注腸造影では回腸末端に狭窄を認め、
小腸造影では回腸末端部狭窄の手前に瘻孔を疑う所見を認めた。小腸造影後のCT検査では回
腸前方に数個の点状の造影剤を認め腸管皮膚瘻の一部と考えられた。大腸内視鏡検査では終末
回腸に瘢痕多数、小潰瘍あり、瘻孔らしき側溝から造影を行うと腸管壁外に造影剤漏出を認め
た。インフリキシマブ投与を再開し、投与継続により次第に病状改善を認めた。臨床的寛解期
と考え、インフリキシマブ中止を検討、パテンシーカプセル通過を確認後にカプセル内視鏡検
査を施行したところ、空腸から回腸にかけて小びらん、瘢痕を散見し、周囲に浮腫状発赤を伴
う潰瘍病変を認めた。クローン病の活動性病変と考え、インフリキシマブ投与を継続、現在も
病勢悪化を認めず外来通院中である。小腸型クローン病においては、診断、治療、経過観察に
小腸の粘膜観察が有用とされているが、臨床的寛解と考えられた症例においても粘膜治癒が得
られておらず病勢悪化をきたす可能性が指摘されている。カプセル内視鏡によるクローン病患
者の小腸粘膜の観察が可能となり、適切な病勢評価が今後の治療方針決定の一助となることが
考えられる。今回我々は、小腸クローン病の経過観察にカプセル内視鏡が有用であった一例を
経験したため、若干の文献的考察を加えて報告する。
96
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
一般演題Ⅴ
第 3会場
本館4階 花C
14:46~15:04
大腸用カプセル内視鏡①
座長:佐川
保 北海道がんセンター
消化器内科
OSⅤ-1
透析患者における大腸カプセル内視鏡の検討
OSⅤ-2
当院における大腸カプセル内視鏡施行例に関する検討
OSⅤ-3
当院における大腸内視鏡カプセルの使用経験について
増子記念病院 肝臓内科 堀田
おばら消化器・肛門クリニック 小原
兵庫医科大学病院 内科学消化管科 小川
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
直樹
邦彦
智広
97
OSⅤ-1
透析患者における大腸カプセル内視鏡の検討
堀田 直樹1)、前原 紳治2)、高木 千尋2)、徳永 有姫3)、伊藤 陽子3)、
井上 みや子3)、土井 玲子4)、黒川 剛5)、中村 正直6)、後藤 秀実6)
増子記念病院
肝臓内科、2)放射線科、3)看護部、4)検診センター、5)肝臓外科、
1)
名古屋大学大学院 消化器内科学
6)
【目的】
当院は、腎臓・肝臓・糖尿病を中心とした専門病院であり2014年12月より大腸カプセル内視
一般演題 Ⅴ
鏡を開始している。透析患者は、腸管も脆弱化し、抗凝固剤の内服しているケースも多いので
大腸内視鏡後の出血のリスクも高い。そこで、透析患者と非透析患者で全大腸観察完遂率を検
討した。
【方法】
症例は、2014年12月から2015年8月まで当院で大腸カプセル内視鏡を施行した36人である。
透析患者は、13人、非透析患者は23人に施行した。検査前処置のプロトコールは同様に施行し
た。
【結果】
全症例での全大腸観察完遂率は、66%であった。非透析患者では、65%、透析患者では38%
であった。透析患者施行にあたり、非透析患者でのプロトコールでの全大腸観察完遂率71%
(初期の7人中5人)であったため開始した。透析患者第1人目(74才男性)が全大腸観察完遂し
たため、その後同様に検査を開始したが、前処置のモビプレップの飲水不可の症例やブースタ
ー施行困難例、カプセルが全く動かない、カプセル内視鏡を飲むことが出来ないなど非透析患
者では起こらない事例を認めたため全大腸観察完遂率が低いことが推測された。カプセル内服
不可の患者には、NGチューブを用いて透視下で送り込んだケースと内視鏡下で送り込んだケ
ースがあった。飲水については、透析患者は飲水制限が決められているのでそこを守っている
かどうかを確認事項に入れて検査導入を考慮している。以前CF施行したことのある患者に関
しては、その時の前処置の記録を確認するようにしている。
【結語】
今後透析患者の全大腸観察完遂率上昇のためには前処置の改善および問診表のプロトコール
作成の改善が必要と考えられる。
98
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
OSⅤ-2
当院における大腸カプセル内視鏡施行例に関する検討
小原 邦彦
おばら消化器・肛門クリニック
【背景】
当院では2014年5月より大腸カプセル内視鏡検査(Capsule Colon Endoscopy 以下CCE)を
導入し適用症例に対する検査を施行してきたので、その経験について報告する。
【対象】
45.8(27-78)歳。検査目的は潰瘍性大腸炎のフォロー6例、排便出血に対するスクリーニング4
例、ボランティア5例であった。
【方法】
前処置:前日に3食検査食を摂取。Mg製剤1.5gもしくはセチロ配合錠9錠を内服。19時にモ
ビプレップ1000mLもしくはマグコロール高張液250mL、就寝時にプルゼニド2錠を服用させた。
当日は起床後モビプレップ500〜1000mLを服用し、来院後にCOVIDIEN社PillCamCOLON2を
服用させた。カプセルが小腸に移行確認後から1時間ごとにマグコロールP900mLもしくはモ
ビプレップ500mLをブースターとして服用。ブースター3回服用後に軽食摂取しカプセルの排
出を認めない場合にはグリセリン浣腸もしくは内視鏡による回収を行った。その他補助薬とし
て大建中湯、芍薬甘草湯などを併用した。
【結果】
カプセルの排出は15例中14例(93.3%)で得られた。排出が得られなかった1例はカプセルが
横行結腸に留まっており、経肛門的に内視鏡を用いて回収した。洗浄度はexcellent2例、good
9例、fair 3例、poor1例であり、排出が得られなかった1症例を除いては全例解析可能であっ
た。カプセル嚥下から排出までの平均所要時間は349分(119-570)。各部位における通過時間
は右側結腸において52.1分(2-171)
、横行結腸で3.2分(1-14)、左側結腸で180.4分(9-426)と
左側結腸でより通過に時間を要した。得られた所見は大腸ポリープ4例、活動期の潰瘍性大腸
炎2例、緩解期潰瘍性大腸炎4例、憩室以外異常所見なしが5例であった。
【結語】
洗浄度、検査時間のさらなる改善にむけてレジメの検討が必要だが、CCEは大腸疾患のス
クリーニングおよび大腸疾患の早期発見のための精密検査受診率向上に向けた新たな検査法の
一つとして期待できる。
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
99
一般演題 Ⅴ
2014年4月より2015年7月までに当院で経験したCCE症例15例。男性9例女性6例。平均年齢
OSⅤ-3
当院における大腸内視鏡カプセルの使用経験について
小川 智広、河野 友彰、應田 義雄、原 謙、山崎 尊久、奥川 卓也、近藤 隆、
戸澤 勝之、池原 久朝、上山 茂光、富田 寿彦、大島 忠之、福井 広一、
渡 ニ郎、三輪 洋人
兵庫医科大学病院 内科学 消化管科
【目的】
大腸カプセル内視鏡(CCE)は2014年1月より保険診療が始まった。当院では2015年4月よ
一般演題 Ⅴ
り開始しており、使用経験について報告する。
【方法】
2015年4月から2015年8月までに当院にてCCEとともにダブルバルーン内視鏡検査(DBE)
を施行した4例について検討した。まずCCEの全大腸観察率、大腸通過時間、総水分摂取量、
腸管洗浄度、所見、偶発症、患者の忍容性について検討し、また径6mm以上の大腸ポリープ
の診断率をDBEをgold standardとして検討した。
【結果】
対象はすべて男性、年齢中央値61.5歳(43歳-79歳)、全大腸観察率75%(3/4)、大腸通過時
間4時間45分(3時間8分-8時間11分)
、総水分摂取量平均値は全例4100ml。腸管洗浄度は優0
例、良2例、可2例、不良0例であった。偶発症は認めなかった。患者の忍容性に関しては非常
に高い1例、高い2例、普通1例、低い0例、非常に低い0例であった。有所見率は、100%(4/4)
であり、ポリープ6例、憩室2例、発赤1例であった(重複含む)。DBEをgold standardとした
CCEの径6mm以上のポリープの診断率は、100%(4/4)であった。また、径5mm以下のポリ
ープに関しては、29%(2/7)であった。
【考察】
1例で全大腸観察不可症例を認めたが、この例は癒着例で癒着例に関しては追加処置レジメ
ンの検討の必要性が示唆された。また、径5mm以下のポリープの発見率は洗浄度が可の症例
で低く、洗浄法が小ポリープの発見率と関連していると考えられた。
【結語】
CCEは患者の検査に対する忍容性が高く、径6mm以上のポリープの診断率も高いことより、
スクリーニング検査として受け入れられる可能性が高いが、さらに腸管洗浄の工夫が必要であ
ると考えられた。
100
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
一般演題Ⅵ
第 3会場
本館4階 花C
15:05~15:23
大腸用カプセル内視鏡②
座長:半田
修 京都府立医科大学
消化器内科
OSⅥ-1
大腸カプセル内視鏡施行時に電波干渉発生した場合の対処法
OSⅥ-2
タブレット端末を用いた大腸カプセル内視鏡説明の取り組み
OSⅥ-3
当院における大腸カプセル内視鏡の使用経験と課題
医療法人厚生会虹が丘病院 増田
医療法人厚生会虹が丘病院 庄司
淳一
奈津子
浜松医科大学 第一内科 佐原
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
秀
101
OSⅥ-1
大腸カプセル内視鏡施行時に電波干渉発生した場合の対処法
増田 淳一1)、堤 卓也1)、大仁田 賢3)、竹島 史直2)、中尾 一彦2)
医療法人厚生会 虹が丘病院、2)長崎大学 消化器内科、3)長崎大学 光学医療診療部
1)
【背景】
当院では2014年6月から大腸カプセル内視鏡を開始し、2015年8月までに44人の検査を終了し
た。
2015年2月の第8回日本カプセル内視鏡学会で当院はカプセル内視鏡と医用テレメーターとの
間で起きる電波干渉の調査結果とその対策に関して日本初の報告を行った。その中で電波干渉
対策は①被験者はテレメータとの距離を空け、直視できる位置に留まらない ②影響あるテレ
メーターの直上、直下の部屋では検査を控える ③検査中は電磁波防護用のベスト着用する、
などの対策を提唱した。
一般演題 Ⅵ
その後、上記対策施行後は全く電波障害を生じていなかったが、37例目の症例で電波障害が
発生した。しかし、適切な対応を行うことで検査記録自体には問題は生じなかった。今回はそ
の対処法に関して報告する。
【電波干渉発生した場合の対処法】
患者さんは69歳男性、他院内視鏡で最後まで検査完遂できず当院にて大腸カプセル内視鏡施
行した。検査当日AM8:30カプセル内視鏡飲み込み、LED青色点滅して電波状態良好であ
ることを確認した。その後検査室である4階病室へ移動したところLED赤色点滅を生じた。
そこで電波障害が発生したと判断し、まず今いる部屋の対側へ移動してもらった。それだけで
LED青色点滅は再開し、電波状態は良好となった。次に電波障害を生じた発生源の特定を行
った。まず心電図モニターの使用状況を各階病棟に問い合わせた。すると4階の検査室直上の5
階病室に、深夜救急搬送された患者さんがいることが判明した。救急患者のため、念のため心
電図モニターを装着していたことが判明した。そこでその患者さんの主治医と連絡を取り、状
態安定していたため心電図モニターははずして頂いた。
すると4階検査室のどの場所にいても青色点滅LEDとなり、良好な電波状態を確認できた。
検査開始直後に発生した電波干渉であり、大腸の撮影には全く問題を生じなかった。
このことから電波障害が生じた場合①応急処置:現在いる対側へ移動(その場を立ち去る)
②原因対策:検査両サイドの部屋と上下階に心電図モニター装着者がいないか調べる→いれ
ばモニターはずすか、部屋を替わってもらう。
これら2ステップの対策を講じれば、電波障害が発生しても電波干渉による記録障害は回避
できると考える。
【結語】
大腸カプセル内視鏡施行時に電波干渉発生しても、適切な対処を行えば電波干渉による記録
障害は回避できる。
102
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
OSⅥ-2
タブレット端末を用いた大腸カプセル内視鏡説明の取り組み
庄司 奈津子1)、増田 淳一2)、堤 卓也2)
医療法人厚生会 虹が丘病院 大腸カプセル内視鏡読影支援技師、
1)
医療法人厚生会 虹が丘病院 消化器内科
2)
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
103
一般演題 Ⅵ
【背景】
2014年1月に保険診療が可能となった大腸カプセル内視鏡は「痛くない」
「恥ずかしくない」
など特に女性の患者さんにとって非常にメリットの多い検査である。当院でも2014年6月から
大腸カプセル内視鏡を導入開始し、2015年までに44名の検査を終了した。検査を重ねていく過
程で「患者さんのカプセル内視鏡に対するイメージ」と「実際の検査」では大きなギャップが
あることが解ってきた。
【方法】
当院ではそのギャップを出来る限り埋めるために「患者さんからの問い合わせ」から「外来
受診」までの流れをシステム化した。検査開始までに最低3回以上の検査説明を行い、その説
明にタブレット端末によるパワーポイント自動プレゼンテーションを使用している。
【問い合わせ〜受診まで】
①患者さんから問い合せがあった場合、まず「説明用パンフレット」と「検査適応や保険適
応を判断するためのチェックシート」を郵送している。
②記入して頂いた「検査適応や保険適応を判断するためのチェックシート」を当院へ送り返
して頂いている。
③記入済みのチェックシートを診て、検査適応と保険適応、検査費用概算を記述した「適応
判定シート」を郵送、それを見て、初めて患者さんに当院を受診して頂いている。
【受診〜検査開始まで】
①受診後、まず検査説明用ビデオをみて頂いている。これにはタブレット端末によるパワー
ポイント自動プレゼンテーションを使用している。
②この時点で検査希望があれば、引き続きCTを撮影し、消化管狭窄や多発憩室の有無など
をチェックしている。
③その後、医師の診察を行い「検査概要説明」「検査日決定」「同意書作成」などを行ってい
る。
【検査日】
もう一度、タブレット端末によるパワーポイント自動プレゼンテーションの検査説明用ビデ
オを観て頂き検査説明を行った上、疑問や質問を出来る限り解消して検査に臨んで頂いてい
る。
【結果】
検査開始までに「パンフレット」
「タブレット端末による説明(2回)」と最低3回の検査説明
を行うことにより、
「患者さんのカプセル内視鏡に対するイメージ」と「実際の検査」との大
きなギャップを埋めることができた。また、検査までの流れをシステム化しタブレット端末を
使用した検査説明をすることで、医療従事者の業務軽減につながっている。
【結語】
「患者からの問い合わせ」から「外来受診」までの流れをシステム化し、タブレット端末を
使用した検査説明を行うことは、患者・医療従事者双方にメリットがあると思われた。
OSⅥ-3
当院における大腸カプセル内視鏡の使用経験と課題
佐原 秀1)、田村 智1)、杉山 智洋1)、高野 亮佑1)、森 泰希1)、鏡 卓馬1)、
鈴木 聡1)、市川 仁美1)、谷 伸也1)、大石 慎司1)、濱屋 寧2)、岩泉 守哉1)、
高垣 航輔1)、大澤 恵3)、古田 隆久4)、杉本 健1)
浜松医科大学 第一内科、2)浜松医科大学 臨床腫瘍学講座、
1)
浜松医科大学 光学医療診療部、4)浜松医科大学 臨床研究管理センター
3)
一般演題 Ⅵ
【背景と目的】
大腸カプセル内視鏡(CCE)は2014年1月に保険収載された。高い忍容性と検出感度を目指
すために、負担の少ない前処置で良好な洗浄度を得るとともにバッテリー時間内の肛門排出が
必要であるが、当院では十分な普及に至っていない。CCE導入の現況と問題点について報告
する。
【方法】
当院で2014年1月〜2015年8月にボランティアまたは保険適応で施行した15例を検討対象とし
た。
検査理由はスクリーニング4例、
便潜血陽性2例、腹痛・便通異常5例、潰瘍性大腸炎4例であり、
腹部手術歴有は2例であった。前処置・ブースター法は治験時のレジメンに準じて概ね統一し
た。検査前日は3食低残渣食、
就寝前にクエン酸マグネシウム高張液180mlとセンノシド(12mg)
4T内服。当日はPEG溶液(モビプレップ)1L+水500mlを1時間かけて内服した後、便洗浄度
に関わらずカプセルを内服した。内服1時間以後に小腸未到達であれば適宜メトクロプラミド
(10mg)1Aを筋注した。小腸到達後のブースター①と小腸到達1時間後のブースター②はい
ずれもクエン酸マグネシウム等張液900mlとモサプリド5mg内服で、同3時間後のブースター
③は残りのPEG溶液(モビプレップ)1L+水500mlとモサプリド5mg内服とし、各々のセク
ションで10分以上の歩行・運動を促した。バッテリー時間内排出例を完遂例とし、洗浄度に関
しては、大腸を盲腸(C)
、上行結腸(A)
、横行結腸(T)、下行結腸(D)、S状結腸〜直腸(SR)
の5部位に分け、excellent(3点)
、good(2点)
、fair(1点)、poor(0点)と4段階評価した。
【結果】
男性9例、女性6例の平均年齢は51.5歳(25-81)で完遂率は73%(11/15)であった。完遂例
/未完例における男女比および平均年齢は8:3/1:3(p=0.10)、46.1/66.5歳(p=0.04)であった。
平均食道胃通過時間および平均大腸到達時間は78.9/78.8分および161.2/149.3分で差を認めなか
ったが、平均結腸通過時間は197.4/796.5分で有意差を認めた(p=0.013)
。特に脾湾曲〜直腸
の平均通過時間は121.7/668.0分(p<0.01)であった。高齢とS状結腸でのカプセル停留が未完
因子と考えられた。また腹部手術歴のある2例はいずれも未完であった。洗浄度平均スコアはC:
2.0、A:2.1、T:2.3、D:2.4、SR:1.5であり、概ね満足のいくものであった。検査後アンケ
ートでは、所要時間、洗浄やブースターの内服量に対する不満が多かった。
【結論】
洗浄度は満足のいくものであったが、所要検査時間など、CCE普及のためにはまだ多くの課
題が残る。当院では、保険適応範囲内で運用している事もあり、CCE検査数はなかなか増加
しない。CCE普及には前処置法のさらなる改善と検査時間短縮が不可欠であると考えており、
新たなレジメンを模索中である。
104
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
一般演題Ⅶ
第 3会場
本館4階 花C
15:25~15:49
小腸カプセル内視鏡
座長:川野
誠司 岡山大学病院
消化器内科
OSⅦ -1
小腸カプセル内視鏡導入初期における全小腸観察への試み
OSⅦ -2
カプセル内視鏡で経時的に小腸病変を観察しえた
Henoch-Schönlein紫斑病の1例
OSⅦ -3
全身性エリテマトーデス(SLE)の小腸カプセル内視鏡所見の検討
OSⅦ -4
当初セリアック病が疑われた、慢性下痢症の一例
広島市立安佐市民病院 消化器内科 青山
弘前大学大学院医学研究科 消化器血液内科学講座 太田
九州大学大学院 病態機能内科学 鷲尾
辻仲柏の葉病院 外科 星野
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
大輝
真二
恵万
敏彦
105
OSⅦ - 1
小腸カプセル内視鏡導入初期における全小腸観察への試み
青山 大輝1)、福本 晃2)、田中 秀典1)、頼田 尚樹1)、妹尾 慧1)、向井 伸一1)、
上田 裕之2)、木村 茂1)、永田 信二1)
広島市立安佐市民病院 消化器内科1)、同 内視鏡内科2)
【背景と目的】
これまで小腸カプセル内視鏡による全小腸観察のため前処置、介入といった工夫がな
され種々の報告があるが確立した方法はない。当院では2015年1月に小腸カプセル内視鏡
(COVIDIEN社 SB3) を導入した。全小腸観察に向けた取り組みとしてリアルタイムビュー
アの積極的使用を行っており、小腸カプセル内視鏡導入初期の当院における現況について報告
する。
【対象と方法】
2015年1月から2015年8月、当院において外来で小腸カプセル内視鏡検査を施行した21例(男
性17例、女性4例、平均年齢64歳) を対象とした。検査前処置は絶食のみで、カプセル嚥下後
より全例でリアルタイムビューアを使用し(直後、以降30分毎)、検査開始後2時間を越えても
カプセルが小腸に達していない症例には内視鏡による介入を行った。対象における全小腸観察
一般演題 Ⅶ
率、介入有無、胃通過時間、小腸通過時間について検討した。
【結果】
全小腸観察率は95%(20/21)であった。介入を行ったのは3例で、内訳は検査開始後2時間経
過してもカプセルが胃内に存在した2例、カプセルの嚥下困難1例であった。介入した症例はす
べて全小腸観察可能であった。胃通過時間中央値は36分 (5-193分) で、胃通過時間が1時間を
越えたのは8例であったが、2時間を越えたのは2例のみであった。小腸通過時間中央値は314分
(116-470分) で、小腸通過時間が7時間を越えたのは4例であったが、8時間を越えたのは1例の
みであった。
【結語】
外来患者で日中 (9時間) に検査を完遂させるためにはリアルタイムビューアを積極的に活
用し、検査開始後2時間で介入判断するのが効率的と考えた。
106
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
OSⅦ - 2
カプセル内視鏡で経時的に小腸病変を観察しえた
Henoch-Schönlein紫斑病の1例
太田 真二1)、平賀 寛人1、2)、櫻庭 裕丈1)、海老名 麻美4)、佐竹 美和1)、
菊池 英純1、3)、澤谷 学1)、平賀 典子1)、珍田 大輔1)、三上 達也4)、
福田 眞作1、2、3、4)
弘前大学大学院医学研究科 消化器血液内科学講座、
1)
弘前大学大学院医学研究科 大館・北秋田地域医療推進学講座、
2)
弘前大学大学院医学研究科 地域医療学講座、4)弘前大学医学部付属病院 光学診療部
3)
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
107
一般演題 Ⅶ
【症例】
10代、男性
【主訴】
腹痛、皮疹、
【既往歴】
特記すべきことなし
【現病歴】
平成26年7月初旬に焼肉を摂取、3日後から頭痛・発熱、5日後から水様性下痢(15行/日、血
液混入なし)が出現。7日後には下痢は改善したが、両下腿に皮疹が出現、左上腹部痛も改善
しないため、7月中旬に前医紹介・入院。入院時、両下腿にφ2mm前後の有痛性紫斑を認め
ており、Henoch-Schönlein紫斑病を疑って第2病日に皮膚生検施行(病理組織学的に血管壁に
IgA沈着あり)。入院時の便培養は陰性であり、絶食・補液にて加療開始するも腹痛改善なく、
第3病日よりPSL 1mg/kg/day(60mg/day)投与開始となった。その後、腹痛・紫斑いずれも
改善傾向、第5病日に施行した全大腸内視鏡検査(以下TCS)では、終末回腸・回盲弁に浮腫・
びらん・浅い潰瘍を認めたがその他大腸には異常所見を認めなかった。第6病日から食事開始、
PSL漸減するも症状再発なく、第8病日退院。その後外来でPSL 25mg/dayまで漸減となってい
たが、7月下旬に5-6行の血便を伴う腹痛・紫斑が出現、再入院。入院翌日に施行したTCSでは、
回盲弁に浅い潰瘍は残存するものの終末回腸のびらんはむしろ改善傾向であった。TCS時に施
行した洗浄吸引液の培養でCampylobacter jejuni が検出されたため、FOM 3g/day経口投与開
始。治療抵抗性HSPとして精査・加療目的で7月末に当科転院となった。
【経過】
絶食・補液・抗生剤(FOM)加療継続とした上で精査を進めた。上部消化管内視鏡では十
二指腸に明らかな紫斑様病変は認めなかったが、小腸カプセル内視鏡では空腸に紫斑様病変が
散在、骨盤内回腸は粘膜浮腫が高度で発赤・不整形潰瘍が多発、終末回腸にはリンパ濾胞過形
成を認めた。転院後は腹痛発作なく、PSL 20mg/dayに減量後も症状再発認めなかったため、
食事再開。PSL 15mg/dayまで減量するも腹痛なく、紫斑も消退傾向と経過良好であり、退院
となった。その後、外来でPSL 10mg/日まで漸減したところで再燃、PSL 30mg/日で再度寛
解導入後、AZP 25mg/日から併用開始、有害事象発現がないことを確認後50mg/日まで増量し、
PSL漸減した。PSL 9mg/日まで漸減したところで治療効果判定目的のCEを施行、小腸病変消
失を確認した。
【結語】
カンピロバクター腸炎を契機に発症し、カプセル内視鏡で経時的に小腸病変を観察しえた
Henoch-Schönlein紫斑病の1例を経験したため、文献的考察も踏まえて報告する。
OSⅦ - 3
全身性エリテマトーデス(SLE)の
小腸カプセル内視鏡所見の検討
鷲尾 恵万1)、江㟢 幹宏1)、前畠 裕司1)、岡本 康治2)、平野 敦史1)、
梅野 淳嗣1)、鳥巣 剛弘1)、森山 智彦1)、北園 孝成1)
九州大学大学院病態機能内科学、2)九州大学先端医療イノベーションセンター
1)
【背景】
全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus; SLE)に起因する消化管病変はル
ープス腸炎と蛋白漏出性腸症に分類されるが、本症のカプセル内視鏡(CE)所見に関する検
討は殆どない。
【目的】
SLEの小腸病変におけるCE所見の特徴を検討する。
【対象】
2008年4月から2015年7月までに腹部症状を有しCEが施行されたSLE患者6例を対象とした。
【方法】
CE通過時間をもとに小腸を上部・下部に2等分し、各部位における病変の出現頻度と内視
鏡所見を遡及的に検討した。なお、検査時間内に大腸に到達せず全小腸観察ができなかった1
一般演題 Ⅶ
例については、位置情報から上部小腸のみの観察と判断した。CE所見は粘膜傷害(発赤粘膜、
びらん)
、絨毛腫大、および白色絨毛の有無を評価した。
【成績】
対象は年齢33-62歳(平均54歳)
、男性1例/女性5例で、SLEの罹病期間は0-21年(中央値11.5
年)であった。CE施行前にSLEが確定診断されていた4例では全例でステロイド剤が投与され、
3例では免疫調節薬が併用されていた。6例中4例 (67%)ではCE下に小腸病変が確認され、い
ずれの症例も上部・下部小腸に発赤粘膜、絨毛腫大、白色絨毛が確認された。また、1例では
下部小腸に粘液・白苔の付着した大小不同の多発びらんを認めた。病型別にCE所見を検討す
ると蛋白漏出性腸症の2例ではいずれも上部小腸を中心に広範なびまん性の白色絨毛を認めた
が、ループス腸炎の2例ではびまん性の白色絨毛は観察されなかった。また、びまん性の絨毛
腫大はループス腸炎の2例、蛋白漏出性腸症の1例で確認されたが、ループス腸炎でより所見が
高度であった。他2例については、CE上SLEに伴う病変は観察されなかった。
【結論】
SLEのCE所見は、蛋白漏出性腸症ではびまん性白色絨毛を、ループス腸炎ではびまん性絨
毛腫大を主体とすると考えられるが、更なる症例の集積が必要と考えられた。
108
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
OSⅦ - 4
当初セリアック病が疑われた、慢性下痢症の一例
星野 敏彦、浜畑 幸弘、指山 浩志
辻仲柏の葉病院外科
症例は68歳男性、2012年夏頃よりの1ヶ月に1度程度の嘔吐 下痢にて来院。上下部内視鏡で
は胃十二指腸潰瘍瘢痕と非特異的大腸炎で特に問題なく、小腸疾患精査の為2013年8月カプセ
ル内視鏡を施行した。
カプセル内視鏡では、空腸を中心に浮腫状変化および絨毛の萎縮、小さいびらんありセリア
ック病疑われる所見であった。2013年9月他病院でダブルバルーン施行、粗大絨毛と発赤あり
セリアック病が疑われる所見であったが、最終的には、同部の生検より、小腸リンパ腫(小腸
PTCL-NOS)の診断となり血液内科にて、治療を開始した。
慢性下痢、小腸粘膜萎縮をきたす病態としてはセリアック病、クローン病、小腸リンパ腫、
好酸球性胃腸炎、寄生虫感染、腸結核、薬剤性腸炎などがあげられる。本症例でも嘔吐 下痢
を主訴とし、2年間にわたり過敏性腸炎として整腸剤で治療されていたが、無効であり、小腸
カプセル内視鏡が行われた。
本症例で当初疑われたセリアック病は、下痢などを主訴に発症する、遺伝的グルテン不耐に
とされていたが、成人は複合疾患が多く正確な鑑別診断がなされていないケースが多い。本症
例は最終的にはリンパ腫と診断されたが、診断においては上記に鑑別疾患を常に念頭におき、
保存的治療無効な場合は、すみやかに小腸カプセル内視鏡まで検討すべきであると思われた。
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
109
一般演題 Ⅶ
より引き起こされる慢性自己免疫疾患で、白人に多く、有色人種(黒人、黄色人種)で少ない
110
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
一般演題Ⅷ
第 3会場
本館4階 花C
15:50~16:14
パテンシーカプセル
座長:江㟢
幹宏 九州大学
病態機能内科
OSⅧ -1
パテンシーカプセル施行後にカプセル内視鏡検査を施行しイレウスを発症した
腸結核の1例
国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター 消化器内科 今川 宏樹
OSⅧ -2
当院の小児・若年者に対するパテンシーカプセル及びカプセル内視鏡の検討
OSⅧ -3
当院で施行したカプセル内視鏡検査に関する検討
OSⅧ -4
当院におけるパテンシーカプセルの有用性
JA北海道厚生連帯広厚生病院 消化器内科 柳澤
上尾中央総合病院 外處
秀之
真道
杏林大学医学部 第三内科 池崎
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
修
111
OSⅧ - 1
パテンシーカプセル施行後にカプセル内視鏡検査を施行し
イレウスを発症した腸結核の1例
今川 宏樹、桑井 寿雄、西村 朋之、飯尾 澄夫、壷井 章克、森 豪、山口 敏紀、
山口 厚、河野 博孝、高野 弘嗣
国立病院機構呉医療センター・中国がんセンター 消化器内科
【背景】
パテンシーカプセル(PC)の開通性評価時は直接排泄を確認するか、X線検査等にて大腸
内にPCが確認できた場合を開通性ありと判定する。今回我々はPC後にCEを施行し、CEが滞
留し腸閉塞を来たした症例を経験したので報告する。
【症例】
88歳、男性。
【主訴】
下痢、腹部膨満。
【経過】
1年半前より下痢、腹部膨満感を自覚し、1ヶ月前から嘔気も加わったため紹介医を受診した。
腹部CT検査で小腸壁肥厚とその口側の拡張を認め、精査目的に20XX年6月○日に当院消化器
内科紹介となった。まず消化管の開通性の評価目的にPCを内服した。PC内服1日後、排便は
あったがPCの排泄が確認できなかったため腹部レントゲン検査を施行したところ、腸管内に
PCが確認できなかった。排便は認めていたためPCは排出されたが回収できなかったものと判
断し、PC内服3日目にCEを施行した。CE所見では潰瘍と狭窄を認め、狭窄部を越えず撮影は
一般演題 Ⅷ
終了していた。またPCのコーティング膜様物質も狭窄の口側に観察された。その後外来で経
過を見ていたが、CE内服18日目に腹痛を主訴に救急外来を受診した。来院時の腹部CT検査で
は骨盤内小腸の壁肥厚とその口側の拡張と同部位口側に滞留するCEをみとめた。イレウス管
を挿入し症状改善の後に、経口的ダブルバルーン内視鏡検査(DBE)を施行した。DBEにて
CE回収の後、病変を詳細に観察したところ空腸に潰瘍を伴う全周性輪状狭窄とその口側に多
発潰瘍を認めた。後日肛門側よりDBEを行い、狭窄は一箇所でその他病変がないことを確認
した。生検病理組織、PCR法で結核菌はみとめなかったがQFTが陽性であり腸結核とそれに
伴う小腸狭窄と考え、腹腔鏡下小腸部分切除術を施行した。手術標本の病理組織学的検討によ
る最終診断は腸結核であった。
【考察】
PCの崩壊は100〜200時間とされているが今回のように早期に崩壊したと考えられる症例も
存在する。PC施行時には開通性判定基準を遵守し、規準に当てはまらない場合はCEは控える
必要がある。
112
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
OSⅧ - 2
当院の小児・若年者に対する
パテンシーカプセル及びカプセル内視鏡の検討
柳澤 秀之、中島 淳太
JA北海道厚生連帯広厚生病院 消化器内科
【緒言】
カプセル内視鏡検査(以下VCE)は、小腸疾患の診断の為、広く使用され、有用性につ
いても報告されている。クローン病に対して、崩壊型カプセル(パテンシーカプセル:以
後、PPC)により開通性を確認することで使用可能になった。また、年齢制限が緩和されたこ
とから、小児領域に使用も可能になった。一方、小児領域で炎症性腸疾患(以後、IBD)等の
症例は近年増加傾向にあり、特にクローン病の小腸病変の診断が必要となっている。今回我々
は、当院で小児・若年者に対して施行された、VCEおよびPPCについて検討したので報告する。
【目的・方法】
小腸疾患を疑われた18歳未満の患者に対して、VCE及びPPCを施行した症例について、嚥
下の可否、PPCの開通性評価、VCEによる診断、有害事象について検討を行った。
【対象】
2011年〜2015年8月に施行された、18歳未満の症例、17名(男10名、女7名、平均14.9歳、
10.3〜17.9歳)を対象とした。
【結果】
検査内訳は、PPC16例、VCE 19例(複数回症例有り)で、検査目的は、IBD診断13名、
Overt GI Bleeding 2名、腹痛1名、イレウス1名だった。カプセル嚥下は、PPC3例で不可能だ
留となり、1例は再検して開通性を確認した。
(目視6例、X-Pまたは低線量CT5例)VCE19例
中11例はPPCで開通性確認後に施行した。4例は複数回施行でPPCは省略した。16例で撮影終
了時に大腸に到達、全症例で体外に排出された。全症例中13症例(68.4%)に所見を認め、内
IBD症例15例中、13症例(80.0%)にびらん、潰瘍など所見を認めた。PPC、VCEとも有害事
象は認めなかった。複数回VCE施行したIBD症例3例で治療による経時評価が可能だった。
【考察・結語】
近年、IBDは、増加傾向にあり、小児症例も増加している。小児に対するVCEは、小腸検査
としてバルーン内視鏡検査やX線造影検査より侵襲性を軽減できる検査として期待されてい
る。今回の症例では、PPCを事前に嚥下と開通性を評価することで、停留など有害事象無く
施行されたことから、小児でも成人と同様に安全にVCEを施行できると考えられた。ただし、
PPC内服が不可能な症例があり、工夫を要すると考えられた。
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
113
一般演題 Ⅷ
ったが、VCEでは全例施行可能だった。PPC開通性評価は、11例で開通性確認、2例で評価保
OSⅧ - 3
当院で施行したカプセル内視鏡検査に関する検討
外處 真道、水野 敬宏、大舘 幸太、和久津 亜紀子、近藤 春彦、山城 雄也、
白井 告、三科 友二、三科 雅子、尾股 佑、明石 雅博、渡邉 東、笹本 貴広、
土屋 昭彦、西川 稿、山中 正己
上尾中央総合病院
【背景】
現在、小腸精査のためのカプセル内視鏡(以下CE)検査が広く普及しつつある。CE検査前
にPillCam Patency Capsule(以下PPC)を投与し開通性を判定することが、CE検査の遂行可
否の判断に有用であるとの報告が散見される。当院ではPPC施行の有無は主治医の総合的判断
により決めている。
【目的】
当院でCE検査を予定しPPC投与を行った症例に有用性について検討する。
【方法】
当院で2012年1月から2015年2月までにCE検査を施行した82例を、<A群>PPCを投与せず
CE検査を施行した65例(男性50人:女性15人、平均年齢66.3歳、12−90歳)
、<B群>PPCを
投与後にCE検査を施行した17例(男性12人:女性5人、平均年齢61.6歳、23−82歳)の2郡に分け、
臨床背景、精査動機、全小腸観察の可否、検査所見、合併症の有無について検討した。
【成績】
(1)抗血小板剤内服症例はA群27例:B群6例。(2)血液透析・肝硬変合併症例はA群
一般演題 Ⅷ
11例:B群2例。
(3)精査動機はIBIG精査目的がA群50例〔overt ongoing8例、overt previous
28例、occult13例、貧血精査1例〕
:B群18例〔overt ongoing 1例、overt previous8例、occult
2例、貧血精査例0例〕
、炎症性腸疾患精査目的がA群5例:B群1例、小腸腫瘍精査目的がA群
9例:B群5例、その他がA群1例:B群0例であった。
(4)CE検査にて全小腸観察が可能であ
ったものはA群62例:B群16例であった。
(5)検査所見は、正常範囲がA群33例:B群10例、
粘膜障害がA群14例:B群4例、血管性病変がA群10例:B群2例、メッケル憩室がA群1例:
B群0例、腫瘍性病変がA群3例:B群0例、狭窄がA群1例:B群0例であった。
(6)合併症は
停滞がA群3例:B群0例、滞留がA群2例:B群0例、嚥下困難がA群1例:B群1例であった。
【結論】
PPCを投与し開通性ありと判断した17例に対してCE検査を行った症例のうち合併症が出現
した症例は1例(5.8%)であった。PPCを投与せずCE検査を施行した65例のうち合併症が出
現した症例は6例(9.2%)であり、PPCによりCE検査の安全性が高まる可能性が示唆された。
114
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
OSⅧ - 4
当院におけるパテンシーカプセルの有用性
池崎 修、三浦 みき、林田 真理、齋藤 大祐、桜庭 彰人、森 秀明、久松 理一、
高橋 信一
杏林大学医学部第三内科
【背景】
2012年7月より小腸の開通性を評価するパテンシーカプセル(PC)が保険適応となり、カプ
セル内視鏡(CE)の適応も小腸疾患が既知又は疑われる患者に拡大された。
【目的】
当院では2013年7月よりPCを導入しており、2015年8月まで40例検査を施行している。今回
当院におけるPCの有用性について検討した。
【対象・方法】
対象は2013年7月〜2015年8月に小腸疾患が疑われ、消化管開通性評価目的でPCを施行した
40例(男性26例、女性14例、平均年齢59歳)を対象とした。検査方法は、前日21時以降禁食と
し、翌朝6時にPCを服用。2時間後より、飲水可、4時間後より軽食摂取可とし、消化管開通
性の判定は、PC服用30〜33時間後に、回収されたPCの形態で、回収出来なかった場合は、腹
部単純レントゲン検査(X-P)あるいはCTで行った。開通性ありと判定された場合は、原則
翌日にCEを施行した。
【結果】
検査は外来10例、入院30例で施行された。検査契機は原因不明消化管出血(OGIB) 30例、
腹痛精査4例、その他6例であった。40例中消化管の開通性ありと判定された36例は、全例CE
で全小腸の観察が可能であった。外来でPCが33時間内に排出された症例は8例で、X-Pで大腸
内に排出された症例は14例で、X-Pで大腸への到達を確認できた症例は9例であった。X-Pで大
腸への到達判定が困難だった7例のうち、4例はCTで大腸への到達を確認し、残りの3例のう
ち2例は小腸、1例は食道にPCを認め、消化管開通性不可と判定した。開通性ありと判定し
た36症例では翌日CEを施行し、全例で全小腸の観察が可能であった。消化管開通性不可と判
定された3例のうち、1例はPC服用2日後にイレウスを来し、CTでPCの肛門側の小腸壁の肥厚
を認めた。イレウス改善後に施行した経口ダブルバルーン内視鏡検査(DBE)では、小腸に
DBEが通過不可能な全周性の狭窄を、ガストロ造影では2cmの狭窄を認め、後日小腸部分切除
術が施行された。狭窄部にPCコーティング膜の遺残は認めなかった。CTで食道にPCを指摘
された症例では、PCを下部食道に認め、ネットで回収した。
【結論】
腹痛を認め、CTで小腸壁肥厚を認める症例では、消化管狭窄の可能性を考慮し、検査の選
択を十分検討する必要性があると考えられた。また判定の際に小腸・大腸にPCを認めない場
合は、他の部位に確認される場合も稀にあることを念頭におく必要性がある。
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
115
一般演題 Ⅷ
への到達判定が困難だった2例はCT検査で大腸への到達を確認した。入院検査でPCが33時間
116
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
一般演題Ⅸ
第 3会場
本館4階 花C
16:15~16:33
条虫症
座長:林田
真理 杏林大学医学部
第三内科
OSⅨ-1
カプセル内視鏡検査が治療方針の決定に有用であった条虫症の2例
OSⅨ-2
カプセル内視鏡が治療前後の診断に有用であった日本海裂頭条虫の一例
OSⅨ-3
カプセル小腸内視鏡が発見および治療効果判定に有意であった
日本海裂条虫症の1例
藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院 内科 鳥井
香川大学医学部附属病院 総合内科 谷内田
淑敬
達夫
医療法人川崎病院 消化器内科 西田
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
悠
117
OSⅨ- 1
カプセル内視鏡検査が治療方針の決定に有用であった
条虫症の2例
鳥井 淑敬、片野 義明、乾 和郎、三好 広尚、小林 隆
藤田保健衛生大学坂文種報德會病院 内科
【症例1】
41歳の女性。主訴:排便時に虫体を認めた。既往歴:特記事項なし。生活歴:生魚を好ん
で摂食していた。現病歴:排便時に1メートル以上の白色調の紐状排泄物が認められたため当
院を受診した。持参された虫体はPCR法で日本海裂頭条虫と診断された。虫体の頭部は確認
されなかった。血液生化学検査では特記すべき異常は指摘できなかった。糞便の虫卵検査は
陰性であった。経過:虫体の遺残を確認する目的でカプセル内視鏡検査を実施した。その結
果、上部空腸に数cm大の白色紐状の浮遊物が観察された。虫体の遺残を否定できなかったた
め、ブラジカンテル1200mg /日を追加で投与した。退院後は外来で虫卵検査法にて経過観察
を行っている。治療後、虫卵検査は陰性であり再発なく経過している。
【症例2】
61歳 の 男 性。 主 訴: 排 便 時 に 虫 体 を 認 め た。 既 往 歴:高 脂 血 症、 高 血 圧 症 で 近 医 に 通
院中。生活歴:刺身・生魚を好んで摂食していた。東南アジアへの旅行歴も複数回ある。現病
歴:4日前より水様性下痢が出現した。来院の1日前に、排便時に2メートル以上の白色調の紐
状排泄物が認められたため当院を受診した。虫体はPCR法にて日本海裂頭条虫と診断された。
持参された虫体に頭部は確認されなかった。来院時の血液生化学検査では特記すべき異常は指
摘できなかった。糞便の虫卵検査は陽性であった。経過:治療方針の決定のためにカプセル内
視鏡検査を実施した。その結果、上部空腸から横行結腸まで虫体の存在を確認した。虫体は3
隻確認された。後日、Ⅹ線透視下でアミドトリゾ酸ナトリウムメグルミンを用いて駆虫を試み
た。十二指腸ゾンデ下でアミドトリゾ酸ナトリウムメグルミン400mlを十二指腸内に注入し、
透視下で虫体を直腸まで追い込み、その後は排便と共に虫体排泄を得た。虫体は計4隻認めた。
一般演題 Ⅸ
そのうち1隻は頭節を確認できなかったため、ブラジカンテル1200mg/日を追加で投与した。
退院後は外来で虫卵検査法にて経過観察を行っている。治療後、虫卵検査は陰性であり再発な
く経過している。
【考察】
カプセル内視鏡検査が条虫症の診断に有用であった報告は国内外の報告でも少ない。今回、
カプセル内視鏡検査が治療方針の決定に有用であった2例を経験したので若干の文献的考察を
加え報告する。
118
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
OSⅨ- 2
カプセル内視鏡が治療前後の診断に有用であった
日本海裂頭条虫の一例
谷内田 達夫1、2)、小林 伸也2)、千代 大翔2)、松永 多恵2)、藤原 新太郎2)、
西山 典子2)、綾木 麻紀2)、小原 英幹2)、森 宏仁2)、舛形 尚1)、正木 勉2)
香川大学医学部附属病院 総合内科、2)香川大学医学部附属病院 消化器・神経内科
1)
【背景】
消化管寄生虫症の診断において、簡便な虫卵検査があるものの、無症状患者が、検診下部消
化管内視鏡検査(CS)時に、寄生虫が発見されることもごく稀に存在する。また完全駆虫の
定義は頭節の排泄確認とされ、虫体の一部回収のみでは、再増殖、繁殖を来しうる。実際,検
診CSや通常CS時に、結腸内で虫体を確認しても、虫体全体の観察は困難で,鉗子で体節の一部
回収のみに終わってしまい, 頭節含む本体が残存してしまうことが経験される。今回われわれ
は、寄生虫の局在部位、頭節の確認、個体数の同定などの診断および治療後に駆虫確認にカプ
セル内視鏡が有用であった症例を経験したので報告する。
【症例】
57歳男性
【現病歴】
2015年2月に大腸ポリープの経過観察目的に前医でCSを施行。回腸末端から白色ひも状の柔
らかい構造物を認め、生検鉗子による回収の際に、その途中で切れ一部の回収に終わった。形
状から腸管条虫症が疑われたため精査加療目的に当院に紹介となった。
【経過】
当院にて局在部位、頭節の確認、個体数の同定目的で小腸カプセル内視鏡検査施行。上部空
腸から数メートルにわたり体節を有する白色ひも状の条虫虫体が観察された。体節内部中央に
は、虫卵の充満した子宮が確認し、また頭節が小腸粘膜内に刺入している状態も観察された。
便検査でも条虫の虫卵を認めたため、プラジカンテル、硫酸マグネシウムによる内服療法を行
い虫体の排泄を認めた。排泄虫体の頭節が確認され、また加療後の小腸カプセル内視鏡検査で
断された。
【考察】
物体の性状や動き等で強く虫体が疑われる場合において寄生虫学的には、機械的回収は避け、
さらなる画像および虫卵検査が推奨される。
【結語】
カプセル内視鏡が小腸寄生虫症の治療前後の診断に有用と示唆された一例であった。日本海
裂頭条虫の頭節が小腸粘膜内に吸着している実態を確認した報告は非常に稀であり、若干の文
献的考察を加え報告する。
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
119
一般演題 Ⅸ
も虫体を認めず完全駆虫と判断した。回収された虫体は遺伝子解析により日本海裂頭条虫と診
OSⅨ- 3
カプセル小腸内視鏡が発見および治療効果判定に
有意であった日本海裂条虫症の1例
西田 悠、田中 さゆり、于 志峰、竹内 庸浩、野村 祐介、多田 秀敏、
前田 哲男
医療法人川崎病院 消化器内科
【症例】
51歳女性
【既往歴】
なし
【現病歴】
20xx年7月に排便時ひものような物の排出あり、近医受診され精査目的にて当院外来紹介。
【現症】
腹部膨満感、腰痛は認めるものの腹痛は認めず。その他特記すべきことなし
【経過】
外来にてカプセル小腸内視鏡(VCE)を施行したところ、空腸に節を伴う紐状の白色異物
を認め、小腸内を充填するように存在した。日本海裂条虫症と判断し入院のうえ虫体排出の方
針となった。
【入院経過】
入院後プラジカンテル600mg内服の後マグコロールP内服し駆虫を試みた。しかし、明ら
かな虫体の排出は認めなかった。翌日に再度同薬の内服にて駆虫を試みるが明らかな虫体
を認めなかった。経口小腸内視鏡(SBE)を施行する方針とし虫体の観察を試みると限界点
まで挿入するも虫体は認めなかった。その後、排便はあるものの虫体の排出は認めなかった
が、腹部膨満も消失したため退院のうえ外来フォローの方針となった。
【外来経過】
退院後腹痛などなく通常便の排便を認めていた。虫体の確認のために再度VCEを施行した
一般演題 Ⅸ
ところ虫体は一切認めず虫体は排出されたものと判断し終了した。
【考察】
日本海裂条虫症はサケ属の魚の摂取を主な感染源とする。自覚症状は乏しいとされることが
多く、出現する場合においても腹痛、腹部膨満、体重減少、下痢、全身倦怠感などとされ、本
感染症に特異的な症状は認めない。本症例においても虫体の一部の自然排出を確認したことが
感染を疑う契機となった。駆虫薬の内服によって虫体の排出を確認し、駆虫の完了を確認する
が、本症例においては、虫体の排出を確認することはできなかった。しかし、駆虫薬内服後腹
部膨満感の消失を認め、VCEにて虫体の消失を確認することによって駆虫の完了を確認する
ことができ、VCEが診断および治療の成果確認に大いに有用であった。
120
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
ハンズオン
セミナー
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
121
ハンズオン
セミナー
122
第9回 日本カプセル内視鏡学会学術集会
日本カプセル内視鏡研究会総会並びに学術集会 開催記録
第1回日本カプセル内視鏡研究会総会並びに学術集会
会長:坂本 長逸(日本医科大学消化器内科)
会期:平成20年10月1日
会場:目黒雅叙園(東京)
主題演題テーマ:出血を主訴とした小腸潰瘍性病変の診断
第2回日本カプセル内視鏡研究会総会並びに学術集会
会長:日比 紀文(慶應義塾大学医学部消化器内科)
会期:平成21年7月26日
会場:品川プリンスホテル(東京)
主題演題テーマ:小腸出血性病変に対するカプセル内視鏡の適応と限界
第3回日本カプセル内視鏡研究会総会並びに学術集会
会長:後藤 秀実(名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学)
会期:平成22年4月11日
会場:シェーンバッハ・サボー(東京)
主題演題テーマ:小腸出血性病変に対するカプセル内視鏡の適応と限界
第4回日本カプセル内視鏡研究会学術集会
会長:荒川 哲男(大阪市立大学大学院医学研究科消化器内科学)
会期:平成23年7月24日
会場:JA共済ビルカンファレンスホール(東京)
主題演題テーマ:今や常識、カプセル内視鏡:更なる普及に向けて
日本カプセル内視鏡学会学術集会 開催記録
第5回日本カプセル内視鏡学会学術集会
会長:田尻 久雄(東京慈恵会医科大学内科学講座消化器・肝臓内科/ 内視鏡科)
会期:平成24年7月29日
会場:品川グランドセントラルタワー(東京)
テーマ:−カプセル内視鏡が切り拓く新たな世界−
第6回日本カプセル内視鏡学会学術集会
会長:高橋 信一(杏林大学医学部第三内科)
事務局長:林田 真理(杏林大学医学部第三内科)
会期:平成25年7月28日
会場:都市センターホテル(東京)
テーマ:カプセル内視鏡の未来を探る
第7回日本カプセル内視鏡学会学術集会
会長:松井 敏幸(福岡大学筑紫病院消化器内科)
会期:平成26年7月27日
会場:シェーンバッハサボー(東京)
テーマ:カプセル内視鏡を用いた小腸潰瘍の診断
第8回日本カプセル内視鏡学会学術集会
会長:春間 賢(川崎医科大学消化管内科)
事務局長:塩谷 昭子(川崎医科大学消化管内科)
会期:平成27年2月15日
会場:京王プラザホテル(東京)
テーマ:実地医療におけるカプセル内視鏡−皆で学ぼう正しい適応、正確な診断−
The 9th Annual Meeting of The Japanese Association for Capsule Endoscopy
123
第 9 回日本カプセル内視鏡学会学術集会開催にあたり、次の各団体様より
ご協賛を頂戴いたしました。ここに銘記し、そのご好意に深謝申し上げます。
共催団体一覧
広告掲載団体一覧
エーザイ株式会社
味の素製薬株式会社
コヴィディエン ジャパン株式会社
医療法人増山胃腸科クリニック
富士フイルムメディカル株式会社
エーザイ株式会社
大◆製薬株式会社
コヴィディエン ジャパン株式会社
武田薬品工業株式会社
展示出展団体一覧
にがみどう内科クリニック
コヴィディエン ジャパン株式会社
協賛団体一覧
アステラス製薬株式会社
田辺三菱製薬株式会社
アストラゼネカ株式会社
獨協医科大学
医療法人社団紘仁会土井内科
内科クリニック岡田
医療法人徳田クリニック
野里門クリニック
上都賀総合病院
富士通株式会社
グラクソ・スミスクライン株式会社
三木内科医院
〈平成 27 年 12 月 31 日現在・五十音順〉
平成 28 年 1 月
第 9 回日本カプセル内視鏡学会学術集会
会長 中村 哲也
memo
Fly UP