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国別障害関連情報
中華人民共和国
平成 14 年 3 月
国際協力事業団
企画・評価部
国別障害関連情報については、現地で入手可能な情報をもとに取りまとめたものであ
り、データ類の信憑性について JICA は責任を負わないものとする。
国別障害関連情報
中華人民共和国
目次
表目次 ....................................................................................................................................... ii
略語表................................................................................................................................... iii
1.
2.
3.
4.
5.
基礎指標............................................................................................................................ 1
1-1.
一般指標 .................................................................................................................... 1
1-2.
障害指標 .................................................................................................................... 3
障害に関する概要............................................................................................................ 6
2-1.
中国における障害の定義 ........................................................................................ 6
2-2.
障害に関する現状 .................................................................................................... 6
2-3.
障害に関する調査・統計の整備状況 .................................................................... 7
障害関連政策.................................................................................................................... 8
3-1.
障害関連行政 ............................................................................................................ 8
3-2.
障害関連法律 .......................................................................................................... 10
3-3.
障害関連施策 .......................................................................................................... 12
3-4.
施策の概要 .............................................................................................................. 13
3-5.
障害分野専門家・ワーカー .................................................................................. 25
障害関連団体における活動の概況 .............................................................................. 27
4-1.
障害関連団体による活動 ...................................................................................... 27
4-2.
国際機関・その他の機関の障害分野に関する援助実績................................... 28
参考資料.......................................................................................................................... 30
i
図目次
図 1 全国障害者数 6000 万人における障害別割合................................................... 3
図 2 0∼14 歳の障害者数 900 万人中の障害種類別障害者数.................................. 3
図 3 知的障害者 1182 万人中の遺伝が原因の障害割合........................................... 5
表目次
表 1 地域別障害者人口 ................................................................................................ 4
表 2 中国女性障害者状況一覧 .................................................................................... 5
表 3 全国障害児教育 在校者数 ...............................................................................16
ii
略語表
CBR
ESCAP
JICA
GDP
GNP
NGO
OT
PT
UN
UNICEF
UNDP
UNESCO
USAID
WHO
Community-based Rehabilitation
Economic and Social Commission for Asia and the Pacific
Japan International Cooperation Agency
Gross Domestic Product
Gross National Product
Non-governmental Organization
Occupational Therapist
Physical Therapist
United Nations
United Nations Children’s Fund
United Nations Development Programme
United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization
United States Agency for International Development
World Health Organization
iii
国別情報
中国
1.
基礎指標
1-1.
一般指標
セクター別政府支出1
人口
保健医療 (対 GDP 比)
教育 (対 GNP 比)
社会福祉 (対公共支出)
軍事・防衛(対 GNP 比)
2.0%
2.3%
2.5%
2.2%
1996-98 年
1997 年
1998 年
1997 年
総人口
女性人口比率
都市人口比率
平均寿命2(全体)
男性
女性
13 億人
48.4%
32%
70.2 才
68.3 才
72.5 才
2000 年
2000 年
1999 年
1999 年
1999 年
1999 年
医療従事者数 2
医師 1 人あたりの人口
617 人
1990-99 年
1,136 人
1992-95 年
1
医療
看護師・助産師 1 人あた
りの人口
1
2
World Bank. World Development Report 2000-2001
UNDP. Human Development Report 2001
1
国別情報
中国
教育
教育制度3
初等教育年数
義務教育年数
成人識字率 1
男
女
3
就学率
初等教育(純就学率)
全体
男
女
初等教育4(総就学率)
全体
男
女
中等教育(純就学率)
全体
男
女
高等教育(総就学率)
全体
男
女
3
4
5 年
9年
91%
75%
1998 年
1998 年
100%
99%
99%
1997 年
1995-99 年
1995-99 年
123%
122%
123%
1997 年
1997 年
1997 年
70%
100%
100%
1997 年
1996 年
1996 年
5.6%
7.3%
3.9%
1996 年
1996 年
1996 年
UNESCO. Statistical Yearbook 1999
USAID ESDS. GED2000 Retrieved February 21, 2002, from http//qesdb.cide.org/ged/index.html
2
国別情報
中国
1-2.
障害指標
障害者別統計
図 1 全国障害者数 6000 万人における障害別割合
視力障害
15%
知的障害
20%
その他
65%
出典:国務院残疾人工作協調委員会『中国残疾人事業“九五”計画網要及配飽
套実施方案』1996 年
年齢別統計
図 2 0∼14 歳の障害者数 900 万人中の障害種類別障害者数
精神障害
視覚障害
肢体不自由
重複障害
聴覚言語障害
15,000
200,000
682,000
888,000
1,278,000
5,930,000
知的障害
0
1,000,000 2,000,000 3,000,000 4,000,000 5,000,000 6,000,000
障害者数(人)
出典:JICA『中国障害者情報』2001 年
3
国別情報
中国
地域別統計
表 1 地域別の障害者人口
地域
省、直轄市、自治区
北 京
天 津
河 北
華北
山 西
内モンゴル
遼 寧
東北
吉 林
黒龍江
上 海
江 蘇
浙 江
華東
安 徽
福 建
江 西
山 東
河 南
湖 北
湖 南
華中南
広 東
広 西
海 南
重 慶
四 川
貴 州
西南
雲 南
チベット
陝 西
甘 粛
西北
青 海
寧 夏
新 疆
合 計
人口
(万人)
1,257
959
6,614
3,204
2,362
4,171
2,658
3,792
1,474
7,213
4,475
6,237
3,316
4,231
8,883
9387
5,938
6,532
7,270
4,713
762
3,075
8,550
3,710
4,192
256
3,618
2,543
510
543
1,774
125,909
障害者
比率
(%)
4.5
4.2
5.2
4.4
4.0
4.0
5.7
3.5
4.0
4.8
4.7
4.6
4.7
4.5
4.4
5.7
6.4
4.8
4.0
5.5
3.9
5.4
5.4
4.5
6.3
7.2
5.0
5.1
4.3
3.4
3.8
4.8
障害者数
(万人)
56.6
40.3
343.9
141.0
94.5
166.8
151.5
132.7
59.0
346.2
210.3
286.9
155.9
190.4
390.9
535.1
380.0
313.5
290.8
259.2
29.7
166.1
461.7
167.0
264.1
18.4
180.9
129.7
21.9
18.5
67.4
6,070.9
出典:中国障害者連合会&中国民政部(1999)
1987 年、1993 年、2 回にわたる障害者連合会と民政部門による抜き取り調査や専
門家の推算による、各省、直轄市、自治区における6種類の障害(視覚、聴覚
言語、知的、精神、重複障害、肢体不自由)を持つ患者の状況を示している。
4
国別情報
中国
障害程度別統計
該当情報なし。
障害原因別統計
図 3 知的障害者 1182 万人中の遺伝が原因の障害割合
遺伝による障害
15%
その他
85%
出典:国務院残疾人工作協調委員会『中国残疾人事業“九五”計画網要
及配飽套実施方案』1996 年
ジェンダー別統計
表 2 中国女性障害者状況一覧
種類
視覚障害
聴覚言語障害
知的障害
肢体不自由
精神障害
重複障害
合 計
女性障害者人数
(万人)
552
997
571
360
127
427
3,034
女性障害者に占める
比率(%)
18.2
32.8
18.8
11.9
4.2
14.1
100
出典:中国障害者連合会(1999)
5
男女障害者の比率
(女性:全体)
62.16%
47.91%
47.78%
40.59%
55.46%
53.98%
49.97%
国別情報
中国
2.
障害に関する概要
中国における障害の定義
2-1.
中国における障害者の定義は、「心理上または生理機能や身体上、組織や機能を喪失、
もしくは異常があるために、正常な状態での活動能力を全てまたは一部失った人」で
ある。
障害は 5 種類に分類され、それぞれの種類と各障害程度分類は以下の通りである5。
1.
視力障害:視力の程度により、失明と低視力に分かれる。
ア) 失明: 1 級失明と 2 級失明に分かれる。1 級失明は矯正視力が 0.02 以下で、
光が感じられない、または視野の半径が 5 度以下(視野が半径 5 度以下)で
ある。2 級失明は矯正視力が 0.02∼0.05、視野の半径が 10 度以下である。
イ) 低視力:1 級低視力と 2 級低視力に分かれる。1 級低視力は矯正視力が 0.05
∼0.1、2 級低視力は 0.3∼0.1 である。
2.
聴力言語障害:聴力の程度により、聾と難聴に分かれる。
ア) 聾:1 級聾と 2 級聾に分かれる。1 級聾は聴力が 91 デシベル以上、2 級聾は
71∼90 デシベルである。
イ) 難聴:1 級難聴と 2 級難聴に分かれる。1 級難聴は 56∼70 デシベル、2 級難
聴は 41∼55 デシベルである。
3.
肢体不自由:肢体の切断・欠如、麻痺、機能障害の程度により 1∼4 級に分かれ
る。
4.
知的障害:障害程度の分類は不明。
5.
精神障害:障害程度の分類は不詳。
2-2.
障害に関する現状
労働災害や交通事故の急増により、後遺症を伴う身体障害者は現在 6000 万人に上る
と推定されている。その内、基本的な生活を保障されている人々が全体の約 70%を
占めている。約 1800 万人は保障の無い生活を送っており、そのうち都市部に住む 30
万人、農村部の 273 万人、合計 304 万人は特に深刻な状況に置かれている6。また、0
5
出典:『現代康復医学』科学技術文献出版社
6
国別情報
中国
農村部の 273 万人、合計 304 万人は特に深刻な状況に置かれている6。また、0∼14 歳
の障害児は 1995 年末時点で約 900 万人を数え、国内児童総数の 2.66%を占めた。内
訳は、視覚障害が約 20 万人、聴覚言語障害が約 127 万 8000 人、知的障害が約 593 万
人、肢体不自由が約 68 万 2000 人、精神障害が約 1 万 5000 人、重複障害が約 88 万 8000
人である。そのうち 80%の人々は農村部に住んでおり、半数は貧困状態にあるとい
う。
また 1996 年から 2000 年までに実施された中国障害者事業第 9 次 5 ヵ年計画の実施状
況によると、期間中に 430 万人の障害者がリハビリテーション治療を受けたほか、障
害者の就業率が 70%から 80%に上昇し、農村部の貧困な障害者 829 万人が「温飽(衣
食が足りる状態)」のレベルに達した。一方、都市部では特に窮乏状態にある障害者
269 万人が生活保障を得ている。このほかに障害者の権益保護やバリアフリーの普及
などが推進された。
2-3.
障害に関する調査・統計の整備状況
国勢調査
国勢調査は 1949 年の建国以来、53 年、64 年、82 年、90 年、2000 年に実施されてい
るが、資料は無い。障害者統計の実施の有無については不明である。
6
国務院残疾人工作協調委員会『中国残疾人事業“九五”計画網要及配飽套実施方案』1996 年
7
国別情報
中国
3.
障害関連政策
3-1.
障害関連行政
中央政府行政
【中央政府行政組織図】
国家主席・副主席
人民政治協商会議
全国人民代表大会
最高人民検察院
国家中央軍事委員会
最高人民法院
国務院
総理・副総理
国務委員
秘書長
外交部
国防部
国家発展計画委員会
国家経済貿易委員会
教育部
科学技術部
国防科学技術工業委員会
国家民族事務委員会
公安部
国家安全部
監察部
民生部
司法部
財政部
人事部
労働社会保障部
国土資源部
建設部
鉄道部
交通部
情報産業部
水利部
農業部
対外貿易経済協力部
文化部
衛生部
国家計画生育委員会
中国人民銀行
審計署
障害者福祉行政に関連する機構は衛生部と民生部だが、実質的には中国障害者連合会
が障害者福祉事業を管轄している。リハビリテーション医学教育は教育部が管理して
いる。
8
国別情報
中国
【障害関連担当機関】
【機関名】
【概要】
衛生部
障害者への社会福祉政策、規定を制定・実施する。
*詳細は以下の説明を参照のこと。
民政部
高齢者福祉・孤児福祉・障害者福祉の事業を管理する。主な
職務は社会保障、社会団体の登記、補そう具の製造などであ
る 7。
中国障害者連合会
1988 年に設立された。リハビリテーション行政を担うほか、
障害者福祉事業を管轄する。各省・自治区・直轄市、市、
県、街道・鎮に下部組織がある。主な活動内容は、障害者事
業の総合研究と情報分析、政策提言、政策・法規の起草、障
害者の現状調査、障害者用品の開発・販売、学術交流、リハ
ビリテーション人材の育成、障害者の教育計画と就業活動計
画の策定、文化・スポーツ・芸術活動などである。
教育部
リハビリテーション医学教育
国家障害調整委員会
1993 年に設立された。32 人(ESCAP の資料では 34 人)の各
省の代表者と中国障害者連合会の役員からなり、政策作り、
理論の設定、法律の草案作りと実施に関する事業の調整を行
う。
*衛生部
国務院『衛生部の職能、内部機構と人員配置についての規定』によると、行政担当者は 225 人、
内部機構は 10 司(局、庁)で、各機構の職責は下記の通りである。なお、同部は全国で直属
医科大学 11 校を管理し、中国医学科学院、中国予防医学科学院など多数の研究施設があるほ
か、直属病院には北京病院、日中友好病院などがある8。
【衛生部内の組織】
弁公庁
総合的な政策の研究と策定を行う。財務、行政事務、広報、統計などの管
理、保持を担当する。
人事司
衛生事業の人材育成の計画、衛生機構の組織基準、衛生事業従事者の賃
金・福利基準を制定する。
規画財務司
衛生事業の開発計画を研究、地域衛生の計画活動を指導する。財務管理の
規定を定める。
衛生法制・監督司
法律、法規、技術標準などを策定する。伝染病予防と食品、職業、環境、
放射、学校衛生を監督管理し、食品と化粧品の品質基準と認証基準を制定
する。
基層衛生・婦幼保
農村とコミュニティの衛生サービスの開発計画とサービス基準、都市部の
7
出典:『現代中国事典』岩波書店
8
出典:『現代中国事典』岩波書店
9
国別情報
中国
健司
衛生サービス体系の改革を研究する。
医政司
医療機構改革を研究し、同機構の開発計画と管理法規、サービス基準、医
療従事者の資格基準、サービス基準を策定する。
疾病控制司(全国
伝染病、地方病、慢性の非伝染性疾病などの予防規定と措置を策定する。
愛国衛生運動委員
会弁公室)
科技教育司
国家重点医学科学技術や医学教育の開発計画を研究し、優先発展分野を確
定する。基礎研究、重大な疾病研究、応用研究に関する政策と措置を策定
する。
国際合作司
医療衛生分野の内外交流を指導する。
保健局
中央保健委員会が定めた医療保健活動に責任を持つ。
社会福祉・社会事
高齢者、障害者、孤児、五保制度(労働能力がなく、かつ身寄りのない人
務司
に衣・食・住・医療・葬儀を保障する制度)によって保障されている世帯
などを対象に、社会福祉政策、規定などを策定、施行する。
【国内調整委員会の設置状況】設置されている
【委員会名称】
国家障害調整委員会(1993 年設立)
【行動課題と実施状況】
法整備、リハビリテーション、教育、職業訓練と雇用、情報、施設等の利用可能性、
障害の予防、国際的な地域協力の分野での活動が計画されている。
地方政府行政
【地方政府行政組織】 該当情報なし。
【障害関連担当機関】 該当情報なし。
3-2.
障害関連法律
【法律名】
中国障害者保障法
【施行年】
1991 年
【概要】
障害者のリハビリテーション、教育、就労、文化生活、福祉、環境整備、法律責任に
ついて規定している。
【法律名】
リハビリテーション医学教育案
【施行年】
1992 年
10
国別情報
中国
【概要】
リハビリテーション医師、リハビリテーション治療士、理学療法士、作業療法士に関
する養成と教育について定めている。
【法律名】
【施行年】
障害者教育条例
1994 年
【概要】
障害者の教育を受ける権利を保障するとともに、障害者教育事業を発展させること
を目的に定められた。就学前教育、義務教育、職業教育、成人教育、教師などにつ
いて規定している。
【法律名】
【施行年】
義肢および矯正器具製作士 業務資格制度暫定規定
1997 年
【概要】
義肢、補そう具、車椅子、杖などの製作者のレベルアップ、同製造業の発展と規範化
を目的としている。
【法律名】
【施行年】
総合病院リハビリテーション医療管理に関する規定
1997 年
【概要】
大型総合病院を対象に、リハビリテーション科の設置と理学療法士、作業療法士の
配置を義務付けている。
【法律名】
【施行年】
医師資格試験暫定法
1999 年
【概要】
医師資格試験について、管理、出願手続き、実技および筆記試験について規定して
いる。
【法律名】
【施行年】
医師業務登録暫定法
1999 年
【概要】
医師としての業務登録条件、手続き、登録の取り消しと変更などについて規定して
いる。
【法律名】
【施行年】
普通高等医学院(校)臨床教学基地管理暫定規定
不明
11
国別情報
中国
【概要】
リハビリテーション教育を含む臨床教育機関について、ベッド数、教育施設などの
基準を定めた。合格基準は以下の通りである。
・ ベッド数は 150 床以上である。
・ 医師数は本科または専科卒業の医師数が全体の 95%以上、うち教授、助教授が
20%である。
・ 教育診察室、教室、実験室、模範作業教室、実習室、学生当直室、学生寮、食堂
など臨床教育条件、教育施設がある。
・ ビデオカメラ、スライド映写機、プロジェクター、有線テレビシステム、コンピ
ューター、ソフトウエアなど視聴覚機材がある。
・ 教師陣および教育行政管理部門がある。
3-3.
障害関連施策
国家開発計画の概要
中国障害者事業「第 10 次 5 カ年計画(2001∼2005 年)」の重点課題
中国障害者事業として、5 年ごとに国家政策が計画され、目標とその達成に向けた措
置が明らかにされている。最新の 5 ヵ年計画における重点目標は障害者の生活レベル
の向上、リハビリテーション、義務教育、雇用促進、地方におけるサービス施設建設、
である。
農村部障害者の貧困対策
障害者のうち約 80%が農村部におり、50%が貧困状態にある。障害者の貧困削減は、
第 9 次 5 ヵ年計画での目標だったが、第 10 次で再び重点目標として取り上げられた。
障害者関連活動では、全ての分野で貧困削減を視野に入れ、貧困層障害者の生活向上
に結びつくような活動を行うべきである。特に、西部地区は貧困削減のために政府が
優先的に資金を充当する政策を立てている地域である。
【計画名】
中国障害者事業『第 9 次 5 カ年計画』綱要と関連実施方案
【施行年】
1996∼2000 年
【障害関連施策の内容】
障害者事業は社会主義市場経済体制への適合の必要性だけでなく、貧困の撲滅、生
活レベルの向上とリンクさせると明示した。経済格差の縮小、および障害者が社会
参加するための物理的・精神的バリアの解消を図ることをうたった。
【計画名】
中国障害者事業『第 10 次 5 カ年計画』綱要
【施行年】
2001∼2005 年
12
国別情報
中国
【障害関連関連施策の内容】
障害者事業の強化、リハビリテーションと就学・就業の支援、社会参加への環境整
備などを提唱している。期間中の目標は以下の通り。
1. 経済が発展した地区では障害者の生活レベルを「小康」(安定し、やや余裕が
ある経済水準)に、発展が遅れている地区では「温飽」(衣食が足りる)にす
る。
2. 510 万人にリハビリテーション治療を施す。
3. 義務教育の就学率を高める。
4. 失業者への就職指導、研修を行い、就業率を 85%に引き上げる。
5. 障害者向けの総合サービス施設を広く市・県にまで建設する。
3-4.
施策の概要
障害の予防・発見・早期療育
【現状】
中国では「予防を第一とする」という原理を堅持しており、都市部、農村部とも予防
衛生のネットワークが出来上がっている。疾病予防の重要さの認識を高める取り組み
と並行し、伝染性疾患の予防薬の無料投与や予防接種プログラムが実施されている。
また、子どもと妊婦を対象に検診も実施されている。これらの対策は、ハンセン病、
ポリオといった障害発生の原因となる疾病の発生を効果的に抑えている。さらに、政
府の各部局は、公害、労働災害、交通事故、そして自然災害の結果おこる障害から人々
を守るための規則と予防対策を行っている9。
9
【関連施策名】
中国障害者事業『第 9 次 5 カ年計画』綱要と関連実施方案
(障害の予防)
【施行年】
1996∼2000 年
日本障害者リハビリテーション協会『アジアのリハビリテーション』1988 年
13
国別情報
中国
【施策の目的/概要】
ア)目標
・ 遺伝が原因の先天的障害発生率を、妊娠期の保健管理を強化することで、2000
年までに 3 分の 1 低下させる。
・ 予防接種実施率を 90%以上とし、ポリオの根絶と、栄養不良による疾病およ
び脳血管病の減少を図る。
・ 薬物管理を強化し、薬物使用による聴覚障害発生率を 3 分の 1 低下させる。
・ ヨウ素欠乏による障害を根絶するとともに、フロン中毒などの発生率を抑制す
る。
イ)主要措置
・ 国務院障害者工作協調委員会と国務院婦女児童工作委員会を中心に関係各機
構間の情報交換、協力関係を密接にすると同時に強化する。
・ 『全国障害予防活動概要』を作成し、関係各機関の目標、施策法、職責を明文
化する。
・ 優生教育、母子保健、医療衛生、薬品管理、交通管理、環境保護、労働環境に
ついて、関連法の実施や地方の実情に照らした施策方法を策定・実施する。
・ 予防知識の普及活動を行い、予防意識を高める。
-医療サービス・リハビリテーション
【現状】
中国において医療リハビリテーションは、永年にわたり、温泉治療(サナトリウム)
や整骨に限られていたが、1980 年代後半からは急速な発展がみられた。麻痺、関節疾
患、脳血管障害、脳性麻痺、腫瘍、泌尿器疾患、および精神疾患を対象にしたリハビ
リテーション施設が
急速に増加した。
中国最初の近代的な総合リハビリテーション医療施設として「中国リハビリテー
ション研究センター」が 1983 年に設立された。同センターは、リハビリテーショ
ンの臨床、研究、教育を手掛ける中国障害者連合会の直属機関であり、日本、カ
ナダ、ドイツなどから技術援助を受けている。治療とトレーニングを通じた障害
者リハビリテーションのほか、リハビリテーション技術と医療材料、保健薬など
の開発、障害者用品とリハビリテーション訓練設備の開発と提供、リハビリテー
ション人材の養成、障害者事業に関する政策や法規などの研究と提言、AV 製品の
制作と出版を行っている。
衛生部の説明によると、全国のリハビリテーションセンターとリハビリテーション
病院は 78 カ所、ベッド数は 1 万 1000 床余り、リハビリテーション・スタッフは約 6100
人に上り、広東、上海、南京に比較的多い。センターとは別に、リハビリテーション
14
国別情報
中国
科を設けている総合病院も多く、3級甲等(ベッド数 500 床以上で一定基準の設備と
人員、研究実績を持つ総合病院)以上の総合病院のうち、593 カ所にリハビリテーシ
ョン科がある。これらリハビリテーションセンター、リハビリテーション科を開設し
た総合病院の詳細は不明である。
義肢、補正具・車椅子・杖などの製造は民生部が担当し、義肢工場 41 カ所、義肢の組
立工場 12 カ所を所管している。医務などその他部門が所管する義肢組立工場は 23 カ
所あり、計 76 のメーカーがチベットを除く全省・自治区・直轄市で事業を行っている。
さらに個人経営、合弁、外資 100%のメーカーもあり、同分野の就業者数は約 5000 人
いる。義肢製造業の行政管理は民政部の社会福利和社会事務司が、業界内および国内
外の連絡・交流は中国義肢協会がそれぞれ担当している。このほかの関連機関として、
北京義肢科学研究所、全国障害者リハビリテーションと専用設備標準化技術委員会(全
国残疾人康復和専用設備標準化技術委員会)、国家義足品質監督検査センター(国家義
肢質量監督検験中心)、北京精博現代義肢・補正具技術開発公司(北京精博現代仮肢矯
正器技術開発公司)がある。
しかし、ESCAP のサンプル調査によると、90%の障害者が補そう具を必要としている
という。補そう具のほとんどは国産であるが、種類が少なかったり、品質に問題があ
ったりするため、さらなる品質の向上が望まれている。
教育
【現状】
最新の 5 ヵ年計画にもあるように、障害児の義務教育の就学率向上は重点課題の 1 つ
である。中国では特に統合教育と普通学校での特殊学級を推進している。このような
教育機会に障害児がアクセスしやすくなるために、就学前教育、奨学金制度、教育施
設のバリアフリーなどの対策をさらに進めることが重要である。
中国では障害者の社会参加を促すためには教育が重要であるとの考えから、義務教育
の就学率向上、特殊教育学校の建設、障害者の職業教育に力を入れる方針を固め、教
育リハビリテーションが積極的に行われている。統合教育も進められているため、教
育を受ける準備としての就学前障害児の教育リハビリテーションも行われている。ま
た、中国手話のほぼ 100%普及を目指した教育活動が行われている。
法律での規定
15
国別情報
中国
障害者保障法では、「普通小学校・中学校は、状況への適応能力のある障害児を入学さ
せねばならない。普通高等学校、高等職業学校、技術学校、高等教育機関は入学を許
可せねばならず、障害を理由に入学を拒否してはならない(第 22 条)」と規定してい
る。また、「障害児は、障害児のための教育機関が設置した学級、または普通児のため
の教育機関が設置した障害児学級、または普通児のための教育機関が設置した特殊学
級、または特殊教育校、障害児ケアの機関や親による就学前教育で就学前の訓練を受
ける。普通教育を受けることが困難な障害児は、特殊教育校の特殊教育学級や中学も
しくはそれ以下のレベルの普通校に設置された特殊学級で義務教育を受けられる(23
条)」とされている10。
特殊教育・統合教育
義務教育法は、「人民省政府は、視覚・聴覚・言語・知的障害を持つ子どものために特
殊学校(学級)を設けるべきである」と規定している。現在、義務教育に組み込まれた
統合教育や、普通校への特殊学級の設置が進められている。1997 年の時点では視覚、
聴覚、知的障害児の就学率は 64.3%であった。表 1 は最近の障害児教育を行う学校・
在校者数を示している。
表 3 全国障害児教育 在校者数
学校
在校者数
特殊教育学校総数(1999 年)*
聾唖学校
371,600 人
101,100 人
知的障害児の補習学校または補習クラス
普通学校の特殊教育クラス
34,100 人
236,400 人
*1999 年の新規受入れ障害児数は 50,100 人、卒業者数は 31,800 人であった。
出典:JICA『中国障害者情報』2001 年(原典:教育部『1999 年全国教育事業発展統計広報』)
高等教育
高等教育に関しては、以前は大学による学生の健康状態の審査が厳しかったため進学
できない障害者が多かったが、教育部、衛生部、内務部、そして国家計画委員会の合
同で出された「障害者の大学入学と卒業後の職務指定における考慮についての通達」
は、介助を必要としない障害者と障害が専攻分野の勉学と卒業後の職務の妨げになら
ない者は、大学の入学試験受けることができる、と規定している11。
10
中西由起子『アジア太平洋の障害者の教育』http://www.din.or.jp/~yukin/ED.html
11
日本障害者リハビリテーション協会『アジアのリハビリテーション』1988 年
16
国別情報
中国
【関連施策名】
中国障害者事業『第 9 次 5 カ年計画』綱要と関連実施方案
(教育)
【施行年】
1996∼2000 年
【施策の目的/概要】
ア)目標
・ 視力、聴力、言語、知的障害児の義務教育入学率を約 80%に引き上げる。
・ 就業可能な障害者ほぼ全員に職業訓練を施す。
・ 基準を満たした学生について、高等学校以上の教育機関への進学を促す。試験
的に高等学校を創設し、特種高等教育を行う。
・ 「中国手話」のほぼ 100%普及を目指す。
イ)主要措置
・ 義務教育普及のための教育計画を策定する。
・ 義務教育統計に障害者の項目を追加する。
・ 郷(鎮)は特殊教育クラスを、人口 30 万人以上で障害児が比較的多い県は特
殊教育センター学校を設置する。
・ 一般の職業訓練学校・研修機関も障害者を受け入れ、必要に応じて特別クラス
を開設する。
・ 特殊教育学校の職業教育を強化する。
・ 既存の障害者職業技術教育学校 30 校については、障害者職業訓練機構の発足
を目指す。
・ 一般の幼児教育機構と小学校付設の就学前教育クラスは障害のある児童を受
け入れ、必要に応じて障害者児クラスを開設する。特殊教育学校、児童福祉施
設は就学前教育クラスを開設するなどし、早期教育と早期リハビリテーション
を推進する。
【関連施策名】
中国障害者事業『第 10 次 5 カ年計画』綱要(教育)
【施行年】
2001∼2005 年
【施策の目的/概要】
ア)目標
・ 障害児の義務教育就学率を高める。
・ 特殊学校を適所に設立する。
・ 労働需要に照らし、障害者の職業教育を行う。
イ)主要措置
・ 障害児教育を義務教育体系に組み込む。
・ 特殊教育高校の設立、大学内への特殊教育専門クラスの開設のほか、小学校入学
前から大学教育まで相関性のある特殊教育体系を構築する。
・ 障害者に対する大学入学基準を緩和し、募集枠を拡大する。
・ 障害者職業訓練機関で職業教育と訓練を行う。都市部では訓練の質と多様性を、
農村部では貧困対策活動に直結することを重視する。
・ 特殊教育師範大学を設立する、または既存の師範大学に特殊教育科(課程)を開
設する。
17
国別情報
中国
・ 特殊教育の教員養成基地を作り、核となる教師陣を育てる。
・ 各地に奨学金制度を導入するほか、学費の減免措置を講じる。
・ 手話と点字の普及活動を行い、コンピューターなど専門用語の手話用語を制定す
る。
社会サービス
【現状】
リハビリテーションの費用は社会保障制度によって国および組合から支給されるので、
無料である。義足、車椅子などの補そう具や、点字出版物の郵便料金、市内の公共交
通機関は無料である。
福祉企業を含む企業全般が医療、教育、住宅提供、年金などの社会保障を提供してき
たが、市場経済化の中で独立採算制と競争原理を追求せざるを得ず、障害者は福祉企
業の倒産や廃業のあおりを受けている。
都市における道路と建築物の障害者のアクセスのための建築規定が徐々に適用されつ
つあるが、アクセスを考慮した建築物は、大都市の一部に限られている12。
障害者のためのリクリエーション施設として、1992 年までに、1770 ヶ所の障害者文化
スポーツセンターが作られている。
障害者事業第 10 次 5 カ年計画には、障害者の心身の健全な発達を目指した文化・スポ
ーツ活動の促進や、障害者と密接に関係しているコミュニティのサービス機能強化が
盛り込まれている。それによって、公共施設を障害者に開放するなど、障害者の社会
参加が促されている。また、マスメディアを通した啓発活動によって障害者の理解と
尊重、協力を深めるための取り組みもあり、一般の障害者に対する意識の向上に向け
た活動が行われている。
【関連施策名】
中国障害者事業『第 10 次 5 カ年計画』綱要(救貧活動)
【施行年】
2001∼2005 年
【施策の目的/概要】
ア)目標
・衣食に不自由している農村部の障害者 1200 万人を救済し、収入格差を縮小する。
イ)主要措置
12
中西由起子『アジアの障害者−環境アクセス』http://www.din.or.jp/~yukin/Envir.Access.html
18
国別情報
中国
・ 障害者も政府の救貧計画の対象とし、中央と地方の政府財政から資金を拠出す
る。
・ 小口の信用貸付を積極的に行う。
・ 一部の障害者には割引利子で融資を行う
【関連施策名】
中国障害者事業『第 10 次 5 カ年計画』綱要(社会保障シス
テム)
【施行年】
2001∼2005 年
【施策の目的/概要】
ア)目標
・ 国の社会保障制度の改革に伴い、障害者の社会保障を改善させる。
イ)主要措置
・ 生産活動に従事できない、法定扶養人がいない、法定扶養人はいるが扶養能力が
ない、収入源がない等の障害者は、規則に基づき救済する。
・ 都市部では最低生活保障制度の徹底を図り、農村部では貧困障害者の救済策を継
続する。
・ 障害を持つ労働者にも社会保険への加入を促し、養老保険、医療保険、失業保険、
労災などを適用する。
・ 障害者社会福祉機構の建設と管理を進める。
【関連施策名】
中国障害者事業『第 10 次 5 カ年計画』綱要(文化・スポーツ
活動)
【施行年】
2001∼2005 年
【施策の目的/概要】
ア)目標
・文化・スポーツ活動を通じて、障害者の心身の健全な発達を促す。
イ)主要措置
・ 障害者に公共施設を開放する。図書館は盲人向けの音声サービスや障害者用の図
書資料を充実させる。
・ 各コミュニティ、特殊教育学校、福祉企業などは、障害者を対象とした文化、芸
術、レクリエーションなどのプログラムを用意する。障害者の活動参加率を恒常
的に 10%とする。
・ 障害者の芸術団を組織し、国内外で公演活動を行う。
・ 障害を持つ運動選手の養成システムを確立し、コーチと審判、医療の各チームを
形成する。
・ 第 6 回全国障害者運動会を開催する。
【関連施策名】
中国障害者事業『第 10 次 5 カ年計画』綱要(社会環境整備)
【施行年】
2001∼2005 年
【施策の目的/概要】
ア)目標
19
国別情報
中国
・ 障害者への理解と尊重、協力を深める。
イ)主要措置
・ 義務教育の道徳教育に人道主義に関する内容を増やす。
・ 出版物やテレビニュースなど、マスコミを通じた広報活動に力を入れる。
【関連施策名】
中国障害者事業『第 10 次 5 カ年計画』綱要(バリアフリー
の推進)
【施行年】
2001∼2005 年
【施策の目的/概要】
ア)目標
・ 道路や建築物のほか、情報や交流面でもバリアフリーを実現させる。
イ)主要措置
・ 都市道路、交通施設、重要な公共建築物、住宅区、住宅を新築または改築する場
合は、関連規則に基づきバリアフリーとする。
・ バリアフリーの宣伝と、維持、管理を強化する。
・ 映画、テレビのニュースとドラマは字幕を流す。
・ サービス業に従事する者は基本的な手話をマスターする。
・ 目や耳の不自由な人用の通信設備を開発する。
【関連施策名】
中国障害者事業『第 10 次 5 カ年計画』綱要(法整備)
【施行年】
2001∼2005 年
【施策の目的/概要】
ア)目標
・ 障害者事業の関連法を整備し、障害者の権益を保護する。
イ)主要措置
・ 障害者就業条例、障害者リハビリテーション実施弁法、盲人通行保障安全規定な
どを制定する。
・ 障害の統一評定基準を制定する。
・ 農村税制の改革後も、貧困な障害者には引き続き農業税を減免する。
・ 障害者用品の輸入税を引き続き免除する。
・ 法律サービス機構は障害者を優待する。政府は障害者が受ける法サービスに対
し、資金援助を行う。
【関連施策名】
中国障害者事業『第 10 次 5 カ年計画』綱要(障害者向けサー
ビスの充実)
【施行年】
2001∼2005 年
【施策の目的/概要】
ア)目標
・ 地方に総合サービス施設を設け、現地障害者へのサービスを充実させる。
イ)主要措置
・ 市、県は総合サービス施設を建設する。
20
国別情報
中国
・ 総合サービス施設では、リハビリテーション訓練、障害児向けの言語訓練、就職
あっ旋、障害者用品の供給、レクリエーション活動などを手掛ける。
【関連施策名】
中国障害者事業『第 10 次 5 カ年計画』綱要(西部地区の障害
者事業)
【施行年】
2001∼2005 年
【施策の目的/概要】
ア)目標
・ 西部大開発戦略を機に、同地区の障害者活動を発展させる。
イ)主要措置
・ 障害者と関連のある救貧、リハビリテーション、教育、就業の各活動を強化する。
・ 障害者の救貧を目的とした融資を優先する。
・ 国内外の援助プロジェクトで、西部地区に適したものは優先的に資金を充当す
る。
【関連施策名】
中国障害者事業『第 10 次 5 カ年計画』綱要(情報ネットワー
クの構築)
【施行年】
2001∼2005 年
【施策の目的/概要】
ア)目標
・ 障害者連合会の OA 化と情報ネットワーク化を進め、障害者事業のデータバンク
を構築する。
イ)主要措置
・ 中央の障害者連合会と各省の連合会組織の間に専用のネットワークを開設する。
・ OA 化により、正確な統計・指標システムを完備する。
職業・雇用
【現状】
内務部と労働部は、若年障害者の雇用問題に積極かつ着実に取り組んでいる。雇用側
は、新規採用の場合は特殊技能を持った障害者を積極的に採用するようにしている。
1988 年には、障害を持った被雇用者が全体の労働力の 40%以上を占める公立の社会福
祉工場が全国の都市に 1600 ヶ所以上、地区や居住区の委員会が運営する社会福祉工場
が同じく 8000 ヶ所以上あった。農村部では、社会福祉工場は生産物の集荷拠点となる
多くの町に設けられ、1988 年には 5 つの省の農村部に 148 ヶ所あった13。
13
日本障害者リハビリテーション協会『アジアのリハビリテーション』1988 年
21
国別情報
中国
中国政府は税金について以下のことを規定している14。
•
職員の 35%以上が障害者である企業は、法人税の控除が受けられる。
•
職員の 50%以上が障害者である企業は、全ての課税を免除される。
•
個人経営の企業あるいは商店を経営している障害者は、控除を受けられる。
1993 年までに 381 の職業訓練校がつくられ、13 万人の障害者が訓練を受けている15。
また、特殊学校でも中等教育以上は普通科と職業科があり、職業リハビリテーション
を提供している。
中国の盲人マッサージは 1950 年代半ばに導入された。中国盲人福利会が訓練コースを
開き、その後中国盲聾唖協会のマッサージ訓練によって治療技術として大いに発展し
た。90 年代半ばまでに 20 以上の盲学校でマッサージ職業訓練コースがあり、技術学
校 4 校が新設され、吉林省の長春大学では盲人マッサージ・センターを開設している。
教育程度、治療技術、治療結果の優劣により、身分、資格が異なる。学究団体として
中国盲人マッサージ協会が設立された。
【関連施策名】
中国障害者事業『第 9 次 5 カ年計画』綱要と関連実施方案
(就業)
【施行年】
1996∼2000 年
【施策の目的/概要】
ア)目標
・障害者を斡旋し、福祉企業の安定経営を図る。障害者による起業、農業への従事
を支援し、障害者就業率を約 80%に引き上げる。
イ)主要措置
・省・市・県に障害者就業サービス機構を設立する。職業訓練、就職情報の提供と
就職斡旋を行う。
・福祉企業の管理を強化する。
・起業支援として、事業の選択、営業許可証の発行、経営、資金調達などの面で支
援する。
【関連施策名】
中国障害者事業『第 10 次 5 カ年計画』綱要(就業)
【施行年】
2001∼2005 年
14
日本障害者リハビリテーション協会『アジアのリハビリテーション』1988 年
15
中西由起子『アジアの障害者』現代書館、1996 年
22
国別情報
中国
【施策の目的/概要】
ア)目標
・ 障害者の就業サービスシステムを整備する。
・ 職業訓練を強化し、失業登録を行った障害者全員に職業指導と職業訓練を施す。
・ 就業率を約 85%に引き上げる。
イ)主要措置
・ 優遇政策により、障害者の起業を支援する。
・ 福祉企業の改革を早急に進め、知的障害者などの雇用を促す。
・ 障害者就業サービス機構を設立し、全国をカバーする就職情報ネットワークを構
築する。
・ 計画的に訓練機構を設立し、需要に応じた職業訓練を行う。
・ 訓練費用が負担できない障害者には、費用を補助する。
・ 労働市場の予測、技能検定、職業資格証書制度を導入する。
【関連施策名】
中国障害者事業『第 10 次 5 カ年計画』綱要(あんま)
【施行年】
2001∼2005 年
【施策の目的/概要】
ア) 目標
・ 視覚障害者の就業促進策の一環として、あんま業を発展させる。
イ)主要措置
・ あんまマッサージ師を 3 万 5000 人育成する。
・ 点字版、録音版の教材を編集、提供する。
・ 個人によるあんま業の開業、あんま科を開業する医療機構への就職、コミュニテ
ィへのあんまステーション(ポスト)設立を促す。
・ 訓練費用や開業費を援助する。
・ あんま指導機関を設置し、訓練計画の策定、技能検定、勤務評定、あんま業全体
の管理を行う。
地域に根ざしたリハビリテーション(CBR)
【現状】
CBR は 1986 年より世界保健機関(WHO)のマニュアルを使って実施されている。基
礎教育の人材を活用し、各市では 3 つの級より成り立っている CBR のネットワークが
ある16。
1 級:近隣委員会を 1 単位として、保健センターが中心となり自宅でのリハビリ
テーションを行う。
2 級:小地区事務所の CBR 指導グループが中心となり、リハビリテーション・
ステーション(ミニ・リハビリテーション・センター)が運営にあたる。
16
中西由起子『アジアの障害者』現代書館、1996 年
23
国別情報
中国
CBR 指導グループは、小地区事務所の副所長をリーダーとし、小地区事務
所の副所長、小地区事務所の局員、地区保健局の医療事務長、省リハビリ
テーション・センターの医師、リハビリテーション・ステーションの監督
者、障害者の代表がメンバーとなっている。
3 級:地区で地区保健局が中心となり、地区病院、省リハビリテーション・セン
ター、医科大学リハビリテーション局が運営にあたる。
【関連施策名】
中国障害者事業『第 9 次 5 カ年計画』綱要と関連実施方案
【施行年】
1996∼2000 年
【施策の目的/概要】
ア)目標
・障害者約 300 万人にリハビリテーションを施す。内訳は、白内障 120 万人、肢体
矯正 5 万人、義足などの装着 30 万人、視力補助器の提供 4 万人、聴力・言語訓練
6 万人、肢体障害者への訓練 10 万人、精神病患者への総合治療 120 万人。
・特殊用品、補助器具計 100 種類、240 万点を開発、提供する。
イ)主要措置
・家庭を基礎に、各コミュニティにある康復院(リハビリテーション院)を中心と
するリハビリテーション・サービス・ネットワークを構築する。
・各種リハビリテーションのトレーニング大綱、評価基準、トレーニング手帳など
を編纂するとともに、簡単で安価なトレーニング器具を製造する。
・リハビリテーションの需要を把握し、訓練方法を策定する。実施場所の確保、方
法の伝授、巡回指導などを行う。
・聴力・言語トレーニングのトレーナーを養成する。
・安価な補聴器、言語トレーニング器具、テスト器具の開発、生産、供給を組織的
に行う。
・家庭内トレーニングを普及させるために、保護者への研修を実施する。
・障害者向け用品・器具の供給ネットワークを構築する。
【関連施策名】
中国障害者事業『第 10 次 5 カ年計画』綱要
【施行年】
2001∼2005 年
【施策の目的/概要】
ア)目標
・ 510 万人の障害者にリハビリテーションを施す。
イ)主要措置
・ 白内障手術を年間 40 万例手掛ける。へき地、少数民俗地区に人員を派遣し、手
術を行う。
・ 弱視者用の視力補助器を研究・開発し、10 万人に提供する。
・ 8 万人の聴覚障害児に聴力・言語訓練を施す。北京聴力言語リハビリテーション
技術学院を設立する。聴覚障害児のリハビリテーション専門家の養成を国家教育
計画に組み入れる。
24
国別情報
中国
・ ハンセン病による障害患者 12 万人に手術を行う。
・ 障害者用品の供給基地を 200 カ所建設し、実需に見合った同用品 250 万点を供給
する。
・ 6 万人に義肢を提供する。
・ コミュニティのリハビリテーション活動を強化する。地方政府は活動計画を策定
し、各地のリハビリテーション機関、リハビリテーション協会、総合病院リハビ
リテーション科は技術指導とサービス提供に努める。
・ 12 万人の障害者に機能回復訓練を、8 万人の知的障害者に能力訓練を行う。
【関連施策名】
【施行年】
中国障害者事業『第 10 次 5 カ年計画』綱要(コミュニティ
活動)
2001∼2005 年
【施策の目的/概要】
ア)目標
・ 障害者と最も密接に関係しているコミュニティのサービス機能を強化する。
イ)主要措置
・ 地方政府は障害者を組み入れたコミュニティ建設計画を策定する。
・ コミュニティにある各種サービス機構は、障害者用の設備、器具を揃える。
・ コミュニティの住民委員会は、家庭を中心としたリハビリテーション訓練活動を
展開する。
・ 障害者の生活を手助けするボランティア要員を募る。
情報とコミュニケーション
【現状】
中国の手話は各省によって違うため、中国聾協会が中心となり手話の標準化と普及事
業を進めている17。
3-5.
障害分野専門家・ワーカー
【職種名】
【役割と活動】
【養成・資格制度】
理学療法士(PT)
理学療法
首都医科大学リハビリテーション医学
院、中山医科大学での訓練。資格制度
はない。
作業療法士(OT)
作業療法
首都医科大学リハビリテーション医学
院、中山医科大学での訓練。資格制度
はない。
17
財団法人全日本ろうあ連盟 日本手話研究所『アジアの手話第 3 集』2001 年
25
国別情報
中国
リハビリテーション
技師
理学・作業療法
南京医科大学での訓練。資格制度は無
し。
リハビリテーション
医師
医科大学のリハビリテーション医師課
程を卒業。または医師から転職。職業
医師法による国家ライセンスが必要。
衛生部によると、中国には現在、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)を専門に養成
する学校は首都医科大学リハビリテーション医学院(北京)、中山医科大学(広東)の
2校しかない。このうち、首都医科大学リハビリテーション医学院のリハビリテーシ
ョン専科は 3 年制で、PT と OT を分けずに育成し、卒後は就職先の医療施設の需要に
従い、PT または OT として勤務する。南京医科大学などでは PT、OT としてではなく、
リハビリテーション技師として育成している。また、在職者向けの研修も行われてい
る。中国では PT、OT の大学教育はまだない状態であり、資格制度も制定されていな
い。
このほかの関連職種であるリハビリテーション医師は、医科大学のリハビリテーショ
ン医師課程(5 年制)を卒業、または医師から転職したケースが多い。大学卒業後は
職業医師法(1999 年施行)により国家試験を受けねばならず、合格するとリハビリテ
ーション医師としてのライセンスが認められる。
中国障害者連合会によると、リハビリテーション医師は全国で 1 万 2000∼1 万 8000
人、理学療法士 5 万 8000∼31 万 7000 人、作業療法士 1 万 7000∼9 万人、言語療法士
1 万∼5 万 5000 人が必要とされているが、これら専門家の需要を満たすにはほど遠い
状態にある。上記のリハビリテーション専門職の養成は急務であり、さらに家庭を基
盤に行う地域のリハビリテーションを進めるワーカーの育成も重要な課題である。
養護教員、ソーシャルワーカーの養成については不明である。
26
国別情報
中国
4.
4-1.
障害関連団体における活動の概況
障害関連団体による活動
中国では、障害者のためのサービスは、政府行政機関、公社、および地域によって行
われることになっている。したがって、障害者自身の手によって多くの活動が行われ
ているわけではない。しかし、ますます増えてきた障害者のニーズと活動に対して政
府行政機関や地域だけでは十分に応えきれなくなってきた。
障害者のニーズを代表し、法的権利と利益を獲得し、より良いサービスを得るため障
害者の全国組織が不可欠となったため、1984 年に設立された中国障害者福祉基金が改
変され、中国障害者連合会(China Disabled Persons’ Federation)として 1988 年に再設
立された。省(100%)、地・市(95%)、県(73%)に地方組織がある。半官半民の全
国団体として、サービスの提供を行い、行政にも関与している。専門家によるサービ
ス提供団体ではあるが、障害者を代表する組織ともなっており、盲人協会、聾唖協会、
身体障害者協会、精神薄弱者協会、精神障害者協会が加入している。また、中国を代
表する障害者組織としてインクルージョンインターナショナル、障害者インターナシ
ョナル、世界盲人連合、世界ろう連盟など主だった国際的障害者NGOに加盟してい
ると共に、国連などの国際会議にも政府代表として参加している18。
障害者スポーツについては近年ますます盛んになっており、1981 年に設立された中国
障害者スポーツ協会は、切断者、脊髄損傷者、視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者
やその他の肢体不自由者に様々なスポーツ競技を提供している。
1980 年代の改革開放以降、中国にも NGO が登場し、その数を増やしている。NGO は
社団(社会団体)、基金会、民営非企業単位(機関)の 3 種類に分類できる。障害者関
連では、民営非企業単位に特殊学校が含まれ、社団や基金会に福祉活動を行う組織が
含まれる。障害者関連の NGO の詳細については不明である。
18
長瀬修「中国−権利と予防」(『福祉労働』1997 年 9 月)
27
国別情報
中国
【関連施策名】
中国障害者事業『第 10 次 5 カ年計画』綱要
【施行年】
2001∼2005 年
【施策の目的/概要】
ア)目標
・ 障害者団体のシステムを改善し、指導部のレベルアップを図り、障害者の社会生
活能力の強化につなげる。
イ)主要措置
・ 既存の組織を改編し、作業効率をアップさせる。
・ 指導部の若年化を進めるとともに、優秀な障害者の抜てきする。
・ 指導者養成計画を策定し、向こう 5 年以内に該当者全員が研修を受ける。
4-2.
国際機関・その他の機関の障害分野に関する援助実績
国際機関・その他機関の援助実績
国連児童基金(UNICEF)は 1990 年から 1995 年までに合計 94 万 5500 米ドルにおよ
ぶ、障害児の障害の予防、早期警告・発見・療育のための CBR プロジェクトを実施し
た。CBR に関しては過去 WHO や国連開発計画(UNDP)によるプロジェクトも行わ
れている。
障害の予防に関しては、UNICEF や WHO が予防接種のプロジェクトを実施している
ほか、WHO は視覚障害予防計画として、1990 年から 1993 年まで 10 万 3208 米ドルを
費やし、視覚障害の予防とリハビリテーションを実施した。そのほかにも UNICEF で
は 1985 年から 1990 年まで特殊教育に従事する教員の育成支援を行った。
二国間援助では、1992 年にノルウェーがリハビリテーションセンターのプロジェクト
を実施しているほか、カナダが 1986 年から 1992 年までリハビリテーションの技術支
援を行っている。またベルギー政府は 1992 年から 1996 年までの障害者の福祉計画と
して、機材や技術を供給している。近年ではオーストラリア政府による視覚障害予防
計画も行われた。
【関連施策名】
中国障害者事業『第 10 次 5 カ年計画』綱要(国際交流と国際
協力)
【施行年】
2001∼2005 年
【施策の目的/概要】
ア)目標
国際交流と国際協力を活発に行い、中国障害者事業の海外への影響力を増す。
イ)主要措置
28
国別情報
中国
・ 障害者事業の対外宣伝を強化し、中国社会の発展と人権保護の状況を示す。
・ 国連を含む海外の関連機構との交流・提携を深め、資金と最新技術を導入する。
日本の援助実績
日本政府は中国リハビリテーション研究センターに協力している。1986 年から 91 年
まで 5 年間にわたり、センター建設に必要な無償資金協力(34 億円)とセンター要員
の人材養成を目的としたプロジェクト方式技術協力を実施することとなり、協力を行
った。
協力の内容は以下のとおり。
(1) リハビリテーション医学
(2) 理学療法
(3) 作業療法
(4) 言語療法
(5) リハビリテーション看護
(6) 義肢装具・福祉関連機器製作
(7) リハビリテーション工学、臨床・放射線検査・センターの管理運営他
このプロジェクトでは、日本から 150 人に上る専門家の派遣、研修員の受け入れ、機
材供与を通しての技術移転が行われた。
「草の根無償資金協力」としては 2001 年に「龍岩氏長汀県障害者リハビリテーション
センター」の医療機器整備のために、日本の外務省が約 500 万円の支援をしている。
また、1992 年には「海南省聴覚障害者教育支援計画」では聴覚障害者の教育機器・補
そう具の支援で 433 万円を提供した。
また、2002 年 3 月現在、理学療法士と作業療法士(各 1 名)の青年海外協力隊が派遣
されている。
29
国別情報
中国
5.
参考資料
この報告書は、主に JICA による調査報告書に基づいている。
JICA 調査報告書:
JICA『中国障害者情報』2001 年
その他の資料:
財団法人全日本ろうあ連盟 日本手話研究所『アジアの手話第 3 集』2001 年
中西由起子『アジアの障害者』現代書館、1996 年
中西由起子『アジア太平洋の障害者の教育』
[引用 2002 年 3 月 1 日、http://www.din.or.jp/~yukin/ED.html]
長瀬修「中国−権利と予防」(『福祉労働』1997 年 9 月)
日本障害者リハビリテーション協会『アジアのリハビリテーション』1988 年
UN-ESCAP. Asian and the Pacific Decade of Disabled Persons: Mid-Point ~Country
Perspective. New York: United Nations.
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