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欧州環境情報 - 日本産業機械工業会
情報報告 ウイーン ●欧州環境情報 欧州の環境-2050 年目標に青信号 EU 各国政府が以下に示す政策を採用すれば、EU 全体で 2050 年までに風力や太陽などの再 生可能エネルギーからの電力需要をすべて合意可能であると、環境・エネルギーの専門家が 述べた。 政府は石炭火力発電所のような従来型施設の建設の認可を中止し、原子力発電の段階的な 廃止を促進させ、その代わりに再生可能エネルギーの効率的な利用への投資を支援しなけれ ばならない、とその専門家は述べた。 ドイツ・フレンスブルク大学エネルギー経済学教授ホーマイヤー氏は、環境に関するドイ ツ諮問会議(ドイツ語略称 SRU)のメンバーの 1 人であるが、他の基本的な要求が、国家間 の高圧線配電網の近代化であると IPS(Inter Press Service)に対して述べた。蓄電池の近 代化はまた、風力や太陽のような不安定な供給源による電源量の変動を埋め合わせるのに必 要であると、同氏は述べた。 同氏は2050年までに再生可能エネルギーに完全に依存する切換を行うとした5月のドイツ 政府によって発表された報告書の共著者であるが、再生可能施設からのエネルギー供給の増 加によって、原子力および石炭火力発電施設は不要になってくると述べた。 風力発電およびエネルギーシステム技術協会(IWES)は、2020 年までにドイツ火力発電所 の稼動時間を、現状の年間 8,000 時間から 1,200 時間までに抑えても、需要ベースに合わせ ることが可能であるとしている。 ドイツ緑の党による研究では、 「大規模な従来型発電所の更新または拡張は、再生可能エネ ルギーの大規模供給を放棄するもので、技術的に不要で、経済的にも不適合となる。 」として いる。 「欧州数ヶ国の政府、例えばドイツ政府が行っている新規石炭火力発電所建設の認可作業 というのは、間違っている。なぜならそのようなプラントは拡張を止め、再生可能エネルギ ー生成の効率的な使用が求められているからである。 」とホーマイヤー氏は IPS に述べた。 これはすなわち、基本負荷電力が過剰供給となる場合は、従来型発電所は経済的理由で 24 時間フル稼働とする必要があるのに対して、風力発電や太陽光発電は容易に停止することが 可能である。 10 ヶ所の石炭火力発電所が、ドイツ単独で建設中であり、15 のプロジェクトも計画中であ る。フランスやフィンランドなどの他国では、数件の原子力発電所が建設中もしくは計画中 である。 そして、科学的で経験主義的なあらゆる根拠および喫緊の環境問題が存在するにも関わら ず、もし政府の新しいプログラムが一つの指針となるのであれば、石炭火力発電所は存在し 続けるであろう。ドイツ環境大臣ガブリエル氏は、所属する社会民主党(SPD)が来年の総選 挙に向けて、厳しい環境義務をマニフェストに盛り込むことを先週になって見送ったことに 遺憾の意を示した。 環境に関するドイツ諮問会議(SRU)は、地球温暖化を防止するために、先進国は 2050 年 までに少なくとも 80%の温室効果ガス排出を削減しなければならないと述べている。この削 減は必然的に、石炭火力発電のような炭素排出型発電施設を段階的に削減していくことを含 んでいる。ただし石炭火力発電所の新規建設は、炭素回収貯蔵の効率的な枠組みが発足した 場合にのみに正当化され得るということも合わせて示唆している。 SRU 報告書によると、 2050 年までに再生可能エネルギーから必要となる全電力量の供給は、 ― 41 ― 情報報告 ウイーン 技術的には適用可能である。また最後に、再生可能エネルギーについての国家および欧州で の枠組みを適用する決定が、至急採択されなければならないとしている。 ドイツでの経験が、以上の議論を支援することになる。ドイツ政府は 2005 年後半に、2010 年までに電力の 12.5%を再生可能エネルギーから生産すると宣言している。ドイツはこの目 標をすでに達成しており、現在の再生可能エネルギーに占める割合は 15.1%となっている。 専門化および環境省の代表は、 2020 年までにドイツは再生可能資源からの電力を 30%にま で引き上げが可能と予測している。 SRU 報告書では、石炭火力発電所の建設および原子力発電所の拡張は、再生可能エネルギ ー発電の拡大が防御壁となるだろうと述べている。 ドイツ・カールスルーエのシステム開発研究所 Fraunhofer 協会による研究では、欧州での 再生可能エネルギー生産の開発は、140 万人の新規雇用を産み出すものと期待されている。 EU による 6 月 1 日に発表された報告では、もし再生可能エネルギーのシェアが 2020 年ま でに全体の 20%にまで伸張すれば、この分野での従業員数は、現状の 140 万人から 11 年間 で 2 倍となる 280 万人にまで増加するとしている。 しかしこの成長は、さらに約 2 億 1,000 万ユーロの追加投資が必要とされている。本研究 の見通しでは、この投資による経済成長に与える影響はごくわずかで、1%を上回る程度と見 ている。 ドイツ環境省国務長官、EU バイオ廃棄物規制を支持 ドイツ連邦環境省の国務長官クルーク氏は、バイオ廃棄物のリサイクルを促進する欧州で の明確な枠組みを要求した。 「あまりにも多くのケースにおいて、バイオ廃棄物は、欧州にお いてはいまだに埋立処理されている。 しかしながらバイオ廃棄物は非常に有益なだけでなく、 埋立に関する諸問題の原因にもなっている。個々の EU バイオ廃棄物規制は、こうした問題を 解決するのに非常に有益となる。 」 とクルーク氏はブリュッセルで開催されたバイオ廃棄物国 際会議において指摘した。 本バイオ廃棄物国際会議は欧州委員会、チェコ・ベルギー・ドイツ各国の環境省の協力に よって主催されたが、同会議では、気候および資源保護に貢献を目的とした、巨大な量のバ イオ廃棄物を効果的に流通させるのに最適な欧州法的規定の一つとして、活発な議論が交わ された。欧州内の廃棄物の重量において、30~40%をバイオ廃棄物が占めており、最も大き な割合をいまだに示している。 バイオ廃棄物の約 1 億 1,000 万トンが EU 内で 1 年間に生産さ れており、そのうちわずか 20%だけが分別収集およびリサイクルされている。 バイオ廃棄物の分別収集およびリサイクルに関しては、 ドイツはすでに先進的地位にいる。 家庭からの生物系および植物系ゴミにおいて、年間 1 人当たり平均 100kg が、分別収集され ている。こうして収集された 800 万トンから、有益なコンポストが概算で 400 万トン生成さ れている。 EU の大半の国において、バイオ廃棄物はいまだに埋立処理されており、それとともに家庭 ゴミや、それが原因となり気候にも有害となるメタンガス排出の原因ともなっている。欧州 において、埋立はメタンガスの最も顕著な排出源として計算されている。もしバイオ廃棄物 が今後埋立処理されることがなくなれば、欧州委員会が公約した気候に有害な排出物を 2020 年での削減目標達成に大きく貢献することになる。2004 年からのトレンドによると(EU15 ヶ国、東欧諸国の加盟以前) 、削減目標の 20%は計算できることになっている。 さらに、分別収集されたバイオ廃棄物から製造されたコンポストは、その 10%が農業にお ける肥料として利用されている。付け加えると、コンポストおよびコンポスト化された発酵 ― 42 ― 情報報告 ウイーン 残渣は、有益な腐植性建築材料であり、農園での保水容量の向上に役立っている。これは南 東ヨーロッパ諸国において特に重要な見方であるが、しかし他の地域においても同様に有益 である。こうした目的に適合するバイオ廃棄物は、直接燃焼もしくは発酵プロセスによるバ イオガス製造にも利用されている。これはすなわち、化石燃料の代替ということができる。 「気候保護および資源の有効利用の理由から、我々は欧州におけるバイオ廃棄物の分別収集 およびその後の有効利用、さらにエネルギー関連分野への展開について、努力を進展させて いかなくてはならない。 」と、クルーク氏は説明した。 気候変動による移住の必要者数予測 気候変動が、数十年にわたる海面上昇や干ばつを引き起こし、数百万人の人々が住居を放 棄せざるを得なくなり、大量の移住者に関する新計画が必要とされている、と水曜日(6/10) に報じられた。 移住者を自然災害からの避難を支援する基金が必要であると、国連大学、国連ケア機構、 コロンビア大学の共同報告書において述べられている。 「環境的な条件による移住や移動が、規模や範囲の面において、前例のない現象となり得 る可能性を持っている。来たる数十年の間に、気候変動が数百万人の人々を、活力ある生活 や安全を求めて、住居から出る動機付けをするかあるいは追いやることになるだろう。 」と同 報告書は述べている。 報告書では、2050 年までに環境の面から移住を勧告される人の数は 2 億人と、最新の気候 変動科学を採用している国際移住機関の予測を引用した。 報告の中で注目を浴びたのは、特に被害を受けることになる世界の地域が含まれているこ とで、ツバルやモルディヴなどの島国、アフリカのサヘルやメキシコなどの乾燥地域、バン グラデッシュ、ベトナム、エジプトなどのデルタ地域が挙げられている。 「人口密度の高いガンジス川、メコン川、ナイル川のデルタ地域では、海面 1 メートルの 上昇によって、2,350 万人に影響が及び、農地は少なくとも 150 万ヘクタール削減されてし まうことになるだろう。 」とし、今世紀中に少なくとも 1 メートルの海面上昇があるだろうと 予測している気候の科学者もいる。 「移住に関する基金を新しくする、または、従来から存在している例えば ODA(政府開発 援助)のような現存するものに追加をしていく必要がある。 」と、 “In Search of Shelter” の報告で述べている。 例えば灌漑への投資は、 農家から降雨への依存を減らすことができる。 教育もまた重要で、 例えば土を耕すことで、保湿用の敷き藁用の葉を減らすことができる。 気候災害による移住者は、新しい権利が必要となると報告は述べている。 「気候変動による 慢性的な影響によって住み替える人たちは、恒久的な居住地が必要となる。現時点で、住環 境が徐々に悪化して移住せざるを得ない人々は、自由意志による経済移民として分類され、 特別な保護の認定を拒否しているとされている。 」 2012 年以降の京都議定書の拡大に関する国連会議は、ドイツ・ボンで開催され、気候変動 の歯止めにかかるコスト負担方法について、先進国と発展途上国の間で激しい議論が交わさ れている。 ドイツ企業連合、アフリカに大規模太陽光発電プロジェクトを計画 ドイツ企業連合が、北アフリカ砂漠に太陽光発電設備を設置し、欧州の家庭用電力を賄う ことを目的とする野心的なプロジェクトに従事すると、発表した。この冒険的なプロジェク ― 43 ― 情報報告 ウイーン トは、4,000 億ユーロの費用が見込まれ、10 年以内に最初の電力供給を開始すると、2 企業 の代表は話した。 電機エンジニアリンググループのシーメンス社、ドイツ銀行、ミュンヘン損害保険、エネ ルギー会社の RWE 社や E.ON 社を含む 15 の企業および団体が、本企業連合に参加することに 関心を示した。 同連合は、ドイツ・ミュンヘンにおいて 7 月 13 日にいわゆる“Desertec”コンセプトを組 織化する会議を開催予定であると、シーメンス社代表が述べた。 本プロジェクトは、太陽光および熱利用の一連の発電施設を計画しており、最大の企業出 資プロジェクトの一つとされるものである。 発電施設は、太陽光線からのエネルギーを集める集熱管列によって特殊なオイルが熱媒体 として加熱され、発電タービン用蒸気発生に使用するシステムであると、ミュンヘン損害保 険の代表ジェウォレック氏が南ドイツ新聞に述べた。 エネルギーは高圧送電網経由で直接ヨーロッパへ輸送される。このルートを通じて、ヨー ロッパ大陸側の需用電力の約 15%が送られる。 「これは遠い存在のヴィジョンではなく、技術的に魅力があり、到達可能なものである。 Desertec は、気候保護およびエネルギー産業の低二酸化炭素化のための長期に渡る動機付け をした。 」と同氏は述べた。また同氏は本計画がいくつかの国にまたがって実施される可能性 のあることを示唆したが、具体的な国名は挙げなかった。 中期的にはドイツの企業連合は、ヨーロッパと北アフリカがパートナーとしてプロジェク トに参加することを期待している。 「我々はイタリアとスペインに関しては楽観的に捉えているが、フランスを含むことにつ いては懐疑的で、なぜならフランスは原子力発電により熱心だからである。 」とジェウォレッ ク氏は述べた。 太陽熱発電施設は、すでにカリフォルニアのモハーヴェ砂漠や南東スペインの乾燥地域に 存在している。太陽熱発電施設は、鏡やレンズを通して太陽エネルギーを回収しており、電 力に使用する熱を利用している。太陽のエネルギーを直接電力に変換する太陽光発電システ ムとは、異なるプロセスを持つものである。 シーメンス社は、輻射熱回収に適したサハラ砂漠での面積は、300 平方キロメートルと見 積もっており、これで地球全体のエネルギー需要を十分に賄えるとしている。 環境団体グリーンピースは、この先導的な取り組みを歓迎し、 「地球環境と経済問題に最も 対応した反応である。 」と評価した。 ドイツ、ウクライナ-ロシア間の天然ガス抗争を警戒 ロシアとウクライナの間の天然ガス抗争が再燃していること、また欧州へのエネルギー供 給が削減される可能性について、ドイツ外務大臣シュタインマイヤー氏が警戒していると、 水曜日(6/17)に報告された。ベルリンの主席外交官がポーランド外務大臣シドルスキー氏 とウクライナの首都キエフに訪問した際に、差し迫った難題を回避するための新たな努力を 呼び掛けた。 「他の天然ガス供給抗争を予防する緊急の重要性がある。 」 とウクライナの首都でのレポー ターの質問に対して、シュタインマイヤー氏はこう述べた。ウクライナとロシアの間の天然 ガス価格設定についての議論が、2009 年 1 月初旬にロシアからウクライナへの天然ガス供給 の全面停止を招いてしまった。この封鎖は 3 週間後に解除されるが、欧州への供給量が激減 することになり、ウクライナパイプラインを経由しての天然ガス供給は以前の約 4 分の 1 と ― 44 ― 情報報告 ウイーン なってしまった。 金銭面で行き詰ったウクライナ政府は 2009 年を通して、 ロシアからの天然ガス輸入に対す る分割払いにも悪戦苦闘している状況であるが、クレムリン側は全額すぐに支払うか、不可 能ならばガス供給カットを警告するなど、 繰り返し脅迫を行っている。 ウクライナの経済は、 国際金融危機発生から悪化しており、 2009 年には国民総生産が 10~20%下落すると見られて いる。市場再建を支援するユシチェンコ大統領、およびティモシェンコ首相が率いるウクラ イナ政府は、2010 年早期の大統領選挙を目論んでおり、有権者の怒りを恐れ、国内の天然ガ ス価格の値上げには消極的である。 4 月にはドイツとポーランドが、ロシアによるウクライナへの天然ガス供給の第二次停止 を避けるために、経済難題からウクライナを支援するプログラムを立ち上げている。ウクラ イナの天然ガス消費者に対するガス料金値上げは、他の改革の中でも、国際借款組織による さらなるクレジットをウクライナへ受け入れるための状況設定の一つである。 シュタインマイヤー氏とシドルスキー氏は水曜日(6/17)に、ユシチェンコ大統領と前首 相でウクライナ野党代表ヤノコビッチ氏と会談した。 「我々は、他の天然ガス供給危機を回避するために、少なくとも何かを企てるために、と もにウクライナにいる。それが成功するかしないかは、今は何も言うことができない。 」とシ ュタインマイヤー氏は述べた。ウクライナに貯蔵されるガスは、地域メディアの報道による と、容量の 30~40%であるという。ロシアがウクライナへの天然ガス供給を停止すれば、下 流側のヨーロッパはほぼ即座に影響を受け、ウクライナの貯蔵分のほとんどがウクライナ国 内需要に回されると、産業界は見ている。 シュタインマイヤー氏とシドルスキー氏は、ウクライナへのさらなる金融支援の取り付け のために全力を尽くすと約束した。ウクライナの現在の厳しい金融状況は、国際通貨基金 (IMF)による約 165 億米ドルの借款プログラムに大きく頼らざるを得ず、うち 3 分の 1 の大 口分割払込金がすでに払い出されている。ウクライナにとってさらなる貸付金を受け取るこ とで、国は IMF によって指摘される分野に金を使わなければならなくなるが、特にロシアに 対してガス代金を分割で支払うことに対しては、ウクライナの不安定な銀行部門の支える役 割を果たしている。 ドイツ保守党、CO2 回収法に遅延投票 ドイツ首相アンゲラ・メルケル氏の議会グループの女性スポークスマンが、炭素回収貯蔵 技術(CCS)に関する法律を 2 週間かけて再審議すると発表した。 一方で経済環境省は、すでに市民の関心に上がっている法案についての問題を決議しよう と企てていた、と彼女は付け加えた。保守政党は、火曜日(6/16)に立法の投票の日程を当 初は組んでいた。 CCS 法は石炭火力発電所からの汚染を削減する目的で、CO2 を抽出して地下貯蔵設備に回収 することにより、さらなる技術の発展への道筋を付けるものである。 2020 年以降に商業利用される大規模な技術を試験し導入するため、E.ON 社、RWE 社、 Vattenfall ヨーロッパ社などの公益事業会社の努力を評価するためのルールについて数ヶ 月に渡って論争が展開されてきた。 2020 年に計画されている商業ベースのフル生産に向けたパイロットプラントのタイムテ ーブルを設定するために、これら企業に認可を渡す必要があり、また施設から回収された CO2 を確保するために、 貯蔵施設への配管設置もそのタイムテーブルに合わせなければならない。 そのために迅速な立法が要求されていた。 ― 45 ― 情報報告 ウイーン ドイツは電力の 50%を石炭に依存しているが、しかし CCS がなければ、CO2 排出削減を目 的とした厳しい EU 法従来型石炭燃焼施設での経済的罰金の上昇が設定されており、 来たる年 の目標を守れなくなる。 経済相グッテンベルク氏は、メルケル氏側近であるが、2 週間以内に決議できる自信があ ると、ロイターに対して伝えた。 「その結果によって、たとえ時間は短くても、法案は議会を 通過できる。 」と彼は言った。 一方で、 政党筋はロイターに対し、 保守政党は法案に反対し廃案に追い込むと述べている。 議会下院は金曜日(6/19)に投票となる。 「CCS 技術は、まだ広く受け入れられていない。 」と、メルケル首相が所属するキリスト民 主同盟(CDU)筋のスポークスマンは述べている。 ドイツ議会、バイオ燃料混合量削減を承認 火曜日(6/16)のドイツ議会下院は、化石燃料へ混合されるバイオ燃料の比率を引き下げ る議会提案の最終承認を下した。 下院は 2009 年の混合目標を、当初は化石燃料に対してバイオ燃料を 6.25%とする予定だ ったところを、今年は 5.25%にまで削減する計画を承認した。 ドイツのバイオ燃料への投資を損なう恐れがあるとして、本決定は上院によって 6 月 12 日 に覆された。混合割合を減らす計画は、1 月 1 日より施行されているが、激しい陳情によっ て遅れていた。 ドイツは EU 加盟諸国に倣い、地球温暖化対策の一貫として、石油会社に対しては精製所に おいて強制的に化石燃料中にバイオ燃料を混合させてきた。しかしドイツおよび他のヨーロ ッパの国は、バイオ燃料の生産量増加が食料価格上昇の原因となっていることに関連して、 昨年はバイオ燃料混合計画を縮小した。ドイツで一時ブームとなったバイオディーゼル産業 は、年間生産可能量の 60%に当たる 480 万トンしか生産しておらず、混合の停止を要求して いる。 下院の決定は「非常に落胆している。 」とドイツのバイオ燃料産業代表は表明している。ま た「ドイツではバイオ燃料に対する税制の影響で、クリーンな燃料、バイオディーゼルの売 上が大きく落ち込んでいる。混合比率の削減は、産業の市場をさらに縮小させるものだと、 同代表は述べている。バイオディーゼル製造数社が、生産を中止もしくは稼働時間を短縮し ている。この決定は、バイオディーゼルの未来を考え直させるものである。この決定はまた、 ドイツはさらに化石燃料を燃やして、二酸化炭素排出量を増加させることになる。 」と同代表 は述べている。 ポーランド連合、EU 気候法案による失業増加を警告 ヨーロッパにおいて約 80 万人の労働者が、昨年制定された EU 気候変動法によって失業す ると、ポーランド貿易機構が警告している。 ・背景 2008 年 12 月、EU 首脳がエネルギーと気候変動の「パッケージ」を、EU 圏内の野心的な目 標、温室効果ガス排出の大幅な削減および再生可能エネルギーを 2020 年までに 20%にまで 引き上げることの合意に達した。 12 月の合意の中には、2013~2020 年の間に欧州連合域内排出量取引制度(EU ETS)の改訂 も含まれている。改訂された制度の下では、電力製造者は 2020 年までに競売において CO2 排 出権の 100%を購入しなければならない。欧州委員会は、これによって電力価格が 10~15% ― 46 ― 情報報告 ウイーン 上昇する原因になると考えている。 しかしセメント、鉄鋼、アルミニウム、化学分野などの重工業産業は、厳格化する ETS に よってコスト高騰を招くと懸念している。すなわち、工場や雇用が EU 圏外へ移らざるを得な くなり、環境への貢献のないまま CO2 排出の「漏洩」を招きかねないとしている。 鉄鋼産業等の、温室効果ガス排出が規制されていない国々との競争に晒されている分野で は、改訂された制度の下でも排出自由の認可を受けている。アルミニウム、鉄鋼、鉄、セメ ント製造企業も、特例制度から同様の恩恵を受けている。 エネルギー連合代表は、ポーランド、ブルガリア、ルーマニア、スロヴァキア、チェコは 石炭による電力製造に依存しているため、最も影響を受けてしまうと述べた。 同代表は「我々は、石炭を使った国の仕事をなくそうとしている。 」と、シンクタンクの Confrontations Europe 社によって主催された会議で、 東欧圏 EU 諸国のコメントを引用した。 ポーランドは、全エネルギー需要量の 58%を石炭に依存しており、電力に限定すると 95% にまで跳ね上がる。2006 年の欧州委員会での統計によると、石炭依存率について、デンマー クは 26.2%、ドイツは 23.6%である。エストニア 56%、チェコ 45%と、これらは石炭を多 く使用している国々である。 同代表によると、EU 気候変動法は、電力部門に CO2 排出削減あるいは欧州炭素市場におい て汚染クレジットを購入するよう要求しているが、石炭産業を汚染に対する規制のない国々 へ追いやることになると述べている。 「ポーランドでは、電力生産が国境から数キロメートル離れたところのウクライナへ移っ てしまうだろう。 」と同代表は予測し、ポーランド政府および欧州が産業の移動に対する EU の気候法の影響について「何も分析していない」という事実を嘆いた。 彼はまた、こうした移動が電力料金を引き上げる原因になると警告し、低所得層はエネル ギー不足に陥る可能性があるとした。 「パッケージ制定後は、ポーランドの家庭では、エネル ギーが家計の 15%を占めるようになる。 」と述べた。現状では 11%を占めている。 ・グリーンジョブ:神話か真実か? 労働組合主義者が、失業は太陽光および風力発電のような新規分野の新しい「グリーンジ ョブ」の創造によって相殺されるという意見に水を注した。 「確かに新規雇用は産まれるが、 主に若い人が対象だろう。 」と彼は述べた。 「我々の見積によると、80 万人が EU 全体で失業するだろう。 」と同代表は述べ、うち 20 万人は新しい仕事にもあり付けることができないだろうという見通しを示した。 「欧州では、疑いなくこれは問題である。」とヘルゾーグ氏、フランスエコノミストで Confrontations Europe の創設者が述べた。 「我々はまだ、 (気候変動に関する)欧州目標の 定義と失業との関連との間のバランスがまだ分かっていない。東欧諸国と国境を接している 国々が、エネルギー混合に関して問題を抱えているのは明らかである。 」と付け加え、EU は 「団結の見地から」の役割を果たしてきたと述べた。 しかしながら、EU 気候法によって新たに出てきた困難に関する問題が「合法である」間は、 グリーンの法律が「持続可能な成長の可能性に道を開く」という事実を隠すべきでない、と 彼は述べている。 「この来たる数十年の間に、数兆ユーロがエネルギーおよび輸送に投資されなければなら ないことを忘れてはならない。 」と彼は強調し、欧州諸国の巨大な可能性について説明した。 しかし「いかなる場所においても技術の不足」がクリーン技術分野での成長の見通しを妨げ ていると彼は警告する。 ― 47 ― 情報報告 ウイーン ・立場 鉄鋼大手 ArcelorMittal 社の副社長フェアシュタッペン氏は、 鉄鋼産業が欧州での操業を、 気候法を理由に他の場所へ移そうとしている、と述べた。厳格な気候法を持たない中国のよ うな国々と「公平な競争の場」に戻すことは、いちばんの優先事項である、と氏は述べた。 しかし、氏は「WTO と両立できる」必要のある税金を国境のような基準で適用できるのかと 警告している。 「もし他国が比較可能な目標を持っていれば、我々は公平な競争の場を持っている。 」と氏 は述べ、さらに欧州とアメリカが、中国や他の国が昨年後半の地球規模気候条約に参加する よう「強く働きかけるべきである」 、と付け加えた。 「我々の産業にとって、 (EU 排出権取引制度の下での)自由な承認を得ることが必要であ ることは明らかである。なぜなら中国での我々の競争相手は、これらのコストを支払ってい ない。もし他国が欧州と似たような公約を採用していなかったら、公平な競争の場まで戻す ことが必要である。何が最も実践的で WTO と両立できる解決策なのかは分からないが、しか し ArcelorMittal 社がその支援をしていく。 」と同氏は述べた。 「し 第一歩は、中国や他の急進国による「CO2 削減のための自主的なロードマップ」である。 かし強制力のある目標もある意味必要である。 」と同氏は付け加えた。 GDF Suez 社の経済および持続可能開発戦略の代表ベンサソン氏は、エネルギー生産部門か らの炭素排出の削減を望む政府にとって「理想的な解決策はない」が、しかしむしろ、天然 ガスや再生可能資源とともに「原子力を含む」エネルギー源の「理想的にバランスした目安」 があるのだと、述べた。 EU 気候およびエネルギーのパッケージは、低炭素技術への投資の「チャンス」であると、 氏は述べた。GDF Suez 社は、2008~2010 年の 3 年間に様々なエネルギーミックスに対して 300 億ユーロを投資に向けると発表している。 ベンサソン氏は、原子力発電は欧州レベルで議論すべき話題ではなく、すべての EU 加盟国 がエネルギーミックスを維持するよう認められるべきであると付け加えた。同氏は太陽光発 電が GDF Suez 社にとって「大きなポテンシャルがある」とし、現状の高いコストもこの分野 には「補助金が適用できる」と述べている。 ベラルーシ、ロシア全額出資による原子力反応器建設 ベラルーシ初の原子力発電反応器建設事業が、ロシアからの数十億米ドル規模の出資によ り、来年開始されると、ベラルーシのエネルギー部門代表が金曜日(6/26)に述べた。 「我々 は金融の問題を完全に解決しなければならない。ロシアは協力を惜しまない。 」とベラルーシ 副首相セマシュコ氏は述べた。 原子力発電施設の建設は、2010 年に開始し、2018 年に終了予定であり、エンジニアリング アドバイスを含めて、ロシアは 90 億米ドルの融資を行うと、同氏はミンスクでの会議におい て述べた。 ロシアが目標とする条件は、 ロシア首相プーチン氏からの私信を 6 月 22 日にベラルーシ大 統領ルカシェンコ氏が受領し、確定している。 ロシア国有の原子力エネルギー会社 Atomstroeksport 社は、本プロジェクトの総括業務を 担当し、ロシアとベラルーシの両企業が副総括を担当すると、副首相は述べた。ロシア国有 の原子力発電所を設計する Rosatom 事務所は、プロジェクトの計画を開発し、ベラルーシ西 部のグロドノ州が建設プロジェクトに最適な場所であり、 土地の調査も順調に進んでいると、 副首相は述べている。 ― 48 ― 情報報告 ウイーン ただしポーランドやバルト諸国などの近隣国では、ベラルーシ基準で計画される原子力発 電所が他の事故の原因にならないかを心配している。ベラルーシの原子力エネルギーは、安 全で信頼性もあると、以前のソビエト連邦に原子力発電所を建設することを強く推進してい た人物が述べている。 すなわち 1986 年のチェルノブイリ原子力発電所での事故の影響が四半 世紀に渡って引きずっていることを示している。 環境フォーラム、ドナウ川ダム建設計画を非難 月曜日(6/29) 、環境専門家らはドナウ川へのダム、水門拡張、運搬専用運河の一連の建設 計画を、流域独自の魚種を脅かすものだと非難した。ドナウ環境フォーラム(DEF)は、 「自 然遺産」としての 2,800 キロメートルの川を保護することを推進する 100 の環境団体の代表 からなる組織であるが、ドイツ・デッゲンドルフでの会議後に声明を発表した。 本フォーラムは、もし新ダムがドナウ川や、ドイツ、ブルガリア、ルーマニアの支流にも 計画通りに建設されてしまったら、ドナウパーチ(魚類の一種でドナウ川のみに生息)の数 が激減することになるだろうと述べた。 IRENA 本部の 3 都市分散策に同意 ドイツ、アラブ首長国連邦(UAE) 、オーストリアの間における、国際再生可能エネルギー 機関(IRENA)の新本部設置問題解決のための、ジョイント・ソリューションが設置された。 アブダビが IRENA の本部となり、ボンは技術革新センターとして調整され、ウィーンにある 連絡事務所は、国連本体や他の国際機関へのエネルギー分野での交流を支援することになる 予定である。ドイツ連邦環境相ガブリエル氏は、 「公正で適切な妥協案である。 」として、3 都市分散案による解決策を歓迎した。同氏は続けて、 「この同意に喜んでいる。候補都市間の 投票による競争は、 南北間の誇張される亀裂の致命的な印象を与えてしまうところであった。 この理想的な妥協案は、すべての候補都市の力を結合させ、分裂よりもむしろ団結、団結は 力である、という正しいシグナルを送ることになる。 」 同氏は、全党一致で合意を受けている本案制定に尽力しているが、 「IRENA はすでにドイツ で大きな勝利を収めている。過去 60 年間、ドイツからそのような先導的な動きはかつて見ら れず、このたった 5 ヶ月間で 130 以上の世界各国をまとめ上げたのだ。我々は投票による競 争でドイツのこうした業績を危険に晒したくはなく、この分裂をもたらしたくはなかった。 特に立ち上げの段階では、我々は自分たちのあらゆる力が必要である。こうした理由で分裂 を避け、共同解決案を模索することへの熱意を、代表国すべてが持ち合わせていたことが明 らかになった。 」 前夜にアラブ首長国連邦がガブリエル氏の妥協案を拒否した後、ガブリエル氏はアメリカ とエジプトを調停役として会議の議長に得ることに成功した。こうした努力が究極の成功へ 結び付き、ドイツの妥協案を受け入れさせることとなった。 ドイツはボンに技術革新センターを設置するために、400 万ユーロを出資し、毎年 2~300 万ユーロを提供する予定である。 「技術リーダーとして、ドイツは再生可能エネルギーの国際 発展への決定的な影響力を持ち続ける。 」とガブリエル氏は述べた。 提案はボン市長ディークマン氏より歓迎され、 同市長は会議において、 「私はボンに感謝し、 当市に多大な強力を頂いたことに、ガブリエル氏に多大なる賛辞を送るものである。環境省 からの資金援助、並びに我々の地域の企業、団体、研究機関の協力によって、我々は国際レ ベルでの再生可能エネルギーの技術的発展を強力に推進していく所存である。 」と述べた。 ― 49 ― 情報報告 ウイーン 新世代バイオ燃料、2010 年初めにお目見え 新世代型バイオマス原料を使用して作られた初めてのバイオ燃料が、2010 年初めに商業取 引されるようになると、月曜日(6/29)にドイツ若手環境家ミハエル・ミューラー氏が述べ た。 しかし正確なタイムスケールはまだ不透明であると、ミューラー氏はハンブルクで開催さ れた欧州バイオマス会議において述べている。 ドイツは、ウッドチップ、他の森林製品、ワラ、干草、野菜残渣、生の段階の穀物など幅 広いバイオマス原料から新世代バイオ燃料を商業取引されるだけの生産量を持つテストプラ ントを建設した、欧州で最初の国の一つである。 穀物や菜種油、パーム油のような食料作物から作られていた第一世代のバイオ燃料は、化 石燃料使用削減や地球温暖化対策として使われている意味合いが大きい。第二世代燃料が商 業生産される日程は、新技術発展によって何度も延期されてきている。過去には 2007 年の早 い時期と期待されていた。 「我々は、2010 年より前に実現するとは信じていない。 」とミューラー氏は会議の冒頭で ニュース会議に対して述べた。 「これは、我々が混合比率を低くした理由の一つである。 」 ドイツで一時ブームとなったバイオディーゼル産業は、欧州内では最大となるが、年間生 産可能量は 480 万トンに対して実際の生産量はその約 60%しかなく、混合比率を低くする政 策を止めるよう陳情してきた。 ドイツはバイオマスからの第二世代バイオ燃料の製造における発展によりバイオ燃料の混 合比率の将来の向上を目指していると、ミューラー氏は述べた。 ・複雑な工程 バイオマスからの新世代バイオ燃料の製造は、過去数年のうちに紹介されてきた第一世代 の燃料のように休息には普及しないとされていると、欧州連合委員会合同研究センターのエ ネルギー分野代表サンティ氏は述べた。 「我々は食物連鎖とは無縁の第二世代バイオ燃料を開発していきたい。しかし生産工程の 複雑さが原因で、ごく短期間のうちに第二世代バイオ燃料を得る準備ができるということに 対して、我々は楽観的にはなれない。 」と同氏は述べている。 第一世代バイオ燃料が持つコストと有用性は、ここ数年の汚染削減に対応し、地球温暖化 対策となるための主要な役割を維持してきたと氏は述べる。 大半の技術がいまだ発展途上であるが、 サンティ氏は新世代バイオ燃料が今後 10 年で完全 に展開するとはとても信じられないとしている。 しかし低いグレードのバイオマスが、EU が 2020 年までにエネルギー消費に占める再生可 能エネルギー使用比率を 20%とする目標に到達するために熱生産に大きな役割を果たすこ とができると、欧州委員会エネルギーおよび輸送部門代表バルバソ氏は述べた。 10~20%の間の 2020 年再生可能エネルギーに関する目標は、 バイオマスを熱利用すること で達成可能と同氏は述べている。 第二世代バイオ燃料は、単独で独自のバイオ燃料自動車に使われるよりもむしろ、化石燃 料との混合によって利用される、欧州委員会環境部門代表デルベケ氏は述べた。 国際エネルギー会議開催-ウィーン 政府関係者、エネルギーおよび経済専門家、市民団体代表など約 500 人が先進国および発 展途上国から集まり、6 月 15 日から 3 日間の日程でウィーンにおいて、地球規模の金融およ び経済危機を背景としたエネルギー問題についての会議が開催される。 ― 50 ― 情報報告 ウイーン 3 日間のイベントが、国連工業開発機構(UNIDO) 、オーストリア政府、国際応用システム 分析研究所(IIASA) 、持続可能エネルギーに関する地球フォーラムによって組織化される。 水曜日(6/10)の国連工業開発機構(UNIDO)のコメントによると、王宮における会議では、 現状の危機によって発生する可能性のある事象について確認したいとしている。 持続可能な政策、 「グリーン産業」を用いた低炭素型「グリーン経済」への転換を促進する ための投資、地球気候政策への寄与、それぞれを確立するための方法が、12 月のコペンハー ゲンにおける国連気候変動会議へ焦点を合わせ、本会議で発表される。 本会議のハイライト、21 世紀の地球エネルギーへの挑戦の分析について、会議で発表され る予定である。参加者はまた新しい国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の役割についても 議論することになる。 主要講演者が、UNIDO 代表ユムケラ氏、気候変動に関する国際政府間パネル代表パチャウ リ氏、オーストリア政府機関代表ヴァルヒスホッファー氏、国際応用システム分析研究所 (IIASA)代表ヴィンターフェルト氏らである。 UNIDO 代表ユムケラ氏は、次の 10 年間に緑の投資を奨励する国内外政策の促進が、コペン ハーゲンで取りまとめられる気候条約が最重要事項となるべきであると述べた。 彼は、温室効果ガス排出目標における京都議定書の後継条約における「条約調印」を期待 する国々が集まる、今年 12 月に予定されている国連気候変動会議について言及した。 気候変動に関する国際政府間パネル代表パチャウリ氏は、2007 年にノーベル平和賞をゴア 氏と共同受賞したが、 エネルギー部門はいまだに 21 世紀の開発目標から遠く離れたままであ ると述べている。 「貧困層への十分なエネルギー源の供給が最重要である。それなしに、世界での貧困の排 除についての議論は不可能である。 」とパチャウリ氏は強調した。 IIASA 代表ヴィンターフェルト氏は、 「エネルギーシステムの根本的見直しが要求されてい る。 」と述べた。 気候変動の影響の重要性、速さ、大きさは、数年前の予測と比べても大きくなってきた。 この変化への対応は緊急を要するものである。 ヴィンターフェルト氏は、 今日 24 億人が近代的なエネルギー供給を受けずにいると述べて いる。しかし同氏はすべての人々へ近代エネルギーを供給するコストは、政策さえ存在して いれば中期的に見ても、到達可能であるだけでなく、十分余裕があると信じている。 気候変動、経済危機よりも深刻 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)議長パチャウリ氏が、火曜日(6/16)のオースト リアのインタビューにおいて、気候変動が地球規模の経済金融危機と比べても「より悪くよ り危険である」と警告した。 世界中のあらゆる地域では、気候変動による影響を受けている。もし何事も起こらなくて も、世界規模の安定と平和は著しく脅かされると、68 歳のノーベル賞受賞者パチャウリ氏は 述べた。 インド出身のパチャウリ氏は、気候変動がいつどこででも暖かくなることを必然的に意味 しないと説明している。さらにすべてのシステムがダメージを受けており、状況は一層厳し さを増している。以前にも増して、乾燥、洪水、標高の高い地域での豪雪に見舞われている。 長期的トレンドでも、気候システムの安定性が混乱している状況である。 同氏はインタビューアーに、 「グリーンエネルギー」が世界で電気のない 16 億人以上の人 が住む状況への解決策となり得るかを問われた。同氏は、 「グリーンエネルギー」が先進国に ― 51 ― 情報報告 ウイーン よって資金供給されるべきであると主張した。今年末のコペンハーゲン気候会議はその試金 石となるだろう。もし発展途上国における「クリーン」な資源のエネルギーを欲しがるもの がいれば、お金を寄付する条約となるだろう、と付け加えた。 もしコペンハーゲンで新たな気候条約が締結されなければ、新たな取組は数ヶ月遅れとな るだろう。新しい気候条約なしに、解決策はない。これは今では「共通認識」となっている。 パチャウリ氏は、ウィーンでの国際エネルギー会議に参加し、人々は生活スタイルを変え なければならない、現状のままではなく環境に優しいスタイルである。これは生活に便利な 品をすべて放棄するという意味ではない。しかしすぐに、人々は肉類を食べる量を減らさな ければならない。 肉類生産サイクルは、 「非常に集約的」である。肉類は例えば、ブラジルで生産され、ヨー ロッパ、日本などへ輸出される。莫大な量の冷蔵庫、土地、動物の供給が必要となる、と、 ノーベル平和賞をゴア氏と共同受賞したパチャウリ氏は述べている。 EVN、天然ガス取引を受注 ニーダー・エスタライヒ州(ウィーン周辺)にあるエネルギー供給会社 EVN が、今後 30 年間のクロアチアへの天然ガス供給を行うことになったと月曜日(6/15)に発表した。 EVN 代表は、同社がクロアチア・ザダル市およびその周辺地域にガス供給権を受注したと 報じた。EVN 代表レイル氏は、 「我々は南東ヨーロッパ地区において初となる天然ガス分野の ノウハウを導入することができるだろう。 」と述べた。 氏は、同社が数百キロメートルに及ぶ配管をザダル市だけでなく、最終的にはスプリト市 やシベニク市地域へも、国営ガス供給会社プリナクロからのガスと合わせて供給することに なると述べた。ザダル市地域は 6 市 28 自治区より構成され、人口は 162,000 人である。ザダ ル市自体は人口 7 万人で、クロアチア第 5 の都市である。 EVN は最近、アルバニアにおいて一連の電力貯蔵設備に 10 億ユーロを投じて建設する計画 を発表している。3 つのプラントは、1,000 ギガワットの電力を貯蔵および送電することが可 能であるが、デヴォル川流域 60km に渡る地域に建設され、トンネルシステムを介して相互に 連係する設備となる。 EVN による本プロジェクトは、最終的にはアルバニアで消費される約 50%のエネルギーを 供給する予定であるが、アルバニアの現在の電力自給率はまだ約半分に留まっている。また 同プロジェクトは、エネルギーが不足しているバルカン半島全域においても重要であると考 えられている。 ニーダー・エスタライヒ州に本拠を置く EVN グループは、オーストリアにおける最大の電 力生産および送電会社で、欧州でも最大規模の会社の 1 つとされているが、14 ヶ国に 300 万 人以上の顧客を持つ。天然ガス分野においても、積極的に取り組んでいる。 ウィーン、温室効果ガス新プログラムを採択 ウィーン市政府は、汚染削減のための計画を呼び掛けた。 新たなプログラムの下で、2020 年までに人口 1 人当たりの温室効果ガス排出量を 1990 年 レベルと比べて 20%の削減が必要となる。 社会民主党(SPÖ)環境カウンセラーのシマ氏は火曜日(6/16)に、ウィーン市政府が、1999 年に始まった KlipⅠ(Klimaschtzprogramm:気候保護プログラム 1)の後継として、KlipⅡ を採択したと、報じた。 シマ氏は、ウィーン市民各人が 1990 年との比較で、2020 年までに 1 人当たり 730 キログ ― 52 ― 情報報告 ウイーン ラムの温室効果ガス排出量を削減しなければならないと述べた。同氏は、KlipⅠによって年 間 290 万トンのウィーン市内での温室効果ガス排出を削減できたが、 KlipⅡはさらに年間 140 万トンの削減が必要となる、と付け加えた。 同氏はまた、 「ウィーンはオーストリアの中でも 1 人当たりの温室効果ガス排出量が最も少 ない街である。 」と述べた。 さらに KlipⅡによる削減は、387 に及ぶ個別の対策を通じて達成可能とされ、その中には 長距離熱供給の 50%増加、建物の熱効率改善、公共輸送網の拡大、自転車および歩行者用イ ンフラ整備なども含まれる。 シマ氏はまた、2020 年までには再生可能エネルギー源の信頼性は倍増するが、エネルギー 需要は使用効率の改善によって減少するだろう、と付け加えた。 また同氏は、社会民主党(SPÖ)が今年末までに本プログラムに関する合意を、野党側から も受けられるであろうと述べた。 さらにウィーン市民は、市内で行われているシティライトキャンペーンや「ロードショー」 情報などの広報を通じて、新プログラムを認識している、と付け加えた。 ― 53 ―