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主査教授相澤義房

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主査教授相澤義房
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博士論文の要旨及び審査結果の要旨
しみずひろき
氏 名
清水大喜
学 位
博士(医学)
学位記番号
新大院博(医)第192号
学位授与の日付
平成19年3月22日
学位授与の要件
学位規則第4条第1項該当
博士論文名
Analyses of p53 Overexpression, Aberrant β-Catenin Expression, Microsatellite Instabil
(肝内結石症合併および非合併肝内胆管癌におけるp53蛋白過剰発現、β−カテニ
論文審査委員
主査教授相澤義房
副査 教授 味岡洋一
副査 教授 畠山勝義
博士論文の要旨
(Introduction)肝内胆管癌の多くは正常肝から発生し原因は不明であるが、危険因子とし
て肝外胆管拡張症、炎症性腸疾患、胆嚢結石、トロトラスト、肝内結石正などが報告され
ている。肝内胆管癌の発生・進展に関与するとされている遺伝子異常は多数あるが、危険
因子と遺伝子異常の関係についての報告は少ない。我々は様々な危険因子のうち肝内結石
を取り上げ、肝内結石による慢性炎症の有無により遺伝子異常に違いが存在するかを検討
した。
(Matelials and Methods)外科切除された肝内胆管癌20例で検討した。20例中13例は当
院で手術された肝内結石非合併症例であり、残りの7例は台湾で手術された肝内結石を合
併した症例である。
それぞれに対して、免疫組織学的手法でP53蛋白過剰発現、βカテニンの核内異常発
現の頻度を検討した。βカテニンは通常は細胞膜に存在し、細胞接着に作用しているが、
Wntシグナル系に異常を生じると、 AP Cの異常を介して核内に異常蓄積し、細胞増殖因
子の活性を促進する働きをすることが知られている。
また、抽出したDNAを用いて、PCR・RFLPを行いcodon 12のK・m5変異を検討した。
更に、マイクロサテライト不安定性の頻度を検討した。細胞増殖時のDNA複製に際して、
異なった塩基を複製する異常が生じる。通常ではミスマッチ修復機構が働くが、この機構
に異常が生じると、そのような複製異常は蓄積されていく。このような複製異常は特にマ
クロサテライトと呼ばれる同一塩基の繰返し配列が存在する部位で生じやすく、その繰り
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返し回数の増減として認められる。これはマイクロサテライト不安定性と呼ばれ、DNA
ミスマッチ修復異常のスクリーニングとして有用である。今回、丑4ク}2易五47蜴6
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刀251231)58346」0175250の5つのマイクロサテライトマーカーで、マイクロサテライ
ト不安定性を調べた。調べた5つのマーカーのうち2つ以上で異常を認めたものをマイク
ロサテライトhigh(MSI・high)と定義し、1つのみ異常を認めたものはマイクロサテライ
ト10w(MSI・10w)と定義した。
(Result)P 53蛋白の異常発現は6例ノ20例(30%)で認められた。結石合併例と非合併例とで
は、それぞれ38%と14%と差は認めなかった。βカテニンの核内異常発現は3例/20例
(15%)でのみ認められ、発現様式は全て散発性であった。結石合併例と非合併例での頻度
は23%と0%であった。マイクロサテライト不安定性は20例中の13例のみで分析可能で
あった。マイクロサテライト不安定性は結石合併例、非合併例ともに1例ずつ認められた
が、MSI・highは両群ともo%であった。 MSI・10wは8%と14%であった・K」M5変異は5
例/20例(25%)で認められた。結石合併例と非合併例では、それぞれ31%と14%であった・
いずれにおいても、両群間で有意差は認めなかった。
(Discussion)これまでの肝内胆管癌の遺伝子異常に関する報告では、背景にある危険因子
の存在に関してはほとんど考慮されていなかった。従来の報告ではKm8変異、 P53遺伝
子異常、P53蛋白過剰発現、&POのLO且の頻度に報告により非常に幅があり、発生の違
いを考慮していないことによる可能性もある。TudaらとKibaらは日本人と台湾人の肝
内胆管癌でK斑5の異常を検討し、肝吸虫の流行地域である台湾北部の患者でK斑8異常
の頻度が高いと報告している。このことから、発生や背景因子の違いにより遺伝子異常に
違いがあることが推測される。
近年、潰瘍性大腸炎と大腸癌、萎縮性胃炎と胃癌、慢性胆嚢炎と胆嚢癌、逆流性食道炎
とパレット食道癌のように様々な癌と慢性炎症の関係がよく知られている。これらは繰り
返す慢性的な炎症により上皮のDNAが損傷を受け癌化の引き金になると考えられてい
る。潰瘍性大腸炎に合併した大腸癌では通常の大腸癌と異なる遺伝子異常を呈すると報告
されているのと同様に、肝内胆管癌でも肝内結石の有無により遺伝子異常に違いが生じる
のではないかと我々は考えた。
しかし、我々の仮説に反して、肝内胆管癌においては肝内結石症の有無によって違いは
なかった。しかし、本検討では症例数は少ないため、最終的な結論を出すためには更なる
症例での検討が必要と考えられた。また肝内結石非合併症例に関しては、P53とK・m5の
異常が癌化に関与していることが疑われた。しかし、βカテニンに代表される∠LPO異常
とマイクロサテライト異常に代表されるDNAミスマッチ異常は肝内胆管癌の発癌には関
与しないと考えられた。
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(論文審査の要旨)
申請者は肝内胆管癌の発生・進展に関与するとされる遺伝子異常検
索の目的で肝内結石による慢性炎症の有無によりその違いが存在す
るか否かを検討した。
外科切除された肝内胆管癌20例を用いた.13例は当院で手術され
た肝内結石非合併症例であり、残りの7例は台湾で手術された肝内結
石合併症例である。免疫組織学的手法でP53蛋白過剰発現、βカテ
ニンの核内異常発現の頻度を,PCR・RFLPを用いcodon 12のKTa5
変異を,そして、マイクロサテライト不安定性の頻度を検討した。
P53蛋白の過剰発現ならびにK才a8変異は結石合併例と非合併例と
では、それぞれ38%と14%および31%と14%で認められ,統計学的
有意差は認めなかったがこれらの遺伝子異常の関与が示唆された。β
カテニンの核内異常発現ならびにマイクロサテライト不安定性にお
いては差を認めなかった.
今回の検討において症例数は少ないながらも①肝内胆管癌では肝
内結石症の有無によってβカテニンに代表されるメ4PO異常とマイク
ロサテライト異常に代表されるDNAミスマッチ異常は関与が低いこ
と,②P53とK・τθ8の異常が癌化に関与している可能性がある事,を
明らかにする事が出来,この点において学位論文としての価値を認め
た.
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