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報告書本文(PDF - 独立行政法人 中小企業基盤整備機構

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報告書本文(PDF - 独立行政法人 中小企業基盤整備機構
目
次
頁
はじめに
1
調査研究の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
1-1 調査研究の目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
1-1-1 調査研究の背景
1-1-1-1 デジタルアーカイブ化の意義
1-1-1-2 日本のクリエーションに合わせた独自のアーカイブ整備の必要性
1-1-1-3 既存システムの問題点
1-1-2 当調査研究の目的
1-2
調査研究の内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
1-2-1 調査研究の概要
1-2-2 調査テーマ
1-2-3 調査の構成
1-2-4 スケジュール
1-2-5 委員会
1-2-5-1 委員会の目的
1-2-5-2 委員会開催日時
1-2-5-3 委員会のテーマ
1-2-5-4 委員会の構成メンバー
2
テキスタイル国内既存アーカイブ保有機関の概況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9
2-1
「テキスタイルアーカイブ」ヒアリング調査結果要約 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9
2-1-1-1 企業の概況
2-1-1-2 ヒアリング先
2-1-1-3 設立目的
2-1-1-4 収蔵品
2-1-1-5 デジタル化について
2-1-1-6 課題
2-1-2-1 地場産業振興センター・公設試験場・繊維リソースセンターの概況
2-1-2-2 ヒアリング先
2-1-2-3 設立目的
2-1-2-4 収蔵品
2-1-2-5 デジタル化について
2-1-2-6 課題
2-1-3-1 教育機関・美術館・博物館の概況産地企業の概況
2-1-3-2
ヒアリング先
2-1-3-3 設立目的
2-1-3-4 収蔵品
2-1-3-5 デジタル化について
2-1-3-6 課題
2-2
「テキスタイルアーカイブ」アンケート調査結果要約 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22
2-2-1 アンケート調査の概要
2-2-1-1 アンケート調査の目的
2-2-1-2 アンケート調査の種類
2-2-1-3 アンケート調査の対象・発送数・回収数
2-2-1-4 アンケート調査の方法とスケジュール
2-2-1-5 アンケート調査結果の概要
2-2-1-5-1 アンケート 1
企業対象
2-2-1-5-2 アンケート 2
公設試・地場産センター・産地組合・産地支援機関対象
2-2-1-5-3 アンケート 3
専門学校・博物館・美術館等対象
2-2-2
アンケート結果詳細
2-2-2-1 アンケート 1
企業の調査結果
2-2-2-2
アンケート 2
公設試・地場産センター・産地組合・産地支援機関の調査結果
2-2-2-3
アンケート 3
専門学校・博物館・美術館等の調査結果
3
テキスタイル・デジタル構築に向けた課題と要素 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 79
3-1
総論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 79
3-1-1
対象範囲
3-1-2
デジタルアーカイブの実現に向けた課題と対応
3-1-3
運営体制のあり方
4
テキスタイル・デジタルアーカイブの構想 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 85
4-1
総論 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 85
4-1-1 デジタルアーカイブ整備の目的と意義
4-1-2 デジタルアーカイブ事業の前提
4-1-3 デジタル・テキスタイルアーカイブシステムの活用モデル
4-1-3-1 テキスタイルアーカイブ整備の方法
4-1-3-2 中核機関のあり方と採算性
4-1-3-3 デジタルアーカイブ事業に必要な機能
4-1-3-4 初期段階の活用モデル
4-1-3-5 発展段階の活用モデル
4-1-3-6
DTA システムから B2B システムへの発展
4-1-4 具体的な運営体制の構想
4-1-4-1 既存機関が単独で運営するのは困難
4-1-4-2
DTA を構成する機関によるコンソーシアム運営
4-1-4-3 繊維ファッションデジタルアーカイブ・コンソーシアム構想(案)
4-1-5 本格運用までのロードマップ
4-1-5-1
2009 年度以降のスケジュール
4-1-5-2
2009 年度以降の取り組みのあり方
5
テキスタイル・デジタルアーカイブの仕様書 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 103
5-1
デジタル・テキスタイルアーカイブシステムに求められる条件 ・・・・・・・・・ 103
5-1-1 デジタルアーカイブのシステム要件
5-1-1-2 連携するデータとその連携手法
5-1-1-3 検索機能の進化と強化拡充
5-1-1-4 ビジネスモデルの省察
5-1-1-5 期待される効果
5-2
システムの仕様要件 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 108
5-2-1 デジタル・テキスタイルアーカイブのシステム仕様要件
5-2-1-1 稼働環境
5-2-1-2 機能
5-2-1-3 まとめ
5-2-2 自立運営のための B2B を含むシステム仕様要件
5-2-2-1 運用に係る有効で拡大普及に必須な機能
5-2-2-2 追加して普及に有効な機能
5-2-2-3 副次的な応用として
[添付資料]
ヒアリング個表(5 機関 14 社)
アンケート調査表
アンケート集計表(354 機関 1,236 社)
は
じ
め
に
我が国のテキスタイル産業の現状は、ハイテク技術に支えられた高機能素材や匠の技で
作られた感性価値の高いテキスタイルの開発力が世界のファッション界で注目されている
等、新しい可能性を秘めている一方で、テキスタイル産地の生産量等はこの 10 年間で半減
しています。
こうした中で、繊維ファッション産業全体の活力を取り戻し、ファッション・クリエー
ションの水準でも世界に伍していくためには、繊維産業においては、業界全体が相互連携
を図りつつ、効果的に人材の確保・育成を図ることが求められており、そのための環境基
盤整備が必要不可欠となっています。この一環として、蓄積された生地見本等の情報整備
は、新たな連携やクリエーションへの着想を与える源泉となるものです。
我が国の繊維ファッション産業が長い歴史の中で産み出した優れた製品、デザイン・意
匠、巧みの技は、過去の貴重な資産であると同時に、我が国の繊維ファッション産業を未
来に向けて発展させていくためのリソースとなります。
しかしこれらの見本は全国産地・企業・教育機関・博物館等に分散しており、統括的に
把握することは困難な状況にあります。また、特にここ 10 年間で急激に進む産地企業の
転廃業により生地見本や試作品の散逸が進んでいます。
そこで、テキスタイルに関して、これら過去の優れたデザインや匠の技、優れた素材や
商品に関するデータを体系的に収集・再整理し、さらにデジタル化してシステム連携させ
ることで、繊維ファッション産業に関わる人、目指す人の誰もが全国どこからでも一括検
索できるようなテキスタイル・デジタルアーカイブの整備を目指すこととなりました。
テキスタイルアーカイブの整備・充実・強化は、アパレルのクリエーションを含めた日
本の繊維産業全体のクリエーション水準を高めるとともに、繊維ファッション業界の次世
代を担う人材育成の基盤づくりや技術継承に供するツールとなりえます。
このような背景のもと、本調査事業においては、ヒアリング調査とアンケート調査を実
施し、我が国のテキスタイルアーカイブの現状とニーズ、テキスタイルのデジタルアーカ
イブ化に係る問題点や課題を把握した上で、対象範囲、 作成方法、中核機関のあり方・運
営モデル含めた事業構想を起案するとともに、運営システム構築に必要となる仕様書の作
成を行いました。
なお、事業構想の立案にあたっては、「テキスタイル・デジタルアーカイブ委員会」を組
織して指導を仰ぎました。
最後に、本調査にご協力賜りましたの関係各機関の皆様、並びに本書作成にご尽力賜り
ました委員の方々に深甚な敬意を表します。
平成21年3月
独立行政法人中小企業基盤整備機構
経営基盤支援部
繊維産業支援室
1
調査研究の概要
1−1 調査研究の目的
1−1−1 当調査研究の背景
1−1−1−1 デジタルアーカイブ化の意義
①繊維ファション産業においては、民族衣裳、コレクションで発表された作品、テキス
タイル資料等を体系的にデジタルアーカイブ化し、保存・編集・加工することを含め
て様々な活用が期待されている。
②平成 19 年度の繊維アーカイブ調査委員会による報告書「日本国内のアーカイブの現状
と課題及び展望についての実態分析と提言」から、各機関(企業含む)が各々保有す
る現物アーカイブの集約は、物理的にも経費的にも困難であり非現実的であるので、
各地域の各機関が保有するアーカイブのインデックスが一括検索できるような仕組み
の整備が有効であると提言された。
特にテキスタイルについては、産地企業の転廃業もあって散逸が進んでいること、
現存していても企業内や機関内で過去の資料が散逸したり整理されないまま放置され
ていることが多いこと等から、まずテキスタイルのデジタルアーカイブ化に本年度取
り組む。
また、テキスタイルアーカイブの整備・充実は、アパレルのクリエーション水準を
高めるためにも欠かせないことである。
③デジタルアーカイブではアクセスのログ解析等が可能であり、どんな人がどんなキー
ワードでどれくらい検索したのか、あるいはどの素材へのアクセスが多かったのかが
時系列的やカテゴリー別に分かる。アクセスランキングや検索ランキングを分析する
ことにより、現在及び将来のトレンド予測の材料を入手することは可能となる。
④各拠点を結ぶデジタルアーカイブのネットワーク化は、単に蓄積したテキスタイルア
ーカイブ情報の検索システムだけでなく、様々な情報・コンテンツを伝達するツール
になり得る。
『アンケート調査』結果(参照p30)においても、テキスタイルの商品企
画においては、「顧客情報」「小売店の売れ筋情報」「海外のコレクション情報」が重要
であるとする回答が多かったが、これらの情報をデジタルアーカイブ・ネットワーク
システムにコンテンツとして掲載・発信することは可能である。過去のテキスタイル
アーカイブを参照するだけでなく、企業情報、技術情報、人材情報、素材メーカー、
テキスタイルメーカーによる新製品のPR発信、海外ユーザーへのPR発信(輸出事
業の取り組み)、「ワークショップ事業」関連の案内や結果レポートの提供等デジタル
アーカイブ・ネッワークシステムを通じて幅広く活用することが可能となる。
1
1−1−1−2 日本のクリエーションに合わせた独自のアーカイブ整備の必要性
日本の繊維アパレルビジネスは、ファッション変化の流れがますます早くなっている
こともあって、トレンド追求、期近の売れ筋追求が極限まで進み、50 年前、100 年前の
オールドサンプルに遡って生地企画を立案することは、一部のクリエイティブなデザイ
ナーを除いて殆どない。むしろ実質的なビジネスにおいては、過去1∼3 年前の売れ筋サ
ンプルや最新のトレンド素材を重視している。
また、最近のアパレルは素材を自ら仕入れ・加工するのではなく、生地の企画・仕入
れ・生産を商社に委託して製品で仕入れる形態に変わっているため、日本の一般的なア
パレルにおける二次製品(コスチューム)企画の中で、素材段階からの独自性の追求や
差別化といった観点が薄れて久しい。今後日本のアパレル産業が国際競争力を持った独
自性の強い商品を作って生き残っていくためには、過去の優れたデザイン、匠の技、優
れた素材に立ち返ってクリエーションを組み立てることが不可欠となる。とはいっても、
現状日本のアパレルの生地企画の主たるリソースは、遡るとしても精々3∼5 年前のサン
プルである。従って、活用度を高めるという観点に立てば、今回の優先対象は、
「オール
ドコレクション」に加えて、数シーズン前のものも含めたビジネス・ラインのアーカイ
ブ化は日本では欠かせない。
1−1−1−3 既存の業界システムの問題点
これまでのシステム構築は、各業種、各産地、各企業で既に使われているシステムと
は別に、ERP*のように一つの統一的なシステムモデルを新たに構築し、それを各々
の産地や企業にあてはめようとしていた。しかし、業態・業種間、産地間、企業間で用
語、数値基準、業務フローが統一されてないこともあって、各々の産地や企業の現場に
既存のシステムと新たな統一的システムに別々に二重にインプットすることが強いられ、
現場の作業負担が倍加することとなっていた。こうした仕組みでは補助金が切れた段階
で統一的システムへのインプット作業は滞ることになり、やがて統一的なシステムモデ
ルは使われなくなる。小規模で簡単な実証実験を行うのが精一杯であり、実用に耐える
企業間システムを構築することはできなかった。
そもそも各産地・企業が使っている既存のシステムを無視した、別個の統一的なシス
テムモデル構想(統一マスター・統一仕様・統一プログラム)には無理がある。例えば、
絹の産地、綿の産地、毛の産地、合繊の産地毎に、糸の太さの表示さえ違うごとく、業
態・業種間、産地間、企業間で用語、数値の基準、業務フローが統一されてないこの業
2
界で、業界全体をカバーする共通コードの決定、仕様フォームの標準化等、システム構
築の前段階の準備だけでも、数年間の時間と何 10 回もの会議、ヒアリング、調査を要
する。実態は、小規模で簡単な実証実験を繰り返すだけであり、最終的なシステム構築
には至らなかった。
上記のような状況をふまえ、大型サーバーを構築するERPシステムのように全ての
要件を満たす統一したソフトウエア、統一したサーバーでシステムを稼動させる集中管
理型ではなく、各産地・美術館・教育機関・企業等の既存のシステム・分類体系を活か
して、アーカイブを所有する各機関を拠点にインターネット回線で常時接続したPCを
用意し、グリッドコンピューティングのような分散処理を基本にしたシステム構築を行
うことで、アーカイブ所有各機関にもメリットの十分ある実用性の高いシステム構築を
はかるべきである。
ERP*:企業の経営資源を有効に活用し経営を効率化するために、基幹業務を部門ごとではなく統合
的に管理するためのソフトウェアパッケージ。各部門ごとに別々に構築されていたシステム
を統合し、相互に参照・利用できるようにしようというデータの一元管理を目指す考え方
(enterprise resource planning の略)
1−1−2 当調査研究の目的
①繊維産業においては、業界全体が相互連携を図りつつ、効果的に人材の確保・育成を図
ることが求められており、そのための環境基盤整備が必要不可欠となっている。この一
環として、繊維企業情報や蓄積された生地見本等の情報整備は、新たな連携やクリエー
ションへの着想を与える源泉となり得ることを鑑み、平成 19 年度の繊維アーカイブ調
査委員会による報告書「日本国内のアーカイブの現状と課題及び展望についての実態分
析と提言」をふまえ、特にテキスタイルアーカイブの整備について、
「統合的なアーカ
イブとして中核機関を設け、全国のアーカイブをネットワーク化し、全国どこからでも
アーカイブ情報を検索できる仕組み作りが必要である」というテーマの下、「デジタル
化と検索性の向上」について、これを発展・実践することを目的として、「デジタルア
ーカイブ構築に係る調査事業」に取り組むこととする。
②繊維やファッションに係る技能者・技術者やデザイナーにとって、これまでの歴史の
中で蓄積されてきた膨大な生地見本や試作品等は、新しい製品を生み出すための着想
を与える源泉となり得るものである。しかしこれらの見本は全国産地・企業・教育機
関・博物館等に分散しており、一括して目にしたり手で触れることは困難な状況にあ
る。また、戦後の日本の繊維産業、特に洋装関係は、過去のストックの情報を整備し
3
情報ソースとして活用することより、主に欧州の流行や国内の売れ筋などのフロー情
報を拠り所として商品開発を進めてきた傾向が強いことや、開発ノウハウが組織で共
有されず個人に帰属しているケースが多いこともあって、過去の生地見本や試作品は
散逸していることが少なくない。あったとしても、個人単位で保有されていたりする
ので、一部の企業を除き各企業単位でみても、過去の生地見本や試作品を体系的に整
理管理しているところは少ないのが実情である。また特にここ 10 年間で急激に進む産
地企業の転廃業により生地見本や試作品の散逸が進んでいる。
③そこで、これまでに企画・創造・生産された優れた素材や商品に関するデータを体系的、
に収集・再整理し、これを検索できるようにすることにより、日本のテキスタイル産業
やアパレル産業が過去の優れたデザイン、匠の技、優れた素材に立ち返ってクリエーシ
ョンを組み立てることが可能となるような情報基盤ネットワーク構築を目指す。また、
そのことは日本の繊維ファッション企業が国際競争力を持った独自性の強い商品を作
って生き残るための一つの前提となる。そのために、パソコン等の標準的な機器を活用
して全国どこからでも簡単に検索・確認できる「デジタルアーカイブ」を構築する。つ
まり全国に分散している既存のテキスタイルアーカイブの一括検索を可能にするため
のITインフラを構築する。
④そのために、本調査において、テキスタイルのデジタルアーカイブに係わる活用側の
ニーズと受入先の意向、現状、問題点等を把握した上で、デジタルアーカイブの収集
方法、作成方法、テキスタイル・デジタルアーカイブを管理運営する中核機関の設置
と自立的運営の方法等を明らかにするとともに、システム構築の仕様書を作成するも
のとする。
⑤活用側のニーズ、受入先の意向、現状、問題点の把握等については、
「ヒアリング調査」、
「アンケート調査」を実施し、これらを核に把握・分析する。
⑥システム開発仕様書作成に関しては、これまでの業界内失敗例やその実現できなかっ
た要因等を分析し、必要な情報の内容とレベルが異なる業種、産地、企業のそれぞれ
の現場で実用的に使いやすく、また早い段階での自立に向けて採算性を考慮し、開発
費、運営費とも相対的にコストの低い独自のシステム構築を目指す。
1−2
調査研究の内容
1−2−1 調査研究の概要
日本の繊維ファッション産業におけるクリエーションの実態を踏まえ、テキスタイル
のデジタルアーカイブ整備にあたって、対象の範囲の設定、対象物の収集方法、デジタ
4
ルアーカイブ化の方策、アーカイブの運営モデル等、各々の調査項目・調査内容につい
て有識者で構成する委員会で検討・意見聴取を行い、決定された方針や枠組みに基づい
て、テキスタイルアーカイブの現状、デジタル化ニーズ等について調査を行った上で、
我が国業界が活用しやすいデジタルアーカイブの整備、検索システム、早期自立化を前
提とした運営モデル・体制等について、有識者委員会で審議し、報告書として取りまと
めた。
1−2−2 調査テーマ
①テキスタイルアーカイブの現状調査:
我が国のテキスタイルアーカイブの現状についてデジタル化の実態含めて調査を
行い、現状を把握した。
②テキスタイルのデジタルアーカイブ整備に係わるニーズ調査:
日本の繊維ファッションビジネスにおいて、どのようなテキスタイルアーカイブの
必要性があるのか、デジタルネットワーク化に関する問題意識等を、産地関係者、素
材メーカー、アパレル関係者、教育機関、博物館・美術館関係者中心に幅広い事業者
の意見を総合的に聴取把握し、利用価値の高いデジタルアーカイブ作成の基礎とした。
③デジタルアーカイブ整備上の問題点の究明:
デジタルアーカイブの現状とニーズを踏まえた上で、アーカイブのデジタル化がう
まくいっていない要因、また、デジタルアーカイブが存在しても活用度が低い場合の原
因について整理し、将来新たにデジタルアーカイブを整備・収集・公開する場合の問題
点について分析・整理を行った。
④今後のデジタルアーカイブ実現に向けての検討
上記の①から③までの分析と委員会の検討結果を踏まえ、何を優先的に整備すべき
か検討した上で、今後デジタルアーカイブを整備する上でどのような方法が有効か、
効率的で実現性の高い運営体制はどのようなものなのか、自立化に向けた運営モデル
とその事業構成はいかなるものか等の検討を行った。
その際の吟味ポイントは下記である。
[1] デジタルアーカイブの活用ニーズとアーカイブ保有者の意向の把握
[2] デジタルアーカイブの対象範囲
[3] デジタルアーカイブの収集方法・作成方法
[4]デジタルアーカイブの運営方法・運営モデル
[5]デジタルアーカイブの中核機関のあり方・自立化に向けた採算性等
[6] システム構築に必要となる仕様書の作成
5
1−2−3 調査の構成
調査ブロック
文献調査
調査対象
内外の各繊維アーカイブ機関資料、平成 19 年度報告書等
産地企業:14 社
ヒアリング調査
地場産センター・リソースセンター・公設試験場:4機関
教育機関:1 機関
企業:
(実効発送数)1236 社
アンケート調査
地場産センター・リソースセンター・公設試験場:同 204 機関
教育機関:150 機関
1−2−4 スケジュール
2008 年
8月
有識者委員会
19 年度調査報告書読み込み含む
〃インターネット検索等
ヒアリング調査企画・準備
(主対象:テキスタイル保有機関)
実施
〃
集計・分析
アンケート調査企画・準備
(受入先の問題点と活用側のニー
ズ)
〃
実施
〃
集計・分析
10 月
★
文献調査
〃
9月
システム構築に必要となる
仕様書作成
6
2009 年
11 月
12 月
★
1月
2月
★
提言検討・作成
報告書作成・執筆
印刷製本
納
品
★
1−2−5 委員会
1−2−5−1 委員会の目的:
「ヒアリング調査」結果並びに「アンケート調査」結果等をふまえて、テキスタ
イル・デジタルアーカイブの在り方の方向づけ、課題、自立化に向けた運営モデ
ル等を審議いただいた。
1−2−5−2 委員会の開催日時:
10 月 14 日(平成 20 年)、12 月 18 日(同)、2 月 6 日(平成 21 年)の計 3 回
1−2−5−3 委員会のテーマ:
第 1 回委員会(10 月 14 日)
:デジタルアーカイブ整備に係る論点整理等について
第2回委員会(12 月 18 日):デジタルアーカイブ事業の意義と構想等について
第3回委員会(2 月
6 日):デジタルアーカイブ事業の運営モデル等について
1−2−5−4 委員会の構成メンバー(敬称略)
:
テキスタイル・デジタルアーカイブ調査委員会
委員長
財団法人 京都服飾文化研究財団
委員
財団法人ファッション産業人材育成機構
財団法人桐生地域地場産業振興センター
独立行政法人中小企業基盤整備機構
クリエーション・ビジネスフォーラム
オフィスナガモリ
文化服装学院
マツオインターナショナル株式会社
有限会社ファッションリンクス
名簿(敬称略)
理事/キュレーター
深井
専務理事
事務局長
伊達 彰夫
生方 修一
支援コーディネーター
松田 正夫
永森 達昌
川合
直
松尾 憲久
福永 成明
代表
教務部部長
社長
代表取締役
7
晃子
クリエイティブディレクター
テキスタイルデザイナー
代表取締役
カジハラデザインスタジオ
ミナ ペルホネン
8
清水
梶原
皆川
早苗
加奈子
明
2
2-1
テキスタイル国内既存アーカイブ保有機関の概況
「テキスタイルアーカイブ」ヒアリング調査結果要約
2-1-1-1
企業の概況
産地のテキスタイルメーカーや染色加工メーカーのほとんどは、自社で生産した試織
サンプル、現物として量産された製品の控えとしてサンプルを収集している。テキスタ
イルの商品企画では、過去のサンプルを元に、トレンドに合わせたアレンジを加え、新
作を作り出すことが多い。
一部の企業は古いものから最新のサンプルまでを大量に保管しており、テキスタイル
アーカイブというに相応しいが、その多くはほとんど活用されないままに死蔵されてい
るに過ぎない。過去のサンプルといえども、テキスタイルメーカーにとっては、自社の
ノウハウが詰まったものであり、安易に公開できないというのが現状である。
北陸の「丸井織物株式会社」では、社内に「テキスタイルギャラリー」を設け、35000 点
の自社製品のハンガーサンプルを全て、デジタル DB 化し、分類保管している。
「テキス
タイルギャラリー」を設置してから、大手スポーツアパレルのデザイナー等が直接訪問
する機会が増えており、有効に機能している。
尾州の「長大株式会社」では、昭和20年代からのサンプルをハンガーサンプル、ス
ワッチサンプルとして保管しているが、実際に活用することは少なく、保管場所に苦慮
している。いわなか株式会社も3年前までのハンガーサンプルは常時展示され、古くな
ったものから倉庫に保管している。創業当時のもの、参考のために海外から購入したサ
ンプル等はスクラップブックに保管している。年に2∼3回は古い資料を見ることもあ
るが、アパレルデザイナーが産地を訪問する機会も減っており、活用される機会は少な
い。アパレルデザイナーもますます新しいもの、実際に市場で動いている商品に着目す
る傾向が強い。
桐生の「小林当織物株式会社」では、元社員寮だった建物を改築し、
「テキスタイル資
料館」として公開している。正確な点数は不明だが、40,000∼50,000 点のコレクション
が保管されている。年間の利用者は約100組とのことで学生の見学も受け入れている。
2-1-1-2 ヒアリング先
◆北陸産地
9
熊沢商事株式会社
所在地
910-0023 福井市順化 1-9-7
連絡先
電話 0776-23-1872 / FAX0776-27-0343
面談者
取締役社長 熊澤喜八郎
合繊第三部部長 片矢直樹
日時
2008 年 10 月 1 日 13 時∼14 時 30 分
場所
熊沢商事株式会社
ケイテー株式会社
所在地
911-8510 勝山市昭和町 1-10-18
連絡先
電話 0779-88-1151 / FAX0779-87-0180
面談者
代表取締役社長 荒井由泰
日時
2008 年 10 月 1 日 15 時∼17 時
場所
東レ株式会社北陸支店
丸井織物株式会社
所在地
929-1801 石川県鹿島郡中能登町久乃木井部 15
連絡先
電話 0767-76-1337 / FAX0767-76-0304
面談者
代表取締役社長 宮本 徹
常務取締役営業開発部門長 古澤久良
商品開発室室長 石訳弘一
日時
2008 年 10 月 2 日 10 時∼12 時
場所
丸井織物株式会社テキスタイルギャラリー
第一織物株式会社
所在地
910-0345 福井県坂井市丸岡町四郎丸 4-100
連絡先
電話 0776-67-4370 / FAX0776-67-4341
面談者
代表取締役社長 吉岡隆治
日時
2008 年 10 月 3 日 9 時 30 分∼11 時
場所
第一織物株式会社
株式会社カ・インパナ
所在地
929-0124 石川県能美市浜町ヌ 168-8
10
連絡先
電話 0761-55-5030 / FAX0761-55-5280
面談者
取締役企画開発部長 宮元むつ子
日時
2008 年 10 月 3 日 13 時 30 分∼16 時
場所
株式会社カ・インパナ
◆尾州産地
株式会社ソトー
所在地
491-0903 愛知県一宮市篭屋 5-1-1
連絡先
電話 0586-45-8392 / FAX0586-46-6240
面談者
常務取締役一宮事業部長・営業管理部長 遠藤美喜雄
テキスタイル事業部長・開発部長 上田康彦
日時
2008 年 11 月 4 日 13 時∼14 時
場所
株式会社ソトー本社
艶金興業株式会社
所在地
494-0007 愛知県一宮市小信中島字南九反 11−1
連絡先
電話 0586-62-5211 / FAX 0586-62-3272
面談者
代表取締役社長 墨大輔
日時
2008 年 11 月 4 日 14 時 30 分∼15 時 30 分
場所
艶金興業株式会社本社
長大株式会社
所在地
491-8608 一宮市栄1丁目 10 番 17 号
連絡先
電話 0586-72-0181 / FAX 0586-72-0429
面談者
代表取締役社長 長尾大八郎
日時
2008 年 11 月 4 日 16 時∼17 時 30 分
場所
長大株式会社本社
いわなか株式会社
所在地
503-0234 岐阜県安八郡輪之内町里 100 番地
連絡先
電話 0584-68-1050 / FAX 0584-68-1080
面談者
生産部長兼工場長 岩田哲治
11
日時
2008 年 11 月 5 日 10 時∼11 時 30 分
場所
いわなか株式会社本社
中外国島株式会社
所在地
491-0931 愛知県一宮市大和町馬引字焼野 48
連絡先
電話 0586-45-0183 / FAX 0586-46-3229
面談者
取締役 伊東核太郎
日時
2008 年 11 月 5 日 15 時 30 分∼17 時
場所
中外国島株式会社本社
◆桐生産地
株式会社ミタショー
所在地
376-0011 群馬県桐生市相生町 1-273-3
連絡先
電話 0277-54-1731 / FAX 0277-54-1400
面談者
常務取締役 三田修武
日時
2008 年 11 月 13 日 13 時∼14 時
場所
株式会社ミタショー
小林当織物株式会社
所在地
376-0035 群馬県桐生市仲町 1-4-29
連絡先
電話 0277-44-7135 / FAX 0277-44-7139
面談者
取締役営業部長 村岡謙一
日時
2008 年 11 月 14 日 13 時∼15 時
場所
小林当織物株式会社
泉織物有限会社
所在地
376-0034 群馬県桐生市東 5-5-16
連絡先
電話 0277-45-2449 / FAX 0277-45-2450
面談者
代表取締役社長 泉太郎
日時
2008 年 11 月 13 日 14 時 30 分∼16 時
場所
泉織物有限会社
12
佐啓産業株式会社
所在地
376-0052 群馬県桐生市天神町 2-9-7
連絡先
電話 0277-22-8811 / FAX 0277-22-8877
面談者
代表取締役社長 佐藤好雄
日時
2008 年 11 月 14 日 10 時∼11 時 30 分
場所
佐啓産業株式会社
2-1-1-3 設立目的
多くのテキスタイルメーカーがテキスタイル見本を収集しているのは、二つの理由が
ある。第一は、自社の企画立案の参考資料として収集しているというもの。したがって、
ハンガーサンプルと設計書や指図書がリンクしていることが重要になっている。第二は、
得意先のデザイナーやMDの企画立案に役立ててもらい、そのことを通じて、自社への
発注を期待するというものである。したがって、見せる相手は得意先だけであり、それ
も会社を訪問した人にだけ見せるというのが一般的である。
2-1-1-4 収蔵品
企業が収蔵しているテキスタイル見本は大きく三つに分類できる。
第一は「商品」である。現在進行形のビジネス対象となる見本であり、ハンガーサンプ
ルやスワッチサンプルという形で営業担当者がアパレル企業等に持参しプレゼンテーシ
ョンを行う。
第二は「資料」である。1∼3 年程度前に作られたサンプルあるいは現物製品のサンプ
ルである。これらは、新しい企画のたたき台として活用される。色、糸使い、組織、密
度、ウェイト等を変えて新しい製品を作るのである。
第三は「コレクション」である。海外から購入したオールドコレクションや戦前の資
料など。多くの場合、機械や糸が現在とは異なるため、全く同じものを復元することは
難しい。
しかし、トレンドを追いかけるアパレルやデザイナーが多い中で、他と差別化し、個
性的なモノ作りを目指す場合には、古いコレクションを参考にすることも多い。
歴史が長く、保管サンプルの数が多い会社はその保管場所、保管方法にも苦慮している。
しかし、過去のサンプルは自社のノウハウそのものであり、簡単に廃棄したり、公開す
ることができないとのことである。
13
立派なアーカイブを社内で整備しても、単に保管しているだけでは何もならない。得
意先、デザイナーに見てもらうことが重要だが、どのように情報を発信したらいいのか、
について明快な答えを見出せないでいる企業が多い。
2-1-1-5 デジタル化について
テキスタイルアーカイブのデジタル化については、企業間格差がある。社内の情報シ
ステム整備が進んでいる会社は、その延長線でデジタル化が進んでいるが、社内の情報
システム整備が遅れている会社はデジタル化も進んでいない。補助金等でデジタル化を
進めていた企業の例も見られたが、入力が完了する前に途中で挫折していたケースが多
かった。その背景には、生地商談において、デジタル化データよりも手で触れる現物が
大切であるという考えが根強いこともある。
今回は、和装メーカー(機屋)のヒアリングも行った。着尺は、反物そのものが最終
製品であり、服地のような中間素材ではない。また、着尺は試作した製品も一品ものと
して販売されることが多い。そのため、メーカーに過去の資料はほとんど残っていない。
また、既存のきもの流通は崩壊しつつあり、メーカーが消費者に直接販売する機会も
増えている。消費者にとっては、全国の産地のきものを自由に閲覧・検索するというニ
ーズは高いが、その機会は与えられていない。教育的な観点あるいは文化財という観点
から見れば、伝統工芸の分野こそ、デジタルアーカイブネットワークの整備が必要であ
ろう。
2-1-1-6 課題
企業に収蔵されているテキスタイルサンプルは、ビジネスを目的としているため、原
則公開されていない。一方、ファッション系教育機関には、基本的な素材サンプルはあ
っても、ビジネスやクリエーションの最前線にある最新の素材に触れる機会は少ない。
教材なのだから基本的な素材だけでいいという考え方もあるが、学生にとって最新の素
材に触れたいという希望は強い。企業は、教育機関だけに限定すればデジタルアーカイ
ブの閲覧を認めたり、現物サンプルを一定期間のみ貸し出すことは可能とする向きも少
なくない。ただ、テキスタイル見本を単に見るだけで学生の関心を深めることは難しい。
しかし、生産者が企画の経緯・背景や外見では分からない生地特性等の解説を加えれば、
業界初心者も学生も興味を持つはずである。また業界のベテランに向けても、物理的に
アーカイブを整備しただけでは十分活用されない。その中のコンテンツを常に編集し、
検索しやすいようなタグをつけるというような地道な作業が併せて必要である。問題は、
14
誰がそうした作業を行うのかということであるが、産地内で人的余裕が十分なところは
少なく、中核機関に専門的な人材が必要になると予想できる。
2-1-2-1 地場産業振興センター・公設試験場・繊維リソースセンターの概況
「繊維リソースいしかわ」は、合繊産地北陸3県を統括する産地支援機関として機能
しており、ヨーロッパから購入したオールドコレクション、企画支援のために購入した
海外サンプル、石川産地展の出品商品のハンガーサンプルを保管している。かつては、
産地企業が海外サンプルを分析、再現するニーズがあったが、現在は過去のサンプルを
再現するよりも最新トレンドを行かしたモノ作りが主流になったために、アーカイブの
活用は少なくなっている。
また、当初はヨーロッパで購入したサンプルをデジタル化し、インターネットで閲覧
できるようにしていたが、現在は利用者が少ないためにデジタル化の作業は行われてい
ない。
石川産地展のサンプルは、石川県のテキスタイルメーカーのインデックスのような機
能を果たしており、ここでハンガーサンプルを確認して、各企業を訪問することが可能
である。
「桐生地域地場産業振興センター」は、アジア、南米、アフリカを中心とした民族衣
装のコレクション、整理倒産した産地企業の資料を引き継いだ産地資料、桐生テキスタ
イルプロモーションショー等に出品したテキスタイル製品のサンプルが保管されている。
民族衣装は当初からデジタル化及びインターネットでの公開を目指し、独自サーバーを
立ち上げてインターネットで公開していたが、サーバーの老朽化や予算の削減等により、
現在は館内のパソコンで閲覧できる機能に限定している。
「一宮地場産業ファッションデザインセンター」も、かつてはヨーロッパでサンプル
を購入し、インターネットで公開していたが、利用者が少ないために現在は中止されて
いる。現在は、
「ジョイント尾州」という展示会を国内外で開催しており、ネリーロディ
のトレンドセミナー、企画ディレクションを受けており、それは産地各企業の開発に寄
与しているようだ。
「岐阜県毛織工業協同組合マテリアルセンター」は、今年オープンした新しい施設で
あり、ジャパンクリエーションのインデックスコーナー、トレンドコーナーの展示サン
プルを中心に尾州コレクション、ウールマークの展示会出展商品のサンプル等を約
70,000 点を収蔵・展示している。産地の紹介というより、日本のテキスタイルの全貌を
見ることができるという意味で、価値あるコレクションとなっている。現状ではデジタ
15
ル化は行っていない。
いずれの機関ともに、過去には産地企業の企画支援のために海外サンプル等の収集を
行い、デジタル化とインターネット公開の試みも行われたが、いずれも利用者が少なか
ったために、予算が削減された時点で中止されている。
現在は、過去のサンプルよりも最新トレンド情報が重視されており、過去の資料を活
用するためにも、トレンド情報等との関係性を解説するなど、専門家の役割が重要にな
っている。しかし、各地に専門的な知識を持つ人材を確保するのは困難である。
逆に言えば、少数の専門家が集中的に全国の支援機関のアーカイブを確認し、編集・
加工するためにはデジタル化とネットワーク化は不可欠である。全国のアーカイブを活
用するには、デジタルネットワーク化だけでなく、その活用方法のメニューづくりやコ
ンテンツを編集・加工して使いやすくする人材が不可欠であり、それらを総合的に解決
することが求められている。
2-1-2-2
ヒアリング先
繊維リソースいしかわ
所在地
920-8203 石川県金沢市鞍月 2-20
連絡先
電話 076-268-8115 / FAX076-268-8455
面談者
参事 下倉正光
日時
2008 年 9 月 2 日 14 時∼16 時
場所
繊維リソースいしかわ
岐阜県毛織工業協同組合マテリアルセンター
所在地
501-6235 岐阜県羽島市竹鼻町蜂尻 448
連絡先
電話 058-391-8511 / FAX 058-391-8512
面談者
事務局長 山田幸士
日時
2008 年 11 月 5 日 11 時 45 分∼12 時 30 分
場所
岐阜兼毛織工業協同組合マテリアルセンター
財団法人一宮地場産業ファッションデザインセンター
所在地
491-0931 愛知県一宮市大和町馬引字南正亀4−1
連絡先
電話 0586-46-1361 / FAX 0586-44-7455
面談者
事務局長 柴田正康
日時
2008 年 11 月 5 日 13 時 30 分∼15 時
16
場所
一宮 FDC 内
財団法人桐生地域地場産業振興センター
所在地
376-0024 群馬県桐生市織姫町 2-5
連絡先
電話 0277-45-1011 / FAX 0277-46-1014
面談者
事務局長 生方修一
日時
2008 年 11 月 13 日 10 時 30 分∼12 時
場所
桐生地域地場産業振興センター
2-1-2-3 設立目的
産地支援機関がアーカイブを収集している目的は、以下の三つに集約される。
第一は、産地企業の企画開発の資料として活用するための収集である。
「繊維リソースい
しかわ」、「一宮地場産業ファッションデザインセンター」では、設立当初、ヨーロッパ
でサンプルを購入し、デジタル化した上で公開していたが、現在では過去の資料をその
まま再現してもビジネスにはならないため、サンプルの購入は中止している。
「岐阜県毛織工業協同組合マテリアルセンター」では、ジャパンクリエーションのイン
デックス、トレンドコーナーのサンプル、ウールマークの展示会のサンプル、尾州コレ
クションのサンプル等を整理収集しており、産地企業の企画支援、人材育成を目指して
いる。
第二は、産地企業の整理倒産等により、価値ある資料が散逸するのを防ぐための収集
である。
「桐生地域地場産業振興センター」では、整理された産地企業の資料を収集して
いる。
「岐阜県毛織工業協同組合マテリアルセンター」のジャパンクリエーションの資料
も引き取り手がないまま放置されていたものを引き取ったという経緯があり、ある意味
で貴重な資料の散逸を防ぐためとも言える。
第三は、博物館や美術館のように、文化的資産の収集を目的とするものである。
「桐生
地域地場産業振興センター」には、民族衣裳のコレクションがあり、海外のキュレータ
ーが来館することも多い。
2-1-2-4 収蔵品
「繊維リソースいしかわ」は、ヨーロッパで購入したオールドコレクションを所有し
ている。スクラップブックに貼り付けられているので、各ページを写真に撮り、まず写
真を確認してから実際のサンプルを見せるようにしている。
17
「桐生地域地場産業振興センター」は、アジア、南米、アフリカを中心にした民族衣
装を所有している。ここではデジタル化したデータベースがあり、館内のパソコンで検
索することが可能になっている。以前は、独自のサーバーを立て、インターネットで公
開していたが、サーバーの老朽化と予算確保ができないことから、現在は中止している。
その他、展示会に出展したテキスタイルサンプルの多くは、ハンガーサンプルか、台
紙に貼り付けたスワッチサンプルの形で保管されている。
2-1-2-5 デジタル化について
テキスタイルアーカイブを所有する産地支援機関の多くは、過去にデジタル化を進め
た経験を持っている。しかし、当時の技術レベルは低くコストが高かったこと、現在の
ようにインターネットが普及していなかったことから、利用者が少ないままにデジタル
化が中止された事例が多い。
また、テキスタイルは平面的な画像だけでは分からない部分も多く、実物見本が優先
される。実物サンプルを検索するためにデジタル化がなされたものの、利用者が少なく、
結局、実物サンプルだけを保管している例が多い。
現在は、インターネットも普及し、ハード、ソフトともに以前より価格が下がってい
る。また、インターネットでの B2B ビジネスも普及しており、産地企業の支援となる具
体的な活かし方等が見い出せれば、再度取り組むことも考えられる。
2-1-2-6 課題
産地企業の企画支援という意味では、
「一宮地場産業ファッションデザインセンター」、
「桐生地域地場産業振興センター」ともに、テキスタイルトレンドセミナーを実施して
いる。過去のテキスタイルアーカイブの価値を否定するものではないが、産地企業はビ
ジネス面で最新のトレンド情報を優先している。
また、アーカイブを活用を促すためには、アーカイブの編集・加工、最新トレンド情
報との関連づけの分析提示、アーカイブを活用した人材育成・教育プログラムの開発等
を担う専門家の存在が欠かせない。
また、常に新しいアーカイブの収集・分類等を行い、ビジネスとクリエーションの最
前線で実際に役立つアーカイブとしての質量を維持充実させていくためには専門家が必
要である。
過去のテキスタイルアーカイブ事業では、そのアーカイブ活用の目的、そのための方
法が曖昧であり、資料を収集したものの十分に活用されなかったという問題がある。テ
18
キスタイルアーカイブを十分に活用するには、産地企業のビジネス実態をふまえた上で、
最新のトレンド情報等と連動した活用手法が求められる。
2-1-3-1 教育機関・美術館・博物館の概況産地企業の概況
教育機関がテキスタイルアーカイブを所有管理している例は多くない。その中におい
て、「文化学園ファッションリソースセンター」は特筆すべき事例である。以下に文化学
園の事例を紹介する。
「文化学園ファッションリソースセンター」は、文化女子大学と文化服装学院の付属
機関として 1999 年 7 月に開設され、約 19,000 点の生地サンプルを系統的に整理・保管
するテキスタイル資料室のほかに、パリコレクション等のファッションを中心とした映
像資料を保有する映像資料室、長年にわたりファッション服飾関連実物資料を蓄積して
きたコスチューム資料室で構成されている。
文化学園の教員や学生は自由に閲覧が可能だが、一般にも“文化学園ファッションリ
ソースクラブ”という有料会員サービスを提供している。しかし、現在のところ、法人、
個人ともに数件が登録しているで、今後の充実を目指している。
文化学園には服飾博物館もあり、50 年以上経過し歴史的、文化的な価値を有すると判
断されたものは、博物館に移管している。
テキスタイル資料室は、学生の教育を目的としており、使える資料室を目指しており、
約 9,500 点のスワッチサンプルはスペックが揃っており、デジタル検索が可能で、連動
した整理棚から検索したスワッチサンプルが抜き出せるようになっている(病院のカル
テ整理棚と同様の仕組み)。生地名称だけしか分からない際に、実物を確認するための辞
書的な使い方をされることが多い。
素材メーカー、産地企業等から提供されたハンガーサンプルは約 9,200 点保管してい
る。そのうち、三分の二はデジタル化が進んでいる。こちらのサンプルは、一定期間を
経過し、重複が確認されると、カット可能サンプルとされ、学生が自由にカットし活用
することができる。デザインコンテストの応募、企画マップの資料等に活用されている。
資料室の職員が学生に適切なアドバイスを行ったことで入賞者が増えているそうで、学
生の間では「リソースセンターの素材を添付すると入賞の確率が高くなる」という評価
を得ているとのこと。
オールドコレクションの売り込みも来るが、高額であるため、購入はしていない。オ
ールドコレクションにデジタルアーカイブが添付されていれば、利用価値は高まると判
断しているが、そのような事例はない。
19
現状、4人の常駐スタッフがおり、企画展の企画やアーカイブの運営管理を行ってい
る。教育機関の付属施設だから可能なのであって、リソースセンターだけで自立した営
業を行うのは困難である。
2-1-3-2 ヒアリング先
所在地 151-8521 東京都渋谷区代々木 3-22-1
連絡先 電話 00-3299-2187
面談者 文化学園ファッションリソースセンター長 閏間正雄
日時
2008 年 12 月 5 日 15 時∼16 時
場所
文化学園ファッションリソースセンター・テキスタイル資料室
2-1-3-3 設立目的
テキスタイル教育には、現物の素材を見て触って使うことが重要であり、生きたテキ
スタイル教材の整備を目的にしている。
芸術的、文化的資産の保存という意味では、文化学園服飾博物館があり、ファッショ
ンリソースセンターに保管された作品が50年を経過した段階で価値ある作品を博物館
に移管している。
ファッションリソースセンターでは、保存よりも活用に主眼が置かれ、担当者がハン
ガーサンプルの資料的価値を判断し、順次カット可能のサンプルとして学生に活用させ
ている。
スワッチのデータベース化は、名前だけでは分からないテキスタイル見本を実際に見
て触れ、確認することが可能であり、基本的なテキスタイル教育に有効である。
2-1-3-4 収蔵品
スペック(設計書に必要な組織図、撚糸、糸密度等のデータ)が判明しているものは、
スワッチ検索システムに入れている。当初は、全てスペック記入を提供者に要求したが、
生地サンプル提供側から必ずしも賛同を得られなかった。
そこで、スペックが完備していない資料については、生きた教材としてサンプルカッ
ト用に使うという方針である。
収蔵方法は、スワッチは専用棚に保管。ハンガーサンプルは資料室内に収蔵している。
スペースの関係から全て保存するのではなく、順次カット用に使っている。
20
収蔵品の収集・管理、企画展の企画運営等は4人のスタッフが行っている。
収蔵品については、学校関係者だけでなく、一般にも会員性有料サービスとして展開
している。
“文化学園ファッションリソースクラブ”ということで、個人会員は年間5千
円、賛助会員(法人)は年間10万円を設定している。
2-1-3-5 デジタル化について
文化学園の場合、既にデジタル化を進めている。更に、来年度から「服飾文化研究拠
点」ということで、文部科学省の支援を受け、資料のWEB公開準備を進める予定であ
る。
現段階では、直接、素材メーカーや産地企業とデジタルネットワークを構築して、ダ
イレクトに日本全国のアーカイブを閲覧するという発想はない。あくまで、自らが所有
するアーカイブをデジタル化することにとどまっている。
仮に、日本全国産地のテキスタイルアーカイブと教育機関がデジタルネットワークで
結ばれ、自由に検索、活用ができるということになれば、産学連携活動等が更に充実す
ることが見込める。
2-1-3-6 課題
現在の仕組みでは、所有しているテキスタイルアーカイブには、素材資料としての価
値しかない。しかし、デジタルネットワーク化により、テキスタイル製品になるまでの
トレーサビリティ、生産現場や生産に携わる人々の映像が見られるようになれば、アー
カイブの教材としての価値は更に高まることが見込める。
現在でも、作品製作等で、素材メーカーに問い合わせることが多いとのことだが、ネ
ットワーク化されていれば、直接、素材提供の要求、購入のための発注等が可能になる。
素材と二次製品との関係を学ぶためにも、素材情報に製品の画像やファッションショ
ーの映像が添付されていれば更に学生の興味を引くことが可能である。
以上のように、単にテキスタイルアーカイブを提供するだけでなく、それが教材とし
て活用できるような情報の付加・加工・編集等が重要となる。そうした機能を付加する
ことにより、更にアーカイブ利用者も増えることが見込める。
21
2-2
「テキスタイルアーカイブ」アンケート調査結果要約
2-2-1 アンケート調査の概要
2-2-1-1 アンケート調査の目的
本アンケート調査は、次の各項を主目的として実施した。
①繊維産地企業・テキスタイル卸売企業・アパレル企業等のテキスタイル供給・使用に
関連する企業、および公設試・地場産センター・産地組合等の繊維産業支援機関、な
らびにファッション等専門学校やテキスタイル収蔵美術館・博物館等におけるテキス
タイルサンプル(現物・画像)の収蔵状況、利用状況の把握。
②テキスタイル・デジタルアーカイブへの考え方の把握。
③多数のテキスタイルサンプルを保有している企業・機関の把握。
2-2-1-2
アンケート調査の種類
調査は、対象企業・機関別に次の 3 種類の調査票を作成して実施した。
①アンケート1:繊維産地企業、テキスタイル卸売企業、アパレル企業対象調査
②アンケート2:公設試、地場産センター、産地組合等の繊維産業支援機関対象調査
③アンケート3:服飾専門学校、テキスタイル収蔵美術館・博物館等対象調査
2-2-1-3
アンケート調査の対象・発送数・回収数
各アンケート調査の発送数・回収数は次のとおりである。
A
B
C=A−B
種 類
発送数
返戻等
実効発送数
アンケート1
1316
80
1236
アンケート2
209
5
204
アンケート3
153
3
150
合計
1678
88
1590
2-2-1-4
アンケート調査の方法とスケジュール
調査は郵送法により、次のスケジュールで実施した。
2008 年 11 月 11 日(火)
アンケート発送
2008 年 11 月 19 日(水)
アンケート回答協力依頼葉書発送
2008 年 11 月 28 日(金)
アンケート回答投函期限
2008 年 12 月 5 日(金)
アンケート回収締切
22
D
回答数
348
118
49
515
E=C/D
回答率
28.2%
57.8%
32.7%
32.4%
2-2-1-5 アンケート調査結果の概要
2-2-1-5-1 アンケート1:繊維産地企業・テキスタイル卸売企業・アパレル企業等、
企業対象アンケート調査
①企業の収蔵テキスタイルサンプルは、1,000 点/社以下が多いものの、10,000 点以
上を所蔵している企業も 1 割弱存在する。保存期間は 3∼5 年がもっとも多く、永
久保存している企業も 20%近くある。もっとも重視しているのは将来の商品企画に
参考になるもの。
②所蔵サンプルの管理は分散型の傾向が強く、またサンプルに添付されているデータ
は企業が商品計画等で必要とするデータより少ない傾向にある。
➂サンプルのデジタル写真化はあまり進んでおらず、その管理も分散化の傾向が強い。
④企業は商品企画において比較的最近の情報を参考にする傾向が強い。
⑤テキスタイルサンプルは商品企画において重要性を認識されており、特に素材、風
合い、柄情報などへの重視度が高い。
⑥現物サンプルとデジタル写真を比較すると、商品企画においては現物サンプルの方
が有用とされるものの、基礎的アイデアや色柄などの探索にはデジタル写真も相当
の有用度があると考えられている。
⑦テキスタイルのデジタルアーカイブには利用価値が「ある」との意見が多く、収蔵
が期待されるサンプルは「基礎的な素材、色柄、組織等のサンプル」
「各産地の代表
的サンプル」
「特殊サンプル」「過去の流行サンプル」など多様である。
⑧アーカイブの利用価値を高める要因の一つと考えられる検索方法については、
「検索
項目を特定したキーワード検索」「自由キーワード検索」などへの期待が高い。
⑨各地のアーカイブをつなぎワンストップで幅広い検索ができる中核的アーカイブ機
関が出来で会員制をとるとした場合、
「加入の可能性」を表明したのは 35.6%で、
「加
入しないだろう」とした企業の 20.8%を大きく上回った。
⑩中核アーカイブにはテキスタイルアーカイブ以外に売れ筋情報等、多彩な情報サー
ビスが期待されている。
2-2-1-5-2
アンケート2:公設試、地場産センター、産地組合等、産地企業支援
機関対象アンケート
①テキスタイルサンプルを収蔵している機関は 35.6%のみ、収蔵点数は 1,000 点/機
関が半数近く、収蔵目的は「試作品保管」が群を抜いて多く、入手先も地場が多か
った。
23
②テキスタイル展示室を持っている機関は 40.5%あるが、年間利用者 100 名以下のと
ころが 54.5%ともっとも多く、利用は限定的である(ただし、地場産センターは観
光客も立ち寄るため利用者数の多いところが多い)。
③収蔵テキスタイルのデータベース化はあまり進んでおらず、貸出や分譲もあまり行
われていない。
④テキスタイル資料のデジタル画像化については意義を認めているものの、具体的な
取り組みはあまり進んでおらず、画像公開についても一部の公開でよいとする意見
が多い。
⑤デジタル化推進上の問題点は、要員、費用などが主で、さらに「サンプルの情報が
不足」も 42.1%を占める。
⑥デジタルアーカイブ中核機関が出来たときの連携可能性はまだ明確ではない機関が
多い(本アンケートで初めて問いかけた件なので、態度未定は致し方ない)。とはい
え、所蔵テキスタイル資料が商品企画・設計に活用されるための努力・工夫として
は「多様な検索方法」や「キュレーターの育成」などが意識されている。
2-2-1-5-3 アンケート3:専門学校・博物館・美術館等対象アンケート
①テキスタイルを収蔵している機関は 40.4%、テキスタイル収蔵点数は 1,000 点以下
が 73.3%と多い。
②収集地域は国内が多く、「民俗的に意義があるもの」「産業的に意義があるもの」が
収集の主対象。
③ 収蔵品管理へのコンピュータ利用は多いとは言えないが 1/4 の機関が実施している。
しかし、コンピュータ利用の検索サービスを実施している機関は極めて少ない。
④デジタル画像化の意義は理解されているものの、実施は進んでおらず、
「実施計画な
し」の機関が 57.1%を占める。
⑤デジタル化推進上の問題点は、費用、要員、努力に見合う活用が期待薄などが主で
ある。
⑥デジタルアーカイブ中核機関が出来たときの連携可能性は否定的な意見が 42.9%と
多い。とはいえ、所蔵テキスタイル資料が商品企画・設計に活用されるための努力・
工夫としては「キュレーターの育成」「多様な検索方法」「簡便な検索・閲覧」など
が意識されている。
24
2-2-2 アンケート結果詳細
2-2-2-1 アンケート調査1(企業対象「テキスタイル資料の保存と活用に関するアンケー
ト調査」)の結果
注1:質問および回答選択肢の詳細は付録のアンケート票を参照願いたい。
注2:回答企業数等、以下に表記のないデータについては付録の集計表を参照願いたい。
注3:単一回答方式の質問への回答合計パーセントは、四捨五入の関係上 100%にならないこ
とがある。
注4:複数回答方式の質問への回答合計パーセントは、分母を回答企業数としているため、
100%を超える。
(アンケート2、3〈2-2-3項、2-2-4項〉についても同様である)
質問1.回答企業概要
アンケートは次の表記載の企業 1,316 社に対して発送し(実効発送数 1,236 社)、348 社
から有効な回答を得た。実効発送数に対する回答率は 28.2%である。
回答は、①産地企業等、②卸売企業、③アパレル企業に分類してクロス集計を行った。
A
B
C=A−B
D
E=C/D
種 類
発送数
返戻等
実効発送数
回答数
回答率
産地企業等(製造)
川上企業
28
2
26
8
30.8%
産地企業
769
23
746
221
29.6%
小計
797
25
772
229
29.7%
卸売企業
産元商社
50
5
45
22
48.9%
織物中央卸
132
36
96
19
19.8%
ニット中央卸
32
9
23
6
26.1%
小計
214
50
164
47
28.7%
アパレル企業
アパ産協会正会員企業
222
1
221
51
23.1%
ジーンズ協会会員企業
14
3
11
1
9.1%
商社系アパレル企業
69
1
68
20
29.4%
小計
305
5
300
72
24.0%
計
1,316
80
1,236
348
28.2%
注:産地企業にはテキスタイル生産各業種、染色整理各業種を主体に一部縫製業を含む。
質問2
テキスタイル・サンプルの保有・管理状況について
質問2-1
商品テキスタイル、企画参考テキスタイル等のサンプル保管状況について
1)サンプルの保存状況(単一選択)
サンプルを「保存している」(「基本的にすべて保存」+「重要なものだけ保存」)という
25
回答は回答企業の 87.2%に上った。うち、
「基本的にすべて保存している」とした企業は
卸売業に多く(48.9%)、
「基本的に保存しない」企業は、産地企業とアパレル企業に多か
った(11.6%、12.5%)
。保存しない産地企業の大半は委託生産企業と考えられる。
サンプル保存状況
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
産地企業
卸売業
アパレル
計
1.基本的にすべて保存
37.8%
48.9%
33.3%
38.4%
2.重要なものだけ保存
47.6%
46.8%
54.2%
48.8%
3.基本的に保存しない
11.6%
3.1%
4.3%
0.0%
12.5%
0.0%
10.8%
2.0%
4.その他
2)保存期間(単一選択)
サンプル保存期間
40%
35%
30%
25%
20%
15%
10%
5%
0%
産地企業
卸売業
アパレル
計
1.1年未満
1.0%
2.3%
1.6%
1.3%
2.1∼2年
10.3%
30.9%
18.2%
31.8%
30.2%
36.5%
15.6%
32.2%
11.9%
18.2%
14.3%
13.3%
20.6%
25.3%
18.2%
11.4%
7.9%
9.5%
17.6%
19.9%
3.3∼5年
4.6∼10年
5.10年以上
6.基本的に永久保存
質問 2-1 で「保存している」と回答した企業に保存期間を聞いたところ、
「1∼2 年」から
「永久保存」まで幅広く分布したが、もっとも多かった回答は「3∼5 年」であった(32.2%)。
グラフから分かるように、産地企業は保存期間が長い傾向があり、アパレル企業は短い
傾向がある。卸売企業はその中間と見られる。
26
3)現在の保存サンプル点数
質問 2-1 で「保存している」と回答した企業における保存サンプル点数は、
「1000 点以下」
がもっとも多く 57.4%であった。「1 万点超」のサンプルを保存している企業は 8.3%の
みであった。業種別には、卸売業の保存サンプル点数が多い傾向が見られる。
サンプル保存点数
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
1000点以下
5000点以下
1万点以下
1万点超
不明(多数)
産地企業
卸売業
アパレル
計
59.4%
19.4%
9.1%
9.1%
50.0%
15.8%
5.3%
15.8%
55.8%
30.8%
5.8%
0.0%
57.4%
21.1%
7.9%
8.3%
2.9%
13.2%
7.7%
5.3%
4)どのようなサンプルを重要と考えるか(単一選択)
重要と考えるサンプル
100%
80%
60%
40%
20%
0%
産地企業
卸売業
アパレル
計
1.大量生産・取扱品
2.将来の企画参考品
40.6%
31.9%
32.6%
37.3%
80.4%
55.3%
86.0%
76.4%
3.珍しいもの
30.8%
10.6%
20.9%
24.9%
4.その他
11.2%
0.0%
9.3%
8.6%
質問 2-1 で「重要なものだけ保存」と回答した企業にどのようなサンプルを重要と考えて
いるか聞いた結果、もっとも多かった回答は「将来の商品企画の参考になりそうなもの」
で、回答企業の 76.8%が指摘した。業種的には産地企業とアパレル企業にこの回答が多
かった。
27
質問2-2
テキスタイル・サンプルの保存形態
質問 2-1 でテキスタイルサンプルを「保存している」と回答した企業にサンプルの保存形
態、整理方法、添付データ。管理方法、デジタル化等について聞いた。
1)サンプルの保存形態(単一選択)
保存形態については「ハンガーサンプル」
(72.7%)、
「台紙貼り付け」
(56.9%)が 2 大保
存形態としてあげられた。「着分」を保存している企業は卸売業に多かった(28.9%)。
サンプルの保存形態
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
産地企業
卸売業
アパレル
計
1.着分程度
17.4%
28.9%
9.7%
17.5%
2.ハンガー・サンプル
3.台紙貼り付け
74.2%
53.7%
73.3%
57.8%
67.7%
66.1%
72.7%
56.9%
4.その他
13.7%
2.2%
11.3%
11.4%
2)サンプルの整理方法(単一選択)
サンプルの整理方法
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
1.年度別
2.素材別
3.デザイン傾向別
4.得意先別
産地企業
卸売業
アパレル
計
18.2%
26.6%
8.3%
14.1%
27.3%
27.3%
9.1%
11.4%
58.1%
14.5%
6.5%
4.8%
27.9%
24.2%
8.1%
11.7%
サンプルの整理方法は「年度別」
(27.9%)と「素材別」
(24.2%)が多かった。第 3 位は
「得意先別」
(11.7%)であった。
28
3)添付データ(複数選択)
サンプルに添付されているデータについて 22 項目を例示して指摘願った結果、例えば
50%以上の企業から指摘があった項目をあげると、「品名」「品番」「規格」「組成繊維・
混用率」
「糸番手」などの 5 項目であった。その他の項目も、多くはなかったが指摘があ
り、企業のニーズに応じて様々な情報がサンプルに添付されていることが判明した。
サンプル添付データ
66.2%
1.品名
88.2%
2.品番
77.7%
3.規格
36.1%
4.目付・重量
70.6%
5.組成繊維・混用率
25.0%
6.後加工内容
52.7%
7.糸番手
19.6%
8.糸加工
27.7%
9.織(編)組織
30.7%
10.織・糸密度/編・ゲージ
8.1%
11.使用織(編)機
12.染色加工内容
20.6%
13.生産時期・対応シーズン
20.3%
7.1%
14.用途・アイテム
15.価格
21.3%
5.1%
16.二次製品サンプル
17.素材メーカー名
26.4%
18.糸加工メーカー名
4.1%
19.製織・製編メーカー名
5.4%
8.4%
20.染色加工メーカー名
21.生地商社・問屋・コンバーター名
18.6%
10.1%
22.ユーザー(アパレル)名
23.その他
3.0%
0%
29
20%
40%
60%
80%
100%
4)サンプルの管理方法(単一選択)
サンプルの管理(記録)状況
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
産地企業
卸売業
アパレル
計
1.部署毎に記録
13.2%
18.2%
15.0%
14.3%
2.全社統一して記録
16.9%
18.2%
21.7%
18.1%
3.台帳は作っていない
65.6%
59.1%
61.7%
63.8%
4.その他
4.2%
4.5%
1.7%
3.8%
サンプルの管理方法については「台帳は作っていない」との回答が 63.8%に達し、
「全社
統一して記録」している企業(18.1%)や「部署毎に記録」している企業(14.3%)は少
数派であることが判明した。その中でアパレル企業は「全社統一して記録」している割
合が 21.7%と比較的大きかった。
5)サンプルのデジタル写真化(単一選択)
サンプルのデジタル写真化
100%
80%
60%
40%
20%
0%
産地企業
卸売業
アパレル
計
1.基本的にすべてデジ
タル写真化
1.1%
4.4%
1.6%
1.7%
2.一部をデジタル写真
化
3.デジタル写真化はし
ていない
9.0%
17.8%
9.7%
10.5%
89.9%
77.8%
88.7%
87.8%
サンプルのデジタル写真化は「していない」企業が 87.8%と圧倒的に多く、
「基本的にす
べてデジタル写真化」している企業は 1.7%に過ぎなかった。
30
6)デジタル写真の整理方法(単一選択)
デジタル写真の整理
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
1.全社的にDB化
2.部署ごとにDB化
3.個人がそれぞれ管理
4.分からない
産地企業
卸売業
アパレル
計
38.9%
22.2%
33.3%
5.6%
33.3%
22.2%
44.4%
0.0%
0.0%
71.4%
28.6%
0.0%
29.4%
32.4%
35.3%
2.9%
前問で「1、2」(デジタル写真化している)を選択した企業にその整理方法を聞いた結
果、「個人がそれぞれ管理」が 35.3%ともっとも多かった。
テキスタイルのデジタル・アーカイブをネットワーク化する観点からは「全社的にデー
タベース化」してあることが望ましいが、これを実施している企業はアンケートに回答
した全企業の約 3.6%(=前問でデジタル写真化している企業合計 12.2%×本質問で全社
的に DB 化している企業 29.4%)にすぎなかった。
質問3
テキスタイルサンプルの活用
テキスタイルサンプルの活用に関連して、商品企画への利用状況、商品企画におけるテ
キスタイルサンプルの重要性、デジタルアーカイブの得失等について聞いた。
質問3-1
商品企画の状況
1)実質的な商品企画者(単一選択)
実質的な商品企画者
100%
80%
60%
40%
20%
0%
1.自社企画スタッフ
2.社外企画スタッフ
3.得意先企業
4.その他
産地企業
卸売業
アパレル
計
62.2%
3.8%
29.2%
4.8%
73.9%
6.5%
13.0%
6.5%
90.1%
1.4%
5.6%
2.8%
69.9%
3.7%
21.8%
4.6%
31
テキスタイルサンプルの最大の活用者は商品企画者であると考えられるが、各社におけ
る実質的な商品企画者は誰かについて聞いた結果、「自社企画スタッフ」という回答が
69.9%でもっとも多かった。次は「得意先企業」の 21.8%であった。
「自社企画スタッフ」
という回答がもっとも多かったのはアパレル企業(90.1%)で、次は「卸売業」
(73.9%)、
第 3 位は産地企業(62.2%)であった。「得意先企業」という回答はこの反対で、産地企
業がもっとも多く 29.2%が指摘した。産地企業の下請的な性格が表れた結果と言えよう。
「社外企画スタッフ」という回答は少なかった。
2)商品企画に向けてテキスタイルを選定する上でのアイデアの主要な源泉(3 項選択)
テキスタイル選定におけるアイデア源泉として 14 項目を例示して聞いた結果、
「顧客の
情報」(53.3%)、「仕入先の情報」(44.2%)、「自社の創意工夫」(38.2%)が上位 3 位を
占めた。テキスタイルアーカイブの概念に比較的近い「美術館・博物館の関連展示」「過
去の自社商品」
「過去の他社商品」など「過去の情報」は、それぞれ 1.6%、26.5%、11.4%
と、中∼下位の重要度であった。
テキスタイル選定アイデアの主要源泉
1.海外のテキスタイル見本市
22.1%
2.海外のコレクション情報
23.7%
3.流行予測機関の予想情報
8.5%
4.海外の関連新聞・雑誌情報
6.9%
5.国内の関連新聞・雑誌情報
14.8%
6.小売店頭の売れ筋情報
33.1%
7.街頭観察情報
10.1%
8.美術館・博物館の関連展示
1.6%
9.過去の自社商品
26.5%
10.過去の他社商品
11.4%
11.仕入先の情報
44.2%
12.顧客の情報
53.3%
13.自社の創意工夫
38.2%
14.自社のシーズ
6.0%
15.その他
2.5%
0%
10%
32
20%
30%
40%
50%
60%
3)企画に際してどのくらい過去の情報を参考にするか(複数選択)
企画に際してどの程度過去の情報を参考にするか
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
産地企業
卸売業
アパレル
計
1.参考にしない
13.3%
11.1%
7.2%
11.6%
2.昨シーズンの情報
27.6%
42.2%
50.7%
34.8%
3.1∼3年間のトレンド変化
48.0%
42.2%
42.0%
45.8%
4.オールドコレクション
19.9%
17.8%
14.5%
18.4%
5.その他
3.6%
6.7%
1.4%
3.5%
商品企画に際して過去の情報をどの程度参考にするかについては、
「1∼3 年間のトレンド
変化」
(45.8%)や「昨シーズンの情報」
(34.8%)など、比較的最近の情報を参考にする
傾向が強かった。
「オールドコレクション」を参考にするという回答は 18.4%に過ぎなか
った。
33
質問3-2
商品企画におけるテキスタイル・サンプルの重要性
1)商品企画におけるアイデア源泉としてのテキスタイル・サンプルの重要性(単一選択)
商品企画アイデアの源泉としてのテキスタイルサンプルの重要性
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
産地企業
卸売業
アパレル
計
1.大きな重要性あり
53.7%
71.7%
72.2%
60.4%
2.多少の重要性あり
38.5%
28.3%
23.6%
33.7%
3.あまり重要性なし
7.8%
0.0%
4.2%
5.9%
「重要性あり」という回答が合計 94.1%に上り、テキスタイルサンプルは極めて重視さ
れていることが判明した。
2)伝統的サンプルと新規なもののどちらがより商品企画に役立つと考えるか(単一選択)
伝統的サンプルと新規サンプルの企画への役立ち度
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
1.伝統的なサンプル
2.新規なサンプル
3.どちらも同じ程度
産地企業
卸売業
アパレル
計
12.9%
31.3%
17.4%
26.1%
5.6%
33.3%
11.9%
31.0%
55.7%
56.5%
61.1%
57.1%
「どちらも同じ程度」に参考になるという回答がもっとも多く 57.1%に達したが、
「伝統
的なサンプル」と「新規なサンプル」という回答を比較すると「新規」の方に 3 倍近い
指摘があり(11.9%と 31.0%)、新規サンプルの方が企画に役立つと考える企業が多いこ
とが判明した。グラフからも判断できるように、この傾向は特にアパレル企業において
34
強い。
3)商品企画のアイデア源として、テキスタイル・サンプルのどの面を重視するか(複数
選択)
企画において重視するテキスタイルサンプルの面
1.素材
79.6%
2.色
42.8%
3.柄
69.2%
72.3%
4.風合い
5.糸加工
30.8%
6.仕上げ加工
38.4%
7.用途情報
14.8%
8.5%
8.テキスタイル生産者情報
2.5%
9.その他
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
8 項目を例示して聞いた結果、もっとも重視するのは「素材」
(79.6%)であり、次が「風
合い」
(72.3%)、第 3 位は「柄」
(69.2%)であった。第 4 位の「色」は大分少なくなり、
42.8%の企業が指摘した。
質問3-3
利用目的別の、テキスタイル・サンプル現物とデジタル写真の得失
商品企画における様々な局面を 7 つに分解し、それぞれにおけるテキスタイル検討にお
いて、現物サンプル(着分サンプルおよびパターンシート・スワッチ)とデジタル写真
とではどの程度の得失があると考えるかを聞いた。
まず各項目への回答をグラフで示し、次にそれらの結果を総括して示す。
1)基礎的なアイデアを得るためにテキスタイルを幅広く探索したいとき
現物とデジタル写真の得失
基礎的なアイデア探索の場合
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
A.着分サンプル
B.パタンシートやスワッチ
C.デジタル資料
産地企業
卸売業
アパレル
計
12.7%
55.5%
31.8%
16.3%
58.1%
25.6%
5.6%
62.0%
32.4%
11.5%
57.5%
31.0%
35
2)用途・シーズンなどを決めて適切なテキスタイルを探索したいとき
現物とデジタル写真の得失
用途・シーズンに適切なテキスタイルを探索する場合
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
A.着分サンプル
B.パタンシートやスワッチ
C.デジタル資料
産地企業
卸売業
アパレル
計
25.4%
18.6%
15.5%
22.0%
59.0%
15.6%
69.8%
11.6%
70.4%
14.1%
63.4%
14.6%
3)素材・厚み・表面感などを決めて適切なテキスタイルを探索したいとき
現物とデジタル写真の得失
素材・厚み・表面感などを決めて適切なテキスタイルを探索する場合
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
A.着分サンプル
B.パタンシートやスワッチ
C.デジタル資料
産地企業
卸売業
アパレル
計
34.5%
33.3%
34.3%
34.3%
64.9%
0.6%
66.7%
0.0%
65.7%
0.0%
65.4%
0.4%
4)特殊素材・特殊加工などのサンプルを探索したいとき
現物とデジタル写真の得失
特殊素材・特殊加工などのサンプルを探索する場合
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
産地企業
卸売業
アパレル
計
A.着分サンプル
B.パタンシートやスワッチ
33.3%
59.8%
29.3%
68.3%
35.2%
57.7%
33.2%
60.5%
C.デジタル資料
6.9%
2.4%
7.0%
6.3%
36
5)色を探索したいとき
現物とデジタル写真の得失
色を探索する場合
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
産地企業
卸売業
アパレル
計
A.着分サンプル
B.パタンシートやスワッチ
10.3%
59.8%
2.4%
73.2%
7.1%
68.6%
8.4%
63.9%
C.デジタル資料
29.9%
24.4%
24.3%
27.7%
6)柄(プリント、織り柄など)を探索したいとき
現物とデジタル写真の得失
柄(プリント・織り柄など)を探索する場合
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
A.着分サンプル
B.パタンシートやスワッチ
C.デジタル資料
産地企業
卸売業
アパレル
計
14.0%
20.9%
18.6%
16.1%
48.8%
37.2%
48.8%
30.2%
47.1%
34.3%
48.4%
35.4%
7)風合いを探索したいとき
現物とデジタル写真の得失
風合いを探索する場合
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
A.着分サンプル
B.パタンシートやスワッチ
C.デジタル資料
産地企業
卸売業
アパレル
計
37.4%
48.8%
45.1%
41.0%
60.9%
1.7%
48.8%
2.3%
54.9%
0.0%
57.6%
1.4%
37
8)総括
現物とデジタル写真の得失比較
現物とデジタル写真の得失
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
基礎的ア 用途・
イデア
シーズン
素材・
厚み・
特殊素
材等
色
柄
風合
着分サンプル
パタンシートやスワッチ
11.5%
57.5%
22.0%
63.4%
34.3%
65.4%
33.2%
60.5%
8.4%
63.9%
16.1%
48.4%
41.0%
57.6%
デジタル資料
31.0%
14.6%
0.4%
6.3%
27.7%
35.4%
1.4%
1)∼7)までの得失比較の合計欄のみをまとめて 1 枚のグラフにすると上の通りである。商
品企画のいずれの項目においても、
「デジタル資料」が最も利用価値があるという回答は
なく、「パターンシートやスワッチ」が良いとする回答が第 1 位を占めた。
デジタル写真の得意分野
柄
35.4%
基礎的アイデア
31.0%
色
27.7%
用途・シーズン
14.6%
特殊素材・特殊加工
6.3%
風合
1.4%
素材・厚み・表面感
0.4%
0%
5%
10%
15%
20%
25%
30%
35%
40%
上記の結果から「デジタル写真」だけの情報を抽出したのが上のグラフである。ここに
見るように、デジタル写真が比較的利用価値があるとされるのは「柄」
「基礎的アイデア」
「色」の 3 項目である。ただし、「柄」「色」はコンピューター画面で見ても直感的に理
解できるものであるが、正確に理解するためには寸法情報、色彩情報などについて物差
しや標準色票を添える、またはコンピューター画面を精密に調整する等の工夫が必要と
考えられる。その他の項目は、画面から直感的に読み取ることは難しいが、デジタル写
38
真がアーカイブ化され、例えば「用途・シーズン」や「特殊素材・特殊加工」などそれ
ぞれの項目に関する検索が可能になれば、数多くのデータを対象に検索可能というデジ
タルアーカイブの特性と相まって、利用価値が向上する可能性はあろう。
質問3-4
テキスタイル資料に付属する情報について
1)あればよいと考える付属情報(複数選択)
テキスタイル資料にあればよい附属情報
1.収蔵機関名
34.8%
2.品名
61.0%
3.品番
61.3%
4.規格
75.2%
5.目付・重量
59.7%
6.組成繊維・混用率
82.6%
7.後加工内容
55.8%
73.9%
8.糸番手
48.7%
9.糸加工(撚糸)内容
60.0%
48.4%
10.織(編)組織
11.織(編)密度
34.8%
12.使用織(編)機
36.8%
13.染色加工内容
14.生産時期・対応シーズン
21.9%
32.3%
15.用途・アイテム
55.8%
16.価格
27.7%
17.二次製品サンプル画像
44.8%
18.素材メーカー名
19.糸加工メーカー名
19.4%
15.2%
20.製織・製編メーカー名
19.7%
25.2%
21.染色加工メーカー名
22.生地商社・問屋・コンバーター名
17.4%
14.2%
23.ユーザー(アパレル)名
24.色彩再現情報
34.5%
25.風合いなど感性的な情報
16.5%
26.当該テキスタイルで狙った流行情報
1.6%
27.その他
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90%
テキスタイル資料を活用するためには、サンプルに附属する情報として何があればよい
かについて 26 項目を例示して聞いた結果、例えば 50%以上の企業が指摘した項目をあげ
れば「品名」(61.0%)、「品番」(61.3%)、「規格」(75.2%)、「目付・重量」(59.7%)、
「組成繊維・混用率」
(82.6%)、
「後加工内容」
(55.8%)、
「糸番手」
(73.9%)、
「織(編)
39
組織」(60.0%)、「価格」
(55.8%)の 9 項目と多岐に亘った。
質問 2-2-3)(=各社が保有しているサンプルに添付されているデータ)において 50%以
上の企業が指摘した項目は 5 項目であったことと比較すると、企業は自社で記録できて
いる項目よりも多い項目について情報を希望しているようである。
質問4
テキスタイル・サンプル保有機関との連携によるデジタル・アーカイブ形成につ
いて
本調査の主眼であるインターネットで手軽にアクセスが可能なテキスタイル資料のデジ
タルアーカイブ形成についての企業の意見を聞いた。
1)デジタルアーカイブの利用価値について(単一選択)
デジタルアーカイブの利用価値
35%
30%
25%
20%
15%
10%
5%
0%
1.大いにある
2.まあある
3.どちらとも言えない
4.あまりない
5.全くない
6.分からない
産地企業
卸売業
アパレル
計
18.9%
28.6%
14.9%
23.4%
27.8%
29.2%
20.3%
28.0%
26.7%
8.7%
29.8%
17.0%
27.8%
5.6%
27.4%
9.2%
0.5%
16.5%
6.4%
8.5%
1.4%
8.3%
1.5%
13.5%
テキスタイルのデジタルアーカイブについて、利用価値が「ある」という回答は計 48.3%、
「ない」という回答は 10.7%で、利用価値を認める意見の方が 5 倍近く多かった。しか
し「どちらとも言えない」「分からない」という意見も計 40.9%と多く、デジタルアー
カイブというものが繊維業界に十分理解されていない可能性も考えられる結果であった。
2)望ましい収納サンプル(複数選択)
デジタルアーカイブに収納することが望ましいと考えるサンプルについて 4 項目を例示
して聞いた結果、そのいずれについても多くの企業が望ましいと指摘したが、最も指摘
が多かったのは「基礎的な素材、色、柄、織組織のサンプル」で 66.1%の企業が指摘し
た。もっとも少なかったのは「各織編物産地の代表的なサンプル」で、それでも 40.4%
の企業が指摘した。業種別にはアパレル企業が、他の 2 業種に比べて各回答項目への指
摘が多い傾向にある。これは、ユーザーの立場から幅広い観点でテキスタイルを探索し
たい要望が強いものと考えられる。
40
望ましい収納サンプル
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
産地企業
卸売業
アパレル
計
1.基礎的な素材、色、
柄、織組織のサンプル
2.各織編物産地の代表
的なサンプル
67.9%
52.3%
70.1%
66.1%
41.8%
25.0%
46.3%
40.4%
3.特殊な織編組織や、
特殊な加工のもの
49.5%
40.9%
62.7%
51.1%
4.過去に流行したサン
プル
39.3%
43.2%
55.2%
43.3%
41
3)デジタルアーカイブへの付随情報(複数選択)
デジタルアーカイブに付随する情報としてどのようなものがあればよいと考えるか、26
「品番」
項目を例示して聞いた結果、50%以上の指摘があったのは「収蔵機関名」
「品名」
「目付・重量」
「組成繊維・混用率」
「後加工内容」
「糸番手」
「織(編)組織」
「価
「規格」
格」の 10 項目であった。これは、質問 2-2-3)で聞いた、各企業の収蔵サンプル添付デ
ータのうち 50%以上の企業が添付しているもの(下線の項目)の 2 倍であり、サンプル
付随情報に対する企業の要望は、現実に各企業が記録しているものよりはるかに幅広い
ことが判明した。
デジタルアーカイブにあればよい附属情報
52.4%
58.1%
1. 収 蔵 機関 名
2 .品 名
56.8%
3 .品 番
72.0%
4 .規 格
60.1%
5. 目 付 ・重 量
78.7%
6 . 組 成繊 維 ・ 混用 率
7. 後 加 工内 容
55.4%
70.6%
8 . 糸番 手
49.0%
58.4%
43.6%
9. 糸 加 工( 撚 糸 )内 容
10.織 ( 編 )組 織
11.織 ( 編 )密 度
36.8%
45.6%
12. 使用 織 ( 編) 機
13.染 色 加 工内 容
20.9%
14. 生産 時 期 ・対 応 シ ーズ ン
34.8%
15. 用途 ・ ア イテ ム
16.価 格
53.7%
32.1%
43.9%
17.二 次 製 品サ ン プ ル画 像
18. 素材 メ ー カー 名
20.3%
19. 糸 加工 メ ー カー 名
18.2%
20.製 織 ・ 製編 メ ー カー 名
22.6%
26.0%
21. 染 色 加工 メ ー カー 名
22.生 地 商 社 ・問 屋 ・ コン バ ー ター 名
19.6%
16.6%
23. ユー ザ ー (ア パ レ ル) 名
24.色 彩 再 現情 報
25. 風合 い な ど感 性 的 な情 報
37.8%
16.9%
26. 当該 テ キ ス タイ ル で 狙っ た 流 行情 報
27. その 他
2.0%
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90%
4)デジタルアーカイブに望ましい情報提供(複数選択)
望ましい情報提供
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
産地企業
卸売業
アパレル
計
1.テキスタイルの基礎知識
54.5%
53.5%
59.1%
55.4%
2.ファッション予測情報
3.小売店頭流行情報
64.7%
54.5%
65.1%
44.2%
65.2%
65.2%
64.9%
55.4%
4.街頭流行情報
34.8%
34.9%
54.5%
39.2%
5.その他
0.5%
0.0%
0.0%
0.3%
42
デジタルアーカイブを形成し、公開しただけでは利用率がきわめて低いことは、過去の
同種の試みで実証されている。そこで、利用率向上のためには何をすべきか、4 項目を提
示して聞いた。その結果、最も指摘が多かったのは「ファッション予測情報」の提供で、
64.9%の回答者が指摘した。もっとも少なかったのは「街頭流行情報」の提供で、それで
も 39.2%の回答者が指摘した。業種別にはアパレル企業が、各項目への指摘率が高く、
基礎知識、流行予測情報ともにニーズが高いことが判明した。
5)デジタルアーカイブで望ましい検索方法(複数選択)
デジタルアーカイブの利用率を上げる一つのポイントは、検索方法が適切なことであろ
う。そこで、どのような検索方法を希望するのか、5 項目を例示して聞いた結果、最も希
望が多かったのは「検索項目を特定したキーワード検索」で、64.0%の企業が指摘した。
第 2 位は「自由なキーワードで検索」(49.7%)、第 3 位は「アーカイブが準備した分類
で検索」
(35.0%)であった。
「フレーズや自然文からの連想語で検索」や「アーカイブ管
理者にメールして相談」などはそれぞれ 6.7%と 5.0%と少なかった。
この情報は今後アーカイブ中核機関を形成する際のシステム設計に役立つ情報である。
望ましい検索方法
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
産地企業
卸売業
アパレル
計
1.自由なキーワードで検索
2.検索項目を特定した
キーワード検索
3.フレーズや自然文か
らの連想語で検索
48.1%
66.1%
40.0%
64.4%
60.6%
57.6%
49.7%
64.0%
7.9%
2.2%
6.1%
6.7%
4.アーカイブが準備し
た分類で検索
5.アーカイブ管理者に
メールして相談
32.3%
24.4%
50.0%
35.0%
5.8%
4.4%
3.0%
5.0%
6)デジタルアーカイブを商品企画に利用する場合の望ましいサービス(単一選択)
デジタルアーカイブの設置目的は、学生やファッション産業初心者等への教育とともに、
テキスタイルやアパレルの商品企画に役立つことがあげられよう。商品企画に利用する
場合、検索してヒットしたテキスタイルサンプルについて、さらに詳細な情報が入手で
きたり、あるいは取扱業者とコンタクトできることも望ましいであろうと考え、そのよ
43
うな趣旨の質問をした。その結果、もっとも多かった回答は「メールでスワッチが貰え
ると良い」で、回答企業の 49.8%が指摘した。
仕入先紹介サービスについて
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
1.メールでスワッチが
貰えるとよい(無償で)
2.メールで着分が入手
できると良い(有償で)
3.取扱業者が判明する
と良い
4.そのようなサービス
は不要
産地企業
卸売業
アパレル
計
45.5%
40.9%
68.2%
49.8%
16.8%
15.9%
9.1%
15.0%
25.7%
34.1%
18.2%
25.2%
12.0%
9.1%
4.5%
10.0%
7)テキスタイルのデジタルアーカイブを会員制で運営する場合の加入可能性(単一選択)
デジタルアーカイブ会員加入意向
50%
40%
30%
20%
10%
0%
産地企業
卸売業
アパレル
計
1.ぜひ加入
3.0%
2.2%
2.9%
2.9%
2.内容によっては加入
30.3%
31.1%
40.6%
32.7%
3.どちらとも言えない
4.加入の可能性小
28.3%
31.1%
33.3%
29.8%
15.2%
13.3%
13.0%
14.4%
5.加入しない
7.1%
8.9%
2.9%
6.4%
6.分からない
16.2%
13.3%
7.2%
13.8%
テキスタイル・デジタルアーカイブをいかなる組織体が運営するかは別問題として、こ
のアーカイブを会員制で運営するとした場合の加入意向について聞いた結果、
「ぜひ加入
したい」という回答は 2.9%と少なかった。しかし「内容によっては加入したい」という
回答を加えると 35.6%となり、加入しない(=「加入の可能性は小さい」+「加入しな
44
い」)の 20.8%を上回った。単なるアーカイブではなく、(例えば質問 4-4)の各種情報提
供や、4-5)の使いやすい検索方法、4-6)の商品企画に役立つサービス等々)さまざまな付
加価値を提供できる利用価値の高いものとするなら、加入意向の企業はかなり多くなる
のではないかと考えられる。
8)テキスタイル以外の、伝統的なコスチュームの写真、最新流行ファッションの街頭写
真、ファッションショーの写真等々の映像のデジタルアーカイブ化への希望(複数選
択)
種々のデジタルアーカイブへの希望
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
産地企業
卸売業
アパレル
計
1.欧米の伝統的なコスチュー
ム
2.伝統的なバッグや靴、
その他のアクセサリー
27.5%
31.7%
37.5%
30.4%
13.5%
12.2%
28.1%
16.7%
3.最新の街頭における
流行情報
66.1%
46.3%
67.2%
63.4%
4.最新の小売店頭にお
ける売れ筋情報
5.国内および欧米の
ファッションショー情報
70.8%
65.9%
71.9%
70.3%
40.9%
46.3%
50.0%
43.8%
6.その他
1.2%
2.4%
1.6%
1.4%
デジタルアーカイブ機関のサービスの一つとして、テキスタイル以外に様々な種類のフ
ァッション関連アーカイブを併設することも考えられるので、どのようなものを望むか、
5 項目を例示して聞いた結果、もっとも多かったのは「最新の小売店頭における売れ筋情
報」で 70.3%であった。次に多かったのは「最新の街頭における流行情報」で 63.4%、
第 3 位は「国内および欧米のファッションショー情報」の 43.6%などであり、
「最新の情
報」に対する要望が多いと言える。
質問5
テキスタイルの収集を持っている企業または個人の情報(とくに廃業した企業・
個人のもの)
。
45
産地企業
卸売業
アパレル
計
12
3
3
18
回答件数
散逸の危機に瀕しているテキスタイルコレクションの状況を把握することは、本アンケ
ート調査の目的の一つである。その照会に対し計 18 件の情報がよせられたが、そのうち
廃業・倒産した企業に関する情報は 3 件のみであった。
質問6
テキスタイル資料のさらなる活用のための方策等についての考え。
産地企業
卸売業
アパレル
計
14
4
7
25
有意な書き込み件数
合計 25 件の書き込みがあったが、アーカイブの意義を認める意見のほかに、主な意見は
次のように要約できる。
①デジタルアーカイブのほかに現物サンプルの展示場があるとさらによい(=デジタル
画像の限界として風合いなどが十分に伝わらないため)。
②プリント図案などもアーカイブすれば、利用価値はさらに高まる。
③意匠権等への十分な配慮が必要。
2-2-2-2 アンケート調査2(公設試、地場産センター、産地組合対象「テキスタイル資料
の保存と活用に関するアンケート調査」)の結果
質問1.回答機関概要
アンケートは次の表記載の 209 機関に対して発送し(実効発送数 204 機関)、118 機関か
ら有効な回答を得た。実効発送数に対する回答率は 57.8%である。
回答は、①公設試、②地場産センター、③産地組合に分類してクロス集計を行った。
種
公設試
地場産センター
産地組合
計
類
A
発送数
62
42
105
209
46
B
返戻等
2
0
3
5
C=A−B
実効発送数
60
42
102
204
D
回答数
43
19
56
118
E=C/D
回答率
71.7%
45.2%
54.9%
57.8%
質問2
テキスタイル資料の収蔵状況
テキスタイル資料収蔵状況
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
公設試
地場産
産地組合
計
2.収蔵していない
34.9%
84.2%
80.4%
64.4%
1.収蔵している
65.1%
15.8%
19.6%
35.6%
テキスタイル資料を収蔵しているのは、全体では 35.6%であった。機関別には地場産セ
ンターと産地組合では少なく(15.8%と 19.6%)、公設試では 65.1%と多かった。
収蔵点数
テキスタイル資料を収蔵している機関を対象に収蔵点数を聞いたところ、1000 点以下の
機関が 46.2%と多かった。1 万点を超える収蔵があるのは 12.8%のみであった。なかで
も公設試は 1 万点以上の収蔵がある機関が 15.4%と、他の機関に比べて多かった。
テキスタイル資料収蔵点数
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
公設試
地場産
産地組合
計
1000以下
42.3%
66.7%
50.0%
46.2%
5000以下
1万以下
1万超
23.1%
11.5%
15.4%
33.3%
0.0%
0.0%
30.0%
0.0%
10.0%
25.6%
7.7%
12.8%
不明(多数)
7.7%
0.0%
10.0%
7.7%
47
質問3
テキスタイル資料を収蔵している機関への質問
1)テキスタイル資料収蔵の主目的(複数選択)
テキスタイル資料収蔵の主目的
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
1.試作品の保管
2.産地の代表的製品の
収集
3.産地企業への企画参
考資料の提供(国産)
4.産地企業への企画参
考資料の提供(外国産)
5.その他
公設試
地場産
産地組合
計
85.7%
46.4%
0.0%
66.7%
91.7%
50.0%
81.4%
48.8%
57.1%
0.0%
25.0%
44.2%
39.3%
33.3%
8.3%
30.2%
7.1%
66.7%
0.0%
9.3%
テキスタイル資料収蔵の目的としてもっとも多かったのは「試作品の保管」で、81.4%に
達した(ただし、地場産センターはこの目的での収蔵はなかった)。次に多かったのは「産
地企業への企画参考資料の提供(国産+外国産)」(74.4%)、第 3 位は「産地の代表的製
品の収集」
(48.8%)であった。
「産地の代表的製品」や「企画参考資料」などはデジタル
アーカイブ化すれば、利用価値が高いであろうと考えられる。
2)テキスタイル資料の収蔵形態(複数選択)
テキスタイル資料の収蔵形態
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
68.2%
54.5%
36.4%
34.1%
25.0%
48
そ
の
他
7
.
2
.
着
.
分
ハ
ン
ガ
ー
サ
ン
プ
ル
4
.
台
紙
貼
り
付
け
5
.
ス
ワ
ッ
チ
6
.
デ
ジ
タ
ル
写
真
11.4%
3
1
.
反
物
13.6%
収蔵形態については、
「台紙貼り付け」の形式がもっとも多く 68.2%、次は「ハンガーサ
ンプル」で 54.5%であった。その他「反物」「スワッチ」なども 30%以上の機関が指摘
した。
「デジタル写真化」して収蔵しているとの回答は 11.4%に過ぎなかった。デジタル
アーカイブ化に適した反物、着分、ハンガー、台紙貼り付けなどの形態での収蔵が多い
ことが判明した。
3)収蔵テキスタイル資料の年間利用者数
収蔵テキスタイル資料の年間利用者数
100%
80%
60%
40%
20%
0%
100名以下
500名以下
1000名以下
1000名超
公設試
地場産
産地組合
計
100.0%
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
100.0%
50.0%
33.3%
16.7%
0.0%
54.5%
18.2%
9.1%
18.2%
収蔵テキスタイル資料の年間利用者数については回答が 11 機関のみと少なかった。その
中で「年間 100 名以下」の機関が 54.5%と過半を占め、
「1000 名超」の機関は 18.2%の
みであった。これは機関の性格が大きく影響しており、公設試では利用者数が少なく、
地場産センターは(観光客なども入るため)多い。産地組合はその中間である。
4)利用者の内訳
利用者の内訳(指摘数)
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
1.学生・生徒
2.周辺住民
3.観光客・旅行者
4.繊維・ファッション関係者
5.その他
公設試
地場産
産地組合
計
15.2%
14.3%
17.6%
15.8%
6.1%
0.0%
63.6%
15.2%
14.3%
28.6%
28.6%
14.3%
5.9%
5.9%
47.1%
23.5%
7.0%
5.3%
54.4%
17.5%
49
利用者の内訳は、アンケート票は「その他」を含め 5 区分を示し、それぞれの%を記入
願う設計にしたが、%を記入願えなかった回答が多かったため、各項目への指摘数の%
をとって上のグラフを作成した。結果はやはり「繊維・ファッション関係者」が多く 54.4%
の機関が指摘した。
5)テキスタイル資料展示室の有無(単一選択)
テキスタイル資料展示室の有無
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
2.なし
1.あり
公設試
地場産
産地組合
計
59.3%
40.7%
33.3%
66.7%
66.7%
33.3%
59.5%
40.5%
各機関におけるテキスタイル資料展示室の有無については、
「あり」とする回答が 40.5%
であった。機関別には地場産センターがもっとも多く 66.7%、次は公設試で 40.7%、産
地組合はもっとも少なく 33.3%であった。
テキスタイル資料展示室の面積
テキスタイル資料展示室が「ある」と回答した機関にその面積を聞いたところ、17 の機
関から回答があり、
「100 ㎡超」との回答は 47.1%であった。特に地場産センターでは全
回答が 100 ㎡超であった。
テキスタイル資料展示室の面積
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
100㎡超
100㎡以下
公設試
地場産
産地組合
計
36.4%
100.0%
50.0%
47.1%
63.6%
0.0%
50.0%
52.9%
50
6)テキスタイル資料収蔵の基本方針
7)収蔵テキスタイル資料の特色
6)7)の質問に対しては回答数が極めて少なく、有意な集計ができなかったので説明を
省略する。
8)収蔵テキスタイル資料の入手先
収蔵テキスタイル資料の入手先(指摘数)
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
1.自機関
2.産地企業
3.産地外企業
4.その他
公設試
地場産
産地組合
計
37.0%
29.6%
25.0%
25.0%
23.5%
52.9%
32.2%
33.3%
13.0%
20.4%
18.8%
31.3%
0.0%
23.5%
11.5%
23.0%
収蔵しているテキスタイル資料の入手先については、20 機関から回答があったが、項目
別パーセントの記入が少なかったので項目指摘数でとりまとめた。「自機関」と「産地企
業」が多く、それぞれ 32.2%と 33.3%であった。
9)収蔵テキスタイル資料の入手方法(※指摘数)
収蔵テキスタイル資料の入手方法については 3 項目を例示してきいたが、項目別パーセ
ントの記入が少なかったので項目指摘数でとりまとめた。その結果、第 1 位は「寄贈」
で 33.8%、第 2 位は「相対価格で購入」で 19.7%であった。しかし、もっとも多かった
回答は「その他」の 42.3%で、書き込みから判断すると「市販品の購入」がその中心を
なしているものと推察される。
収蔵テキスタイル資料の入手方法(指摘数)
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
1.寄贈
2.相対交渉で購入
3.オークションで購入
4.その他
公設試
地場産
産地組合
計
30.8%
23.1%
0.0%
46.2%
27.8%
22.2%
16.7%
33.3%
50.0%
7.1%
0.0%
42.9%
33.8%
19.7%
4.2%
42.3%
51
10)収蔵テキスタイル資料の増減傾向(単一選択)
収蔵テキスタイル資料の増減傾向
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
公設試
地場産
産地組合
計
3.7%
0.0%
25.0%
9.8%
3.ほとんど変わらない
44.4%
40.7%
0.0%
100.0%
33.3%
25.0%
39.0%
39.0%
4.破損・滅失等で減少
11.1%
0.0%
16.7%
12.2%
1.毎年相当増加
2.毎年若干増加
収蔵テキスタイル資料の増減傾向については、
「増加」しているとする回答が計 48.8%と
半数近くに上った。増加傾向は産地組合に著しく、公設試がそれに次いでいる。地場産
センターはすべての回答が「ほとんど変わらない」であった。
11)収蔵テキスタイル資料の記録項目(複数選択)
収蔵テキスタイル資料について記録してある事項について 11 項目を例示して聞いた結果、
例えば 50%以上の機関が指摘したものをあげると、「収蔵番号」「品名」「素材名」の 3
項目であった。これに 40%以上の指摘があった項目を追加すれば「糸番手等」
「編織組織
名」
「生産者名」の 3 項目であり、これらが多くの機関によって記録されている事項と言
い得よう。
収蔵テキスタイルの記録項目
1.収蔵番号
51.4%
2.品名
71.4%
3.素材名
77.1%
4.糸番手等
48.6%
5.織編組織名
48.6%
31.4%
6.染色加工の明細
34.3%
7.生産時期
42.9%
8.生産者名
20.0%
9.生産地
28.6%
10.用途
11.4%
11.入手経路
28.6%
12.その他
0%
10%
20%
52
30%
40%
50%
60%
70%
80%
12)記録形態(単一選択)
収蔵テキスタイル資料の記録形態
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
1.台帳
2.カード
3.コンピュータ(台帳)
4.コンピュータ(DB)
5.その他
公設試
地場産
産地組合
計
28.0%
33.3%
63.6%
38.5%
20.0%
0.0%
16.0%
33.3%
33.3%
0.0%
0.0%
9.1%
9.1%
15.4%
5.1%
12.8%
36.0%
0.0%
18.2%
28.2%
前問の記録事項の記録形態については、
「台帳」に記録している機関が 38.5%ともっとも
多く、次は「カード」(15.4%)であった。コンピューター上で記録しているという回答
は計 17.9%(7 機関)で、そのうちデータベース化しているという機関は 12.8%(5 機
関)であった。データベースはまだ普及していないことが判明した。
13)テキスタイル資料利用者の検索方法(複数選択)
利用者がどのような方法で収蔵資料を検索しているかについて聞いた結果、「係員に質
問」という回答がもっとも多く 50.0%あった。次は「コンピュータ端末で検索」の 11.9%
であった。前問で、コンピュータでデータ管理しているという回答が計 17.9%あったの
で、それら機関の 60%以上が端末での検索が行えるようにしていることが判明した。し
かし「検索サービスはない」という回答も 50%あり、テキスタイル資料収蔵機関で利用
者の便宜を図っている(あるいは積極的に利用させようと図っている)ところは半数に
過ぎないことが判明した。
テキスタイル資料利用者の検索方法
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
公設試
地場産
産地組合
計
1.係員に質問
2.カードを閲覧
3.コンピュータ端末で検索
48.1%
11.1%
18.5%
66.7%
0.0%
0.0%
50.0%
0.0%
0.0%
50.0%
7.1%
11.9%
4.その他
5.検索サービスなし
3.7%
51.9%
0.0%
66.7%
16.7%
41.7%
7.1%
50.0%
53
14)収蔵テキスタイル資料をデータベース化している場合の、データベースソフト
1.汎用DBソフト
2.特注DBソフト
計
公設試
4
1
5
地場産
0
0
0
産地組合
1
0
1
計
5
1
6
公設試
1
2
1
4
地場産
0
0
0
0
産地組合
0
0
0
0
計
1
2
1
4
使用汎用ソフトの名称
エクセル
ファイルメーカー
蛍てっくⅡ
計
資料をコンピュータ管理している機関が利用しているソフトは、回答数は少なかったも
のの、ほとんどが汎用ソフトであることが判明した。具体的なソフト名は上表記載の通
りである。
注:質問 3-12)でデータベース化しているという回答は 5 機関であり、本質問への回答
は 6 機関と若干矛盾するが、コンピュータ上で台帳作成しているという回答も一種のデ
ータベースと理解し、回答そのままを掲載している。
15)データベース化している場合の検索可能項目(複数選択)
検索可能項目につき質問 3-11)の収蔵テキスタイルの記録項目と同じ項目を提示して聞
いた結果、6 機関から回答があり、例えば 50%以上の機関が指摘した項目は「収蔵番号」
「品名」
「素材名」
「糸番手等」
「織編組織名」
「染色加工の明細」
「用途」など 7 項目であ
った。質問 3-11 の回答と比較すると、データベース化している機関の方がより詳細な情
報を記録していると見ることができよう。
DBの検索可能項目
66.7%
1.収蔵番号
83.3%
2.品名
100.0%
3.素材名
4.糸番手等
83.3%
5.織編組織名
83.3%
50.0%
6.染色加工の明細
7.生産時期
16.7%
8.生産者名
16.7%
9.生産地
16.7%
50.0%
10.用途
16.7%
11.入手経路
33.3%
12.その他
0%
20%
40%
54
60%
80%
100%
質問4
現在のテキスタイル資料の収集・展示関連費用および資金源
各機関におけるテキスタイル資料の収集及び展示に係る費用及びその源泉について聞い
たが、回答数は少なかった。
1)今年度の年間費用予算(千円)
平均年間費用予算
回答機関数
公設試
1,321
7
地場産
38
2
産地組合
583
6
計
854.7
15
年間費用予算は、15 機関からの回答を平均すると 854.7 千円であった。
2)費用予算内訳(指摘数)
1.人件費
2.収蔵品新規買付費
3.収蔵品維持費
4.展示関連費
5.その他
計
回答機関数
1機関あたり回答数
公設試
2
1
0
2
3
8
6
1.3
地場産
0
1
1
1
0
3
2
1.5
産地組合
2
2
2
6
5
17
8
2.1
計
4
4
3
9
8
28
16
1.8
費用予算の内訳については項目別の%を聞いたが、%の記入が少なかったため、ここで
は項目別の指摘数を集計して表にしてある。1 機関平均 1.8 項目の指摘があり、多かった
のは「展示関連費」であった。
3)資金源(指摘数)
1.組合費等自主財源
2.国・自治体等
3.寄付等
4.会費等
5.借入金
6.その他
計
公設試
4
4
0
0
0
0
8
地場産
0
2
0
0
0
0
2
産地組合
8
7
0
2
0
1
18
計
12
13
0
2
0
1
28
資金の源泉についても指摘数を集計したが、多かったのは「国・自治体等」及び「組合
費等自主材源」であった。
55
質問5
テキスタイル資料の貸出や分譲
収蔵テキスタイル資料活用の一環としての貸出や分譲について聞いた。
1)貸出(単一選択)
テキスタイル資料の貸出
80%
60%
40%
20%
0%
公設試
地場産
産地組合
計
1.美術館などに貸し出
すことあり
3.6%
33.3%
8.3%
7.0%
2.研究者等の要請で貸
し出すことあり
3.貸出は原則的に行わ
ない
17.9%
0.0%
33.3%
20.9%
78.6%
66.7%
58.3%
72.1%
貸出については、
「原則的に行わない」とする機関が 72.1%と多数を占めた。産地組合は
比較的貸出に応じるケースが多いようである。
2)分譲(単一選択)
分譲については、「原則的になし」という回答が 97.7%と圧倒的に多数を占めた。
テキスタイル資料の分譲
100%
80%
60%
40%
20%
0%
2.原則的になし
1.することあり
公設試
地場産
産地組合
計
100.0%
0.0%
100.0%
0.0%
91.7%
8.3%
97.7%
2.3%
56
質問6
収蔵テキスタイル資料のデジタル画像情報化
1)テキスタイル資料のデジタル画像化の意義(複数選択)
テキスタイル資料デジタル画像化の意義
100%
80%
60%
40%
20%
0%
公設試
地場産
産地組合
計
1.資料長期保存の一助
となる
71.4%
66.7%
75.0%
71.8%
2.検索で的確・迅速な
情報入手が可能
3.散在している情報を
集中検索できる
4.その他
50.0%
66.7%
25.0%
46.2%
42.9%
100.0%
25.0%
43.6%
17.9%
0.0%
25.0%
17.9%
収蔵テキスタイル資料のデジタル画像化の意義について、3 項目を例示して聞いた。その
結果、もっとも多かった回答は「資料長期保存の一助となる」(71.8%)であった(テキ
スタイル資料の場合、退色、虫害、場合によっては閲覧者による無断カットなど、良好
に保管するにはさまざまな苦労があるようである)。「検索で的確・迅速な情報入手が可
能」や「散在している情報を集中検索できる」など、デジタルアーカイブの長所を指摘
した回答も 46.2%と 43.6%と比較的多数を占めた。デジタル画像化の意義は比較的理解
されていると考えてよさそうである。
2)デジタル画像化の取り組み状況(単一選択)
各機関のデジタル画像化の取り組み状況については、「デジタル画像化すみ」という回答
は計 12.8%に過ぎず、デジタル画像化はあまり進んでいないことが判明した。
「実施取組
中」
「実施を計画中」という回答も計 7.7%にすぎなかった。これに対し「実施計画なし」
という回答が 59.0%あり、デジタル画像化推進派と否定派に両極分解している印象を受
ける結果であった。とは言え、いかなる環境の相違や考え方の相違から推進派、否定派
に別れているのかは、アンケート調査の結果からは不明である。
57
デジタル画像化の取り組み状況
80%
60%
40%
20%
0%
1.すべてデジタル化すみ
2.一部デジタル化すみ
3.実施取り組み中
4.実施を計画中
5.将来実施したい
6.実施計画なし
公設試
地場産
産地組合
計
0.0%
15.4%
11.5%
0.0%
19.2%
53.8%
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
33.3%
66.7%
0.0%
10.0%
0.0%
0.0%
20.0%
70.0%
0.0%
12.8%
7.7%
0.0%
20.5%
59.0%
3)デジタル画像のインターネット等での公開について(単一選択)
デジタル画像の公開意向
100%
80%
60%
40%
20%
0%
3.公開の必要なし
2.一部の公開でよい
1.すべて公開すべき
公設試
地場産
産地組合
計
25.9%
66.7%
0.0%
33.3%
22.2%
77.8%
23.1%
66.7%
7.4%
66.7%
0.0%
10.3%
次に、デジタル画像をインターネット上で公開すべきと考えるかどうか聞いた結果、「公
開」を肯定する意見は 77.0%と多かった。
「公開の必要なし」とする意見は公設試と産地
組合に見られ、地場産センターには見られなかった。これは前 2 者の場合、新製品の意
匠等の知的財産権問題などが念頭にあるものを推測される。地場産センターの場合は製
品を販促する立場が強く、そうしたことはあまり問題にならないのであろう。
4)デジタル画像のインターネット上での公開状況(単一選択)(18 機関)
58
質問 6-2)「デジタル画像化の取り組み状況」で「デジタル化している」と回答した機関
を対象にデジタル画像のインターネット上への公開状況について聞いた。しかし、デジ
タル化していない機関からも回答があり、「公開中」とした機関は 1 機関のみ、「公開予
定なし」としたのが 17 機関で、公開には否定的な意見が多い結果であった。
1.すべて公開中
2.一部を公開中
3.公開準備中
4.公開予定なし
計
公設試
0
1
0
13
14
地場産
0
0
0
1
1
産地組合
0
0
0
3
3
計
0
1
0
17
18
5)デジタル化を推進する上での困難点(複数選択)
デジタル化推進上の困難点
100%
80%
60%
40%
20%
0%
1.費用がかさむ
2.要員がいない
3.必要な技術がない
4.サンプルの情報が不足
5.活用が期待薄
6.その他
公設試
地場産
産地組合
計
64.0%
80.0%
66.7%
100.0%
50.0%
70.0%
60.5%
78.9%
28.0%
36.0%
40.0%
100.0%
66.7%
33.3%
20.0%
50.0%
30.0%
31.6%
42.1%
36.8%
20.0%
0.0%
20.0%
18.4%
収蔵テキスタイルをデジタル画像化する上での困難点として、もっとも多かった回答は
「要員がいない」の 78.9%、第 2 位は「費用がかさむ」の 60.5%、第 3 位は「サンプル
の情報が不足」の 42.1%であった。「活用が期待薄」「必要な技術がない」もそれぞれ回
答企業の 36.8%と 31.6%が指摘した。これらの困難点のうち、要員、費用、技術などに
ついては、高精細なデジタルカメラの価格低下と機能向上などを背景に、例えば今回の
調査で想定されているアーカイブ中核機関が簡単な撮影装置や撮影ノウハウ、アーカイ
ブ化のためのコンピュータ・ソフトウエア等を開発し、無償あるいは低価格で配布する
ことにより、各機関の負担は相当程度軽減される可能性があろう。活用の問題も、中核
機関との連携により総合的なアーカイブとしての魅力が付けば解決される可能性はあろ
う。そのように考えると、最大の問題は「サンプルの情報不足」である可能性がある。
59
そこで、今後デジタルアーカイブ化を進めようとする際、①最低限必要な情報を決めて
ふるいにかける、②重要なサンプルについては調査して情報を補充する、③色柄や表面
感などに特色があるサンプルは情報が少なくてもアーカイブに加えるなど、対処方針を
決める必要があろう。
質問7
収蔵テキスタイル資料の活用拡大
1)収蔵テキスタイル資料のデジタルアーカイブ化(単一選択)
デジタルアーカイブ化の状況
60%
40%
20%
0%
1.自己費用で推進中
2.補助金次第
3.どちらともいえない
4.推進に消極的
5.推進の予定なし
公設試
地場産
産地組合
計
7.4%
18.5%
0.0%
33.3%
0.0%
10.0%
5.0%
17.5%
25.9%
0.0%
48.1%
33.3%
0.0%
33.3%
50.0%
0.0%
40.0%
32.5%
0.0%
45.0%
各機関が収蔵しているテキスタイルサンプルのデジタルアーカイブ化の状況について聞
いた結果、アーカイブ化を「推進中」という回答は 5.0%に過ぎず、「推進の予定なし」
という回答が 45.0%に上った。しかし、態度未定や補助金次第という回答も計 40.0%に
上っており、今後の働きかけ次第ではアーカイブ化を進める機関が増加する可能性はあ
るのではなかろうか。なお、現在アーカイブ化を推進中(=「自己費用で推進中」)の機
関は公設試のみで、地場産センターや産地組合でアーカイブ化を推進中という回答はな
かった。
2)テキスタイル・デジタルアーカイブ中核機関が形成された場合の連携・公開意向(単
一選択)
デジタルアーカイブの中核機関が形成された場合、ここと連携してデジタルアーカイブ
を公開する意向があるかどうかについて、「ぜひ公開したい」と言う意見は残念ながらな
く、逆の「公開の予定なし」という意見は 31.0%であった。「補助金次第」「どちらとも
60
言えない」という、現時点では態度未定だが、必ずしも否定的とはいえない回答は計
64.3%に上ったが、これらは、今後形成されるであろう中核機関からの働きかけ及びアー
カイブ全体としての魅力の付け方次第では前向きに転じる可能性はあると言えよう。
中核機関との連携意向
60%
40%
20%
0%
1.ぜひ公開したい
2.補助金次第
3.どちらともいえない
4.公開に消極的
5.公開の予定なし
公設試
地場産
産地組合
計
0.0%
17.9%
0.0%
33.3%
0.0%
0.0%
0.0%
14.3%
57.1%
3.6%
21.4%
33.3%
0.0%
33.3%
36.4%
9.1%
54.5%
50.0%
4.8%
31.0%
3)テキスタイル資料が実践的な商品企画・設計に活用されるために必要な努力・工夫(3
項選択)
テキスタイル資料活用に必要な努力・工夫
100%
80%
60%
40%
20%
0%
1.キュレーターの育成
2.多様な検索方法
3.収蔵品の拡充
4.簡便な検索・閲覧
5.貸出サービスの実施
6.その他
公設試
地場産
産地組合
計
48.0%
72.0%
100.0%
66.7%
55.6%
33.3%
54.1%
62.2%
40.0%
44.0%
66.7%
66.7%
55.6%
0.0%
45.9%
35.1%
16.0%
8.0%
0.0%
0.0%
11.1%
44.4%
13.5%
16.2%
デジタル画像が実践的な商品企画・設計に活用されるために必要な努力・工夫について
は、「多様な検索方法」が第 1 位(62.2%)、「キュレーターの育成」が第 2 位(54.1%)、
61
「収蔵品の拡充」が第 3 位(45.9%)であった。
「簡便な検索・閲覧」も 35.1%の指摘が
あった。
「貸出サービスの実施」は 13.5%のみであった。情報ニーズに応じた多様な検索
ができること、利用者の相談に乗り、あるいは積極的な情報発信を行うキュレーターの
存在などが重視されていることが判明した。
質問8
テキスタイルの収集を持っている企業または個人の情報(とくに廃業した企業・
個人のもの)
。
回答件数
公設試
地場産
産地組合
計
4
3
4
11
散逸の危機に瀕しているテキスタイルコレクションの状況把握は本アンケート調査の目
的の一つである。その照会に対し計 11 件の情報がよせられたが、廃業・倒産した企業に
関する情報はなかった。
質問9
テキスタイル資料のさらなる活用のための方策等についての考え
有意な書き込み件数
公設試
地場産
産地組合
計
7
0
4
11
過去、デジタル化に取り組んだ経験からデジタルアーカイブには限界がある(伝達でき
る情報が多くない、費用がかかるなど)、しかし重要性もあるので国の施策として所要費
用を準備願いたいことなどが、複数の意見として表明されていた。
その他、テキスタイルへの理解を深めるための現物サンプルへのリンク(都内などに現
物サンプルを見られる施設を整備など)、今はなくなった過去の加工仕上げ技術の代替技
術情報の掲載、需要開拓への利活用の検討などの意見も見られた。
2-2-2-3 アンケート調査3(専門学校、博物館・美術館対象「テキスタイル資料の収集・
展示に関するアンケート調査」)の結果
質問1
回答機関概要
アンケートは次の表記載の 153 機関に対して発送し(実効発送数 150 機関)、49 機関か
ら有効な回答を得た。実効発送数に対する回答率は 32.7%である。
回答は、①専門学校、②博物館・美術館に分類してクロス集計を行った。なお、回答機
関数が少なかった質問については、設問の末尾に回答した機関数を括弧書きしている。
A
B
C=A−B
D
E=C/D
種 類
発送数
返戻等
実効発送数
回答数
回答率
専門学校
85
0
85
17
20.0%
博物館・美術館
68
3
65
32
49.2%
計
153
3
150
49
32.7%
62
13)テキスタイル資料収蔵の有無(単一選択)
テキスタイル資料収蔵の有無
100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
専門学校
2.収蔵していない
1.収蔵している
博物館
計
75.0%
51.6%
59.6%
25.0%
48.4%
40.4%
調査対象とする専門学校は服飾分野の学校に限定し、ウェブサイト等から収集したリス
トによりアンケートを発送した。博物館・美術館はテキスタイルや繊維、衣服関連の収
集があると考えられる機関を『全国博物館総覧』等の資料からリストアップして発送し
た。その結果、テキスタイル資料を「収蔵している」機関は 40.4%(専門学校では 25.0%、
博物館・美術館では 48.4%)であった。
質問2
収蔵品について(テキスタイル資料収蔵機関対象)
1)全体の収蔵品総点数(18 機関)
テキスタイル資料を収蔵している機関を対象に、テキスタイルを含めた全収蔵品の点数
を聞いた結果、回答は「1000 点以下」から「1 万点超」まで幅広く分散した。もっとも
多かったのは「1000 点未満」
(33.3%)、次は「1 万点超」
(27.8%)で、両極分化の傾向
が認められた。
収蔵品総点数
50%
40%
30%
20%
10%
0%
1.1000以下
2.5000以下
3.1万以下
4.1万超
5.不明(多数)
専門学校
博物館
計
50.0%
28.6%
33.3%
0.0%
25.0%
0.0%
25.0%
28.6%
7.1%
35.7%
0.0%
22.2%
11.1%
27.8%
5.6%
63
3)うち、テキスタイル資料の収蔵点数(15 機関)
テキスタイル資料収蔵点数
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
専門学校
博物館
計
50.0%
76.9%
73.3%
2.5000以下
0.0%
15.4%
13.3%
3.1万以下
4.1万超
50.0%
0.0%
6.7%
0.0%
0.0%
7.7%
0.0%
6.7%
0.0%
1.1000以下
5.不明(多数)
次に、テキスタイル資料に絞って収蔵点数を聞いた結果、「1000 点以下」が非常に多く
73.3%を占めた。「1 万点超」は 6.7%に過ぎなかった。
5)収蔵テキスタイル資料の増減傾向(単一選択)(13 機関)
収蔵しているテキスタイル資料の増減傾向については、「毎年相当増加」という回答はな
く、「毎年若干増加」は 23.1%であった。もっとも多かったのは「ほとんど変わらない」
という回答で 69.2%を占めた。「破損・喪失等で減少」は 7.7%であった。不変や減少と
回答した機関(計 74.5%)では新規収集活動がほとんど行われていないと考えられ、収
集活動を継続実施しているのは回答機関の 1/4 程度と見られる。
収蔵テキスタイル資料の増減傾向
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
1.毎年相当増加
専門学校
博物館
計
0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
27.3%
23.1%
3.ほとんど変わらない
100.0%
63.6%
69.2%
4.破損・滅失等で減少
0.0%
9.1%
7.7%
2.毎年若干増加
64
質問3
テキスタイル資料の収蔵形態について
1)テキスタイル資料の収蔵形態(複数選択)
テキスタイル資料の収蔵形態
60%
50.0%
50.0%
50%
40%
30%
31.3%
25.0%
25.0%
20%
12.5%
12.5%
10%
0%
物
反
1.
他
け
チ
式
ル
付
の
ッ
形
プ
り
.そ
スワ
本帳
貼
サン
7
.
見
紙
ー
6
.
台
ガ
5
.
ン
4
ハ
着
2.
3.
分
デジタル写真化を念頭に、テキスタイルをどのような形態で収蔵しているか聞いた結果、
「着分」と「見本帳形式」がもっとも多く、ともに 50.0%であった。次に多かったのは
「台紙貼り付け」の 31.3%であった。デジタル写真化に適した収蔵形式としては、反物、
着分、ハンガー、台帳貼り付けなどであろう。見本帳やスワッチなどは一般にサイズが
小さく、デジタル写真化には向いていないと考えられる(並べて撮影して色のバラエテ
ィーを示すような用途には利用可能)。
質問4
展示室について
1)面積(テキスタイル展示分)(6 機関)
テキスタイル展示面積(博物館・美術館)
テキスタイルサンプルの展示スペースは、一応の
区分として 100 ㎡より広いか狭いかで分類して
みたが、「100 ㎡超」という回答が多く 83.3%で
100㎡以下
16.7%
あった。ただ、この質問に対する回答数は極めて
少なく、無回答の機関における展示スペースはな
いか、あっても極めて狭い、またはテキスタイル
だけのスペースはないといった状況が考えられ
100㎡超
83.3%
る。
65
2)主な展示方法(単一選択)(12 機関)
テキスタイルの主要展示方法
(博物館・美術館)
主な展示方法は、
「陳列ケース内」で 66.7%であ
った。「裸展示」という回答は 33.3%であった。
裸展示
33.3%
陳列ケー
ス内に展
示
66.7%
3)展示品へのアクセス(単一選択)(12 機関)
展示品へのアクセス(博物館・美術館)
テキスタイルを学習・研究する立場からは、展
示テキスタイルを触ってよいかどうかは重要事
原則的に
触ってよ
い
8.3%
項といえよう。ほとんどの回答は「原則的に触
ってはいけない」
(91.7%)であったが、8.3%の
回答は「原則的に触ってよい」であった。
原則的に
触っては
いけない
91.7%
4)平均的な展示期間(単一選択)
(12 機関)
平均的な展示期間(博物館・美術館)
平均的な展示期間については、
「展示替えはほと
んどない」という回答が 33.3%ともっとも多か
展示替え
ほとんど
なし
33.3%
4か月∼
1年程度
16.7%
った。いわゆる常設展示である。次に多かった
1か月程
度
8.3%
回答は「2 か月程度」で 25.0%であった。これ
2か月程
度
25.0%
を含み「1∼3 ヵ月」程度の展示期間のものは、
いわゆる企画展示に該当するものと考えられる。
3か月程
度
16.7%
66
質問5
テキスタイル資料の収集について
1)収集方法(10%単位で記入)(9 機関)
収蔵テキスタイルの収集方法については「寄贈」
テキスタイル資料の収集法法
(計)
によるものが多く 66.7%であった。次は「相対
交渉で購入」で 27.8%であった。「オークショ
その他
5.6%
ンで購入」はなく、
「その他」は 5.6%であった。
相対交渉
で購入
27.8%
公設試等を対象とするアンケート調査 2 では
「その他」が 42.3%と非常に多かったのとは対
照的である。
寄贈
66.7%
オーク
ションで
購入
0.0%
2)主要入手先(12 機関)
主要入手先所在地(計)
テキスタイル資料の入手先は「国内」が多く
83.3%に達し、
「海外」は 16.7%のみであった。
海外
16.7%
国内
83.3%
67
質問6
テキスタイル資料収集にあたっての方針等について
注:日本では、
「古代∼中世」は鎌倉・室町時代まで、
「近世」は安土桃山・江戸時代、
「現
代」は明治以降、海外では、
「古代∼中世」は産業革命以前、
「近世」は産業革命以後、
「現代」は 20 世紀以降
1)収集資料選定基準1(複数選択)(13 機関)
資料収集選定基準1(計)
80%
71.4%
70%
60% 57.1%
50.0%
50%
35.7%
40%
28.6%
30%
21.4%
21.4%
20%
10%
14.3%
14.3%
14.3%
14.3%
7.1%
7.1%
1
.
民
俗
的
に
( 意
a 義
. あ
古 る
代 も
∼ の
( 中
2
世
b
.
)
産 ( .近
業
世
的 c
)
に .現
( 意
代
義
a
. あ )
古 る
代 も
∼ の
3
( 中
.
世
b
ファ
ッシ .近 )
(
ョン
的 c 世)
に 意 .現
(
a 義あ 代)
.
古 るも
代
∼ の
( 中
世
b
. )
近
(
c 世
. )
現
4 代
. )
そ
の
他
0%
テキスタイル資料収集にあたっての選定基準として、意義と時代について聞いた結果、
意義についてはもっとも多かった回答は「産業的に意義があるもの」で 71.4%を占めた。
次は「民俗的に意義があるもの」(57.1%)で、第 3 位は「ファッション的に意義がある
もの」(14.3%)であった。専門学校や博物館・美術館などではファッション的に意義が
あるサンプルの収集をあまり重視していないことが判明した。時代的には、新しいもの
ほど重視される傾向が明瞭であるが、その中で「ファッション的に意義があるもの」に
ついては古いものから新しいものまで同じように重視される傾向が見てとれた。
2)収集資料選定基準2(複数選択)(13 機関)
資料選定基準としてどの地域のサンプルを重視
資料収集選定基準2(計)
しているのか聞いた結果、もっとも重視されてい
その他
26.1%
日本の資
料
47.8%
るのは「日本」で 47.8%であった。「先進諸国」
「エスニック」はそれぞれ 13.0%(計 26.0%)
と同じ重視度であった。この結果と、質問 5-2)
エスニッ
ク的な資
料
13.0%
先進諸国
の資料
13.0%
68
の主要入手先所在地における「海外」(16.7%)
とを対比すると、「入手先」の方が「海外」の割
合が小さい。おそらく、海外サンプルについては
かなり絞り込まれたサプライ・ソースから購入し
ているのであろうと推察される。
3)収集の決定方法(単一選択)(13 機関)
収集を決定するのが誰であるかにつ
収集の決定方法(計)
いては、もっとも多かった回答は「収
外部も含
む審査機
関が決定
16.7%
集担当責任者が単独決定」で 75.0%
であった。次は「外部も含む審査機
関が決定」の 16.7%、第 3 位は「収
内部の委
員会的組
織が決定
0.0%
蔵・展示部門の責任者が単独決定」
の 8.3%であった。おそらく、公的機
関においては審査機関が関与し、私
収蔵・展
示部門の
責任者が
単独決定
8.3%
質問7
的機関においては収集担当責任者や
収蔵・展示部門の責任者(前者を兼
収集担当
責任者が
単独決定
75.0%
務している場合も多いと推察され
る)が決定しているケースが多いと
いうことなのであろう。
テキスタイル資料の展示・閲覧について
1)展示品の閲覧(単一選択)(18 機関)
展示品の閲覧(博物館・美術館)
見学者の展示品の閲覧については、「入場料を徴
収」という回答が 73.3%と多く、
「無料」は 6.7%
その他
20.0%
無料
6.7%
に過ぎなかった。
入場料を
徴収
73.3%
69
2)展示外収蔵品の閲覧(単一選択)(18 機関)
展示していない収蔵品の閲覧(注:研究目的では
展示外収蔵品の閲覧(博物館・美術館)
こうしたニーズが多いと推測される)については、
「原則不可」が 40%と多かったが、
「事前申請」
その他
20.0%
や「ケースが位ケース」など柔軟な姿勢の機関も
原則とし
て不可
40.0%
計 40.0%と多く見られた。
ケースバ
イケース
26.7%
事前申請
による
13.3%
質問8
テキスタイル資料の記録・検索
1)記録項目(複数選択)(16 機関)
収蔵テキスタイル資料について、どのような事項を記録しているのか、11 項目を例示し
て聞いた結果、
「収蔵番号」
(68.8%)、
「品名」
(81.3%)、
「素材名」
(56.3%)などが 50%
超と、多く見られる項目であった。その他「生産時期」「生産者名」「用途」「入手経路」
等も 30%超で、比較的多く見られる項目と言えよう。
テキスタイル資料の記録項目
68.8%
1.収蔵番号
81.3%
2.品名
56.3%
3.素材名
18.8%
4.糸番手等
25.0%
5.織編組織名
6.3%
6.染色加工の明細
37.5%
7.生産時期
31.3%
8.生産者名
計
博物館
専門学校
18.8%
9.生産地
10.用途
31.3%
11.入手経路
31.3%
6.3%
12.その他
0%
10%
20%
70
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
2)記録形態(単一選択)(12 機関)
データの記録形態は「台帳」が最多
記録形態(博物館・美術館)
で 50.0%、次は「カード」(25.0%)
コン
ピュータ
(DB)
8.3%
で、
「コンピュータ利用」は計 25.0%
と少なかった。公設試等を対象とし
台帳
50.0%
コン
ピュータ
(台帳)
16.7%
たアンケート調査 2 における質問
3-12)の結果(コンピュータ利用は
17.9%)と比較すると、専門学校、博
物館・美術館の方がコンピュータ利
用は若干進んでいると言えよう。
カード
25.0%
3)利用者の検索方法(複数選択)
(14 機関)
利用者がいかなる方法で収蔵品を検
利用者の検索方法(博物館・美術館)
5.検索
サービス
なし
42.9%
1.係員
に質問
42.9%
索できるかについては、もっとも多
かった回答は「係員に質問」と「検
索サービスなし」で、ともに 50.0%
であった。「カードを閲覧」(7.1%)、
「コンピュータ端末で検索」
(11.9%)
などは少数派であった。
4.その
他
0.0%
3.コン
ピュータ
端末で検
索
14.3%
2.カー
ドを閲覧
0.0%
4)データベース化している場合のデータベースソフト(単一選択、記入)
1.汎用DBソフト
2.特注DBソフト
計
専門学校
0
0
0
博物館
2
1
3
計
2
1
3
収蔵品のデータをデータベース化している場合、いかなるソフトを利用しているかにつ
71
いては、3 件の回答しかなかったが、
「汎用データベース・ソフト」が 2 件、
「特注データ
ベース・ソフト」が 1 件であった。
5)データベース化している場合の検索可能項目(複数選択)(3 機関)
DB化している場合の検索可能項目(博物館・美術館)
1.収蔵番号
100.0%
2.品名
100.0%
66.7%
3.素材名
4.糸番手等
0.0%
33.3%
5.織編組織名
6.染色加工の明細
0.0%
33.3%
7.生産時期
66.7%
8.生産者名
9.生産地
0.0%
10.用途
0.0%
66.7%
11.入手経路
12.その他
0.0%
0%
20%
40%
60%
80%
100%
データベース化している場合の検索可能項目については、例えば 50%以上の指摘があっ
た項目をあげると、「収蔵番号」(66.7%)、「品名」(83.3%)、「素材名」(100.0%)、「糸
番手等」
(83.3%)、
「織編組織名」
(83.3%)、
「染色加工の明細」
(50.0%)、
「用途」
(50.0%)
の 7 項目であった。
(回答数が 3 機関しかないのであまり有意な数字とは言えないが)こ
の結果を公設試等を対象としたアンケート調査 2 の質問 2-2-3)の結果と対比すると、調
査 2 では 50.0%以上の指摘があった項目は 5 項目であるので、専門学校や博物館・美術
館の方が若干多い項目について記録しているようである。
質問9
人員について
注:人数には 18 日間/月以上勤務するパート・アルバイトを含む。
1)組織全体の人数(博物館・美術館 12 機関)
組織全体の人数
5人以下
10人以下
20人以下
20人超
計
1
7
2
2
12
8.3%
58.3%
16.7%
16.7%
100.0%
回答機関の人数は「6∼10 人」がもっとも多く 7 機関(58.3%)を占めた。
72
2)資料収集・展示関連の人数(博物館・美術館 12 機関)
資料収集・展示関連の人数
3
25.0%
0
0.0%
1
8.3%
3
25.0%
4
33.3%
1
8.3%
12
100.0%
1人
2人
3人
4人
5人
5人超
計
6
1
1
2
2
0
12
うち、学芸員
50.0%
8.3%
8.3%
16.7%
16.7%
0.0%
100.0%
資料収集・展示関連の人数は「1 人」から「5 人超」までばらつきがあった。学芸員につ
いては資料収集・展示関連人数と整合性がとれて居らず、おそらく組織全体の学芸員数
を回答した機関が多かったのではないかと推察される。
質問 12 収蔵テキスタイル資料のデジタル画像情報化
1)テキスタイル資料のデジタル画像化の意義(複数選択)(12 機関)
収蔵テキスタイル資料のデジタル画像化の意義については、アンケート調査 2 の結果と
同じく「資料長期保存の一助となる」という回答がもっとも多く 66.7%に達した。
「検索
で的確・迅速な情報入手が可能」及び「散在している情報を集中検索できる」など、デ
ジタルアーカイブの長所を示した回答も 58.3%と 25.0%と比較的多数を占めた。デジタ
ル画像化の意義は比較的理解されていると考えてよさそうである。
テキスタイル資料デジタル画像化の意義
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
計
1.資料長期保存 2.検索で的確・ 3.散在している
の一助となる
迅速な情報入手が 情報を集中検索で
66.7%
58.3%
25.0%
73
4.その他
0.0%
2)デジタル画像化の取り組み状況(単一選択)(14 機関)
デジタル画像化の取り組み状況
57.1%
60%
50%
40%
30%
21.4%
21.4%
20%
10%
0.0%
0.0%
0.0%
0%
中
中
る
み
み
し
組み
化す
化す
計画
てい
画な
り
に
報
え
報
計
在取
ル情
ル情
体的
と考
実施
ジタ
ジタ
を具
く現
たい
6.
施
デ
し
デ
べ
.実
べて
部を
実施
施す
4
来
す
一
実
将
.
.
.
1
2
3
5.
各機関のデジタル画像化の取り組み状況については、「すべてデジタル画像化すみ」とい
う回答はなく、
「一部をデジタル画像化すみ」という回答が 21.4%あった。デジタル画像
化はあまり進んでいないことが判明した。「実施取組中」「実施を計画中」という回答は
なかった。これに対し「実施計画なし」という回答が 57.1%あり、デジタル画像化推進
派と否定派に両極分解している印象を受ける結果であった。とは言え、いかなる環境の
相違や考え方の相違から推進派、否定派に別れているのかは、アンケート調査の結果か
らは不明である。
3)デジタル画像のインターネット等での公開への考え(単一選択)
(11 機関)
次に、デジタル画像はインターネット上
デジタル画像の公開意向
3.公開
の必要な
し
27.3%
で公開すべきと考えるかどうか聞いた結
1.すべ
て公開す
べき
18.2%
果、
「公開」を肯定する意見は 72.7%と多
かった。「公開の必要なし」とする意見は
27.3%のみであった。
2.一部
の公開で
よい
54.5%
74
4)デジタル画像のインターネット上での公開状況(単一選択)(6 機関)
デジタル画像のインターネット上への公
デジタル画像の公開状況
開状況については、「一部を公開中」と回
1.すべ
て公開中
0.0%
2.一部
を公開中
16.7%
答した機関が 1 機関(16.7%)あったの
みで、他はすべて「公開予定なし」であ
った。
3.公開
準備中
0.0%
4.公開
予定なし
83.3%
5)デジタル化を推進する上での困難点(複数選択)(11 機関)
デジタル化推進上の困難点
100%
81.8%
80%
60%
54.5%
36.4%
40%
20%
9.1%
9.1%
0%
い
不足
ない
さむ
ない
きな
がい
がか
術が
報が
で
員
用
技
情
待
要
費
な
する
が期
2.
1.
必要
活用
に関
ル
う
3.
プ
見合
サン
力に
4.
努
5.
収蔵テキスタイルをデジタル画像化する上での困難点として、もっとも多かった回答は
「費用がかさむ」の 81.8%、第 2 位は「要員がいない」で 54.5%であった。第 3 位は「努
力に見合う活用が期待できない」の 36.4%であった。アンケート調査 2 でかなり大きな
困難点とされた「サンプルの情報が不足」は 9.1%に過ぎなかった。アンケート 2 でも報
告したが、これらの困難点のうち、要員、費用、技術などについては、高精細なデジタ
ルカメラの価格低下と機能の向上などもあり、例えば今回想定されているアーカイブ中
核機関が撮影ノウハウや簡単な撮影装置、アーカイブ化のコンピュータ・ソフトウエア
等を開発し、無償あるいは低価格で配布することにより相当程度各機関の負担は軽減さ
れる可能性があろう。活用の問題も、中核機関との連携により総合的なアーカイブとし
ての魅力が付けば解決される可能性はあるものと推察される。
75
質問 13 貴機関のテキスタイル資料の貸出・分譲
1)貸出(単一選択)(15 機関)
収蔵テキスタイル資料の貸出については、
テキスタイル資料の貸出
「美術館などに貸し出すことがある」とい
1.美術
館などに
貸し出す
ことあり
53.3%
3.貸出
は原則的
に行わな
い
46.7%
う回答が過半の 53.3%を占めた。回答者の
ほとんどは博物館・美術館であり、
「国民の
知る権利を保障する」という考えのもと、
収蔵品の交流が行われるケースが多いので
あろう。
2.研究
者等の要
請で貸し
出すこと
あり
0.0%
2)分譲(単一選択)(13 機関)
テキスタイル資料の分譲
収蔵品テキスタイルの分譲については、23.1%が
「分譲することがある」と回答しており、アンケ
1.分譲
すること
がある
23.1%
ート調査 2 における 2.3%とは大きな相違があっ
た。これも前項と同様の理由によるものであろう
かと推察される。
2.分譲
は原則的
に行わな
い
76.9%
質問 14 収蔵テキスタイル資料の活用拡大
1)収蔵テキスタイル資料のデジタルアーカイブ化(単一選択)(14 機関)
各機関が収蔵しているテキスタイル
デジタルアーカイブ化の状況
5.推進
する予定
はない
42.9%
4.あま
り推進し
たくない
7.1%
1.自己
費用で推
進(計
画)中
7.1%
2.補助
金があれ
ば推進希
望
14.3%
3.どち
らともい
えない
28.6%
76
サンプルのデジタルアーカイブ化の
状況について聞いた結果、「推進中」
という回答は 7.1%、
「推進予定なし」
が 42.9%であった。態度未定や補助
金次第という回答は 42.9%に上って
おり、今後の働きかけ次第ではアー
カイブ化を進める機関が増加するこ
とが期待できるのではなかろうか。
注
2)テキスタイル・デジタルアーカイブ中核機関 が形成された場合の連携・公開意向(単
一選択)(14 機関)
デジタルアーカイブの中核機関が形
中核機関との連携意向
5.公開
する予定
はない
28.6%
4.あま
り公開し
たくない
14.3%
1.ぜひ
公開した
い
0.0%
成された場合、ここと連携してデジ
タルアーカイブを公開する意向があ
るかどうかについて、
「ぜひ公開した
い」と言う意見は残念ながらなく、
2.補助
金があれ
ば公開し
たい
21.4%
3.どち
らともい
えない
35.7%
公開に否定的な意見は計 42.9%に上
った。「補助金次第」「どちらとも言
えない」という、現時点では態度未
定だが必ずしも否定的とはいえない
回答は計 57.1%に上り、これらは、
中核機関からの働きかけ及びアーカ
イブ全体としての魅力の付け方次第
では前向きに転じる可能性があると
言えよう。
3)収蔵テキスタイル資料が実践的な商品企画・設計に活用されるために必要な努力・工
夫(3 項選択)(10 機関)
テキスタイル資料活用に必要な努力・工夫
デジタル画像が実践的な商品企画・
設計に活用されるために必要な努
5.貸出
サービスの
実施
0.0%
6.その他
5.0%
力・工夫については、「キュレーター
の育成」、「収蔵品の拡充」、「簡便な
1.キュ
レーターの
育成
25.0%
4.簡便な
検索・閲覧
25.0%
3.収蔵品
の拡充
25.0%
2.多様な
検索方法
20.0%
77
検索・閲覧」の 3 項目がそれぞれ
25.0%となった。「多様な検索方法」
は 20.0%であった。
質問 15 テキスタイルの収集を持っている企業または個人の情報(とくに廃業した企業・
個人のもの)
回答総件数
専門学校
0
博物館
1
計
1
現在経営中の財団コレクション 1 件について紹介があった。
質問 16 テキスタイル資料のさらなる活用のための方策等についての考え
残念ながら書き込みはなかった。
78
3.テキスタイル・デジタルアーカイブ構築に向けた課題と要素
3-1
総論
日本のテキスタイル産業が厳しい国際競争下で淘汰が進む中、日本の繊維産業の貴重な
資産であるテキスタイル見本やデータが散逸することを恐れ、また、繊維産業の資産であ
るテキスタイルアーカイブを活用した産地企業の企画力向上、テキスタイル等に関する人
材育成を目的に、過去にも、全国の繊維リソースセンター、地場産業振興センター等の産
地支援機関において、テキスタイルアーカイブ整備及びデジタル化の試みが行われた。
当初、テキスタイルアーカイブの目的を産地企業が海外サンプル等を分解・再現するこ
とに設定していたが、市場で最新トレンドや直近の売れ筋に対応した製品を短サイクルで
生産することを強く求められるようになったこともあって利用者は増えなかった。
また、デジタル化については、当時のハードウェア、インターネット回線速度等の性能
が低く、大量の画像を処理することが困難だった。また、入力のコストが高くついたため、
十分な量のデータベースが蓄積される以前に入力を中止するケースが多かった。更に、イ
ンターネットの普及率が低く、インターネットのビジネス活用も進んでいなかったため、
デジタルアーカイブの必要性や意義も十分に理解されなかった。
現在では、ITの進化とハードウェア、インターネット回線等のコストが飛躍的に下が
り、ビジネスへのインターネット活用も一般的になっている。また、画像入力についても、
デジタルカメラが普及し、低コストでの入力が可能になっている。
輸入サンプルや過去のサンプルを分解再現するニーズは減少したが、企画生産サイクル
が短縮したことから、最新トレンドに対応したサンプルをスピーディーに提案するニーズ
が高まっている。そのためには、トレンド情報、店頭売れ筋情報、昨年実績等の情報を直
ちに収集し、過去の実績商品や資料を素早く検索し、企画立案し、試作し、他社より早く
得意先に提案することが求められている。
国際競争力のあるオリジナリティの高い商品の開発に当該事業が寄与するためには、過
去の失敗事例の轍をふまないように我が国の現在の市場や業界の実情やニーズに即した情
報データベースを構築する必要がある。
3-1-1 対象範囲
今回の「アンケート調査」「ヒアリング調査」結果によると、産地支援機関、企業、教育
機関ともに、オールドコレクションから最新素材まで幅広いアーカイブのニーズがある。
学生はオールドコレクションのような歴史的な文化資産と、最新素材の双方を教材として
必要としている。産業界においては、一部のクリエイーターやブランドはオールドコレク
79
ションを参考にしているものの、多くのテキスタイルメーカーやアパレルは、実質的なビ
ジネスにおいては、過去1∼3年前のサンプルや最新のサンプルを重視している。
3-1-2 デジタルアーカイブの実現に向けた課題と対応
① 第一のポイント:デジタルアーカイブの仕様は、対象、活用目的、利用者等によって異
なる。
美術品や文化財のデジタルアーカイブであれば、高精細なデータの保
存が必要である。一方、ビジネスで使われる画像は、それほど高精細
でなくても良い。
綿や合繊の白生地(生機)の場合、画像よりも糸の種類、太さ、撚糸、
打ち込み密度、織組織、後加工等のデータの方に価値がある。プリン
トやジャカードは柄や配色が分かる画像に加えて、加工技術や使用機
械等のデータも重要となる。
つまり、今回のデジタルアーカイブの構築とは、それぞれに異なる
仕様の複数の画像、テキスト、プログラム等を一括して管理できる汎
用型のデータベースの構築である。機屋に必要なデータ、染色整理工
場に必要なデータ、コンバーターに必要なデータ、アパレルに必要な
データ、学生に必要なデータは全て異なる。また、合繊、綿、ウール、
シルク等の原料によっても登録すべき項目は異なる。こうした中で無
理に共通の中央集権型の統一的システムを作ることは避けるべきで、
むしろ各産地、各業種・業態の既存システムを活かした分散型のシス
テム構築を行うべきである。
② 第二のポイント:時間と相手を選択的に情報開示したいというニーズへの対応
たとえば、ビジネスに活用しているカタログ情報も、一年後なら開示
していい。あるいは、競合他社には開示したくないが、学生ならば開
示してもいい。同じ組合員には開示しても良いが、組合以外には開示
したくない。国内には開示してもいいが、海外には開示したくないな
ど、それぞれに様々な事情を抱えているので、選択的開示や選択的ア
クセス権限の設定が必要となる。
③ 第三のポイント:デジタルデータ、アナログ情報、現物等の使い分け
デジタルデータは万能ではない。テキスタイルの風合いを計数で表す
研究もされているが、一般的とは言えないだろう。全てをデジタルで
解決するのではなく、デジタルとアナログ、現物見本との使い分けが
80
必要であり、使い分けという前提に立てば、採算性との兼ね合いで必
要最低限の解像度を設定し、入力のコストを極限まで抑えることは可
能である。
④ 第四のポイント:コスト、採算性への目配り
希少性の高い美術品や文化財(オールドコレクション)であれば、コ
ストが掛かったとしても高精細な画像を保存しなければアーカイブ
の意味をなさない。オールドコレクションについては、目先の採算性
を問われても難しい。一方、ビジネスで使われているサンプルをデジ
タルアーカイブ化する場合、毎年膨大な数量のサンプルを入力・保存
しなければならない。このコストを採算ラインまで下げるためには、
上記③のように必要最低限の解像度を設定し、入力のコストを極限ま
で抑えることは必要である。
作業手間やコストをミニマイズするためにも、展示会やビジネスで活
用したデジタルデータをそのままアーカイブ化することが望ましい。
またインターンシップ制を活用して学生に実学的な機会を提供しつ
つ低コストで入力することも考えられる。
⑤ 第五のポイント:ユーザーのニーズが様々であるのを前提に検索サービス等を設計する
必要
ユーザーの立場、目的によってアーカイブに対するニーズが異なる。
学生やアパレル関係者は最終製品のイメージを重視し、適応服種・ア
イテムやトレンドキーワードで検索することが多い。一方、テキスタ
イルメーカー(機屋等)は、撚糸等の糸設計、織編組織、打ち込み密
度等のデータを重視する。プリント生地であれば、柄の送りやリピー
ト、顔料や染料の種類。ジャカード織物であれば、織機の種類やジャ
カード装置の情報・解説も必要になる。
ハイテク素材や機能素材等は、通常の画像で識別することができない
ので、顕微鏡写真や電子顕微鏡写真が必要となる。インテリア用途で
は詳細な画像より、製品イメージが把握できる大判の画像が必要にな
る。
糸の太さについても、綿は綿番手、ウールは毛番手、合繊はデニール・
デシテックスのように単位が異なる。生地の厚さについても、欧米で
はウエイト表示が不可欠だが、日本ではあまり使われていない。
以上のように、ユーザーのニーズは様々であることを前提にしたシス
テムの設計が不可欠である。
81
⑥ 第六のポイント:アーカイブ・コンテンツは量的充実とともに質の充実が必要
クリエイーターやテキスタイルの目利きによる統一的な視点によ
るアーカイブの編集、トレンドディレクションに基づくアーカイブ
編集、産地支援機関による産地毎のアーカイブ構築、展示会運営機
関と連携した展示会の時系列的アーカイブ編集構築
等が具体的
その手法である。
3-1-3
運営体制のあり方
今回の構想では、自立化に向けて採算性を鑑みて、各拠点をP2Pで結ぶことにより、
中核機関が特に存在しなくても、デジタルアーカイブは最低限機能するプログラムソフト
を想定している。しかし、中核機関の機能が整備されることで更に当該デジタルアーカイ
ブの活用度が高まる。充実したコンテンツ提供サービスにより、閲覧者(ユーザー)を増
やし、会員化することが可能となる。
中核機関の機能としては、以下が想定される。
①アーカイブのユーザビリティの向上
・膨大なテキスタイルアーカイブの中から、自由検索だけで目的の情報にたどり着こうと
することは、膨大な無駄を覚悟の非効率的な作業であり、たとえ、膨大な時間をかけて
も目的の情報を選び出せるとは限らない。テキスタイルアーカイブの閲覧者(ユーザー)
は、テキスタイルメーカー、商社や卸商、アパレル、学生など多様な業種・業態・職種
毎に多様なニーズが想定される。それぞれのユーザーのニーズに合わせるとともに、
時代のニーズやトレンドを加味した上で、中核機関がアーカイブに登録・収録された
情報を加工・編集することにより検索性が高まり、有料でも閲覧者(ユーザー)の増加
が見込める。
・過去のアーカイブの中から、中核機関として、例えばデザイナーやファッションディ
レクターが、来シーズンのトレンドに合わせてセレクトした情報を発信することや、
検索キーワードランキングやアクセスランキング等の情報とともに、アーカイブ情報
を紹介することで、その情報の価値は高まり、有料でも閲覧者(ユーザー)の増加が
見込める。どこまでコンテンツを豊かにするかについては、多少先行投資的に仕込む
必要があるものの、費用対効果を考慮した上で段階的に充実させていくということは
可能である。
・閲覧者(ユーザー)のニーズに応え、コンテンツを編集する機能とともに、閲覧者(ユ
ーザー)の立場から常にシステムを使いやすいへの改善することが求められる。その
82
担い手としての中核機関の機能が求められる。
②継続的なアーカイブの補充と管理とコンテンツ発信
・テキスタイルの試作品、商品データ、資料等は年々増え続ける。また、シーズン毎に
新たなトレンドが次々生み出されるファッション業界にとって、最新の素材が常に紹
介されていることが重要な意味を持つ。従って、デジタルアーカイブの利用価値を高
めるには、つねに新しいアーカイブが補充され、整理・分類・管理されることが望ま
しい。
・テキスタイル教育講座やトレンドセミナーを企画開催することを通して、利用価値の
高いコンテンツを収集することが可能となる。
・こうした上記情報編集・発信と作業を継続的に積み重ねることによって、常にコンテ
ンツのメインテナンスにもなり、また利用価値の高いアーカイブの整備につながる。
例えば、テキスタイルアーカイブの検索画面上に、トレンドセミナーの告知をしたり、
会員のPC上だけに会員制テキスタイルトレンド情報を表示することが考えられる。
産地企業、テキスタイルメーカー等にとっては、テキスタイル・デジタルアーカイブ
システムを導入することで、単にテキスタイル情報を一方的に提供するだけでなく、
逆に有用な情報がフィードバックされるのであれば、会員として獲得することが可能
となる。逆に言えば、会員の獲得は提供する情報サービス次第ということになり、そ
の情報コンテンツ・サービスの企画運営が中核機関の大きな業務となる。
③システム活用の啓蒙・ユーザー教育・保守管理
・デジタルアーカイブ普及のためには、まず、システムの普及を考えなければならな
い。システムの活用方法、システムの使用マニュアルの整備、システム利用のため
の教育指導、アーカイブ活用のアイデア等を紹介し、啓蒙を図る活動が必要になる。
その担い手としての中核機関の機能が求められる。
・情報システム・サービスである以上、ユーザーの問い合わせに応えるためのコール
センター機能が必要になる。また、システムの保守・管理も欠かせない。これらの
業務はアウトソーシングも可能であり、費用対効果を考慮した上で運営方法を吟味
する必要があるが、そのコントロールタワーとしての中核機関の機能が求められる。
④会員の獲得、ユーザーの獲得
・どんなに立派なシステムを構築しても、ユーザーが増えない限り、普及も自立も困
難である。常に、コンテンツの提供者、閲覧者(ユーザー)ともに増やしていくこ
とが必要である。会員獲得、ユーザー獲得など営業的啓蒙活動の担い手としての中
核機関の機能が求められる。
・会員制を考える場合、会員には二種類に大別できる。コンテンツ提供者、あるいは
データベースを保有・構築・提供する拠点の会員と、アーカイブの閲覧者(ユーザ
83
ー)の会員である。コンテンツを保有・構築する各拠点に対しては、ビジネスに活
用できる情報やビジネス支援のシステムソフトが提供できれば、会費を徴収するこ
とが可能となる。閲覧者(ユーザー)も価値ある情報提供やコンテンツの情報サー
ビスを受けられれば会費を払う可能性はある。そのコントロールタワーとしての中
核機関の機能が求められる。
⑤大量のデータをより高速に処理するための基盤整備
・ユーザーが増え、データ情報量が増えると、各拠点をP2Pでつなぐというシステ
ムでは通信が遅くなることが予想される。迅速に大量の情報を処理するためには、
それなりのハードウェアや回線の増設・確保が必要になる。おおよその需要予測だ
けで大型設備投資をすることは危険であり、設備を段階的に充実させることが必要
となる。その判断を行うことともに、予算措置を含めて中核機関の重要な業務とな
る。
⑥テキスタイルアーカイブのトランクルーム機能
・テキスタイルアーカイブを所有する企業や機関の多くは、保管スペースの確保に苦
慮している。そこで、中核機関がトランクルームのようにテキスタイルアーカイブ
を有料で預かるというニーズは存在すると思われる。預かったアーカイブを有料で
データベース化したり、それらをアーカイブとして公開することを、ビジネス利用
なら有料サービスとして提供することが可能である。
転廃業などによるアーカイブ散逸を防ぐために、この機能が活用できる。これは、
持ち主がないこともあり、公的支援が費用面で必要である。また、これは、デジタ
ルアーカイブ事業とは異質であるので、別の枠組みで検討する必要がある。
84
4.テキスタイル・デジタルアーカイブの構想
4-1
総論
保有機関が公開可能対象としているアーカイブに関しては、現状分散化しているアーカ
イブをデジタルネットワーク化し、全国どこからでも誰でも無料か極めて安いコストで検
索できるようにすることができるようにするとともに、企業等の原則非公開のアーカイブ
も同じシステムの中にデジタルネットワーク化し、その代わりに保有機関が許諾を与える
相手のみに選択的開示・選択的アクセス権限の設定が可能になるプログラムソフトを組む
ことで、非公開アーカイブも時間の経過等により順次公開対象に移行させる仕組みができ
るため、最新のデータを含めてデジタルアーカイブの質量を充実させることができるとと
もに、単にテキスタイル・デジタルアーカイブの閲覧・検索システムとしてデザイナーや
企業の企画開発や人材育成支援として寄与するだけでなく、新たな産地内外の企業間連携、
ITを活用した新たなビジネスモデル支援システム構築の可能性が出てくる。
4-1-1 デジタルアーカイブ整備の目的と意義
日本の繊維産業の資産であると同時に、未来の繊維産業を発展させるための重大なリソ
ースがテキスタイルアーカイブである。海外の新興工業国が豊富な原料と最新の機械設備
を所有したとしても、それだけで高級で上質なテキスタイル製品ができるわけではない。
過去の経験や蓄積されたノウハウを活用し、改善や工夫を積み重ねてきたからこそ、国際
市場に通用する高級で上質なテキスタイル製品が生産できるのであり、そのノウハウの積
み重ねを実体化したものがテキスタイルアーカイブと言える。
最近では、企業の淘汰が進み、日本の繊維産業が誇りうるテキスタイルアーカイブも散
逸の危機が迫っており、どこにどのようなテキスタイルアーカイブが存在するのかも明か
になっていない。
その理由の一つは、テキスタイルアーカイブは各企業のノウハウの固まりであり、それ
を外部に公開することは自社の企業秘密を公開することにほかならないという側面である。
多くの企業は閉鎖的な環境の中に独自のアーカイブを整備し、自社の営業戦略の一環とし
て得意先のデザイナーやバイヤー等に限定的に公開し、自社の売上促進につなげようと考
えている。一方で、せっかく整備したテキスタイルアーカイブについて、PR含めて一部
を情報発信したいとする向きもあるが、外部へ情報発信する手段がなく、その存在を知ら
しめることができず、十分に活用されているとは言えない状況もある。見せるべき対象、
見せたい対象にだけ限定的に開示できる手段があれば、より積極的にテキスタイルアーカ
85
イブを整備し情報発信を行うことはやぶさかではないとする企業は少なくない。
全国に散在しているテキスタイルアーカイブを一元的に検索することともに、企業の情
報発信手段として、テキスタイルアーカイブのデジタル化は欠かせない。
また、テキスタイルは風合いが命であり、風合いや質感をデジタル画像だけでは判断で
きないという意見も根強い。デジタル情報はあくまで補完的なものであり、テキスタイル
企画や商談において現物のテキスタイルアーカイブが重要であることは間違いない。しか
し、デジタル化することにより、テキスタイルアーカイブ情報の蓄積量や編集・加工・受
発信・検索等の機能が飛躍的にアップすることで、テキスタイルアーカイブの活用が質量
幅ともに飛躍的に高まりることが期待できる。
4-1-2 デジタルアーカイブ事業の前提
日本の繊維業界では、過去にもテキスタイルアーカイブの重要性を指摘し、アーカイ
ブの収集やデジタル化を推進した経緯がある。しかし、ほとんどの事業が実用に至らず、
中途で事業を中止している。当該事業では、過去の事例を検証し、それらの課題を解決し
なければならない。
第一の要因は、クライアントPC及びサーバーの性能、通信回線の速度、デジタルカメ
ラやスキャナーの性能等とコストパフォーマンスが実用に耐えるレベルにはなかったこと
だろう。限られたシステム資源と予算の中では、実用に耐えうる演算速度とハードディス
ク等の容量が確保できず、結果的に実用に耐えられなかったのである。
現在は、飛躍的にハードウェア、通信回線等の性能が向上し、ようやく実用的なシステ
ムの基盤が整備された段階に達したと言えよう。
第二の要因は、ソフトウェア開発力が不十分であったことである。巨大なサーバーを用
意し、統一されたマスターによる共通ソフトを共同使用するというコンセプトは、コスト
が嵩むばかりでなく、産地の違い、原材料の違い、業態の違い、必要なデータの違い等に
対応することができなかった。共通のマスターを決定する段階で意見がまとまらず、使い
勝手の悪いソフトウェアは実用に耐えなかったのである。
当該事業では、各拠点における分散処理と仮想集中管理サーバーの採用により、各拠点
の仕様に合わせ、低コストで運用することが可能になっている。
第三の要因は、選択的情報開示と選択的アクセス権の設定が不十分であったため、取引
相手により掛け率を設定する日本の商習慣には対応できなかった。むしろ、システム化の
推進により、取引改善を目指し、契約書としての記録を残す仕様にしたために、現状の取
引に活用することが困難となってしまった。取引改善とシステム化は別の課題であり、ま
ずは現状の取引をサポートできるソフトウェア開発が求められる。
86
当該事業では、基本的にP2Pでデータ交換を行うため、選択的情報開示と選択的アク
セス権の設定が可能である。データを公開したくない相手にはデータを公開しないことが
可能であり、相手により別価格を設定したり、開示するデータをコントロールすることが
可能である。そのため、実際の商取引に対応することが可能になる。
第四の要因は、ビジネスモデルの変化により、アーカイブに求める要件の変化である。
繊維リソースセンターが設立された約20年前は、海外の見本を再現するニーズが高かっ
た。そのため、デザインリソースとなるサンプルを揃えることが求められていた。しかし、
次第にトレンド情報の入手と素早い企画提案へのニーズが高まり、サンプルを再現する手
法は減少している。そのため、多くの産地支援機関ではサンプルの購入や整備を中断して
いる。
当該事業では、デジタルアーカイブシステムに加え、各産地間、企業間を結ぶ情報ネッ
トワークの構築も同時に進めることができる。その情報ネットワークを利用して、様々な
情報を伝達したり、双方向の通信が可能になっており、テキスタイルアーカイブ以外の情
報サービスの展開も可能である。そのため、今後の活用方法の進化や幅の広がりも期待で
きる。
以上のように、当該事業では、過去事例の課題を解決することを前提にデジタル・テキ
スタイルアーカイブのシステムを構築する。さらに、アーカイブの検索・閲覧・参照のみ
ならず、カスタマイズにより、企業紹介アーカイブ、技術アーカイブ、人材アーカイブか
らビジネスにも活用できるような汎用型のソフトウェア開発を提案している。
4-1-3 デジタル・テキスタイルアーカイブシステムの活用モデル
4-1-3-1 テキスタイルアーカイブ整備の方法
デジタル・テキスタイルアーカイブのシステムが技術的に構築できても、それだけでど
んどん活用される状況にはつながらない。システムは道具であり、それを活用し運用する
仕組み作りが併せて必要である。
加えて、特にコンテンツが量的に充実するまでの期間は、投資を抑えながら、先行的に
質の高いアーカイブを構築することが求められる。
公的支援によるシステム開発を行うことで、以下の目的のために、アーカイブ保有機関、
産地支援機関、展示会運営機関、閲覧者・利用者等にシステムをダウンロード等で無償貸
与することが可能となる。
更に以下の作業実現については、実証実験から本格稼動初年度に至る自立化に向けた準
備の初期的な段階では何らかの資金的援助が必要となる。
87
また、以下の手法・手段は選
択的に実行することも、全てを同時に実行することも可能である。
DTA:デジタルテキスタイルアーカイブ
TA:テキスタイルアーカ
①テキスタイルに関する専門家(DTA ディレクター)によるアーカイブ整備構築
システムが試験運用に入った段階で、テキスタイルに関する有識者・目利きが産地、素
材メーカー等に呼び掛け、現物及びデジタルのアーカイブを編集・構築する。一人の人間
が統一した視点で集めた一貫性のある素材コレクション・編集アーカイブは教材としての
価値も高まる。また、トレンドテーマや開発テーマ毎に収集された素材コレクションであ
れば、企業の商品企画にも役立つことが見込まれる。
創造性と質を優先したクリエイティブなコレクション、婦人服、紳士服、スポーツウェ
ア、カジュアルウェア等の各分野の専門家が、たとえば、年間100素材程度を継続的に
収集することで、当該デジタルアーカイブシステムの中で、用途別、分野別に系統的なア
ーカイブを構築・蓄積することが期待できる。
②産地支援機関(産地 TA ディレクター)によるアーカイブ整備構築
産地支援機関(産地組合、RC等)にシステムを配布し、産地展等に出品した製品、あ
るいは、専門家に委託して収集したテキスタイルサンプルを順次デジタル化する。収集し
た現物サンプル、デジタルアーカイブは、希望があれば産地支援機関の所有とし、デジタ
ル・テキスタイルアーカイブネットワークが完成した段階で公開するものとする。産地に
おけるデジタル登録作業については、産地支援機関と産地企業が目的に応じて実施するこ
とになるが、インターンシップの一環として実学を兼ねて学生・生徒に割安で作業分担さ
せることも考えられる。
これにより、産地ごとのアーカイブを参照することが可能になり、産地支援機関にとっ
ても産地PR活動の一環となる。もちろん、版たく滴下維持・選択的アクセス権限の設定
により、必要に応じて機密性の保持は保証される。
③展示会運営機関によるアーカイブ整備構築
たとえば、
「ジャパンクリエーション」のようなテキスタイル展示会の運営機関にシステ
ムを配布し、出展各社の代表的なサンプルを収集、デジタルアーカイブ化する。そのサン
プルをインデックスとしてWEB等に公開することで、展示会のPRにもつながる。出展
者は何らかの形で出品リストを作成する必要があり、そのリストの活用ポテンシャルが高
88
いことに越したことはない。つまり、デジタルアーカイブ化を展示会出展のメリットとす
ることもできる。そこで、出展者にもシステムを無償配布し、出展者自らが入力させるこ
とが見込まれる。その結果、事務局の労力軽減にもつながる。
また、システムの使用期間を限定することも可能であり、出展者の承諾の下に、全ての
あるいは機密性保持の観点から必要に応じて選択的に公開することもできる。
これにより、当該デジタルアーカイブシステムの中で、時系列的なテキスタイルトレン
ドの変化を確認することが可能になる。
④将来の採算性確保のためのB2B活用に向けての準備並びにアーカイブ構築
素材メーカー、産地メーカー、染色加工場、商社等にデジタルアーカイブシステムのイ
ンフラを元にしたB2Bシステムを有償で配布し、B2Bの商品プレゼンテーション、P
R@取引に活用してもらうことが可能になる。そこで入力したデータについては、目的別、
閲覧者別等、選択的開示が可能であることから、条件付で当該テキスタイル・デジタルア
ーカイブの中で公開できる。教育機関やデザイナーに限定すれば、当該デジタルアーカイ
ブシステムに参加し、アーカイブ構築に賛同する企業は少なくない。
これにより、当該デジタルアーカイブシステムの中で、ビジネス的に最前線の素材アー
カイブを常に更新することが可能となる。
*以上のような手法・手段により、テキスタイル・デジタルアーカイブのコンテンツを充
実させることが可能になり、アーカイブ保有登録機関とアーカイブ閲覧者の双方にとって
直接的受益につながるような仕組みを用意することができる。そのことが、採算性のとれ
た自立的なアーカイブ運営の前提条件となる。
*当該デジタルアーカイブシステムの立ち上げに際して、アーカイブ保有機関・企業が新
たにデジタル化・デジタル登録するにあたっては、撮影条件、撮影機材等のガイドラ
イン・標準仕様を予め決定し示すことでアーカイブ全体の汎用性が高くなる。
4-1-3-2 中核機関のあり方と採算性
①中核機関のあり方
•
中核機関には二つの考え方がある。ⅰ)新しく中核機関を設立する場合とⅱ)既存
機関に業務を委託する場合。
•
どちらの場合も、採算に乗る見込みがなければ組織を維持することはできない。
②中核機関の収入源
89
中核機関の収入源は三つ考えられる。ⅰ)公的補助。将来、自立を目指すとしても、
•
システム開発と、特に自立化に向けた本格稼動準備段階における専門的な人材の確
保等の費用については、公的支援が求められる。ⅱ)会費収入。利用者からの課金
による収入である。デジタルアーカイブからは従量制課金も可能。ⅲ)デジタルア
ーカイブのシステム、ネットワークを活用した B2B ソフトサービス使用量、広告等
の事業による収入。
③中核機関に必要な要素・機能
中核機関に必要な要素は、ⅰ)コンテンツを収集、選択、編集する人材、ⅱ)シス
•
テムソフト、ⅲ)TA、DTA の活用を促し、DTA システムの普及活動を行う人材である。
人材については、中核機関内部に専任担当者を置くか、あるいは業務委託や契約等
•
によるアウトソーシングが考えられる。アウトソーシングの場合、それぞれの専門
委員会を中核機関が組織し、常に TA 活用の啓蒙、DTA システムの改善等を行うこと
が必要である。
したがって、システムと、実証実験から本格稼動開始期までの初期段階における人
•
材コスト負担等が公的資金等で補うことが求めらる。
④中核機関の体制
*用意できる予算に応じて、あるいは、事業発展段階に合わせて、以下の3つのケー
スを想定した。
•
最小限度のDTA運営体制:システム開発、運用、保守および専門的人材をアウト
ソーシングするという前提で最小規模を考えれば、既存機関の事務所の中に、専任
あるいは兼任担当者が一人からスタートすることが可能である。(ケース①)
•
標準的なDTA運営体制:現実的には、最低限のスペースと担当者、外部人材ネッ
トワークという体制が考えられる。専門家は外部の委員会として活動する。
(ケース
②)
•
実アーカイブ&DTAの運営体制:全ての機能を中核機関が備え、システムも SaaS
ではなく、ハード、ソフト共に所有する。相応のスペースを確保し、実アーカイブ
の管理保存も行う。(ケース③)
*SaaS
•
デジタルアーカイブのシステム運用等については、専門的な技術や設備が必要であ
り、これらをアウトソーシングできれば、中核機関の受け皿は設定しやすい。
SaaS(Software as a Service の略)と呼ばれる、ソフトウェアベンダー自らがイン
ターネットを通じて、月額年額でソフトウェアをユーザーに提供する形態であれば、
システム担当要員を置く必要がなくなる。
90
4-1-3-3 デジタルアーカイブ事業に必要な機能
<デジタルアーカイブ構築に必要な機能と人材>
DTAディレクター
•全国の産地、企業よりテキスタイル
アーカイブコレクションにふさわしいコ
ンテンツを収集し、編集、発信を行う。
産地支援機関
展示会運営機関
産地TAディレクター
•全国の産地支援機関ごとに、産地T
Aディレクターを任命し、産地紹介、
産地プロモーションのためのTAを構
成し、デジタル化を行う。
DTAセンター
(仮称)
右記の専門的人材を
内部に置くか、アウト
ソーシングするかで
組織は変わる。
アウトソーシングする
場合は、それぞれの
委員会を組織し、定
期的な情報交換や連
絡が不可欠である。
システム開発
及び保守運営企業
産学連携TAディレクター
•既存のアーカイブの整理、デジタル
化、分類等を産学連携の事業として
行うためのコーディネートを担当。
•TAを活用したテキスタイル教育カリ
キュラム等も整備。
コンテンツ
担当
システム
担当
普及啓蒙&
プロモーション
担当
テキスタイル
関連企業
DTAシステムアドミニストレーター
•利用者の立場から、原料ごと、産地
ごと、業態ごとのそれぞれの拠点に
対応したカスタマイズ指示及びシステ
ムの改善指示を行う。
DTAシステムインストラクター
•DTAシステムの操作方法、活用方
法、可能性等を各拠点担当者に指導
し、DTAシステムを活用できる人材を
育成する。
DTAプロモーター
•DTAを活用した新しいビジネスモデ
ル等を企業等に紹介し、システム導
入を勧め、TAへのコンテンツ提供を
促す。
DTAビジネス開発担当
•DTAシステム及びネットワーク基盤
を活用した収益事業の企画及び運営。
単独のアーカイブ事業では困難な
アーカイブ事業の自立化を目指す。
DTA:デジタルテキスタイルアーカイブ
TA:テキスタイルアーカイブ
91
4-1-3-4 初期段階の活用モデル
1.ケース①:最小限度のDTA運営体制
産地支援機関
展示会運営機関
DTAセンター(仮称)
DTAディレクター
DTA担当者
DTAシステムソフト
無償提供
z
システム開発及び保守運営企業
立ち上がり時期の体制。既存の団体等の中に事務局を設置。専任者(あるいは兼任者)
を設定し、外部専門家、外部協力機関との連携を保ちながら、運営を進める。
z
実アーカイブには触れず、あくまでデジタルアーカイブのみを対象とする。
z
システム開発費は支援等別途手当てし、システムは無償供与を原則とする。産地支援
機関、展示会運営機関、DTA ディレクターにはシステムを無償供与し、デジタルアー
カイブを充実させ、教育機関等での活用を可能にする。
z
事務局のコスト一部は既存団体が負担するとしても、システム運用経費の手当てが困
難。初期費用は何らかの支援を受けことや何らかの収益事業が必要となる可能性が高
い。
92
4-1-3-5 発展段階の活用モデル
2.ケース②:標準的なDTA運営体制
産地支援機関
テキスタイル関連企業
展示会運営機関
産地TAディレクター
委員会
DTAセンター(仮称)
DTAディレクター
委員会
産学連携TAディレクター
委員会
DTAプロモーター
DTAシステム
アドミニストレーター
DTAビジネス開発担当
DTAシステム
インストラクター
教育機関
DTAシステムソフト
無償提供
システム開発及び保守運営企業
B2Bソフト
有償提供
z
立ち上げてから2∼3年後の本格運用段階の体制。事務所もある程度の独立したスペ
ースを確保。必要最低限度の人材は内部に確保する。
z
実アーカイブには触れず、あくまでデジタルアーカイブのみを対象とする。
z
システム開発費は支援等別途手当てし、システムは無償供与を原則とする。産地支援
機関、展示会運営機関、DTA ディレクターにはシステムを無償供与し、デジタルアー
カイブを充実させ、教育機関等での活用を可能にする。
z
事業運営のための収益事業を行う。DTA システムの基盤を活用し、B2Bソフトウェア
を開発し、サービスを提供する。テキスタイル関連企業からのコンテンツの増加が期
待できる。
z
半公的な役割期待の DTA の事業と収益事業の B2B 事業を同じ組織で展開することには
無理があるかもしれない。その場合は、収益事業を別会社にアウトソーシングするこ
とも考えられる。
93
3.ケース③:実アーカイブ&DTAの運営体制
産地支援機関
展示会運営機関
産地TAディレクター
委員会
テキスタイル関連企業
DTAセンター(仮称)
教育機関
DTAディレクター
DTAシステム
アドミニストレーター
産学連携TAディレクター
DTAシステム
インストラクター
DTAプロモーター
システム担当
DTAビジネス開発担当
ハードウェア(サーバー)
TAセンター機能(現物サンプル)
z
デジタルアーカイブだけでなく、実アーカイブの収集、保管等も行う体制。
z
全ての人材を組織内部に用意し、システムも専用サーバーを組織内に用意する。シス
テム運用担当者も必要になる。
z
実アーカイブ保管のための広いスペースを確保。
z
経費は増大するが、収益はケース2と大差ない。
4-1-3-6
DTA システムから B2B システムへの発展
①DTA システムは情報通信ネットワークの基盤
•
当該事業で提案している DTA システムは、P2P(1:1)を基本とするインターネット連
携システムを基本に構築されている。
•
当該システムは、中央集権的なシステムではなく、各拠点(提供者、利用者、支援機
関等)の PC 内に独自のデータベースを構築し、オフラインになっても自分のデータ
ベースにアクセスできる。また、各拠点の PC で分散処理を行うため、サーバー等に
余分な負担が掛からない。そのため、構築コストも低く抑えられる。
•
拠点間のデータ交換は、各拠点で許諾を与えたデータだけが暗号化通信で送られる。
94
許諾を与えないデータは送信されない。
•
実際のデータ送信は、連携サーバーを通して 1:1 で通信されるが仮想集中管理サー
バー機能を備えているため、 、使用感はポータルサイトと変わらない。複数の拠点
のデータを同時に検索し、それらを自分のデータベースにダウンロードし閲覧する
ことができる。
②B2B( 業務用)システムへの活用
•
B2B システムに必要な機能の基盤は、DTA システムに装備されている。互いに許
諾した全国の仕入れ先、販売先とインターネット連携し、伝票などの必要なデ
ータが指定の使用で送受信され、同期され、修正されるのである。
•
複数の拠点を集中的に管理できるということは、個々の会社のネット上の商品
カタログを同時に検索し、発注できることにつながる。DTA は検索、閲覧だが、
そこに在庫データベース、受発注データベース等が加われば、通常のビジネス
で十分に使えるものになる。もちろん DTA にも、学生用のスワッチ請求や着分
購入の機能を付加することも可能である。
•
但し、それぞれの業種業態により、商慣習や使用する用語の違いがあり、全て
の商取引を一つのソフトでカバーすることは困難である。個々の会社の都合に
対応するようにカスタマイズの必要がある。DTA 用途のソフトは無償で配布し、
B2B 用途のソフトはカスタマイズ費用とソフト使用料を徴収することで、DTA 事
業の自立運営に寄与することが可能である。
95
デジタルアーカイブシステム(インターネット連携基盤,一括検索)
B2B システム(インターネット連携基盤,一括検索+ビジネス部品ソフト)
商品
DB
商品
DB
メーカーA
商品
DB
メーカーB
受注
DB
発注
DB
メーカーC
受注
DB
検索
閲覧
商品
DB
発注
DB
顧客C
商品
DB
96
受注
DB
在庫確認
受発注
伝票データ送信
*繊維業界VANへの発展
発注
DB
顧客B
メーカーD
受注
DB
仮想集中管理
サーバー
発注
DB
顧客A
商品
DB
商品
DB
顧客D
商品
DB
4-1-4 具体的な運営体制の構想
4-1-4-1 既存機関が単独で運営するのは困難
•
DTA 運営機関の候補となりうる複数の関係団体から意向を聴取したが、公的事業と
収益事業の双方を担当する機能を持つ機関は見つからなかった。
•
「ファッション産業人材育成機構」は、業界の声により設立された繊維ファッショ
ン業界の専門教育機関であり、当該事業の主体としても相応しい。しかし、今回の
事業は業界の幅広い協力が不可欠であり、日本の主要アパレル企業が所属する日本
アパレル産業協会がより相応しいのではないか、という見解があった。
•
日本アパレル産業協会に事務局を置く「繊維ファッション産学協議会」は、日本ア
パレル産業協会のアパレル企業と、ファッション教育振興協会に所属する教育機関
によって構成される繊維ファッション業界の産学連携のために設置された機関であ
る。繊維ファッション産学協議会では、ファッション関連の文献等のデジタルアー
カイブ整備の構想を持っており、当該事業で構築を計画しているシステムの活用も
可能である。
•
また、日本アパレル産業協会としても、十分な素材知識を持たない新人デザイナー
や新人MDへの素材教育の必要性については認識している。
•
今回の DTA についても、日本アパレル産業協会は、その意義と重要性は理解してる
が、システムの運営経費等を負担することは困難であり、そのための繊維産地の情
報ネットワークや基盤整備、あるいは採算確保のためのテキスタイルの B2B システ
ム普及含めた収益事業の運営は困難であるとしている。
•
「日本ファッション協会流行色情報センター」は、DTA の情報ネットワークを通じ
た情報提供等については前向きな姿勢を示していただいたが、事業全体の運営につ
いては困難という見解であった。
•
ファッションとインテリア関連のテキスタイルデザイナーの団体、日本テキスタイ
ルデザイン協会(来年度一般社団法人化を予定)は、テキスタイルデザイン、図案
等のデータベース化を課題としており、DTA の整備についても積極的に取り組みた
いという意向を持っているが、他団体と同様、運用全体を引き受けることは困難と
いう見解である。
•
以上のように、部分的に当該事業に参画する意志を持つ団体は複数存在するが、全
てを一括して受託する機関を見出すことはできなかった。
97
4-1-4-2
•
DTA を構成する機関によるコンソーシアム運営
当該事業の一括受け皿機関の設定が不可能とすれば、複数団体や機関によるコンソ
ーシアム(連合体)による運営の可能性はあるのか、を上記の団体に再度問い合わ
せてみた。その結果、全ての団体から好意的な返答を得た。つまり、デジタルアー
カイブの意義及び情報化・システム化に関する基盤整備の必要性は理解しているも
のの、当該事業の採算性が読めないことに加え、情報化事業の経験とふさわしいス
ペックの人材がいないために単独運営は困難であるという判断である。
•
当該事業は、テキスタイルコンテンツの提供者としての産地支援機関、テキスタイ
ル企業、染色加工場等、閲覧者としてのアパレル企業、ファッション及びテキスタ
イル関連教育機関、情報ネットワーク基盤を利用した情報コンテンツ提供者によっ
て構成される。
•
以上の DTA 事業を構成する機関がコンソーシアムを構成することができれば、実証
実験等もスムーズであり、実現性は格段に高まる。
4-1-4-3 繊維ファッションデジタルアーカイブ・コンソーシアム構想(案)
•
DTA は、日本アパレル産業協会(繊維ファッション産学協議会)、日本ファッション
協会(流行色情報センター)、日本テキスタイルデザイン協会(来年度中に一般社団法
人化の予定)、産地企業の有志からなる 産地情報ネット基盤整備を推進するための
新組織(新会社)からなる「繊維ファッションデジタルアーカイブコンソーシアム(仮
称)」が運営するものとする。2009 年度は、繊維ファッションデジタルアーカイブ
コンソーシアム(仮称)準備委員会を、参画予定メンバーで発足させて、機能分担や
本格稼動に向けたロードマップ等を事務局とともに作成し、具体化に向けた作業を
担う。
•
コンソーシアムは、上記の団体以外にも JFW 等、各分野の団体や支援機関にも参加
あるいは連携を促すものとする。
•
各団体は、地域、立場等の違いはあるが、ICT 化(情報通信技術への対応)、ITシ
ステムの整備という共通の課題を抱えている。また、ネットワークとは、異なる地
域、業種、機能をつなぐことが必要であり、それには既存の団体の枠を超える柔軟
な組織体が求められる。
•
事務局は、システム開発、システム試行を行う 2009 年度に限りシステム開発請負・
受託機関内に設置する。2010 年以降は、コンソーシアム参加メンバーで話し合いの
上決定する。
•
新法人「繊維共創機構(仮称)」は、日本のテキスタイルメーカー等の経営者に広く
98
発起人と出資を募り、2009 年度の早い時期に構想を固め、2009 年度末までの設立を
目指す。
•
新法人は DTA の基盤を活用した繊維産業の情報インフラの整備を主たる業務内容と
し、B2B システムの開発・普及を行う。また、テキスタイルデータの提供等におい
て DTA 構築に積極的に協力する。
コンソーシアムによる運営体制のイメージ
テキスタイル
デザイナー
産地企業
テキスタイル関連企業
による新会社
「繊維共創機構(案)」
繊維リソースセンター
地場産業振興センター
テキスタイル
デザイン
教育機関
日本
テキスタイルデザイン
協会
繊維ファッション
デジタルアーカイブ
・コンソーシアム
日本ファッション協会
流行色情報センター
日本アパレル産業
協会
繊維ファッション
産学協議会
JFW
JC実行委員会
トレンド
情報機関
アパレル企業
99
ファッション
教育機関
4-1-5 本格運用までのロードマップ
4-1-5-1
2009 年度以降のスケジュール
[2009 年度] (◆は運営機関、◇はシステム)
・4∼6 月
◆運営機関の実施計画立案
・コンソーシアムの組織化
・構成機関の役割分担
・新法人設立の検討
◇システム開発
・提供者ソフト
・利用者ソフト
・連携サーバーソフト
・検索ソフト
◇WEB 開発
・基本機能
・基本デザイン
・ページ構成
・連携プログラム
・7∼9 月
◆運営機関設立準備
・コンソーシアムの代表者
・実証実験の担当者
・経理監査担当者
・コンソーシアム委員会の運営
・事業計画(事業内容、スケジュール、収支計画)
◆外部組織との連携計画
・産地支援機関との連携
・展示会運営機関との連携
・ファッション及びテキスタイル教育機関との連携
・アーカイブ活用のカリキュラム検討
◆実証実験準備
・実証実験委託機関及び企業の検討と決定
・実証実験の内容、説明資料作成
・実証実験説明会
100
◇試行版ソフト開発
◇試行版取り扱いマニュアル作成
◇B2B 用モジュール開発
◇WEB 試行版立ち上げ
◇保守管理体制の検討
・10∼12 月 ◆実証実験及び試験的運用開始
◆B2B ソフト事業計画立案
◇実証実験及び試験的運用開始
・1∼3 月
◆コンソーシアム及び新法人設立
◆B2B ソフト販売計画立案
◇実証実験検証
◇システム改良、ブラッシュアップ
◇保守運用体制の構築
[2010 年度]
・4∼7 月
◆本格運用開始
◆DTA 説明会準備
◆DTA 普及啓蒙 WEB 構築
◆B2B ソフトセミナー計画立案
◇本格運用開始
◇保守管理業務開始
・8月∼
◆第一回 DTA 説明会開催
◆第一回 B2B ソフトセミナー開催
4-1-5-2
2009 年度以降の取り組みのあり方
2008 年度はデジタルアーカイブ事業のあり方を検討し、システムの仕様の作成を行った。
その結果、繊維関連機関のコンソーシアムによる運営が提案された。アーカイブの内容も、
テキスタイルだけに留まらず、企業アーカイブ、技術アーカイブ、人材アーカイブ等、繊
維産業に必要とされているデジタルアーカイブを総合的に整備、運営することが期待され
ている。
システムについては、P2Pを基本とする分散処理型+仮想集中管理サーバーによる汎
用デジタルアーカイブシステムの提案が行われた。これにより、B2B 等への転用も容易とな
り、低コストで繊維業界全体の情報ネットワーク及び情報通信基盤の整備の可能性が出て
101
きた。
2009 年度の事業は、2008 年度の結果を受け、システム開発、システムの実証実験が計画
されている。また、運営機関としてのコンソーシアムの組織化、収益事業となる B2B ソフ
ト開発及びサービス提供のあり方を検討しなければならない。特に、2010 年度以降の収支
を含む自立的な運営の計画を立案することが不可欠である。
2008 年度の委員会は、デジタルアーカイブのあり方を検討するために業界から広く委員
を募り、多面的な意見を集約したが、2009 年度はコンソーシアム構成機関の代表者による
実質的な委員会の開催が期待される。この委員会において、2010 年度からの本格運用の概
要を決定することとなる。
102
5.テキスタイル・デジタルアーカイブの仕様書
5-1
テキスタイル・デジタルアーカイブ・システムに求められる条件
①活用するユーザーの立場によって検索キーワード、必要な情報のレベルが異なる
②ファッショントレンドのテーマは毎シーズン発表され、検索キーが変化するため、検
索キーワードを自由に安価に追加、変更できるデータベースでないと実用性がない。
③データ量とアクセス量の増加に応じて適宜な規模のサーバーを設置して対処する分散
型の設計が必要になる。
④既に各機関で既に使われているシステムとは別に、ERPのように一つの統一的なシ
ステムモデルを新たに構築し、それを各々の産地や企業にあてはめようとするのは、
コストが膨大になるだけでなく、実稼動は難しい。
⑤巨額の経費がかかる巨大なサーバーと太い回線が必要な統一したソフトウェア、統一
したサーバーでシステムを稼働させる集中管理型のシステム構築をすると、検索サー
ビス単価を高く設定せざるを得ないが、それでは利用者の伸びは見込めず採算性は極
めて低いものとなる。
⑥選択的開示や選択的アクセス権限の設定等含めてアーカイブ所有する各機関のニーズ
にも積極的に応える仕組みをつくることにより、より広範囲にアーカイブ・コンテン
ツを集めることにつながる。
5-1-1 デジタルアーカイブのシステム要件
◆IIC:Interactive Intelligent Creative な分散コンピューティング手法を援用
◆ネットワークにサービスを提供する機器やリソースを管理する特別な機器を必要としないアーキ
テクチャとする。
◆全ての権限と責任は参加している全クライアントにある。各機器はサーバーとしてもクライアント
としても独立して機能する。
◆同時に、支援モジュールを搭載した拠点クライアントでは、独自に設定された支援サービスの提
供を実現しうる。
◆個別クライアント、またはクライアント間での権限の相互の付与は、当該間での連携性の確立
時に許諾認証情報の受領と共にその権限を得る。
◆相互に独立した分散処理を前提とするものの、その拠点として性能・規模が比較して大きいクラ
イアントがグループ間での仮想的なセンター拠点として分散支援ができる。センター拠点では支援
機能の配布ができ、ネットワークスループットの向上が見込める。
103
5-1-2-1 拠点間の連携について(P2P 型)
①全てのクライアント端末は、その識別情報(ID)を持ち、個別にパスワードを保持し
て参加をし利用される。
ネット環境(各自のプロバイダー)に接続されることで、「個別のグループで設定し
たセキュリティ」を透過して各サービスが利用される。相互認証をし、初めてネット
ワーク連携を開始する。選択的にグループ、個別クライアント間同士での連携のため
登録設定ができる。
②全てのクライアントは、その識別情報(ID)毎に、連携用格納域と管理情報を自己の
PC 内と WEB 上に保持する。
自己クライアント内の容量とは別に、適宜の容量でWEB上の高速連携格納域を持
つ。ジャーナル情報、別途の格納データを保持する。さらに、各クライアントは、WEB
環境に共用できる高速連携用のWEB格納域を個別に保持する。この領域は、画像の
共有に関するレスポンス速度の高速化の実現にも適用される。この格納域には守秘権
限を各自が登録時に与えた場合は、個別の領域、またはグループの共有領域として利
用しうる。
③ミドルウェアとしての連携機能群は、極めて簡易なモジュール群を独自に設計し開発
する。
その機能モジュールは、ネットワーク参加者全てへの同期機能と齟齬の修復に係る、
連携補修、同期維持管理機能をもつ。参加クライアントは独自に ID 管理をするが、選
択したグループ、個別クライアントに対し、限定された送受信、収集格納ができる。
そのとき選択的な情報を、対象ID、グループを絞り送受信をし、収集格納し、さら
に簡易な加工をし取得登録ができる。
④支援モジュールを搭載した拠点センターは、ネットワーク全体の構成クライアントに
対しレスポンスの高速化に寄与し、WEB上の利用できる格納域を増築して供与がで
きる。
さらに、処理仕様の補強補足と追加設定変更時における個別のクライアントへの負荷の軽減な
どに関し、寄与をする。
5-1-1-2 連携するデータとその連携手法
①独自の梱包(分離/組成)がなされた、管理情報(含む索引部)、文字情報、画像デー
104
タ、その他を対象とする。
②拠点間で連携されるのは、基本的には索引部(各自のレイアウト)である。基本的に
索引機能を自己のPC内で提供サイドで連携された回数ごとに提供される最新データ
を元に更新を行う。
③複数の階層を持たせた格納処理により、管理検索データを自己の書式において(セン
ターサイド、登録者)に発信する。
④受信側の管理検索モジュールにより検索処理し、索引アドレス群を発信する。
連携されるデータは、独自にコンテンツの提供をするクライアントで種別の階層化
をして事前に準備がなされる。
5-1-1-3 検索機能の進化と強化拡充
①最適化の自働機能
「索引部生成・創生モジュール」を設定する。
・検索の「キー文字列」は、随意に進化させうる。
・利用頻度の高い「キー文字列」は、一定のサイクルで集計後に拠点ごとに「サブイ
ンデックス」に登録がなされる。
・当該拠点の管理者に通知がいく。→認証後に「サブインデックス」は昇格して当該
拠点の検索部の一部となる。
②検索の機能の進化
、自助努力により強化拡充がなされる。
・利用頻度の高い「キー文字列」、または、任意の単語を「トレンドキーワード」とし
て自在に登録していけるが既存のレコードに付与するのは各自の現場の担当である。
そのための維持・保守・更新(削除)の重要な拠点毎の課題となる。
③検索利用履歴情報を元に、加重がなされた頻度情報等などを収集できる進化のための
必要情報を得られる。
・各拠点ごとに自己拠点の情報と随意の拠点を複数加えた拡大融合「索引部」が容易
に生成できるが、この結果での「優秀な索引部」を自己の拠点のサービスと共に提
供することができることとなる。
④利用者、運営者、有識者が設定できる随意の(パラメーター投入的)設定機能を有す
る。
⑤既存のアーカイブ保持者の自立的な進展を促し支援をし、 外部拠点に存在する既存資
源との容易な連携を可能にする。
105
5-1-2-4 ビジネスモデルの省察
①必要時、ログ情報を生成ができる。当該のログ情報は、頻度集計、課金、セキュリテ
ィ対策に重要な資源となる。
②全てのクライアントには、識別情報がありパスワードを保持するので、課金処理を随
意に設定できる。このときネット間連携ログ情報の取得を行えば、使用情報の収集が
でき、個人情報の配慮を前提に応用しうる。
③知的所有権に関するシステム的な配慮をする。
・画像など、知的所有権のあるものに関しては、そのデータをWEB上に載せるとき、
自動的に選別がされる。利用者がサムネイルをダウンロードするときも選別がなされ、
且つ必要なスタンプ加工などが行われている。
5-1-2-5 期待される効果
①分散処理による低コスト化
・分散処理のため、既存の設備活用、既存のインターネット回線活用が可能であり、低コストの
運用が可能。
・分散処理のため、小さくスタートし、データベースを成長させることが可能。
・運営コストを低く抑えることで、中核機関の採算性も向上する。
・ユーザーの利用コストが抑えられるので、利用者の増加、アクセス数の向上が期待できる。
②分散処理によるカスタマイズ対応
・各産地、素材によって、必要なデータ種別、検索キーワードが異なる。それらをカスタマイズ
することで、産地毎に使いやすいシステム構築が可能。
・既存のアーカイブ所有者が本システムにより、安価な独自データベース構築が可能。
③分散処理による登録作業の軽減
・分散処理を行うため、全国に散在しているテキスタイルアーカイブを分散した場所で作業す
ることが可能。
・実際のビジネスにおけるデジタルアーカイブと、資料としてのデジタルアーカイブのシームレ
スな連携が可能。ビジネスに使用する展示会情報のデジタルアーカイブを一定期間の後、
資料としてのデジタルアーカイブに容易に移行できる。これにより、膨大な数の新規サンプ
ルを継続して登録することが可能になる。
④アーカイブ拠点や利用者毎に、選択的開示、選択的アクセス権限の設定が可能
・選択的データ開示が可能であり、産地内のみに開示、教育機関のみに開示するなどの設定
ができる。
106
⑤従量制課金によるアーカイブ所有者への収益還元
・データのダウンロードのログ管理ができるので、新聞記事検索システムのような従量制課金
が可能であり、アーカイブ所有者に利用料の一部を還元することが可能となる。アーカイブ
所有者が保有コンテンツをデジタルアーカイブ化を進めることが、自らの収益拡大につなが
るようにする。
⑥ユーザーに対する期待効果
・テキスタイル製造技術者、アパレル企画開発者、学生等ユーザーの立場により、検索キーの
設定が可能なので操作性が簡便になる。例えば、学校に設置するデジタルアーカイブ端末
には、分かりやすい検索キーワードを設定することができる。産地メーカーの技術者向けに
は、高度な検索キーワードを設定することができる。
・検索費用が低コストに抑えられるので利用しやすい。
・各コンテンツのデータ種別、検索キーを自由に設定できるので、トレンド変化等にも対応が
可能。
⑦デジタルアーカイブ所有者に対する期待効果
・既存のデジタルアーカイブからの移行、現物サンプルのデジタル化が容易である。
・産地毎の独自のデータ種別を設定することで、使い慣れた言葉で検索が可能。必要のない
データ画面に煩わされることがない。
・従量制課金により、データ利用料の一部を還元してもらうことが可能であり、新たな収益事業
として取り組むことができる。
・ジャパンクリエーションのような総合見本市、あるいは業界団体等の場合、各企業にシステム
を植えつけ、自らのデジタルアーカイブを構築することができる。そのデータを集積すること
で、展示会別、産地別のデータベースが構築できる。このように、分散処理の階層化を進め
ることで、自動的に毎年大量のデータを処理することが可能になる。
⑧中核機関に対する期待効果
・分散型の安価なシステム構築が可能であるため、採算性で有利。
・分散処理と集中管理の使い分け可能であり、中核機関で煩雑で作業負担の過大な業務を行
う必要がない。
・分散処理であるため、一度に大規模な設備投資や資本投下の必要がなく、小さくスタートし
て大きく育てることも可能である。統一的なシステムの場合、初期投資が大きく、中核機関
の経営を維持することが困難とみられる。
107
5-2
システムの仕様要件
5-2-1 デジタル・テキスタイルアーカイブのシステム仕様要件
以上の条件を検討し、今回提出する仕様書要件を以下のようにまとめた。
5-2-1-1 稼働環境
【提供者】、
【参照者】
PC、インターネット接続、携帯連繋
ができる環境
…MS WindowsXP(Win2K)、インターネット接続環境、携帯3キャリア(検
証想定)
【ポータル運営者】少し大きめのPC複数台、インターネット接続
・運営者サーバー容量
600G 程度 (提供者数1,000、各自3ギガ、提供デー
タ 初期的総量 3テラバイト)
…個別に各自の共用サーバー援用設定のため、運用者負担は比較して軽微となる。
(初歩としての想定、1ギガが100円強/月 程度)
5-2-1-2 機能
【機能の解説】
主たる機能仕様:1)コンテンツ作成登録部 2)検索部 3)参照部 4)格納部 5)
閲覧部
①
6)メール機能、携帯連繋
コンテンツ作成登録部
7)連繋部
…容易な入力方式と操作性の実現
※「コンテンツの登録提供/多重追加/多重修正/削除/進化」
・既存データ、既存業務からの一括転用「コンバート」(提供者カード援用)が提供
される。(対象;CSV、エクセルデータ)
・「提供者カード」で提供希望の項目を指定し、自己PCに目的の入力結果の一覧表
示ができます。
・コンテンツデータは、項目毎にコンテンツ連番以外に1データ内に複数登録でき
る。クリックして順次表示される方法とスラッシュ(/)区切りで同一項目に並列
表示されるタイプが2通りがある。修正表示は上書きし、削除項は灰色で表示す
る。
・摘要欄の【】()内の準備データは、項目として「提供者カード」での昇格更新が
できる。
108
・随意語彙での項目の追加も随時に提供者ができる。
② 検索部 …基本は「テキストキーワード検索」をベースとする手法です。
「検索/参照/追加検索/絞り込み」
…検索結果を一覧にて参照し、一覧画面上の操作性を援用し、随意に絞込みをし
ます。此処までが「当該システムでの検索です。」
・カード型の選択手法を援用し、タッチ数の軽減をします。
…検索項目と対象のテキストの組み合わせを容易に選定をする。既存の検索カー
ドを編集応用もする。
・「参照者カード」で取得希望の項目指定をし、自己PCに目的の索引結果をスプレ
ッド型の一覧表示をする。
・「提供者カード」を複数選択し、索引結果を一覧表示する。この時、複数拠点間の
項目など関係性の「調整編集」をする。
・「類義語カード」での検索したい語彙を拡張して検索精度を高める。
…類義語カードは、運用初期的には5枚までとする。
③
格納部
…「格納(クローゼット)」
「参照者カード」で取得希望の項目を指定し、自己PCに目的の索引結果を格納
(クローゼット)する。
「提供者カード」をさらに複数枚追加して、既存の「収集(コレクション)」への
追加検索をし収集することができる。
索引したコンテンツの詳細を一覧上で、「ソート」「除外検索」「レチェック除外」
など自己 PC 内操作で収集「絞り込み」をする。
④「相互連携更新」
システムが提供する「連繋機能」などは、全て取捨が可能であり「設定」をする
ことで除外、再機能ができる。
⑤「画像/サムネイル/透かし文字/画像索引語彙と画面一覧での語彙検索」
登録画像は、(容量の範囲を指定して)サムネイルが自動作成される。画像には、
「透かし文字」の自動的挿入ができる。
画像データは、コンテンツに複数貼付されるが、独立して一覧表示ができる。さ
らにその時コンテンツ内テキストの一部を含めて「画像索引語彙」として設定さ
れ、検索機能が働き「絞り込み」ができる。
109
⑥「選択的開示/機能選択性」(コンテンツへの選択性)
・提供する全てのコンテンツの開示は、選択的に指示ができる。データ単位、項目
単位での指定もできる。
・提供する全ての参照者への開示は、選択的に指示ができる。グループ(カテゴリ
ー)単位、ID単位で指定する。
・作成したコンテンツの詳細を一覧上で、「ソート」「検索選択」「レチェック選択」
など自己 PC 内操作で開示「選択」をする。
⑦「守秘機能」(対利用者の選択性、対グループへの選択性)
・全ての「提供者カード」とその登録コンテンツは、選択的に「許諾情報」を付し
て掲示される。(
ポータル上で選択ができない。)
5-2-1-3 まとめ
※仮想化された全ての拠点を網羅して連繋している(DTA)DBを一括検索をし、
一覧表示する。
※カード作成は雛形を利用し、参照項目・対象コンテンツなどを少ないタッチ数で
選定して作成する。
※コンテンツ作成は、
「提供カード」を利用する。一括でもCSV投入で生成される。
※自立型で、低廉に、各自の「テキスタイルアーカイブ」コンテンツが登録でき、
ネットワーク参加ができる。
※検索・閲覧を繰り返し、一覧表示画面で「絞り込み」をなし、収納(クローゼッ
ト)に収集(コレクション)する。
※自己のPC内で、コンテンツを類義語などの検索精度を高めて選定し、選択操作
をして、閲覧をする。
※守秘は、提供者が登録時に随意に設定する。参照者PC内には許諾情報以外は保
持しない。
5-2-2 自立運営のための B2B を含むシステム仕様要件
当該案件では、デジタルアーカイブ事業の自立的運営の検討も求められている。収益事業
としての B2B システムを可能にするためには、前述した検索システム要件に加え、下記
のようなシステム仕様要件が必要になる。
110
5-2-2-1 運用に係る有効で拡大普及に必須な機能
① 「大容量ストレージの安定的確保」をし、(提供者、参照者からの WEB 機能と格
納域の供出)
② 「ネットワーク資源の動的再配置管理」をし、
③ 「管理サイドの処理負荷分散」をし、
④ 「多重プロセス並列処理をして応答速度の向上」をし、
⑤ 「ネットワーク内トラフィックの増大の監視と最大流量の制限をする」を企図す
る。
5-2-2-2 追加して普及に有効な機能
①進化、促し進化部
(アクティブコネクト)
②検索部 …基本は「テキストキーワード検索」をベースとする手法です。
「項目&数値」「項目&日付」検索対象も可とする。
③格納部 …「格納(クローゼット)/相互連携更新/状況確認/進化」
「参照者カード」で取得希望の項目を指定し、自己PCに目的の索引結果を格納(ク
ローゼット)する。
「提供者カード」をさらに複数枚追加して、既存の「収集(コレクション)」への
追加検索をし収集することができる。
索引したコンテンツの詳細を一覧上で、「ソート」「除外検索」「レチェック除外」
など自己 PC 内操作で収集「絞り込み」をする。
提供コンテンツと「格納(クローゼット)」内の「収集(コレクション)」は、常
時連携し更新状況を相互に反映をする。
※「収納(クローゼット)
」とは、収蔵場所をさし、格納されたコンテンツの収納
単位を「収集(コレクション)」と呼びます。すべての「収集(コレクション)」
コンテンツ は その基たる「提供者コンテンツ」と随時自動的に連繋する。
※ 随時自動的に連繋が始まるタイミングは、参照者が「収納(クローゼット)」
に「収集(コレクション)」した時とする。
※ 検索・閲覧を繰り返し、一覧表示画面で「絞り込み」をなし、収納(クローゼ
ット)に収集(コレクション)する。
④「相互連携更新/状況確認/進化」
システムが提供する「連繋機能」などなどは、全て取捨が可能であり「設定」を
することで除外、再機能ができる。
提供コンテンツを「収納(クローゼット)」した閲覧者からの「当該索引ワード」
が頻度が集計されて、状況確認ができる。
「収集(コレクション)」された提供コンテンツに、「推奨索引ワード」が付与し
再格納がされれば、その通知がなされる。
「推奨通知」は、許諾レチェックでコンテンツが更新される。格納(クローゼッ
ト)格納参照者に更新が相互連携更新される。
⑤進化、促し進化部 (アクティブコネクト)
111
※ 保全・閲覧時には情報の付記登録ができます。
【格納(クローゼット)/収集(コ
レクション)
】
※ 参照者の格納時には、参照者と提供者間で仮想DBを通じて即時の連携性、促
し連繋ができます。
・利用情報 : 参照回数、件数、推奨索引語彙のお知らせ
・更新情報 : 更新件数、項目、推奨索引語彙の受領(許諾)
※ 提供者は、テキスタイルアーカイブ附帯情報、索引語彙を参照者、提供者間の
仮想DBを通じ、推奨(促し連繋)などの支援を得て進化させる。
5-2-2-3 副次的な応用として
◆スワッチ要求、在庫確認、与信確認、応答(摘要欄でチャット)、ができます。
◆コンテンツ対象の実物などに対する閲覧予約、状況確認などの附帯情報の刻々に
変化する「お知らせ」ができます。
◆テキスタイルアーカイブ、さらに繊維業界「ネットワークインフラ」としての例
示では、「SCM構築」援用と、「トレーサビリティ」ネットワーク構築援用が実
現できる。
「当該仕様の開発」の後、軽微な追加実装を施せば、速やかな実証試行が短期日で
見込めます。
短時日後に、マニュアルがWEB上のクリックで展開ができるようになり、「カー
ド形態での品番指定」で策定
対象の商品などが糸、生地、染色、織機、ブランド、メーカー、商店、売り場、
…などなどを思い立った小規模企業が各自のPCで各自の様態で集積を(指示、
指導を)していく、一歩を踏み出せばよく、系列の上位にある企業はその「多様
な集積」をカードの整頓、配列などの操作をし、「SCM」「トレーサビリティ」
検索システムのテキスタイルアーカイブとしてのコンテンツ管理をし、その参照
者への利便と信任に努める。
・既存のネットなどの業界既存の難題を抱えた「SCM構築」で、システムを補完・
支援ができる。
…現況の開発状況をそのままで、その現況への支援の効果を挙げうる。費用は軽
微、難易度は比較して低く、被支援者サイドの意志に懸る。
・「トレース機能」ネットワークとして、SCM経由拠点での軽微な参加で広範なト
レース基盤情報が構築できる。
…携帯端末がシームレスに連繋利用できる。費用は軽微、提供者、利用者のネッ
トワークの参加意志が重要。
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