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日本初!大学発! 高度専門職業人養成機関

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日本初!大学発! 高度専門職業人養成機関
特集
日本初!大学発!
高度専門職業人養成機関
∼欧米のキャリアアップ・システムを追撃なるか?∼
河村建夫 氏
小松親次郎 氏
竹内弘高 氏
鶴岡公幸 氏
冨塚嘉一 氏
04 法律文化 2004 March
山本昌弘 氏
専門性が問われる社会、経済へ
究科社会健康医学系専攻の専門大学院が設置され、
以後、
経営
管理、
ファイナンス、
公衆衛生といった分野の教育が展開された。
従来「実務の知識を身に付ける」=実務教育・スキルアップ
こうした取り組みをさらに促進し、
各職業分野の特性に応じ
は、
会社内部で行われることが多く、
就職後に大学や大学院な
た柔軟で実践的な教育を展開していくため、2002年8月5日、
どの高等教育機関で自ら身に付けようという発想はほとんどな
文部科学省中央教育審議会答申「大学院における高度専門
かった。その背景として、
スペシャリストよりもゼネラリストという
職業人養成について」
(以下、中教審答申/7頁・資料3参照)
風潮、専門性がさほど重視されてこなかった昇進システム、給
において、専門職大学院(KEYWORDS参照)制度を創設す
与制度があった。
しかし、
かつてない不況に陥った今、
社員を
ることが提言された。そこで学校教育法が改正され、
2003年4
育成する余裕がない企業が多く、
もはやスキルアップは自主性
月より6つの専門大学院が専門職大学院に移行、
新たに3大学
に任されている。また、終身雇用が崩れ、倒産、
リストラが珍し
4専門職大学院が開校した(7頁・資料4参照)。
さらに今年は、
くなくなっている中、
再就職・転職しようにも、
国際化が進み、
経
注目の法科大学院がいよいよスタートする。
済・社会が高度化、
複雑化する現在の労働市場のニーズにマッ
チした経験、
専門性がなければ生易しいことではない。
さらに、
今の日本に必要なキャリアアップ教育とは
就職難で経験を積もうにも積めない、
だから資格を取る、何か
身に付ける、
それでも厳しい若年者の雇用状況は察するにあ
まりある。
中教審答申では、法科大学院、会計大学院のような「国家
資格等の職業資格と関連した専攻分野」
(7頁・資料5参照)の
このように雇用問題が深刻化する一方で、
企業側から見れ
ほか、
「社会的に特定の高度な職業能力を有する人材の養成
ば、
社会経済の変化に適応できる人材は不足しており、
それに
が必要とされている専攻分野」
「
、国際的に共通の水準の人材
適応し得る人材の養成は、
急務となっている。
養成が必要とされるような分野等」における設置と謳いながら
も、
「将来的にはより広い分野での多様なニーズが増大してい
大学院の新たな機能
くことも想定される」ことから、設置の対象を特定の専攻分野
に限定しないとしている。
したがって、
今後社会の変化やニー
1998年10月26日文部省大学審議会答申「21世紀の大学像
ズに沿った、
さまざまな専門職大学院が出てくるであろうが、
決
と今後の改革方策について」 の中で、
21世紀の大学院に期待
して安くはない学費に見合うものかどうかなど厳選されよう。
される役割のひとつとして、
「高度専門職業人(KEYWORDS
働きながら学ぶ社会人については、
時間の問題もあり、
その選
参照)の養成機能および社会人の再学習機能の強化」が掲げ
別眼は厳しくなる。いかにメリットあるものにするかという点は、
られた。これを受けて、
特定の分野における高度専門職業人=
少子化で大学が淘汰されていく時代を迎えるにあたり、
大きな
プロフェッショナルの養成に特化した大学院の構想が打ち出
問題である。
※
された(次頁・資料1参照)。それまで大学院は学術研究、
研究
今回は、
専門職大学院の制度や今後の展開や課題、
海外の
者養成が中心であったが(次頁・資料2参照)、
1999年9月に大
ビジネススクールの事情等を通して、
日本が発展していくため
学設置基準が改正され、専門大学院(KEYWORDS参照)が
に必要なキャリアアップの教育について考えていく。
制度化された。そして、
2000年4月より一橋大学大学院の国際
企業戦略研究科経営・金融専攻と、
京都大学大学院の医学研
※ 文部科学省大学審議会答申「21世紀の大学像と今後の改革方策について」:文部科学省
ホームページ参照。
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/12/daigaku/toushin/981002.htm)
KEYWORDS
高度専門職業人
近年の学術研究の進展や急速な技術革新、社会経済の高度化、複雑
化、
グローバル化した問題に対応し得る、多様な経験や国際的視野を
持ち、
高度で専門的な職業能力を有する人材。
専門大学院
1999年9月、大学審議会の『21世紀の大学像と今後の改革方策』にお
ける提言を受け、大学院設置基準が改正され制度化された、高度専門
職業人養成に特化した修士課程のことを指す。研究者養成中心よりも、
専門的な職業に就くための高度な教育を行う大学院制度。2000年以降
8大学10研究科(専攻)の専門大学院が創設され、専門職大学院制度
の発足にし伴って、
2003年4月に一斉に専門職大学院に移行した。2004
年4月新規開設分13大学(1大学保育)
を加えると、
20大学23研究科(専
攻)
(1大学保育)
となる。
専門職大学院
社会、
経済の高度化や複雑化に伴い、
科学技術など多くの分野の仕事
に高度な専門知識が必要になっていることを受け、
それらの専門分野
の実務家、
専門性の高い職業人を養成する教育機関として設けられた
大学院。2003年施行の改正学校教育法によって始まった。学位論文作
成などのための研究よりも、
事例研究、
討論、
現地調査、
実習などの実践
的教育を重視。修了者には修士や博士以外の新たな学位が与えられ
る。対象分野は特定せず、
経営管理、
ファイナンス、
公衆衛生、
医療経営
など広範に想定しており、高度な専門性を要求される分野に設置され、
現場に携る実務家を教員に招くなど、
レベルの高い専門教育と実務教
育を実施。現在、医療、福祉、公共政策など8校が開校、13校が認可を
受けて開校予定。法科大学院もそのひとつ。
2004 March 法律文化 05
資料 1
専門職大学院制度が創設されるまで
1998年10月 大学審議会答申「21 世紀の大学像と今後の改革方策について」
21 世紀の大学院に期待される役割のひとつとして「高度専門職業人の養成機能および社会人の再学習機能の強化」が掲げられ、
特定の分野におけるプロフェッショナルの養成に特化した新しいタイプの大学院(特化大学院または専門大学院)の構想が打ち出される。
1999年9月 大学設置基準の改正
高度職業人養成に特化した教育を行う
専門大学院制度発足
専門大学院スタート
(2000年4月)
→ビジネス系、医療系の2つの「専門大学院」が誕生
2002年8月 中央教育審議会答申「大学院における高度専門職業人養成について」
、
「法科大学院の設置基準等について」
高度専門職業人を養成するために、従来の専門大学院を発展させ、新たに専門職大学院制度創設を提言。
2002年11月 学校教育法改正
専門職大学院制度の創設
(大学院の目的に高度専門職業人養成を
明確化/「専門職学位」の創設)
専門職大学院スタート
(2003年4月)
→3大学4専門大学院が新たに開校したほか、6つの専門大学院も専門職大学院に移行。
編集部作成
資料 2
専門職大学院と他の大学院の違い
既存の大学院
専門大学院
専門職大学院
高度専門職業人養成
高度専門職業人養成
(米国のプロフェッショナルスクールに対応する (米国のプロフェッショナルスクールに対応する
もの)
もの)
目標
研究者養成と高度専門職人養成の混在
修了要件
30単位以上の修得。
研究指導。
修士論文審査。
30単位以上の修得。
研究指導。
特定課題研究成果などの審査。
教員組織
担当教員
博士号を有し、研究業績が顕著な者等(実際的
実務経験の欠如)
。
実務家教員の必置規定なし。
学生20人につき研究指導教員1人。
MBA等の学位を有し、第一線の実務経験を有
し、実践的教育のできる者。
実務家教員を3割配置。
相当数の実務課教員。
学生15人につき専任教員1人。
学生10人につき研究指導教員1人。
カリキュラム
特化した実践的カリキュラム(ケーススタディ、
ソ 特化した実践的カリキュラム(ケーススタディ、
ソ
研究者養成を志向するアカデミックなカリキュラ クラテスメゾット等※の実践的技法を習得させる クラテスメゾット等の実践的技法を習得させる教
ムが主流
教育技法の採用)、実際場面(実際現場)の重 育技法の採用)、実際場面(実際現場)の重視
視(フィールドワーク、
インターンシップ等)
(フィールドワーク、
インターンシップ等)
具体的な授業方法
規定なし
事例研究、討論、現地調査その他適切な方法に 事例研究、討論、現地調査その他適切な方法に
よる授業
よる授業
研究指導
必須
必須
対象学生
学部新卒者が主体。
社会人、留学生が若干。
社会人、
留学生等で実務経験を有する者が主体。 社会人、
留学生等で実務経験を有する者が主体。
分野
文、法、経済、理、工、農、
などあらゆる専門分野
経営管理、法律実務、
ファイナンス、国際開発・ 経営管理、法律実務、
ファイナンス、国際開発・
協力、公共政策、公衆衛生など
協力、公共政策、公衆衛生など
第三者評価
規定なし
学外者による評価の義務付け
継続的な第三者評価の義務付け
学位
修士(〇〇)
修士(〇〇)
〇〇修士(専門職)
30単位以上で、各大学が定める。
修士論文や特定課題研究成果等の審査を必須
としない。
必須としない
※ ソクラテスメゾット:一方的なレクチャーではなく、質問や議論を繰り返すことで理解を深めていく教授方法。
参考:文部科学省ホームページ
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/gijiroku/005/010901/s5-2.ht)
、
山本昌弘『キャリアアップの投資術』
(PHP新書・2003)
06 法律文化 2004 March
資料 3
文部科学省中央教育審議会答申 大学院における高度専門職業人養成について(概要/2002年8月)
特定の専攻分野のみに限定しない。
1. 基本的な考え方
○社会経済の高度化,
複雑化,
グローバル化等を受け,
大学院における高度専門職業人
養成に対する期待が急速に高まっている。この社会的要請は,
特定の職業の実務に
就く場合だけでなく,
職業人の継続教育,
再教育の機会の提供などを含むものである。
○こうした期待に応えるため,
平成11年に専門大学院制度が創設され,
経営管理,
ファイ
ナンス,
公衆衛生等の分野で積極的な教育を展開しているが,
こうした取組を一層促進
し,
各職業分野の特性に応じた柔軟で実践的な教育を展開していくため,
制度の改善,
発展が求められている。
(標準修業年限,
教育方法及び修了要件)
○標準修業年限は2年を基本とするが,
分野によっては1年の修業年限を認めるなど各専
攻分野における教育内容等にふさわしい修業年限が設定できるよう弾力的な制度と
する。なお,
博士の名称を含む専門職学位を授与する場合は,
標準修業年限は3年以
上とする。
○教育方法については,
設置基準上,
個別の研究指導は必須とはせず,
事例研究,
討論,
現地調査,
実習その他の実践的で多様な授業によるものとする。
○修了要件についても,
研究指導等を必須とはせず,
一定期間以上の在学と各専攻分
野ごとに必要な単位数の修得のみを必須とする。修得すべき単位数は,
修業年限が3
年以上の場合など法令上特に定めがある場合を除き,
30単位以上として,
現地調査,
イ
ンターンシップなどの実践的な教育を通じて必要な学習量を確保する。
○また,
現在検討中の法科大学院では,
実践的な教育を行う観点から,
修業年限や修了
要件等について,
現行大学院制度とは異なる新たな仕組みの導入を検討している。
○以上のことから,
国際的・社会的に活躍する高度専門職業人の養成を質量ともに飛躍
的に拡充させ,
大学院が社会の期待に応えていくためにも,
現行の専門大学院制度を
更に発展させ,
職業分野ごとの特性に応じた一層柔軟で実践的な教育を可能とする
新たな大学院制度を創設する必要がある。
2. 専門職大学院制度の創設
(目的・役割)
○大学院の目的・役割の一つとして,
「高度で専門的な職業能力を有する人材の養成」
を法令上明確に位置付け,
その目的を担う大学院の課程として,
新たに専門職学位課
程を創設する。
○専門職学位課程を置く大学院を専門職大学院と称することができる。
○専門職大学院は,
現在の専門大学院の役割を発展させ,
修業年限や教育方法,
修了
要件等の制度を「高度専門職業人養成」に一層適した柔軟で弾力的な仕組みとする
ものであり,
現行の専門大学院を包摂するとともに,
その枠組みをさらに広げた新しい形
態の大学院とする。
○既設の専門大学院を専門職大学院に位置付ける際,
設置認可手続を要せず移行で
きるような措置を講じるなど,
既存の専門大学院に対する十分な配慮が必要である。
(設置基準)
○ 大学院設置基準とは別に専門職大学院のための設置基準を新設する。
(教員組織)
○当該専門職大学院における教育を担当するにふさわしい高度の教育上の指導能力
があると認められる者を専任教員として必要数置く。
○実践的な教育を行う観点から,
実務家教員を専任教員中に相当数配置する。
○研究指導を必須としないため,
研究指導教員を必置としない。
(学位)
○「○○修士
(専門職)
」
(例えば,
経営管理修士
(専門職))
や「○○修士
(専門職学位)
」
(経営管理修士(専門職学位))
などのように,
修得した職業能力を適切に表わす専門
分野の名称を修士の前に表記し,
専門職学位であることを修士の後に付記する。修業
年限が3年以上で法令で定める専門職大学院においては,
「○○博士(専門職)」
(例
えば,
法務博士(専門職))や「○○博士(専門職学位)」
(法務博士(専門職学位))
などとする。
(第三者評価制度)
○高度専門職業人養成という目的に応じた教育水準の維持・向上を積極的に図るた
め,
各専攻分野ごとに認証評価機関(国の認証を受けた第三者評価機関)
による継続
的な第三者評価を受けるものとする。
(専攻分野)
○専門職大学院は,
国家資格等の職業資格と関連した専攻分野だけでなく,
社会的に特
定の高度な職業能力を有する人材の養成が必要とされている専攻分野,
国際的に共
通の水準の人材養成が必要とされるような分野等における設置が考えられ,
将来的に
はより広い分野での多様なニーズが増大していくことも想定されるため,
設置の対象は
○専門職大学院を評価する第三者評価機関は,
今後,
多様な分野で整備されることが必
要であるが,
現時点での第三者評価機関の整備充実の状況等を踏まえ,
特定の分野
においては海外の評価機関等の評価を認めるなど,
適切な配慮方策について検討が
必要。
出所:文部科学省ホームページ
(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/020802a.htm)
資料 4
専門職大学院一覧
2000年
2004年開設
【国立】
一橋大学大学院国際企業戦略研究科(経営・金融専攻)
京都大学大学院医学研究科(社会健康医学系専攻)
2001年
小樽商科大学大学院商学研究科(アントレプレナーシップ専攻)
東北大学大学院法学研究科(公共政策専攻)
【国立】
東京大学大学院公共政策教育部(公共政策専攻)
九州大学大学院医学系教育部(医療経営・管理学専攻)
香川大学大学院地域マネジメント研究科(地域マネジメント専攻)
【私立】
青山学院大学大学院国際マネジメント研究科
(国際マネジメント専攻)
2002年
【私立】
天使大学大学院助産学研究科(助産専攻)
【国立】
東京理科大学大学院総合科学技術経営研究科
神戸大学大学院経営学研究科(現代経営学専攻)
(総合科学技術経営専攻)
【私立】
日本社会事業大学大学院福祉マネジメント研究科
(福祉マネジメント専攻)
中央大学大学院国際会計研究科(国際会計専攻)
2003年
※法科大学院は除く
【国立】
法政大学大学院イノベーション・マネジメント研究科
【国立】
(イノベーション・マネジメント専攻)
九州大学大学院経済教育部(産業マネジメント専攻)
明治大学大学院グローバル・ビジネス研究科(グローバル・ビジネス専攻)
【私立】
早稲田大学大学院ファイナンス研究科
芝浦工業大学大学院工学マネジメント研究科
同志社大学大学院ビジネス研究科
(工学マネジメント専攻)
宝塚造形芸術大学大学院デザイン経営研究科(デザイン経営専攻)
早稲田大学大学院公共経営研究科(公共経営学専攻 )
徳島文理大学大学院 総合政策研究科(地域公共政策専攻)
早稲田大学大学院アジア太平洋研究科(国際経営学専攻)
編集部作成
資料 5
国家資格と大学院
資 格
司法試験
大学院・大学校
措 置
法科大学院(特別専門職大学院)
新試験の受験資格
公認会計士
会計大学院(専門職大学院)
新試験の担当試験科目一部免除(予定)
税理士
既存の大学院修士課程
試験科目の一部免除
中小企業診断士
中小企業大学校
試験免除
参考:山本昌弘『キャリアアップの投資術』
(PHP新書・2003)
2004 March 法律文化 07
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