...

第3章 使用済み衛生陶器類の利用に関する二次製品の 用途開発と製品

by user

on
Category: Documents
1

views

Report

Comments

Transcript

第3章 使用済み衛生陶器類の利用に関する二次製品の 用途開発と製品
第3章
使用済み衛生陶器類の利用に関する二次製品の
用途開発と製品化に関する検討
モデル循環システム報告書第3章
第3章 使用済み衛生陶器類の利用に関する二次製品の用途開発と製品化に関する検討
3.1 衛生陶器粉砕品の再利用用途について
使用済み衛生陶器については現在ほとんどが最終処分場で埋め立てられていると思われる。
理由としては分別されていないこと、衛生性の不安があること、分別しても再利用先がないこと
等が上げれれる。しかしながら今後、最終処分場の処理費用の上昇、処分場自体の不足、建設混
合廃棄物のリサイクル利用率拡大要求の高まり等の社会的背景の変化に伴い、使用済み衛生陶器
類についても再利用を検討しておく必要がある。
現在、衛生陶器生産工程で発生する検査不合格品等の不良品については技術的に使用可能な範囲
で生産原材料として使用されているがその利用比率は製品の熱膨張係数に影響を及ぼし品質不良
に影響するため数パーセントの利用にとどまる。それを超過した量については路盤材や農業用肥
料坦治材料として再利用されている。しかしながら路盤材は公共工事の減少や他の廃材の参入等
により逆有価や引き受け量の制限等の制約があり、市場からの回収品の利用先としては困難と思
われる。
農業用肥料についても作付面積の低下による農薬需要の減少、年間需要量の月別変動が大きく安
定して排出された衛生陶器類を引き受けることは困難であるため、今後の使用済み回収品再利用
用途としては適当でないと思われる。
今後の使用済み衛生陶器類の利用に関して、量的には全国で年間 812 万個(平成 15 年度「窯業・
建材統計年報」による)の出荷があることから回収し再利用することを考えれば新たな利用用途の
開発が必要となる。
材料の特性として①大変硬さが硬いこと
(曲げ強度で 100Mpa 程度、
板ガラス 50Mpa、
舗装材 10Mpa)
②高温で焼結されており重金属等の溶出等の心配がほとんどないこと(巻末参考資料参照)等の
特長があることからその点を考慮し、再利用用途として(1)コンクリート二次製品への利用、
(2)透水ブロック等への利用、
(3)樹脂製品への利用 について使用済み衛生陶器の利用が可
能であるかの調査検討を行った。
3.2〔コンクリート二次製品への利用〕
3.2.1 コンクリート製品への利用の検討理由について
コンクリート二次製品としてはエコマーク商品や地方公共団体のリサイクル認定商品等で再生
骨材や廃材を使用した製品が既に存在していること、「骨材需給動向調査∼西日本の砂需給動向と
その対応∼」(
(財)経済調査会HP)にもあるように海砂については中国、四国、九州地区で採
取の削減予定があり、砂供給の多くを占めていることから供給不足が見通されている。
表 3.2-1 都道府県における砂採取許可動向
都道府県
川砂利・砂
北海道
青森県
⇒現状維持
岩手県
計画策定中
宮城県
×原則禁止
秋田県
▲削減
山形県
河川で異なる
福島県
茨城県
⇒現状維持
栃木県
群馬県
⇒現状維持
埼玉県
千葉県 ×H11∼全面禁止
東京都 ×S39∼全面禁止
神奈川県
⇒現状維持
山梨県
長野県
新潟県
富山県
石川県
岐阜県
静岡県
×富士川禁止
愛知県
三重県
⇒現状維持
福井県
滋賀県 ×湖中砂利は廃止
京都府
×指定河川禁止
大阪府
×原則禁止
兵庫県
奈良県
検討中
和歌山県
鳥取県
島根県
岡山県
×原則禁止
広島県
山口県
×認可予定なし
徳島県
⇒現状維持
香川県
愛媛県
新規認可せず
高知県
福岡県
佐賀県
⇒現状維持
長崎県
熊本県
大分県
宮崎県
▲削減
鹿児島県
沖縄県
-
陸砂利・砂
⇒現状維持
⇒現状維持
実績なし
-
山砂利・砂
⇒現状維持
⇒現状維持
実績なし
-
-
-
-
-
海砂利・砂
⇒現状維持
⇒現状維持
-
×H7∼全面禁止
-
×全面禁止
検討中
▲削減予定
×H10∼全面禁止
⇒現状維持
×全面禁止
県内需要量のみ
上限100 万m3
⇒現状維持
⇒現状維持
▲減少調整中
検討中
×許可予定なし
▲削減
-
注:
「−」は認可量方針特になし、「(空欄)」は回答なしを示す。
(出典:
(財)経済調査会HP)
砕石・砕砂
⇒現状維持
⇒現状維持
⇒現状維持
-
輸入砂
4.6%
スラグ
6.1%
砕石
20.5%
他砂
0.0%
砂供給量合計
50,218.7千m3
海砂
60.5%
陸砂
3.1%
山砂
2.4%
川砂
2.8%
図 3.2-1 砂供給量内訳
50000
40000
砂全体需要量
砂全体供給量
海砂供給量
30000
20000
10000
21
H
20
H
19
H
18
H
17
H
16
H
H
15
14
H
13
H
12
H
H
11
0
図 3.2-2 砂および海砂の将来需給見通し(西日本全体)
(出典:
(財)経済調査会HP)
しかしながら使用済みの衛生陶器を使用したコンクリート二次製品については明確な使用実績の
の報告が見当たらないため利用可能かどうかの調査、検討を行った。
3.2.2 使用済み衛生陶器のコンクリート骨材としての品質について
コンクリート二次製品を作製するにおいて使用済み衛生陶器の実際の骨材としての品質につい
て検証を行った。
サンプルは分解・殺菌・粉砕実験で使用した回収品からの衛生陶器粉砕品を使用し、財団法人
九州環境管理協会にて測定を実施した。
《試験結果1》
表 3.2-2 骨材試験結果
試験項目
試験方法
単位
絶乾密度(注 2)
表乾密度
吸水率
JIS
JIS
JIS
A1109
A1109
A1109
g/cm3
g/cm3
安定性
JIS
A1122
%
粘土塊量
JIS
A1137
%
微粒分試験
JIS
A1103
%
単位容積質量
実績率
有機不純物
JIS
JIS
JIS
A1104
A1104
A1105
kg/L
%
−
塩化物
(NaCl として)
すりへり試験
ふるい分け試験
粗粒率
JIS A5002 に
準ずる
JIS A1121
JIS A1102
%
%
衛生陶器破砕品 衛生陶器破砕品 JIS A5308
(5mmアンダ (5∼20mm) 砂 利 及 び 砂 の
ー)
品質規格
2.41
2.37
2.5 以上(共通)
2.43
2.38
−
1.02
0.40
3.0 以下(砂利)
3.5 以下(砂)
0.0
0.3
12 以下(砂利)
10 以下(砂)
0.0
0.0
0.25 以 下 ( 砂
利)1.0 以下(砂)
2.5
0.1
1.0 以下(砂利)
3.0 以下(砂)
1.38
1.32
−
57.3
55.7
−
標準色液より淡
−
標準色液より
い
淡い(砂)
0.005 未満
−
0.04 以下(砂)
%
%
23.1
3.9
20.9
5.9
35 以下(砂利)
−
*注1:5mmアンダー品は砂、5∼20mm品は砂利に相当する。
*注 2:JIS A5308 附属書1表 3 の注釈で購入者の承認を得て、2.4 以上とすることができる。
《試験結果2》
表 3.2-3 骨材のアルカリシリカ反応性試験(モルタルバー法)JIS A 1146 による
材
齢
5mmアン
ダ−品膨張
率(%)
5 ∼ 20 m m
品 膨 張 率
(%)
14 日目
(2 週)
28 日目
(4 週)
56 日目
(8 週)
90 日目
(3 ヶ月)
180 日目
(6 ヶ月)
判定結果
0.004
0.011
0.015
0.017
0.022
無害
0.003
0.010
0.014
0.017
0.023
無害
〔判定基準〕
無害:材齢 6 ヶ月の膨張率 0.100%未満
無害でない:材齢 6 ヶ月の膨張率 0.100%以上、または 3 ヶ月で膨張率 0.050%以上
【考察】
使用済み衛生陶器を破砕した物の骨材品質試験結果では絶乾密度の項目が JIS A 5308
『レディーミクストコンクリート』の附属書 1 表 3 の品質値からは外れているが
①注釈で 2.4 以上であれば購入者の承諾を得ればよい。
②国土交通省より、『環境物品等の調達の推進を図るための方針』15.公共工事において、「再生骨
材等については、再資源化施設への距離、再生材の発生状況などに留意しつつ、構造物の基礎
砕石などの高強度を必要としない部位や路盤などにおいて、積極的にその使用を推進する」との
方針が出されている。
③骨材は混合して使用される場合が多く混合後の品質が表の値を満たしておれば良い。通常の砂、
砂利の密度は 2.6g/cm3 程度であり 50%以下の混合であれば使用は可能である。
上記のような注意点はあるもののコンクリート用の骨材としての使用は可能であると言える。
また、衛生陶器の表面に加工されている上釉(うわぐすり)はガラス成分であり 1985 年頃より関
西地区の構造物で問題となったアルカリ骨材反応性についても評価したが、膨張率は判定基準内
であり使用は可能であることがわかった。
3.2.3 使用済み衛生陶器のコンクリート二次製品の品質評価について
3.2.2 の結果からコンクリート用骨材として使用することは可能であると言えるため実際にコ
ンクリートを作製し、コンクリートとしての評価及び実際のコンクリート二次製品を試作し可能
性を調査することにした。
試験の実施においては 小倉セメント製品工業株式会社の協力の下、弊社スタッフ及び梅崎礦業
株式会社 コンクリート技師 宮崎課長の立会いにより実施した。
試験内容としては
〔コンクリート(供試体)の作製(JIS
A 1132)〕
・ 廃衛生陶器の粉砕品(粒径:5mm以下)を、細骨材の代替として使用する。
(代替率 0%、5.8%、14.5%、29.0%の 4 種類の供試体を作製)
・ 細骨材、セメント、水、混和剤、砕骨材を混合し、練り混ぜる。
その後、圧縮強さ、曲げ強度評価用の供試体作製のために、型に流し込む。
圧縮強度測定用の供試体
曲げ強さ評価用の供試体
(型流し込み直後)
(型流し込み直後)
〔物性測定試験〕
・スランプ試験(試験方法は JIS A 1101 に記載)
・まだ固まらないコンクリートの空気量の圧力による試験(試験方法は JIS A 1128
に記載)
〔スランプ試験〕
円筒状の金属の筒にコンクリートを流し込んだ後、垂直方向に引き上げ、その時
のコンクリートの高さを測定。
コンクリートの流し込み時のコンシステンシー(濃度、密度、粘度からくる性状)
を測定する。
〔まだ固まらないコンクリートの空気量の圧力に
よる試験〕
左図の容器にコンクリートを詰め、ふたをした後、
圧力をかけ、その圧力の減少度合いによってコンク
リート内の空気量を測定する。
〔圧縮強度試験〕
・ 材齢 14 日の圧縮強度について測定する。
〔コンクリート製品(縁石)曲げ強度試験〕
・製品強度を確認するため縁石を作製し衛生陶器粉を使用していない製品と 3 点曲げ強度を
測定し比較する。(材齢 14 日)
衛生陶器粉
衛生陶器粉
衛生陶器粉
衛生陶器粉
混入率 0%
混入率 5.8%
混入率 14.5%
混入率 29.0%
【試験条件、試験結果】
1.設計条件
略号
設計基準強度f'ck
スランプ範囲
粗骨材の最大寸法 Gmax
標準偏差 σ
空気量 Air
2.基本配合
30 N/mm2
13±2.5 cm
20 mm
2 N/mm2
2.0±1.5 %
設計基準強度を保証する材令
14日
セメント密度 ρc
3.15
エスメント6000の密度 ρc
2.92
2.62
細骨材の密度(海砂) ρs1
2.43
衛生陶器粉の密度 ρs2
2.73
粗骨材の密度 ρg
レオビルド8000
混和材AD
%
水結合
材比
W/B
%
細骨材
比
s/a
%
2.0±1.5
45.4
41
置換率
空気量
%
0.0
5.8
14.5
29.0
配合
No.
0
1
2
3
水
W
Kg/m3
163
163
163
163
セメン
ト
C
Kg/m3
215
215
215
215
エスメ
ント
ES
Kg/m3
144
144
144
144
細骨材
海砂
S1
Kg/m3
755
676
563
376
衛生陶
器粉
S2
Kg/m3
0
40
101
202
セメン
ト
C
Kg/m3
215
215
215
215
エスメ
ント
ES
Kg/m3
144
144
144
144
細骨材
海砂
S1
Kg/m3
787
709
591
394
衛生陶
器粉
S2
Kg/m3
0
40
101
202
粗骨材
G
Kg/m3
1127
1127
1127
1127
混和材
AD
Kg/m3
1.08
1.08
1.08
1.08
置換率
スラン
プ
Air
%
0.0
5.8
14.5
29.0
cm
12.5
16.5
19.5
崩壊
%
1.8
1.2
1.3
1.3
スパン
配合
No.
置換率
粗骨材
G
Kg/m3
1132
1127
1127
1127
混和材
AD
Kg/m3
1.08
1.08
1.08
1.08
3.現場配合(表面水率 4.8%)
置換率
補正値
%
Kg/m3
0.0
5.8
14.5
29.0
36
32
27
18
配合
No.
0
1
2
3
水
W
Kg/m3
127
131
136
145
4.圧縮強度試験結果
材令
製造日
試験日
配合
No.
日
11/16
11/30
0
1
2
3
14
圧縮強度(標準養生)
1
N/mm2
43.7
48.8
46.2
54.2
2
N/mm2
45.7
49.4
45.8
49.1
3
N/mm2
46.7
48.9
48.1
54.4
圧縮強
度平均
N/mm2
45.4
49
46.7
52.6
5.縁石曲げ試験結果
材令
製造日
試験日
日
11/16
11/30
14
規格荷
重
KN
%
0.0
5.8
14.5
29.0
5.5
0
1
2
3
%
0.0
5.8
14.5
29.0
曲げ強度(N/mm2)
圧縮強度(N/mm2)
53
51
49
47
45
0
10
20
衛生陶器混入率(%)
図 3.2-2 圧縮強度試験結果
30
破壊荷重
1
2
KN
KN
8.4
9.0
10.0
9.6
9.8
9.6
10.2
6.0
曲げ応力度
1
2
N/mm2
N/mm2
4.6
4.9
5.4
5.2
5.3
5.2
5.5
4.9
曲げ応
力度平均
N/mm2
4.7
5.3
5.3
5.2
5.5
5.0
4.5
4.0
0
10
20
衛生陶器混入率(%)
図 3.2-3 曲げ強度試験結果
30
(1)表によりわかるように砂(海砂)との置換率を増やしてゆくことによる強度の低下はなく比較
品よりも高い強度を示した。
(2)縁石の出来上がりについて 0 から 29%までの外観上の差はなかった。
(3)スランプ試験において置換率 14.5%で分離気味を示し、置換率 29%ではワーカビリティ−
は悪かった。置換率 15%以上では細骨材−粗骨材比率の調整や水セメント比率の見直しにより調
整する必要がある。
【結論】
今回の使用済み回収衛生陶器粉砕品については砂(海砂)との置き換えにおいて強度の低下はなく。
29%までの使用は可能であることが確認できた。
3.2.4 使用済み衛生陶器のコンクリート二次製品への利用への課題
今回の検証実験により使用済み衛生陶器を粉砕加工した物がコンクリート用骨材として使用す
ることは技術的に可能であることが判明した。
今回のコンクリート試験及び二次製品の試験結果を踏まえ今後回収衛生陶器をコンクリート製品
に利用する場合の課題と見通しについてコンクリート技師で今回の試験に立ち会っていただいた
梅崎礦業株式会社 宮崎栄三氏に意見を伺った。
□北九州市内にはコンクリート製品工場が 12 工場、生コンクリート工場が 12 工場操業しており
北九州生コンクリート共同組合の出荷量年間 50 万m3からおよそ生コンクリート製造量は約 60
万m3 程度と考えられる。生コンクリートには1m3当り約 700 から 800kgの細骨材(砂)を使
用するため北九州市内の砂の需要としては年間約 45 万トン、月間にして約 4 万トン程度あるた
め衛生陶器利用のリサイクル細骨材は十分利用可能である。
□一方、回収衛生陶器から供給可能なリサイクル細骨材の量が限られること、細骨材の現状の単
価が約 2 円/kgであることから利用した製品としては①市などで指定されている汚水桝②吸
水性が小さいことから付加価値の高い透水性コンクリート用骨材(国土交通省でも利用を推奨
している)③下水管埋め戻し用砕石としての利用などが想定される。
□いずれにせよ比較的強度を要しない構造物で生産量が限定された製品で付加価値の高い製品に
利用することが肝要である。
とのご意見であった。
今後、環境保護の観点から海砂の供給が減っていくことや関係省庁や各地方自治体から強まって
いる環境物品等の調達推進からの再生骨材使用製品開発の必要性からも回収衛生陶器利用のリサ
イクル細骨材利用製品の開発が期待される。
3.3〔透水ブロック等への利用〕
3.3.1 透水ブロック製品への利用の検討理由について
再生材料を用いた舗装用ブロック製品(焼成)としてはエコマーク商品や地方公共団体のリサ
イクル認定商品等で再生材料や廃棄物を使用した製品が既に存在していること、衛生陶器は吸水
性が小さく硬いこと、高温で焼結しているため成分の溶出がほとんどないことなどから検討する
こととした。
(「再生材料を用いた舗装用ブロック(焼成)」は 2004 年 3 月 16 日にグリーン購入法の
「環境物品等の調達に関する基本方針」の一部改定で追加された)
3.3.2 衛生陶器の透水ブロックへの利用化に関する調査について
北九州市内での回収衛生陶器のリサイクルを検討するに当り輸送効率やコストの観点から、当
初福岡県で焼成ブロック、透水ブロックを生産しているメーカーに検討をお願いしたが原料配合
を変更することによる収縮変動の問題、発色、発泡による不良の懸念等の問題があり、新規の原
料についての試作、検討を引き受けていただけなかった。
再生材料を用いた舗装用ブロック製品(焼成)に関しては中部地区、北陸、四国、関東の登録が
多く技術的課題の検討としてはある程度の実績のある企業で実施することにより可能性が判断で
きると考え他の地区での協力をお願いした。
今回、弊社グループ企業との取引があることから以前より弊社の滋賀工場工場における検査不合
格品等の再利用の検討をお願いしていた岐阜県の株式会社アイコットリョーワ殿の方で平成 16
年 10 月より透水ブロックの原料として工場排出品衛生陶器を利用していただけることになった
ことから使用済み回収衛生陶器の透水ブロックへの利用についての技術的課題に関して調査を実
施した。
【ヒアリング調査の内容について】
①衛生陶器利用製品の内容
透水性ブロック(商品名ピュアスルー:エコマーク商品登録品)の1種類への利用のみであ
る。
製品としては上層と下層の 2 層で乾式プレスしたものを焼成して作製した製品であるが、
その上層の部分に原料として使用しているとのことである。
透水ブロックには強度、透水性等の規格があり(日本建築学会規格 JASS 7M-101 では曲げ
強度 3N/mm2 以上、透水係数 1.0×10-2cm/sec)
、粒度や焼き締まりが変化すると製品とし
て規格に入らなくなるため衛生陶器粉を使用した。
焼き締まりが変化すると強度も変化するため特に自動車が通る際に割れ等につながること
からも材料のばらつきは少ないことが求められる。
②使用している衛生陶器のサイズ
Ⅰ.納入時の形態:30cm角程度
Ⅱ.粉砕後の利用サイズ:6 から 30 メッシュ(約 3mmから 0.5mm)
(30 メッシュ以下は透水性が悪くなるのでカットして廃棄している)
③粉砕機の種類
ジョークラッシャー及びインペラブレーカー等
④使用する上で注意していること
異物の混入:木、シール、紙、ゴム類
(異物が入ると焼成後の表面に穴、亀裂が生じ、製品として使用できなくなる。
)
⑤衛生陶器利用可能量
現状では 80 から 100t/月である。製品出荷の量により今後もその量が利用できるかはなん
ともいえない。
現在、製品としては1種類のみであり、上層のみの利用だが利用の拡大は可能かというこ
とに関しては現在のコストと安定供給量との兼ね合いで決めている。拡大のためにはそれ
ぞれの試験が必要となること及び運送費用を含めた材料コストの低減が図られる必要があ
る。
(厚さは 60mm、80mmなど必要強度によって変えたりする場合がある。上層は約
10mm程度で着色材を混ぜ、それにより色の種類を作り分けている。
)
陶器の使用比率、製品の生産量はノウハウに関することなので答えられないとのこと。
⑥使用済み製品の使用可能性について
使用済みの製品を使用する事に関しては
・異物の混入がないこと
・成形後焼成(1,000 数百度)するので付着物が発色、発泡しないこと
・異なるメーカの製品でも焼成条件が変わらないこと
・水分が安定していること
が確認できればよい。
衛生性に関してはどうせ焼成するので殺菌の必要は感じないとのことであった。
同様に岐阜県内で窯業原料を取り扱っている N 社に対し陶器くずを利用した焼成ブロック、透水
ブロック等の製造の情報をヒアリングした。
①陶器くずを利用した商品について
東濃地区ではよく作られている。現在は商品の単価も下がっていることや公共事業等の調
達条件での指定が増えている関係から原料に関してはリサイクル商品が主流であり、いろ
いろなものが使用されている。
但し、陶器くずといっても例えば表面に銅を使用した装飾タイルなどがあり、それを使用
した業者で製品表面に色がついてしまい不良品が出るということを聞いており、何でも入
れられる訳ではない。
建築廃材などではタイルにセメントが付着したようなものも混じるが、焼成時にブロック
が発泡し、表面がぼこぼこに凹んだり、割れたりする場合がある。
鉄などの金属が混入すると斑点状に変色するので分別は重要である。
最近はダイオキシン対策での熔融スラグが使用される場合があるが都度成分が変化するの
で原料としては大変使用に注意がいる。また、重金属類の溶出の危険性があるため透水ブ
ロックでは使いにくい原料である。
②衛生陶器粉の利用の可能性について
成分が安定しているのなら原料としては使い易い。色についても安定しており通常タイル
粉などは素地のベースの色としてたくさん使われており 2 層打ち、3 層打ちなどの成形方
式においても全体に使用は出来るはずである。上層のみという条件はないと考えられる。
上層のみで使用しているとすると色の発色の安定化、原料コスト等の要因からの選択であ
ろう。
N 社でもブロック用の着色剤を納入していて当初は全体に使われていたがコストの問題か
ら上層のみに切り替わり、出荷量が大きく減ったということがある。
③粉体の粒径について
陶器の粉体で細かい部分を含めて全て利用可能と考える。しかしながら使用する製品の特
性で使用できる範囲や粉砕時の粒度分布のばらつきなどがあると製品強度に影響するので
製造製品ごとに事前に試作する必要はある。
④衛生陶器粉の利用拡大の可能性について
原料ソースとしての利用は可能。
但し、透水ブロックなどもコストの競合から着色コンクリートや透水性コンクリートに比
べ不利であり利用は伸び悩んでおり大量に使用することが出来るかは不明。
いずれにしても運送費、粉砕費などが安くなる必要があろう。
タイル業界は生産がピーク時の 3 割程度まで落ち込んでおり大幅な拡大は難しいのではな
いか。
但し、設備の稼動率が落ち込んでいること、粉砕機を持っている業者が近隣に多いことか
ら比較的利用はしやすい地域ではないか。
【 調査のまとめ 】
・衛生陶器の透水性ブロックへの利用は可能。(実施例あり)
・使用済み衛生陶器の利用は工場排出品と成分的に同じであり可能と思われるが異物の混
入を防ぐ必要がある。
・コスト的には移送費、粉砕費等で他の原料に比べ高いため量的に拡大するとすれば現状
より安くなる必要がある。
・使用済み衛生陶器の利用は可能と思われるが北九州地区からは離れており、移送方法、
回収費用などを総合的に勘案する必要がある。
・構造的には簡単な商品であり。九州地区での利用可能なメーカーの開拓が課題。
3.3.3 使用済み衛生陶器の品質評価について
使用済み回収衛生陶器の利用に当っては工場からの検査不合格品と異なり金属、樹脂部品の組
み込みと接着、ラベル等の貼り付けがなされている。ヒアリングの結果明らかになったように焼
成時の発泡等につながる上記の材料は可能な限り除去する必要があるが一部どうしても剥ぎ取れ
ない部分の混入の影響について実際の回収衛生陶器を使用した陶器粉砕品を使用し、焼成評価を
実施することにした。
試験については株式会社アイコットリョーワで実施した。
焼成により作製されたブロックについては写真に示す。
工場から排出された衛生陶器
回収した廃衛生陶器を利用
を利用(上層の色付部にのみ使用)
(ブロック全てに使用)
焼成試験については回収衛生陶器粉体を 100%使用している。
試作品の曲げ強度は 3.58(Mpa)
、透水係数 13.8×10-2(cm/sec)であった(JASS 基準値を満た
す)。
衛生陶器粉体単独ではフラックス量が少ないためそのままでは市販品と同様の基準を満たす製品
にならないが懸念された発泡や斑点等の不良は認められなかったことから工場排出の衛生陶器と
同様、透水性ブロックへの原料としての回収衛生陶器の利用は技術的には可能と思われる。
3.3.4 使用済み衛生陶器の透水ブロックへの利用への課題
使用済み衛生陶器の透水ブロックへの利用については技術的には可能と思われるが実際に原料
として利用されるためにはヒアリングからも明らかになったようにいくつかの課題が存在する。
□品種が非常に多く製品ごとに配合を調整する必要があり、実際の使用には試験調整期間が必要
となる。
□粉砕条件がばらついてしまうと強度や透水性の規格値を満たさない場合が考えられるため回収
衛生陶器の粉砕は調節又は分級等の粉砕粒度を安定させる管理が必要となる。
□透水ブロックはコストの競合から着色コンクリートや透水性コンクリートに比べ不利であり利
用は伸び悩んでおり回収した衛生陶器を全て使用することが出来るかは不明。
□競合する再生材料に比べコスト的に不利であり、運送費、粉砕費などが安くなる必要がある。
□自治体等の指定を受ける際はその県や地方での生産品が有利であるが北九州地区での製造企業
は今後開拓する必要があり現時点では活用できるかどうか不明である。
等の課題につき検討する必要があると言えよう。
3.4〔樹脂製品への利用〕
3.4.1 樹脂製品への利用の検討理由について
衛生陶器の再活用を考えた場合、無機系材料であるということで土木系材料、窯業系材料につ
いては利用の可能性は高いといえるが、一方需要の減少、海外からの安価な原材料の流通などに
より原料資材の価格は非常に安い物となっているのが現実であり、キログラム当り数円から数十
円程度でしかない。一方衛生陶器は硬くかつ重量があるため粉砕コスト、
物流費用がかさむため、
バージン材料に比べて非常に不利であることが予測される。
一方化学系有機材料は土木、窯業系材料に比べ一般的に単価が非常に高い。
(PP樹脂で約 150
円/Kg 程度、ABS 樹脂で約 300 円/Kg 程度)また、一部カウンター材や内装材等で樹脂に他の材料
を混合している樹脂素材が流通している。
回収した衛生陶器を微粉化して樹脂に混合することが可能であれば非常に広範囲な製品でかつ
大きな需要を創出できるのではないかと考え、衛生陶器の粉体を樹脂に利用可能かどうかの検討
をすることとした。
3.4.2 使用済み衛生陶器の樹脂適用試験について
実験をするに当り樹脂の種類については成形時の流動性や、汎用性を考えポリプロピレン(PP)
樹脂で試験をすることとした。
試験条件として、粒子径に関しては射出時における成形機の磨耗の可能性等も配慮し 106 ミクロ
ン(140 メッシュ篩パス)のものを使用した。陶器の混合比率は 50 から 70%で成形圧力の状況によ
り調整することとした。
試験項目としては引っ張り強度、曲げ強度、曲げ弾性率、アイゾット強度、比重とした。
【試験結果】
試験結果については次のようになった。
表 3.4-1 樹脂混入試験結果
pp/衛生陶器粉
相溶化剤
引 張強度
Mpa
曲 げ強度
Mpa
曲弾性率
Gpa
2
アイ ゾット kJ/m
3
比重
g/cm
試作品
テスト1 テスト2 テスト3 テスト4 テスト6
50/50
30/70
30/70
25.5/59.5 34/51
0%
0%
0%
15%
15%
14
11
25
45
50
23
17
43
75
83
2.3
4.7
5.9
9.4
7.2
2.4
1.7
2.2
5.4
5.7
1.39
1.65
1.64
1.72
1.54
*試験については岸本産業株式会社 技術開発室で実施した。
現行品
既存品
100/0
30%
69-88
88-118
4.9-5.9
7.8-8.8
1.12
100/0
0%
27
34
1.3
3.4
0.90
引張強度 Mpa
曲げ強度 Mpa
60
100
80
40
60
40
20
20
図 3.4-1 混入品引張強度結果
存
品
既
テ
ス
ト
6
4
ス
ト
存
品
既
6
テ
ス
ト
4
ス
ト
3
テ
ス
ト
テ
テ
ス
ト
既
6
ス
ト
4
テ
テ
テ
ス
ト
3
ス
ト
2
ス
ト
テ
図 3.4-3 混入品曲げ弾性率結果
ス
ト
0
テ
0
1
5
存
品
5
1
3
アイゾット kJ/m2
10
2
曲弾性率 Gpa
ス
ト
テ
図 3.4-2 混入品曲げ強度結果
10
テ
ス
ト
テ
テ
ス
ト
1
ス
ト
テ
品
テ
既
ト
ス
ス
テ
存
6
4
ト
ト
テ
ス
テ
ス
ト
3
2
1
ト
ス
テ
2
0
0
図 3.4-4 混入品アイゾット強度結果
比重 g/cm3
2
1.5
1
0.5
既
存
品
6
テ
ス
ト
4
ス
ト
テ
テ
ス
ト
3
2
ス
ト
テ
テ
ス
ト
1
0
図 3.4-5 混入品比重結果
【考察】
□単純に PP と衛生陶器粉体を使用した場合 PP 単独の物性値に比べ強度が低かった。
□樹脂と粉体の密着を良くする為に相溶化材をを入れることにより PP 単独の物性値とほぼ同等
の数値になった。
□PP 単独と同等以上の物性値とするためにはグラスファイバーを配合することでより高い数値
に調整ができることがわかった。
□陶器粉体比率 51%、グラスファイバー比率 15%の配合で実際にセンサーカバーの成形をしたと
ころ問題なく成形は可能であった。
センサーカバー試作品
3.4.3 使用済み衛生陶器の樹脂製品への利用への課題
今回の検証調査によって樹脂製品に対し、回収衛生陶器を粉体化したものが技術的に使用可能
であることがわかった。
しかしながら実際に製品として使用するためには検討すべきさまざまな課題が残される。
□樹脂製品は製品それぞれに異なった要求品質があり今回の試験結果のみで使用できるものでは
なく製品ごとに確認が必要である。
□樹脂の種類は大変多く樹脂成形時の流動性が異なる為使用される樹脂に応じて検証する必要が
ある。
□衛生陶器粉体は硬度が高いため成形機の磨耗の懸念があるが今回の試験では不明である為検証
が必要である。
□衛生陶器粉体の粒子径が変動した場合樹脂製品の強度や収縮に影響を及ぼす可能性があるため
検証が必要である。
□使用できる具体的な樹脂製品は今後の検討によるため現状では具体的に使用していただける樹
脂製品はなく、利用先としては現時点としては不明である。
□樹脂単価よりは安くなる可能性があるが樹脂とのブレンド費用や成形会社までの物流コストを
検証する必要がある。
□再生材料を使用した樹脂製品のエコマークの基準としては再生プラスチックを使用したもので
あり衛生陶器を再利用してもエコ商品として認知されないため商品化が困難と思われる。
使用済み衛生陶器を回収し再利用していくためには上記のような課題について一つ一つ検証し、
解決することが求められるが使用メリットが明らかになる環境つくりも同時に進める必要があろ
う。
3.5 まとめ
本章では使用済み衛生陶器類の利用に関して①コンクリート二次製品への利用、②透水ブロッ
クへの利用、③樹脂製品への利用、のそれぞれの用途に関して実際に市中より回収された衛生陶
器を用いて技術的な可能性について検証をおこなった。
3 件とも利用した製品を作製することは技術的には可能であることが示された。しかしながら、そ
れぞれに解決すべき課題が存在することも判明した。現在は利用されていない材料であることか
ら具体的な商品化に向けた取り組みが今後必要となる。
Fly UP