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生活の中の遺伝子
生活の 生活の中の遺伝子 ~実社会・実生活に結びついた効果的な理科指導法の研究~ 1.はじめに 世間 には 「遺 伝子組 み換 え食 品 」、「遺伝 子診 断 」、「遺伝 子治 療 」、「 DNA 鑑定 」など 遺 伝子や DNA に関わる言葉があふれている。遺伝子あるいは DNA という言葉だけに限って 考えれば、高校生にとってもそれらは大変身近な存在だといえる。しかし、実際は表1の アンケート結果が示しているように、遺伝子あるいは DNA について正しく理解している 高校生は決して多くはない 。そこで 、本実践では 、まず生徒が考える遺伝子のイメージ( 表 2参照)から、遺伝子に関わる事項の中でも、最も多くの生徒が挙げた(=高校生にとっ て最も身近な存在であると判断 )「遺伝子組み換え食品」を切り口に、授業を行った。 表1 「遺伝子・ DNA 」のイメージ(アンケート対象は生物Ⅰ既習の高校 3 年生) ① 比較的正 しい 認識 ・ 理解 ・生物、生命の情報(4) ・遺伝子や 遺伝(14) ・一人一人異なっているも の(3) ・つながり ・難しい(3) ・複雑な構造(3) ・染色体に含まれる ・ DNA 鑑定( 2 ) ・すごく細かくて 、 小さな世界 ・構造が複雑(2) ・人間 の設計図・データ(5) ・デオキシリボ 核酸 ・少し異常があるだけで、体が全く 違ってしまうもの ・細かい(2) ・二 重らせん構造(11) ・細胞を 構成す る重要なもの ・受け継がれるもの ・親 子が似る(3) ・人間の体に関して重要 ② 不完全 あるいは 誤 った 認識 ・ 理解 ・日常に氾濫している横文字の一つ意味 わからず使う言葉 ・よくわからない感じ 何かの固まり? ・変えられない恐怖迫り 来る死 ・ドコサヘキサエン酸 ・計算す るからめんどくさい ・科学で最も恐ろし いもの、バイオテクノロジー ・血の中に ある ・遺伝子組み換え、怖い(クローン人 間とか)、難しくてわからない ・生物の歴 史! ・生物の運命を決める要因? ・謎 ・生き物にはとても大切だけど、考えた くない ・難しい仕組み ・クローンを作 るために必要 ※よく似た認識やイメージはまとめてある 。(括弧内の数字がその人数) 表2 「 遺 伝 子 ・ DNA 」 か ら 連 想 す るこ と 〔文 章 記述 〕( アン ケ ート 対 象は 生 物Ⅰ 既 習 の高校3年生) ○ 最 も 多 かった 内容 → ( 大多数 ) ○ 2 番目 に 多 かった 内容 遺伝子組 み 換 え 食品 は 安全 か ?、 具体的 に 何 が 問題 なのか ? → ・ クローン 技術 に 関 すること ( 多数 ) < 以下 、 代表的 な 文章記述 ( 原文 のままの 生徒 の 文章 ) > ・「 遺 伝 子 」 は、 遺 伝 子 組 み 換 え 食 品な ど の 影 響 も あ り 、人 間 の根 本 にあ り 、な ん とな くヤバイ雰囲気があり、そしてなぜか人の手によって書き換えが可能というよくわから ん物質 。一方 、 「 DNA 」という言葉は横文字をありがたがる傾向からか悪い印象はない 。 そもそも DNA と DHA と DHC の区別がついていない。 ・遺伝子組み換え、クローン作成などが今世界で行われているけれど、やはり自分が口 にするものでは、遺伝子組み換えのものでない方がよい。クローンなどは命の大切さ、 貴重さが今後、軽視されていくおそれがあるので、あまり良いと思わない。 ・クローン…クローン技術によって治せなかった病気が、治せるようになるかもしれな いとか、有益なこともあるけど、同じ人間や動物を作るのは怖いし、良くないと思う。 遺伝子組み換え。 ・ 遺 伝 子 組 み 換 え 食 品 と か 、 DNA が あ れ ば ク ロ ー ン が 作 れ る と か 、 そ う い う 言 葉 をよ く見かけたり、聞いたりするから、これからもっと重要になってくると思う。 ・トウモロコシ、大豆、遺伝子組み換え食品。クローン人間には反対!!たった一人の 人間だからこそ価値があると思う。 ・兄弟なのに、顔が似てなかったり、一族みんな同じ顔だったり、遺伝子は不思議だと 思う。 キリスト、マグダラのマリア、ムハンマドとかの DNA が分かってクローンが できたら…って考えると恐ろしく感じます。 ・ 遺 伝 子→ 遺 伝 子 組 み 換 え → 食品 → イ ネ ( コ シ ヒ カ リ 、サ サ ニシ キ ・・ ・ )、ト ウ モロ コシ( 危険 ) 遺伝子→難病( ベトナム戦争 、チェルノブイリ原発事故・・・死 、恐怖 ) ・遺伝、ネズミ、核、クローン、羊、移植。クローン人間はやめた方がいいと思う。遺 伝子組み換え商品、トウモロコシ? ・クローン、遺伝子組み換え、バイオテクノロジー、トマトとポテトができる植物ポマ ト、クローン技術による臓器の再生、クローン猫を作る会社がある、ゲノム解析。 ・クローン人間が怖い。ヒトクローンを作るのは禁止されたけど秘密で作っているとこ ろがありそう 。「 SF とか空想だったことが現実になる」が「遺伝子 」、「 DNA 」のイメー ジです。私は生物の特徴や生死や良いところも悪いところも人間がいじくってしまって はいけない領域だと思うのでマイナスイメージだけど、良いことがいっぱいあるのもわ かってます。 ・何となく今の段階で思い浮かぶのが DNA 操作について。今の段階でどこまでできる のかっていうのはわからないが、深く入りすぎる世界になると生物が生物でない何かに なりそうで、それを人間の手で動かすことについては、到達するべきでない領域に踏み 込むような気がしてならない。 ・遺伝子組み換え食品・・・正直何が危険なのかわからない。 クローン・・・同じ人 間が 2 人もいたら怖い。農作物などで、強いものを多量に作ることができたら今後の農 業に大きな変化があると思う。 ・ 遺 伝 子 、 DNA → 能 力 ( 受 け 継 い で い く も の と な い も の が 人 に は そ れ ぞ れ あ る が 、そ れはどのように決定されるのか 。) 遺伝子、 DNA →食べ物(不安な面もあるが発展 してほしいとも思う)→牛(遺伝子の技術で生まれたクローンの牛はちゃんと食べられ るのか 、それでもクローン技術ができたことで人間でも同じことができると思うと怖い 。 自分が世界に一人の存在ではなくなる)・クローン→羊 遺伝子、 DNA →犬、馬など ( 血 統 書の こ と と か 。「 走 る こ と 」 を強 化 す る た め だ け に交 尾 させ た りと い ろい ろ 考え ているんだなと…。あと犬はその書類を作るのにお金がかかるとかあり得ない) 遺 伝 子 、 DNA → 子 供 ( 直 に 「 天 才 の 作 り 方 」 と か が わ か り そ う で 嫌 だ 。 本 能 の 部 分 まで 操作されたくはないだろう)→(操作・組合せ)→「理想の人間」 ・ ク ロ ー ン : 遺 伝 子 の 採 取 、 保 存 が で き る よ う に な り 、 DNA の 用 い ら れ る 場 が 拡 大し つつある。しかし、クローンで生命を誕生させるということが命の重みを薄れさせてし まうような気がする。どうしても商業的に考えられてしまう世の中で改めて考え直す必 要がある。 ES 細胞:健康な部位の DNA を用いて不健康な部位を補う臓器を作る。難病 が存在している今、とても役立つと思う。活躍の場を広げてもらいたい。野生動物たち の知恵:先祖の経験や生きる手段などがどうやって DNA に組み込まれ受け継がれてい くのか?生まれたときから生きる術を知っている野生動物はすごいと思う。絶滅しそう な動物の DNA : DNA をとっておき、複製することで、絶滅の速度を緩和させることは できないのか?簡単でないと思いますが、できたらいいと思う。 ・科学捜査→海外ドラマとかでよく出てくる( CIS とか 24 とか )。コンピュータとかで ピピピッてやると、すごく詳しいところまでわかる。でも、ドラマの見過ぎで現実はど こまで可能なのかよくわからなくなってます(コンピュータがハイテクすぎる気がし た )。 ・才能がある人は親から優秀な遺伝子をもらっているのでしょうか。良い遺伝子や悪い 遺伝子ってあるのですか? ・クローンとか遺伝子組み換え。不自然な感じがするからあまりよく思わない。特にク ローンは人間に使われるようになったら怖い。禁止されるべきだと思う! ・授業で聞くと、優性、劣性、花、遺伝とかだけど日常生活でなら、妊娠、出産とか命 に関わること。最近注目されている精子バンクとか。顔も知らんような全く他人の遺伝 子を持つ子供を育てるシングルマザーが増えているらしい。夫はいらんけど、子供は欲 しいらしいです。でも子供は父親がいる方がいいと思う。 2.単元指導計画と学習指導案(2時間分) (1)単元名 遺伝情報とその発現 (2)単元計画 科目名 生物Ⅱ 教科書 高等学校 単元名 単元の 目標 単元の 評価規 準 生物Ⅱ 数研出版 使用教材 生物図表(浜島書店)自作プリ ント 遺伝情報とその発現 遺 伝 子 は ど の よ う に 複 製 さ れ 子 孫 に 伝 え ら れ る の か 、 ま た 遺 伝 子 の 暗 号 は何 を意味し、どのような仕組みでその発現が調節されているのかを学び、その応 用であるバイオテクノロジーの理解を通して、この技術の未来のあるべき姿に ついて考えさせる。 関心・意欲・態度 思考・判断 観察・実験の 知識・理解 技能・表現 身近にある遺伝 遺伝子組み換 一 つ一 つの 実験 遺伝 情報 とは何 子 関 連 諸 問 題 に 興 え 技 術 や 組 織 培 操作 の意 味を 理解 か 、ま たそ れがど 味 を 持 ち 、 自 分 自 養 技 術 な ど の バ して 実験 に取 り組 の よう な過 程で子 身 に 関 わ る 問 題 と イ オ テ ク ノ ロ ジ める 。ま た、 先端 孫 に伝 えら れると し て 問 題 意 識 を 持 ー の 有 用 性 や 危 技術 に見 られ る様 と もに 、ど のよう つ こ と が で き る 。 険 性 に つ い て 考 々な 工夫 につ いて な タイ ミン グで発 ま た 、 積 極 的 に 実 え 、 技 術 の 未 来 理解できる。 現 され るか 理解で 験に参加できる。 について判断で きる。 きる。 (3)各授業時間の主な内容(ゴシック体部分→学習指導案) 時 主な学習内容 主な学習活動・評価の観点 第 身近にある遺伝子 ・ 遺 伝 子 組 み 換 え 食 品 に 関 す る 表 示 や 医 療 な ど の 分 1 野に関わる新聞記事などを収集し、グループで討議 時 する。遺伝子に興味を持つことができる。※取り上 げる事柄については、あらかじめ、予備アンケート を採って決めておく。 評価方法 ・レポート およびグル ープによる 発表 第 実験「自分のDNA ・ 自 分 自 身 の 口 腔 上 皮 細 胞 か ら 簡 易 的 な 方 法 で 遺 伝 ・ 実 験 レ ポ 2 を抽出しよう」 時 第 遺伝子の実体 3 時 第 DNA の構造 4 時 第 DNA の複製 5 時 第 遺伝情報とタンパ 6 ク質の合成 時 第 遺伝暗号の解読 7 時 第 実験「細胞中の 8 DNA と RNA」 時 第 遺伝子と酵素 9 時 第 遺伝子の変化と 10 形質への影響 時 第 卵の発生と細胞分 11 化 子抽出実験を行う。遺伝子がごく身近なものである こと、あるいは神秘に満ちたものであることを感じ られる。 ・形質転換やファージの増殖の解明から遺伝子の本 体が DNA であることがわかったことを歴史的に振り 返る。遺伝子と DNA の関係がわかる。 ・ DNA の二重らせんモデルについて学ぶ。2本鎖で あることの利点や様々な現象の説明に都合がよいこ と が理解できる。また、 DNA に関する簡単な計算が できる。 ・半保存的複製の仕組みと証明実験が理解できる。 また、人工的遺伝子増幅法である PCR 法を紹介し、 先端テクノロジーに興味を持たせる。 ・遺伝情報の仕組みとセントラルドグマ、タンパク 質の合成を学ぶ。塩基配列からアミノ酸配列への翻 訳が理解できる。 ・遺伝暗号を解読するための実験方法を学ぶ。数学 的な思考問題にも、意欲を持って取り組むことがで きる。 ・タマネギの細胞中の DNA と RNA をメチルグリー ン・ピロニン染色液で染め分ける実験を行う。細胞 内の DNA と RNA の分布について理解できる。 ・アカパンカビの実験を学び、一遺伝子一酵素説が 理解できる。また、遺伝病と代謝異常の関係につい て理解できる。 ・突然変異や DNA 多型について学ぶ。身近な題材と し て ALDH2 遺 伝 子 に つ い て 、 詳 し く 学 び 、 遺 伝 子 と体質の関係を考え、遺伝子が究極の個人情報であ ることが理解できる。 ・カエルの発生を復習しながら、胚葉分化、器官分 化の過程と遺伝子との関わりを考察する。 ート ・練習問題 ・練習問題 ・練習問題 ・練習問題 ・練習問題 ・実験レポ ート ・練習問題 ・討議 ・発言 ・練習問題 時 第 分化の全能性 ・動植物のクローン作出実験を学ぶ。分化の全能性 12 について理解できるとともに、クローンの利用価値 時 について考察できる。 第 形質発現の調節 ・ NHK の番組「驚異の小宇宙人体Ⅲ第 1 集」を視聴 13 し、ホメオティック遺伝子について学ぶ。遺伝子の 時 働きの複雑さを感じることができる。 第 遺伝子の応用(細 ・ 植 物 の 組 織 培 養 と 細 胞 融 合 と そ の 応 用 に つ い て 学 14 胞工学的手法) ぶ。実用化された例をもとにその有用性が理解でき 時 る。 第 遺伝子の応用(遺 ・ 遺 伝 子 組 み 換 え 技 術 と そ の 応 用 に つ い て 学 ぶ 。 実 15 伝子工学的手法) 用化された例をもとにその有用性が理解できる。 ・討議 ・発言 ・レポート ・練習問題 ・練習問題 時 第 今 後 の 応 用 ( 動 ・高等動植物への遺伝子導入や遺伝子診断、遺伝子 ・ 練 習 問 題 16 植 物 ・ 医 療 へ の 治 療 な ど 開 発 、 研 究 中 の 内 容 を 学 ぶ 。 技 術 の 将 来 性 ・発言 時 応用) 第 実験「光る大腸菌 17 を作ろう」① 時 第 実験「光る大腸菌 18 を作ろう」② 時 (結果考察) 第 ヒトゲノム計画・ 19 バイオテクノロジ について自分なりに考察するための知識が身につい たか。 ・大腸菌を用いた形質転換実験を行う。実験を通し て、遺伝子組み換え技術の実際にふれ、安全性や危 険性について考察できる。 ・大腸菌を用いた形質転換実験を行う。実験を通し て、遺伝子組み換え技術の実際にふれ、安全性や危 険性について考察できる。 ・ヒトゲノム計画を学ぶ。また、バイオテクノロジ ーの今後について自分の考えをまとめる。 ・実験レポ ート ・実験レポ ート ・小論文 時 ーの光と影 (4)学習指導案1 本時の主題 身近にある遺伝子 本時の目標 身の回りにある遺伝子に関連した内容を取り上げ、議論する中で、問題意 識とこれからの授業に対する興味関心を高める。 本 過程 学習項目 教師の働きかけ 導 予備 ア ン ケ ー ・ 予 備 ア ン ケ ー ト 入 ト結果の説明 の 結 果 「 遺 伝 子 組 み換え食品」に対 する興味関心が最 も高かったことを 再度説明し資料を 配付する。 展 遺伝 子 を 巡 る ・ 6 名 程 度 の グ ル 開 諸問 題 に つ い ー プ を 作 る よ う 指 ての討論 示する。 ( KJ 法 を 活 用) ・ KJ 法 に つ い て説 明する。 ・遺伝子組み換え 食品を巡る諸問題 について自由に考 え、付箋用紙に記 入するよう指示す る 。( 付 箋 用 紙 は 一人 10 枚程度配布 する) 時 の 展 学習活動 説明を聞く 開 評価の観点等 指導上の留意点等 予備アンケートの 結果については、 前時以前に説明済 み。資料は「遺伝 子組み換え食品」 に関連するもの。 ・グループを 作る。 ・説明を聞く 。 ・柔 軟 な 思 考 によ り た く さ んの 思 い を 記 ・ 考 え を 付 箋 入す る こ と が に記入する。 できるか 。【関 心・意欲・態 度】 ・記入済みの付箋 ・似たような をグループ毎に用 意見のものを 意 し た A2 大 の 用 集 め る た め に ・ KJ 法 は 問 題 点を 明らかにするため の手法である。 ・相談をする時間 ではないことを確 認する。 ・付箋には 2 行程 度で記入させる。 机間指導によりあ まり難しく考える 必要はないことを 指示する。 ・まずは抽象的に 指示する(反対・ 賛成などの言葉は 紙に貼り、同じよ 付箋を移動す う な 意 見 を ま と め る。 るように指示する 。 用いない )。 ・遺伝子組み換え ・大きく二つ に対して「 推進派 」 に分ける。 および「反対派」 に分けるように指 示する。 ・可能であれば、 意見の関連性も図 示させる。 ・ グ ル ー プ で 問 題 ・ 問 題 点 を 話 ・話 し 合 い に 点 を 話 う よ う 指 示 し合う。 積極 的 に 加 わ する。 れるか。【関 心・意欲・態 度】 ま 話し 合 い の ま ・ 各 個 人 で 話 し 合 ・ プ リ ン ト に ・課 題 を 明 ら ・ 机 間 指 導 で 、 発 と とめ。 っ た 内 容 及 び 考 え 記入する。 かに す る こ と 表 す る 生 徒 を 決 め め たことを記入する がで き た か 。 ておく。 よう指示する。 【思考・判断】 ・各グループ 1 名 ・ 指 名 さ れ た ずつ指名し話し合 生徒が発表す い の 過 程 を 発 表 さ る。 せる。 ・ 今 後 の 授 業 に つ ・説明を聞く 。 いて説明する。 (5)学習指導案2 本時の主題 実験「自分の DNA を抽出し観察しよう」 本時の目標 最も身近である自分自身の細胞から DNA を取り出すことで、 DNA を身近 に感じるとともに、生活の中の遺伝子関連事項やこれからの授業に対する 興味関心を高める。 本 過程 時 の 展 学習項目 教師の働きかけ 学習活動 導 細 胞 の 中 の 細胞の中で DNA が 説明を聞く 入 DNA どのような状態で 存在しているのか 説明する。 展 口腔 粘 膜 細 胞 ・ テ キ ス ト を 見 て 必 ・机 上 の 器具 等 開 か ら の DNA 要 な 器 具 等 を 確 認 を確認する。 抽出実験 するよう指示する。 開 評価の観点等 興味 を 持 っ て 聞けるか 。【関 心・意欲・態 度】 指導上の留意点等 プレゼンテーショ ンソフトを用いる 。 動画を効果的に使 う。 ・実験はプレゼンテ ーションを用いて足 並みをそろえる。 ① DNA の 採 ・ 口 腔 粘 膜 を 採 取 し ・綿棒 2 本の両 ・ 実 験 に 前 向 ・ 念 入 り に 採 取 さ せ 取 DNA 抽 出 液 に 懸 濁 端を使って計 4 き に 取 り 組 ん る 。 綿 棒 を き ち ん と させるように指示す 回 採 取 し , る。 DNA 抽 出 液 に 懸濁する。 ・マイクロ チュ ーブの ・ マ イ ク ロ チ ュ ふたを閉め,グルー ー ブ の ふ た を プ 毎 に チ ュー ブ たて 閉 め , 恒 温 漕 に ま と め , 恒 温 漕 に に入れる。 入れさせる。 ・質問「恒温漕はな ・ 質 問 に 答 え ぜ 4 0 ℃ に 設 定 さ れ る。 ているのか。」 でいるか。【関 絞 る こ と を 強 調 す 心 ・ 意 欲 ・ 態 る。 度】 ④ 鶏 レ バ ー ・再び恒温漕に入 ・チューブを DNA 抽 出 ビ れ る よ う 指 示 し 、 恒 温 漕 に 戻 し デオを見る。 入 れ た ら ・ 画 面 の ビ 画面を見る。 デオに注目させる 。 ・ビデオは 10 分程 度に編集。 ②酵素反応 ・酵素の最適 温度に気づく ことができる か。【知識・理 ③ブ ロ ッ コ リ ・ 画 面 に 注 目 さ せ ・ ビ デ オ を 見 解】 ・ビデオは 1 分程 ー DNA 抽 出 る。 る。 度に編集。 ビデオを見る ・ 5分 後 チ ュー ブを ・チューブを取 ・これ以降の操作 取 り 出 し NaCl 飽 和 り 出 し NaCl 飽 はゆっくり行うこ 溶液を 2 滴加えさ 和溶液を 2 滴 と を 指 示 す る せ 、 NaCl が タ ン パ ク 加える。 ( DNA を 切 ら な い 質とDNAの結合を ようにするため )。 切ることを説明す る。 ⑤エ タ ノ ー ル 沈殿 法 に よ る DNA の 凝 集 ・可視化 ま DNA の比較 と め ・観察用チューブに 移し,冷やしたエタ ノールを静かに加え させ る 。 以 後 , よ く冷 やしながら注意深く 観察させる。 ・観察用チュー ブに移し,冷や したエタノール を静かに加え, 冷やしながら様 子を観察する。 ・ 白 く ふ わ ふ ・アルコールは極め わ し た DNA てゆ っく りと 加 えさせ の 結 晶 が 観 察 る。 できたか。ま た,ブロッコリ ーや鶏と比較 してど う思 った か。【思考・判 断】 ・ ブ ロ ッ コ リ ー 、 ・ プ リ ン ト に ・ど ん な 生 物 鶏 、 ヒ ト ( 自 分 ) 記入する。 の DNA も 基 の DNA を比較して 本的 に 同 じ で 考えたことを記入 ある こ と に 気 するよう指示する 。 づくか。【思 同時に感想も記入 考・判断】 させる。 3.まとめ 今回の実践の対象生徒は、3年生文系(センター試験は受験するので、生物Ⅰは必要と しているが、生物Ⅱについては受験で必要としている生徒は皆無)であり、最初のアンケ ートでもわかるように 、遺伝子については 、興味・関心がそれほど高い集団ではなかった 。 このような生徒達に対して、興味・関心を喚起するために、口腔粘膜からの DNA 抽出や 遺伝子組み換え食品の是非をグループで話し合わせたりする授業(→ KJ 法を用いたグル ープでの活動例を図1に示す)を、単元指導計画の最初に組み込んだことで、かなり多く の生徒が興味を持って授業に参加してくれたように感じている。現段階では、十分な検証 が行えていないが、その検証も含め、他の教材(遺伝子診断や DNA 鑑定など)の有効性 を今後の課題として、来年度以降、取り組んでみたいと考えている。 図1 KJ法によるグループ活動例(遺伝子組み換え食品を考える)