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肛門、陰部等の粘膜や、創傷部位及び皮膚からの、緑膿菌、枯草
JP WO2004/091640 A1 2004.10.28 (57)【 要 約 】 目、鼻、喉、耳、肛門、陰部等の粘膜や、創傷部位及び皮膚からの、緑膿菌、枯草菌、炭 疽菌、大腸菌、黄色ぶどう球菌、MRSA等の感染性細菌やインフルエンザウイルス等の ウイルスの体内への侵入を効果的に抑制するとともにその増殖を抑制することができる皮 膚保護組成物;耐性菌による院内感染等を効果的に予防できる皮膚保護組成物;院内感染 を含む細菌感染やウイルス感染の予防及び/又は治療用組成物;防腐剤;感染性細菌やウ イルスの侵入を効果的に抑制するとともにその増殖を抑制することができる濾過装置を提 供する。 ササエキス、又はササエキスと有機酸を有効成分として含有することを特徴と する、皮膚保護組成物、耐性菌による院内感染等を効果的に予防できる皮膚保護組成物; 院内感染を含む細菌感染やウイルス感染の予防及び/又は治療用組成物;防腐剤;又は感 染性細菌やウイルスの侵入を効果的に抑制することができる濾過装置。 10 (2) JP WO2004/091640 A1 2004.10.28 【特許請求の範囲】 【請求項1】 ササエキスを有効成分として含有する皮膚保護組成物。 【請求項2】 ササエキスを有効成分として含有する細菌感染予防及び/又は治療用組成物。 【請求項3】 ササエキスを有効成分として含有するウイルス感染予防及び/又は治療用組成物。 【請求項4】 ササエキスを有効成分として含有する院内感染の予防及び/又は治療用組成物。 【請求項5】 10 さらに有機酸を含有する請求項1∼4のいずれか1項記載の組成物。 【請求項6】 口腔組成物の形態にある請求項1∼5のいずれか1項記載の組成物。 【請求項7】 グミ、ゼリー、トローチ、キャンディー、チューインガム、ジャム、シャーベット、クリ ーム、あめ、カステラ、クッキー、チョコレート、せんべい等の菓子類、パン類、麺類、 飲料水、錠剤、丸剤、洗口剤、嗽剤、歯磨き、皮膚貼付フイルム、咽頭部炎症治療用噴霧 剤の形態にある請求項6記載の組成物。 【請求項8】 保護布の形態にある請求項1∼5のいずれか1項記載の組成物。 20 【請求項9】 ガーゼ、マスク、眼帯、生理帯、生理用ナプキン、包帯、トイレットペーパー、痔疾処置 用ガーゼ、便座シート、靴の下敷き、耳栓、手袋、帽子、白衣、シーツ、布団カバー、枕 カバー、カーテン、壁紙、カーペット、手術用縫合糸の形態にある請求項8記載の組成物 。 【請求項10】 ガーゼの形態にある請求項8記載の組成物。 【請求項11】 請求項10記載のガーゼを含むマスク。 【請求項12】 30 ササエキスを有効成分として含有する防腐剤。 【請求項13】 有効成分がさらに有機酸を含有する請求項12記載の防腐剤。 【請求項14】 ササエキスを有効成分として含有する濾過装置。 【請求項15】 有効成分がさらに有機酸を含有する請求項14記載の濾過装置。 【請求項16】 換気扇、エアコン、空気吸入口、空気排出口、網戸、空気清浄機、電気掃除機等の空気が 通過する部位に使用されるフィルターの形態にある請求項14又は15記載の濾過装置。 40 【請求項17】 請求項14∼16のいずれか1項記載の濾過装置を含む空気清浄機。 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 本発明は、皮膚保護組成物に関し、特に、目、鼻、喉、耳、肛門、陰部等の粘膜や、創 傷部位からの感染性細菌やウイルスの体内への侵入を効果的に抑制するとともに、その増 殖を抑制することができる皮膚保護組成物に関する。本発明はまた、防腐剤に関する。本 発明はさらに、感染性細菌やウイルスの侵入を効果的に防止するとともに、その増殖を抑 制することができる濾過装置に関する。 【背景技術】 50 (3) JP WO2004/091640 A1 2004.10.28 緑膿菌、枯草菌、炭疽菌、大腸菌、黄色ぶどう球菌等の感染性細菌やインフルエンザウ イルス等のウイルスは、空気中に浮遊し、ヒトや動物の粘膜や創傷部位から体内に侵入し 、ヒトや動物に重篤な感染症を引き起こす。このような細菌感染症に対しては種々の抗生 物質が使用されてきている。しかし、抗生物質が多用された結果、従来の抗生物質が全く 効かないメシチリン耐性黄色ぶどう球菌(MRSA)等の種々の抗生物質耐性菌が出現し ている。その結果、病院内で患者や医者、看護士等が耐性菌に感染し、場合によっては死 亡に至る例も少なくない。 一方、最近米国において、炭疽菌を含む郵便物が政治家やマスコミ関係者等に送りつけ られ、これを無防備で開封した複数の当事者が炭疽菌に感染し、死亡者も出るに至り、社 会的な恐怖を引き起こしている。そして公共業務に携わる者のみならず一般市民の間でも 10 このような生物兵器に対する適切な防御手段が緊急に望まれる事態に立ち至っている。 【発明の開示】 従って、本発明の目的は、目、鼻、喉、耳、肛門、陰部等の粘膜や、創傷部位及び皮膚 から緑膿菌、枯草菌、炭疽菌、大腸菌、黄色ぶどう球菌、MRSA、ガス壊疽菌、破傷風 菌、ボツリヌス菌等の感染性細菌やヘルペスウイルス、インフルエンザウイルス、コロナ ウイルス等のウイルスの体内への侵入を効果的に抑制するとともに、その増殖を抑制する ことができる皮膚保護組成物を提供することである。 本発明の他の目的は、いわゆる耐性菌による院内感染等を効果的に予防できる皮膚保護 組成物を提供することである。 本発明の他の目的は、院内感染を含む細菌感染やウイルス感染の予防及び/又は治療用 20 組成物を提供するものである。 本発明のさらに他の目的は、防腐剤を提供することである。 本発明のさらに他の目的は、感染性細菌やウイルスの侵入を効果的に抑制するとともに 、その増殖を抑制することができる濾過装置を提供することである。 本発明は、以下の皮膚保護組成物、細菌感染やウイルス感染の予防及び/又は治療用組 成物、防腐剤及び濾過装置を提供するものである。 1.ササエキスを有効成分として含有する皮膚保護組成物。 2.ササエキスを有効成分として含有する細菌感染予防及び/又は治療用組成物。 3.ササエキスを有効成分として含有するウイルス感染予防及び/又は治療用組成物。 4.ササエキスを有効成分として含有する院内感染の予防及び/又は治療用組成物。 30 5.さらに有機酸を含有する上記1∼4のいずれか1項記載の組成物。 6.口腔組成物の形態にある上記1∼5のいずれか1項記載の組成物。 7.グミ、ゼリー、トローチ、キャンディー、チューインガム、ジャム、シャーベット、 クリーム、あめ、カステラ、クッキー、チョコレート、せんべい等の菓子類、パン類、麺 類、飲料水、錠剤、丸剤、洗口剤、嗽剤、歯磨き、皮膚貼付フイルム、咽頭部炎症治療用 噴霧剤の形態にある上記6記載の組成物。 8.保護布の形態にある上記1∼5のいずれか1項記載の組成物。 9.ガーゼ、マスク、眼帯、生理帯、生理用ナプキン、包帯、トイレットペーパー、痔疾 処置用ガーゼ、便座シート、靴の下敷き、耳栓、手袋、帽子、白衣、シーツ、布団カバー 、枕カバー、カーテン、壁紙、カーペット、手術用縫合糸の形態にある上記8記載の組成 40 物。 10.ガーゼの形態にある上記8記載の組成物。 11.上記10記載のガーゼを含むマスク。 12.ササエキスを有効成分として含有する防腐剤。 13.有効成分がさらに有機酸を含有する上記12記載の防腐剤。 14.ササエキスを有効成分として含有する濾過装置。 15.有効成分がさらに有機酸を含有する上記14記載の濾過装置。 16.換気扇、エアコン、空気吸入口、空気排出口、網戸、空気清浄機、電気掃除機等の 空気が通過する部位に使用されるフィルターの形態にある上記14又は15記載の濾過装 置。 50 (4) JP WO2004/091640 A1 2004.10.28 17.上記14∼16のいずれか1項記載の濾過装置を含む空気清浄機。 【発明を実施するための最良の形態】 以下本発明を詳細に説明する。 ササエキス 本発明の有効成分であるササエキスの原料として使用するササは、特に限定されず、サ サ属(Sasa)に属するすべてのササが例示される。例えば、クマイザサ、クマザサ、 チシマザサ、オクヤマザサ、エゾミヤマザサ、チマキザサ、ヤヒコザサ、オオバザサ、ミ ヤマザサ、センダイザサ、ユカワザサ、アボイザサ、オヌカザサ等が挙げられる。これら のうち、市販品の具体例としてはクマイザサ、クマザサ(チュウゴクザサ、ヒダザサ)等 のエキスが挙げられる。例えば、北海道天塩山系で7∼10月に採取されたクマイザサ、 10 クマザサの水抽出物等が好ましい。 本発明に使用するササエキスは、ササの生葉又は乾燥葉、好ましくは乾燥葉を、100 ∼180℃の水で、常圧又は加圧抽出して得られるものが好ましい。 抽出方法は特に限定されないが、例えば、特許第3212278号(特開平11−19 6818号公報)に記載された方法を使用することができる。さらに具体的には、加圧熱 水抽出機により100∼180℃、5∼30分処理してエキスを抽出し、該エキスを水分 分離器により含水固形分(含水率40∼70%)と分離し、次に飽和水蒸気加熱処理機に より該含水固形分を100℃∼200℃で5分∼60分処理した後、再度加圧熱水抽出機 により100℃∼180℃で5∼30分処理してエキスを抽出させ、第1回目と第2回目 のエキスを合わせて使用する。また、ササ乾燥葉を例えば、60∼100℃の水で30分 20 ∼12時間程度抽出して得られるエキスも使用できる。 ササエキスを固形分で50質量%含有する市販品としては、株式会社クロロランド・モ シリ製「AHSS」等がある。 こうして得られるササエキスは硫黄成分を含有しており、その含有量は硫黄に換算して 、ササエキスの固形分1gあたり約4∼10mg、通常は約6∼9mgである。硫黄成分 のうち主たる成分は含硫アミノ酸と考えられる。 本発明の組成物は、ササエキス由来の硫黄成分を、硫黄に換算して100g当り、好ま しくは4∼500mg、さらに好ましくは8∼250mg、最も好ましくは16∼150 mg含有する。 また、ササエキスはタンニンを含んでおりその含有量はササエキスの固形分に対して5 30 ∼15質量%程度である。 本発明の組成物は、ササタンニンを固形分濃度で好ましくは0.05∼7.5質量%、 さらに好ましくは0.1∼6質量%含有することが望ましい。 本発明の組成物は、ササエキスのみを有効成分とするものであっても良いし、これに適 量の有機酸を併用することにより、その治療及び/又は予防効果をさらに向上させること ができる。このような有機酸としては、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、シュウ酸、マロン酸 、コハク酸、フマル酸、酢酸、安息香酸、フェニル酢酸、サリチル酸、フェノール類等が 挙げられる。 有機酸の使用量は、本発明の組成物中、好ましくは0.01∼5質量%、さらに好まし くは0.02∼3質量%、最も好ましくは0.05∼1.5質量%である。 40 皮膚保護組成物、細菌感染及びウイルス感染予防及び/又は治療用組成物 本発明の皮膚保護組成物、細菌感染及びウイルス感染予防及び/又は治療用組成物は、 目、鼻、喉、耳、肛門、陰部等の粘膜や、創傷部位及び皮膚からの感染性細菌やウイルス の体内への侵入を効果的に抑制し、院内感染を含む細菌感染やインフルエンザウイルス、 ヘルペスウイルス、コロナウイルス等のウイルス感染を効果的に予防し、及び/又は治療 するものである。 本発明は、ササエキスを有効成分として含有する皮膚保護組成物、細菌感染やウイルス 感染の予防及び/又は治療用組成物の形態としては、皮膚保護布や口腔組成物が挙げられ る。 皮膚保護布は、通気性を有する担体、例えば、シルク、綿、麻、羊毛等の天然繊維、ポ 50 (5) JP WO2004/091640 A1 2004.10.28 リウレタン、ビニロン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、アクリル等の合成繊 維、半合成繊維あるいはこれらの2種以上の混合物の繊維自体又は糸、又はその織布、編 布、不織布、紙等にササエキスを含浸、噴霧等の方法により含有させたものである。この 明細書中「保護布」には、便宜上、布の他、繊維自体、糸、紙等も含むものとする。 具体的な形態としては、ガーゼ、マスク、眼帯、生理帯、生理用ナプキン、包帯、トイ レットペーパー、痔疾処置用ガーゼ、便座シート、靴の下敷き、耳栓、水絆創膏等の衛生 用品に分類される粘膜や皮膚に直接接触する保護布の他、白衣等の衣類、手袋、帽子、靴 下、足袋等の衣料品小物、シーツ、布団カバー、枕カバー、ベッド用品等の寝具類、カー テン、壁紙、カーペット等の室内装飾品及び内装材料、手術用縫合糸等の医療材料等、皮 膚に直接又は間接に接触する物品、まな板等の調理用具も挙げられる。 10 本発明のササエキスを含有する口腔組成物としては、例えば、グミ、ゼリー、トローチ 、キャンディー、チューインガム、ジャム、シャーベット、クリーム、あめ、カステラ、 クッキー、チョコレート、せんべい等の菓子類、パン類、麺類、飲料水、、錠剤、丸剤、 洗口剤、嗽剤、歯磨き、皮膚貼付フイルム、咽頭部炎症治療用噴霧剤、等が挙げられる。 ササエキスを、皮膚保護布に含有させるには、例えば、保護布をササエキスの2∼20 質量%水溶液に含浸し、あるいは、保護布にササエキスの2∼20質量%水溶液を噴霧し 、乾燥すればよい。この際、ササエキスの含浸量又は噴霧量は、ササエキスの固形分で好 ましくは2∼20質量%、さらに好ましくは6∼15質量%、最も好ましくは8∼12質 量%程度とするのが適当である。2質量%未満では、目的とする効果の発現が不十分であ ることがあり、また、20質量%を超えると、皮膚や粘膜がひりひりすることがあり、ま 20 た、効果のさらなる向上は少ないので不経済である。 本発明の皮膚保護組成物は、ササエキス由来の硫黄成分を、硫黄に換算して保護組成物 100g当り、好ましくは8∼200mg、さらに好ましくは24∼150mg、最も好 ましくは32∼120mg含有する。 ササエキスを、例えば、グミ、ゼリー、トローチ、キャンディー、チューインガム、ジ ャム、シャーベット、クリーム、あめ、カステラ、クッキー、チョコレート、せんべい等 の菓子類、パン類、麺類、飲料水、、錠剤、丸剤(例えば、笹丹)、洗口剤、嗽剤、歯磨 き、皮膚貼付フイルム、等の口腔組成物に含有させるには、口腔組成物製造のいずれかの 段階で、口腔組成物原料に対して、ササエキスの固形分で好ましくは2∼20質量%、さ らに好ましくは6∼15質量%、最も好ましくは8∼12質量%程度添加するのが適当で 30 ある。2質量%未満では、目的とする効果の発現が不十分であることがあり、また、20 質量%を超えると、皮膚や粘膜がひりひりすることがあり、また、効果のさらなる向上は 少ないので不経済である。 保護布又は口腔組成物にササエキスを含有させる際、又は含有させた後、70∼90℃ 、好ましくは75∼85℃の温度で30分∼3時間、好ましくは1∼2時間加熱処理する ことが望ましい。加熱処理することにより、皮膚保護効果が格段に向上する。 本発明の口腔組成物には、剤型により適宜適切な慣用の成分を配合することができる。 例えば、ぶどう糖、乳糖、蔗糖、水あめ、デキストリン、シクロデキストリン等の賦形剤 、アラビアガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、ガムベース 等の結合剤、澱粉等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、蔗糖脂肪酸エステル等の滑沢 40 剤、香料、クロロフィル、ハッカ、メントール等の清涼化剤等が挙げられる。 本発明の皮膚保護組成物を保護布の形態で使用する場合、粘膜や創傷部位に接触する部 位の保護布(ガーゼ等)にササエキスを含有させておき、これを1日1∼3回程度交換す ればよい。手術用縫合糸の形態で使用した場合、縫合患部からの細菌の侵入を効果的に抑 制し、患部の炎症を抑制し、手術部位の回復を促進する。 病院等における院内感染防止のために本発明の皮膚保護組成物を保護布の形態で使用す る場合、本発明の皮膚保護組成物の感染防止効果は長期間にわたり存続する。洗濯により その効果が低減した場合には、適宜交換するか、ササエキスを再度含有させるための処理 を行えば良い。 本発明の皮膚保護組成物を口腔組成物の形態で使用する場合、その摂取量は特に限定さ 50 (6) JP WO2004/091640 A1 2004.10.28 れないが、ササエキスの固形分として、2∼15mg程度を、例えば、1日1∼5回、通 常は1∼3回程度摂取すればよい。摂取量、摂取回数は目的に合わせて適宜増減すればよ い。 本発明の皮膚保護組成物は、ササエキスを固形分で2∼20質量%含有しており、従来 、抗生物質が効かない耐性菌に対しても顕著な殺菌効果を示す。 また、本発明の皮膚保護組成物を口腔組成物として使用する場合、適宜、必要な際に、 口に含んでおくことにより、極めて簡便に感染性細菌やウイルスの感染を予防し、またそ の増殖を抑制することができる。また、チューインガム、キャンディー等の徐放性形態の 組成物はその効果を長時間にわたって発揮することができ有利である。 本発明の皮膚保護組成物は、軟膏、クリーム、ジェル、ゲル、ローション、オイル、石 10 けん、シャンプー等の形態で使用することもできる。ササエキスを固形分で2∼20質量 %含有する軟膏、クリーム、ジェル、ゲル、ローションやオイル(例えば、ホホバオイル 、グレープミードオイル、オリザオイル)を、皮膚等に塗布しておくことにより、極めて 簡便に感染性細菌やウイルスの感染を予防し、またその増殖を抑制することができる。 防腐剤 本発明はまた、ササエキスを有効成分として含有する防腐剤を提供するものである。防 腐剤として使用する際の形態は特に限定されない。防腐対象となる組成物としては、例え ば、食品、飲料水、調味料、化粧品(ローションやオイルを含む)、創傷部位治療用噴霧 剤、咽頭部炎症治療用噴霧剤等が挙げられる。これらの対象物にササエキスを固形分で好 ましくは2∼20質量%、さらに好ましくは6∼15質量%、最も好ましくは8∼12質 20 量%程度含有させるのが適当である。2質量%未満では、目的とする防腐効果の発現が不 十分であることがあり、また、20質量%を超えても、効果のさらなる向上は少なく不経 済であり、食品に添加した場合には、食品の味が変化してしまうことがあり好ましくない 。 濾過装置 本発明はまた、ササエキスを有効成分として含有する空気の濾過装置を提供するもので ある。具体的な形態としては、換気扇、エアコン、カーエアコン、空気吸入口、空気排出 口、網戸、空気清浄機、電気掃除機等の空気が通過する部位に使用されるフィルターが挙 げられる。フィルターの素材は特に限定されないが、シルク、綿、羊毛、麻等の天然繊維 、ポリウレタン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ビニロン等の合 30 成繊維、半合成繊維、ガラス繊維あるいはこれらの2種以上の混合物の織布、編布、不織 布、紙等が挙げられる。これらのフィルターにササエキスの水希釈液を、含浸、噴霧等の 方法により含有させ、乾燥すればよい。フィルター中のササエキスの含有量は、固形分で 好ましくは2∼20質量%、さらに好ましくは4∼15質量%、最も好ましくは6∼8質 量%程度とするのが適当である。2質量%未満では、目的とする殺菌、除菌、繁殖防止効 果の発現が不十分であることがあり、また、20質量%を超えても、効果のさらなる向上 は少ないので不経済である。このフィルターを通過させると、空気中に存在する細菌類や ウイルスは、濾過されるとともに、殺菌されるかあるいはその増殖が抑制されるので、フ ィルター上で細菌やウイルスが繁殖するのを防止することができる。 以下に参考例、実施例、試験例を示し、より詳細に本発明を説明するが、本発明はこれ 40 らに限定されないことは言うまでもない。なおこの明細書中「%」は、他に明記しない限 り「質量%」である。 参考例1 ササエキスの製造 北海道天塩山系で9月に採集されたクマザサの乾燥葉を、加圧熱水抽出タンクに入れ、 125℃で10分処理し、冷却水で熱水を80℃程度まで冷却し、エキスと含水固形分を スクリュープレスで分離して、含水率を約50質量%とした。次に、約50質量%含水固 形分をオートクレーブに入れ、180℃で10分、飽和水蒸気による加圧熱処理を行った 。処理した含水固形分を、再度加圧熱水抽出タンクに入れて110℃で5分処理してエキ スを抽出させた。第1回目と第2回目のエキスを合わせ、珪藻土濾過し、固形分50質量 %となるまで減圧濃縮し、110∼130℃の流動殺菌処理をしてササエキスを得た。 50 (7) JP WO2004/091640 A1 2004.10.28 このササエキス中の硫黄含有量は3850μg/ml(7.7mg/固形分1g)であ った。 参考例2 有機酸含有ササエキス 参考例1で製造したササエキス(固形分50質量%)100gにリンゴ酸0.5g、1 g、1.5g又は2gを加え、有機酸含有ササエキスを製造した。 実施例1 チューインガムの製造 恒温槽で30分間60℃に加温したガムベース100gに、参考例1で製造したササエ キス(固形分50質量%)2∼15gを加え2分間練合し、再び60℃にて10分間加温 した。得られた練合物を放冷し、圧延して厚さ約1mmの板状チューインガム(及び丸状 等種々の型のチューインガム)を製造した。 10 実施例2 丸剤の製造 下記の組成(単位は質量%)の配合物をニーダーで均一に混合し、次いでこれを造粒機 で成形して丸剤を製造した。 20 30 実施例3 保護ガーゼ シルク製のガーゼに、参考例1で製造したササエキス(固形分50質量%)を水で10 倍に希釈した液を噴霧し、80℃で1時間乾燥し、ササエキスを固形分で8.8質量%含 有する保護ガーゼを製造した。 40 実施例4 保護ガーゼ シルク製のガーゼに、参考例2で製造したササエキス(固形分50質量%)を水で6倍 に希釈した液に80℃で1時間浸漬し、80℃で1時間乾燥し、ササエキスを固形分で8 質量%含有する保護ガーゼを製造した。 実施例5 保護マスク 実施例3又は4の保護ガーゼを、複数枚のガーゼからなるマスクの内側に挿入して保護 マスクを製造した。 実施例6 空気清浄機 通常の空気清浄機に使用されているフィルターを、参考例2で製造したササエキス(固 形分50質量%)を水で6倍に希釈した液に80℃で1時間浸漬し、80℃で1時間乾燥 50 (8) JP WO2004/091640 A1 2004.10.28 し、ササエキスを固形分で8質量%含有するフィルターを製造した。これを空気清浄機に 取り付けた。 試験例1 抗菌性試験 実施例3で製造した保護ガーゼ(ササエキス固形分8.8質量%含有)と、ササエキス を含有しないシルク製ガーゼ(対照ガーゼ)を用意した。 各ガーゼ(5×7cm)に、下記の菌液(菌数約5.0×10 ×10 5 4 個/ml又は約5.0 個/ml)を1ml滴下し、孵卵器中37℃で12時間静置培養した。培養終了 後、ガーゼを液体培地10mlで十分洗浄し、被験液を作成した。これをプレインハート 寒天平板培地にスパイラルシステム(NASAシステム、米国)を用いて塗布した。孵卵 器中37℃で18時間静置培養した。プレインハート寒天平板上のコロニー数を計測した 10 。結果を表1及び表2に示す。 20 30 40 表1及び表2において括弧内の数字は、菌数を一般表示により示したものである。 本発明のササエキス含有ガーゼでは、12時間培養後、菌数が約1000分の1ないし 10000分の1に減少しているのに対し、ササエキスを含まないガーゼでは、菌数が約 100倍以上に増大している。これは、本発明のササエキス含有ガーゼが優れた抗菌性を 有すること、特に抗生物質が効かない耐性菌MRSAに対しても顕著な抗菌性を有するこ とを示している。 試験例2 炭疽菌に対する増殖抑制試験 1.試験方法 使用菌株:炭疽菌34−F2(毒素産生、莢膜非形成弱毒株)の芽胞液。0.1ml当り 50 (9) JP WO2004/091640 A1 2004.10.28 34,000個に調整し使用した。 被験液:ササエキス固形分50質量%液 検査方法:上記被験液を滅菌蒸留水にて希釈し、25%、12.5%、6.25%、3. 2%、1.6%、0.8%、及び0.4%液を調整し、以下の2通りの検査を行った。対 照として滅菌蒸留水を使用した。 1)上記で作製した10種の50∼0%の被験液各1mlに、炭疽菌34−F2の芽胞液 を0.1ml混合し、37℃で24時間静地後、その0.1mlをBrain Hear t Infusion(BHI)寒天培地上に塗抹し、37℃24時間培養後、集落の発 育を観察した。この際、滅菌蒸留水にて菌数の増減も観察した。 2)上記で作製した10種の50∼0%の被験液各10mlに、2倍濃度のBHI寒天を 10 加え、寒天平板を作製した。それぞれの培地上に炭疽菌34−F2の芽胞液0.1mlを 塗抹し、37℃24時間培養後、集落の発育を観察した。 2.結果 結果を下記の表3に示す。 20 3.結論 試験したササエキスは炭疽菌芽胞体に対しての滅菌力は確認できなかったが、炭疽菌の 増殖を強く抑制した。この結果、ササエキスを含有する本発明の皮膚保護組成物は、炭疽 30 菌の増殖を抑え、結果的に炭疽菌による感染を防止できるものである。 試験例3 インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス効果試験 1.試験方法 ウイルスは、単純ヘルペスウイルス(HSV)HF株、単純ヘルペスウイルス(HSV )UW株、インフルエンザウイルス(Inf.)A/PR/8株、インフルエンザウイル スは(Inf.)A/FM/1/47株を用いた。使用培養細胞は、HSVはVero細 胞(アフリカミドリザル腎由来)、Inf.はMDCK細胞(イヌ腎由来)を用いた。 抗ウイルス効果は、ウイルス液10μlを、参考例1で製造したササエキスを滅菌蒸留 水で希釈したもの1mlと混合後、24ウエルプレート中、室温(23±3℃)で培養し た株化細胞に10μl接種し、このプレートを37℃でCO2 インキュベーター内で培養 40 し、細胞変性効果(CPE)の程度を次の基準によりより判定した。対照には蒸留水(D W)を用いた。 NT:試験せず、4+:ウエル全面にCPE、3+:ウエルの75%以上でCPE、2+ :ウエルの50∼75%でCPE、+:ウエルの25∼50%でCPE、±:ウエルの2 5%以下でCPE、−:CPE観察されず 電子顕微鏡サンプルは、培養細胞にウイルスを20時間感染させ、希釈したササエキス で処理し、定法に従い固定観察した。 2.結果 単純ヘルペスウイルス(HSV)HF株、単純ヘルペスウイルス(HSV)UW株、イ ンフルエンザウイルス(Inf.)A/PR/8株、インフルエンザウイルスは(Inf 50 (10) JP WO2004/091640 A1 2004.10.28 .)A/FM/1/47株に対する抗ウイルス効果を表4∼7に示す。 10 ウイルスは、10%濃度では5分間処理によって不活化され、1%濃度でも1時間処理 によって不活化された。 20 ウイルスは、10%濃度では1分間処理によって不活化され、1%濃度でも15分間処 理によって不活化された。 30 (11) JP WO2004/091640 A1 2004.10.28 10 ウイルスは、0.5%濃度以上、30分間処理によって不活化された。 20 ウイルスは、0.5%濃度以上、30分間処理によって不活化された。 3.結論 この結果から、インフルエンザウイルスに対するササエキスの抗ウイルス効果は、既存 の製剤とは異なることが明確になったが、作用メカニズムは不明である。 30 (12) 【国際調査報告】 JP WO2004/091640 A1 2004.10.28 (13) JP WO2004/091640 A1 2004.10.28 (14) JP WO2004/091640 A1 2004.10.28 (15) JP WO2004/091640 A1 2004.10.28 (16) JP WO2004/091640 A1 2004.10.28 (17) JP WO2004/091640 A1 2004.10.28 (18) JP WO2004/091640 A1 2004.10.28 (19) JP WO2004/091640 A1 2004.10.28 フロントページの続き (51)Int.Cl. FI テーマコード(参考) A61K 8/96 A61Q 11/00 A61K 8/00 A61Q 17/00 (2006.01) (2006.01) A61K 7/26 4C083 A61K 7/40 4C088 (2006.01) (2006.01) A61K 7/48 4C206 A61K 9/20 A61Q 19/00 A61K 9/20 A61K 9/70 (2006.01) (2006.01) A61K 9/70 401 A61K 9/72 (2006.01) (2006.01) A61K 31/194 A61P 1/02 (2006.01) (2006.01) A61P 17/16 A61P 31/04 (2006.01) (2006.01) A61P 31/12 A61P 31/16 (2006.01) (2006.01) (2006.01) A61P 31/22 A61L 15/03 A61F 11/02 Z (2006.01) (2006.01) A61F 13/00 301Z A61F 13/20 338 (2006.01) A41B 13/02 N A61F 13/20 (2006.01) A61F 13/18 B A61F 13/49 (2006.01) A61F 13/15 (2006.01) A61F 13/472 (2006.01) A61K 9/72 A61K 31/194 A61P 1/02 A61P 17/16 A61P 31/04 A61P 31/12 A61P 31/16 A61P 31/22 A61L 15/44 A61F 11/06 A61F 13/00 (72)発明者 土田 小太郎 東京都品川区小山4丁目15番7号 (72)発明者 土田 憲次郎 東京都品川区小山4丁目15番7号 (72)発明者 渡邉 邦友 岐阜県岐阜市道三町62番地の3 (72)発明者 中村 良子 神奈川県相模原市古淵5−11−1 (72)発明者 岩沢 篤郎 神奈川県横浜市青葉区梅が丘24−1−210 Fターム(参考) 3B200 AA01 AA03 BB24 4B018 MD09 MD61 ME14 4B021 MC01 MK05 MK20 4C076 AA24 AA36 AA74 AA93 BB01 BB21 BB22 BB31 CC32 CC35 DD29 EE38 FF02 4C081 AA02 AA03 AA06 AA12 BB06 CD111 CD31 CE01 DA02 DA05 4C083 AA111 AA112 AC301 AC302 BB48 CC03 CC07 CC41 DD12 DD22 DD23 DD27 EE12 EE13 EE18 EE32 FF01 4C088 AB76 AC05 BA09 CA05 MA02 MA32 MA35 MA52 MA57 MA63 NA14 ZA67 ZA90 ZB33 ZB35 ZC75 4C206 AA01 AA02 DA36 MA01 MA02 MA04 MA33 MA52 MA55 MA72 MA77 MA83 NA14 ZA67 ZA90 ZB33 ZB35 ZC75 (注)この公表は、国際事務局(WIPO)により国際公開された公報を基に作成したものである。なおこの公表に (20) JP WO2004/091640 A1 2004.10.28 係る日本語特許出願(日本語実用新案登録出願)の国際公開の効果は、特許法第184条の10第1項(実用新案法 第48条の13第2項)により生ずるものであり、本掲載とは関係ありません。