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プレゼン資料 - 国立情報学研究所
ニーズを反映した情報検索教育 授業の組み立て 杏林大学医学図書館 諏訪部直子 本日の内容 1. 2. 3. 4. 5. 6. はじめに 杏林大学の紹介 医学図書館の情報検索教育 正規カリキュラムの経験 ガイダンスの工夫 まとめ 1.はじめに • 情報検索教育の悩み – 興味を持ってもらえない – 居眠り、私語、散漫 – 教えたことが身についていない • そんな悩みを解決するための工夫 – 正規カリキュラムの経験 – ガイダンス 2.杏林大学の紹介 • 4学部 – 医学部 1970年∼ – 保健学部 1979年∼ – 総合政策学部(旧社会科学部) 1984年∼ – 外国語学部 1988年∼ • 大学院 – 医学研究科、保健学研究科、国際協力研究科 • 看護専門学校 1975年∼ • 付属病院 1970年∼ 2.杏林大学の紹介 キャンパス 三鷹キャンパス 大学 ・医学部 (567人) ・看護専門学校 (319人) ・大学院 (59人) 付属病院 (1,150病床) 八王子キャンパス 3学部 ・保健学部 (1,232人) ・総合政策学部 (1,370人) ・外国語学部 (1,272人) 学生数 3,874人 大学院(149人) 教員 959人 職員 1,935人 2.杏林大学の紹介 図書館 • 八王子キャンパス 2図書館 – 保健学図書館 1980年∼ (図書94,000冊、雑誌400誌) – 人文・社会科学図書館 1984年∼ (図書170,000冊、雑誌300誌) • 三鷹キャンパス 1図書館 – 医学図書館 1970年∼ (図書255,000冊、雑誌1,400誌) 3.医学図書館の文献検索教育 利用者の特徴 • • • • 看護専門学校は3年制、医学部は6年制 学生の最終目標は国家試験に合格すること 学生に卒論は課されない 卒業した後も図書館利用者である 3.医学図書館の文献検索教育 影響を与える要因 • 医学教育、臨床研修の潮流 – カリキュラムの改変が進められている – 自ら学び育つ能力を養成する傾向 • チュートリアル教育、Problem-based Learning • Evidence-based Medicine – 情報リテラシーが重要であるという認識 • 情報の増大、複雑化 – 新しいデータベース – インターネット、電子ジャーナル 3.医学図書館の文献検索教育 様々な工夫 1. 正規カリキュラム 平成15年∼ – 医療科学 医学部2年(現在は3年)前期 – 1年目の反省と2年目の工夫 2. ガイダンス – 看護専門学校1年生入学時 – オリエンテーリング方式に 4.正規カリキュラム 情報検索講義開講の経緯 • 平成18年度医学部カリキュラム改編 – チュートリアル教育の導入 – 自ら問題点を見つけ、解決するために 「調べる」ことが求められる – しかし「調べ方」を教える科目はない • 必修科目「医療科学」 – 医療周辺に関する事項を教える科目 – ここで情報検索を教える方針となった 4.正規カリキュラム 必修科目「医療科学」(H15) オムニバス形式で様々な専門を持つ複数の教員が担当 1年生 医学的心理学、医療の社会環境、現代医学の源流 2年生 医学情報検索、スポーツ医科学、生命誕生、死生学、 健康と疾病の概念 生命の暗号、こころと治癒力、日本人の死生観、精 神と物質、人間らしい死に方 危機管理、病歴聴取法、医療面接、プライマリ・ケア、 症候別診断学、救急災害医療体制 総合診療、地域医療連携、医薬品臨床治験、医療と 法律、医療政策、保険診療 3年生 4年生 5年生 4.正規カリキュラム 情報検索講義開講当時の状況 • 開講は平成15年度∼、対象は2年生 – カリキュラム改編の狭間にある学年への措置とし て始まる – 15年度と16年度に12コマ • 平成18年度からは3年生対象に8コマ • 医学教育の中で情報検索を身につけることの 重要性が認識されるようになった 4.正規カリキュラム 図書館担当の概要(H15,16) • • • • • • 科目 医療科学Ⅱ 対象 医学部2年生 約90人(必修) 目的 医学情報全般と、文献検索の方法を学ぶ 時期 前期(4月∼7月) 担当 図書館員6人 所要時間 75分×12回(うち2回は教員担当) 4.正規カリキュラム 担当するにあたっての思い • 医師になってから必要に迫られて文献を探し ているが、彼らの知識・技術は不十分である • 図書館としては、これだけは身につけてほし いと思うことが山のようにある • これからの医師に求められる情報検索・情報 の取捨選択の方法を身につけられる内容を めざしたい 4.正規カリキュラム 平成15年度の内容 回 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 配布資料1 医療科学Ⅱ 平成15年度 2年前期 講義予定表 小グループ学習演習 教員 医学情報の基礎(講義) 文献データベース解説(講義) 医学情報の入手方法・雑誌の評価(講義) 医学中央雑誌、雑誌の評価(講義) 医学中央雑誌検索(実習) MEDLINE、PubMed、電子ジャーナル(講義) PubMed検索(実習) 情報検索と文献の評価(講義) 文献の評価と読み方(小グループ演習) 臨床シナリオに沿った文献検索(実習) まとめ 教員 4.正規カリキュラム 1年目の経験でわかったこと • 図書館側の期待と意気込みに反して学生のモ チベーションは低い • まだ文献検索の必要性を感じていない – 生化学、解剖学などの基礎科目を学習中の彼らに とって臨床で必要になる情報など、まだどうでもいい – 専門科目にパスすることで頭がいっぱい – 文献検索どころではないらしい • 講義を聞くだけの座学はあまり意味がない 4.正規カリキュラム 平成15年度の反省 • 多くを詰め込みすぎた – 盛りだくさんで学生は消化しきれていなかった • 講義が中心だった – 他科目の教科書を開いている人が多かった • 成績判定の方針が曖昧だった – 何を基準に成績をつけるのか、決めていなかった • 責任者の教員との連絡不足 – 宿題を提出する学生はほとんどいなかった • 図書館側の視点で教えようとしていた 4.正規カリキュラム 反省を生かした平成16年度の方針 • 焦点を絞る – 目標 1. 2. 3. 4. 5. 雑誌と図書の違いを理解する 書誌項目を理解し、正しく記述することができる 文献検索と所蔵検索ができる 目的の資料を図書館で捜すことができる 図書館の資料を使って問題を解決することができる – 実習中心にする – 前半5回は図書、後半5回は雑誌に焦点 – 使うデータベースを3つに絞る(他は説明のみ) 4.正規カリキュラム 平成16年度の授業 基本的に下記の流れで図書検索と文献検索を行う – 1週目 検索実習 – 2週目 1週目に検索した資料を図書館で探して 問題の答を探す – 3週目 講義 – 4週目 科目と連携したレポート作成 – 5週目 レポート発表会 4.正規カリキュラム 平成16年度の内容 医療科学Ⅱ 平成16年度 2年前期 講義テーマと内容 1.実習 OPAC検索 2.実習 図書館で資料を探す 3.講義 ・医学情報の基礎 4.レポート作成 解剖学 5.レポート発表会 6.実習 医中誌検索 7.実習 図書館で資料を探す 8.講義 9.レポート作成 生理学 10.レポート発表会 4.正規カリキュラム 授業に集中させるための工夫 ① ② ③ 文献検索の必要性を生み出す 実習課題に重点を置く 他科目との連携を試みる 4-1.授業に集中させるための工夫 ①文献検索の必要性を生み出す • 問題解決型の設問 – 従来の「∼について検索しなさい」「∼を検索しなさい」という 課題のための課題では学生にとっての必要性は生まれない – 検索後、文献にたどり着くという次のステップに進むため、 その文献を読まなければ解決できないような設問にする • 自分でやらなくては終わらない状況を作る – 問題をたくさん作り他の人と問題が重ならないようにする 4-1.授業に集中させるための工夫 ①文献検索の必要性を生み出す • 検索実習 – 問題解決型の課題を与える(配布資料2) – 検索した中から、適切な文献の書誌事項を数 件記入 – 同じ問題にあたるのは2人以内 – スタッフ6人で課題問題を作成 • 図書、雑誌を見ながら作成 • 確認のため、他の人が作った問題を互いに解いて みた 4-1.授業に集中させるための工夫 ①文献検索の必要性を生み出す • 問題の答を資料の中から見つけさせる – – – – – 前週に検索した図書・雑誌を図書館の書架で探す 資料の中から問題を解決する記述を探す 答がなければもう一度検索 答を解答用紙に記入 解答用紙と、探した資料、記述箇所を図書館員に提示する 4-1授業に集中させるための工夫 ②実習課題に重点を置く • 課題を採点し、その点数を成績に反映させる • 課題は授業時間内に提出させる • 時間内に終わらず、仕上げてから提出したいと いう学生には – 意欲を認め、翌日を期限とする – 時間内に提出した学生と差をつけるために点数を マイナスする 4-1授業に集中させるための工夫 ③他科目との連携 • 従来の文献検索教育の問題点 – 文献検索のテクニカルな部分だけを教えても、 日々の勉強とどう関係するかがわかりにくい – その結果、興味が持てずモチベーションが低くなる • 学生がそのときに学んでいる科目と文献検索 を関連づければいいのではないかと考えた そのために必要なことは – 何をどのように学んでいるのかを知る – その科目を担当している教員の協力 4-1授業に集中させるための工夫 ③他科目との連携 • シラバスをチェックしてわかったこと – 2年生は4月∼9月、ほぼ毎日午後に解剖学実習 – 9月中旬以降はほぼ毎日生理学の講義と実習 • 教員へのヒアリングでわかったこと – 解剖学では実習レポート、ミニテスト、その他の課題を出す – 生理学では、実習前に読むことを義務付けている資料を読 まずに実習にのぞむ学生が多く、すぐに実習に入れない • 解剖学、生理学の教授に相談し、協力をとりつけるこ とに成功 4-1授業に集中させるための工夫 ③他科目との連携 • 授業と連動した内容のレポート課題 – レポート作成の過程で、文献検索と書誌事項の 記入をさせる – レポート発表の時間を作り、教員も出席して採 点に協力 – レポートの採点結果を成績に反映させる 4-1授業に集中させるための工夫 ③他科目との連携 解剖学 配布資料3 • 宿題として出している課題の過去問題を当授業のレ ポート問題として使わせてもらう。 • 解剖学実習とミニテストのスケジュールに合わせ、そ の時期の内容と合った問題を出した – 解剖学教員からスケジュールの詳細をもらって確認 • 調べる過程で図書検索を行い、出典を記入させる 4-1授業に集中させるための工夫 ③他科目との連携 生理学 配布資料4 • 後期に始まる筋電図実習に先立ち、必要な基 礎知識を得られるような課題とした • 図書、雑誌文献の両方を使うように問題を工 夫した 4-1授業に集中させるための工夫 ③他科目との連携 終了後報告 • 原論文を見ながらレポートをまとめている人が多く、 検索した文献の現物を探すことが普通にできるよう になったようである。 • 生理学はOPAC、医中誌、図書、雑誌、とこれまで教 えたことを全て使って仕上げるレポートだったので、 総まとめという意味で良かった。 • 実習に必要な知識を事前に学ぶことにより、学生の 理解度が高まり、スムーズに実習に入れるので助か るというコメントを教員からただいた。 4.正規カリキュラム 医療科学その後 • 平成18年度からは3年生が対象 • 科目との連携は「薬理学」 配布資料5 – 教員から、例年よりも実習での学生の理解度が 高いという報告があった • 平成20年度は薬理学教授が転勤したため連 携ができなかった – システム化されていないため、教員の意思に左 右される 4.正規カリキュラム 科目との連携の効果 • 利用者(学生)を知ることにつながる – 図書館サービスの基本 • 教員とのコミュニケーションが増し、信頼関係 が形成される • 教育に役立っているという実感が得られる 5.ガイダンスの工夫 • 従来のガイダンス – 看護専門学校新入生(100人)対象 • OPAC検索 70分 • サービス説明 35分 • 館内ツアー 35分 • 学生の反応 – アンケート結果より • • • • OPACは便利でためになると感じている サービス説明は退屈 館内ツアーは、上階から下階まで連れ回されて疲れてしまう 時間が長すぎる 5.ガイダンスの工夫 2007年度∼ • OPAC検索は時間を短縮 45分 • 説明はごく簡単に 15分 • 「オリエンテーリング形式」を採択 45分 – 館内の要所に説明のポスター掲示 – その中に、サービスやルールの説明を入れる – 簡単な説明の後、学生に館内図と問題を渡す – 学生は図書館内を探索しながら問題に答える 2F⑤ 新着図書棚 • 図書館で受入れたばかりの図 書を1週間展示しています。 • ここにある資料の貸出期日は オーバーナイト(翌日まで)とな ります。 • 展示して1週間たったら、書架 の所定の場所に入り通常の貸 出ができるようになります。 • 原則として毎週火曜日に入れ 替えします。 ポスターの例 5.ガイダンスの工夫 2007年度∼ • 問題例 – 新着図書の貸出期間は? – ブラウジングコーナーにある新聞の名前をひとつ 記入してください – 次の図書にはさまれたカードに書かれている メッセージを記入してください 請求記号:QY17:A94 書名:ケアってなんだろう 著者:小沢勲 出版社:医学書院 出版年:2006 5.ガイダンスの工夫 2007年度∼ 結果 • アンケート結果から – 宝探しをしているようで楽しい – 答えが見つかったときうれしい • 教員の反応も好意的 • 図書館として – – – – 事前準備が大変 館内ツアーがなくなり、当日が楽になった 学生が積極的に参加しているのでやりがいがある 十分に説明できていない部分もあるが、これでよしとする • 新入生は他にも覚えること、慣れなくてはいけないことがたくさん 6.まとめ • • • • • 学生のニーズを把握する 学生が「参加」できる工夫する 事前の準備に力を入れる 教員とコミュニケーションをとる アンケートをとって次に生かす