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分野別内部監査実施上の留意事項

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分野別内部監査実施上の留意事項
分野別内部監査実施上の留意事項
「ガバナンス」監査に関する留意事項
ここでは、ガバナンスを「組織における権限と責任体制が構築され、それを監視する体制が有効に機能していること」(中央教育審議会大学教育部
会)「建学の精神に基づく経営理念を具現化させた中長期の計画に従った意思決定をすることを担保する仕組み」(私立大学社会的責任(USR)研究会)
と定義する。理事会が内部統制の仕組みを構築して理事会が最終意思決定機関として決定した内容を各執行組織を掌理する理事を通して実行させる管
理機能がガバナンスであり、このため経営者(国立大学法人:学長、学校法人:理事長)に対する規律付けが求められる。内部監査はこれらが現実的
に現場の状況からその背景となるガバナンスについてとらえようとするものである。
分類
項目
留意事項
趣旨(留意事項の狙い)
権限と責任 最終意思決定機関として
最終意思決定機関と業務執行機関とが明確に区分され権 国立大学法人法と異なり、学校法人は、私立学
の機能
限と責任が明確になった指示となって現場へ伝わってい 校法によって理事または、業務執行理事につい
るか(コミュニケーションルートは正しいか)。
ての監督権限も理事会の監視機能として位置付
最終意思決定は、理事会で行われ、決定事項は適切に各 けられている。権限と責任が不明確でかつ指揮
命令系統の統制がとれていない場合、理事会等
部門へ伝わっているか。
の決定事項が正しく遂行されない可能性もあ
る。内部監査は、これらのコミュニケーション
ルート等を確認することで内部統制がとれた運
営がされているかを確認する。
最終意思決定事項の執行
執行部署の実施状況を業務執行理事が適時確認している 業務執行理事への監督権限が理事会に付与され
監視機能
か。
ていることから、理事会は、監事監査に関わら
執行部署の業務執行理事への報告は、理事会で報告され ず、理事会の決定通りに各部門が業務を行って
いるか監視する必要がある。意思決定プロセス
ているか。
理事の代表権は、原則として理事長とし、他は、寄附行 の透明性が求められるほか、これらを推進して
為で付与することとし、代表権のない理事の取引への対 いくリーダーシップが経営者には求められる。
抗要件として理事の名前と代表権の範囲の登記がなされ 内部監査は、業務執行理事が遂行部署に対して
適時、理事会決定事項の進捗状況を把握すると
ているが、順守されているか。
ともに理事会へ報告されているかを確認するこ
とにより執行監視機能が機能しているか否かを
確認することができる。
組織の機能の明確化
学長・学部長、教授会、評議員会、監事の役割機能が明 学長・学部長の権限が強化されるとともに、教
確になっており機能しているか。
授会の役割・機能が、意見聴取・情報共有の場
として位置づけられている。
また、評議員会の機能が明確になっている。監
事が評議員会と連携して、理事会を監視する仕
組みが機能している。
1
執行体制
建学の精神の具現化と実
行計画の見直し手順
中期計画等が建学の精神等設立の理念に基づいたもので
計画通りに執行されているか。
計画の見直し手順が組み込まれており、実行されている
か。
人材育成
経営人材の育成の仕組みが明確になっているか。
外部理事を生かしているか。
外部環境を把握して自らのポジショニング等を行なう仕
組みがあるか。
2
これらの権限と責任が明確になって機能しない
と執行部署は、混乱する。内部監査は、現場の
声からこれらの混乱がないかを確認する必要が
ある。
ガバナンス建学の精神に基づく学校経営理念
(ミッション・ビジョン)およびそれを具現化
させた中長期計画に従って意思決定を行うこと
を担保する仕組みが必要である。
しかし、大学は今急速な外部環境の変化の波に
さらされており、法人は、策定した中期計画を
粛々と実行するのではなく、常に外部環境のウ
ォッチングを行い、必要に応じ時代や社会の要
請に応えるよう計画の見直す姿勢も必要であ
る。
大学経営に必要な資質・能力を有する経営人材
を育成する計画を策定実施するとともに、外部
理事をファシリテーターとして活用する力を理
事会が持つ必要がある。このほか外部環境の変
化を的確に捉えて共有化させる仕組みの構築や
人材育成によって教職員の意識改革を行なう必
要がある。外部理事の評価を含むこれらの仕組
みが構築され、運用され、評価が行われるPD
CAサイクルが働いている必要がある。
「学外研修等、教学」監査に関する留意事項
特に大学院生の海外を含む学外での研修・交流(インターンシップ等)が大学間の公式な取り決めの基に行われ大学院生の研究、安全等に関わるリ
スクを回避できる態勢になっているか等、教学に関わる事項を確認し、法人(大学)の教育・研究活動に資することを目的とする。
海外を含む大学、研究機関、企業、地域等への学外研修・交流制度は、研修等先の確保、交渉、経費に加え、講義等と研修の組み合わせ、研修担当
者の確保等の課題があるが、大学の志向を推察することもできる。
分類
項目
留意事項
趣旨(留意事項の狙い)
学外研修
取り決め(協定)の整備
大学、研究者、学生等の教育・研究や就職意識
研修・交流等先は目的に適合しているか。
研修・交流等先の大学・企業間の取り決め(協定)は締 を環境の変化に適応させ社会のニーズに応える
教育・研究体制、人材養成を行う必要性から、
結されているか。
研修・交流目的、内容、期間、費用(研修・交流先への 個々の大学内だけでは充分に得られない知識・
経験等を他の大学、研究機関、企業、地域社会
授業料等)が明確にされているか。
での研修・交流により培うことも必要である。
学内規程
学外研修制度に関わる規程等は整備されているか。
そのためには、他の機関での研修・交流は、学
事故対応及び補償
生保護等の面から充分な管理態勢を整えておく
研修生全員の研修先等が把握されているか。
ことが必要となる。
緊急連絡先等が把握されているか。
傷害、物損等の保険に加入しているか。
経費
効果
指導
使用機材等の使用料、破損時の補修費等の取り決め・対
策はあるか。
研修先への交通費、遠隔研修先での住居費支援策はある
か。
研修・交流による効果が分析されているか。
研修・交流中の学生の把握(生活・研究等)は誰が行っ
ているか。
研修・交流許可権限者は誰か。
(担当教員のみが許可する
ことなく学部長等が許可する。
)
研修先(研修者)から定期的に研修報告等
を受けているか。
適正な数の学生(ゼミ、研究生等)を指導しているか。
3
ゼミ等の学生ゼロが数年間続いている教員につ
学生数
留学生
非常勤講師
指導する学生数が極端に少ない、又はゼロである場合に
は、その原因の把握に努めて改善検討がされているか。
出入国管理
定期的にパスポート等の確認がされているか。
出欠管理
授業の出欠状況や退学状況が把握されているか。
生活環境把握
現住所や同居者等が把握されているか。
メンタル管理
相談を受け入れる体制が確立されているか。
採用要件
遠隔地から講師を採用する要件が明確か。
旅費の支給は適切か。
数箇所掛持ち非常勤講師の通勤旅費の支給は、適切か。
(掛け持ち大学を把握しているか。)
休講
休講の理由は、適切か。補講処理は、
確実にされているか。
無届休講はないか。
その他
学生支援
アドミッションポリシー(受け入れ、選抜方針)は明確
か。
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いては、その理由を確認し、改善措置などを図
ることが望ましい。受講者ゼロが続いた場合、
学生との接点がほとんどなく、大学の各種行事
(オープンキャンパス、学校訪問等)さえも非
協力となる場合があり、他の教員との意思疎通
も充分に取れない可能性がある。他教員への負
担、教員定員問題にも関連するので関心を払う
必要がある。
留学生が増加する中で、留学生の人数把握が不
十分だと補助金の不正受給となりかねない。ま
た、留学生の生活が厳しくなっていることから
も、学業
よりアルバイト優先の留学生もでている。その
ため、大学の留学生指導
の有り方が問われている。
関東在勤の講師(会社員兼務)を遠隔地(例え
ば九州地区)の非常勤講師として採用する場合、
該講師の九州地区の会社への出張管理を厳格に
行い、双方から二重に旅費を受領することのな
いように注意しなければならない。可能な場合
は、極力近隣から雇用が望ましい。
同一日に数箇所の大学の教育を掛け持ちしてい
る非常勤講師の場合は、通勤経重複する経路の
旅費を重複請求することのないように注意する
必要がある。
月曜日授業を受け持つ単身赴任講師が、毎週末
に自宅に帰宅するため、しばしば月曜日を休講
にしていた。当該講師は、メールで指導もして
おり学生教育への影響はないとの理由を述べる
場合があるが、認められない。
無断休講事例が、学生からの通報で発覚した。
事務部局は全く把握しておらず、所要の手当て
を支給している場合もあり注意が必要である。
入学要件等は、アドミッションポリシーに基づき運用され、
収容定員と入学定員、在籍学生数等が教育環境にふさわし
奨学制度、健康・生活相談、課外活動支援等の学生サー
ビス支援体制があるか。
教員対応
いものである必要がある。
教員採用・昇任方針は明確か。
教員の教育・研究活動支援に TA は活用されているか。FD
の取り組みはあるか。
ゼミ生、研究生等が在籍していない研究室はないか。い
ない場合の原因を把握しているか。
会計
財務情報が公開されているか。
会計監査を受けているか。
施設
遊休施設はないか。
授業
シラバスは作成されているか。
授業要領は、常に改善を図るように努めること
が必要であり、その内容、方法はシラバスとの
授業アンケート等を実施して授業の改善に努めている 整合性に留意することが肝要である。
か。
授業改善に向けてどのような取り組みを行っているか。
公表、意見交換の場があるか。
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「入学試験・募集活動」監査に関する留意事項
入学試験は、単位認定や卒業判定とならんで厳正な執行が求められる業務である。入試問題の漏えい、出題ミス、採点ミス、合否判定のミス等が発
生した場合、社会的影響が大きく、大学(学園)に対する社会的信頼の失墜を招くとともに、マスコミ発表や該当者への補償などへの対応が必要になる。
また、募集活動が適切に展開されないと、志願者や入学者の減少を招き、大学(学園)の経営問題にも直結しかねない。
このため、入学試験や募集活動におけるリスクを生じさせない環境づくり(防止策)と、不幸にして発生した場合の適切な対応態勢は、リスクマネジ
メントとしても重要な課題であり、内部監査業務でそのシステムの適切性を担保することが求められる。
※「留意事項」中の規程等の名称、委員会や委員名称は、あくまでも「例示」であることを予めご承知おきいただきたい。
分類
項目
留意事項
趣旨(留意事項の狙い)
入学試験の 入学試験の計画
学部のアドミッションポリシーは明確に定められている 社会が求める人材の育成は、優秀な学生を確保
計画、準備
か。また、アドミッションポリシーを広く周知する工夫 することから始まる。優秀な学生を確保し、建
がされているか。
学精神や教学理念に沿った教育を行うことが必
要であり、そのための基盤作りや恒常的な手立
入試担当部署と学部が協議を行い、学部のアドミッショ てが求められる。これらの対応が結果として、
ンポリシーにもとづく適切な入試方式を設定できる体制 大学のステータス向上にもつながる。
となっているか。
入試担当部署による入試の状況分析(結果、傾向)が適切
に実施され、その情報が学部(執行部)(や全学)に提供さ
れているか。
入試を統一的・適正に実施するため、全学的委員会が設
置されているか。また、規程でその委員会の構成メンバ
ーや審議事項が定められているか。
入学試験の準備(問題作
成)
高校の指導要領の確認や分析など入試問題として適切な
作問を可能とするための支援体制が構築されているか。
高校の指導要領にもとづく出題を行うことは、
高校からの信頼を得ることにつながる。
入試問題漏えいを防止するシステムが構築されている
入試問題の漏えいの発生は、全く稀なケースで
か。
あろうが、想定はしておく必要があろう。
問題作成、輸送、保管等の各プロセスにおける管理体制、リ
スク分散の対策。
また、漏えいが判明した場合の対応が定められているか。
・状況把握、適正な対応、原因分析、文部科学省への報告、
マスコミ発表など
・漏えいした者への懲戒処分 など
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出題ミスは、その内容が軽微であってもマスコ
入試問題出題ミスを防止するシステムが構築されている ミの恰好のネタとなり、適切な対応が行われな
か。
い場合には、社会的信用の失墜を招く可能性が
作成者以外の複数回の点検体制、リスク分散の対策。
高い。
また、出題ミスが判明した場合の対応が定められている
か。
・状況把握、適正な対応、原因分析、文部科学省への報告、
マスコミ発表など
・試験中に判明した場合の試験会場での伝達方法など
入学試験要項(募集要項)
入学試験の準備(担当事務
局の体制、業務)
記載内容に誤りがないか確認する体制ができているか。 入学試験要項で社会的に公表した事項は変更が
また、誤りが判明した場合の適正な対応がとれているか。 きかないため、確実な点検体制が必要。
入試を担当する部局が適切な規模で設けられているか。 入試方式数や受験者数に即した体制がとられて
いないと、円滑な入試執行に支障をきたす原因
入試に係る年間スケジュールが定められ、スケジュール になる。また、全学体制で入試を執行している
に従って業務が機能的に行われているか。
場合には、良好なコミュニケーションが図られ
担当部局と全学的な委員会、学部等とが良好なコミュニ ていることが必要となる。
ケーションを図れているか。
入学試験の
実施
願書受付
試験執行準備
業務がマニュアル化され(要領としてまとめられ)、業務 過去に生じた課題が検証され、入試業務がマニ
担当者に周知する機会が設けられ、業務担当者が理解し ュアル化され、常に update されていることによ
り、現場での異なる対応を防ぎ、業務の効率化
ているか。
を図るための基本となる。
受験票が届かない等のトラブルに対応する体制が構築さ
れているか。
受験資格要件の点検が不十分であると、受験生
特別入試(特に留学生入試)における受験資格要件の点検
に与える影響が大きく、適切な対応がとれない
が、基準等にもとづき適正に行われているか。
と、社会的信用の失墜を招く可能性が高い。
【業務委託で処理を行っている場合】
業務内容、業務手順、秘密保持等が、受託業者との間で、
契約書や仕様書等により適正に担保されているか。
試験場関係業務(試験場の割振り、設営、誘導掲示など)、 様々な準備が適切に完了されていることが、入
試験実施本部業務(監督者対応、受験者数の確定、答案の 試を確実に執行する大前提となる。
確認・返送など)等、試験を確実に実施する準備を行う体 入試には大量の準備が必要となるが、これらを
制が構築されているか。
マニュアル化し、均一で抜落ちのない準備がで
きるように準備されていることが必要となる。
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受験特別措置を希望する受験生への対応(別室の設置、試
験時間延長、答案の拡大など)を適切に実施する体制がで
きているか。
【入試執行業務の一部を業務委託で処理を行っている場
合】
担当部局・担当者と受託業者との間で、業務内容、業務
手順等について、適切な確認や必要な打合せが行われて
いるか。
【地方試験場での入試を実施している場合】
①年度の異なる業務担当者間で、業務を継承するシステ
ムが構築されているか。
②本部試験場と地方試験場の連絡体制が複数の手段で確
保されているか。
③試験問題、答案、試験実施用品の輸送等を安全・確実
に実施するシステムが構築されているか。
試験執行
試験執行業務がマニュアル化され(「実施要領」としてま 過去に生じた試験執行業務の課題が検証され、
とめられ)、担当者に周知する機会が設けられ、担当者が マニュアル化され、常に update されていること
理解しているか。
が、公平で適正な入試執行につながる。
起こりうるトラブルの想定が行われているか。その上で、 試験の現場では数々のトラブルが発生するが、
トラブル発生時の対応マニュアルが定められ、担当者に それらに適切に対応できる体制が執られてるこ
周知する機会が設けられ、担当者が理解しているか。
とが、公平で適正な入試を執行する基本となる。
地震等の災害、雪等による公共交通機関の遅延、試験時間間
違い、試験問題配付間違い、答案の紛失、機器の不具合、受
験生の試験場間違いなど
受験生が引き起こす不正行為の想定が行われているか。
その上で対応マニュアルが定められ、担当者に周知する
機会が設けられ、担当者が理解しているか。
・カンニングペーパー、携帯電話を使用した不正行為など
・不正行為を行った受験生への対応など
試験執行においてミスが生じた場合の対応が定められて
いるか。
・状況把握、適正な対応、原因分析、文部科学省への報告、
マスコミ発表など
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試験執行に係るトラブルやミスに対して適切な
対応がとれないと、社会的信用の失墜を招く可
能性が高い。
入学試験後
公平な入試
多様化な入試方式間での合格基準(得点調整)等が検証さ
れているか。
検証結果が全学で共有され、標準化されているか。
(成績が一定均質である)学生確保と、受験生の
公平感を確保するために必要。
採点
採点ミスを防止するための対策がシステム化されている
か。
複数の採点者による採点、採点結果の点検、採点者への啓発、
採点プログラムが正しいかの確認など
採点ミスが判明した場合の対応が定められているか。
状況把握、適正な対応、原因分析、文部科学省への報告、マ
スコミ発表など
該当受験生への「対応、該当受験生の高校への対応など
合否判定ミスを防止するための対策がシステム化されて
いるか。
合否判定基準の明確化、合否判定担当者の共通認識の形成、
判定結果の複数点検など
合格発表ミスを防止するための対策がシステム化されて
いるか。
学部の合格判定結果が合格発表データ作成者(受託業者)に
正確に伝わるシステム、作成された合格発表データの複数点
検など
合格発表ミスが判明した場合の対応が定められている
か。
状況把握、適正な対応、原因分析、文部科学省への報告、マ
スコミ発表など
該当受験生への対応、該当受験生の高校への対応など
記載内容に誤りがないか確認する体制ができているか。
また、誤りが判明した場合の適正な対応がとれているか。
採点ミスや合否判定ミスは、受験生・父母に与
える影響が大きく、マスコミの恰好のネタとな
る。多くの場合、受験生への補償問題も生じる。
また、適切な対応が行われない場合には、社会
的信用の失墜を招く可能性が極めて高い。
次の事項に留意された記載内容となっているか。
①入学金・初年度学費等入学手続金、卒業までの納付金
の内容、校友会費等の預かり金の任意性の明記 など
②入学辞退者への学費等返還についての内容の記載
入試の状況分析(結果、傾向)にもとづく情報発信が戦略
的に行われているか。
情報の受け手を意識した発信手段が使用されているか。
近年、取扱いについての記載が要求されるよう
になった事項が適切に記載されていないと入学
者との間でトラブルとなる可能性が高い。
合否判定、合格発表
入学手続要項
募集活動
広報
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入学手続要項に記載した事項に間違いがある
と、入学者の信用の失墜を招く可能性が高い。
優秀な受験生(学生)を確保するために、入試広
報やその具体的手段の1つであるオープンキャ
ンパスや入試相談会は重要な意味を持つ。この
オープンキャンパス
入試相談会
その他
大学入試センター試験
大学案内(パンフレット)・新聞広告等の紙媒体、大学 HP、いわゆ
る SNS
情報に誤りがないかどうかを確認するシステムが構築さ
れているか。また、誤りが判明した場合の対応が定めら
れているか。
オープンキャンパス中に災害や事故*1が発生した場合の
対応*2が定められているか。
*1 地震・台風など、火災、爆発など
*2 来場者の安全を最優先するマニュアル、避難誘導体制、
中止の判断など
オープンキャンパスの効果検証が行われ、次回(次年度)
に反映させるシステムが構築されているか。
来場者に誤った情報を伝えてしまった場合の対応が定め
られているか。
入試相談会の効果検証が行われ、次回(次年度)に反映さ
せるシステムが構築されているか。
大学入試センター作成の「実施要領」「監督要領」「輸送
要領」
「成績提供要領」にもとづき、センター試験業務を
適正に実施する体制ができているか。
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ため、情報発信の手段の効果検証を行い、情報
発信を戦略的に行う必要がある。
また、可能性は低いが、事件・事故を想定した
対応も検討しておく必要がある。事件・事故に
際しての情報発信に対して適切な対応が行われ
ない場合には、社会的信用の失墜を招く可能性
が極めて高い。
独自の入試ではなくても、試験執行が適切に行
われなかった場合、社会的信用の失墜を招く可
能性が高い。
「研究費の執行・管理」監査に関する留意事項
「科学研究費助成事業」をはじめとする公的研究費の採択件数・採択金額は、大学の研究力量を示す1つの指標であり大学の評価にもつながる。こ
のため、内部監査業務において、公的研究費の獲得に向けた適切な支援制度が整備されていることを検証することは重要である。
一方、再発防止に向け様々な対策が取られてきたにもかかわらず研究費の不正使用が後を絶たない。特に公的研究費の不正使用・目的外使用が発生
した場合、以後の公的研究費への申請の停止処分や研究費の返還など、研究・財政に与える影響は大きく、またマスコミ発表などへの対応とそのこと
による社会的評価の失墜を引き起こす。このため、研究費の適正執行に係るシステムの構築はリスクマネジメントとしても重要な課題であり、内部監
査業務でそのシステムの適切性を検証することが重要である。
※「留意事項」中の規程等の名称、委員会や委員名称はあくまでも「例示」であり、各大学によって異なることをご承知おきいただきたい。
分類
項目
留意事項
趣旨(留意事項の狙い)
研究費の申 研究費申請(応募)に関す
規程・内規・申合せ等が作成されており、申請(応募)の 特に、有期雇用教員の申請および採択後に雇用
請(応募)
る規程、内規、申合せ等の 資格要件等が明確にされているか。
が継続されなかった場合の取扱いを明確にして
制定
規程・内規・申合せ等は、例規集、HP・手引き等により おく必要がある。
研究者・研究担当部署の職員が常時閲覧できるようにな
っているか。
研究費申請(応募)に関す
研究者に対し、研究費の基礎的知識を提供するシステム* 科研費をはじめとする公的研究費の獲得を方針
る支援制度の整備
が構築されているか。
として掲げるのであれば、単にスローガンとす
*研究費の概要、研究種目、スケジュール、e-Rad など
るだけではなく、獲得に向けた環境整備が計ら
研究者が、研究費の公募情報をリアルタイムで取得でき れていないと実現は難しい。
るシステムが構築されているか。
申請(応募)への支援制度*が整備されているか。
*高評価だが採択に至らなかった研究課題を採択につなげる
ための学内研究助成制度、申請書のブラッシュアップ指導な
ど)
学内研究費 学内研究費の選考体制、選 ①規程・内規・申合せ・募集要項等により、選考委員会 学内の研究助成制度を設けている場合、募集~
の選考
考結果の公表
の構成や選考基準等が明確にされているか。
選考結果のプロセスにおける透明性が担保され
②研究者が①を常時閲覧できるようになっているか。
ている必要がある。
③選考結果が公表(会議報告)されているか。
研究費の適 研究費の執行・管理に関す ①「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイド 研究費の不正使用・目的外使用を防止するため
正執行
る規程、内規、申合せ等の
ライン(実施基準)」にもとづき、学内における公的研 には、文部科学省のガイドラインにもとづき、
制定
究費の管理・監査の規程が制定され、概ね次の事項が 適正執行を図るための規程・内規・申合せが制
適切に盛り込まれているか。
定され、研究者
定義/機関内の責任体系/研究者の責務/事務・相談の窓口部 に周知徹底されていることが基本となる。
署/関係者の意識向上/調査/懲戒/不正防止の要因把握/不正 その上で、適正執行を推進するための責任体制、
防止計画の推進体制/納品検収/不正関与業者への対応/通報 実態把握と問題点を早期に発見する体制、不正
担当部署/内部監査/モニタリング
防止計画の策定による予防策の実施などの手段
②①の規程の他、研究費執行に必要な次の規程・内規・ をとる必要がある。
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適正執行の推進体制整備
物品購入(調達)/検収
取引先企業
申合せが制定 されているか。
研究活動に係る謝礼/アルバイト給与/研究費による旅費支給/研
究究費による学外者への旅費支給/研究倫理規程など
③規程・内規・申合せ等は、例規集、HP、手引き等によ
り構成員が常時参照できるようになっているか。
①究費の適正執行を推進するための委員会に係る規程が
制定され規程にもとづく委員会が設置されているか。
②委員会は定例で開催されているか。
③委員会では、概ね次の事項が審議・報告されているか。
不正防止計画の策定/不正防止計画の進捗状況の把握/モニ
タリングの報告/内部監査結果の報告など
④委員会の内容が公表(会議報告)され、研究者に周知が
図られているか。
※第三者からの見地やアルバイト給与等の法的問題も含む
ため、委員には弁護士など学外有識者を含んでいることが望
ましい。
①規程・内規・申合せ等*において、(研究費で支払う) 物
品購入(調達)に係わる事項が定められているか。* 経理
規程、契約規程など
②①で定められた事項が適正に行われているか。もしく
は、研究費支給組織が定める「経理処理要領」に合致
した処理が行われているか。
③特に「預け金」
・
「プール金」を防止するシステム*が構
築され、機能しているか。
* 可能な限り事務部署を通じた業者選定→発注→納品・検収
/モニタリングによる特定業者に偏った発注の把握/発注業
者を特定など
④購入した物品に係わる検収システム*が構築され、適切
に運用されているか。
* 研究者発注を認める場合の事務部署による検収/小額の物
品購入であっても全件検収を実施など
⑤研究者が検収を受けやすい工夫*がされているか。
* 検収場所の多数配置、キャンパス毎配置など
取引企業に対し、執行のルールの説明や発注・納品に係
わる注意喚起を記載した文書を送付する等の方法によ
り、牽制を行っているか。
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これらが有機的に結合したシステムが構築され
ていることが、完全ではないにせよ、適正執行
の担保につながるため、これらの検証を行うこ
とが重要である。
不正使用・目的外使用の 3 大要因の 1 つであり、
執行の透明性を確保するためのシステムの構築
の検証を行うことが重要である。
物品購入においては、納入業者への牽制も不正
防止の重要な要素となる。
旅費(学内者/学外者)
謝礼・アルバイト給与
研究費の執行管理に関す
る研究者の意識向上施策
①規程・内規・申合せ等により、(研究費で支払う) 旅費
に係わる次の事項が定められているか。
手続/旅費の区分と支給基準/旅費支給規程の準用など
②①で定められた事項が適正に行われているか。もしく
は、研究費支給組織が定める「経理処理要領」に合致
した処理が行われているか。
③特に「カラ出張」を防止するシステム*が構築され、機
能しているか。
* 出張報告書(用務、訪問先、面談者等を記載)提出の義務化、
出張の事実を証明する証憑添付など
①規程・内規・申合せ等により、(研究費で支払う) 謝礼・
アルバイト給与に係わる次の事項が定められている
か。
雇用・支払手続/講師謝礼、翻訳、校閲、テープ起こし、通
訳などの区分と単価基準/基準を超えた単価設定を行う場合
の手続など
②①で定められた事項が適正に行われているか。もしく
は、研究費支給組織が定める「経理処理要領」に合致
した処理が行われているか。
③特にアルバイトの「カラ雇用」を防止するシステム*が
構築され、機能しているか。
* 「雇用届」の事前提出、被雇用者本人から雇用の事実確認、
勤務表は本人が持参で提出、本人への勤務内容の確認、本人
に文書を郵送し給与の受取り確認など)
研究費の適正執行ルール、研究費執行に係わる禁止事項、
不正行為を行った場合のペナルティーについて、新任教
員および教員に対する研究費ガイダンス、研究費のガイ
ドブック、HP 等によって周知が図られているか。
不正使用・目的外使用の 3 大要因の 1 つであり、
執行の透明性を確保するためのシステムの構築
の検証を行うことが重要である。
不正使用・目的外使用の 3 大要因の 1 つであり、
執行の透明性を確保するためのシステムの構築
の検証を行うことが重要である。
適正執行が行われるためには、研究者の遵法意
識を高めることが基本になる。そのために必要
かつ十分な手立てがとられているか検証を行う
ことが重要である。
研究費のガイドブック、HP は多言語で作成されているか。
研究担当部署によるモニ
教員に対する研究費ガイダンスは、より多くの教員が参
加できるよう回数や時間の工夫がされているか。
研究費ガイダンス、研究費のガイドブック、HP の内容は、
前年度の不正発生要因の把握を踏まえ、毎年(随時)必要
な改訂が行われているか。
①究担当部署による経理証憑等の全件点検が実施されて 適正執行のためには、研究者の遵法意識を高め
13
タリングの実施
通報制度の整備
その他
「体制整備等自己評価チ
ェックリスト」
間接費の取扱い
産学連携および学内資金
にもとづく研究費の適正
執行
いるか。
②において、非効率または不適切な研究費執行が発見さ
れた場合、研究者に適切にフィードバックされ、改善
を促しているか。
③①において、特定の業者への偏った発注や立替払いの
集中等が把握された場合、研究者へのヒアリングが行
われているか。
④①の結果は、研究費の適正執行を推進するための委員
会、内部監査室、監事等に報告されているか。
通報規程が制定され、通報窓口や手続等の通報システム
が整備されているか。
研究費の適正執行を推進するための委員会において、前
年度の結果を踏まえた改善策の策定と、進捗状況の把握
が行われているか。
作成担当部署から監事への説明が行われた上で、文部科
学省に提出されているか。
①規程・内規・申合せ等により、(研究費受入に伴う)間
接費の取扱いが定められているか。
②①で定められた事項が適正に行われているか。もしく
は、研究費支給組織が定める要領に合致した処理が行
われているか。
産学連携および学内資金にもとづく研究費についても、
以上の留意事項に準じた取扱が行われているか。
14
ることが基本ではあるが、不正使用・目的外使
用を防止するために、事務組織による早期発見
と対応、および責任ある対応が必要である。そ
のための必要かつ十分なシステムが構築されて
いるか検証を行うことが重要である。
納入業者や学生・院生からの通報(内部告発)が
不正使用・目的外使用判明の端緒となる場合が
多い。このため、通報制度の整備についての検
証が重要である。
「体制整備等自己評価チェックリスト」が、適
正執行を推進するために用いられているかを確
認する。
間接費は研究費支給組織の調査でも重要視され
てこなかったが、間接費といえども税金である
とすれば、その使途に透明性が求められる可能
性がある。
「新設学部(科)等の履行状況」監査に関する留意事項
新設学部(科)等の履行状況の監査においては、設置経費や施設設備等の大学が学部(科)等を設置するために申請したさまざまな約束事をどのように
履行しているかを把握し、それが妥当であるかを監査することが求められる。
学生の入学者数の維持や教職員の確保と教育の質の担保や卒業後のフォローは無論だが、学内の施設設備についてもカリキュラムに即した施設設備を
申請どおり維持しなければならない。
また、設置経費においてもその管理については学部の存続にかかることなので成り行き管理は許されない。また、複数学部の設置においては財布がひと
つであることや、新たな設置申請においてもその財源のための残高管理は必須である。その経年管理をどのように行っているかを検証することが監査の対
象となる。
分類
項目
留意事項
趣旨(留意事項の狙い)
履行状況監査 施設設備
土地の使用目的に変更はないか(売却や他の用途変更)。 新設学部等に用意された土地に関して設置後、売却や
用途変更、他学部への転用はないか
建物の使用に目的変更はないか。
転共用校舎や教室面積に変更はないか。
教育研究用機器備品や教育用機材に問題はないか。
図書について
設置経費
(創設
費)
設置経費の管理はなされているか。
用途変更や他の学部等に転用することはないか。
新設学部(科)等の建物を処分したり、新たに建物を
増設して新設学部の専用や共用にしたりしていない
か。
申請後に転共用した教室を自己都合により変更する
ことは申請時の転共用金額が変わり設置経費に影響
する。教室面積が少なくなったり、設置経費をオーバ
ーすると法人の管理運営責任が問われる。
計画通りの設備が用意されているか。
申請通りに計画された機器備品が準備されているか。
教育に支障のないようカリキュラムの学年進行とと
もに学生数にそった数や設備体制が整備されている
か
図書は特に設置経費としての拘束はないが、学部(科)
に沿った基本図書や専門図書がいかに準備されてい
るかは監査の対象となろう。
新設学部(科)に係る建物の増設など計画変更や新た
な学部(科)等の申請など完成年度以前の新たな事業
については設置経費の残高や入り繰りの管理が必要。
その管理が適正になされる体制があるか確認が必要。
15
入学者数
入学者数の確保はできているか。
設置の目的通りに学生数をいかに確保するかがポイ
ントとなる。
少なければ需要にあった学部(科)等であったか経営
の見通しの甘さが問われる。
教員数
教員数に変更はないか。
申請時の教員の数に変更はないか。それを支えるスタ
ッフ体制に問題はないか。
カリキュラム
カリキュラムに変更はないか。
就職状況
就職状況に問題はなかったか。
ここでは教育の質の確保が担保されているかを見る
ことが必要。
入学した学生の教育の質をいかに確保しうるか。申請
時通りのカリキュラムの履行ができているか。教員の
担当科目に変更はないか。配当年次科目にも関わらず
休講になっていないか。
卒業生に関しては育てた学生の行き先が申請計画の
とおり社会のニーズにそくしたものであったかが問
われる。
16
「周辺会計」監査に関する留意事項
学校には、後援会や同窓会など関連する任意団体等(関連団体等)がある。一般に、関連団体等は、会則や経理規程を設け、帳簿を作成し、総会等
の意思決定機関を通じて予算管理、決算承認を行う。このように関連団体等には、会計報告機能があるため、学校の会計と区別して「周辺会計」と言
われる場合がある。
通常、当該関連団体等は、学校と独立して運営しているため、学校の内部監査とは直接関係がない。しかし、実際は、関連団体等に常勤職員がいな
いこともあり、経理事務など日常的な事務業務を学校に委託している場合がある。
この委託業務について、双方で業務範囲や責任について契約等で明確にしていない等により、管理責任が曖昧となり、学校及び関連団体等の内部統
制が適切に整備運用されず、周辺会計の資金横領などの不正が生じる可能性がある。このため、関連団体等であっても「不正リスクの存在を評価し、
不正を防止できる体制があるのか」を評価するため、学校が内部監査実施を行うことに意義がある。
個々の留意点は表に要約しているが、関連団体等に内部監査を実施する場合の一般的な留意点は、以下のとおりである。
 関連団体等は、別個独立した団体であり、内部監査を実施する場合は、関連団体等の同意・協力を求めることになる。
 関連団体等の内部統制が有効に機能していると評価できる場合は、内部監査実施は不要となる可能性がある。
 関連団体等の内部統制が脆弱であり、かつ、経理事務を学校の事務担当者に一任している場合は、関連団体等の現金を事務担当者が私的に流用で
きる機会があることに留意する(参考1)
 関連団体等が寄附者から寄付を収受するケースがある。当該寄付者が入学予定者またはその保護者等関係者であるときは、事務次官通知第 454 号
における寄付金の取扱い適正化に抵触する可能性がある。この場合は、理事長など経営者による不正リスクの存在を疑い、監事の業務監査や公認
会計士・監査法人による外部監査と協力して実施するなど実施方法変更を検討することになる(参考1)。
 周辺会計は、任意の団体に限らず発生する可能性がある。例えば、
①運動部の活動に対する寄付金を運動部顧問が受け取り、個人的経費に流用するケース
②教材費を教員が教室で集金するが、教材を発注しないで現金を私的に流用するケース
③教材を発注し、集金した現金で支払うが、業者からのリベートを私的に流用するケース
同窓会や後援会など会則等があるフォーマルな組織に比べ、教員職員の組織、学生組織、クラスなどインフォーマルな組織は、組織やどのよ
うな取引が発生しているのか把握することが難しい問題がある。
(参考1)監査基準委員会報告書第 35 号「財務諸表監査における不正への対応」を学校法人監査に適用する場合の留意点(平成 19 年 7 月 31 日 日本
公認会計士協会)
分類
項目
留意事項
趣旨(留意事項の狙い)
対象の把握 団体等の把握
学校に関連する団体、例えば、後援会、同窓会など関連 対象となる団体等を把握していなければ、内部
団体等の周辺会計について、漏れなく把握しているか。 監査の実施はできない。
団体等が自 団体等のガバナンス
関連団体等が、自律的に運営される体制(ガバナンス) 団体等にガバナンス(内部統制を行う仕組み)
律的に運営 内部統制の整備体制
があるか確認する。
が自律的に運営される体制があれば、団体等の
されている
例えば、以下の内部統制の整備と内部統制を実施する体 内部統制は機能していると考えられる。
場合
制を確認する。
学校の内部監査を実施するかどうか検討する。
・規程類
なお、内部統制が無ければ、団体に対して内部
・組織(総会、理事会等の意思決定機関の存在)
監査の実施はできない。
・団体等内部での監査体制
団体の事務業務を請け負っている学校の部門に
17
団体等の内部統制の運用
評価
学校が業務
を受託する
場合
委託契約等は明確か
資産管理
職務分掌
日常モニタリング
貴重品等の保管体制
・予算作成、帳簿作成、決算報告
・予算執行の起案体制(稟議書など)
団体等の内部統制が実際に運用されているか、確認・評
価する。
・規程の遵守
・総会、理事会等の開催、議事録の存在
・予算執行書類(稟議書など)の作成
・予算書・決算書を実際に総会に報告し総会で審議し・
承認されているか
・団体等内部での監査実施事実
団体等に常勤職員がいない場合などありうる。日常的な
業務も含め、団体等の運営が、学校に委託されているか
どうか確認する。
独自で実施すべき事項の例
・経理業務(帳簿記帳、出納管理、資産現物管理、証憑
整理、決算書作成など)
・総会運営(議案作成、議事録作成など)
事務局が管理を受託している場合、団体等との受託内容
が契約書、覚書などの文書で確認できるか。
事務局内で、団体等の資金・会計管理担当者を明確にし
ているか。
団体等の資金・会計管理担当者以外の者が実査結果と帳
簿記録を日々照合しているか。
団体等の通帳、銀行届出印は、学校法人のものと明確に
区分保管されているか。
学校法人の通帳などと同程度の保管管理が行われている
か(現金、預金通帳、銀行印、小切手帳等の貴重品は、
毎日の業務終了後は金庫に保管し、施錠しているか。)
貴重品を預かる金庫の鍵は、定められた担当者が保管し
ているか
18
対し内部監査実施等を検討する。
団体等の内部統制が実際に運用されているか確
認し、団体等の運営実態に則しているか評価す
る。
団体等に内部統制を運用し、自律的に運営する
体制があると評価できれば、団体等の内部統制
は機能していると考えられる。内部監査を実施
するかどうか検討する。
なお、団体等の内部統制が形骸化していないか
留意する。
本来、団体が独自で実施すべき業務を学校に委
託している場合、団体等の内部統制の運用を学
校が担うことになる。
受託する業務範囲が不明確な場合
・学校の責任が曖昧となる。
・受託業務外の業務を実施する。
・受託業務で必要な内部統制を整備運用できな
い。あるいは、過剰に整備運用する(効率性阻
害)。
団体等の資産-分別管理
団体等の資産-分別管理
団体等の資産-分別管理
団体等の資産-分別管理
資産管理
支出管理
支出管理
収入管理
収入管理
学校との取
引
寄付金
寄付金
毎月末、現金並びに預金の残高と会計帳簿の残高を照合
しているか。
年度末に銀行より残高証明書を取り寄せ、会計帳簿残高
と照合しているか。
団体等の支払いは、団体等の運営に則した適切な予算執
行かどうか確かめ、支出稟議書等で明確になっているか
確かめる。
多額の支出を行う場合、団体等の代表者、理事、理事会
に事前承認を行う体制があるか確かめる。
支出に係る証憑、記帳内容(仕訳伝票や帳簿記録)、稟
議書記載事項の整合性等について、担当者以外の者が、
モニタリングする体制を整備・運用しているか確かめる。
団体等が収入とする範囲は、団体の予算書等で明確か確
かめる。
団体等の収入に、入学予定者から入学前に寄付収入等の
取引がないことを確かめる。
団体は、寄付金等の支出について、予算化しているか。
あるいは、会則で執行業務の委任を受けた役員会等の決
議により支出を決定しているか。
学校に寄付する場合、寄付申込書を交付しているか。
また、寄付額は団体の決算書に表示されているか。
寄付は、団体の通帳から学校法人の通帳に送金されてい
るか。
19
団体等の資産-分別管理
団体等の資産-分別管理
団体等の資産管理とも関連
団体等の会計と学校法人の会計は区分経理が求
められる。
学校法人で負担する経費等が団体等の会計で負
担していないか確かめる。
また、団体等から預かる現金預金は、学校法人
の資産ではないため、管理が不十分になるリス
クがある。学校法人の資産と同様に横領防止の
内部牽制を設けることが必要である。
本来、学校が計上すべき収入を団体等の帳簿に
計上していないか留意する。
学校で認められていない入学予定者からの寄付
金・学校債収受を団体等
学校への寄付は、団体等の自律的運営に基づく
ものか確かめる。
学校への寄付は、団体等の自律的運営に基づく
ものか確かめる。
「出納関連」監査に関する留意事項
現金及び預金は、他の資産と比べて盗難・横領の可能性が高く、不正行為のリスクが高い項目である。このためこれらを扱う出納業務は内部監査に
おいても重要な項目として位置づけられる。
このほか、昨今では出納業務も相当程度 IT を利用したものが増えており、適切なセキュリティ管理がなされているか等も内部監査の重要なポイントで
ある。
趣旨(留意事項の狙い)
分類
項目
留意事項
出納業務
現物管理
金銭類の管理責任者、管理担当者は定められているか。 金銭類は盗難横領の可能性が高いので、特定の責任者を定
めておく必要がある。
毎日(もしくは定期的に)現金を実査し、金種表を作成 金銭類は盗難横領の可能性が高いので、現物確認と帳簿記
し、金銭出納簿との一致を確認しているか。
録との照合を適宜実施しておく必要がある。
現金、預金通帳、銀行印、小切手帳等の貴重品は、毎日 貴重品は紛失もしくは散逸しない様、金庫に保管し施錠す
の業務終了後は金庫に保管し、施錠しているか。
る必要がある。
金庫の鍵は、定められた担当者が保管しているか。
盗難横領の可能性がある貴重品を保管する金庫の鍵は、保
管担当者を決め、アクセスを制限しておく必要がある。
毎月末、現金の実際残高並びに預金通帳の残高と会計帳 現金預金は盗難横領の可能性が高い項目である。月次にて
簿の残高を照合しているか。
不正等による異常が無いことを確認しておく必要がある。
年度末では、銀行より残高証明書を取り寄せ、会計帳簿 年度決算において現金預金の残高を確定する際に、外部の
残高と照合しているか。
エビデンスを入手しておく必要がある。
支払業務
印紙、切手、商品券等の金券類がある場合には、受け払
い簿を作成して管理しているか。
印紙や切手類も換金性がある物品であるので、現金等と同
様の管理をする必要がある。
支払時には、担当者の作成した振込データを、責任者が
確認して承認しているか
担当者が不正な振込データを作成していても、上席者によ
る確認が無いとそのまま流れてしまい、大学に不測の損害
を与えるおそれがある。
対応する未払が不明なまま会計仕訳だけ入力すると、誤っ
て未払の滞留認識をする、もしくは相手方に対する債務認
識を誤認するおそれがある。
支払にあたっては、適切に未払計上された未払項目に振
り当てて消しこんでいるか(対応する
未払が不明のまま、会計仕訳だけ入力していないか)
月次で会計上未払を計上していない場合でも、どの請求
に該当するか確認してから支払をしているか。
FB 振込送信後、銀行から送られてくる振込情報と支払内
訳を確認し、責任者の承認を得ているか。
定期的に未払金もしくは存在する債務の残高内容をチェ
ックし、マイナス残高・過払いの有無を確認しているか
出納関連セキュリティ
銀行が、大学の意図どおりに振込をしているかを確認する
ために必要である。
チェックが無いと、異常な残高に長期間気がつかない可能
性がある。定期的な内容の確認が必要である。
FB 端末並びに FB ソフト、FB 振込データへのアクセスは、 FB 端末等は、多額の入出金を取り扱いできるので、アクセ
限られた担当者のみが実施できるようになっているか
スをフリーにすると、不正の操作を行う者がいた場合、大
20
FB 振込は、財務責任者によるロックの解除がなければで
きないようシステム上設定されているか。システム上設
計が無い場合には、最終的な振込内容を責任者が確認す
るといった代替の作業があるか。
定期的に、FB に関連する権限棚卸を実施しているか。
支払先マスターの変更は、システム上、然るべき責任者
もしくは担当者のみが実施できるようになっているか。
定期的に、支払先マスターの棚卸を実施しているか。ス
ポットで発生した支払マスターが、長期間使用されない
まま放置されていることはないか。
21
学に不測の損害を与える必要がある。
限られた担当者のみがアクセスできることにより、不正操
作の牽制になる。
担当者が不正な振込データを作成していても、上席者によ
る確認が無いとそのまま流れてしまい、大学に不測の損害
を与えるおそれがある。
チェックの方法として左記には、システムによるロックを
挙げた。
退職者や部署移動したものの権限を適宜に解除しないと、
不正操作により大学に不測の損害を与える可能性がある。
支払マスターが不用意に変更される状態であると、不正に
よる資金振り込みの温床となり、大学に不測の損害を与え
る可能性がある。
変更は然るべき責任者が実施する必要がある。
大学の業務に不要な支払マスターが存在することは、不正
による資金振り込みの温床となり、大学に不測の損害を与
える可能性がある。
「知的財産権管理」監査に関する留意事項
日本の知的財産戦略が強化されたことに伴い、大学は、知の創造拠点として位置づけられ、「研究成果の活用による社会貢献」が「教育」「研究」に
次ぐ「第三の使命」として要請されている。このため大学内において知的財産を創造し、保護し、活用する組織体制の構築が求められている。従って経
営陣は、経営に寄与させるよう大学の知的財産を「機関管理」する体制の構築を目指さなければならない。
分類
項目
留意事項
趣旨(留意事項の狙い)
知的財産管 知的財産戦略計画の策定
知的財産戦略計画が策定されているか。当該計画には見 大学の知的財産管理体制の現状について調査が
理体制
直しの手順が定められているか。
行なわれ、日本の知的財産戦略に基づいた大学
としての知的財産戦略計画が策定されている必
要がある。
知的財産ポリシーの策定
知的財産ポリシーが策定されているか。
知的財産については、新技術・新事業・新産業の
知的財産の「機関管理」が明記され、周知されているか。 創出といった新たな使命を産業界とともに担っ
ていくためには、知的財産の創造・保護・活用
を大学として組織的に体系化して支援する必要
がある。このためこの新たな使命を認識し、大
学全体としての取り組み方針を明確にした「知
的財産ポリシー」を策定し、周知を図る必要が
ある。
知的財産の機関管理体制
知的財産の「機関管理」の推進とそれを前提とした知的 大学の目指す方向に向けて知的財産戦略を達成
の構築
財産管理体制が構築されているか。
するためには、取り組みに対する基本的な考え
方が明確になっていることに加え、知的財産へ
体制構築状況を評価し、レベルアップに繋げる仕組みが の取り組みを検討する組織や管理する事務組織
組み込まれているか。
が設置され予算措置されている必要がある。
知的財産管理の業務体制
知的財産ポリシーに基づいた業務体制が明確に定められ
ているか。
知的財産管理要領や職務発明規程等が策定されている
か。
知的財産管理要領や職務発明規程等に審査機関としての
委員会設置が定められているか。
知的財産の機関管理を行う部署が定められているか。
戦略/企画、発明探索、発明申請、発明評価、出願、活用、
契約等の全体フローが構築されているか。またそれらの
見直しの手順が明確になっているか。
22
大学に帰属する知的財産を効率よく管理・活用
するためには、規程類の整備や検討組織・事務
組織が設けられるなど、知的財産活用等に関す
る業務を行うための仕組みが網羅されている必
要がある。
共同研究・
受託研究と
共同出願
共同研究・受託研究関連規 共同研究・受託研究に関する大学としての基本方針やル
程/契約業務等の体制
ールが定められているか。
受け入れ決定に際しては、組織的に審議され機関決定す
る仕組みになっているか。
契約内容を法令、規程等に基づき検討する部署
が設けられているか。
契約を研究者任せにせずに、契約先と交渉を行う部署が
明確になっているか。
共同研究・受託研究関連の 共同研究・受託研究の事務処理に関して基本的事項が定
事務処理手順
められており、その手順に従って業務が行なわれている
か。
一連の業務関連書式が整っているか。
23
共同研究・受託研究に関しては、ともすると研
究者任せになりがちであるが、大学として、受
け入れに関する基本方針、受け入れの仕組み、
受け入れのための審議過程や機関決定プロセス
等透明性が確保されなければならない。また、
研究の相手先と契約内容等が著しく大学にとっ
て不利にならない=平等の関係を構築し、状況
によっては、契約交渉に当たる必要があること
から担当部署が明確になっている必要がある。
一連の業務が手順化され、文書化されている必
要がある。また、契約内容・研究成果の帰属・
研究成果の実施についての検討すべき事項がま
とめられたマニュアルが整備されていることで
基準からの逸脱等の防止に繋がる。
「資産管理」監査に関する留意事項
資産管理の監査においては、施設設備や現預金等大学が保有するさまざまな種類の財産の管理状況を把握し、それが妥当であるかを監査することが
必要であり、一方で具体的に施設設備の面から資産がどのように有効に利用されているか安全面の配慮はどうかなどの活用面とリスクマネージメント
からの実態監査も必要と考えている。その結果、課題があれば改善に結びつけるなど、いかにして大学の財産の適正な運用に資するかに留意していき
たい。
監査にあたってはつぎの 2 つの側面から行う
1.資産管理上の監査.土地建物など取得から維持、保全、処分、更新に至るまでの施設設備等の資産管理体制、同様に現預金や有価証券などの金融
資産の管理体制についての監査を考える
2.施設管理(危機管理・安全管理面を含んだ)の管理運営面での実態監査
・実際に使用している施設設備の管理運営状況の実態について大学に共通すると思われる主要な項目毎に監査していく
・同時に教学面、火災・事故・自然災害等に対する危機管理面と安全管理面の状況も視野に入れて行う
1.資産管理上の監査
趣旨(留意事項の狙い)
分類
項目
留意事項
資産管理上 土地
土地台帳の整備状況(財産目録との整合、登記簿謄本と 土地台帳の整備による財産目録などの財産価値
の監査
の整合)、謄本のチェック(内容、担保権の設定状況等)、 の信頼性の確保のため①登記簿等との定期的確
公図の確認、測量図による地積の確認、用途制限の確認、 認の状況の把握②公図測量図による面積の確認
所轄庁への届出状況
③担保権の設定状況と金銭消費貸借契約書との
整合⑤所有権の状況の確認等が必要。
借地管理状況(借地部の確認(借地面積の確認、公図の 借地の管理状況と借地料の価格の適正性の検
確認)、借地料の支払い基礎(固定資産税額の確認)、 証。
借地権の更新状況)
借地権が正しく登記簿に反映されているか(金
額や借地権の年数の確認)、借地部の公図の確
認。
近隣不動産の売買状況、公示価格などを調査し、
借地料の妥当性について確認。
登記済証(権利書)・登記識別情報のチェック(謄本と 定期的に担当部署における保管管理の状況を確
の整合、保管状況)
認。
謄本との整合状況の確認。
建物
建物台帳の整備状況 財産目録との整合、登記簿謄本と
建物台帳の整備による財産目録などの財産価
の整合、設置申請(履行状況)との確認、所轄庁への届 値の信頼性の確保のため①登記簿等との定期的
出状況
摺り合わせ状況の確認②借入金の担保権設定状
況③金銭消費貸借契約書との整合との確認④学
部の設置など約束どおりの建物を建築したり教
室を提供できているか、申請と履行状況の確認
を怠っていないかの検証。
特に、虚偽申請については補助金交付が受けら
24
減価償却は定額法によっているか。
償却年数や資産の区分は規程によっているか。
(参考)学校法人委員会報告第 28 号(昭和 56 年1月平
成 13 年 5 月改正)
減価償却は耐用年数表に基づいているか(月償却、電気
設備・給排水衛生設備等建物附属設備の償却年数の設定
状況、備忘価額の設定状況)
資産的支出と修繕の区分には特に留意(間仕切り、用途
変更などは資産として認定される)
改修など資産価値を高める工事には要注意
用途変更の工事は資産となるので留意
増築された建物資産は台帳に反映されているか(この場
合耐用年数や減価償却計算に留意)
資産付加されたものについては減価償却を行っている
か。
基本金台帳との整合は取れているか。
新築、取り壊し、建て替え、改修ごとの取引が台帳に反
映されているかの確認。
登記済証(権利書)・登記識別情報のチェック(謄本と
の整合、保管状況)
建物の更新ルールの状況にも留意(耐用年数と建物強度
の実態把握、建物利用の状況など将来計画と合わせなが
ら検討)
25
れなくなり新しい申請もできなくなる場合があ
るので留意。
減価償却の方法や建物と附属建物の区分等がど
うなされているか法人規程の大元となる学校法
人委員会報告 28 号にそって決められているか確
かめることが必要。
学校法人委員会報告「固定資産会計に関するQ
&A」などに従い資産と経費の区分ができてい
るか、税務上の事例や最近の検査院の判断事例
にも留意するべき点であろう。以前は検査院に
よく指摘され、物件によっては経費から資産に
判定されることから補助金返還の事例とされる
ところである。間仕切り工事や用途変更などが
経費から資産として判定された事例である。
建物附属設備など資産となるものには留意、特
に建物に組み込まれたエアコンなど。台帳に付
加し減価償却を行えるよう台帳の整備力が求め
られる。
固定資産台帳と基本金台帳との整合を確かめる
ことにより、取得価額と残存価額(帳簿残高)
との関連から貸借対照表及び固定資産明細表を
検証できる。
台帳に工事ごとの整備状況が反映されているか
の検証が必要。
定期的に担当部署の重要資産の保管管理の状況
を確認することが必要。謄本との整合状況も確
認する。
建物の更新については、その耐用年数や学部の
カリキュラムに即した利用やニーズの状況を加
味して、かつ更新計画が中期的視野にたってな
されているか、場当たり的に建物が建てられて
いないかをみることが必要。教員学生に最新の
設備とサービスをどれだけ提供できているかの
指針にもなる。
構築物
遊休資産
図書
構築物台帳の整備状況 財産目録との整合構築物につい
ては建物工事のときに留意 建物工事に付随して行われ
るものが多いため処分と更新の関係が分かりにくい対応
関係はこまめに確認することが必要(図面・写真等の管
理状況)
利用に供していないあるいは稼働率の低いと思われる土
地建物などの資産について、利用状況の実態や本来の利
用目的などの検証が必要。
遊休資産については課税対象となることに留意。
図書台帳の整備状況、図書台帳と財産目録及とは整合が
取れているか。
減価償却をしないことに留意。
購入図書はその購入年度内に台帳に計上され整理されて
いるか。
図書と雑誌の区分は通知によっているか※「図書の会計
処理について(報告)」について(通知)昭和47年1
1月11月14日雑管第115号文部省管理局長通知。
定期的に棚卸をやっているか。
紛失については損害賠償のルールを定めているか。
電子図書の管理運営は図書に準じているか。
補助金購入図書の管理は区分できているか。
26
基本的には建物と同様だが、構築物の場合は場
所の特定や経緯が素人目には分からないため、
工事写真等や図面等、台帳を補完する資料での
確認が必要。
遊休資産は何故、使わないのか。あるいは何故
使えないのか。何故処分しないのか。課税され
ているところや稼働率がないところをどの様に
把握し、管理しているのか。将来対策として検
討させるためその全容を把握していかなければ
ならない。担当部署の把握状況を伺う。
購入や寄附を受けるなど取得した図書や廃棄や
滅失など処分された図書がどのように図書台帳
に反映され、計算書類にどう反映されるのかそ
の手続きの過程を図書の管理運営状況の実態の
把握と確認作業から検証。
勘定科目の処理についてはそれぞれの大学の規
程によるが、規程が通知等の基準を含んでいる
か、担当によって恣意的に仕訳されていないか
検証が必要。
膨大な図書資料の棚卸を定期的にどのようなス
ケジュールで行っているのか確認する。帳簿上
だけの数字合わせということのないように棚卸
による実態を把握し確認することが必要。
紛失や処分をどの様なルールで行いそれは規程
で定められているか検証する。
電子図書の管理運営方法について購入や取り扱
いをいかに方針を定めて対応しているのか検証
する。また、電子図書という社会環境の変化に
図書館として学生教員あるいは外部機関のニー
ズにどのように対応しているのか規程の対応も
含めて検証する。
補助金購入図書について通常図書との区分をど
の様にしているのか。処分制限期間があるため
財産管理を区分する必要がある。
寄贈図書について要不要の区分は行っているか。
雑誌を製本して図書に計上した場合は会計基準に即した
処理か。
図書の定義は図書館職員が理解しているか。
購入図書を整理せずに積み上げていないか。
機器備品
機器備品台帳の整備状況(教育研究用機器備品・その他
の機器備品の管理台帳と財産目録との点数及び金額の整
合は取れているか)特に帳簿上だけの数字合わせという
ことのないように棚卸による実態を確認することが求め
られる。
少額重要資産の管理状況
グループ償却の場合は耐用年数管理に留意。
(グループ償却の場合処分更新は一括処理されるので耐
用年数管理は必須)
補助金で購入した場合は処分制限に留意
構成や一部の機器がニーズにそぐわないからといって最
新のものに更新したりして期限前に処分していないか
(耐用年数以前に償却すると補助金返還の可能性有り)
27
寄贈図書についてはそのような基準で受け入れ
ているのかを確認し、盲目的に受け入れいたず
らに資産を増やすことは管理運営上望ましくな
い。
雑誌によっては保存すべきものと時間がたてば
価値を失う雑誌があるが、保存すべきものを製
本し、図書資産として計上するシステムが機能
しているか確認が必要
図書の基準と何を図書として必要とするか大学
教育における其本図書として必要なものや学生
教職員のニーズに即した図書など図書館構成員
の理解がないと反映できない。
台帳に登録しただけで、実際に学生教員の利用
に供しないで積み上げたままでいないか。
財産目録に計上した点数金額と棚卸のそれとが
一致しているか、定期的に実施していくことが
求められ、それにより計算書の信頼性が確保で
きる。先ずは、財産目録の点数金額と台帳との
整合だが機器備品台帳からの誘導のため、注意
していれば狂いはない。帳簿上だけの数字合わ
せということのないように棚卸による実態を把
握し確認することが必要。
少額重要資産についてはその登録の基準、更新、
補充についてルールを定めているか確認が必
要。運用面での管理の方法に留意。
グループ償却は一括償却のため耐用年数が来れ
ば現物が一括して処分されることになる。耐用
年数の管理と現物との対応がシステム的に関連
することに留意。
補助金購入資産は処分制限期間があることに留
意。
期限前の処分は補助金返還に繋がることに留
意。
現物寄附の手続き
科研費で購入した機器は受贈機器として登録が必要。
その他篤志家から寄贈を受けた機器についても現物寄附
として資産登録が必要。
現物寄附の受け入れ方法価額の設定方法は規程に定めて
あるか。
[受贈品管理について]
国内・海外協定校や卒業生などからの美術品や記念品等
の受贈品の管理体制は適切か
[処理について]
(資産の有無を問わず寄贈者・寄贈物品の記録が必要)
管理台帳の整備状況(購入価額、購入日、展示保管場所、
作品名・作者・鑑定書の有無)
受贈品の管理運営状況(推定価額、寄贈者、作品の作者
名・作品名・作成年月日・作品の撮影、保管場所などを
記録)
棚卸は定期的にやっているか。
(現物の確認は定期的に確認する必要性有り、紛失、盗
難の早期発見にも繋がる)
処分の方法は適正か滅失、紛失、盗難など財産処分の厳
格さを求められる。
28
科学研究費など競争的資金で購入した資産は大
学へ寄附する原則があるため、所定の手続きを
経て寄附を行っているか確認していく必要があ
る。大学や研究機関からの機器備品の受け入れ
についても同様。
絵画骨董品等寄贈された美術品については本来
は鑑定士による鑑定が必要だが、毎年鑑定し時
価を定めるのは経費がかかり現実的でないの
で、美術年鑑による推定価額の算定による簡便
な方法による場合もある。機器備品として扱え
ない海外交流校などの記念品は資産台帳とは異
なった価値として管理方法を考えておく必要が
ある。
特に卒業生などの篤志家からの受贈品は強い思
いがあるのでそれに報いるため、備忘録として
の記録状況も監査が必要となろう。
なお、絵画骨董品等美術品は減価償却の対象と
ならないことに留意。
棚卸により台帳にあってものがない、台帳にな
いものがあったりいずれにしろ台帳と現物が一
致していることが計算書の信頼性を保証するこ
となのだが、実際に研究室や実験室などにいく
と一致しないものが出てくる。滅失など盗難に
あったことが分からなかったり、無断で持ち出
されていたことがあったり、外部から持ち込ん
でいたものがあったりし、それを管理者が把握
していない管理意識の低い場合がある。
処分の方法が単に無くなったというだけで滅失
申請を行わないよう普段からの財産管理意識を
持たせることが必要。正当な処分の理由を明確
に引き出せることが肝心。無くなっても盗難に
あったのか誰かが持ち出したのか、いつ無くな
ったのか分からないようでは被害届けも出せな
いことになる。特に補助金購入資産の処分は留
意。(台帳上で区分することが必要)
車両
車両台帳の整備状況 管理台帳と財産目録と現物との点
数及び金額の整合は取れているか
車両の耐用年数管理、保管状態と点検状況に留意。
車両は耐用年数が短いため、更新が頻繁に行われる。帳
簿価額と実際の取引価額との差異が生じる。売却差額
(益)と処分差額(損)に留意。
車両登録されるものはマイクロバス、乗用車、
雪の多い地方の雪かきなどの特殊車両、自動2
輪車、自転車等様々だが、更新の時期の適正さ、
取引の実態が計算書に反映されているかなどに
留意。車検の更新には特に留意。
ソフトウエア
ソフトウエアの資産登録については教育研究用ソフトウ
エアと事務用ソフトウエアの区分や機器備品一体の機能
や資産金額基準など判定基準を確認、ソフトウエアの耐
用年数など法人の定めの確認が必要
ソフトウエア資産の会計処理については通達によってい
るか(ソフトウエアに関する会計処理について(通知)
平成20年9月11日20高私参第3号文科省私学部参
事官通知)
水道利用権など施設利用権の実態と根拠の確認、償却資
産と非償却資産との区分けにより償却資産を償却してい
るか確認が必要。
基本金台帳の整備状況 土地、建物、構築物、車両、電
話加入権、施設利用権、図書、機器備品等の1号基本金
の購入、現物寄付や借入金の返済等による増加、処分等
による減少が反映されているか
機器備品については除却と取得価額の関係について留意
ソフトウエアの会計処理は平成20年の通達が
基本となり処理基準が示されており、特に資産
と経費の区分に留意。
施設利用権
基本金
現金
施設利用権の管理簿をどのように作成している
か。目に見えない財産管理の実態をどのように
把握しているのか確認が必要。
資産の取得、処分の取引結果が正しく 1 号基本
金に反映する仕組みとなっているかその管理状
況について確認する。
2号・3号については計画性が重要ポイントで
あるため、項目ごとの基本金の積立・執行の予
定と履行状況について、予算の編成時から決算
まで、消費収支の均衡要件と絡めてみていくこ
とが求められる。
会計部門の現金の処理の確認(日次、月次、年次)
現金は経理や会計部門で取り扱う現金のほか各
日毎の収入内訳と支払伝票との現金残高の突合
キャンパス所有の小口現金、証紙自販機の現金、
金庫の中の確認(業務上取り扱う現金、その他の現金) 自動販売機の現金、コピー機などの現金がある。
証紙自販機の現金の取り扱い(年初の現金投入額、日次 現金を取り扱う部署が多いため、その管理につ
の管理、清算のタイミング、月締めの方法、補充の仕方、 いては規程に沿った一定のルールと厳正さが要
年度末の取り扱い、担当者の権限)
求される。日毎管理はそれぞれの部署で行うが、
預かり金の管理のルール方法
各部署をまとめた集計は本部で月末や年度末に
29
それぞれのキャンパスや部署で現金を通帳管理で行って
いる場合、月次残高、年度末の残高にも留意、特に年度
末については銀行の残高証明書が確認のための証拠。ま
た、通帳管理は本部に届けているか、口座名義人、銀行
届出印、取扱者の定めや預金引き出しのルールなどの管
理方法についての確認が必要。
金庫の中の法人管理外の現金の把握。
預金
有価証券
それぞれ月ごと年度ごとの決算として決算書と
現金残高の突合により確認される。そのデータ
の信頼性を確認するために、現金の日ごとの清
算方法と金額確認をどの様なシステムで行って
いるか内部統制としての検証が必要となってく
る。
月次年度決算の方法については法人本部の財務
担当部門などのシステムを検証する。
現金を取り扱う各キャンパス各部署によって
は、金庫の中に業務によって取り扱う現金のほ
かレジから支出した旅費や仮払金のほか、私的
な一時的預かり金など金庫に入っている場合が
あるが、管理職はそれを定期的に把握しておく
必要がある。
[預金管理のシステムについて]
預金は実際の預金有り高をどのように管理して
預金引き出しのプロセスと権限は規程どおりか。
いるのか。学生生徒等納付金や手数料などの収
残高確認はどの様に行っているのか。
入と給与や業者支払等の支払いを計画的にみな
(預金出納簿と銀行残高の突合による検査)
がら運用していく 2 つの側面から考えることが
通帳あるいはリーフ式通帳はだれがどのように管理して 求められる。
いるのか。
ポイントとしては、預金残高がタイムリーに見
預金の偏り度合い(銀行 1 行に集中したりしていないか) れる事、情報を運用担当の役員に提供し、運用
普通預金と定期預金の比重は問題ないか。
を考える材料を提供できていること。銀行への
予算計画とあわせた年間の運用計画(支払資金と特定資 支払いデータの送信と支払い実行の送信者(預
産関係)はできているのか(収入計画と支払計画)
金引き出しの最終権限者)が分かれているかな
複数年計画の中長期的運用計画(運用期間と 2 号・3 号基 どの内部統制の状況のチェック。権限規程どお
本金などの特定資産の支払計画とあわせた運用)も視野 りに預金引き出しのルールが執行されているか
に入れる。
規程の遵守状況のチェックを要する。
購入処分の意思決定はだれがどのように行っているの
今般、大学の様々な運用の失敗が取りざたされ
か。
ているが、金融商品が複雑化し、変化している
組織としての決定機関か。
こともその原因となっている。そのため、大学
意思決定のプロセスは透明性を有しているか。
の運用担当者や担当役員の専門的知識が少ない
その意思決定の情報に偏りはないか。
ことから対応できなく証券会社の言いなりにな
有価証券の購入処分について商品の選定や運用を行う専 って、多額な損失を出すことになった事例があ
門性を持った機能を有しているか。
る。他にも理事会等の機関を通さないで恣意的
・その専門性に偏りはないか。
な運用をし、大きな損失を出した事例もある。
・商品の特性とリスクの掌握とリスクの共有をできる体 これは規程を無視しても運用ができるとしたガ
30
2.資産管理上の監査
分類
項目
施設管理の 講堂・教室・
実態監査
演習室・実験室
制にあるか。
・運用商品のリスク割合を計っているか。
・経済情勢と対応したタイムリーな運用態勢にあるか。
・中長期的運用計画(商品の運用期間と 2 号・3 号などの
基本金特定資産の支払計画とあわせた運用)はできてい
るか。
・運用状況の掌握(市場の状況把握)態勢はできている
か。
[有価証券の残高確認と管理]
残高管理はどのように掌握しているのか。
残高はどのように把握しているのか。
時価を常に把握しているか。
バナンスの欠如の事例である。
しかしながら何もしないで安全ばかりを重視し
た運用をすると利息や配当は得られない。遺失
利益が増加するばかりである。
このため、確たるルールの下、リスク基準など
を設けご父母等のステークホルダーに対し理解
を得られる例えば専門性を有する財政委員会な
ど理事会から委任を受けた運用機関による運用
も対策として考えられる。
このように運用にあたっては商品調査と見込ま
れる運用利益そして許容リスクの幅をどう天秤
に計っていくか専門家による意見を取り入れな
がら機関の決定にいたるプロセスを示していく
新たな管理体制が求められてくる。
混沌とした経済情勢の中、注意深く運用のある
べき姿を模索し体制を固めていくこととが必要
だろう。
運用が偏っていないか。運用担当者にまかせき
りになっていないか。リスクを評価しているか。
格付けをどう見ているのか。業者との癒着はな
いか。危険な部分ではある。
株等の有価証券は50%を割り込むと評価損を
出さなければならないので、銘柄別に市場の動
向を把握しなければならない。
また、2 号や3号基本金特定資産を株などで運用
している場合は基本金の維持のため評価損分を
補充することになるため、時価評価については
常に把握が必要。
留意事項
[施設の管理状況]
講堂・教室定員管理(授業定員・試験定員数の机椅子等
維持・保全)
授業環境保全のための整備(破損箇所の修繕、補修)
趣旨(留意事項の狙い)
施設の監査は講堂・教室が講義・授業を行える
態勢にあるか。
机椅子が整っているか、マイクやモニター等情
報機器が使える状況にあるか、教室の設備はシ
31
実験室特有のもの
[設備の管理状況]
授業実施のための設備の整備状況(シラバスとの対応・
AV 機器や製図機器・情報機器など学習効果を図る器具を
備えた教室実験室など)
教卓・机・椅子(少額重要資産)の管理状況(紛失ある
いは破損した場合の補充など)
パソコン機器・IT 関係の管理運営体制(動作状況の保全・
修繕・更新)
ラベルの貼付状況
定期的棚卸の実施状況
機器の更新の状況(耐用年数の過ぎたものを更新せずに
使用していないかなど)
[教学面の管理状況]
授業開始前の教室等のチェック
授業実施状況
授業の教室規模の状況
(講堂の割り振り状況、人数の偏り度合い)
カリキュラムに沿った機器備品の整備と学生数に見合っ
た充足の状況
授業での機器の使用状況(学生の利用に支障はないか、
稼働率は低くないか)
[危機管理・安全管理面での対策状況]
保安上の管理体制(教室等の鍵の管理状況、警備体制の
状況)
非常時の体制整備状況
火事地震等災害時の避難誘導体制の整備状況(専任非常
勤問わず学生の避難体制の状況)
避難・誘導路の状況(誘導サインの確認、荷物など障害
物を避難路に置いていないか)
マニュアル等による避難体制の周知度
[危機管理・安全管理面での対策状況]
可燃物や爆発物、危険物、毒物劇物、放射性物質、産業
廃棄物等の法令による取り扱いの管理状況と管理体制の
整備状況、規程の整備状況。
・例:毒物劇物の管理体制(専用保管庫の設置状況、施
錠の管理、保管庫及び容器への表示、管理記録簿の整備、
32
ラバスに沿ったものを提供できているか、数は
整っているか、学生があふれるようなことはな
いか、基本的には学生が講義を受けるにあたり
支障はないかという観点からの監査を考慮し
た。
災害時の避難体制が肝心だが、教員が教室にお
いては非常時のリーダーになるため、教員への
訓練やマニュアル配備が必要。学生にも避難訓
練などを実施しておくことが必要。
実験室においては危険物等取り扱うことが多い
ので、爆発・ガスの発生・火災等が発生した場合
どの様に管理者を定め、実験における安全対策
を講じているのか、非常時にはどう対応するの
か具体的な対応措置を確認することが必要。
研究室
定期的管理簿と数量の照合、保管容器の転倒防止、薬品
棚の耐震対策の状況など)
管理責任体制(法令上の有資格者の登録状況と実態管理
状況)
管理者の資格更新及び研修による管理者教育体制
学生に対する安全対策の指導状況。
実験器具や薬品等を使う際の予備知識や使用方法などの
指導訓練。
実験用機材使用に関して機材の安全面での点検チェック
など安全管理体制の状況。
[設備の管理状況]
研究室の図書・備品の管理状況
・ラベルの貼付状況
・機器の管理上の属性の状況
研究室の図書・図書は科研費などの競争的資金によるも
のか大学予算で購入したものか補助金で購入したものか
色分けができているか。
・台帳にあるものないものの管理ができているか
・備品の所在が不明あるいは台帳にない物品がある場合、
貸し出し簿や預かり簿などによる研究者の管理状況と
管理者による把握状況
・機器備品に限らず管理用品などの管理をどのようにし
ているのか
・定期的に棚卸を行っているか
・機器が休眠状態になっていないか
担当教員の異動によって使用されず埃をかぶっているよ
うな状況になっていないかあるいは購入して利用してい
ない機器はないか
・期末に機器の購入をしていないか
[危機管理・安全管理面での対策状況]
保安上の管理状況(鍵の管理状況・警備体制)
・盗難や紛失を防止する体制はあるか
非常時の体制整備状況
・本棚などの耐震補強状況
ハラスメント対応状況
・ドアがガラス張りになっているか
33
研究室にはたくさんの種類の予算で買った図書
雑誌備品消耗品が存在する。学部予算、大学院
予算、個人研究費、受託研究費研究所予算、科
学研究費等それらを区分して管理していかなけ
ればならない。
棚卸の方法と実施については種々雑多なものが
あるのでどの様に要領よくやっていくべきか監
査の点からも求められる。
年度末に予算消化のために機器等を購入する場
合があるのと購入しても封を切らずに、教育研
究の用に供さない場合については年度予算の適
正な執行の観点から厳重な注意が必要であり次
年度の予算削減のようなペナルティを考えるべ
きであろう。
また、補助金購入資産と同様、公のお金と同様
の意識を持つことが必要。
研究室には種々の物品がある以上、管理は必然
的に要求される。したがって、保安上特に資産
についてはどこにあるか常に把握する必要があ
る。
学生の面談等 2 人きりになる場合があるため、
ハラスメントの防止上、廊下から見える状況に
なければならない。そのような管理体制がしか
・学生と 2 人になっても廊下から見える状況になってい
るか
会議室
研修所
れているか確認する必要がある。
会議室等についてはどれだけ有効な管理体制を
敷いているのかが鍵。
時間管理の面からの効率的運営と、離れたキャ
[施設設備の管理状況]
ンパスではテレビ会議が経費節減の意味におい
保安上の管理(教室等の鍵の管理・警備体制)。
ても有効なツールである。
設備備品(情報設備、AV 設備、図書)盗難紛失等に対す
この場合、テレビほか通信設備、情報機器など
る管理体制。
の設備管理の意味において施錠の必要性がある
稼働率の状況(偏りがある場合は分析が必要)。
ため、管理が必要となる。
学内ネットの申し込み体制の確認(誰でも申請できるよ
基本的にどこの部署でも使える仕組みであるこ
うになっているか)。
とと継続して独占する部署がないよう態勢を強
時間管理による有効活用の状況。
いておくことが求められる。有休的な会議室が
ないような運営をしていることも管理社として
求められる。
[施設設備の管理状況]
研修所は基本的にFYSやゼミナール合宿を行
委託契約等管理にかかる基本契約の確認。
う場所、基本的にはゼミが行える教育環境の設
保安上の管理状況(鍵の管理状況・警備体制)。
備が求められる。
稼働率状況(ゼミの年間利用状況など)。
したがって、黒板や机椅子等の講義環境やパソ
収支の状況(利用者数と経費のバランス)。
コン環境図書設備も求められてくる。そのよう
教管区分の検証。
な環境が整っているかが監査のポイントとなろ
研修施設と教職員福利厚生分の建物使用区分(教管区分) う。
の状況。
研修所の稼働率も年間通じての調査が必要。稼
働率が極端に低ければ減損の対象にもなりかね
[研修室の状況]
ないため、確認しておくことが必要。
図書・機器等の整備状況。
[棚卸の状況]
機器備品・図書・絵画・高級食材等定期的に実施してい
るか。
[車両の管理状況]
研修所の送迎にマイクロバス等を使用すること
運転は誰が行っているか。
があるが、事故等があった場合の保険の状況、
法令点検・車検は行っているか。
運転者の状況、車検の管理等安全対策をどう講
保険はかけているか。
じているか確認することが必要。
保管状況・整備状況は問題ないか。
安全講習は受講しているか。
34
[危機管理・安全管理面での対策状況]
食の安全管理体制・衛生状態管理状況。
避難訓練の実施状況。
非常時の避難場所の提供など地域・自治体との連携状況。
サテライトオフィス
学生寮
研修所では食の安全管理が重要課題。安全対策
をどの様にとっているか確認が要求される。
非常時の避難訓練をどのように行っているか地
方自治体との共同状況や訓練計画について確
認。
[施設設備の管理状況]
サテライトオフィスはいわゆる大学の顔、そこ
オフィスの賃借契約状況。
での活動は大学の広報となる。したがって、住
賃借契約、賃借契約の更新要件、賃借料、借地面積。
民等へのサービスが主体となるため収支のバラ
管理者の状況。
ンスは難しいが、どこまで経営努力をするかが
管理委託、オフィスの清掃委託、警備委託の契約の状況。 経営姿勢として必要なことは言うまでもない。
大学の提供する講座が受講者のニーズとマッチしている 住民・学生が望むことと大学が提供することの
か。
マッチングを図りサテライトオフィスを象徴と
アンケートをとりかつそれを改善に活かしているのか。 して大学を広報していく効果測定の検証が求め
利用者数の状況(講座・教員ごとによる分析)。
られる。
[経営管理の状況]
収支バランス(賃料、光熱水費、人件費、委託費等の管
理費と生涯学習講座等の収入のバランス)の状況。
情報公開の状況。
社会人や地域への貢献の度合い。
[施設設備の管理状況]
寮は学生が民間より家賃が安いこともあるが、
寮設備の棚卸や不具合の点検は誰がいつどの様に行って 地方の親が安心できるところして学生を送り込
いるのか。
んでいる。
施設設備の更新状況ルールについて
したがって、学校側がどれだけご父母の安心感
寮施設の管理責任体制の状況。
と学生の面倒を見れるかがポイントとなろう。
委託の場合は契約書の確認によりその責任負担体制。
学生が孤独にならないよう、先輩寮生や仲間が
(管理警備清掃ごとに)
授業のアドバイスをしたり、生活の面倒見たり
業者にまかせっきりになっていないか。
するのが寮のコンセプトであったが、学生マン
定期的に委託管理の検証をしているか。
ションのような一人部屋が増えている中、学生
寮規程の有無。
ご父母の安心を担保するような寮の生活スタイ
寮生の入居時の契約書の確認。
ルを提供できているのか確認を要するところで
ある。
先ずは快適な寮生活となっているか、学生同士
交流できるようになっているか、困っている学
生を助けられるようになっているかを検証して
いかなければならない。
所管の課が寮の学生の状況を常に把握している
35
かが肝心。
寮費の納入状況及び未納者の督促状況。
寮費の回収システムは問題ないか。
寮費の妥当性。
・入学時の負担状況。
・周りの賃貸物件より高く設定していないか。
・更新時に必要以上の敷金等をとっていないか。
[教学面の管理状況]
寮生が孤独にならないようにロビーでの寮生同士の対話
や面会者との対話ができるようになっているか。
・寮長などを配し、新入生などの面倒を見る体制になっ
ているか。
・健康状況を配慮するシステムになっているか。
1 人部屋の比重が高くないか。
[危機管理・安全管理面での対策状況]
寮の非常時の避難訓練等は行っているのか。
寮生の有事の際の安否確認の方法は確立されているか。
36
寮費の滞納状況により、寮生の経済状況をどの
様に把握してるのかも管理の面から掌握してい
るかを確認する。
親の収入が減り、仕送りの少なくなっている折、
親にとっては設備の充実よりも現在寮費の安い
ところが喜ばれるので、寮費の削減に向けた大
学の対応が望まれる今日、他大等との比較から
寮費の仕組みをみていく。
いわゆる 5 月病など学生が孤独にならないよう
大学が学生の寮生活を充実させる仕組みづくり
が必要。また、留学生と同居させることによる
文化の交流、語学力の強化を遂げている大学も
ある。
火災時の時など寮生が避難するとき、誰が安否
確認を行うのか避難システムや避難訓練をどの
ように行っているのか確認していく。
「ICT」監査に関する留意事項
ICT は、非常に高度な情報処理や膨大なデータ保存を実現し、また多様なユーザーがシステムにアクセスすることを可能とすることから、組織運営に
欠かせないツールである。ICT 管理担当者は、ICT の適切利用を支援するため、システムの適切な稼動、危機管理、機密情報管理、不正アクセス管理な
ど、様々な事項を管理している。仮にこれらの管理に失敗した場合には組織に重大な被害をもたらす恐れ(以下、この恐れを「ICT リスク」と呼ぶこと
がある)があることを考えると、ICT 管理の適切性については内部監査による客観的評価が行われることは、組織運営上、非常に重要である。
以下の留意事項は、実務の参考までに、ICT 管理において課題があることが多い事項を抽出したものである。したがって、監査項目として網羅的でも
全ての組織に適合するものでもないことに留意いただきたい。
分類
項目
留意事項
趣旨(留意事項の狙い)
ICT 管理体 職務分掌
ICT 管理責任者は、ICT 関連部門内で分掌させるべき業務 ICT 管理業務は専門性が高いことが多く、専門能
制
を理解し、適切に分掌させているか。
力を持つ担当者に業務を完全に委ねてしまうこ
とが起こりやすい。しかし、ICT は使い方次第で
は個人情報漏洩や不正、監督官庁への報告誤り
など大学運営に重大な影響を与えかねない高リ
スク業務である。このような高リスクを低減す
る最も基本的統制手段は職務分掌である。
全ての業務が分掌されているべきというわけで
はない。しかし、少なくとも、担当者の誠実性
にのみ依拠した場合には深刻な事態が生じるこ
とが想起される業務については、職務分掌等の
適切な統制手段を業務に組み込むべきである。
逆に高リスク業務について職務分掌が実施され
ていない場合には、分掌以外の手段でリスクが
低減されていなければならない。
担当者の役割と責任
ICT 管理責任者・担当者の役割・責任は明確になっている 各自の役割・責任があいまいな状況では、本来
か。
誰かが管理すべき業務を誰も管理していない状
況や、本来責任者が為すべき行為を担当者に任
せ切ってしまいかねない。このような状況は、
組織に深刻な影響を及ぼす可能性のあるリスク
に対する管理の脆弱性を作り出す。
この事態を避けるためには、ICT 管理責任者・担
当者がそれぞれの役割・責任を明確に理解して
いる必要があり、責任等があいまいな業務の存
在が明らかになった際には、迅速に役割の割当
が行われる必要がある。
能力
ICT 管理責任者・担当者には、責務を遂行するのに適切な ICT 管理業務は専門性が高く、継続的な専門教育
知識と経験があるか。
を受ける必要がある。専門性がかけている状態
37
引継ぎ
セキュリティ教育
統制活動
システム棚卸
では、活用している ICT が抱えるリスクを認識
することが出来ず、あるいは担当者の誠実性の
みに依拠した監督とならざるを得ず、リスクに
対する管理の脆弱性をもたらす。
そこで、ICT 管理責任者及び担当者は、現在活用
している ICT の現状や問題点を適切に認識する
知識と経験を有しており、必要あれば IT ベンダ
ーと協議するだけの能力を保持している必要が
ある。
ICT 管理責任者・担当者の異動や退職に際して、内部統制 ICT 管理業務は、その専門性および担当者の数の
が損なわれないように、適切に管理されているか。
少なさから、属人的になりやすい。その結果、
担当者等の異動や退職によって、過去の管理の
経緯や現在の ICT の技術的設定の意図、詳細、
行っている管理業務などの情報が失われ、従来
は適切に低減されていたリスクへの管理が、人
事異動等を契機に弱体化する可能性がある。
このような事態を避けるためには、日常的に、
管理過程や意思決定過程を記録として保存する
ことが重要である。
ICT 管理責任者・担当者は、ICT ユーザーに対し情報倫理、 ICT は特定の管理者のみで安全性を担保できず
セキュリティ方針や具体的なセキュリティ対策等に関す ユーザー自身の自覚を持った行動が不可欠であ
る教育を実施しているか。
る。したがって、ICT セキュリティにあたっては、
ユーザーの情報倫理やセキュリティ意識の向上
が非常に重要である。
一方で、大学における ICT ユーザーは多種多様
であり、またユーザーの変動も激しいことから、
セキュリティ教育は、継続的にかつ切な教育計
画をもって実施される必要がある。
大学内で使用されている ICT システムやデータは、ICT 担 大学内には、様々なユーザーを想定する ICT シ
当部門等特定の部門によって一元的に把握されている
ステムが稼動しており、またその管理人は非 ICT
か。またそれぞれの管理責任者は明確か。
部門が担当していることも多い。大学の ICT リ
スクを低減するためには、大学の特定部門(専
門部署)が、すくなくとも学内で利用されてい
る ICT システムの所在や管理者等の概要を一元
的に把握している必要がある。
逆に、特定部門(専門部署)が一元的に把握し
38
管理の一貫性
新規開発管理
情報と伝達
定期的報告
モニタリン
グ
記録方針
サービス・モニタリング
ていない場合、個人情報漏洩その他 ICT 管理に
由来するリスクが十分に低減されていることを
どのように確認されうるのか、明確にされる必
要がある。
学内の各 ICT システムについて、管理に関する整合性は 学内には多数の ICT システムが稼動しているこ
保たれているか。あるいは、リスクの程度に応じた管理 とが多い。ICT リスクが適切に低減されているこ
体制が取られているか。
とを確実とするには、各 ICT システムにおける
管理水準の一定化ないし各 ICT システム個別の
リスクに見合った管理が行われていることが定
期的に確認されなければならない。
逆に、ICT システムの管理が各管理者に任されて
おりその管理者以外の者には管理状況を知りえ
ない状況である場合には、各 ICT システム管理
に対する外部チェック(たとえば内部監査)等
が行われるべきである。
新規に ICT システムを開発する際には、内部開発・外注 ICT システムの新規開発にあたって、ユーザー要
の別に関わらず、ユーザー要件定義およびユーザー受入 件定義や受入テストが不十分であると、ICT シス
テストを十分に実施しているか。
テム稼動後の不具合の発覚や誤情報の表示・送
信などが行われることがある。このようなリス
クを防止するため、要件定義や受入テストを適
切に実施されることが重要である。
ICT 管理責任者は、自部門の業務執行状況や課題、リスク ICT 管理は大学運営にも影響を及ぼしうる高リ
を理事長や担当理事に定期的に報告しているか。また、 スク業務であって、その管理状況は、理事会や
このような情報が理事会で共有されているか。
各理事レベルで適切にモニターされる必要があ
る。そのため、ICT 管理責任者等は、ICT に専門
性を持たない理事等に対して、理解可能な説明
を行うべきである。
重要な ICT プロセス、コントロールに関する記録の管理 記録が適切に管理されていないと、問題が生じ
方針(作成・更新・保管・廃棄等)が定められているか。 た際に過去の記録の参照ができなくなり、事態
収拾が困難化する恐れがある。記録を組織的に
行うためには、記録の作成や更新、保管、廃棄
等に関する方針を定め、方針に従った記録管理
を行うべきである。
ICT 管理責任者は、ICT サービスの提供状況をモニタリン ICT は、ネットワーク、データベース、ハードウ
グしているか。
ェア、システムソフトウェア(OS、ミドルウェ
重大なシステム障害やシステム資源の不足など、問題が ア等)それぞれが有効な状態で初めて機能する。
39
セキュリテ
ィ管理
アクセス権限管理
ユーザーID、
パスワード
ウィルス対策
物理的管理
識別された場合、ICT 部門は行動計画を立て、改善に取り したがって、ユーザーに対するこれらのサービ
組んでいるか。
スの提供状況は、ICT がその目的を果たしている
かどうかに関わる重要な問題である。
ICT 管理責任者が、サービス提供状況について担
当者への信頼に過度に依存するならば、適時適
切な ICT 管理業務が行われていることが保証さ
れず、結果的に ICT 管理が不適切になる恐れが
ある。このため、ICT 管理責任者は、リスクに見
合ったモニタリング方法を定義し、適切にサー
ビス提供に係る管理が行われていることを監督
すべきである。
ICT システムのアクセス権限は、明確な情報セキュリティ ICT リスクを意図したとおりに低減するために
方針の下、然るべき申請・承認プロセスを経て、必要な は、然るべきユーザーが然るべき手続に則って
人のみに付与されているか。また、不正なアクセスが行 所定の ICT システムを利用することが不可欠で
われていないことを、ログのモニタリングによって確認 ある。このためにはアクセス権限の割当や変更、
しているか。
削除等の管理を適切な方針の下で実施する必要
がある。アクセス権限の付与は、職務分掌を確
実にするためにも不可欠である。
逆に、アクセス権限の管理が不適切な場合、職
務分掌が確実に行われるための別の統制手段が
導入されていなければならない。
ユーザーID、特に退職者のユーザーID 管理(抹
ユーザーID は適切に管理されているか。
消)が適切に行われていないと、情報管理上に
パスワードは定期的に変更されているか。
支障が生じる。
また、定期的なパスワードの変更は、セキュリ
ティー上重要である。
ICT システムには適切なウィルス対策を導入され実行さ
ウィルス対策が行われていない場合、ICT が組織
れているか。
外部からの攻撃に非常に脆弱になっていると考
えられる。少なくともネットワークで繋がって
いる端末は、ウィルス情報が最新化されたウィ
ルス対策が施されている必要がある。
コンピュータ室やネットワーク設備等、ICT システムの運 未了物理的セキュリティが不適切であると、ICT
用に必要な機器に対する物理的セキュリティは適切か。 の破損や不正アクセス等に脆弱になり、データ
流出やデータ消失などの脅威にさらされる。ICT
やそのデータに応じて、適切な物理的管理が行
われている必要がある。
40
バックアップ
重要データの破損に備え、適切なバックアップが行われ
ているか。またバックアップデータのメディアは外部の
安全な場所に保存されているか。
41
バックアップが不適切であると、ICT の破損や不
正アクセス等によってデータ消失が発生した場
合、データ復元が行えなくなる。ICT やそのデー
タに応じて、適切なバックアップ管理が行われ
ている必要がある。
「環境」監査に関する留意事項
環境問題に対する大学の使命は、あらゆる知を活用し、地球温暖化に対する取り組みやエネルギー問題など地球環境を脅かす課題に取り組み、環境
の保全や改善など様々な形で、直接間接を問わず社会というステークホルダーへの貢献をしていくことにある。
現在、環境への取り組みがCSR報告書や環境報告書という形で企業や一部の大学から報告されている。今後、大学の環境への取り組みは社会のニ
ーズとして必須であり進んでいくことになろう。したがって、環境についての取り組みをどのように評価すべきかが監査を考えていく点で問題となる。
監査にあたっては、環境報告書を作成する上で基本となる環境省の「環境エコアクション21大学等高等教育機関向けガイドライン」にそって監査を
進めていくことを前提とし、大学用の監査チェックリストを考えていくこととした。
分類
項目
留意事項
趣旨(留意事項の狙い)
計画の策定 取り組みの対象組織・活動 取り組みの対象となる組織や活動が明確にされている
組織は、全組織(教育・研究活動を含む)を対
の明確化
か。
象としてエコアクション 21 に取り組み、環境経
営システムを構築、運用、維持する。
環境方針の策定
代表者(学長・理事長等)は、環境経営に関する方針を
定め、誓約しているか。
環境への負荷と環境への
取組状況の把握及び評価
①事業活動に伴う環境負荷の発生が把握されているか。
②把握されている場合、その元になる活動を特定し、削
減する取り組みが行われているか。
参考「環境への負荷の事故チェックの手引き」
③「環境への取り組みの自己チェックリスト」により現
在の環境への取り組み状況について把握されているか。
④把握の結果を環境目標や環境活動計画に反映させてい
るか
環境関連法案等のとりま
①遵守しなければならない環境関連法案法規及びその他
42
方針について
組織の事業にあったものとする。
環境への取り組みの基本的事項を明示する。
組織に適用される環境に関する法規等の遵守を
誓約する。
環境方針には、制定日(または改定日)を記載
し、代表者が署名する。
学長・理事長が大学の社会的責任を配慮した環
境に対する明確なビジョンを打ち出すことが求
められる。
事業活動に伴う施設等の維持管理など管理部門
のほか教育研究活動分野での環境負荷を把握す
ることが必要となる。
環境負荷のうち、二酸化炭素排出量、廃棄物放
出量、総排水量(あるいは水使用量)、化学物
質使用量、は必ず把握する。
大学等では、環境に関する教育及び研究活動に
関する全般的な状況、大学等が環境に関する教
育・研究を通じて地域や社会への還元(社会貢
献)の取組状況についても把握し検討すること
が求められる。
大学等が関係する主な環境関連法規
とめ
の環境関連法案要求事項を整理し、一覧表等に取りまと
めているか。
②環境関連法案法規等は常に最新のものとなっている
か。
環境目標及び環境活動計
画の策定
具体的な環境目標及び環境活動計画が策定されている
か。
43
①地球温暖化対策・省エネルギー関連:温対法、
省エネ法、フロン回収破壊法 他
②大気汚濁防止:大防法、自動車NOx・PM
法 等
③水質汚濁防止:水濁法、下水道法、浄化槽法
等
④騒音規制、悪臭防止:騒音規制法、悪臭防止
法 等
⑤土壌汚染防止:土壌汚染対策法
⑥適正な廃棄物処理:排掃法、ポリ塩化ビフェ
ニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措
置法 等
⑦リサイクルの推進:リサイクル法、家電リサ
イクル法、食品リサイクル法、建設リサイクル
法、自動車リサイクル法 等
⑧化学物質管理:化管法、ダイオキシン類対策
特別措置法 等
⑨その他:生物多様性基本法、グリーン購入法
環境配慮促進法、環境保全活動・環境教育推進
法、環境配慮契約法、建築基準法、景観法 等
実験系の学部(理工学部等)、医学部、附属病
院を有する大学等については化学物質や実験動
物の飼育・保管、機器・装置等に関わる法規等が
関係するため下記にその一例を示す。
高圧ガス保管法、毒物及び劇物取締法、消
防法、労働安全衛生法、農薬取締法、肥料
取締法、動物の愛護及び管理に関する法律、
特定外来生物による生態系等にかかる被害
の防止に関する法律、鳥獣の保護及び狩猟
の適正化に関する法律、遺伝子組換え生物
等の使用等の規制による生物の多様性の確
保に関する法律、放射性同位元素等による
放射線障害の防止に関する法律、麻薬及び
向精神薬取締法 等
環境方針、環境負荷及び環境への取り組み状況
の把握・評価結果を踏まえた具体的環境目標及
①環境目標は可能な限り数値化しているか。
②二酸化炭素排出量削減、廃棄物排出量削減、総排水量
削減、化学物質使用量削減、グリーン購入、環境に関す
る教育・研究(社会貢献を含む)に関する項目について、
中長期の目標と単年度の目標が策定されているか。
③環境活動計画において、環境目標を達成するための具
体的手段、日程及び計画の責任者が定められているか。
④環境目標と活動計画は、関係する教職員等に周知され
ているか。
計画の実施
実施体制の構築
①環境への取り組みを実施するために効果的な実施体制
が構築されているか。
②実施体制においては、各自の役割、責任及び権限が定
められ、全教職員に周知されているか。
学生を環境への取り組みに主体的に参画させているか。
教育・訓練の実施
研修の年間計画が策定され、階層別、職種別等、適切な
プログラムにより実施されているか。
環境コミュニケーション
の実施
内部コミュニケーションは機能しているか
環境に関する苦情や要望を受け付ける体制が設けられて
いるか。
44
び環境活動計画を策定する。
・環境目標は 3~5 年度を目処とした中長期の目
標と、単年度の目標を策定し、数値化あるいは
達成状況の目安となる目標値が求められる。
・環境目標及び活動計画
二酸化炭素排出量削減、廃棄物排出量削減、
総排水量削減等については、大学全体の環境
目標に加え、建物、施設毎に設定。
化学物質使用量削減については、関係する研
究室単位毎に、環境に関する教育及び研究に
ついては、学部・学科・研究科単位毎に、そ
れぞれ適切な管理単位で環境目標と活計画を
設定していること。
複数のサイトにまたがる場合は、サイト毎に
求められる。
環境経営システムの効果的な運用のためには組
織の代表者をトップとする全員参加の実施体制
の整備が必要条件となる。
組織の一人ひとりが、環境経営システムの中で
自らがどの様な役割を担っているのかを理解す
ることが必要で、そのために構築した実施体制
を図表等に取りまとめ、全教職員に周知するこ
とが必要となる。
環境教育の主たる対象である学生を参画させる
仕組みづくりが必要。
全教職員、管理職、学生に対し認識自覚等を高
めるもの。
法規制に関連する業務担当者や環境に影響を及
ぼす活動に従事している者など特定の業務に従
事するために必要なもの。
掲示板、学内メール等を活用して環境経営シス
テムや環境に関する情報を伝えることが意識や
情報の共有の意味で必要。
環境に関する苦情や要望について受け付けた内
容、対応した結果など記録しておくことが必要。
対応結果についての記録がおこなわれているか。
環境活動レポートが定期的に作成され、レポートされて
いるか。
実施及び運用
環境方針、環境目標及び環境活動計画を達成するために
必要な取り組みが実施されているか。
また、実施にあたっての手順等が定められ、文書化され、 手順書には、実施にあたっての要件として、守
運用されているか。
るべき基準等を定める。
環境上の緊急事態への準
備及び対応
環境上の事故、及び緊急事態を想定し、その対応策が定
められ、定期的に試行され訓練が実施されているか。
環境関連文書及び記録の
作成・管理
取組状況の
確認及び評
価
対応の結果によっては、同様の苦情が起きない
ように再発防止策を講じなければならない。
大学等が環境への取組状況を公表する等の環境
コミュニケーションは、社会のニーズであり、
自らの環境への取り組みを推進し、社会への信
頼を勝ち取るための必要不可欠なものである。
取組状況の確認並びに問
題の是正及び予防
事故や緊急事態の発生後及び試行の実施後に、対応策の
有効性を評価するシステムが設けられているか。
エコアクション21の取り組みに必要な文書及び記録に
ついて、文書が作成され、適切に管理されているか。
必要な取り組みの記録が作成され、適切に管理される体
制となっているか。
①環境目標の達成状況、環境活動計画の実施状況及び環
境経営システムの運用状況が定期的に、確認評価されて
いるか。
②環境関連法規等の遵守状況が定期的に確認及び評価さ
れているか。
③環境目標の達成、環境活動計画の実施および環境経営
システムの運用状況並びに環境関連法規等の遵守状況に
問題がある場合は是正処置が行われ、必要に応じて予防
処置が実施されているか。
45
事故や天災等による化学物質の流出など、環境
に重大な影響を及ぼす事故及び緊急事態の発生
を想定し、汚染等を最小限の範囲でくい止める
よう予め緊急事態への対応を定め、準備をして
おくことが求められる。そしてその対応策が有
効であるか、可能な範囲での定期的な試行と訓
練の実施が必要となる。
対応策が効果的であったかどうかを検証し、必
要に応じて対応策を改訂するシステムが必要。
文書及び記録は、紙媒体または電子媒体とし、
適切に管理するために、組織の実状に合わせた
形式、形態での運用とする。
確認評価は定期的に行い、その頻度は確認する
内容により、年 1 回、4 半期に 1 回、毎月 1 回の
ようにそれぞれの内容により適切な頻度で行う
ことが必要。
問題がある場合はどの様に是正措置が講じられ
るか、あるいは問題はないが将来的に問題が起
こることが予測される場合は、どのように予防
処置が講じられるか検証が必要。
全体の評価
と見直し
代表者による全体の評価
と見直し
学長・理事等は、定期的にエコアクション21全体の取
組状況を評価し、全般的な見直しを実施し、必要な指示
を行っているか。
46
学長・理事長は、エコアクション 21 全体の見直
しに必要な情報を収集し、あるいは環境管理責
任者に報告を求め、環境経営システムが有効に
機能しているか、環境への取り組みは適切に実
施されているかを経営的観点から、定期的(少
なくとも年 1 回)に評価し見直すことが求めら
れる。
「業務委託(請負)」監査に関する留意事項
件費削減、雇用に関わるリスク回避、業務の効率化等を目的とした業務委託が、それらの目的に照らし適切に契約等されているかを確認して、法人
(大学)の健全な経営に資することを目的とする。
分類
項目
留意事項
趣旨(留意事項の狙い)
全般
規程等の整備
業務委託(請負)に関する方針・規程・基準等が明確に 委託、請負、派遣の各区分が明確にされて行わ
されているか。
れているかが基本となる。派遣対象となる業務
は法令で指定されている。
有効性
業務委託、請負事業は適切かつ効果をあげているか。
委託成果は、可能な限り数値で示すことができ
るのが望ましい。
委託(請負) 基準
「厚生労働省告示(労働者派遣事業と請負により行われ この基準は、労働者派遣事業と請負のより行わ
る事業との区分に関する基準」
(昭和61年4月17日労 れる事業との区分※を明らかにすることを目的
働省告示第37号)を満たしているか。
(細部は、各人が としている。
(※注文者と労働者間に指揮命令関
確認)
係がある場合は請負形式の契約であっても労働
者派遣事業に該当する。)満たしていない場合
は、残業代、社会保険料を支払うことになるの
で注意が必要である。
契約書
業務委託・業務請負契約が締結されているか。
(内容、範 事前に双方が条件に合意した上で業務に着手す
囲、期間、金額、支払方法、報告、契約解除条件、検収、 ることにより、一方にだけ有利な条件等を回避
秘密保持等)
できトラブル防止となる。
条件
下記に反する場合は偽装請負・派遣となる。
請負においては、就業規則、服装等の規律、安
①仕事の依頼、指示に対して諾否の自由があるか。
全衛生等規則に関わる事
②業務遂行方法及び内容に指揮命令をしていないか。
項の指揮権は受託者側にあることが基本とな
③契約した仕事以外を頼んでいないか。
る。
④労働時間を拘束していないか。(残業を命じていない 業務遂行に関する指示、服務上の規律に関する
か。)
事項等は、請負事業主が自ら行うことが必要。
⑤受託者に代わり他の者が仕事を行うことを認めている これらの条件が正しく守られていない場合に
か。
は、偽装請負とみなされる可能性がある。
⑥報酬の計算単価の基準を時間給・日給という時間を元
にしてないか。
⑦本人の所有する機械器具の使用を認めているか。
上記の補強事由
次の場合は、雇用関係を肯定する補強事由となるので確
認が必要である。
①採用、委託の選考過程が正規従業員と同様である。
②給与所得として源泉徴収している。
47
業務委託をする理由の1つに社会保険に関わる
費用の事業者(法人)負担の点がある。
・労災保険:事業者全額負担
・雇用保険:事業者と労働者が按分負担
③労働保険の適用対象にしている。
④就業規則の遵守を求めている。
⑤退職金制度等の福利厚生制度を適用している。
・健康保険:事業者と労働者が折半で負担
・厚生年金保険:同上
請負契約では、労働基準法上の労働者に該当し
ないため、労働関係の法律は適用されない。雇
用保険、健康保険、厚生年金の被保険者にはな
らない。
その他
請負では完成責任を求めているか。
請負契約では、契約した内容の完成を目的とし
ているが、委託・派遣では完成責任を求めてい
途中経過報告義務を求めていないか。
ない。
指揮関係にないため、途中経過報告は求めてい
瑕疵担保責任(契約で排除可能)はあるか。
ないが、委託・派遣では報告を求めている。
委託・派遣では、瑕疵担保責任はない
※ 労働契約(雇用契約)民法第623条
雇用関係を結び労務を提供する。
※ 業務委託契約
民法第643条、656条
特定の仕事の「処理」を依頼する。
※ 業務請負契約
民法第632条
一つの仕事の「完成」を目的とする。
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「発注・契約」監査に関する留意事項
大学の物品購入では、一定の基準を設けて教員が発注・検収の実務を担っている実態があり、教員に対する統制が有効でなかったために、権限の
ない予算外の物品購入により大学に不測の損害が発生した事例、検収業務が徹底していなかったためにいわゆる預け金等の不正が発生した事例がある。
このようなリスクに対応した業務処理統制が整備運用されていることを検証することが内部監査の重要な項目である。
契約事務では、所定の手続を経て契約書を締結し、台帳に記録してメンテナンスをすることが必要である。特に原本の管理と台帳の記録事項、更新
について、漏れが無いように網羅的にメンテナンスをすることが必要である。また、大学特有の内容として、適切な入札・随意契約の手続がある。一
社随契となるような場合、やむを得ない特異な仕様なのか、実効性のあるチェックができる体制が必要である。内部監査では、これらの手続が適正に
行われていることや、体制の整備が図られていることを検証することが重要である。
分類
項目
留意事項
趣旨(留意事項の狙い)
発注・契約 規程・マニュ
以下の事項が、規程・マニュアル・フローチャート等に 実務にあたっては、現状を踏まえた規程の整備
一般的事項 アル等の整備
て文書化され、教職員に周知徹底されているか。
が必要である。
・発注業務
規程の運用に際しては、教職員への周知徹底も
発注額に応じた決裁権限(者)、見積の徴求、予算超 必要である。
過の有無確認、その他一連の手続
特に一定金額未満等で区切って教員の発注を認
・契約業務
めている場合は、不正誤謬の発生のリスクが高
契約額に応じた決裁権限(者)、入札もしくは見積の くなるので、事務局による代替的な牽制、精緻
徴求、契約草案の承認、契約書作成、押印、原本の な業務手順・ルールが必要である。
保管、台帳記録その他一連の手続
稟議決裁
規程等の定めに従い、必要な案件の事前の稟議決裁がと 適正な予算執行と不正防止の観点から、稟議決
られているか。
裁→発注・契約のプロセスの遵守が必要である。
発注・契約情報の秘密保持 指名競争入札、見積合せによる随意契約等における予定 予定価格の漏えいは、公正な入札が阻害され、
価格の秘密保持を徹底する仕組みや周知が徹底されてい 契約内容が大学にとって不利になる可能性があ
るか。
る。
発注
発注管理
発注にあたっては、必要な手続を経て、規程に定める決
特に予算超過のチェック、見積徴求を失念す
裁権限者の決裁を得ているか。
ると、大学が予算で予定していなかった不測の
損害が生じる可能性がある。
発注部署が発注残を定期的にモニタリングし、長期に滞 注文したものがその通り納品されたかを確認す
留した発注残は解消するようにコントロールされている ることが必要である。
か。
基本的には検収の都度確認並びに消込を行う
が、定期的にモニタリングすることで、気づい
ていなかった発注残の滞留を発見することもあ
る。
意図的な分割発注(自己発注が可能な金額への分割、入札 実際に発見するのは難しい場合もあるが、着眼
を要しない金額への分割)が無いか、事務局でチェックで 点として内部監査担当者並びに事務局担当者は
きるシステムが構築されているか。
理解をしておく必要がある。
49
発注管理
(特に科研費やその他外部
資金)
検収
科研費やその他外部資金など、教員ごとの予算の執行状
況は、責任者並びに事務局が把握できるようになってい
るか(随時把握できるシステムの構築やソフトの導入が
されているか)。また定期的にモニタリングしているか。
物品購入等の精算を遅滞なく行うよう規程化され、教職
員に周知徹底されているか。
計画的な予算執行、予算超過の防止、並びにど
のようなものを購入したかの実績把握は適正執
行の観点から有用である。
特に立替支払の精算が該当するが、立替支払の
精算を年度末近くにまとめて経理に回すことが
常態化すると、経理部門の負担が一時に集中し、
また期中で予算超過の有無をコントロールして
いても期末での多額の精算で予算超過する事態
になると管理の有効性が減殺されるので、期中
での経費の精算期限(1週間以内等)を規程で
定め、周知徹底して運用する必要がある。
科研費やその他外部資金における旅費・謝金・人件費(ア 左記の項目は、架空請求並びに不正使用のリス
ルバイト料)の支払については、証憑の添付、説明の徴求 クが大きい項目であり、通常の物品購入以上に
等により、責任者並びに事務局に実態を疎明できるよう 注意する必要がある。
になっているか。
科研費やその他外部資金で、使用に関するルールがある 学外のルールがある外部資金については、当該
ものは、物品等の発注にあたってルールに従った運用が ルールに準拠した取扱をする必要がある。
なされているか。
検収管理
検収に関連する業務フローおよび検収の持つ意味が、規 物品検収は、適正な経理事務執行の重要な要素
程・マニュアル・フローチャートにて文書化され、教職 となる。また、科研費やその他外部資金の物品
員に周知徹底されているか。
検収に、事務担当の関与強化が求められている
ため、学内に周知徹底するには明文化しておく
必要がある。
検収管理(特に科研費やそ 納品検収は、検収担当部署が関与するシステムになって 検収を確実に行う観点から、教員に検収を任せ
の他外部資金における)
いるか。
きるのではなく、検収担当部署を関与させる必
納入業者→検収担当部署への持込検収
要がある。預けによる不正防止の観点からも有
教員→検収担当部署への持込検収
効である。
検収担当部署→教員への出前検収
教員が検収担当部署の検収を受けやすい手立てがとられ 検収担当部署による検収率の UP には、事務サイ
ているか。(検収場所の数、体制、受付時間など)
ドの工夫も必要である。
検収に関連する業務フローは、取引業者にも通知して協 取引業者側にも理解してもらうことで、特定の
力を要請しているか。
業者と教員との癒着・不正を防止することに繋
がる。
教員による発注・検収を認めている場合、事務局の牽制 円滑な業務フローの構築を目的に金額基準で教
に実効性を欠く基準金額が設定されていないか。
員発注・検収を認める場合、当該基準の設定に
50
上記のように教員の発注を認めている場合、基準金額未
満の取引においても、代替的な統制として、事務局によ
る牽制が存在するか。
契約
法務的点検
契約書の作成/点検(/締結)を担当する専門部署(法務)も
しくは専門の担当者が配置されているか。
契約手続
契約書に押印する印章は、貴重品に準じて然るべき部署
の担当者が保管し、使用の際には公印管理台帳等にて内
容が記録されているか。
契約書・覚書等に貼付する印紙は、法令に従って事務手
続を定め、どのような契約にどのような印紙が必要かの
取扱マニュアルが教職員に周知されているか。
契約内容は契約台帳に記載し、台帳記録は連番で管理さ
れているか。
契約台帳の記載と契約書の原本の保管状況は一致してい
るか。
継続的な役務の提供等、継続が必要な内容の場合、契約
期間が終了する前に適宜継続もしくは別の業者への新規
契約を可能にするシステムが構築されているか。
よっては、事務局の関与がほとんどなくなり、
牽制が効かなくなるおそれがある。
また、基準金額未満の取引について事務局によ
る牽制が無いと、不正の発生のおそれがある。
大学にとって、契約書が法令を遵守しているこ
と、不利な内容となっていないことの確認を行
うことは重要である。
原本を作成するための公印は、現金等貴重品に
準じて管理することが必要である。
コスト削減の点で印紙の貼付を省略すると、場
合によっては法令違反(脱税)となるので注意が
必要である。
学内にどのような契約が存在するか、網羅的に
管理する意味で台帳を整備してメンテナンスす
ることが必要である。
総務もしくは現場の部署にて、台帳並びに契約
のモニタリングをしないと、役務提供が途切れ
るおそれがある。
事務担当者によるモニタリング並びに契約台帳への更新
予定の記録が有効である。
入札/
随意契約
入札並びに随意契約に関する一連の手続について、規
程・マニュアル・フローチャートにて文書化され、教職
員に周知徹底されているか。
一社随契や、一社入札となった場合に仕様等が合理的な
ものであるかの検証が行われているか。
51
実務の運用にあたって、規程の整備が必要であ
る。
特殊な仕様で対応できる業者が 1 社のみという
理由で見積合わせをせずに随意契約を結ぶ場合
や、形式的に入札の形態は取っているものの実
質的に特定の業者との随意契約となっている場
合、特に教員等が特定の業者を継続して指名し
ている場合には、前提となる仕様等に十分な合
理性があるか、契約金額の見積内容は適切か検
討する仕組みが必要である。定期的に内部監査
もしくは本部経理等でモニタリングする方法が
考えられる。
一方で、校舎建設のデザイン等、一定の理由に
よって関与の継続性が要請される場合もあるの
で、形式的にすべてを競争入札とするべきとし
ないよう配慮することも必要である。
52
「予算執行管理」監査に関する留意事項
予算執行管理は、物品調達、物品管理、謝金・諸手当、補助金及び旅費等の各業務が効率性・有効性の見地から最適に実施されるようにコントロール
する仕組みと定義する。このための予算管理、予算評価のマネジメントサイクルが機能しているか否かを監査する必要がある。
分類
項目
留意事項
趣旨(留意事項の狙い)
方針の策定 予算執行方
予算執行の適正性を確保するため、予算執行に 調達では予算内に収めるために発注業者へ原価移動を要求するなど担当
針の策定
関する運用方針を定めて、周知しているか。
者は優越的地位の乱用~パワーハラスメントを行なっているケースや年
備品購入・施設設備予算は適切に策定されてい 度予算申請時(予算計画時)の見積精度のまま稟議決裁を得るなどコス
トリダクションアプローチを行なわず、結果として学納金・国民の税金
るか。
である補助金の有効活用から乖離した予算執行となるケースが想定され
調達に関する規程は策定されているか。
る。予算執行の総合的視点に立脚した管理方針と手順化が必要である。
手順化
予算執行手
予算執行の手順が明確になっているか。
予算執行の手順書の中に業者への原価移動の要求や発注見返りの要求が
順の明確化
発生しないよう透明性ある業者選定の基準を明確に定めるとともに、納
実績を確認する仕組みも明確にしてあるか。
入実績のみならず使用実績も調査する仕組みが必要である。また、指名
入札等業者選定の仕組みは機能しているか。
競争入札等発注業務の透明性確保されている必要がある。また、予算執
行実績に対するモニタリングが行われる仕組みにより不正防止・予算消
化的支出への牽制が行われる必要がある。
53
「学生支援」監査に関する留意事項
学生支援の拡充は大学としての基本的な使命であり、学生相談、課外活動、キャリア支援及び奨学金制度等のトータル or 総合的 ort 体系的な学生サ
ービスの充実が期待されている。また、学生(留学生を含む)に係るリスクは、日常的に発生する可能性の高いリスクであり、学生個人の能力や適性
にあわせたきめ細かなサービスが求められる。大学のグローバル化が進み外国人留学生がますます増加する傾向にあり、多様化した学生サービスの実
施に関し、適切かつ持続的なリスクマネジメントが求められる。
趣旨(留意事項の狙い)
分類
項目
留意事項
学生支援
学生相談の充実
学生の実態やニーズを把握する部署が定められ、それを 学生がより多様化し、日常の学生生活の中で学
全学の共通認識とするための委員会等が設置され、全学 生一人では解決できない問題等が発生しやすい
的な施策として提起するスキームが構築されているか。 環境になっている。このため、学生生活に影響
を及ぼす事故やトラブル等について相談できる
学修、学生生活、健康についての相談窓口が学生に(必 窓口を設置し、学生が安心して学修に専念でき
要に応じて父母にも)周知されているか。
る体制を構築していくことが、父母の期待にこ
学修、学生生活、健康についての相談窓口や部署は、(必 たえ、社会的信用を維持することに繋がってい
要に応じて)情報の共有や相互に連絡が図られる体制に
く。
なっているか。
課外活動
相談を受けた学生の個人情報等が、適正に管理(保護)
されているか。
学生の部活動、サークル活動等を管轄する部署が定めら
れ、学内に標準的な対応策が提起されているか。
①課外活動で事故・トラブル等が発生した場合、迅速か
つ適切な対応(広報を含む)が行える体制が整備されてい
るか。
②学生の課外活動上の事故・トラブル等の再発防止に取
組まれているか。
③学生の課外活動上のトラブル等を、未然に防止するた
めのシステム(注意喚起・啓発活動等)が構築されてい
るか。
留学生支援
1.外国人留学生・日本人留学生に共通する留意事項
①留学生の受入・派遣を管轄する部署が定められ、学内
に標準的な対応策が提起されているか。
②受入・派遣留学生に係る損害賠償保険への加入等の支
援が行われているか。
54
部活動やサークル活動等の課外活動におけるト
ラブル等に対し、学生に注意喚起や啓発活動を
行い、事故等を未然に防ぎ、また、事故が起こ
った場合の事後処理等を迅速かつ適切に対応す
る体制の構築が望まれる。これにより、社会的
信用を維持しステークホルダーの期待にこたえ
ることが可能となる。
大学のグローバル化の観点から、留学生の受
入・派遣制度の拡充が重要であり、留学生支援
の充実が大学改革の一環として、ステークホル
ダーの期待に応え社会的信用の維持に繋がって
いく。
③日本で就職を希望する外国人留学生への支援体制、3
回生時に留学する日本人学生への就職の支援体制が構築
されているか。
2.外国人留学生に関する留意事項
①留学生寮の確保や奨学金等の支援が行われているか。
②教育指導や生活指導が適切に行われているか。
③失踪・不法滞在を防止する態勢が構築されているか。
④不法就労を防止する態勢が構築されているか。
⑤異文化不適応に対する相談体制が構築されているか。
⑥英語だけで必要な単位が取得できるコースの設置や、
英語で授業が行える教員の確保ができているか。
キャリア支援
3.日本人留学生に関する留意事項
①留学セミナー等の出発準備のための学生支援が行われ
ているか。
②語学力や専門分野に応じた多様な留学先が設けられて
いるか。
③外国で取得した単位を認定できる仕組みが構築されて
いるか。
④連絡体制は確保されているか。
⑤受入先との協定が締結され、トラブルが生じた場合で
も適切な対応がとれるようになっているか。
⑥留学先で事件・事故に巻き込まれた場合の対応が想定
され、適切な対応が行える体制が構築されているか。
学生のキャリア支援全般を支援する部署が定められてい
るか。
①キャリアデザインに関する講義科目を設けるなど、教
学上のキャリアデザインの支援が行われているか。
②就職活動の支援を充実させているか。
③学生のボランティア活動を管轄する部署が定められて
いるか。
学生のインターンシップ活動を支援しているか。
55
学生の適性にあったキャリアデザインを支援す
る体制を構築し、進路指導から転部・転科等を
希望する学生への個別対応まで適切に行うこと
が重要である。さらに、学生の就職活動等を支
援することが必要であり、学生のキャリア支援
全般の充実が、父母の期待に応え、社会的信用
の維持に繋がっていく。
奨学金制度
インターンシップ先や就職活動先とのトラブルを未然に
防止する教育が行われているか。また、トラブルが発生
した場合の対応を適切に行うことができる体制が構築さ
れているか。
4回生の半ばを過ぎても内定を得られない学生や、内定
のないまま卒業した学生への支援策が設けられている
か。
奨学金制度全般を管轄する部署が定められているか。
学内奨学金制度と日本学生支援機構の奨学金が有機的に
機能するような制度設計となっているか。
学生の経済的支援のために、学内に奨学金制度・貸付金
制度等が設定されているか。
貸与制奨学金の滞納に対する対策が適切にとられている
か。
優秀な学生への育英資金として、給付奨学金制度等が設
けられているか。
経済環境の低迷や、グローバル化による留学生
の増加等により、学生への経済的支援や育英資
金等が求められる現況になっており、限られた
財源の中で、毎年の奨学金への予算措置が、学
生・父母等から求められている。
受入留学生に対する給付奨学金制度等が設けられている
か。
学生指導
大規模災害に対応する学生や受験生への修学援助制度は
設けられているか。
奨学金制度の充実に努力し、毎年度、一定の予算措置が
講じられているか。
学生指導やマナー教育等を管轄する部署が定められ、学
内に標準的な対応策が提起されているか。
学生の飲酒・喫煙等のマナー違反を抑止するための啓発
活動が積極的に行われているか。
学生の軽犯罪等を防止するための学生指導・学生教育等
を充実させているか。
学生指導のための父母との協力・連携が図られているか。
56
学生の飲酒や喫煙等のマナー違反及び軽犯罪等
を防止するための学生指導やマナー教育を充実
させる必要がある。父母との協力・連携を通じ
てより効果的な対応を行うことにより、社会的
信用を維持しなければならない。
学生健康管理
学生の健康管理を管轄する部署が定められ、学内に標準
的な対応策が提起されているか。
保健室や診療所等が完備され、学生の傷病等に対し応急
的な対応を適切に行っているか。
父母の信頼を得るため、学生の健康管理を行う
システムを充実させる必要がある。特に、学生
のメンタル面へのケアを行う体制作りが重要と
なっている。
定期健康診断のほか、学生の健康増進のための取り組み
が積極的に行われているか。
カウンセリング等による学生のメンタル面へのケアを充
実させているか。
障がい学生支援
障がい学生を全般的に支援する部署が定められ、学内に
標準的な対応策を提起しているか。
障がい学生に対する支援策を積極的に行っているか。
(障
がい者用トイレの設置、バリアフリー対策等)
発達障がいを持つ学生への支援体制が構築されている
か。
57
社会性・公共性の観点から、障がい学生への支
援を充実させる必要がある。また、近年増加傾
向にある「発達障がい」を持つ学生への対応も
重要になっている。
「人事管理」監査に関する留意事項
健全な経営管理の礎を万全にするため、人に関る管理監督が法や規程及び教育研究目的に沿って適切になされているか確認することを目的とする。
原則として、法人や大学の経営等に関わる方針、方向性及び経営管理層の権限(人事評価等)には踏み込まないが、監査実施において疑義等が生じた
場合には、監事に実情を伝える等の対応が望ましい。
分類
項目
留意事項
趣旨(留意事項の狙い)
全般
人員管理
教職員数の把握は、人事管理上の全ての基本で
雇用形態別の部署定員(人数)が把握されているか。
業務実態の分析(主として職員)が行なわれ、部署別に あり、確実に把握しておく必要がある。そのた
め、雇用形態毎の人数、氏名、性別等の基本的
適正人員が把握されているか。
事項を把握しておかなければならない。
規程に定められた各種人事に関する委員会が、適切に開
委員会については、有名無実となった不要な委
催されているか。
員会はないか確認することが必要である。
雇用管理
就業規則で定める労働契約が締結され、かつ各条項が遵 労働基準法、労働契約法、均等法他 法人規定・
守されているか。
労使協定等の規則等に基づき、適切な労働環境
採用に際し雇用条件を明確にした契約書・辞令交付等が 態勢を整えておかなければならない。
行われているか。
住所、免許状等その他身上に異動があった場合の届出が
適切になされているか。
必要な労使間の労務協定が締結され、遵守されているか。
ハラスメント管理体制が構築されているか。
通勤届(通勤手当支給のもととなる)、住居届(住居手
当支給のもととなる)、扶養届(扶養手当支給のもとと
なる)は、正しく届出されているか。
健康管理
定期的に健康診断を実施し、結果が通知されているか。
また、未受検者に対する対応が図られているか。
診療所、保健室の利用状況等を把握しているか。
長期休職等中職員の現状が定期的に把握されているか。
58
ハラスメントについては、別項目でも示される
が、方針、啓発、相談、対応等の体制が求めら
れる。
通勤届等では、チェック態勢が不十分な場合が
多く、不正受給の温床になる事例が、見受けら
れるので、定期的な確認、審査が必要となる。
定期的に健康診断を実施して結果を通知してい
るか。
・診療所と保健室の設置方針、区分の明確化。
・診療所等の設備、人員(校医・看護師等)及
び薬品の整備保管状況
・周辺病院との連携(協定等含む。)態勢
等、職員の健康に関わる施策に対する経費につ
いても関心をもって確認する必要がある。
長期に亘る病気等で休業中の職員に対しては、
訪問(見舞い)、診断書の提出等を定期的に実
職員
福利厚生
所得税に関わる福利厚生施策について把握されている
か。
勤務管理
(専任)教員の大学外での業務が管理・把握されている
か。
兼職許可時間の基準が、定められているか。遵守する管
理体制が設けられているか。
(専任)教員から、兼職願届は提出されているか。
教員の休暇中の勤務管理が適切に実施されているか。
教員(専任・非常勤講師等)の出勤管理が適切に実施さ
れているか。
教員定員管理は、基準を満たしているか。
労務管理
必要な残業が指示され、残業状況が正確に把握されてい
るか。
残業記録に虚偽の記入はないか。
残業削減策は、講じられているか。成果はでているか。
パート職員等専任職員以外の雇用者に対する就業規則は
定められているか。
59
施し、現状の把握に努めることが必要である。
特に、精神的なケアを要する職員については、
充分な配慮を必要とする。
福利厚生施策は、所得税(経費処理)との関連
がある場合があり、注意が必要である。
通勤手当、出張手当、慶弔見舞金、慰安旅行、
借り上げ宿舎、事務服貸与等があるが、これら
については必ず、規程に金額を明示することが
必要である。未整備の場合は、課税対象となる
場合がある。
教員の勤務管理(勤務時間)は、正確に把握す
ることが難しく、その活動を制約することは困
難であるが、教育や大学の信頼性への影響の視
点から教員の勤務管理に関心を払う必要があ
る。そのため、まず兼職の状況を確実に把握で
きる体制は構築しておく必要がある。
教員の休暇中における出張や物品購入は、注意
を要する。
そのため、休暇中の勤務管理にも関心を持つこ
とが必要である。
教員の定員管理は、事故、病気、不祥事等で長
期の休暇や退職した教員等の定員を急遽、補わ
なければならないことも念頭においておくこと
が望ましい。
労働基準法、労働契約法他 法人規程・労使協
定(三十六協定等)等が監査の根拠となる。職
員の残業については、未払い問題(サービス残
業)だけでなく、空残業(水増し)の場合もあ
りうるので残業記録に虚偽(サービス残業・割
り増し)がないか確認することが必要である。
また、三十六協定との関連で残業時間を調整す
る(多く残業した月の分を残業しない月に回す)
場合もあり、適正な残業管理が有名無実になっ
ている場合があるので注意を要する。
「情報管理」監査に関する留意事項
ここでいう情報管理とは、IT、ICTや知的財産権の情報管理という意味ではなく、むしろ広報戦略としての情報管理(イメージ管理)を意味す
る。マスコミ管理といっても良いかもしれない。我々個人には、個人人格があり、組織は法人としての法人格がある。その法人に勤務する我々教職員
には、学校という組織の中で作られる組織人格が構築される。危機管理上、組織不祥事等に対する対応策は、風評被害に脆弱な学校が押さえておかな
ければならない重要事項であると考える。特に、情報管理は、日常の対策も重要となることを意識する必要がある(監査項目になりうるかも疑義ある
ところではあるが)。
趣旨(留意事項の狙い)
分類
項目
留意事項
方針の策定 マスコミ対
広報戦略としてマスコミに対する対応方針は、 本件は、規程等では詳細に記載できるものではないが、事件に巻き込ま
応方針が定
定まっていると思われるが、教職員不祥事、学 れた、災害にあったなど不祥事以外でもマスコミの取材を受けることは
まっている
生不祥事、事件事故等があった際の対応部署な 多い。この時に組織だった対応が迅速に行なえるか否かは組織のイメー
らびに対応者がきめ細かく決められているか。 ジを大きく左右する。
学生を教育する機関としての大学は、学生の安全と教育の維持を第一義
に考える必要がある。しかし、マスコミとの対応ひとつによってその報
日常からマスコミに対する戦略的戦術的対応
道内容が異なってくるなど極めて俗人的であることも事実である。これ
が、専任の教職員等によって行なわれている
らへの対応方針・権限が明確になっているとともに、対応方針が、明確
か。
にされ予算化されている必要がある。マスコミの株主になっている大学
や新聞社の局長級等の人材を教員として、採用しているのは知られてい
るところである。
対策
教育
コミュニケ
ーションル
ートの確立
と対応訓練
不祥事等が発生した場合や内外から情報を得
た場合の理事長学長への通知ルートが明確に
なっているか。
教職員の意
識付け
コンプライアンス教育とリーク対策が採られ
ているか。
不祥事か否かに関わらずマスコミ取材の際の
初動対応者などを詳細に決定し、訓練するマニ
ュアルが作成され、訓練が行なわれているか。
突然のマスコミ取材の際の対応など、現在は、ダイヤルイン電話になっ
ていることから思わぬ部署にマスコミから電話が入ったりする。この様
な場合の対応方法や内外から情報を入手した場合のコミュニケーション
ルートを定め、日ごろから対応訓練を行なっておくことが重要である。
学校がステークホルダーから一般企業より高い信頼を得ているというこ
とは、特権ではなく、自らを律することであることを明確に伝えること。
また一方で、他の教員の刺激となるよう教職員のメディアでの活動状況
を積極的に収集し、内外に公開する仕組みを構築するとともに教員の活
動状況を把握する。このほか学内情報がリークしないよう服務規程の強
化等が必要である。このほかマスコミ被害による事例公開等により受け
るイメージダウンが及ぼす影響についても確認しておく必要がある。
経営者・担当 マスコミ対策等服装・答え方・オフレコ時の不 マスコミの取材特性についての理解をしておく必要があるが、対人間と
者の教育
用意発言等個人として押さえておくことは多
の応対であるので訓練や適性もある。これらの教育が必要である。
い。このための教育と訓練は欠かせない。リス
60
ク対策として実施されているかを確認する。
61
「ハラスメント」監査に関する留意事項
ハラスメントが発生した場合、加害者の懲戒処分、加害者 and/or 被害者からの訴訟、マスコミ発表などへの対応が必要になるとともに、大学(学園)
の信頼性が問われることになる。このため、ハラスメントを生じさせない環境づくり(防止策)と、不幸にして発生した場合の適切な対応態勢は、リス
クマネジメントとしても重要な課題であり、内部監査業務でそのシステムの適切性を担保することが求められる。
※「留意事項」中の規程等の名称、委員会や委員名称は、あくまでも「例」であることを予めご承知おきいただきたい。
趣旨(留意事項の狙い)
分類
項目
留意事項
ハラスメン 「ハラスメ
規程が制定されているか。
「ハラスメント防止に関する規程」の制定は、ハラスメント防止に対し、
トの防止
ント防止に
大学(学園)としてどう取組もうとしているかを定めるものである。
規程には概ね次の規定が適切な内容として盛
関する規程」 り込まれているか。
またガイドラインは、規程にもとづき、大学(学園)の構成員に対してハ
の制定
ラスメント防止に係わる諸事項を詳細かつ具体的に周知するためのツー
定義/態様/起因する問題/対象者/組織構成員の
責務/相談・申立制度/防止委員会(設置、任務、 ルである。
構成)/調査委員会/相談員(配置、任命、責務、守 これらが制定や作成されていることはもちろん、実効性あるものになっ
ていること(構成員が常に見ることができること、実態や所轄官庁の動向
秘義務)/不利益取扱の禁止
HP 等により構成員が常時規程を参照できるよ にもとづいてアップデートされていること、国際化を反映して多言語化
されていることなど)がハラスメント防止の基本といえる。
うになっているか。
相談案件の実態、ハラスメント防止のための委
員会の活動実態、厚生労働省の方針等にもとづ
き、適宜改正が行われているか。
ハラスメン
ガイドライン(指針)が制定されているか。
ト防止のた
ガイドライン(指針)には、「ハラスメント防止
めの「ガイド に関する規程」の内容に加え、概ね次の内容が
ライン」(指 適切に盛り込まれているか。
針)の制定
防止に向けた基本姿勢/定義/適用範囲・対象/基
本的な心構え/被害に遭った場合の解決方法/啓
発、教育・研修活動
関連規程と
の係わり
ハラスメン
HP 等により構成員が常時ガイドライン(指針)
を参照できるようになっているか。
国際化に対応し外国人教員や留学生向けに多
言語で作成され、閲覧できるようになっている
か。
全ての教職員の「就業規則」にハラスメントに 有期雇用教員等を含め、全ての対象教職員の就業規則に規定していない
係わる規定がされているか。
と、ハラスメントの認定が行われても懲戒処分を行うことができない。
「懲戒手続規程」または「就業規則中の懲戒条
項」との整合性がとれているか。
委員構成は、
実態を把握し、分析して取組み(防止策、対応策)を行うシステムが確立
62
ト防止のた
めの委員会
ハラスメン
ト発生後の
対応
①規程で定められているか。
②指揮命令系統と対象者(相談者=教・職員<専
任・非専任問わず>、学生・院生、保護者、
関係業者 etc.)を考慮した適切な構成となっ
ているか
③女性委員や学外の専門家を含んだ構成とな
っているか。
適切に開催されているか。
毎年度、当年度の取組状況と次年度の取組課題
が機関会議に報告されているか。
「ハラスメ
[相談者が相談案件に対する「調査の申立」を
ント防止の
行った場合]
ための委員
①調査委員会を設置する場合の判断基準が定
会」のもとに められているか。
置かれる「調 ②調査委員会の委員構成、任務、学外専門家の
査委員会」
任命が定められているか。
③調査委員会による事実関係の調査は、迅速か
つ構成に実施されているか。
「ハラスメ
ハラスメント相談員が適切に配置されている
ント相談員」 か。
の配置
<教員>学部・研究科
<職員>学部・研究科事務室をはじめ、「部」単
位毎
・キャンパスが複数ある場合はそれぞれに配置
など
多言語に対応できるハラスメント相談員が配
置されているか。
対象者がハラスメント相談員の所属、職名、氏
名、居所、電話、メールアドレスを(一定の制
限のもと)簡単に検索することができるか。
申立から処
申立→処分の決定(懲戒処分該当の場合、理事
分決定に至
会決定)に要した時間は適切か。
る期間
「加害者」の 「加害者教育」を行うシステムを設けている
再発防止
か。
63
され、適切に機能していることが求められる。
※付属校を設置している大学の場合
学校毎に対応が異なったり、重複することは避ける必要がある。このた
め、全体を統括する独立した組織(委員会)を設置し、統一性のとれた取
組みを行うことが望ましい。
相談では、相談者へのアドバイスで自ら解決する場合もあるが、相手へ
の対処や措置を希望する申立(調整、調査)が行われる場合がある。調査
の申立てがされた場合調査委員会を設置し事実関係の公正な調査が必要
となる。いずれにせよハラスメントでは、相談者の意向を無視したり相
談を放置することは大学への信頼を失墜させる事につながる。
対象者(相談者)が相談しやすい体制が取られていないと実効性がない。
また、体制の不十分さが問題として指摘される可能性がある。
懲戒手続にいたずらに時間を要することは、社会的信用と被害者感情に
悪影響を及ぼす。
加害者を懲戒解雇にできない場合復職することになる。再犯防止のため、
加害者に対する人権教育等を実施するスシテムが必要となる。
啓発・広報
活動
「加害者教育」の実施評価を行い、改善が図ら
れているか。
「被害者」へ 被害者への説明責任を果たす手順が明確にさ
の対応
れているか。
被害者へのアフターケアとして、メンタル・フ
ィジカルの両面から対応できる仕組みが設け
られているか。
公表および
懲戒処分を決定した場合、公表か非公表かを決
その基準/不 めているか。
祥事後のマ
公表を原則とする場合、概ね次のような公表の
スコミ対応
基準が定められ、構成員に対して公表されてい
るか。
目的/対象/公表内容/例外(被害者の意思の尊
重)/公表の時期・方法/処分基準など
概ね次の事項を定めたマスコミ発表のマニュ
アルが整備されているか。
迅速な記者発表、正確なプレスリリース、対応者、
対応部署など
マスコミ対応の一元化(問合せての対応など)
が明確になっているか。
訴訟対応
加害者もしくは被害者から訴訟が提起される
ことを想定し、対策(担当部署、担当弁護士な
ど)が準備できているか。
研修
研修は、実施が必要とされる者にもれなく実施
されているか。
<教員>専任教員(任期制含む)、有期雇用教員、新
任の学部・全学役職者、新任教員など
<職員>専任職員、有期雇用職員、新任の職員職制、
新任職員など
<学生>大学院生など
<その他>ポスドクなど
ハラスメントに対する知識と相談力量の強化)
を目的としたハラスメント相談員・事務局に対
する研修が定期的に実施されているか。
啓発・広報活 HP、冊子(ガイドブックや手引き)、ポスター、
動
講演会等による多様な広報活動が継続的に実
64
大学が被害者に対する説明責任がある。
アフターケアは、特に被害者が学生の場合、学業を継続する上で極めて
重要な要素である。
公表せずに事件が明るみに出ると、隠蔽したととられ、社会的信用を著
しく失墜させかねない。従って、原則、公表すべきであるが、公表基準
が定められていないと
場当たり的となり、そのことが社会的批判を受ける可能性がある。
不祥事発生後のマスコミ対応のまずさにより、組織の社会的信用が著し
く失墜した例は枚挙にいとまがない。
ハラスメントでは、処分をめぐる双方からの訴訟リクスに備えておく必
要がある。
ハラスメント防止に最も必要なことは、ハラスメントが人権問題である
ことを理解させることにある。このため、必要な研修(=教育)が必要とさ
れる者にもれなく実施されることが必要になる。
また、相談員等のスキルの向上は、相談~解決を適切
に行うために不可欠である。
ハラスメント防止のための研修には人的・時間的・費用的制約があるた
め、広報物による啓発活動も重要である。広報活動の実施はもちろん、
施されているか。
その他
事務局の整
備(職員、執
務室)
環境整備
広報媒体は、国際化に対応し外国人教員や留学
生向けに多言語で作成されているか。
HP アクセス数、アンケート調査等により、規
程・ガイドライン・防止委員会の活動等の評価
が行われ、それにもとづく改善が実施されてい
るか。
専任(常勤)職員による事務局体制が整備され
ているか。
個人情報保護、守秘義務との係わりから、事務
局の執務室は独立しているか。
教員研究室がハラスメントを生じさせにくい
構造となっているか。(入口ドアに透明ガラス
のスリットを入れるなど)
65
実効性あるものになっていること(多様な媒体、構成員が常時閲覧できる
こと、随時の改善、多言語化など)が必要といえる。
ハラスメント防止に恒常的に取組むためには、事務局に専任職員(+有期
雇用の専門家・事務補助等)を配置することが適切である。
また、事務局業務に係わる秘密情報の漏洩を防ぐ環境整備も必要である。
ハラスメント発生率の高い教員研究室を、ハード面から見直す方法も検
討に値する。
「広報」監査に関する留意事項
広報活動は、大学が教育研究という社会的公共的使命を果たすうえで、必須の活動であり、重要な要素といえる。近年、情報は氾濫状態にあり、そ
のツールも非常に多様化しており、情報発信について時期・方法を選んで、適切に実施していくことは、重要度を増していると言える。またこうした
媒体を使ったコミュニケーションに偏りすぎることなく、直接的なコミュニケーションを組み合わせていくことも、広報活動の質を高めるうえで重要
といえる。監査の項目として、以下の点が取り組まれているかが、さしあたり基本となる。
趣旨(留意事項の狙い)
分類
項目
留意事項
広報業務
学外
マスコミを通じた情報発信ができているか。
定期的な報道機関への情報提供と、日常的に良
好な関係を築くコミュニケーションを重視して
おく。
マスコミの特性、求めを適切にとらえ、それぞ
れに必要な情報を工夫して提供する。雑誌や専
門誌、Web サイトなどあらゆるメディアに目を配
り、いわゆる大手マスコミだけに偏らない情報
発信を行う。
ネガティブ情報についても適切なタイミングで
自発的に公表し、大学としての取り組み姿勢を
示す。
直接的な情報発信がされているか。
ホームページの作成、広報誌の編集など、大学
情報を適切にわかりやすく、社会的に情報発信
していく。大学が発信したい情報ではなく、受
け手が求める情報が何かという点に留意するこ
とが重要である。
今日ではソーシャルメディアの活用が一般化し
ており、学生や社会のニーズ、メディアに対す
る意識を踏まえて、適切な形態をとるようにす
る。
学内外
学生情報、研究情報の提供がされているか。
大学の使命は教育研究活動であり、それらの特
徴的な中身を発信することを基本に据えること
が重要である。
学生情報、研究情報が集積できる仕組みを学内
に構築し、それを一元的に管理しそのうえでそ
の現場と協力して情報発信する。
大学の基本情報がデータベース化されているか。
大学の基本となる情報について、その公式情報
の管理を行う。学生数、大学史、財務資料、教
員データベースなどについて、管理責任を果た
す。
66
学内
インナーコミュニケーションが図られているか。
67
情報更新のタイミングを重視し、できるだけ新
しいデータを常に提供できるよう整備の体制を
学内に確保する。
学内報、イントラネットなど様々な媒体を通じ
て、学内の情報を共有をはかり、大学のおかれ
ている位置や役割を自覚できる取り組みを行
う。
これらの媒体にとどまらず総務・人事セクショ
ンとも連携して学内コミュニケーション(教職
員間、役員と教職員など多様な関係を含む)の
促進に寄与する取り組みを行う。
「利益相反」監査に関する留意事項
理事および教職員が、自己または第三者のために、法人の事業に属する取引において、法人との利益が相反する(可能性がある場合を含む)行為(教
職員が得る利益と教職員として保持すべき大学の社会的信頼が両立しない状況)を未然に防止し、社会的信頼を高め健全な産学官連携活動の推進に寄
与することを目的とする。
利益相反の制度構築に際しては、法人(大学)における産学官連携活動の位置づけが前提となる。産学官連携活動を積極的に推進する法人では、兼
職、ベンチャー企業育成、共同研究、受託研究、技術移転等に多様な責務と利害関係が生じるため、制度構築、活動に関わる監査も必要である。
趣旨(留意事項の狙い)
分類
項目
留意事項
全般
理事の利益相反
私立学校法第40条4が認識され、遵守されているか。 「学校法人と理事との利益が相反する事項につ
①理事(長)等と法人間で個別の売買契約がなされてい いては、理事は代理権を有しない。この場合に
ないか。
おいて所轄庁は、利害関係人の請求により又は
②採用権限を有する理事が、親族を「優先して」雇用し 職権で特別代理人を選任しなければならない。
」
ていないか。
法人と理事個人の取引は注意が必要である。
規程等の整備
講習会等
調査等
教職員
兼業(兼職)等
利益相反に関わる体制・規程等が整備され、周知されて 主管部署・審議組織、業務活動計画、情報公開・
いるか。
守秘基準等利益相反の取り扱い事項を定めて健
全な活動に努めなければならない。
講習会等が行われているか。
研修会の実施、ガイドライン・パンフレット・
HP 作成等による情報公開を通じて、利益相反発
生を予防する。
自己申告、アンケート調査が実施されているか。
株保有、ロイヤリティ収入、共同研究先等の調
査の他、困っている事項等問題点を把握し対処
方法を定める。
企業役員等の兼務(登録)をしていないか。
特定企業に利益誘導する場合もあり、法務局で
の確認も必要である。
兼業時間配分、共同研究、技術移転、研究成果の帰属の 学外活動(産学連携)と教職員としての責務・
基準が定められているか。
利害の両立を調整するための基準の明確化が必
要である。
株の大量保有等により産学官活動が特定の企業に偏って 個人的利益のある企業等との契約・特許の有無、
いないか。
外部資金を受けている企業等の株取得には開示
を念頭に注意を要する。
共同研究相手企業に優先的に各種許認可、契約等を行っ 役員等として兼業しているベンチャー企業に研
ていないか。
究費の流用、機材の無
断貸し出し等をしていないか注意を要する。
68
兼職先業務を優先して、大学の研究、教育に影響を与え 教育研究と学外活動の遂行責任のバランスが崩
ていないか。
れると本末転倒になりかねない。兼業報酬と兼
業時間の申請を求めるシステムの構築が必要で
ある。
TLO
大学発ベンチャー
法人研究費、法人施設・機材、学生等の流用がされてい ベンチャー企業の職務を優先して大学での教
ないか。
育・研究時間を犠牲にすることのないようにし
ベンチャー企業での業務(研究等)を優先していないか。 なければならない。そのため、役員等として兼
業しているベンチャー企業に研究費の流用、機
研究内容をベンチャー企業のニーズに合わせていない 材の無断貸し出し等をしていないか等に留意す
か。
る必要がある。
ベンチャー企業の特許取得を優先し学会発表時期を操作
していないか。
対象教員(研究者)
対象企業(関与するベンチャー企業服務)の株を保有し
ているか。取得方法は適切か。
大学研究室での研究成果を関係企業に正当な理由なく優
先的に技術移転してないか。
寄付および研究費を受けた企業の技術評価を
していないか。
雇用者の出身母体が特定の企業(集団)に偏っていない
か。
親族を含め関係企業の株式を大量に保有等していない
か。
TLO 職員は、当該教員の意向のみに従って技術移転してい
ないか。
広報等を理由に自著本を法人経費で優先的に
購入して(させて)いないか。
TLO 職員(従事者)
その他
自著本
69
特定企業の株保有、特定の教員の意向に従って
技術移転することにより、個人的利益を得るこ
とのないように注意する。
特許の実施許諾に関連して、株式保有、奨学金、
寄付金の受領、兼業等の有無を確認して個人的
な利害関係がある場合には、その旨を開示する
等の処置が必要となる。
広報理由の他、本来個人購入すべき教科書等を法人経費で
購入して配布
することも戒めなければならない。
「倫理」監査に関する留意事項
教育研究機関として法令等を遵守するほか、USRや研究倫理等の全般的な大学の倫理に関する、行動規範の啓発活動を展開し、大学構成員に周知・
徹底しなければならない。特に研究については、構成員に対し、大学としての学術研究倫理ガイドラインを周知・徹底させなければならない。また、
大学のグローバル化の進展に伴う、新たな課題として、安全保障輸出管理に関する適切なリスクマネジメントが求められてくる。
分類
項目
留意事項
趣旨(留意事項の狙い)
倫理
USR(大学の社会的責任) 構成員に対し、日常的な法令遵守やUSR等の啓発活動 法令遵守やUSRに関し、大学構成員に対する
を行う部署が定められ、大学としての倫理の周知・徹底 日常的な啓発活動を行うことが、社会的信用を
が図られているか。
維持するためのリスクマネジメントとして、ス
構成員に対し、定期的にセミナーやパンフレット等によ テークホルダーから求められている。
る啓発活動が行われているか。
研究倫理
学術研究倫理に関するガイドラインが策定され、構成員 大学研究者の研究遂行には、高い倫理観が求め
に対し日常的な啓発活動を行う部署が定められ、研究倫 られる。
理の周知・徹底が図られているか。
論文の剽窃や盗用、データの改竄等が発覚した
研究費等の外部資金の受入・執行等を、検証するシステ 場合には、当該研究者のみならず、大学も強い
社会的批判を浴び、社会的信頼の失墜を招くこ
ムが構築されているか。
研究データ・資料等を適切に管理するシステムが構築さ とになる。
ステークホルダーの期待にこたえ、社会的信用
れているか。
を維持するため、研究倫理に関する適切なリス
研究論文の剽窃等に対する検証システムが構築されてい クマネジメントが求められている。
るか。
安全保障輸出管理
学長が安全保障輸出管理の重要性を十分理解し、その認
識の上に立ってリーダーシップを発揮する態勢ができて
いるか。
安全保障輸出管理を管轄する部署が、技術、貨物、留学
生毎に定められ、それらを統括する組織のもとで学内に
標準的な対応策が提起されているか。
①法令・官庁・産業界・他大学等の動向が日常的に把握
され、安全保障輸出管理に関する知識等が、構成員に対
し積極的に周知されているか。
②安全保障輸出管理に関する規程・パンフレットの作成、
研修・セミナー等が定期的に行われているか。
70
グローバル化の進展に伴い、安全保障輸出管理
に関する適切なリスクマネジメントが、今後一
層求められる。
安全保障輸出管理に関する規程等を制定するほ
か、教職員に対し、パンフレットやセミナー等
で定期的に啓発活動等を行うことが、法令の遵
守(違法行為の防止)と社会的信用の維持・向上
のために求められる。
安全保障輸出管理に関する課題を整理し、管理業務の評
価や監査等を行うシステム及び体制が構築されている
か。
71
「秘密情報の管理」監査に関する留意事項
健全な経営管理の礎を万全にするために、秘匿が必要とされる情報の保護が法人の意図に基づき適切に管理されているか確認して、内外からの信頼
を確固たるものにすることを目的とする。秘密情報が漏えいした際には、法人のみならず、国や企業、個人に与える影響が大きいため、秘密として扱
う場合には、厳重な管理態勢を整えなければならない。そのためにも、秘密の指定は、最小限にすることが望ましい。秘密情報の管理と情報公開とは
常に表裏一体の側面があり留意が必要である。
趣旨(留意事項の狙い)
分類
項目
留意事項
全般
秘密情報の保護体制
法人として厳重に管理すべき「秘密とは何か」が明確に 法人として保護すべき秘密事項とは何か、秘密
定義されているか。
に相当するものがあるならば根拠に基づき、秘
密に相当するかを先ず確認する必要がある。秘
秘密情報を保有しているか。
密に相当するものには、法人の経営・運営への
秘密情報保護の規程が制定されているか。
影響のみならず国益(法律等)に係わる(最新
法人として、秘密として管理すべき事項が定められてい の研究情報等)もあるので特に注意が必要とな
るか。
る。
法人の秘密の程度は、明確に区分等されているか。
一般的には、経営に係わる将来構想、入試問題、
就業規則に守秘義務に関する規定があるか。
研究内容・施設(特許関連)の他、契約、人事
法人と教職員間で秘密保持に関する契約等が締結されて (個人情報含む)に係わることが想定される。
いるか。
秘密の区分としては、法人等に与える影響の度
秘密情報に関する法人方針(規程)が明確になっている 合いにより区分けすることが望ましい。秘密区
か。
分としては、極秘、秘密及び(取り扱い)注意
等がある。
法人と教職員間には、通常「守秘義務」は課せ
られているが、その他にも特別に個人と守秘契
約を締結する場合もあり得る。
何を秘密等に指定するかについての方針を明確
にして、秘密に相当する事項を最小限に抑える
ことが望ましい。
理事会等資料を適切に管理できる体制が構築されている 秘密に相当すると認められた審議資料等の管理
か。
体制は、事務担当部門に指示して、回収要領、
配布先等を適切に管理、指導しなければならな
い。
教員
特許等秘密を要する研究に対する研究助成金の受け入れ 特に若手教員に対する研究管理意識向上を図る
先(企業等)の審査はなされているか。(特に対共産圏) ためには、助成金の受け入れや研究内容の管理
体制に係わる教育が行われることが望ましい。
入試問題作成上の管理体制は適切か。
問題作成者、作成時期等において秘匿できる環
研究に係わる秘密情報保護の意識向上のための教育が行 境、体制を整えなければならない。
われているか。
72
秘密の保護
体制
事務職員
法人系(経営管理、運用)及び大学系(教育・研究)の
事務管理における秘密情報保護意識の涵養は図られてい
るか。
秘密情報保護講習が行われているか。
秘密情報保護講習を定期的に行うことにより、
管理意識を高める必要がある。
区分
秘密の区分及び種類は明確にされているか。
秘密の区分は、それが漏えいした場合にどのよ
うな影響があるかにより、管理程度を極秘、秘
密等の管理区分に区分けする。種類としては、
文書類(電子媒体、契約書等を含む)、図画、
物件がある。
登録及び廃棄要領並びにその権限者、保管期
限・配布先及び受領確認等に関する規程を整備
する必要がある。
秘密に係わる事務管理は、相応な職員に取り扱
わせる必要がある。そのためには取扱者を定め
ておく必要がある。関係する職員の範囲は最小
限としなければならない。更に、秘密の程度(重
要度)によって指定される取扱者は異なること
にも配慮することが望ましい。
登録簿には、文書等番号、秘密の程度、当該秘
密管理担当部署名、秘密指定日、作成部数、配
付先、秘密とする期間(解除日)等を記録して
おかなければならない。
保管庫は、鍵の他ダイヤル等二重管理できる容
器が適当である。
担当者異動の際は、ダイヤル番号等を変更して
おかなければならない。
必ず、誰にいつ配付したかは、登録簿又は送達
簿等により必ず記録しておかなければならな
い。
秘密に相当する物の製作等を外部機関等に依頼
する場合には、契約書に秘密に相当するもので
あり、漏えいによる影響が大きいことを明示し、
厳重な管理を要することの他、要すれば漏えい
時の罰則等を契約条項に加える必要がある。
秘密文書等の開封は、必ず取扱者として指定さ
秘密情報保護を担当する関係職員が定められているか。
登録
秘密として権限者から指定されているか。
秘密文書、物件等の登録簿が作成されているか。
保管
鍵のかかる容器(金庫等)に保管されているか。
保管容器の鍵の管理者が定められ、その管理が適切にお
こなわれているか。
配付・送付
配付先が記録されているか。
秘密に相当する文書を送付する際の送付要領が定められ
ているか。
秘密文書等の開封は、指定された者が行っているか。
73
製作・複製
特許等に係わる物件の製作依頼を行う場合には、製作を
行う会社等の信頼度等を確認しているか。
やむなく持ち出しまたは複製する場合には、権限の
ある人の許可を得ているか。
点検・引継ぎ
定期的に秘密文書の保管状況を点検しているか。
秘密情報保護担当者が異動する際、引き継ぎが行われ、
その記録がされているか。
廃棄
紛失時の措置
れた者が行い、他の者はそれに携わってはいけ
ない。
秘密に相当する物の製作等を外部機関等に依頼
する場合には、契約書に秘密に管理するもので
あるとの1項を加えて、守秘義務を課すること
が必要である。
秘密に相当する文書を郵便で送付する必要があ
る場合には、書留等郵便法によって保護される
輸送方法をとらなければならない。同時に受領
者から受領した旨の通知を受け取るようように
しなければならない。
秘密文書等の保管管理の定期的点検は、亡失時
期を特定する場合にも役立つ。
秘密を扱う担当者が移動する際には、十分な引
継ぎ・点検を行うとともに、異動後、当該秘密
に従事しない場合には一切関与できない体制を
整えなければならない。
廃棄期限等により不要となった文書、物件を廃
棄する場合には、その管理責任者の許可を得な
ければならない。
廃棄することなく公表または管理条件を変更す
る場合も同様である。
秘密文書等の廃棄処分は、許可を得た上で行われている
か。
不要となった秘密文書等は、確実に裁断機等により処分
(焼却等)されているか。裁断することなく溶解ゴミと
して廃棄されていないか。
不要となった秘密文書等の件名を配付先に通知して、破
棄手続きをとるように通知しているか。または、文書作
成元(権限者)に返却(回収)するように指示されてい
るか。
紛失等に気がついた時は、直ちに報告が行われているか。 紛失に気がついた場合には、直ちに紛失発生し
たと思われる日時、保管場所、関係者名、紛失
紛失等による影響に鑑み、速やかに必要な措置、対策等 による法人等への影響、処置した事項等につい
が講じられているか。
て理事会等の関係部署に報告・通報しなければ
当該法人又は該当部署以外に影響があると判断した場合 ならない。
には、その旨を関係機関、部署等に速やかに通知されて 理事長または学長は、法人外に影響を及ぼす可
いるか。
能性のある事項については、速やかにその関係
先に報告・通知する必要がある。
74
「危機管理」監査に関する留意事項
大学が抱える危機の範囲は、経営から教学の面まで幅広く、社会で起こることはすべて影響するといっても過言ではない。
また、そのほかに、大学種別、規模、設置形態、経営状況や立地環境などの違いによる固有の危機も存在する。したがって、すべての危機に対して
準備をし、一律的に管理をすることは困難である。このため、ここで取り扱う危機管理の監査については、リスク度の高いものについて優先的に備え
るべきものを捉え、留意すべき点について考えていきたい。
趣旨(留意事項の狙い)
分類
項目
留意事項
危機管理監 経営上の危機管理
[ガバナンス体制について]
経営上の危機の予防については、適正なガバナ
査
①理事会の開催は適正になされているか。
ンス体制のもと将来を見据えた計画の履行が重
②将来政策が明確か。
要な対策となるため、その検証が求められる。
③中長期計画が策定されているか。
中長期的経営計画という柱があり、現状を見据
④経営政策の見直しが常になされているか。
えた上で、常に見直しをする体制が必要で、そ
⑤資金運用の手続きは規程のとおりか。
れがなければ行き当たりばったりの経営となり
⑥不明な予算執行手続きはないか。
将来は危うくなる。そのため、その態勢が希薄
⑦監事は理事会等に出席し意見を述べているか。
にならないように監視することが必要となる。
そのための手段として監事がいかに機能するか
が重要であり、理事会等において役員にどのよ
うにアドバイスや提言ができるかがポイントで
あろう。
(監事が有効的に機能するためには内部監査が
連携できるシステムが求められるのではない
か)
[内部統制について]
経営方針や学事の方針を教職員がどの様に理解
①建学の精神を教職員が理解しているか。
し、意識の共有を図っているのかが、危機に際
②学内構成員に中長期計画等の重点政策が説明されてい しての有効な防御策と考えられるため、その実
るか。
態を検証することが求められる。
③予決算の状況が教職員に説明されているか。
[不正不祥事について]
不正不祥事については、報道対応の失敗から企
①理事会直下の弁護士を含めた委員会等の体制
業の存続問題にまでに発展したケースがあり、
②調査体制がさだめられているか。
教訓として早期に逐一報道関係者に発表する体
③報道関係や外部からの問い合わせに対する広報担当者 制が望まれる。
は決められているか。
研究費や研究不正のように所轄庁から説明を求
④ステークホルダーに対する公表体制が定められている められる場合、その原因の追求から起きた理由
か。
背景などの説明が必要となる。特に懲戒や業者
の処分といった問題も含むため、慎重を期すた
めその調査体制は欠かせない。処分、結果の公
表、再発防止策、啓発行為など一連の流れを行
75
教育研究上の危機管理
[建学の理念]
建学の精神を学生・父母にどう周知しているか。
①教育研究の質の確保。
②外部評価を受けているか。
③評価の結果は公表されているか。
④授業評価を行っているか。その結果を公表し改善して
いるか。
⑤研究評価を行う体制が設けられているか。
[施設面での安全管理]
教室・実験室等教育現場での安全管理対策が構築されて
いるか。
火災・災害等における緊急時の対応がさだめられている
か。
76
うシステムが必要である。
また、誤解を生じないよう公表担当窓口の一本
化の体制が必要となる。
情報の隠蔽は誤解や不信以外何ものも生まな
い。調査結果など原則公表の体制にあるかが危
機管理対策の第一歩である。
建学の精神については、大学が学生をどう育て
どう輩出するか大学の基本理念であるため、そ
の意味をどのように伝え具体的にカリキュラム
にどう反映させているかが教学監査上の重要な
視点となる。
大学基準協会など積極的に外部評価を受けるこ
とにより客観的評価が分かる。
教育の質向上のためには、学生の学習意欲に応
え喚起させる体制が必要。そのため、授業評価
を行い教育上の改善を促す取り組みを定期的に
行うことが求められる。研究の評価では、教員
の論文業績など客観的に評価する体制を作るこ
とが必要。授業評価や研究評価などを行い評価
の高い教員を表彰するなど教員の価値を検証す
るシステムが必要。
科研費をはじめとする競争的資金の使途につい
ては厳正さが求められるため、研究費の不正執
行や論文盗用捏造などの研究不正に対応できる
検証システムも必要となってくる。
実験中の事故、劇薬毒物の紛失など学校を取り
巻く、安全管理上の問題は枚挙にいとまがない。
教室実験室での実験器具や薬品の使用を安全に
取り扱うことは大学の責務である。学生の生命
を安全に守るための法令や規程など遵守すべき
事項がどのように履行されているか確認が求め
られる。
火災・災害等緊急時の対応については、防火防
災訓練避難訓練救命訓練など日常の訓練が必
要。規程やマニュアルを全ての教員が見ている
とは限らない。(ましてや非常勤教員は見る機
学生生活上の危機管理
ステークホルダーへの対
応
危機管理対策としての窓
口と対応
窓口相談の連携が図られているか。(初期対応の体制)
窓口は専門的な知識を有しているか。
学生生活における様々な問題
①履修上の問題
②精神衛生面での問題:メンタルケア対策
③課外活動での問題:いじめ・しごき・一気飲み
④寮生活の問題:5 月病・自殺
⑤ハラスメント問題:セクハラ・パワハラ・アカハラ・
アルハラ
⑥留学生のトラブル
⑦麻薬・違法ドラッグ
⑧宗教勧誘
⑨不登校・引きこもり
⑩父母からのクレームその他
[ステークホルダーへの説明責任]
①学生生徒納付金、後援会費、同窓会費、学会費など預
かり金の使途について、父母に説明がおこなわれている
か。
②寄付金について、寄付者に説明が行われているか。
③学生生徒等納付金の使途が公表できる体制が整えられ
ているか。
④その他不正不祥事について説明を行う体制が定められ
ているか。
火災や災害時の危機管理対策部署が定められているか。
77
会がないので、知らない)現場に携わるものの
日ごろの訓練が被害を最小にする。
学生生活の点では、学生の悩みを聞く窓口が鍵
となる。
学生の悩みの多くは心の問題であり、かつ複合
的であるため、その危険信号を察知することは
難しいが、最初の窓口での対応が適切であれば、
悩みを持った学生の初期治療に繋がり悪化を防
ぐことができる。
保健室や学生相談室など多様な窓口を有してい
ても学生部、教務部、就職部などの事務局の連
携がなければ、相談医などへの専門家への誘導
ができずに学生への本質的対応ができない。
専門的な知識経験を有した職員の配置や、必要
な研修の実施が望まれる。
父母から納付された授業料や預かり金などの使
途について、説明責任が求められるため、分か
りやすく説明を果たすことが必要。
教育研究経費比率や教育研究用機器あるいは図
書など学生へどのように還元しているか、その
使途を公表し、父母に対する説明責任の体制を
整えておくことが必要。
寄付者にはその寄附で購入した施設や設備物品
などどの様に使われているかも伝えることが必
要。
特に預かり金については、タブー視されてはい
るが、その使途の妥当性まで踏み込み、父母の
負担減少に繋げることも必要。
事業計画書や事業報告書その他予決算書の解説
についても、分かりやすく工夫することもが求
められる。
火災災害が発生した場合の体制整備の状況の確
認。
父母等からのクレームを受け付ける部署が設けられてい
るか。
アンケートを実施しているか。
違法行為や規程違反の通報窓口やコンプライアンス室が
設けられているか。
クレームアンケートに対し評価改善を促す組織体制が構
築されているか。
78
授業等教員に対するクレームや窓口の職員に対
するクレームなど学生アンケートや授業評価で
分かるものがあるが、どの様に分析評価し、改
善につなげるかが重要な要素。
通報窓口は、不正不祥事を再発防止に繋げるツ
ールである。これらを大学改善に活かすシステ
ムとして機能させることが求められる。
設置するだけで終わらないようにモニタリング
が求められる。
隠蔽は誤解や不信以外何ものも生まない。調査
結果など原則公表の体制にあるかが危機管理対
策の第一歩である。
学生・父母に対する公表も信頼をうるために重
要である。
「文書管理」監査に関する留意事項
文書管理は、組織運営においてその基本となる業務であり、法令や規程にもとづいて行われる必要がある。とりわけ国等からの補助を得て運営され
ている組織である以上、財政と同様、公共性や透明性を自覚して取り組む必要が、従来にも増して求められている。今日、「文書」は氾濫状態にあり、
その形態も非常に多様化している。またその存在も多様な場所にあることから、標準化や管理・保存の手法を定めておく必要がある。さらに、個人情
報保護に留意しつつも、情報公開を積極的に行う姿勢も求められていることから、これらについて、監査項目とその留意事項として整理した。
趣旨(留意事項の狙い)
分類
項目
留意事項
文書管理
標準化
文書に係わる諸規程(文書規程、稟議規程、個人情報保 法人として管理対象とする文書を、規程等で明
護規程、秘密文書に関する規程 など)が制定され、担当 確にする。それに沿って、各部課において管理
部署や管理対象とする文書の定義など文書管理に必要な 対象とする文書を明確にし、役職者はその管理
事項が適切に規定されているか。
責任を負う。
文書には紙だけではなく、電子文書なども含ま
れる。紙とデータが並存する場合の取り扱いに
ついてもその実情に合わせて明確にする。
文書管理のマニュアルや手引きなどが作成され、文書の 管理対象とする文書は、様々な形態に及ぶが、
標準化(大学内でのルール化)が図られているか。
一定のルール化を図ることにより、その後の利
用・活用において利便性が高まる。総務部門、
庶務部門など主管部署が全学にルールを提示
文書(公文書)の受付簿・発信簿の所定様式が定められ、 し、それに沿って各部課が取り組む。
各課で管理するもの、文書管理を専門に扱う部
適切に記録がされているか。
署において管理するものの区別などのルール化
をはかり、それらを可視化することにより客観
化する。
管理・保存
文書管理方法とその責任体制が明確になっているか。
管理すべき文書の保存方法について、具体的な
方策を定める。保存文書の劣化防止、複製の確
保(バックアップなどの喪失防止対策)なども
文書管理の責任者(文書取扱担当者)を選任しているか。 ルール化し、それに沿った管理を行う。
文書管理の責任者を定め、管理および利用につ
いてその責任を負うこととする。後述する公開
と業務上の利用について、管理者の判断が重要
になる。
保存のルールが策定され、適切に運用されているか。
79
文書規程において保存年限等についてルールを
保存管理文書目録が作成されているか。
情報公開
情報公開において、個人情報保護が尊重されるものとな
っているか。
情報公開の手続きが規程等において明確に定められてい
るか。
80
定め、年限を過ぎたものは処分・廃棄する。
ただし、大学史編纂室などに史資料として保管
することも考えられるので、その基準を明確に
する。
保存状態が適切に保たれるよう、環境整備(収
納場所、管理状態など)を行う。
個人情報保護の規程を踏まえて公開の範囲を明
確にし、それを社会的に公表しておき、適切に
情報公開に対応する。
情報公開を求められた場合の手続きを公表し、
外部からの依頼等に対しても基準をもって対応
する。
関係して、そもそも大学として積極的に公表し
ておくべき事項に関しては、広報活動、社会的
な説明責任を果たす姿勢という観点から、積極
的に公表する。
「防災体制」監査に関する留意事項
防災管理に関して大学は消防法により防災管理者を定め消防計画の作成、それに基づく避難訓練の実施その他防災管理のためのさまざまな要件を義
務付けられている。したがって監査では、大学が防災に関わる消防法の法律や施行令、施行規則それに付随した自治体の条例など課せられた必要条件
をどの程度担保しているのか、大学の規程にどのように関連付けたかその整合性、有効性を検証するとともに避難防災訓練において実際に使用するマ
ニュアル等の実効性を検証していくことも求められる。
趣旨(留意事項の狙い)
分類
項目
留意事項
管理権原者 管理権原者
大学の建物の防災管理上の責任者である管理権原者が明 管理権原者は一般的には所有者を表し大学では
確になっているか。
学校法人では理事長、国大法人では学長となる。
管理権限者 防災管理をすべき防災管
管理権原者が防災管理をすべき防災管理対象物が明確に 消防法施行令別表第1(1)項から(4)項ま
の業務と権 理対象物
なっているか。
で、(5)項イ、(6)項から(12)項まで、
限
(13)項イ、(15)項及び(17)項に掲
げる防火対象物(学校は(7)項に該当)で次
の①から③のいずれかに該当するものが防災管
理対象物となる
① 地階を除く階数が11以上の防火対象物で、
延べ床面積が1万㎡以上のもの
② 地階を除く階数が5以上10以下の防火対
象物で、延べ床面積が2万㎡以上のもの
③ 地階を除く階数が4以下の防火対象物で、延
べ床面積が5万㎡以上のもの
共同防災管理
共同防災の対象となる防災管理対象物の確認がされてい
るか。ある場合共同防災管理の協議会を設置し、協議事
項が定められているか。
81
多くの大学は管理権原者が理事長あるいは学長
の一人になるため、同一敷地内にある建物の延
べ床面積の合算値が基本となる。したがって、
③の4階以下の建物の述べ床面積の合計が5万
㎡以上の適用基準により防災管理の適用可否が
判断される。このほか、近年高層の建物を有す
る大学もあるため、①あるいは②の適用基準に
留意することが必要。
防災管理の適用がなく防火管理の適用だけだと
しても防災管理の自主的対応は大学の社会的責
任として免れないものと考える。
高層建築物(31 メートルを超える建築物)や地
下街で複数のテナントが入り管理権原が分かれ
ている防火対象物については、各権原者は消防
計画の作成その他の防火管理上必要な業務に関
防災管理者の選任と業務
の負託
防災管理者は、政令その他総務省令等で定める有資格者
の中から選任されているか。
管理権原者は防災管理者に対して防災管理上の必要な業
務を負わせているか。また、防火管理者の行うべき防火
管理上必要な業務を行わせているか。
防災管理者の届出状況
防災管理を
要する災害
防災管理を要する災害
防災管理者
防災管理者の責務
防災管理者の位置付け
管理権原者は防災管理者を定めたとき、又は解任したと
きは所轄消防庁又は消防署長に届けているか。
火災以外の災害で政令に定めるもの
一 地震
二 ※毒性物質の発散その他総務省令で定める原因によ
り生ずる特殊な災害
職務の遂行にあたり必要に応じて管理権原者の指示を求
める体制になっているか。
防災管理者の業務と権限は組織上規定されているか。
82
する事項で総務省令で定めるものを、協議して
定めておかなければならない。
防災管理に係る消防計画に定めること
1 自衛消防組織に関する協議会の設置及び運
営に関すること
2 自衛消防組織の統括管理者の選任に関する
こと
3 自衛消防組織が業務を行う防火対象物の範
囲に関すること
4 その他自衛消防組織の運営に関し必要な事
項
消防法施行規則第51条の10関係
防災管理上、必要な業務を遂行できる管理的又
は監督的地位にあるもの・必要な知識技能を有
するもの消防法施行令 47 条(消防法 36 条にて
準用する法第 8 条)
管理権原者は防災管理者を定め防災管理上の必
要な業務を負わせなければならない。消防法第
36 条準用第 8 条関係、消防法施行令第 47 条関係
防火管理者の行うべき防火管理上必要な業務も
行わせなければならない。(選任手続きは別途
必要)消防法 36 条 2 項関係
消防法施行規則第 4 条関係
※(NBCR 災害)N:核 B:生物 C:化学 R:放射能
令第 48 条第 1 項
消防計画による防災管理の業務については、防
災管理者がすべての権限を持つため組織上規定
されていることが必要
防災管理
「管理について権原を有する者は、火災その他
の災害の被害の軽減に関する知識を有する者で
防災管理者
の業務と権
限
消防計画の作成
①防災管理者は防災管理対象物について消防計画を作成
しているか。
83
政令で定める資格を有する者のうちから防災管
理者を定め、当該防火管理対象物について消防
計画の作成、当該消防計画に基づく避難の訓練
の実施その他防災管理上必要な業務を行わせな
ければならない」(消防法第三六条による消防
法第八条の読み替え)
他に各市町村の火災予防条例や予防規則等につ
いて遵守すべき業務の把握が必要になってく
る。
防災管理者は防災管理対象物について消防計画
を作成し、定期的に避難訓練を実施する義務が
ある。(消防法施行令第 48 条第 2 項関係)
消防法施行規則第51条8
(防災管理に関する消防計画)
1防災管理に関する基本的な事項として次に掲
げる事項
イ 自衛消防の組織に関すること。
ロ 避難通路、避難口その他の避難施設の維持
管理及びその案内に関すること。
ハ 定員の遵守その他収容人員の適正化に関す
ること。
ニ 防災管理上必要な教育に関すること。
ホ 避難の訓練その他防災上管理上必要な訓練
の実施に関すること。
ヘ 防災管理についての関係機関との連絡に関
すること。
ト ホに掲げる訓練の結果を踏まえた防災管理
に係る消防計画の内容の検証及び当該検証の結
果に基づく当該消防計画の見直しに関するこ
と。
チ イからトまでに掲げるもののほか、建築物
その他の工作物における防災管理に関し必要な
事項
二地震による被害の軽減に関する事項
イ 地震発生時における建築物その他の工作物
及び建築物その他の工作物に存する者等の被
②防災管理上必要な業務の一部を外部委託している場
合、業務の範囲及び方法が定められているか。
消防計画の届出
防災管理者は、管理権原者の指示をもって、防災管理に
かかる消防計画を所轄消防長又は消防署長に届け出てい
るか。
84
害の想定並びに当該想定される被害に対する
対策に関すること
ロ 建築物その他の工作物についての自信によ
る被害の軽減のための自主検査に関するこ
と。
ハ 地震による被害の軽減のために必要な設備
及び資機材の点検並びに整備に関すること。
ニ 地震発生時における家具、じゅう器その他
の建築物その他の工作物に備え付けられた物
品の落下、転倒及び移動の防止のための措置
に関すること。
ホ 地震発生時における通報連絡、避難誘導、
救出、救護その他の地震による被害の軽減のた
めの応急措置に関すること。
ヘ イからホまでに掲げるもののほか、建築物
その他の工作物における地震による被害の軽減
に関し必要な事項。
三 令四十五条第二号に掲げる災害による被害
の軽減に関する事項として次に掲げる事項(特
殊な災害 NBCR 災害)
イ 令四十五条第二号に掲げる災害発生時にお
ける通報連絡及び避難誘導に関すること
ロ イに掲げるもののほか、建築物その他の工
作物における令四十五条第二号に掲げる災害に
よる被害の軽減に関し必要な事項
当該対象物の関係者及び関係者に雇用されてい
る者以外のものに委託されている防火対象物に
あっては、防災管理者は防火管理上の受託者の
氏名及び住所並びに当該受託者の行う防災管理
上必要な業務の範囲及び方法を定めなければな
らない。消防法施行規則第 3 条第 2 項関係、同
規則 51 条の8第 2 項関係
規則第 51 条の 9(法第 8 条第 2 項準用)
消防計画の変更の際も届け出ているか。
計画に基づく訓練と実施
防災管理に係る消防計画に基づく避難訓練が定期的に実
施されているか。
令第 48 条第 2 項関係
訓練が年一回以上実施されているか。
規則第 51 条の 8 第 3 項関係
規則第 51 条の 8 第 4 項関係(規則第 3 条 11 項
準用)
計画通りに行われない場合消防長又は消防署長
により必要な措置を講ずるよう命ぜられる。
組織上の防災管理体制が規程上、どこまで整備
され、構成員に周知されているかが重要な点で
ある。
近年、高い建物などを有し人口が密集する都市
部の大学は、避難訓練の実施に際し、学生生徒、
教職員、消防署、自治体や近隣住民等あらゆる
連携体制が必要で、大掛かりになり、その実施
は困難を極めるが、人口が密集するが故に、定
期的に実態に即した訓練の実施や日頃の防災教
育こそが被害を最小限に留める手
段であり欠かせないものと考える。
防火対象物のうち多数のものが出入りしかつ、
大規模な防火対象物については当該防火対象物
に自衛消防組織をおくこと(消防法第 8 条の2
の5第1項関係、消防法施行令第 4 条の2の5
関係)
消防法第 8 条の2の5第2項関係
自衛消防組織が置かれていない場合、消防長又
は消防署長により管理権原者に自衛消防組織を
置くように命ぜられる(消防法第 8 条の2の5
第3項関係)
自衛消防組織の設置対象となる防火対象物につ
いて管理権限が複数分かれるものについては共
同して自衛消防組織を置くこととなっている
(消防法施行令第4条2の5第2項関係)
定めるべき事項(消防法施行規則第50条の1
0第1項関係)
訓練の実施にあたっては消防機関へ通報しているか。
組織規程や事務分掌等により防災管理体制の整備がなさ
れているか。
避難の方法など行動マニュアル等による周知徹底や防災
教育が行われているか。
自衛消防組
織
自衛消防組織の設置と届
出
①管理権原者は防火対象物に自衛消防組織を置いている
か。
②自衛消防組織を置いたとき又は変更したときは、遅滞
なく自衛消防組織の要員の現況その他総務省令に定める
事項を所轄消防長または消防署長に届けているか。
自衛消防組織の業務・要員 ①防災管理者が定めるべき自衛消防組織の業務について
の基準
定められているか。
85
②自衛消防組織に統括管理者が定められているか。
③統括管理者が資格要件を備えているか。
④同じく消防要員が定められているか。
防災管理点
検報告制度
防災管理点検資格者によ
る防災管理対象物の点検
と報告
①防災管理対象物の点検が1年に一回実施されている
か。
②その結果が「防災管理対象物点検結果報告書」として
消防機関に報告されているか。
③点検を行った結果が防災管理維持台帳に記録され保存
されているか。
④点検は防災管理点検資格者により行われているか。
防災管理点検の点検基準
点検基準は総務省令に基づいているか。
86
① 関係機関への通報、在館者が避難する際の誘
導その他の火災以外の災害の被害の軽減の
ために必要な業務として自衛消防組織が行
う業務に係る活動要領に関すること
② 自衛消防組織の要員に対する教育及び訓練
③ その他自衛消防組織の業務に必要な事項
自衛消防組織には統括管理者を置かなければな
らない
統括管理者には資格要件がある
自衛消防組織には業務ごとに自衛消防要員を置
かなければならない
消防法施行令第 4 条の2の8関係
防火対象物について管理権限が分かれるものに
ついて
・ 自衛消防組織に関する協議会の設置及び運
営に関すること
・ 自衛消防組織の統括管理の選任に関するこ
と
・ 自衛消防組織が業務を行う防火対象物の範
囲に関すること
・ その他自衛消防組織の運営に関し必要な事
項
消防法施行規則第50条の10第 2 項関係
点検は、防災管理点検資格者が 1 年に 1 回行い
結果について消防機関に報告しなければならな
い
消防施行規則第 51 条の12第2項関係
(消防法第 36 条準用消防法第 8 条2の2第 1 項
関係)
消防施行規則第 51 条の12第1項関係
消防施行規則第 51 条の12第 3 項関係
消防法施行規則第51条の14関係
1 防災管理に係る消防計画、防災管理者の選
任(解任)の届出がなされていること。
2 自衛消防組織の設置(変更)の届け出がな
防災管理点検の表示等
防災管理点検の表示、防災管理点検の認定表示を受けて
いるか。
防災管理特例認定
防災管理特例認定を受けることができるか。
87
されていること
3 防災管理に係る消防計画に基づき、消防庁
長官が定める事項が適切に行われていること
4 建築物その他の工作物でその管理について
権原が分かれているものにあっては、消防庁長
官が定める事項が適切に行われていること
防災管理点検については一定の要件を満たして
いれば防火対象物点検報告制度に準じて適用さ
れる消防施行規則第 51 条の 15 関係
防災管理対象物の管理権原者が消防長又は消防
署長に申請することにより認定が受けられる。
適合基準
管理権原者が当該対象物の管理を開始してか
ら、3 年以上経過していること。
過去 3 年において、消防法令等に違反したこと
により命令を受けたことがなく、また受けるべ
き事由がないこと。
過去 3 年において、防災管理の特例認定取り消
しを受けたことがないこと。
過去 3 年において、点検報告未実施・未報告、基
準不適合がないこと
検査の結果、特例認定の基準(防災管理の点検
基準)に適合していること。
特例認定を受けることにより、3 年間の点検報告
の義務が免除される。
(施行規則第51条の16第1項、法第8条2
の3第2項準用関係)
「防火体制」監査に関する留意事項
防火管理に関して大学は消防法により防火管理者を定め消防計画の作成、それに基づく消火、通報及び避難訓練の実施、自衛消防隊の設置等々防火
管理のためのさまざまな要件を義務付けられている。したがって監査では、大学が防火に関わる消防法や消防法施行令、消防法施行規則それに付随し
た自治体の条例など課せられた必要条件をどの程度担保しているのか、それらが大学の規程にどのように関連付けられているかその整合性、有効性を
検証していくことが求められる。同時に消防訓練や通報・避難訓練において実際に使用するマニュアル等の実効性の検証も必要となる。
関連法令等
法:消防法 令:消防法施行令 規則:消防法施行規則
趣旨(留意事項の狙い)
分類
項目
留意事項
管理権原者 管理権原者
大学の建物の防火管理上の責任者である管理権原者が明 法第8条第 1 項関係
確になっているか。
管理権原者は一般的には所有者を指し学校法人
では理事長、国大法人では学長となる。
管理権原者 防火対象物
管理権原者が防火管理をすべき防火対象物が明確になっ 「小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、
の業務と権
ているか。
高等専門学校、大学、専修学校、各種学校その
限
他これらに類するもの」(令第 1 条の2第 3 項
1ハ別表(7)、令第1条の 2 関係)
同一敷地内にある 2 以上の建物は1の防火対象
物とみなされる(令第 2 条関係)
防火管理者の選任と業務
防火管理者は、政令で定める有資格者の中から選任され 「・・・管理について権原を有する者は、政令
の負託
ているか。
で定める資格を有する者のうちから防火管理者
を定め、当該防火対象物について消防計画の作
管理権原者は防火管理者に対して防火管理上の必要な業 成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難
務を負わせているか。
訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水
または消防活動上必要な設備の点検及び整備、
火気の使用または取り扱いに関する監督、避難
又は防火上必要な構造および設備の維持管理並
びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業
務を行わせなければならない」(法第8条第 1
項関係、令第 3 条関係)
防火管理者が定められていないときは消防長又
は消防署長に定めることを命ぜられる(法第8
条第3項関係)
防火管理者の届出
管理権原者は防火管理者を定めたとき、又は解任したと 法第8条第 2 項関係
きは所轄消防長又は消防署長に届け出ているか。
防火管理者
防火管理者の組織上の位
置付け
防火管理者の業務と権限は組織上規定されているか
88
防火管理者の大学での組織上の位置付けと役
割、権限をどう規定付けているか確認が必要
防火管理者
の業務と権
限
消防計画の作成
①防火管理者は防火対象物について消防計画を作成して
いるか。
②防火管理上必要な業務の一部を外部委託している場
合、業務の範囲及び方法が定められているか。
89
防火管理者は防火管理義務を要する防火対象物
について消防計画を作成する義務がある(令第 4
条第 3 項)
消防計画による防火管理の業務については、防
火管理者がすべての権限を持つことに留意
消防計画を作成する際にはおおむね次に掲げる
各号について留意
規則第1章第3条関係
一令第1条の2第3項第1号ハに掲げる防火対
象物(大学含む)及び同項第2号に掲げる防
火対象物
イ 自衛消防隊の組織に関すること。
ロ 防火対象物についての火災予防上の自主検
査に関すること。
ハ 消防用設備等又は法第 17 条第 3 項に規定す
る特殊消防用設備等の点検及び整備に関する
こと。
ニ 避難通路、避難口、安全区画、防炎区画そ
の他の避難施設の維持管理。
ホ 防火壁、内装その他の防火上の維持管理及
び案内に関すること。
ヘ 定員の遵守その他収容人員の適正化に関す
ること。
ト 防火管理上必要な教育に関すること。
チ 消火、通報及び避難の訓練その他防火管理
上必要な訓練の実施に関すること。
リ 火災、地震その他の災害が発生した場合に
おける消火活動、通報連絡及び避難誘導に関
すること。
ヌ防火管理についての消防機関との連絡に関す
ること。
ル 増築、改築、移転、修繕又は模様替えの工
事中の防火対象物における防火管理者又はそ
の補助者の立会いその他火気の使用又は取り
扱いの監督に関すること
ヲ イからルに掲げるもののほか、防火対象物
消防計画の届出
計画に基づく訓練
防火管理者は、管理権原者の指示をもって、防火管理に
かかる消防計画を所轄消防長又は消防署長に届け出てい
るか。
消防計画の変更の際も届け出ているか。
消防計画に基づき消火、通報及び避難訓練が定期的に実
施されているか。
における防火管理に関し必要な事項
高層建築物その他政令で定める防火対象物につ
いて管理権限が分かれるものについては別に協
議し定めておくことが求められる。法第8条の
2関係
当該対象物の関係者及び関係者に雇用されてい
る者以外のものに委託されている防火対象物に
あっては、防火管理者は防火管理上の受託者の
氏名及び住所並びに当該受託者の行う防火管理
上必要な業務の範囲及び方法を定めなければな
らない。規則第 3 条第 2 項関係
規則第 3 条関係
令第4条第 3 項関係
計画通りに行われない場合消防長又は消防署長
により必要な措置を講ずるよう命ぜられる。
近年、高い建物などを有し人口が密集する都市
部の大学は、避難訓練の実施に際し、学生生徒、
教職員、消防署、自治体や近隣住民等あらゆる
連携体制が必要で、大掛かりになり、その実施
は困難を極めるが、人口が密集するが故に、定
期的に実態に即した訓練の実施こそが被害を最
小限に止める手段であり欠かせないものと考え
る。
消防・避難・防火施設設備 ①防火対象物点検資格者により点検されているか。
法第 8 条2の2第1項関係
等の管理
②消防用設備等の点検整備、避難又は防火上必要な構造 学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、
および設備の維持管理その他防火管理上必要な業務の点 旅館、飲食店、地下街、複合用途防火対象物そ
検状況が適切に行われているか。
の他の防火対象物で政令で定めるものの関係者
③防火上の建物構造の不備や消防用設備等・特殊消防用 は、政令で定める消防の用に供する設備、消防
設備等の不備欠陥が発見された場合は、速やかに改修さ 用水及び消火活動上必要な施設(以下「消防用
れているか。
設備等」という。)について消火、避難その他
④点検結果が必要事項に適合している場合の認定表示が の消防の活動のために必要とされる性能を有す
受けられているか。
るように、政令で定める技術上の基準に従って、
設置し、及び維持しなければならない。(法第
90
消防・避難・防火施設設備 機器点検・総合点検結果が所轄消防長又は消防署長に報
等の点検結果の報告状況
告されているか。
避難上必要な施設等の管
理の義務
自衛消防組
織
自衛消防組織の設置と届
出
廊下、階段、避難口等避難の支障になるような物件が放
置・存置されていないか。
防火戸についても閉鎖の支障となるものが放置・存置さ
れていないか。
管理権原者は防火対象物に自衛消防組織を置いている
か。
自衛消防組織を置いたとき又は変更したときは、遅滞な
く自衛消防組織の要員の現況その他総務省令に定める事
項を所轄消防長または消防署長に届けているか。
91
17 条第1項、法第 8 条2の2第 1 項関係)
消防用設備等の種類(令第7条関係)
消火設備(消火器及び簡易消火用具・屋内消火
栓設備・スプリンクラー設備・水噴霧消火設備・
泡消火設備・不活性ガス消火設備・ハロゲン化
物消火設備・粉末消火設備・屋外消火栓設備・
動力消防ポンプ設備)警報設備(火災報知設備、
ガス漏れ火災警報設備・漏電火災報警報器・消
防機関へ通報する火災報知設備・警鐘、携帯用
拡声器、手動式サイレン・非常ベルその他警報
器具及び自動式サイレン・放送設備)避難設備
(すべり台・避難はしご、救助袋、緩降機、避
難橋その他、誘導灯および誘導標識)
防火対象物点検資格者により防火管理上必要な
業務、消防の用に供する設備、消防用水又は消
火活動上必要な施設の設置及び維持その他火災
の予防上必要な事項に適合しているかを点検
し、適合している場合は点検日、総務省令で定
める表示ができる。(定期点検制度と点検済み
表示、認定表示制度)法第 8 条2の2第2項関
係
消防法第 8 条の2の2第1項関係
法第 8 条の2の4関係
防火対象物のうち多数のものが出入りしかつ、
大規模な防火対象物については当該防火対象物
に自衛消防組織をおくこと(法第 8 条の2の5
第1項関係、令第 4 条の2の5関係)
法第 8 条の2の5第2項関係
自衛消防組織の業務・要員 ①防火管理者が定めるべき自衛消防組織の業務について
の基準
定めがあるか。
②自衛消防組織に統括管理者が定められているか。
③統括管理者は資格要件を備えているか。
④同じく消防要員が定められているか。
火気の使用
または取り
扱い
火気の使用または取り扱
いに関する監督の状況
火を使用する設備、器具等に対する規制が遵守されてい
るか。
防火管理者は火元責任者その他の防火管理の業務に従事
するものに必要な指示を与えているか。(実験室・研究
室など火気を取り扱う責任者などの監督状況のチェッ
ク)
危険物の管
理
危険物の管理
危険物の貯蔵や取り扱いの管理が適正に行われている
か。
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自衛消防組織が置かれていない場合、消防長又
は消防署長により管理権原者に自衛消防組織を
置くように命ぜられる(法第 8 条の2の5第3
項関係)
自衛消防組織の設置対象となる防火対象物につ
いて管理権限が複数分かれるものについては共
同して自衛消防組織を置くこととなっている
(令第4条2の5第2項関係)
定めるべき事項
・初期消火、消防機関への通報、避難誘導その
他火災被害の軽減のための必要な業務(令第 4
条の2の7,2の7関係)
自衛消防組織には統括管理者を置かなければな
らない
統括管理者には資格要件がある
自衛消防組織には業務ごとに自衛消防要員を置
かなければならない
(以上令第 4 条の2の8関係)
法第9条関係、令第5条・第5条の2・3・4・
5関係
「かまど、風呂場その他火を使用する設備又は
その使用に際し、火災の発生の恐れのある設備
の位置、構造及び管理、こんろ、こたつその他
火を使用する器具又はその使用に際し、火災の
発生の恐れのある器具の取り扱いその他火の使
用に関し火災の予防のために必要な事項は、政
令で定める基準に従い市町村条例でこれを定め
る。」
令第4条第2項関係
大学においては教室・実験室で使用する火災の
発生の恐れのある器具や可燃物の管理及び消火
設備の使い方などについて防火体制の整備状況
など管理体制に留意
令第10条関係
大学で取り扱う危険物については消防法上の危
ガソリン、シンナーその他可燃物保管倉庫には「火気厳
禁」「禁煙」等掲示し注意の喚起が行われているか。
災害発生の危険性を有するものについては一定の標識が
付されているか。
収容人員の
管理
収容人員の管理の状況
授業や講演などで教室・講堂で定員を超えた人員を収容
していないか、避難動線が確保されているかなど施設の
収容能力や避難の動線に対する危機管理対策ができてい
るか
防火防災教
育
学生教職員に対する防火
防災教育の実施
防火管理者がリーダーとなって学生教職員に対する防火
防災教育が行われているか。
パンフやマニュアル等が作成され配布されているか。
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険物のほか、高圧ガス、火薬類、毒物、劇物等
がありこれらはそれぞれ消防法で規制するもの
のほか高圧ガス保安法、火薬類取締法、毒物及
び劇物取締法等で規制されている。
実験室・研究室等における爆発事故や毒物の紛
失など新聞紙上における事故事件が後を絶たな
い。取り扱う管理者以外は現場での監視が届き
にくい面であるが、一旦発生すれば死にいたる
リスク度が高いだけに社会的責任の重大性から
管理体制は厳重を極める。
法第8条第1項、規則第3条第1項1関係
講堂・教室の巡回等、授業や講演の催事の実施
状況等、危険性が高いと予測される状況を常に
把握する態勢が必要。
特に階段教室などのように段差や勾配の強い施
設は避難時に将棋倒しなどの危険性が高いこと
に留意することや、一方で危険性をポスター等
の掲示による注意喚起をする必要がある。
法第8条第1項、規則第3条第1項1関係
防火防災のためのパンフレットを配布し、定期
的に説明会を行う態勢が必要。特に教員は教室
の最高責任者であるため、学生の動揺や混乱の
中、冷静な行動と強力なリーダーシップが要求
される。防火防災や避難のためのマニュアル等
による徹底した研修が必要と思われる。この場
合非常勤教員など外部の方への対処の仕方をど
うするかが問題。
「安全管理」監査に関する留意事項
大学の安全管理については、教員による教育研究活動あるいは学生の課外活動等の学園生活を職員スタッフと共に法人としていかに安全を担保してい
くかが求められる。
教育現場においての講義や実験・実技・演習等の授業の際や研究の際の施設設備をいかに安全に管理するかは言うに及ばず、実験器具等の教育設備の
使い方の訓練や周知徹底、毒物劇部等の薬品等の使い方など教育や研究が専門化するにつれ危険性が高まり、その管理対策も高度化が要求される。管
理する側も単に法や規則に則った杓子定規的な管理ではなく、使用する側の理解がなければ有効な使い方や安全の確保は得られないことを理解して、
機能しなければならない。教育研究の現場の実態を知り、どのような管理が望ましいのか、どのような使われ方が教育研究の促進に繋がるのか、両側
面を見ながらの機能的な管理をすることが肝心である。
さらに重要なことは教室や実験室、研究室、あるいは大学の建物全体に関わる安全管理については、防火防災上のことや危険物管理など所轄庁や自治
体に対し報告義務を有するため、さまざまな事務部門が関わってくるが担当部門ごとにその報告は縦割り的になりがちになる。
しかしながら、学生の授業や課外活動などの学園生活における安全のためには、施設の安全、設備の安全、食の安全、身体の安全、心の安全など心身
に及ぶハード面ソフト面双方の安全管理が必要となり、多くの部署が関連してくる。そのため、関連する部署が情報を連携しながら機能することが必
要であり、統括的に進めることが学園の安全管理を確保することに繋がれると思われる。
分類
項目
留意事項
趣旨(留意事項の狙い)
安全管理
学生に関する安全管理
教育分野における安全管理
教育分野における安全対策の状況把握(授業、
実験、演習等の設備・教材・薬品の使用等にお
ける安全対策、毒物劇物の使用上の管理対策、
ゼミ合宿や海外実習等の安全確保体制の整備状
況)
課外活動における安全管理
サークル活動における安全管理の状況(しごき、
一気飲みの強要など)の把握
学生生活における安全管理
教職員に関する安全管理
教員の教育研究活動における安全管理
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心身ともに健康をどのように管理しているかそ
の管理の方法と体制の状況を把握する
寮等の管理体制の整備状況、留学生の安全管理
対策状況
教員や事務局関連部署の情報共有と連携状況
教員の実験実習等の授業に対しての安全対策状
況の把握
(授業中の実験における爆発事故やガスの発生
防止や毒物劇物の事故防止など教員が抱える安
全管理上の責任は大きい。)
教員のコマ数負担等教育研究上の環境管理状況
の把握
(教員は講義や実験・演習ゼミ等授業のほか各
種委員の担当、課外活動、入試業務の負担など
守備範囲は大きい。)
教員の健康管理状況の把握
(授業評価や研究成果など求められるものに対
して答えていくことが義務としてあるため、心
身ともに健康であることが要件として求められ
る。教員の教育研究活動の評価とともに健康管
理は欠かせない。)
ハラスメント対策のための研修等の実施状況の
把握
(教員の成果物の評価を正しく行う一方で、ア
カハラ、パワハラ、セクハラなどの対策のため
の研修により周知を行いハラスメントを導かな
い土台作りを講じなければならない。)
※安全管理として前述の基本的な要素に倫理観
を加える
(新聞をにぎわす研究や研究費不正の問題に対
処する必要がある。教員の倫理観が欠如してい
ると言われてもしかたがないところがあるた
め、国の対策も大学の自治に入り込んでいると
思われる。大学自らの自浄作用が要求されてし
まう所以である。)
職員の業務上の安全管理
業務の実態把握状況
危険業務の把握と実態管理状況
資格業務の把握と実態管理状況
(特に施設管理や研究室の職員は危険なものの
取り扱いに携わる機会が多いだけに、細かなス
テップの多い管理が求められる。ルールに沿っ
た管理の方法が実行されているか検証が必要と
なる。また、資格を伴う業務について資格者が
法令通りにチェックし目を行き届かせている
か。法令義務のある報告が正しいか否かは確認
が必要。大学の社会的責任に関わる。)
サービス残業など過重労働の実態把握と管理状
況
(特に事務局から離れた研究室や研究所などで
施設設備の安全管理
施設設備の安全管理
95
は教員が実質的に管理者であるため、業務の実
態が分かりづらい。
残業が日常茶飯事的なところがあるため、労働
実態には注意が必要。)
ハラスメント対策のための研修等の実施状況の
把握
(学生と接する機会が多い職場では、特にハラ
スメント対策がどのように行われているか検証
することが必要。)
社会に関する安全管理
大学の社会的責任としての安全管理
環境に対する安全管理
施設の安全管理
危険な建物(老朽化した建物や耐震診断で危険
とされた建物、防火防災上改修が必要な施設)
の把握と改善状況
設備の安全管理
危険な設備の使用や管理状況
法令上規定上の整備状況等
業務上の危険物や毒物劇物等、法や政令条例等
で定められた定期点検、法令点検が専門の管理
要員などにより行われるように管理の方法が規
則規定や文書にて徹底されているかその管理運
営の把握状況
(業務上、放射性物質や毒物劇物危険物を取り
扱う部署においてはその危険性や取扱者など日
頃の研修等や職場において周知しておく必要が
ある。)
大学の社会的責任としての安全管理対策
環境に対する安全管理
実験等で使用された排水・廃液・排煙について
の対処状況把握
実験等で使われる毒物劇物についての対処状況
把握
ごみ処理の対処状況把握
環境報告書での説明状況
周辺住民に関する安全管理
特に地域住民への対処は必須(放射性物質、劇
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物毒物を扱うところは放射性物質の拡散やガス
発生などに伴う緊急避難対策などは講じておく
必要がある。また、火災時、震災時等緊急避難
所としての大学の役目は大であるため、共同避
難訓練は言うに及ばず、近隣の避難者に対して
も一時的水食料トイレなど大学独自の備えが必
要。)
また、アスベスト対策やPCBの処理状況など
自治体などへの報告義務を伴うものについても
その対処状況の把握が必要となろう。
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