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news vol5 no15

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news vol5 no15
ISSN 2186-9138
味覚センサーを用いた味の評価試験 1/4
JFRL ニ ュ ー ス
Vol.5
No.15
Dec.
2015
味覚センサーを用いた味の評価試験
はじめに
食品のもつ機能には栄養素としての一次機能,嗜好性としての二次機能,生体内調節を
行う三次機能が挙げられます。今春より「機能性表示食品」制度がはじまり,食品が持つ
三次機能の認識が広がりつつありますが,私たちは本来「おいしく食べる」という欲求を
持っており,おいしさは食事の重要な要素であります。食事の時に感じるおいしさという
のは,味覚をはじめとした様々な感覚によって構成されているだけでなく,生活習慣や食
文化,食べる時の環境,体調や心理状態にも影響されます。
これまで弊財団では,食品のおいしさに大きな影響を及ぼす「味」については,糖類や
アミノ酸などに代表される呈味成分の定量分析や,人が直接食べて評価をする官能評価を
行っておりますが,成分分析は味の総合的な評価が難しい,官能評価は客観的評価が難し
いなどの問題があります。一方で昨今のセンサー技術の進歩に伴い,脂質と高分子素材を
混合して作られた味覚センサーを使用した味認識装置が開発,実用化されています。この
装置は,味の種類や強さを数値化して,味を総合的に評価できるという特徴があります。
表-1 に味覚センサーを用いた味認識装置による味の評価試験を呈味成分の定量分析及び
官 能 評 価 と 比 較 し ,そ れ ぞ れ の 特 徴( 長 所 ,短 所 )を 示 し ま し た 。こ の 度 ,味 認 識 装 置( 株
式 会 社 イ ン テ リ ジ ェ ン ト セ ン サ ー テ ク ノ ロ ジ ー 製 , TS-5000Z) を 導 入 し ま し た の で , そ の
測定原理とコーヒー及びトマトを測定した事例についてご紹介します。
表-1
味覚センサーを用いた
定量分析
味の評価試験
・
長
所
味を総合的かつ客観的に
・
数値化できる。
・
異日に実施した分析デー
味に関する試験方法の特徴
・
タの比較が可能である。
官能評価
複数の呈味成分の個別定
・
味を総合的に評価できる。
量が可能である。
・
味の好み,硬さや香りを評
異日に実施した分析デー
タの比較が可能である。
価できる。
・
食 事 を 提 供 す る 状 態 (温 度 )
で試験が可能である。
短
・
比較対象が必要となる。
・
味の好みを評価できな
い。
所 ・ サンプルによっては実際
・
・
複合的な味の種類や強さ
・
目的に応じた評価者の選
の差異を評価できない。
抜,訓練が必要となる。
味の好みを評価できない。 ・
異日に実施した分析データ
の比較が難しい。
の食事とは異なる状態で
試験を行う必要がある。
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JFRL ニュース編集委員会 東京都渋谷区元代々木町 52-1
味覚センサーを用いた味の評価試験 2/4
味認識装置の原理
人 は 食 品 に 含 ま れ る 様 々 な 化 学 物 質 を 舌 で 受 容 し ,そ れ を 神 経 細 胞 が 甘 味・苦 味・酸 味 ・
うま味・塩味などの各味に分類し,脳がおいしいか否かを認識しています。味認識装置で
は人工脂質膜(味覚センサー)を用い,食品中に含まれる呈味物質がセンサー表面に吸着
する時に生じる膜電位の変化量を測定します。味ごとに対応した各センサーで測定した電
位の変化量からそれぞれの味を数値化します。図-1 に味覚センサー応答のメカニズムを
示します。
味認識装置は,人工脂質膜に苦味センサー・酸味センサー・旨味センサー・塩味センサ
ー・渋味センサーの 5 種類の味覚センサーを用い,先味と後味を測定することで計 8 種類
の味を評価することができます。先味とは,食品を口に含んですぐに感じる味のことであ
り , 味 認 識 装 置 で は 「 酸 味 」,「 苦 味 雑 味 」,「 渋 味 刺 激 」,「 旨 味 」,「 塩 味 」 と し て 表 現 さ れ
ま す 。 後 味 と は , 食 品 を 飲 み 込 ん で か ら も 舌 に 残 る 味 の こ と で , 味 認 識 装 置 で は 「 苦 味 」,
「 渋 味 」,「 旨 味 コ ク 」 と し て 表 現 さ れ ま す 。 図 - 2 に 測 定 の 流 れ を 示 し ま す 。
図-1
味覚センサー応答メカニズム
図-2
測定の流れ
味認識装置による測定例
①
コーヒー
市販のインスタントコーヒー,缶コーヒー及びコンビニエンスストアのカウンターコー
ヒー(以下「コンビニコーヒー」と略す)など様々なコーヒーを味認識装置で測定した分
析例を図-3 に示します。横軸に酸味,縦軸に苦味の指標となる苦味雑味を示しており,
右に行くほど酸味が強くなり,上に行くほど苦味が強くなります。図-3 より,インスタ
ントコーヒーには酸味が強い傾向,缶コーヒーには酸味が弱い傾向,コンビニコーヒーに
は苦味が強い傾向があり,3 つのカテゴリーに分類できることがわかります。レギュラー
コーヒーは味の傾向が分かれており,インスタントコーヒーに近い味か,缶コーヒーとコ
ンビニコーヒーの中間の味であるということがわかります。
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味覚センサーを用いた味の評価試験
3/4
4
コーヒーショップコーヒーA
3
レギュラーコーヒーA
苦味雑味
コンビニコーヒーD
レギュラーコーヒーB
2
コンビニコーヒーB
コンビニコーヒーA
ファストフード店コーヒー
コーヒーショップコーヒーB
缶コーヒーA
缶コーヒーC
コンビニコーヒーC
1
缶コーヒーB
インスタントコーヒーB
インスタントコーヒーD
レギュラーコーヒーD
-12
-10
-8
-6
-4
レギュラーコーヒーC -2
酸味
図-3
②
インスタントコーヒーC
0
0
インスタントコーヒーA
-1
コーヒーの二次元散布図
トマト
品種の異なる 5 種類のトマトを味認識装置で測定した分析例をレーダーチャートで図-
4 に示します。比較対象となる大玉トマトの味がゼロ点となるように設定し,各トマトの
味を大玉トマトとの差(太線)で表現しています。各トマトのレーダーチャートの形状は
異なり,酸味,苦味雑味,旨味,塩味において,味の差があることがわかります。なお,
トマトなどの青果物の場合には,味覚センサーの塩味は味の厚みに,苦味雑味は味の広が
りや奥行き感に表現を置き換えて,評価を行うことがあります。図-4 から,大玉トマト
と比較した場合の各トマトの味について評価を行い,表-2 に示しました。
図-4
トマトのレーダーチャート
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味覚センサーを用いた味の評価試験 4/4
表-2
品種
トマトの味の評価
味 の 評 価 (大 玉 ト マ ト と 比 較 )
ミニトマト A
酸味が弱く,うま味が強い。濃厚な味わいで広がりがある。
ミニトマト B
酸味が非常に弱く,うま味が強い。さっぱりとした味わいである。
中玉トマト
フルーツトマト
大玉トマトと比べるとわずかに濃厚な味わいである。
酸味が弱く,うま味が強い。濃厚な味わいだが広がりは弱い。
おわりに
弊財団では,現在のところコーヒー,ビール,出汁,めんつゆ,青果物,肉類全般につ
いて味覚センサーによる味の評価試験を受託しておりますが,その他の食品につきまして
も 検 討 を 実 施 し て い ま す の で ご 相 談 下 さ い 。ま た ,味 覚 セ ン サ ー を 用 い た 味 の 評 価 試 験 に ,
従来から受託しております成分分析や官能評価を併せてご提案することも可能ですので,
食 品 の 味 の 評 価 に 関 す る ご 相 談 ,ご 質 問 等 が ご ざ い ま し た ら お 気 軽 に お 問 い 合 わ せ 下 さ い 。
分析項目の設定や分析上の注意点などを含め,お客様の目的に応じたご提案を行い,皆
様のお役に立てるよう努めてまいります。
図-5
味覚センサーを用いた味認識装置
参考資料
・ 都 甲 潔 , 飯 山 悟 : ト コ ト ン 追 究 食 品 ・ 料 理 ・ 味 覚 の 科 学 , 講 談 社 ( 2011)
・ 株 式 会 社 イ ン テ リ ジ ェ ン ト セ ン サ ー テ ク ノ ロ ジ ー HP
http://www.insent.co.jp/
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