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情 報 報 告 - 日本産業機械工業会

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情 報 報 告 - 日本産業機械工業会
情 報 報 告
ウィーン
欧州環境情報
欧州委員会、大気汚染防止の規制強化発表
12月18日、欧州委員会はEU全体で大気汚染を防止するための規制強化策を発表した。加
盟国ごとに大気汚染物質の排出上限を定めた『国別排出上限指令(2001/81/EC)』の見直し
や、発電所などの中規模燃焼施設に対する新たな規制の導入などを柱としている。加盟国
に既存ルールの順守と目標の早期達成を促すと同時に、幅広い産業施設に規制を適用し、
大気汚染による健康被害を減らして医療費削減や生産性の向上を図る。
EUでは大気汚染物質の制限値を設定し、加盟国にモニタリングと削減計画の策定・実施
を義務付けた『大気質枠組指令(96/62/EC)』をはじめとするさまざまな規制が導入されてお
り、二酸化硫黄、窒素酸化物、一酸化炭素など人体に悪影響をもたらす物質は以前に比べ
て大幅に削減された。しかし、多くの加盟国で達成期限を過ぎても大気汚染物質の濃度が
規制値を超えているのが現状で、域内で年間およそ40万人が大気汚染による健康被害が原
因で早期に死亡している。欧州委員会はこうした現状を改善するため、既存の規制や政策
の見直しを進めていた。
欧州委員会の提案によると、光化学スモッグをもたらす地表レベルでのオゾン生成や酸
性雨の原因となる物質の排出上限を定めた国別排出上限指令が厳格化され、微小粒子状物
質(PM2.5)、二酸化硫黄(SO2)、窒素酸化物(NOx)、揮発性有機化合物(VOC)、アンモニア(NH3)、
メタン(CH4)の6つの汚染物質の規制値が引き下げられる。また、産業施設から排出される
汚染物質を削減するため、石油精製所などの大規模燃焼施設を対象とする現行規制に加え、
発電所や中小の工場など中規模燃焼施設を対象とする新たな規制が導入される。欧州委員
会ではこのほか、加盟国が既存の目標を短期間で達成するための具体策、2030年を期限と
する新たな目標、都市部の大気質改善策、研究・開発への支援策などを盛り込んだ「欧州
大気清浄プログラム(Clean Air Program for Europe)」を提案している。欧州委員会による
と、一連の対策に伴うコストは2030年時点で年間34億ユーロに上るものの、健康被害の減
少による医療費削減や生産性の向上などでおよそ400 億ユーロの経済効果が見込まれると
いう。(参照先:http://europa.eu/rapid/press-release_IP-13-1274_en.htm)
欧州、ジェット燃料の関税免除継続が決定
12月9日、EU加盟国は閣僚理事会で、航空用ジェット燃料の輸入関税免除を2014年以降
も継続することを正式決定した。EUによるジェット燃料の輸入関税免除は2013年末が期限
となっており、延長されなければ2014年1月から4.7%の関税を課すことになっていた。国
際エネルギー機関(IEA)の推計によると、欧州諸国の2012年のジェット燃料使用量は1日平
均120万バレルで、うち3 分の1を中東などから輸入している。欧州委員会は域内の航空会
社がジェット燃料に関税が課されると燃料コストが膨らんで経営が悪化するとして、免除
継続を強く要望したことから、2013年11月に免税延長を加盟国に勧告していた。欧州委員
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情報報告 ウィーン
会は5 年以内にジェット燃料への関税免除の可否を再検討することになる。
欧州、食用食物由来のバイオ燃料に関する制限の合意に失敗
12月12日、EU加盟国はのエネルギー相理事会で、食用食物のバイオ燃料への転用を規制
する指令案について協議したが、意見が分かれて合意に至らなかった。これによって指令
案をめぐる協議は越年が決定。成立は2015 年以降にずれ込む見通しとなった。
EUでは2009年に発効した『再生可能エネルギー利用促進指令(2009/28/EC)』に基づき、
2020年までに運輸部門における再生可能エネルギーの利用比率を10%以上とする目標を掲
げ、加盟国は達成を義務づけられている。しかし、菜種や大豆など食用植物を原料とする
バイオ燃料の生産が拡大し、食料生産が圧迫される恐れがある。このため欧州委員会は2012
年10月、麦わらや農産廃棄物などを原料とする“第2世代バイオ燃料”の利用促進に向けて、
食用植物を原料とする従来型バイオ燃料の割合を最大5%に制限する指令案を発表した。こ
の規制案をめぐっては、バイオ燃料生産者が猛反発していることから、欧州議会は2013年9
月の本会議で、従来型バイオ燃料のシェアを原案より緩やかな6%とする修正案を可決して
いた。エネルギー相理事会では、議長国リトアニアが厳しい規制への反発を考慮し、さら
なる妥協策として同比率を7%まで引き上げることを提案した。しかし、ポーランド、ハン
ガリーなどが低すぎるとして抵抗。さらに、デンマーク、ベルギーなどが、7%では緩やか
すぎて、第2 世代バイオ燃料への転換が進まないとして反対に回り、協議は物別れに終わ
った。この問題の調整は、2014年1月からEU議長国となるギリシャの手に委ねられる。し
かし、欧州議会が5月に改選され、欧州委員会の委員も10月に入れ替わることから、2014 年
内の指令案成立は難しいことが予想されている。
欧州、温室効果の高いフッ素系ガスの制限に合意
12 月 16 日、EU 加盟国は、二酸化炭素(CO2)の数千倍の地球温暖化能力を持つフッ素系
ガスの冷蔵庫およびエアコンの使用を制限することで仮合意に達した。オゾン層を破壊す
る特定フロン(例:クロロフルオロカーボン(CFCs))の段階的廃止につながった国際的行動か
ら 20 年後の 2012 年に、欧州委員会は特定フロンに代わる気候に悪影響を与える“フッ素系
ガス(F-gas)”を廃止する法案を提案した。12 月 16 日の合意の下、新しいルールでは代替フ
ロン(例:ハイドロフルオロカーボン(HFCs))で知られるガスグループに関して、2030 年ま
でに 79%の削減を達成するためのキャップを導入する。このルールではまた、2022 年まで
にいくつかのビジネス分野における新しい機器への代替フロンの使用を禁止することを含
んでおり、そして古い機器の運転やメンテンナンスでの使用を防ぐことを目的としている。
欧州委員会は、今回の合意事項が法律になるために EU の代表者、それから、欧州議会
と EU 閣僚の同意が必要になると説明している。エアコンおよび家庭、スーパーマーケッ
トや業務用冷蔵庫の冷媒として使用される F-gas は、その生産チェーンが特定フロンと類
似していたので、業界に簡単に受け入れられるソリューションとして導入された。しかし、
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それらの地球温暖化の能力は CO2 の 23,000 倍以上であるため、欧州委員会では冷凍で使用
した場合に高い冷却特性を持つアンモニアや CO2 のような天然の非合成の代替物を支援し
てきた。さらに他の排出ガスの減少とは対照的に、F-gas は 1990 年以降から EU で 60%上
昇してきた。
環境活動家やグリーンな政治家らは、より抜本的な禁止を狙っていたが、今回の合意は
まだ進行中であると述べた。緑の党の一員であり欧州議会の Bas Eickhout 議員は、今回の
交渉は「古典的な妥協」と評価し、中国とアメリカが EU の主導に続くことを呼びかけた。
欧州エネルギーパートナーシップ(EPEE)を代表するような業界の冷蔵庫、エアコンそして
ヒートポンプもまた、この合意を歓迎している。提供された新しいルールは支持されてお
り、2015 年以降に適用可能する必要がある。
欧州復興開発銀:エネルギー5ヵ年戦略を決定
12月10日、欧州復興開発銀行(EBRD)理事会は、2018 年末までの5ヵ年を対象としたエ
ネルギー戦略を承認した。エネルギー効率向上と再生可能エネルギーの支援に力を入れる
一方で、石炭関連プロジェクトについては基本的に新規融資を中止する。
EBRDは2006年以来、中東欧・中央アジアの34ヵ国で総額88億ユーロをエネルギー関連
プロジェクトに投資してきた。その約3分の1に当たる27億6,000万ユーロを水力および風力
を中心とする再生可能エネルギー事業に割り当ている。水力発電についてはダム建設によ
る環境への影響に批判が強まっており、今後は既存設備の効率化に焦点を当てる。新しい
設備は、厳しい環境規制をクリアした場合にのみ支援を実施する。一方、太陽光(PV)・地
熱・集光型太陽熱発電や、バイオマス・バイオガスなど、再生可能エネルギー関連への投
資は増やす方針。そして、石炭火力発電への投資は基本的に行わない。既存設備について
は地球温暖化ガスの排出が大幅に削減できるものに限って支援するが、石炭から温暖化ガ
スの排出が比較的少ないガスへの転換を促進する方針。シェールガスなど非在来型資源に
ついては、商業生産が現実的になった段階で検討を行うとしている。
欧州、2013年のEU人口が110万人増加
11月20日、EU統計局のEurostatが発表した人口動態統計によると、EU域内28ヵ国の
2013年1月1日時点の総人口は5億573万人で、2012年同期から約110万人増えた。増加分の
うち80%に相当する約88万人が移民流入によるもので、出生数から死者数を引いた自然増
は約21万人だった。EUの2012年の年間出生数は520万人。1,000人当たりの粗出生率は10.4
人で、2012年と同水準だった。同率は最高がアイルランドの15.7人、最低がドイツの8.4人。
人口はドイツ、フランス、イタリアなど17ヵ国で増加し、11ヵ国で減少した。減少国に
は金融・債務危機でEUなどから金融支援を受けたスペイン、ギリシャ、ポルトガルが含ま
れている。これら3ヵ国では、深刻な景気停滞による雇用悪化で他の加盟国に移住する人が
急増したこと大きな要因となっている。
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欧州、貧困リスクは人口の4人に1人
12月5日、EU統計局のEurostatが発表した調査結果によると、EUで貧困・社会的疎外の
リスクに直面している人が、金融危機前の2008年から1.1ポイント悪化し、全体の24.8%に
上っている事実が明らかになった。ブルガリア、ルーマニア、ラトビアの東欧ヵ国のほか、
財政危機にあるギリシャで高い比率を記録した。
中東欧11ヵ国をみると、国別で最もリスクが高いのはブルガリアで49.3%。これにルー
マニア(41.7%)、ラトビア(36.6%)が続き、EU全体でもワースト3を占めた。一方で最も低
かったのはチェコの15.4%。2008 年比でも0.1 ポイントの悪化にとどまっている。
中東欧10ヵ国で2008年から改善したのはポーランド(3.8 ポイント減)、ルーマニア(2.5 ポ
イント減)、スロバキア(0.1 ポイント減)の3ヵ国だけで、リトアニア、ブルガリア、ハンガ
リーは4ポイント以上の悪化を示した。
貧困・社会的疎外のリスクを示唆する3 指標のうち、生活保護などの公的補助を含めた
所得が中央値の60%に満たない相対的貧困率はEU 全体で17%だった。中東欧ではルーマ
ニアが22.6%で最も多く、EU 全体ではギリシャ(23.1%)に次いで2 番目。ブルガリア
(21.2%)、クロアチア(20.5%)、ラトビア(19.4%)、リトアニア(18.6%)、エストニア(17.5%)、
ポーランド(17.1%)もEU 平均を上回った。一方で最も少なかったのはチェコの9.6%で、
EU 全体でも最低となった。
家賃や暖房費など最低限必要な支払いに支障が出たり、カラーテレビや洗濯機、電話と
いった「必需品」が買えないなど、経済的余裕が全くない人の比率はEU全体で9.9%に上っ
た。国別ではブルガリア(44.1%)、ルーマニア(29.9%)、ラトビア(26%)、ハンガリー(25.7%)
の順に比率が高かった。
欧州、1人当たりGDPはルクセンブルグがトップ
12月12日、EU統計局のEurostatが発表した購買力平価(PPP)による1人当たり域内総生
産(GDP)の統計で、加盟国間に大きな格差があることが明らかになった。中東欧諸国はいず
れもEU 平均を下回った。統計では2012年のデータを分析した。EU 平均を100とした指数
値をみると、ルクセンブルグが263と突出して高い。その他の国は47~130の間に位置する。
中東欧ではスロベニアが84で最も高く、これにチェコ(81)、スロバキア(76)、リトアニア
(72)、エストニア(71)が続いた。ポーランド、ハンガリー、ラトビア、クロアチアは60台。
ルーマニアは50、ブルガリアは47でEU28ヵ国中最下位だった。
旧加盟国ではポルトガル(76)とギリシャ(75)が特に低く、加盟国候補国のモンテネグロは
41、セルビアは36、マケドニアは35で、トルコは54だった。
オーストリア、WIEN ENERGIE が東欧の風力パークを売却へ
12 月 16 日、ユーティリティの WIEN ENERGIE 社は、ルーマニアとポーランドの風力
発電事業から撤退したことを発表した。今回の撤退は、2012 年 4 月から段階的に実施され
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てきたもので、売却額は明らかにされていないが、売却益が発生したとしている。WIEN
ENERGIE 社によると、撤退の理由は、法的な不安定さとリスクの上昇、今後は足元のオ
ーストリア国内に事業を集中するためと説明している。
オーストリア、Verbund がルーマニアの風力パークを売却へ
12 月 16 日、電力大手の Verbund 社は、ルーマニアの風力ビジネスを売却する。Casimcea
にある 50 メガワット(MW)の風力プロジェクトで、総工費は 9000 万ユーロ。Verbund 社
は既にルーマニアで 225 メガワットの施設を運営している。当初は 280MW に拡大する予
定であったが、助成金が改正されたことを受けて計画を凍結していた。Verbund 社では、
今後、オーストリアとドイツに事業を集中していく考えという。
ドイツ、風力発電が過去最高出力を記録
12月5日、欧州エネルギー取引所(EEX)のデータから、国内の風力発電の出力が12月5日
の夕方に約26,000メガワット(MW)に達し、瞬間発電量としては過去最高を記録したことが
分かった。これは中規模の原子炉26基分以上に相当する。ドイツ北部を中心に暴風を伴う
低気圧が通過したことが大きく影響したとしている。
ドイツの経済紙『Handelsblatt』では、風力発電が総発電量に占める割合は同時刻にほぼ
40%に達したと報じている。これまでの最高は、同様に大型低気圧に伴う暴風に見舞われ
た2013年10月28日で、発電量は24,700MWであった。冬期は北部を中心に風の量が多く、
単月で見ると2011年12月の発電量が約8,000ギガワット時と過去最高となっている。ドイツ、
フランス、オーストリア、スイスで電力スポット市場を運営する「EPEX SPOT」では、12
月5日のドイツ市場の卸売価格は、同日の発電量の増加が貢献したことで、1キロワット時
あたり3.43ユーロセントと、フランスの半分以下に下落した。
ドイツ、アメリカ向けバイオディーゼル燃料の輸出が急増
12月6日付け『Reuters』が、ドイツで精製されるバイオディーゼル燃料の輸出量が2012
年、急激に増加していることを伝えた。バイオディーゼルの輸出量は1月から9月に2012年
同期比29%増の111万トンに達した。うち約9割はオランダをはじめとするEU域内に出荷さ
れている。アメリカ向けは2012年にわずか500トンだったのが、2013年は10万トンと急激
に伸びた。一方、輸入量は26%減の44万6,800トンにとどまっている。ドイツでは廃食用油
などを原料としたバイオディーゼル燃料が生産され、欧州最大の規模を誇る。しかし、2006
年にバイオ燃料への課税が始まって以来、設備稼働率は半分程度にとどまっており。ここ5
年間は関連工場の閉鎖や破たんが相次いでいた。
ドイツ農業情報(AMI)によると、バイオディーゼル燃料の価格は現在、化石燃料より1リ
ットル当たり17ユーロセント高い。
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ドイツ、送電網の拡張プログラムは進展せず
12月7日付け『Frankfurter Allgemeine』が、送電網拡張法(EnLAG)に基づく拡張プログ
ラムが、2013年は全く実行されない見通しで、政府のエネルギー転換策の鍵を握る送電網
の整備が大幅に遅れていることを伝えた。2009年に開始された現行の拡張プログラムでは、
高圧送電網1,855kmを新設する予定だが、これまでに付設が完了した区間は2013年も2012
年と同じの計268kmにとどまる見込み。連邦ネットワーク庁は当初、拡張プログラムの大
部分を2015年までに達成できると見ていたが、現時点では2016 年までに約50%のみが完
了するとの見通しを示している。
原子力発電所の廃止に伴い、北海やバルト海など北部沖で発電される風力発電エネルギ
ーを南部の工業地域に供給する送電網の整備が急務となっているが、敷設計画の変更や承
認をめぐる当局間の対応のずれ、住民の反対などが原因で計画は大幅にずれ込んでいる。
送電大手のオランダのTennet社は、敷設ルート周辺の住民に自社債の購入権を提供してい
るが、補償として受け入れられるケースは少ないという。
ドイツ、RWEがEV 充電設備メーカー向けに通信インターフェースを公開
12月11日、電力大手RWE社の子会社であるRWE Effizienz社が、電気自動車(EV)用の充
電装置と電力会社のITシステムを結ぶデータ通信インターフェース「LG2WAN」を公開し
た。充電インフラの通信規格を標準化する取り組みの一環で、充電装置(ハード)のメーカー
に関係なく利用できるオープン・プラットフォームを採用している。LG2WANでは、EV
ユーザーの認証や課金、決済、ローミングなどのIT処理において、どのメーカーの充電装
置からでもRWE社のITサービスを直接利用できるようになる。また、再生エネルギー由来
の電力の供給量に応じで充電のスピードを自動的に調整することも大きな特徴。晴天の昼
間など再生可能エネルギーによる発電量の多い時間帯には急速で、少ない時間帯はゆっく
り充電できる。同インターフェースは自動車と電力系統(V2G)間の通信インターフェー
スとしてISO/IEC15118 に準拠している。
(参照先:https://www.rwe-mobility.com/web/cms/en/236840/rwe-emobility/press/)
ドイツ、Suzlon Energyが風力タービンを受注
12月11日、インド風力発電機器大手のSuzlon Energy社が、完全子会社のREpower
Systems社を通じ、ドイツ北部のSchleswig-Holstein州の発電所建設事業で風力発電タービ
ン103基を受注したと発表した。REpower Systems社は契約に基づき、Schleswig-Holstein
州内の風力発電所プロジェクト24件(266メガワット(MW))に103 基のタービンを供給する。
受注額などの詳細は明らかにされていない。プロジェクトの完了は2015 年の予定だが、11
基については間もなく稼働する見通し。
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ドイツ、欧州委、再生可能エネルギー法を調査へ
12月13日付け『Reuters』は、欧州委員会がドイツの再生可能エネルギー法(EEG)につい
て調査を開始する方針であることを伝えた。EEGでは、再生可能エネルギー由来の電力を
市場価格より高く買い取ることを義務付けており、このコストと市場での販売価格の差額
が電力税として消費者に転嫁されている。一方、国内産業の国際競争力を維持するため、
電力消費量が多いセメントや鉄鋼など一部のエネルギー集約型産業に対しては電力税が免
除されている。欧州委員会はこうした租税の仕組みを問題視しており、競争を歪める恐れ
があると指摘している。EEGがEUのルールに違反していると認定されると、欧州委員会は
ドイツ政府に対し、企業から実質的な助成相当分を回収するように命じることができる。
ドイツ、Siemensがアメリカで陸上風力タービンを受注
12月16日、総合電機大手Siemens社は、アメリカ電力会社のMidAmerican Energy社か
ら風力タービン448 基を受注したと発表した。Iowa州で手掛ける5件の風力発電プロジェク
ト向けの受注で、総出力は1,050メガワット(MW)と陸上風力発電分野での受注規模として
は世界最大となる。取引額は明らかにしていないが、契約には保守サービスも含まれてお
り、Siemens社はこれまでMidAmerican Energy社に合計1,200MW相当のタービンを納入
している。今回受注した風力タービンは、Iowa州Fort MadisonとKansas州Hutchinsonの
拠点で生産する方針。Siemens社は2012年、アメリカでの需要減を理由に両拠点で約550
人を削減したが、市場の回復に伴い再び雇用を拡大している。
ドイツ、Siemensがアメリカ初の洋上風力タービンを供給
12月23日、総合電機大手Siemens社は、アメリカのMassachusetts州Cape Cod沖に建設
が予定されるアメリカ初の洋上風力発電施設向けに風力タービンを供給することを発表し
た。取引き額は公表されていない。Siemens社は総出力3.6メガワット(MW)の風力タービン
を納入するほか、15年間の運転サービス契約も結ぶ。取引きは最終的な交渉を経て、2014
年に完了する見込みで、着工は2016 年を予定。
Cape Codの南方沖Nantucket海峡に建設が予定される洋上風力発電施設は、独特な景観
を損なうとして市民団体などからの反対が強い。プロジェクトを運営するCape Windは
2010年にアメリカ政府と65平方キロメートルの海域についてリース契約を結んでいる。風
力発電施設が完成すれば、20万世帯の電力が賄われる見込みという。
ドイツ、環境税の国民負担額は年間240ユーロ
1月9日、『Frankfurter Allgemeine』が、ドイツで再生可能エネルギーの助成財源とし
て電力料金に上乗せされる環境税の国民負担は2013年に1人当たり年間240ユーロに上って
いることを伝えた。ドイツでは再生可能エネルギー由来の電力に対する固定価格買い取り
制度が導入されており、2013年のコストは218 億ユーロと過去最高に達した。一方、再生
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可能エネルギーの販売総額が約20 億ユーロにとどまったため、ドイツの再生可能エネルギ
ー法(EEG)に基づく国民負担は前年の約140 億ユーロから194 億ユーロに拡大している。
再生可能エネルギー由来の電力の買取り費用は今年、234 億ユーロに拡大する見通し。
ただ電力の取引価格は下落傾向にあり、国民負担はさらに増える可能性が高い。
フランス、Arevaが中国との関係を強化
12月9日、国営原子力企業のArevaは、中国広核集団(CGN)と再生可能エネルギーの分野
で協力することで合意した。中国や欧州で洋上風力発電事業などの商業化の機会をうかが
う。Arevaはまた、中国核工業集団(CNNC)から原子力機器を受注するとともに、CNNCと
核燃料関連の合弁事業を設立することで基本合意。ArevaとCGNは、洋上風力、バイオマ
ス、太陽光の各発電事業とエネルギー貯蔵事業の商業化を目指す。中でも力を入れるのが
洋上風力で、Arevaが風力タービンの製造技術を提供し、CGNが出資して事業運営を担う。
また、ArevaとドイツのSiemens社のコンソーシアムは、CNNCが福建省の福清原子力発
電所で建設を予定している5、6号機向けに、厳格な安全基準に対応する「TELEPERM XS」
デジタル計装・制御システムを納入する。5号機は2014年、6号機は2015 年に着工する予
定で、いずれも1,000メガワット(MW)の加圧水型原子炉を建設する。
フランス、欧州委がEDFの原発新設への英公的支援の調査を開始
12月18日、欧州委員会はフランス電力最大手のフランス電力公社(EDF)が英国政府の支
援を受けて同国に原子力発電所を新設する事業について、EU の公的支援ルールに違反す
る恐れがあるとして、調査を開始したと発表した。EDF は2013年10月、フランス国営原
子力企業のAreva、中国広核集団(CGN)、中国核工業集団(CNNC)と共同で総額160億ポン
ド(約192億ユーロ)を投じて、英国南西部のHinkley Pointに原発を建設すると発表。既存の
原発を含む多くの発電所で耐用期限が迫っており、新たな電力供給源の確保が急務となっ
ている英国政府は、同計画を支援するため、建設予定の原発に対し、35年間にわたって電
力固定価格買い取り制度(FIT)を適用し、取り決めた価格が電力卸売市場の価格を下回った
場合に政府が差額を補填する方針を打ち出していた。これについて欧州委員会は、事実上
の補助金に当たる今回の支援が総額170 億ポンドに達する可能性があると指摘。そのうえ
で、このような大規模な支援がプロジェクト推進に不可欠かどうか疑問があるとして、各
方面の意見を聞きながら調査を進め、可否を判断する。
今回のプロジェクトでは、Arevaが開発した欧州加圧水型原子炉(EPR)2基を設置する。
出力1,650MWで、英国の電力需要の約7%を賄う能力を持つ。2023年の稼働を予定してい
る。英国での原発新設は1995年以来約20 年ぶりで、福島第1 原発の事故後に欧州で建設さ
れる初の原発となる。
民間の原発事業に対して、このような形で公的支援が行われるのは欧州では初めてのケ
ースで、欧州委員会は2013年末に失効したEUの国家補助規制の見直しに際して、当初は原
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発への公的支援を例外扱いとし、補助金などの交付に際して欧州委の承認を不要とする方
針だったが、脱原発を進めるドイツやオーストリアの反発により方針を転換し、妥当性を
厳しく審査する方針を2013年10月に打ち出していた。さらに、欧州委員会が支援を不当と
判断し、実施を認めない場合、EDF は同計画を撤回する可能性もある。
英国、インフラ整備に3,750億ポンドを投資
12月4日、Danny Alexander 財務担当相は、「2013年国家インフラストラクチャー計画
(National Infrastructure Plan 2013)」を発表した。エネルギー、運輸、洪水対策、廃棄物
処理、水道、通信の各分野に今後20年間で、官民合わせて3,750億ポンドを投資し、計646
件のプロジェクトを実施する。政府はこの中で、再生可能エネルギーへの助成を見直して
いる。併せて、国際高速鉄道ユーロスターの保有株40%を売却する方針や、保険業界から
今後5年間で250 億ポンドのインフラ投資を取り付けたことも明らかにしている。
今回の計画は2013年6月に発表した総額1,000 億ポンドのインフラ投資計画を拡大した
もので、6月に再生可能エネルギーへの投資促進に向け導入した電力の価格保証について、
向こう5年間の詳細な計画を提示している。陸上風力発電や太陽光発電への助成を減らし、
洋上風力発電を優遇する姿勢を明確にしている。例えば来年度については、洋上風力発電
は今年度と同じ1,000 キロワット当たり155ポンドに据え置く一方、陸上風力は100ポンド
から95ポンドへ、大規模太陽光(PV)発電は125ポンドから120ポンドに引き下げられる。
英国、Draxがバイオマス発電所を開設
12月9日、発電大手Drax社が、イングランド北部North Yorkshire州にバイオマス発電所
を開設した。国内最大の石炭火力発電所の一部をバイオマス燃焼に切り替える。Drax社は6
基ある発電機のうち3基の燃料を切り替える計画。うち1基目は2013年4月に運転を開始して
おり、残り2基の転換も2016 年までに完了する予定。投資総額は最大7億ポンドとなる見通
しで、Drax社ではこれに向け2012年10月に1億9,000万ポンドの増資を実施したほか、グリ
ーン投資銀行(GIB)から1億ポンドの融資を獲得し、2012年12月に全資金を確保していた。
燃料転換が完了するとバイオマス燃焼による発電容量は2,000メガワット(MW)となり、
Drax社は欧州最大級の再生可能エネルギー発電会社となる。
また、Drax社はすでに、木炭とバイオマスの混焼発電を手掛けているほか、フランス重
電大手Alstom社およびドイツ産業ガス大手Linde社傘下のBOCグループと組んで、二酸化
炭素(CO2)回収・貯留(CCS)プロジェクト(ホワイト・ローズ・プロジェクト)を進めている。
英国、政府が電力市場改革調達計画を発表
12月19日、エネルギー・気候変動省は、「電力市場改革調達計画(Electricity Market
Reform Delivery Plan)」を公表し、優先支援対象となる10件のクリーンエネルギー・プロ
ジェクトのリストを選んだ。選ばれたのは以下のとおりで、Eggborough発電所のバイオマ
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情報報告 ウィーン
ス転換プロジェクトは対象に含まれなかったことから、同発電所は2016年に電力供給を停
止することになる。
・Beinn Mhor Wind Farm
(Beinn Mhor Power) :陸上風力
・Burbo Bank Offshore Wind Farm
(Dong Energy Wind Power):洋上風力
・Drax 2nd Conversion Unit (Drax Power) :石炭火力のバイオマスへの転換
・Drax 3rd Conversion Unit (Drax Power) :石炭火力のバイオマスへの転換
・Dudgeon Offshore Wind Farm (Dudgeon Offshore Wind)
・Heckington Fen
(Ecotricity Group)
・Hornsea Offshore Wind Farm
:洋上風力
:陸上風力
(Dong Energy Wind Power) :洋上風力
・Lynemouth Power Station (Lynemouth Power) :石炭火力のバイオマスへの転換
・Teesside Renewable Energy (MGT Power) :バイオマス専用のCHP
・Walney Extension Offshore Wind Farm
(Dong Energy Wind Power):洋上風力
英国、エネルギー当局、閉鎖した火力発電所を再稼働も
12月19日、エネルギー業界の監督機関(Ofgem)は、今後の電力不足対策として、閉鎖した
ガス火力発電所の再稼働を含む追加的な措置を承認した。電力需給のひっ迫が予想される
2014年の冬から適用される。新たな措置によると、送電系統を運用するNational Gridは冬
期の電力消費のピークとなる平日の午後4時から8時に一定の補償と引き換えに企業に電力
使用を抑制するよう要請することができる。また需要のピーク時向けに追加的な電力供給
契約を各発電所と結ぶ権限をNational Gridに与えるとしている。
Ofgemでは、老朽化した石炭火力発電所の閉鎖などを背景に余剰電力が減ると予想して
おり、2015年から2016 年には余剰電力が2%から5%減少するとの見通しを示している。
アイルランド、風力発電施設の建設指針改定へ
12月12日、政府は風力発電施設の開発に関するガイドラインの改正案を発表した。2006
年に定めたガイドラインを変更するもので、2014年2月21 日まで一般からの意見を募る。
改正案では、住民が承諾しない限り風力タービンを一般住宅から500m以内に建設するこ
とを禁じる。騒音も屋外で昼夜を通じて40デシベル以下と、交通量のない静かな住宅地の
水準とする。また晴天時にブレードの影で地上に明暗が生じる「シャドーフリッカー」に
ついて、今後はローター直径の10 倍以内にある住宅の敷地ではこれが発生しないことを建
設許可の条件としている。発生した場合には、開発事業者や運営事業者に対して運転を停
止するか、シャドーフリッカーを軽減するなど対応策を取ることを義務付ける。政府は今
回の改正案について、「ガイドラインは国内の景観に関する戦略や再生可能エネルギー開
発戦略と併せて検討すべき」と指摘している。
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情報報告 ウィーン
イタリア、違法な廃棄物処分に対する法律が可決
12 月 3 日、イタリアの Enrico Letta 首相は、組織的犯罪と乱用が慢性的な環境危機を発
生してきた Naples 南部都市周辺の生ごみに関する緊急事態に立ち向かう対策を発表した。
Naples と Caserta の間にある“火の国(terra dei fuochi)”と呼ばれる地域は、この地域の異
常に高レベルな癌および他の病気の原因と非難されてきた有害廃棄物の違法処分に対して
数十年の間にわたり悪名高い。
12 月 3 日に発表された法令は、許可無しに生ごみを燃やすと刑事犯罪になり、そして管
理のない廃棄物の投棄によって有害なものに変わった農地に厳しい管理を導入している。
政府は声明で「これは、耕作の制限の必要がある汚染された地域を細かく分けるために必
要な緊急事態である」と述べている。Campania 地方政府によってすでに公約された 3 億
ユーロを追加し、政府はまた清掃作業のために 6 億ユーロを確保する。違法投棄そしてタ
イヤ、化学廃棄物と他の有害物質の野焼きは、11 月に Naples での約 7 万人の抗議デモに
よる警告を引き起こす事態となった。 緑のキャンペーン団体の Legambiente によると、
火災サービスデータから、約 6 千の違法な廃棄物焼却が 2012 年 1 月から 2013 年の 8 月の
間で記録された。2 千の汚染された処分場もまた明らかにされたと述べている。
Legambiente は、Campania 地方が全イタリア地域で環境犯罪が 14%と最も多く、それは
Sicily 島や Calabria よりも悪いと話している。
ポーランド、EBRDが風力発電事業に融資
12月16日、欧州復興開発銀行(EBRD)は、ポーランドの集合型風力発電所プロジェクト
“PAWLOWO風力発電所”の第1段階に、最大で3億100ズロチ(約7,200万ユーロ)を融資す
る。PAWLOWO風力発電所は、ポルトガル電力公社(EDP)の再生可能エネルギー部門EDP
Renováveis(EDPR)のポーランド子会社Relax Wind Park IIIが、北西部ゴワンチ(Gołańcz)
で建設、運営する。プロジェクトの第1段階では79.5メガワット(MW)の風力発電設備を設
置する。これにより、ポーランドの二酸化炭素(CO2)排出量は年間10 万トン削減される。
国内消費電力の88%を石炭火力発電に依存するポーランドでは、再生可能エネルギーの普
及拡大が課題となっており、EBRDでは2010年から同国の再生可能エネルギープロジェク
トを積極的に支援している。
ギリシャ、クリスマスプレゼントに電力を贈る
12月5日付け『AFP通信』が、債務危機にあえぐギリシャで、2つの自治体が、電気代の
支払いが滞り供給を止められた世帯を対象にクリスマスまでに電気を復旧させる電力のク
リスマスプレゼントを贈る考えがあることを伝えた。
プレゼントを決めたのは、本土南部のトリポリと西部のイオニア海に浮かぶZakynthos
島。Zakynthos島では現在、最大60世帯が電気の供給を止められている。Zakynthos市長は
今回の決定について、「団結心から生じる義務。いつまでも無関心ではいられない」と述
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情報報告 ウィーン
べている。ギリシャでは2008 年から昨年の間に、電力供給を停止される世帯の数が倍増。
電力会社は支払いの柔軟化や困窮世帯の救済策を打ち出すなど、対応に追われている。ギ
リシャ北部では先に、電気を止められ火鉢で暖をとっていた13歳の少女が有毒性の煙を吸
って亡くなる事故も起きている。
ブルガリア、再生可能エネルギー税を導入
12月5日、ブルガリア議会は、電力料金の上昇を抑えるとともに、エネルギー関連の赤字
を縮小するために、2014年から再生可能エネルギーに対する課税制度を導入する法案を可
決した。新税により1 億6,000万レフの歳入増が見込まれている。可決された関連法案によ
ると、国内の電力網に供給された再生可能エネルギーの売上に対して20%を課税するもの
で、市場取引きや輸出に対しては適用しない。しかしながら、事業者側は新税導入に強く
反発しており、投資資金は借入れで賄われていることが多く、200社が倒産に追い込まれる
ことを主張している。また、法的枠組みの不透明さが国外投資家の資本撤退や、新規投資
への慎重姿勢を引き起こすと指摘している。
ブルガリア、エネルギーセクターに売上税導入へ
12 月 12 日、ブルガリア議会のエネルギー委員会は、電力事業者に対し売上税の導入につ
いて議論、既に決定が出されたと言う。議会は、12 月 5 日に太陽光発電施設と風力発電施
設に対し、収益の 20%の課税を決定したばかり。ブルガリアの太陽光発電団体は、この決
定を激しく非難している。課税が電力業界に対し 20%課税されるかどうかは未定。
ルーマニア、再生可能エネルギーの助成金を大幅に削減
12 月 17 日、ルーマニアは、再生可能エネルギーの生産者の過剰補償ならびに産業界と一
般家庭向けの市場価格の上昇を避けるため、2014 年 1 月から新設される風力、太陽光そし
て小型水力の再生可能エネルギープロジェクトの支援を削減する。 このインセンティブは、
発生電力のメガワット(MW)ごとに事業開発者にグリーン電力証書が与えられ、エネルギー
調整事業者によって設定された年間のクォータ(割当て)に基づき、電力供給事業者と大口需
要家にグリーン電力証書の購入を強制するものである。グリーンなエネルギーへの投資家
は、グリーン電力証書の販売によって利益を得て、そして電力を販売するときに再び利益
を得る。新しい政府の法案では、風力発電は 2017 年まで 1MW あたり以前の 2 単位から
1.5 単位の証書に、そして 2017 年以降は 0.75 単位となる。太陽光プロジェクトの支援では、
1MW あたり半分の 3 単位の証書に、そして小型水力施設では 3 単位から 2.7 単位に削減さ
れる。新しい法案は 2014 年 1 月以降に完了するプロジェクトにのみ適用されると Victor
Ponta 首相は説明した。2012 年以降に実施されてきた EU の支援制度は、欧州委員会から
あまりにも寛大であると指摘されいた。これは、チェコ国営電力(CEZ)、イタリアのエネル
ギー企業大手 Enel またはポルトガル電力公社(EDP)を含む多くの外国投資家をルーマニア
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情報報告 ウィーン
にもたらした。2013 年 6 月に、左派政府は、数年間、補助金の一部の支払いの延期を全て
の生産者に適用することを決定した。 ルーマニア風力発電協会(AREE)は、補助金の遅延
について欧州委員会に訴えていた。ルーマニアで欧州最大の陸上風力を運転する CEZ は、
EU の基本理念と矛盾した遡及力のある変更を訴えた。ドイツ、英国そしてスペインなど
EU の他の場所でもまた、再生可能エネルギーのインセンティブを削減している。
モルドバ、EBRDがエネルギー事業に1億ユーロを投資
12月6日、欧州復興開発銀行(EBRD)は、モルドバのエネルギー効率化および再生可能エ
ネルギープロジェクトに対する累積投融資が1億ユーロに達したことを発表した。EBRDは、
新興国のエネルギー効率化および再生可能エネルギー促進を支援する「持続可能エネルギ
ー・イニシアティブ(SEI)」の一環としてモルドバに投融資を行っている。モルドバ持続可
能融資ファシリティ(MoSEFF)とモルドバ住宅エネルギー効率融資ファシリティ
(MoREEFF)という2つの融資制度を通した支援のほか、ビジネスアドバイザリーサービス
による中小企業向け省エネにコンサルティングサービスも提供している。これらの支援に
より、モルドバでは年間9万5,000トンの二酸化炭素(CO2)削減効果が期待できるという。
ウクライナ、風力発電が拡大
ビジネスニュースサイト『Delo.ua』が、ウクライナ風力エネルギー協会(UWEA)の話と
して伝えたところによると、ウクライナ国内の風力発電設備の定格出力合計は2013年末に
450メガワット(MW)、2014年末には650MWから700MWに拡大する見通しであることがわ
かった。UWEAによると、2013年初め時点の定格出力合計は302MWで、2012年と比べ倍
増した。さらに2013年は1月から7月の間に合計で18.32MW の発電施設が稼働を開始。投
資総額は8,400万ユーロだった。ウクライナでは、風力発電の大型プロジェクトが相次いで
いる。
ロシア、EBRDが極東地域の電力インフラ近代化に融資
12月5日、欧州復興開発銀行(EBRD)は、ロシア極東地域における電力インフラの近代化
に44 億ルーブル(約1億ユーロ)を融資すると発表した。期間は12 年。EBRDがロシアにお
ける電力供給プロジェクトを支援するのは今回が初めてとなる。貸付先は世界2 位の水力
発電事業者で国営のルスギドロで、ルスギドロが経営権を有する極東電力供給会社(FEDC)
に投資される。スマートメーターの設置、新しい電力網運営・管理システムの導入で電力
の有効利用を促進する。また、この夏の洪水で損害を被った設備も更新される。さらに、
資金の一部はFEDCの債務再編にも使われる。EBRDでは、プロジェクトの実施を通じて年
間30万トンの二酸化炭素(CO2)削減効果が期待できるという。
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情報報告 ウィーン
欧州、ECHA が成形品に含まれる SVHC リストの物質に関するデータを更新
12 月 10 日、欧州化学物質庁(ECHA)は、懸念物質(SVHCs)の候補リストに記載さ
れている物質で、成形品に含まれているものについて発表している情報を更新した。
候補物質リストに記載されている 138 種類の物質のうち 32 種類について、成形品に
0.1% w/w を超える質量濃度で含まれているとの通知が出されている。通知の数が最
も多いのはフタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)で、103 件に上り、次いで難燃剤のヘ
クサブロモシクロドデカン(HBCDD)に関する通知が 31 件となっている。
CIS 諸国、化学物質の安全性に関する包括法案の採択が間近に
12 月 20 日、ロシア、カザフスタン、および、ベラルーシの間では長期にわたり化
学物質の管理方法に関して意見の相違がみられたが、これが解消された模様であり、
3 ヵ国による化学製品の安全に関する規則の採択も近いことが報じられている。ロシ
アが策定した技術規則案は、ユーラシア経済委員会(EEC)の加盟国による採択に向け
て進んでいるという。さらに、この 3 ヵ国は、塗料とラッカーの安全性に関する規則、
および、合成洗剤の安全性に関する規則の 2 件を可決する見通しである。
12 月中旬の EEC の会合で合意された 3 件の規則の詳細は、未だ明らかにされてい
ないが、ロシア化学業界の内部関係者は、ロシア、ベラルーシ、および、カザフスタ
ンが、3 ヵ国の化学物質に関する技術規則を EU の化学物質の安全性に関する規則に
沿ったものにする上で「大きく前進」した点を強調している。
欧州委員会、RoHS における鉛と六価クロムの適用除外をめぐり諮問を実施
12 月 20 日、欧州委員会は、電気・電子機器に含まれる有害物質の制限に関する EU
指令(RoHS 指令)の下で、適用除外の要求に関する公開諮問を開始した。この適用除
外は、監視および制御機器(カテゴリー9)から再利用する予備部品に含まれる鉛お
よび六価クロムに関するもので、2017 年 7 月 21 日以前に市場に出された装置から回
収され、2024 年 7 月 21 日以前に市場に出される機器類に使用される部品が対象とな
る。科学機器メーカーの FEI 社がこの要請を提出した。
現在、電子顕微鏡メーカーは、2017 年 7 月 21 日以前に市場に出された装置の修理
に、有鉛はんだおよび六価クロムを含む部品を再利用することを認められているが、
この期日を過ぎで市場に出る装置には使用することができない。鉛フリー製品は 2017
年 7 月近くまで発売されない見通しであるため、顕微鏡メーカーらは、有鉛はんだを
含む中古部品に修理調整を加えたものを在庫として蓄積しておく見込みである。
FFI は、新しい部品による廃棄物の発生や交換よりも部品を再利用する方が明らかに
環境への影響がより小さいと主張している。使用および再利用は監視可能な企業間の
返却システムによる閉鎖されたループで行われる必要があり、そして部品の再利用は
消費者に通知する必要がある。
欧州委員会は、ドイツのコンサルタント会社である
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情報報告 ウィーン
欧州委員会は公開協議を実施するためにドイツのコンサルタント Oko-Institut を指
名した。利害関係者らは、同諮問に対する意見を 2 月 28 日まで提出することができ
る。今回の協議は他の 4 つの除外要求と昨年協議された RoHS 指令の下での例外の更
新への要求に続いている。
欧州委員会、Horizon 2020 プロジェクトに対する要請を開始
12 月 11 日、欧州委員会は、2014 年から 2020 年までに約 800 億円の予算を持つ EU 最
大の研究・イノベーションプログラムである “Horizon 2020”で行うプロジェクトに対して
最初の要請を開始した。資金は 12 の分野に及び、「水のイノベーション:欧州のためにそ
の価値の向上(Water innovation: boosting its value for Europe)」と名付けられて水分野も
含まれている。水関連の要請に対する 2014 年の予算は 6,700 万ユーロであり、2015 年で
は 9,600 万ユーロと見込まれている。上下水道設備テクノロジー・プラットフォーム
(WssTP)によれば、要請の他の部分では水関連の研究とイノベーションへの機会もあるとし
ている。
欧州、EEA が 2014 年の資源利用の焦点を発表
1 月 3 日、欧州環境庁(EEA)は、新しい 5 ヵ年作業プログラムの開始と環境政策順位の新
たな設定を行う 2014 年に、その主要な環境の焦点として資源利用に焦点を当てている。こ
れには、例えば、リサイクル率や廃棄物処理の改善による資源効率の向上が含まれている。
それの一環として、いくつかのコンセプトでは、年間を通じて EEA の事業を組み立てる。
1 つは“グリーン経済”であり、より効率的に資源を利用する経済システムとして想定されて
いる。作業はこれらのコンセプトが、それらを実現するために必要な長期点な変化を含み
ながら、実際に欧州のために何を意味するのかに焦点を当てている。2014 年から 2018 年
の事業プログラムはまた、既存の EEA の政策に関連する知識の向上だけでなく、2050 年
までに低炭素、資源効率的、そして生態系に強い社会への移行への野心を支援することを
目指す。
世界、淡水化の影響レポートはデータの欠落を強調
1 月 13 日、Pacific Institute が発行した新しいレポート『Marine impacts of seawater
desalination plants(海水淡水化施設の海洋への影響)』は、排出される非常に高濃度の塩水
が海底に沿ってゆっくりと広がり、そして沈んでいくことを警告する。これはいくつかの
試験された散布方法を提案しているが、海水の排水に関する有効なデータの欠落もまた強
調している。報告書では、「特にカリフォルニアの生物相に関する塩水の影響は極めて限定
的であるが、多くの場合で専門家の査読を経ていないか、または研究の計画の欠陥を持っ
ている」と警告している。
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情報報告 ウィーン
ドイツ、EIB が Emscher の再構築に資金供与
12 月、欧州投資銀行(EIB)は、ドイツ最大の環境プロジェクトの 1 つである Emscher 河
川システムの包括的再構築(リストラ)に向けて、ドイツの公共水管理組合の
Emschergenossenschaft(エッセン・エムシャー共同組合)にさらに 4 億 5,000 万ユーロの融
資を供与している。EIB は Emschergenossenschaft の投資プログラムへ 2014 年から 2016
年の間、今回の融資と共に協調融資をする。EIB がこのプロジェクトに関与するのは、2011
年の最初に続いて今回が 2 度目となる。EIB は長い満期日にもかかわらず固定利率で 45 年
に渡り再び同額を提供する、この大きな長期的プロジェクトは、Emscher 川を自然な状態
に修復する河川の景観の環境的再構築に伴うものである。重要な自然とレクレーションの
場が密集した人口地域に造られ、そして EIB は、これらは地方の住民の生活の質をすでに
実質上改善させていると述べた。この修復プロセスは 2020 年までに完了する予定。
英国、Water UK が水企業の Ofwat への意見書の要点を述べる
12 月、Water UK(英国の水企業で構成される業界団体)が、AMP6 定期評価(第 6 次資産
管理計画評価)に対する Ofwat(英国の上下水道企業を統制する公的機関)への水企業の意見
書内の要点を強調した陳述書を発表した。申述書では、ほぼ全ての水企業が、2015 年から
2020 年のインフレに沿うかまたはより低くするために水道料金を維持することと投資家へ
の見返りを減少することを公約していることに注目している。 多くの企業はまた、追加の
社会的料金を導入することが設定されている。Thames Water 社は、提案された Tideway
トンネルの投資への支払いのために、2020 年までに平均料金を 11%まで上昇させる計画を
公表している。
カタール、ユーティリティが太陽エネルギーを生産のために屋根の利用を設定
12 月、国営配送電水会社(Kahramaa)の技術部門の Nasser al-Nasser ディレクターは、
ユーティリティが、2,000 メガワット(MW)の発電のためにポンプ場の屋根や貯水池(貯水槽)
のような、インフラ内の“余分な”平らな場所の活用を目指すことを国内の太陽サミットで話
した。
Kahramaa は太陽光(PV)発電システムだけでなく太陽熱や集光型太陽熱発電(CHP)の活
用を期待している。
バーレーン、大臣が Toblei 廃水処理場の拡張の入札を発行
12 月 10 日、バーレーン公共事業省が、自国の Toblei 廃水処理場に 2 億 3,000 万ドル規
模の拡張に対する入札を発行した。このプロジェクトは 2017 年後半に完了する予定で、入
札の期日は 12 月 25 日である。この拡張は施設能力を 1 日あたり 200,000 立方メートルに
まで強化し、資金の調達は湾岸協力会議(GCC)から行われる。今回の増強は、2030 年まで
に悪化している衛生インフラを改善する国家計画の重要事項である。
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情報報告 ウィーン
クウェート、現代のコンソーシアムが Az-Zour 建設契約を獲得
12 月 16 日、韓国の現代重工業とフランスの水処理大手 Sidem のコンソーシアムが、ク
ウェートの Az-Zour に発電所および隣接する淡水化施設の建設を行う 14 億ドルの契約を獲
得した。契約の下で、クウェート市街から南に 100km 程度の複合施設内に、現代は発電所
を建設し、Sidem は淡水化施設を建設することになる。淡水化施設の全能力は、1 日あたり
486,000 立方メートルとなる。先週(12 月 12 日)、国際協力銀行(JBIC)が、クウェートの
Az-Zour 北部の民活型水・発電プロジェクトの第 1 段階に対し、クウェート国法人 Shamal
Az-Zour Al-Oula と共に 6 億 4,500 万ドルを貸付け限度とする融資契約を締結したことを公
表したこのプロジェクトはクウェート初の官民パートナーシップによる発電・海水淡水化
プロジェクトである。
クルジスタン:イランのダム建設プロジェクトを非難
12 月、現地では、クルジスタンとの国境にある Garan ダムをイランが完成したことで、
“水戦争の始まり”と報道している。新しいダムが自国の Darbandikhan ダムに深刻な影響
を与える Darbandikhan ダムの 70%程度がイランから流入しており、ダムの責任者である
Rahman Khani 氏らは、Garan ダムとイランの他のプロジェクトが Darbandikhan ダムだ
けでなく、イラクの Hamrin ダム下流にも有害な影響を与えると警告している。
アフリカ、地方の水と衛生の委員会が協議のために集まる
12 月、地方の水と衛生イニシアチブ調整委員会の最初の会議が、国家的且つ地域的レベ
ルの調整の強化とアフリカ水担当大臣(AMCOW)の政策的リーダーシップを補う支持的活
動のための効果的なプラットホーム作りを目的にナイジェリアで開催された。閣僚と水供
給の有力者がだけでなく、世界銀行や資金援助国からの代表者らが会議に出席した。
次の 3 つの提案が行われた。
・重要な知識を持つパートナーと共同で地方の水と衛生におけるベストプラクティスを
強調(目立たせる)すること
・各国レベルそして地域レベルにおいて地方の水と衛生の投資への支援を強化すること
・国連のポスト 2015 戦略的開発目標を特に考慮して、地方の水と衛生サービスに対する
国家的レベルでの監視と評価システムを改善すること。
西アフリカ:世界銀行がセネガル川流域プロジェクトに 2 億 2,850 万ドルを調達
12 月 19 日、世界銀行が家庭、灌漑そして発電の目的のための水利用に資金調達する 2
億 2,850 万ドルを承認したことで、西アフリカのセネガル川流域の利用可能性が 1 つ進展
した。30 万平方キロメートルの流域は 4 つの川岸の国(セネガル、ギニア、マリ、モーリタ
ニア)と 3,500 万人の人々によって所有されている。そのうちの 1,200 万人が、この地域の
水と食糧の安全性の向上に役立ち、さらには安い再生可能エネルギーを生産する大きな可
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情報報告 ウィーン
能性を持っていると考えられているセネガル川流域に住んでいる。世界銀行のアフリカの
戦略的運転と地域統合のディレクターColin Bruce は、「このプロジェクトはセネガル川流
域の地域社会を助けるだろう。“人々のエネルギーと食の必要性そしてマラリアや他の国境
の無い水関連の病気の抑制と対処することを満たすことを助ける。多目的な水のプロジェ
クトは、ほとんどがギリギリの生活者または小農家である人口の 42%から 53%が世界で最
も貧しい国にランクされている 4 ヵ国の 450 万人の人々に直接の利益をもたらすだろう」
と述べた。また、「干ばつによる枯れの影響を減少することは、結果的に数百万の農家、牛
飼い、地域社会の数百万の暮らしを向上させ、それら地域全体の平和と発展を推進するこ
とに役立つ」とアフリカ向けの副総裁である Markhtar Diop は述べた。
ナイジェリア、州政府が水プロジェクト基金を要求
12 月 6 日、ナイジェリアの Rivers 州の Rotimi Amaechi 知事は、Ngozi Okonjo-Iweala
財務相と Stella Ochekpe 水資源相によって州に充てられた世界銀行とアフリカ復興銀行
(AfDB)からの融資の未庫出を詳しく調べることを要請した 水資源に関する政府委員会メ
ンバーの訪問期間中の知事の発言として次のように現地で報道された。
「死にそうな人々や
飲用水を奪われた人々が、自分の家に水の無い Rivers 州の住民である。我々は大臣が望む
人物と財務省が契約することができる準備がある。我々は、州の住民に飲用水を供給する
ことにしか興味はない。
」
エチオピア、世界銀行が気候イノベーションセンターを支援
12 月 2 日、エチオピアの新しい気候イノベーション・センター(CIC)について、世界銀行
とエチオピアの Addis Ababa 大学の間で 500 万ドルの支援に関する契約が発表された世界
銀行のグローバル・イノベーション・プログラムの InfoDev によって先頭に立たされてい
るエチオピア CIC は、気候変動のために開発された新しい技術の利用を促進するものであ
る。ノルウェー政府、UKAid と世界銀行によって支援されるこのセンターは、現地の気候
に関する革新者や企業への資金調達、指導および提言などのサービスを提供する。このセ
ンターは、初年度に 20 の持続可能な気候技術ベンチャーへの支援と、今後 10 年間にわた
り 12,000 人の直接または間接的雇用を生み出す 200 以上の企業の支援が期待されている。
Grundfos、リン回収試験プロジェクトを支援
12 月 6 日、デンマーク水道局の Aarhus Water および他の機関(Herning Water、Horsens
Water、Danish Knowledge Centre for Agriculture、)との協力作業において、Grundfos
社はデンマーク第 2 の都市である Aarhus の Åby 処理場でのプロジェクトに参画している。
このプロジェクトには廃水からリンを抽出する技術の試験が含まれており、2013 年 11 月
末にデンマークの Ida Auken 環境大臣が出席した式典で開所した施設で行われる。自然界
に存在するリンは枯渇する危険のある限られた資源である。したがって、リンのリサイク
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情報報告 ウィーン
ルと採掘の新しい方法は世界的な関心を集めている分野である。
「リンの水環境への放出は
デンマークの課題だけでなく、世界的な課題でもある。そのため、それを解決する方法を
見つめることは大きな意義がある」と Grundfos 社は述べた。リンはまた、配管内に堆積物
を形成する悪い副作用を持ち、配管の閉塞を引き起こす。したがって、同時に商業的価値
のある貴重な資源もまた抽出しながら、リンの抽出は配管の閉塞を回避することを可能に
する。Grundfos 社はプロジェクトに対し、薬品注入用ポンプ、ブースターシステム、そし
て廃水処理場の制御システムのような高度な専門機器を提供している。
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