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「遺伝子砂漠」の謎を解くヒント(米国)【PDF:72KB】

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「遺伝子砂漠」の謎を解くヒント(米国)【PDF:72KB】
NEDO海外レポート
NO.950, 2005. 2. 23
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海外レポート950号目次 http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/report/950/
【産業技術】ライフサイエンス
「遺伝子砂漠」の謎を解くヒント (米国)
実際に存在し、誰もが知っている南西部の砂漠のように、私達の DNA の「遺伝子砂漠」も生命
活動に満ちている。どちらも見る場所によってその活動が見えたり見えなかったりするだけである。
本日(2004.12.8 付現在)ローレンス・リバモア国立研究所(LLNL)の研究者によって発表された研
究から、医療、生物学、進化学的研究にとって有意義となる、DNA セグメントの位置を特定する
新しいロードマップが浮かび上がってきた。同研究は Genome Research 誌の電子版で報告された。
遺伝子砂漠は遺伝子と遺伝子の間に存在する長く延びた DNA で、かつて生物学的機能はないと
考えられ「ジャンク DNA」として無視されていた。しかし、DNA の二重らせんを詳しく調べて
いくと、実際にはこれらの「非コード」部分の多くが遺伝子活動を制御する重要な役割を果たして
いることが明らかになりつつある。
例えば、
昨年(2003 年)米国エネルギー省傘下共同ゲノム研究所(JGI)とローレンス・バークレー国
立研究所(LBNL)の研究で、遺伝子砂漠には DNA 上のかなり遠く離れた遺伝子の発現を制御する
塩基配列が存在することが明らかになった。
これと矛盾する結果として、
同じ JGI と LBNL の研究では遺伝子砂漠の DNA の巨大な塊―
「生
命の書(ゲノム)」の章全体に匹敵する―を実験用のマウスから除去しても、明白な影響はなかった。
除去された塩基配列の多くはマウスとヒトと共通するものであるため、ヒトでも同様に機能を持た
ない配列と考えられる。
この矛盾を解決し、研究者が遺伝子砂漠の巨大な伸張鎖の中で重要なセグメントを簡単に特定す
ることができるように、LLNL、LBNL、ペンシルベニア州立大学の研究者達は様々な生物ゲノム
を比較し遺伝子制御を解読するコンピュータ・ツールを開発した。
このツールを使用してヒトゲノムと最近配列が決定されたニワトリゲノムを比較したところ、遺
伝子砂漠は、実際に二つの際立ったカテゴリーに分類できることが分った。長い年月の進化を通し
て比較的安定しつづけている部分と、著しく変化している部分である。
本研究の指導者、LLNL 計算部生命情報工学のイワン・オフチャレンコ博士によれば、ゲノム再
編成に耐え、ジャンク DNA の反復性セグメントによる侵害を回避することができる安定した砂漠
域には驚くほど大きなゲノムの非コード制御要素領域の存在を一連の研究結果は示している。
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NEDO海外レポート
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「安定した遺伝子砂漠が傍らにある遺伝子本来の複合機能を守る複数遺伝子制御要素の宝箱で
あることを暗示する証拠は多い」とオフチャレンコ博士。
その反対に、遺伝子砂漠の 3 分の 2 を形成し、ヒトゲノム 30 億の塩基対全体の 20%を占める多
変化領域は生物学的機能を持たない可能性があり、ゲノムのかなりの部分が絶対に必要なものでは
ないことを示唆している。
「疾病との関連性のないゲノムの大きな断片を明らかにすることは、疾病関連遺伝子変異を探し
ている研究者達にとって非常に重要である」とオフチャレンコ博士。
本研究以前の研究でも機能する/機能しない遺伝子砂漠両方の存在が示唆されていた。その研究
を指導した遺伝学者で物理学者の JGI の責任者エディ・ルビン博士も次のように述べた。
「もしあ
なたが疾病の遺伝子的解決を求める遺伝子ハンターならば、例えば JGI・LBNL のマウス実験で除
去された部分のような、重要な機能や重要性を持たない部分は避けて通るほうが賢明だろう。
」
今年初頭に一般公開されたニワトリゲノム塩基配列を発端として始まった多くの研究が
Genome Research 電子版と Nature で本日発表されている。この遺伝子砂漠研究はその中の一つ
である。LLNL の生物学・生物工学研究プログラムのリサ・スタブスと JGI のスーザン・ルーカス両
博士をリーダーとした LLNL と JGI の研究者達は、LLNL のオフチャレンコ、ローリー・ゴード
ン両博士と JGI のティワナ・グラヴィーナ、アンドレア・アーツ両博士と共に、Nature に掲載され
たニワトリゲノムの主要な塩基配列決定と比較分析を説明する研究論文に貢献した。
スタブス博士の研究チームは 2002 年にヒトとニワトリのゲノムを比較する JGI の研究に参加、
ヒトゲノム計画における DOE の担当分として JGI によって塩基配列が解読された 3 つの染色体
の一つ、ヒト第 19 染色体に焦点を当てた。LLNL と JGI のチームが発表した第 19 染色体に関連
するニワトリゲノムの質の高い塩基配列決定はNature で発表された2 つの論文で使用されている。
遺伝子砂漠研究及び、複数の霊長類・哺乳類・魚類とニワトリのゲノムを比較して進化の道筋を解
き明かすのに役立つ塩基配列比較ツール「Mulan」の開発にオフチャレンコ博士と共に参加した
のは、LLNL のスタブス博士とガブリエラ・ルーツ、LBNL ゲノミクス部のマルチェロ・ノブレガ、
ペンシルベニア州立大学のロス・ハーディソン、ウェブ・ミラー、ベリンダ・ジャルディーン、ミン
メイ・ホウ、ジャン・マである。両プロジェクトについての論文は 1 月に Genome Research 印刷版
に掲載される。
以上
翻訳:御原 幸子
( 出典:http://www.llnl.gov/pao/news/news_releases/2004/NR-04-12-03.html)
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