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仁井田浄水場更新に関する基本検討報告書

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仁井田浄水場更新に関する基本検討報告書
建設委員会資料
平 成 27年 1 月 29日
上 下 水 道 局
仁井田浄水場更新に関する基本検討報告書
平 成 27年 1 月
秋田市上下水道局
目
1
次
秋 田 市 水 道 事 業 の 概 要 ........................................ 1
(1) 歴 史 ...................................................... 1
(2) 主 要 な 施 設 ................................................ 1
ア
浄 水 場 お よ び 配 水 場 ...................................... 1
イ
原 水 状 況 と 浄 水 処 理 方 式 等 に つ い て ........................ 3
ウ
浄 水 水 質 レ ベ ル に つ い て .................................. 6
エ
浄 水 場 の 施 設 能 力 お よ び 給 水 実 績 に つ い て .................. 8
オ
主 な 施 設 の 非 常 時 に 備 え た 施 設 機 能 に つ い て ............... 10
カ
主 な 施 設 の 概 要 お よ び 現 状 の ま と め ....................... 12
(3) 主 な 施 設 の 課 題 と 検 討 事 項 に つ い て ......................... 13
2
仁 井 田 浄 水 場 の 現 状 と 課 題 ................................... 14
(1) 耐 震 性 能 ................................................. 14
(2) 施 設 お よ び 設 備 の 老 朽 化 ................................... 16
(3) 非 常 時 に 備 え た 施 設 機 能 ................................... 18
(4) 原 水 濁 度 上 昇 に 伴 う 水 処 理 性 能 不 足 の 顕 在 化 ................. 18
(5) 高 度 浄 水 処 理 シ ス テ ム ..................................... 20
(6) 仁 井 田 浄 水 場 の 課 題 解 決 の ポ イ ン ト ......................... 20
(7) こ れ ま で の 検 討 経 緯 ....................................... 21
3
仁 井 田 浄 水 場 更 新 に 向 け た 基 本 事 項 の 検 討 ..................... 22
(1) 施 設 規 模 ................................................. 22
ア
給 水 人 口 お よ び 一 日 最 大 給 水 量 の 推 計 ..................... 23
イ
豊 岩 浄 水 場 の 既 存 能 力 ................................... 26
ウ
豊 岩 浄 水 場 の 余 裕 能 力 活 用 の 評 価 ......................... 27
エ
予 備 力 の 考 え 方 ......................................... 28
(2) 浄 水 処 理 方 式 ............................................. 29
ア
浄 水 処 理 方 式 の 分 類 と 特 徴 ............................... 29
イ
原 水 水 質 の 現 状 ......................................... 30
ウ
浄 水 水 質 の 現 状 ......................................... 31
エ
浄 水 水 質 の 目 標 ......................................... 32
オ
安 全 性 を 高 め る 対 策 ..................................... 34
カ
急 速 ろ 過 方 式 と 膜 ろ 過 方 式 の 比 較 検 討 ..................... 35
(3) 非 常 時 に 備 え た 施 設 機 能 ................................... 36
ア
耐 震 性 能 の 確 保 ......................................... 36
イ
浸 水 、 津 波 に 対 す る 考 え 方 ............................... 37
ウ
非 常 用 発 電 設 備 の 設 置 ................................... 38
(4) 現 有 敷 地 を 活 用 し た 施 設 整 備 の 可 能 性 ....................... 38
4
他 都 市 事 例 に よ る 事 業 費 の 考 察 ............................... 39
(1) 他 都 市 事 例 ............................................... 39
(2) 仁 井 田 浄 水 場 更 新 に 係 る 建 設 事 業 費 の 考 察 ................... 41
5
官 民 連 携 の 手 法 お よ び 範 囲 ................................... 42
(1) 民 間 活 用 の 形 態 ........................................... 42
(2) 官 民 連 携 事 業 方 式 の 事 業 規 模 ............................... 42
(3) 官 民 連 携 の 課 題 ........................................... 43
6
今 後 の 検 討 の 進 め 方 ......................................... 43
1
秋田市水道事業の概要
(1) 歴 史
秋 田 市 水 道 事 業 は 、 明 治 40年 に 東 北 で 初 め て 、 全 国 で 11番 目 に 旭 川
上流の藤倉水源地を水源として給水を開始した。
その後、周辺町村との合併、戦後の急激な人口増加、高度経済成長
期の水需要の急増など、時代の要求に適切に応えるため、6回にわ
たり拡張などを行った。主なものとして、2度にわたる仁井田浄水
場 の 拡 張 ( 第 4 期 お よ び 5 期 、 昭 和 43 年 度 お よ び 54 年 度 完 成 ) 、 豊
岩 浄 水 場 の 建 設 ( 第 6 期 、 同 58年 度 完 成 ) な ど が あ る 。
な お 、 藤 倉 水 源 地 は 昭 和 48年 に 廃 止 さ れ て い る 。
平 成 17年 1 月 に 隣 接 す る 河 辺 町 と 雄 和 町 を 編 入 合 併 し た こ と に よ り 、
給水区域は大きく広がった。
拡 張 や 合 併 に よ り 、 創 設 当 時 26,500人 で あ っ た 給 水 人 口 は 、 平 成 26
年 3 月 31日 現 在 316,189人 と な っ て い る 。
(2) 主 要 な 施 設
ア
浄水場および配水場
本市には、浄水場が5箇所あり(図1、表1)、それぞれの浄水
場でつくった水を高台にある配水場に送り、そこからは自然流下に
より各需要家まで給水している。
各 浄 水 場 別 の 水 源 と 配 水 場 は 、 以 下 (ア)か ら (オ)の と お り と な っ て
いる。
(ア) 仁 井 田 浄 水 場 は 、 雄 物 川 を 水 源 と し 、 手 形 山 、 豊 岩 、 御 所 野
および雄和地区の各配水場を介して配水する
(イ) 豊 岩 浄 水 場 は 、 雄 物 川 を 水 源 と し 、 浜 田 配 水 場 を 介 し て 配 水
する
(ウ) 仁 別 浄 水 場 は 、 旭 川 上 流 域 の 地 下 水 を 水 源 と し 、 低 区 配 水 場
を介して配水する
(エ) 松 渕 浄 水 場 は 、 岩 見 川 下 流 域 の 地 下 水 を 水 源 と し 、 神 内 、 七
曲、上野台および和田配水場を介して配水する
1
に わ かざ
ざわ
う や しな
し い
(オ) 俄 沢 浄 水 場 は 、 岩 見 川 中 流 域 の 地 下 水 を 水 源 と し 、 鵜養 、 俄
沢および上野配水場を介 して配水する
な お 、 仁 井 田浄 水 場 と 豊 岩 浄 水場 は 、 浄水 場 間 の 連 絡 管 によ り 相
互 融 通 が 可 能 とな っ て い る た め 、手 形 山 、豊 岩 、 御 所 野 、 浜田 お よ
び 雄 和 地 域 6 箇 所 、 計 10箇
箇 所 の 配水 場 へ の送 水 は ど ち ら の 浄水 場 か
ら も 可 能 で あ る 。仁 別 浄 水 場 、 松渕 お よ び俄 沢 浄 水 場 は 、 それ ぞ れ
が独立した配水区となって いる。
図1
主 な 水 道施 設 と 給水 区 域 図
2
表1
浄水場
配水場
手形山
各浄水場と配水場
(容量)
給水区域
40,800㎥
備考
仁井田および豊岩
北 部 、中 央 、南 部 、
豊
岩
22,000㎥
仁井田
浄水場は、連絡管
東部地区および雄
御所野
3,350㎥
により水道水の相
和地域など
雄和6箇所計
2,659㎥
互融通が可能
北 部 (寺 内 )、中 央
豊
岩
浜
田
12,000㎥
(八 橋 )、西 部 地 区
など
仁
別
松
区
264㎥
神
内
220㎥
七
曲
938㎥
上野台
136㎥
松渕、俄沢浄水場
和
田
883㎥
はそれぞれ単独の
鵜
養
179㎥
配水区
俄
沢
303㎥
上
野
828㎥
渕
俄
沢
計
イ
低
仁別地区
単独の配水区
河辺和田地区など
河辺岩見地区など
84,560㎥
原水状況と浄水処理方式等について
各浄水場の原水状況と浄水処理方式は、表2のとおりである。
厚 生 労 働 省 が 示 す 指 針 に 基 づ く ク リ プ ト ス ポ リ ジ ウ ム ※ 1等 に お け
る汚染のおそれの判断等を表3に示す。
仁井田浄水場と豊岩浄水場は汚染のおそれが高い「レベル4」、
仁別浄水場と俄沢浄水場は汚染のおそれがある「レベル3」、松渕
浄 水 場 は 汚 染 の 可 能 性 が 低 い 「 レ ベ ル 1」 と 判 断 さ れ る 。
浄水処理方式は、濁度が高い雄物川表流水を原水としている仁井
田と豊岩浄水場は、ともに「急速ろ過方式」を採用しており、仁井
田 浄 水 場 の 凝 集 沈 殿 池 は 昭 和 32年 当 時 主 流 の 「 高 速 凝 集 沈 殿 池 」 、
3
豊 岩 浄 水 場 は 昭 和 58年 当 時 主 流 の 「 フ ロ ッ ク 形 成 池 + 傾 斜 板 沈 殿 池 」
が採用されている。
また、地下水を原水としている仁別、松渕は凝集沈殿池がない
「急速ろ過方式」、同じく地下水を原水とする俄沢浄水場は凝集沈
殿池がない「緩速ろ過方式」が採用されている。
「急速ろ過方式」と「緩速ろ過方式」の違いを表4に、図2に急
速ろ過方式を採用している仁井田浄水場の仕組みを示す。
な お 、 い ず れ の 浄 水 場 も 高 度 浄 水 処 理 ※ 2は 導 入 さ れ て い な い 。
※1
※2
ク リ プ ト ス ポ リ ジ ウ ム : 消 毒 用 の 塩 素 に 強 い 耐 性 を 有 し て い る 直 径 5μ m
程度の病原生物。人が感染すると腹痛を伴う下痢などの症状を発症し、
平成8年6月に埼玉県で大規模な集団感染が発生した事例がある。ろ過
水 濁 度 0.1度 以 下 と す る こ と で 、 一 般 的 な 急 速 ろ 過 等 に よ る 除 去 が 可 能 。
高度浄水処理:通常の浄水処理では十分に対応できない臭気物質、トリ
ハロメタン前駆物質、色度、アンモニア性窒素などを処理するため、通
常の浄水処理にオゾン処理、活性炭処理、生物処理などの処理工程を加
えたもの。
表2
各浄水場の原水状況と浄水処理方式
原
浄水場
水
源
水
浄水処理
クリプトス
ポリジウム
等による汚
染のおそれ
方
式
高度
処理
仁井田
雄物川
表流水
レベル4
急速ろ過
高速凝集沈殿池+
急速ろ過池
なし
豊
岩
雄物川
表流水
レベル4
急速ろ過
フロック形成池+
傾斜板沈殿池+
急速ろ過池
なし
仁
別
地下水
(浅井戸)
レベル3
急速ろ過
急速ろ過池
なし
松
渕
地下水
(深井戸)
レベル1
急速ろ過
急速ろ過池
なし
俄
沢
地下水
(浅井戸)
レベル3
緩速ろ過
緩速ろ過池
なし
4
表3
クリプトスポリジウム等における汚染のおそれの判断等
レベル
レベル4
(おそれが高い)
レベル3
(おそれがある)
レベル2
(当面、可能性
が低い)
レベル1
(可能性が低い)
定
義
予防対策
地表水を水道の原水とし、指
標菌が検出されたことがある
施設。
地表水以外の水を水道の原水
とし、指標菌が検出されたこ
とがある施設。
ろ過池の出口の濁度を0.1度以
下に維持することが可能なろ過
設備を整備すること。
ろ過池の出口の濁度を0.1度以
下に維持することが可能なろ過
設備、又は紫外線処理設備を整
備すること。
地表水等が混入していない被
圧地下水以外の水を原水と
特に必要なし。
し、指標菌が検出されたこと
がない施設。
地表水等が混入していない被
圧地下水のみを原水とし、指
特に必要なし。
標菌が検出されたことがない
施設。
(参考文献) 「水道におけるクリプトスポリジウム等対策指針」(平成19年3月 厚生労働省健
康局水道課)
表4
項目
急速ろ過方式と緩速ろ過方式の違い
急速ろ過方式
緩速ろ過方式
砂層に生物膜
模
式
図
砂層
ろ過池
仕
組
み
特
徴
凝集沈殿池で原水に凝集剤を注入し
て、濁り物質を沈殿させ、その上澄
み水を急速ろ過池で1日120∼150mの
速度で砂層を通過させることにより
ろ過するもの。
なお、地下水等原水濁度が低い場合
は、凝集沈殿池を備えない場合もあ
る。
河川水など比較的濁度の高い原水の
処理に適している。明治45年に京都
原水を直接ろ過池に入れ、藻
類や微生物による生物膜を持
つ砂層を1日4∼5mのゆっ
くりとした速度で通過させる
ことによりろ過するもの。
地下水等の比較的きれいな原水に
は対応できるものの、濁度の高い
け あ げ
市の蹴上 浄水場で初めて採用された 原水の処理は困難である。
方式で、現在全国の水道事業体で最 広大な用地を必要とし、生物膜等
の維持管理に熟練した技術を要す
も多く採用されている処理方式。
面積は少なくて済むが、運転管理に る。
高度な技術が必要となる。
5
図2
①
①取水塔
仁 井 田 浄 水 場の シ ス テム 図
②
②取水ポン
プ
①川の
の水(原水) ②原水を沈砂池
②
池
を取
取り入れる
に送る
⑤急
急速ろ過池
池
③沈
沈砂池
④
④高速凝集沈
沈殿池
凝集剤
消毒
③細かい土や砂
を沈めて除去
④凝集剤によ
④
よりできた
「フロック」を沈め除去
⑥浄水池
池 ⑦送水ポ
ポンプ
お客さまへ
⑧配水場
場
を配水場に ⑦配水場
⑦
⑤沈殿池
池で除去できな ⑥浄水を
に送水
送る量
量を調整
かった
た汚れを砂の
の層
を通し
して完全に除
除去
① 取 水 塔 (雄 物 川 )
ウ
⑧浄水を貯留し、使用
⑧
量の変化に合
合わせ、
お客さまに配
配る
④高速凝集沈
④
沈殿池
③沈砂池
⑤急速ろ過池
浄水水質レベルについて
浄 水 水 質 レ ベル は 、 水 道 法 で 定め ら れ てい る 「 水 質 基 準 」の ほ か 、
浄 水 技 術 ガ イ ド ラ イ ン 201 0( 以 下 「 ガ イ ド ラ イ ン 」 と い う 。 ) の 目
標 値 と し て 「 レベ ル 1 」 「 レ ベ ル2 」 ( 表5 ) が 示 さ れ て いる 。
表5
浄水水質レベル
水質レベル
水質基準
レベル1
レベル2
説
明
水道 法 に お い て 遵 守 が求 め ら れる 基 準 。
浄水 場 で 適 切 に 運 転管 理 が 行 われ て い る 場 合 に 達成 可 能
であ り 、 我 が 国 の ほ とん ど の 浄水 場 が 満 足 し て いる レ ベ
ル。
将来 の 水 質 基 準 の 厳格 化 や 水 源水 質 の 悪 化 、 偶 発的 な 水
源汚 染 事 故 に も 対 応 が可 能 な 、ト ッ プ レ ベ ル の 水道 事 業
体を 目 指 し て い く 上 での 目 標 値。
6
水質基準は、健康維持の観点から水道法に定められた要件であり、
51項 目 に つ い て 遵 守 が 義 務 づ け ら れ て い る も の で あ る 。
ガイドラインの目標値は、将来の水質基準の厳格化や、老朽化に
よる浄水処理機能の低下など、予測される事業環境の深刻化に備え、
原水水質に対応した適切な浄水システムを選ぶために設定する値で
あ る 。 51項 目 の 水 質 基 準 の 内 、 濁 度 、 全 有 機 炭 素 ( TOC) 、 か び 臭
物質、トリハロメタンの4項目について示されており、濁度を例に
と れ ば 、 レ ベ ル 1 で は 水 質 基 準 の 20分 の 1 、 レ ベ ル 2 で は 200分 の
1に設定されている。
なお、本市の各浄水場の浄水水質レベルは、過去の実績では表
6のとおりである。
ろ過濁度については、仁井田、豊岩、仁別、松渕は「レベル1」
を達成し、俄沢浄水場は「水質基準」が確保されている。
全 有 機 炭 素 (TOC)、 か び 臭 物 質 、 ト リ ハ ロ メ タ ン に つ い て は 、 雄
物川表流水を原水としている仁井田および豊岩浄水場は、「水質基
準 」 又 は 「レ ベ ル 1 」で あ る が 、 か び 臭 原 因 物 質 が 含 ま れ な い 水 質 の
よい地下水を原水としている仁別、松渕および俄沢浄水場では、
「レベル2」が達成されている。
表6
浄水水質
水質項目
浄水水質レベル(最大値)
水道法およびガイド
ラインが示す基準値
水質
レベル1 レベル2
基準
浄水水質実績(下段は水質レベル)
仁井田
豊 岩
仁 別
松 渕
俄 沢
0.129
ろ過濁度
(度)
2
0.1
0.01
0.019
レベル1
0.060
レベル1
0.015
レベル1
0.014
レベル1
水質基準
全有機炭素
(TOC)(mg/L)
3
1.5
1.0
1.2
レベル1
2.5
0.3
レベル2
<0.3
レベル2
0.5
レベル2
かび臭物質
(ng/L)※3
10
3
1未満
-
-
-
トリハロメタン
(mg/L)
0.1
0.040
0.015
0.011
レベル2
0.008
レベル2
0.012
レベル2
水質基準
4
5
水質基準
水質基準
0.024
レベル1
0.036
レベル1
7
( 注 ) 浄 水 水 質 実 績 は 、 仁 井 田 、 豊 岩 お よ び 俄 沢 浄 水 場 が 平 成 21年 度 ~ 24年 度 、 仁
別 浄 水 場 が 24年 度 、 松 渕 浄 水 場 が 25年 度 で あ る 。 こ れ は 、 仁 別 浄 水 場 で は 平
成 24年 2 月 に ろ 過 器 修 繕 を 行 っ て お り 、 松 渕 浄 水 場 は 24年 6 月 に 取 水 井 戸 を
切り替えているため、それぞれ翌年度の実績を使用したもの。
※ 3 か び 臭 物 質 は 、 ジ ェ オ ス ミ ン お よ び 2 -MIBの う ち 、 す べ て の 浄 水 場 お よ び 年
度において最も高いジェオスミンの値を採用。また、太陽光の当たらない地
下水ではどちらの原因物質も存在しないため、仁別、松渕および俄沢浄水場
では検査を省略している。
浄水水質のレベルは最大値により判定されるものであるが、参考とし
て平均値によるレベルを表7に示す。
平均値の場合では、ろ過濁度はすべて「レベル2」を達成するほか、
最大値では「レベル1」および「水質基準」であった仁井田および豊岩
浄 水 場 の 全 有 機 炭 素 ( TOC) も 「 レ ベ ル 2 」 と な る 。
同じく、仁井田および豊岩浄水場で「水質基準」であったかび臭物質
も 「 レ ベ ル 1」 に な る ほ か 、 ト リ ハ ロ メ タ ン も 「 レ ベ ル 1」 か ら 「 レ ベ ル
2」になり、通常時には質の高い水道水を供給しているといえる。
表7
浄水水質
水質項目
浄水水質レベル(平均値)
水道法およびガイド
ラインが示す基準値
水質
レベル1 レベル2
基準
浄水水質実績(下段は水質レベル)
仁井田
豊 岩
仁 別
松 渕
俄 沢
ろ過濁度
(度)
2
0.1
0.01
0.003
レベル2
0.004
レベル2
0.004
レベル2
0.003
レベル2
0.002
レベル2
全有機炭素
(TOC)(mg/L)
3
1.5
1.0
0.6
レベル2
0.8
レベル2
<0.3
レベル2
<0.3
レベル2
<0.3
レベル2
かび臭物質
(ng/L)
10
3
1未満
2
レベル1
2
レベル1
-
-
-
トリハロメタン
(mg/L)
0.1
0.040
0.015
0.008
レベル2
0.013
レベル2
0.008
レベル2
0.006
レベル2
0.005
レベル2
エ
浄水場の施設能力および給水実績について
秋 田 市 全 体 の 施 設 能 力 は 、 1 日 当 た り 約 20万 ㎥ で あ る ( 表 8 ) 。
こ の う ち 仁 井 田 浄 水 場 は 、 1 群 施 設 が 1 日 当 た り 54,600㎥ 、 2 群
施 設 が 100,000㎥ 、 合 わ せ て 154,600㎥ の 施 設 能 力 を 有 し 、 給 水 量 は
市 内 の 約 81% を 担 う 主 力 浄 水 場 で あ る 。
8
し か し な が ら 、 昭 和 30年 前 後 に 建 設 さ れ た 土 木 構 造 物 は 、 間 も な
く 耐 用 年 数 ※ 4 で あ る 60年 に 達 し よ う と し て お り 、 ポ ン プ 設 備 や 電 気
設備は、現段階で耐用年数を大幅に超過している。
ま た 、 豊 岩 浄 水 場 は 、 昭 和 58年 に 35,800㎥ で 稼 働 を 開 始 し 、 給 水
量 は 本 市 の 16% を 担 っ て い る 。 ポ ン プ 設 備 や 電 気 設 備 は 既 に 耐 用 年
数を超過していることから計画的な更新が必要となっている。
一方、仁別、松渕および俄沢浄水場は、平成に入ってからの建設
であり、今のところポンプ設備等の更新は必要ない状況である。
な お 、 い ず れ の 浄 水 場 も 施 設 利 用 率 ※5は 極 め て 低 く 、 最 も 高 い 仁
井 田 浄 水 場 で も 53.3% と な っ て い る 。
表8
浄 水 場 の 施 設 能 力 と 給 水 実 績 ( 平 成 25年 度 実 績 )
一日平均
給水量※6
(㎥/日)
給水割合(%)
施設
利用率
(%)
浄水場
稼働
開始年
施設能力
(m3/日)
仁井田
昭 和 32年
154,600
82,427
78.8
81.2
53.3
豊
岩
昭 和 58年
35,800
16,174
18.3
15.9
45.2
仁
別
平成4年
960
174
0.1
0.2
18.1
松
渕
平成2年
3,803
1,847
1.8
1.8
48.6
俄
沢
平 成 12年
1,974
927
1.0
0.9
47.0
197,137
101,549
100
100
51.5
計
※4
※5
※6
人口
一日平均
給水量
耐用年数:地方公営企業法に定められた有形固定資産の耐用年数で、ポ
ン プ 設 備 お よ び 薬 品 注 入 設 備 15 年 、 電 気 設 備 20 年 、 計 装 設 備 10 年 、 取 水
施 設 40年 、 導 水 施 設 50年 、 浄 水 施 設 60年 、 配 水 管 40年 と な っ て い る 。
施設利用率:一日平均給水量を施設能力で除した値。高いほど施設規模
が適正であることを示す。
一日平均給水量:年間総給水量を年日数で除した水量。
9
オ
主な施設の非常時に備えた施設機能について
浄水場の非常時に備えた施設整備の現状を表9に整理した。
耐震性能については、仁井田浄水場はすべて新耐震基準が示され
る以前の建設であり、耐震基準を満たしていないと考えられる。
豊 岩 浄 水 場 は 、 平 成 24年 度 ま で に 耐 震 補 強 を 完 了 し て い る 。
松 渕 浄 水 場 は 、 平 成 23年 度 の 耐 震 診 断 の 結 果 、 耐 震 基 準 を 満 た し
ていることを確認している。
仁別および俄沢浄水場は、平成に入ってからの建設であり、建築
物は耐震基準を満たしていると推定されるが、土木構造物の耐震性
能は確認されていない。
また、手形山、豊岩、御所野および浜田の主力配水場は、手形山
の 一 部 を 除 き 耐 震 基 準 を 満 た し て い る ( 表 10) 。
自 家 用 発 電 機 に つ い て は 、 東 日 本 大 震 災 を 教 訓 と し 、 平 成 24 年
度に豊岩浄水場へ整備した。松渕および俄沢浄水場は建設時から整
備済みであるものの、仁井田および仁別浄水場は整備されていない。
浸 水 対 策 に つ い て は 、 秋 田 市 災 害 ハ ザ ー ド マ ッ プ ※ 7で 河 川 は ん
濫により、仁井田浄水場が浸水すると予測されており対策が必要で
ある。そのほかの浄水場は浸水の可能性が少ないと考えられている。
テロ対策については、仁井田浄水場は監視カメラやフェンス等
が設置されているものの、侵入することが比較的容易であり、沈殿
池やろ過池に覆蓋がないなど備えは不十分な状態である。一方、そ
の他の浄水場は、すべて建物内に浄水施設が配置されており、外部
からの侵入を防ぐ対策が施されている。
※7
秋田市災害ハザードマップ(洪水避難地図):大雨で河川がはん濫した
場合に浸水が予想される区域とその深さならびに避難施設などを示し、
災害時に安全に避難してもらうことを目的として作成したマップ
10
表9
浄水場の非常時に備えた施設整備の現状
浄
項
水
場
目
仁井田
豊
岩
仁
別
松
渕
俄
沢
耐 震 性 能
×
○
(H24補強)
-
○
-
自家用発電機
×
○
1,000KVA
×
○
180KVA
○
120KVA
浸 水 対 策
×
○
○
○
○
テ ロ 対 策
×
○
○
○
○
表 10
浄水場
仁井田
配水場の耐震性能
配水場
容量(㎥)
耐震性能
手 形 山 No.1 ~ No.4 池
27,200
×
手 形 山 No.5 ~ No.6 池
13,600
○
岩
22,000
○
御所野
3,350
○
雄和6箇所計
2,659
-
豊
豊
岩
浜
田
12,000
○
仁
別
低
区
264
-
神
内
220
-
七
曲
938
-
上野台
136
-
和
田
883
-
鵜
養
179
-
俄
沢
303
-
上
野
828
-
松
俄
渕
沢
(注)耐震診断による判定がされていないものは“―”とした。
11
カ
主な施設の概要および現状のまとめ
表 11 に 、 こ れ ま で 述 べ て き た 、 主 な 施 設 の 概 要 お よ び 現 状 を ま
とめる。
表 11
浄 水 場
区
分
原
水
項目等
仁井田
豊 岩
仁 別
松 渕
俄 沢
雄物川
表流水
雄物川
表流水
地下水
(浅井戸)
地下水
(深井戸)
地下水
(浅井戸)
レベル4
レベル4
レベル3
レベル1
レベル3
急速ろ過
急速ろ過
急速ろ過
急速ろ過
緩速ろ過
高速凝集
沈殿池+
急速ろ過池
フロック形
成池+傾斜
板沈殿池+
急速ろ過池
急速ろ過池
急速ろ過池
緩速ろ過池
なし
なし
なし
なし
なし
ろ 過 濁 度
レベル1
レベル1
レベル1
レベル1
水質基準
浄水水質 全 有 機 炭 素
レ ベ ル かび臭物質
レベル1
水質基準
レベル2
レベル2
レベル2
水質基準
水質基準
-
-
-
トロリハロメタン
レベル1
レベル1
レベル2
レベル2
レベル2
稼働開始年
昭和32年
昭和58年
平成4年
平成2年
平成12年
施設能力 (㎥/日)
154,600
35,800
960
3,803
1,974
82,427
16,174
174
1,847
927
78.8
18.3
0.1
1.8
1.0
81.2
15.9
0.2
1.8
0.9
53.3
45.2
18.1
48.6
47.0
耐 震 性 能
×
○
-
○
-
発
機
×
○
×
○
○
浸 水 対 策
×
○
○
○
○
テ ロ 対 策
×
○
○
○
○
○
-
-
-
水
源
クリプトスポリジウム
等の汚染のおそれ
方
浄
水
処
理
主な施設の概要および現状のまとめ
式
高度処理
施
設 一日平均給水量(㎥/日)
能
人 口(%)
給水
力
給水量(%)
割合
施設利用率(%)
危
機
管
理
電
浄水場
○(手形山
配水場
耐 震 性 能
No.1~4、雄
和6箇所を
除く)
12
(3) 主 な 施 設 の 課 題 と 検 討 事 項 に つ い て
主 な 施 設 の 課 題 と そ の 検 討 事 項 を 表 12の と お り 整 理 し た 。
なお、豊岩浄水場の施設利用率を向上させ、仁井田浄水場の施設
規模の縮小を図る対策として、「豊岩浄水場の既存施設の余力分を
仁井田浄水場系統へ融通する」ケースについて、詳細な検討結果を
後述する。
表 12
浄水場
仁井田
豊
岩
課
主な施設の課題と検討事項
題
検討事項
原水水質の変化への対応と
配水水質の改善対策
・沈砂池の配置および容量見直し
・高速凝集沈殿池方式の変更
・高度浄水処理システムの導入
耐震性能不足
補強又は全面更新
施設および設備の老朽化
更新
非常時機能の不備
・自家用発電機の導入
・浸水対策の実施
・沈殿池、ろ過池等の覆蓋化
施設利用率の向上
施設規模の縮小
手形山配水場の耐震性能不
足
更新時に対応
原水水質の変化への対応と
配水水質の改善対策
高度浄水処理システムの検討
河床堆積による取水の不安
定性
河 川 管 理 者 (国 交 省 )と の 協 議
施設利用率の向上
余力分の仁井田浄水場への融通
浜田配水場の容量不足
( 1池 の み )
仁
松
俄
別
1池増設
施設利用率の向上
施設規模の縮小
深井戸の閉塞
定期的な清掃および位置変更
施設利用率の向上
施設規模の縮小
原水高濁度時における処理
能 力 (ろ 過 濁 度 は 水 質 基 準 )
緩速ろ過池への凝集剤注入設備の
整備
施設利用率の向上
施設規模の縮小
渕
沢
13
2
仁井田浄水場の現状と課題
仁 井 田 浄 水 場 は 、 本 市 給 水 量 の 約 81 % を 担 っ て い る 主 力 浄 水 場 で あ
る。これまでは修繕や部分更新などにより延命化を図ってきたが、今後
想定される地震規模に対する耐震性能が不足しており、また、土木構造
物が耐用年数を迎えるとともに、付随する電気、機械設備の多くも耐用
年数をすでに超過している。
さらに、東日本大震災を契機に、停電や浸水への対策など非常時に対
する機能の不備が明らかとなり、また、近年、顕著化してきた雄物川
表流水の濁度上昇などに対して、水処理性能を維持することが難しく
なってきていること、水質事故に対する浄水処理の高度化が求められ
るなか高度浄水処理に対応していないことなどの新たな課題もある。
このため、図3に示すこれらの課題について解決方法を検討した。
図3
仁井田浄水場の課題について
(1) 耐 震 性 能
(2) 施 設 お よ び 設 備 の 老 朽 化
課 題
(3) 非 常 時 に 備 え た 施 設 機 能
(4) 原 水 濁 度 上 昇 に 伴 う 水 処 理 性 能 不 足 の 顕 在 化
(5) 高 度 浄 水 処 理 シ ス テ ム
(1) 耐 震 性 能
表 13 お よ び 図 4 の と お り 、 取 水 、 導 水 施 設 等 の 一 部 は 昭 和 31 年 に
秋田県から譲り受けたものであり、第4期および第5期拡張で整備
さ れ た 施 設 も 、 新 耐 震 基 準 が 示 さ れ た 昭 和 56 年 以 前 に 建 設 さ れ た 施
設である。
ま た 、 表 14の と お り 、 平 成 9 年 に 池 状 構 造 物 に 関 す る レ ベ ル 2 地
震 動 ※ 8を 用 い た 耐 震 基 準 が 示 さ れ て お り 、 仁 井 田 浄 水 場 の す べ て の 池
状構造物は耐震性能が不足していると推慮される。
14
表 13
主要施設の建設時期と施設能力
施設能力
(m 3 /日 )
建設時期
主要な施設
昭 和 29年 度 ~ 37年 度
(第3期以前)
取水施設、沈殿池、ろ過池、浄
水池等(1群)
31,000
昭 和 38年 度 ~ 43年 度
( 第 4 期 (増 設 ))
取水施設、沈殿池、ろ過池、浄
水池、管理棟等(主に2群)
73,400
昭 和 49年 度 ~ 54年 度
( 第 5 期 (増 設 ))
沈殿池、ろ過池、排水処理施設
等(1群、2群)
50,200
計
表 14
年
区
154,600
耐震工法に関する主な基準等の変遷
分
基準等
備
考
昭 和 56年
建築構造物
新耐震設計法
平成9年
池状構造物
水道施設耐震工法指針・解 レベル2地震動を用いた耐
説改訂
震水準の設定等
平 成 20年
水道施設
水道施設の技術的基準を定 水道施設に求められる耐震
める省令の一部改正
性能を明確化
※8
昭和55年建築基準法改定
レベル2地震動:当該施設の設置地点において発生が想定される地震動の
うち、最大規模の強さ(震度6強から震度7)を有するもの。
そ こ で 、 例 と し て 第 4 期 拡 張 事 業 に よ り 昭 和 42 年 に 設 計 、 施 工 さ
れた手形山配水場における、既存施設に耐震補強と断面補修を施す
場 合 と 、 施 設 を 全 面 更 新 す る 場 合 の 費 用 比 較 を 表 15に 示 す 。
これによると、既存施設に耐震補強と断面補修を施す場合は約
17.2 億 円 を 要 す る の に 対 し 、 全 面 更 新 す る 場 合 で は 既 存 施 設 撤 去 費
を 含 め 約 11.8億 円 と な り 、 約 5.4億 円 安 価 と な っ た 。
仁井田浄水場の沈殿池やろ過池は近接し、また連動して浄水システ
ムの機能を果たす施設であり、仮に耐震補強を施すとすれば、稼働し
ている他の施設に影響を及ぼさないための対策費用が増えることから、
全面更新との差はさらに大きくなると考えられる。
15
図4
主要施設の建設時期
2群施設(施設能力100,000m3/日)
1群施設(施設能力54,600m3/日)
ろ過池
高速凝集沈殿池
No.1(S42)
No.3(S42)
導水管(S41)
取水ポンプ(S50)
12
10
11
9
薬品
貯蔵棟
(S52)
沈砂池(S40)
14
排水処理
施設(S53)
No.3(S52)
8 6
12
13
No.2(S42)
No.4(S52)
11
10
9
8
7
6
4
5
3
4 2
取水ポンプ(S53)
ろ過池
7
ろ過池
No.1~10(S40)
No.11~14(S52)
導水管(S29)
No.9~12(S52) 高速凝集沈殿池
5
No.2(S35)
3 1
2
1
浄水池
(S32)
No.1~6(S32)
No.7~8(S35)
No.1(S32)
管理本館
(S43)
凡
手形山送水
ポンプ室
(S41)
排水池(S40)
昭和29年~37年
(第3期以前)
豊岩送水
ポンプ室
(S51)
浄水池
(S40)
例
昭和38年~43年
(第4期)
昭和49年~54年
(第5期)
表 15
項
手形山配水場における費用比較
耐震補強+
断面補修
(A )
目
耐震補 強 (レベル 2対応)
497
断 面 補 修 (健全性・耐力回復)
950
既
存
構
物
撤
全面更新
(B)
差
(B -A )
536
△ 911
去
-
363
363
内面防 食 (断面性 能維持)
276
276
0
1,723
1,175
△ 548
(△ 31.8%)
合
造
(単 位 :百 万 円 )
計
(2) 施 設 お よ び 設 備 の 老 朽 化
主 要 な 土 木 構 造 物 の 大 部 分 は 、 図 5 の と お り 建 設 か ら す で に 40 年
か ら 60 年 近 く 経 過 し て お り 、 平 成 25 年 度 末 で は 1 群 取 水 塔 、 1 群 導
水管および2群取水塔がすでに耐用年数を超過しているほか、平成
32 年 度 に は 、 2 群 導 水 管 、 1 群 ろ 過 池 ( 計 8 池 ) 、 1 群 浄 水 池 ( 1
池 )、 1 群 沈 殿 池 (計 2 池 )が 耐 用 年 数 を 超 過 す る こ と と な る 。
16
これらの施設に付随する機械や電気設備は、図6に示すとおり、
受変電設備、手形山送水ポンプ設備および薬品設備(次亜塩素酸ナ
ト リ ウ ム ) を 除 く 設 備 が 平 成 25 年 度 末 時 点 で 耐 用 年 数 を 大 幅 に 超 過
している状況である。
図5
主要土木構造物の経年化状況
1群ろ過池(6池)[S32]
1群浄水池(1池)[S32]
1群沈澱池(NO1)[S32]
1群ろ過池(2池)[S35]
1群沈澱池(NO2)[S35]
2群浄水池(2池)[S40]
2群ろ過池(10池)[S40]
2群沈澱池(NO1_3)[S42]
2群沈澱池(NO4)[S52]
2群ろ過池(4池)[S52]
1群ろ過池(4池)[S52]
1群沈澱池(NO3)[S52]
1群浄水池(2池)[S54]
1群導水管[S29]
2群導水管[S41]
1群取水塔[S29]
2群取水塔[S41]
耐用年数60年
平成25年度末の経過年数
平成32年度末の経過年数
耐用年数
63
56
63
56
63
60
53
60
53
55
48
55
48
53
46
36
43
36
43
36
43
36
43
41
34
47
54
47
54
図6
20
30
40
経過年数(年)
50
60
45
38
耐用年数20年
電気設備(豊岩送水)[S51]
44
37
電気設備(1群)[S52]
43
36
電気設備(2群取水)[S62]
33
26
受変電設備(特高)[H1]
31
24
受変電設備[H14]
18
11
ポンプ設備(2群取水)[S50]
45
38
耐用年数15年
ポンプ設備(豊岩送水)[S51]
44
37
ポンプ設備(1群取水)[S51]
44
37
薬品設備(苛性)[S52]
43
36
薬品設備(PAC)[H3]
29
22
ポンプ設備(手形送水)[H11]
21
14
10
3
10年
中央監視設備[H15]
0
70
主要設備の経年化状況
電気設備(2群)[S50]
薬品設備(次亜)[H22]
66
59
耐用年数40年
10
66
59
耐用年数50年
施設区分[設置年] 0
設備区分[設置年]
56
17
10
10
20
平成25年度末の経過年数
平成32年度末の経過年数
耐用年数
30
40
50
経過年数(年)
※4
耐 用 年 数 は 、 取 水 施 設 40 年 、 導 水 施 設 50 年 、 浄 水 施 設 60年 、 ポ ン プ 設
備 お よ び 薬 品 注 入 設 備 15年 、 電 気 設 備 20年 で あ る 。
ポンプ等の機械設備は、定期的なメンテナンスや修繕、部品交換
での対応が限界に近づいている。また、電気計装設備については、
配線の劣化により絶縁抵抗値を保つことが困難な状況となっている。
17
このため、施設および設備単位での更新よりも経済的となる全面
更新が必要になっている。
(3)非 常 時 に 備 え た 施 設 機 能
仁 井 田 浄 水 場 は 、 東 北 電 力 か ら 常 用 ( 66kv 特 別 高 圧 受 電 ) お よ び
予 備 ( 6.6kv高 圧 受 電 ) の 2 系 統 受 電 に よ り 動 力 源 を 確 保 し 、 手 形 山
や豊岩などの配水場に十分な貯水量を貯えることにより短時間の停
電に対応する考えの下に、自家発電設備は保有していない。
し か し 、 平 成 23 年 3 月 の 東 日 本 大 震 災 時 に 、 受 電 2 系 統 が 同 時 に
停 電 し 、 15 時 間 半 も の 長 時 間 に わ た っ て 浄 水 場 の 機 能 が 一 斉 に 停 止
し 、 広 域 的 な 断 水 の 発 生 ま で 30 分 と な る 危 機 的 状 況 に 陥 っ た 。 こ の
ことを踏まえれば危機管理機能をより重視し、自家発電設備を整備
する必要がある。
ま た 、 仁 井 田 浄 水 場 は 標 高 5.5m と 低 い 土 地 に 位 置 し 、 河 川 は ん 濫
により浸水被害が想定されている。現状では電気設備の大部分が1
階又は地下に配置されているものの特段の浸水対策は施されていな
い。
加えて、沈殿池やろ過池をはじめとする浄水施設に覆蓋が設置さ
れておらず、テロ対策も不十分な状況にある。
浸水対策として外周を取り囲む塀を整備する方法も考えられるが、
建 物 本 体 を 想 定 浸 水 深 さ 2.0m 以 上 に 嵩 上 げ し た 上 で 、 電 気 設 備 の 配
置を高位置に変えることや、覆蓋の設置が可能となる施設配置にする
など抜本的な対策が必要である。
(4) 原 水 濁 度 上 昇 に 伴 う 水 処 理 性 能 不 足 の 顕 在 化
雄物川の表流水からは、クリプトスポリジウム等が検出されている
た め 、 「 ク リ プ ト ス ポ リ ジ ウ ム 等 対 策 指 針 」 ( 平 成 19 年 3 月 厚 生 労 働
省 健 康 局 水 道 課 )に 基 づ き 、 ろ 過 水 濁 度 を 0.1度 以 下 に 保 つ 必 要 が あ る 。
近年、雄物川の表流水は豪雨等に伴う急激な濁度上昇により、凝集
沈殿機能が追いつかない事態の発生回数が増えている(図7)。
18
仁 井 田 浄 水 場 原 水 濁 度 の 推 移 ( 平 成 20年 度 ~ 25年 度 実 績 )
900
10
濁度300度以上
濁度200度以上
最高濁度(度)
9
8
回数(回)
7
6
800
5
1
4
600
500
5
5
700
400
4
濁度(度)
図7
300
3
2
0
1
3
1
0
H20
4
2
3
H21
H22
100
2
1
200
0
H23
H24
H25
年度
濁
度
H 20
H 21
H 22
H 23
H 24
H 25
200度 以 上 300度 未 満
1回
3回
3回
1回
2回
4回
300度 以 上
0回
1回
5回
2回
4回
5回
最高(度)
261
317
391
465
857
537
仁 井 田 浄 水 場 の 高 速 凝 集 沈 殿 池 は 、 昭 和 29 年 に 国 内 で 初 め て 導 入
された汚濁物質の凝集と沈殿をひとつの池で行うシステムであるた
め、省スペース性に優れている反面、断続運転に不向き、流量変化
に弱い、過度な高濁度および急激な濁度変化に対応できない、低水
温ならびに急激な水温変化に対応できないという弱点を持っている
ため、原水の濁度変化への対応の困難さが増している。
本 市 の 浄 水 危 機 管 理 マ ニ ュ ア ル で は 、 原 水 濁 度 200度 以 上 を 水 質 異
常 時 と 位 置 付 け 、 300 度 を 超 え た 場 合 は 取 水 量 を 大 幅 に 制 限 し た 上 で
高速凝集沈殿池から排水し、クリプトスポリジウム等の漏洩対策をと
るなどの措置を講じている。
このような濁度上昇傾向は、気候変動の影響によるものと考えられ、
全国的に猛烈な降雨による土砂災害や洪水が多発していることを考慮
すれば、今後も濁度レベルの上昇と発生回数の増加は続くと想定され
る。
今後も安全な水道水を供給するためには、浄水方式を原水の濁度
変化に対応できる方式にする必要がある。
19
(5)高 度 浄 水 処 理 シ ス テ ム
近年、首都圏においては、化学物質の水源混入に伴って取水停止
になった事例が発生している。仁井田浄水場は雄物川の最下流域か
ら取水しており、上流域で化学物質等の流入による水質事故が発生
した場合に取水を停止するなどの対策を講じなければならない。
このため、本市でも安全でおいしい水の提供を望む市民ニーズに応
え、取水停止リスクを軽減できる高度浄水処理システムの導入を検討
する必要がある。
このことについては、豊岩浄水場ならびに仁別、松渕、俄沢の各
浄水場についても原水の特性を踏まえながら、併せて検討を進める
必要がある。
(6) 仁 井 田 浄 水 場 の 課 題 解 決 の ポ イ ン ト
仁 井 田 浄 水 場 の 課 題 解 決 の ポ イ ン ト に つ い て 、 表 16に ま と め た 。
仁井田浄水場は、耐震性能の不足や老朽化、水処理性能の不足など
様々な課題を抱えているが、その解決を図るためには、全面的な更
新とこれに伴う機能の充実を図ることが最も経済的で効率的と考え
られる。
表 16
課
仁井田浄水場の課題解決のポイント
題
解決のポイント
(1)耐 震 性 能
全面更新が最も費用対効果が高い。
(2)施 設 お よ び 設 備 の 老 朽 化
全面更新が施設および設備単位での更新
よりも経済的。
(3)非 常 時 に 備 え た 施 設 機 能
各対策は、全面更新時の実施が経済的で
効率的。
停電対策:自家用発電設備の整備
浸水対策:想定浸水深さ以上の嵩上げ等
テロ対策:沈殿池やろ過池等に覆蓋
(4) 原 水 濁 度 上 昇 に 伴 う 水 処
理性能不足の顕在化
全面更新に併せて、既存の凝集沈殿池を
別の方式にすることが効率的。
(5)高 度 浄 水 処 理 シ ス テ ム
全面更新に併せた高度浄水処理システム
導入の検討が必要。
20
(7) こ れ ま で の 検 討 経 緯
平 成 23 年 度 に 上 下 水 道 局 内 に 浄 水 場 整 備 手 法 検 討 部 会 を 設 置 し 、
課 題 の 抽 出 、 更 新 の 必 要 性 等 を 検 討 し て き た ( 表 17) 。
平 成 25 年 度 に は 、 こ れ ら の 検 討 結 果 を 踏 ま え 浄 水 処 理 方 式 や 配 置
等に、より専門的な知見を得ながら、基本検討に着手した。
表 17
年
検討経緯
月
検討内容
平 成 23年 7 月
上下水道局内に総務課、浄水課、水道建設課の担当で構成
する浄水場整備手法検討部会を設置し、仁井田浄水場の課
題の抽出や更新の必要性等を検討
平 成 24年 5 月
上 下 水 道 局 内 の 技 術 管 理 者 、 課 長 級 (技 術 職 )で 構 成 さ れ る
技術委員会に中間報告書を報告
平 成 25年 3 月
・ 平 成 25年 度 当 初 予 算 に 「 仁 井 田 浄 水 場 更 新 に 関 す る 基 本
検討業務」委託費を計上
・基本検討業務委託の内容等について建設委員会に説明
平 成 25年 8 月
業 務 委 託 発 注 (平 成 26年 3 月 20日 納 品 )
平 成 25年 9 月
浄水場整備手法検討部会が先進地(鳥取市、福岡県大牟田
市、佐世保市)の浄水場を視察
平 成 26年 3 月
平 成 26年 度 予 算 に 「 仁 井 田 浄 水 場 更 新 基 本 設 計 お よ び 事 業
手法の総合評価業務」委託費を計上
平 成 27年 1 月
(予定)
基本検討報告書を建設委員会に報告
21
3
仁井田浄水場更新に向けた基本事項の検討
安定した経営のもと、安全でおいしい水の安定的な供給を目指すため、
図8に示す項目により、浄水場更新に関する基本検討を行った。
図8
基本検討項目
計画給水人口および一日最大給水量の推計
豊岩浄水場の既存能力
(1)施設規模
豊岩浄水場の余裕能力活用の評価
予備力の考え方
浄水処理方式の分類と特徴
原水水質の現状
浄水水質の現状
(2)浄 水 処 理 方 式
浄水水質の目標
基本検討
項
目
安全性を高める対策
急速ろ過方式と膜ろ過方式の比較
耐震性能の確保
(3)非 常 時 に 備 え た 施 設 機 能
浸 水 、津 波 に 対 す る 考 え 方
非常用発電設備の設置
(4)現 有 敷 地 を 活 用 し た 施 設 整 備 の 可 能 性
(1) 施 設 規 模
本 市 5 浄 水 場 を 合 わ せ た 施 設 能 力 は 197,137m 3 / 日 で あ り 、 本 市 の
一 日 最 大 給 水 量 ※ 9 実 績 115,934 m 3 / 日 と 比 較 し て 約 80,000 m 3 / 日 の 余
裕がある(図9)。
今後、人口減少の進行や一人当たり使用量の減少に伴い、給水量
は 減 少 す る と 推 測 さ れ る た め 、 過 去 10 年 間 の 人 口 推 移 や 給 水 量 等 の
実 績 を 用 い て 、 平 成 44 年 度 ま で の 一 日 最 大 給 水 量 を 推 計 し 、 施 設 の
適正規模を検討した。
※9
一 日 最 大 給 水 量 :年 間 に お け る 一 日 給 水 量 の 最 大 値 。 浄 水 場 の 施 設 規 模 を 決
める指標となる。
22
図9
秋田市水道事業の施設能力と年度別給水量実績
35
25
316,189人(H25末)
30
20
施設能力 197,137m3/日(H25)
・施設最大稼働率約59%(一日最大給水量)
・施設利用率約52%(一日平均給水量)
・一日最大給水量(H25末)で約8万m3/日余裕あり
15
一日最大給水量
25
給水人口(万人)
水量(万m3/日)
給水人口
115,934m3/日(H25末)
一日平均給水量 101,549m3/日(H25末)
20
10
H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25
ア
給水人口および一日最大給水量の推計
給水人口は、コーホート要因法で推計した行政区域内人口から、
給 水 区 域 外 人 口 を 差 し 引 い た 値 に 計 画 普 及 率 (平 成 32年 度 100% )を
乗じ推計した。
また、一日最大給水量は、生活用、業務営業用水量、工場用水量
のそれぞれ用途ごとに、過去の実績を基に有収水量を算定して推
計 し た ( 図 10) 。
図 10
計画給水人口および一日最大給水量の推計方法
行政区域内人口
給水人口
生活用原単位
コーホート要因
・行政区域内人口-給水区域外人口
・ 計 画 普 及 率 (H32を 100%)
時系列傾向分析※12
214 ㍑/人/日
(H32)
生活用有収水量
(原単位×計画給
水人口)
業務営業用水量
H21~24 平均
業務営業用
有 収 水 量
工場用水量
H21~24 平均
工
場
用
有 収 水 量
有 収 水 量 ※ 10
有効率を 95%
に設定(H32)
計画有収率
92.7%(H32)
負 荷 率 ※ 11
H15~24 平均
計画負荷率
85.3%(H32)
23
有収水量の推計
(生 活 +業 務 営 業 +工 場 )
一日平均給水量の推計
(有収水量÷有収率)
一日最大給水量の推計
(日平均給水量÷負荷率)
※ 10
※ 11
※ 12
有収水量:料金徴収の対象となった水量および他の会計等から収入のあ
った水量。
負荷率:一日平均給水量を一日最大給水量で割った率で、水道事業にお
ける施設効率を判断する指標。
時系列傾向分析:実績と将来の傾向が時間のみを変数とする式(時系列
傾向曲線)で実績に傾向曲線を当てはめて将来の値を推計する方法。
(ア) 給 水 人 口
行 政 区 域 内 人 口 は 、 平 成 24年 10月 1 日 を 基 準 と し 、 最 新 の 実 績
にコーホート要因法を用いて推計したもので、国立社会保障・人
口 問 題 研 究 所 (以 下 「 社 人 研 」 と い う 。 )の 日 本 の 地 域 別 将 来 推 計
人 口 と 比 較 し て 検 討 し た ( 図 11) 。
こ の 結 果 、 給 水 人 口 は 、 平 成 24 年 度 を 基 準 と し て 、 32 年 度 で
5 % 、 44年 度 で 約 17% 減 少 す る と 推 計 さ れ た ( 図 12、 表 18) 。
図 11
行政区域内人口の本検討における推計結果と他推計との比較
34
実績
本検討における推計
社人研
行政区域内人口(万人)
33
32
31
30
29
28
27
26
25
H15 H17 H19 H21 H23 H25 H27 H29 H31 H33 H35 H37 H39 H41 H43
実績
推計値
行政区域内人口
H 22
①実績
H 24
H 32
H 37
H 44
322,883 319,367
②本検討における推計
③社人研
H 27
313,411 301,576 287,180 271,164
323,600
312,560 299,969 285,462 269,696
推計値の差(②-③)
851
24
1,607
1,718
1,468
(イ)一 日 最 大 給 水 量
給 水 人 口 の 減 少 に 大 き く 影 響 さ れ る 一 日 最 大 給 水 量 は 、 平 成 24
年 度 を 基 準 と し た 32年 度 で 約 6 % 、 44年 度 で 約 15% 減 少 す る と 推
計 さ れ た ( 図 12、 表 18) 。
浄 水 施 設 の 耐 用 年 数 60年 に 比 較 す る と 、 本 検 討 で 行 っ た 推 計 期
間 20年 は 短 い も の で あ る が 、 人 口 減 少 傾 向 の 克 服 に は 長 い 時 間 を
要すると考えられることを踏まえれば、一日最大給水量は、現状
を最大値と捉えることが適当であると考えられる。
図 12
給水人口および給水量推計
360,000
340,000
320,000
人口(人)
300,000
280,000
260,000
給水区域内人口(実績)
給水区域内人口(予測値)
給水人口(実績)
給水人口(予測値)
240,000
220,000
200,000
H15
H20
H25
H30
H35
H40
H30
H35
H40
160,000
140,000
給水量(m3/日)
120,000
100,000
80,000
60,000
40,000
一日平均給水量(実績)
一日平均給水量(予測値)
一日最大給水量(実績)
一日最大給水量(予測値)
20,000
0
H15
H20
H25
25
表 18
給水人口および給水量推計結果
平 成 24
年度
項目
給
イ
水
人
口
(人)
平 成 32年 度
平 成 44年 度
H 24比
H 24比
317,383
301,473
△5.0% 264,456
△16.7%
一日最大給水量
(m3/日) 121,559
113,880
△6.3% 102,850
△15.4%
一日平均給水量
(m3/日) 105,718
97,119
△8.1%
△17.0%
87,717
豊岩浄水場の既存能力
仁井田浄水場と豊岩浄水場は、豊岩配水場を介して相互に浄水
を 融 通 で き る 機 能 を も っ て お り 、 そ の 合 計 給 水 量 は 市 全 体 の 97 %
を占めている。
こ の 給 水 割 合 を 前 提 に 、 2 浄 水 場 に 求 め ら れ る 平 成 32 年 度 の 一
日 最 大 給 水 量 を 単 純 に 試 算 す る と 、 市 全 体 の 113,880m 3 /日 に 97% を
乗 じ た 110,800m 3 /日 を 担 う 必 要 が あ る こ と と な る ( 表 19) 。
これに現状の給水割合を当てはめれば、仁井田浄水場は
92,800m 3 /日 、 豊 岩 浄 水 場 は 18,000m 3 /日 の 給 水 量 と な る も の の 、 豊
岩 浄 水 場 は 35,800m 3 / 日 の 能 力 を 有 し て お り 、 平 成 32 年 度 で は 、
17,800 m 3 /日 の 余 裕 能 力 が 生 ず る こ と と な る 。 し た が っ て 、 豊 岩 浄
水場の余裕能力を活用した仁井田浄水場の規模縮小について、次
項ウで検討した。
表 19
仁井田および豊岩浄水場に係る一日最大給水量推計
(単 位 : m 3 /日 )
年度
一日最大
給 水 量
仁井田・豊岩浄水場
仁井田
豊岩
計
その他
浄水場
H 24
121,559
98,956
(81.5%)
19,084
(15.8%)
118,040
(97.3%)
3,519
(2.7%)
H 32
113,880
92,800
(81.5%)
18,000
(15.8%)
110,800
(97.3%)
3,080
(2.7%)
26
図 13
ウ
仁井 田 お よ び 豊 岩 浄水 場 の 送配 水 系 統 図
豊岩浄水場の余裕能力活 用の評価
仁井田 浄水場と 豊岩浄水 場 の施設 能 力の配 分 につ い て 、以下 の
2ケース を想定し 、豊岩 浄水場を含めた施設整備費 用や送水方法
の見直し 、危機管 理面な どを総合的に評価したとこ ろ、ケース1
の豊岩浄 水場の既 存施設 能力を最大に活用し、仁井 田浄水場の施
設 規 模 を 75,000m
m3/ 日 と す る ケ ー ス が 最 も 高 い 結 果 と な っ た ( 表
20) 。
(ア) ケ ー ス 1
豊 岩 浄 水 場 の 既 存 能 力 ( 35,80
00m 3 /日 ) を す べ て 活 用 し 、 推 計
給 水 量 か ら 差し 引 い た 分 を 仁 井田 浄 水 場の 施 設 能 力 と す る。
(イ)ケ ー ス 2
現 状 と 同 じ 給 水 割 合 と す る ( 表 19) 。
27
表 20
仁井田浄水場施設規模のケース比較
ケース1
ケース2
豊岩浄水場既存能力
を有効活用
現状と同じ割合
110,800
110,800
仁 井 田 浄 水 場 (A )
75,000
92,800
豊 岩 浄 水 場 (B )
35,800
18,000
◎
△
ケース
項
目
H 32給 水 量 (m 3 /日 )
(A + B )
仁井田浄水場
に掛る事業費
△
送水方法の見直し
〇
(豊岩配水場)
危機管理面
○
〇
(浄 水 場 複 数 系 統 化 )
(分 散 配 置 )
(分 散 配 置 )
既存施設能力活用
◎
△
総 合 点
14
8
( 注 ) 各 項 目 の 点 数 は 、 ◎ 5 点 、 〇 3 点 、 △ 1 点 、 ×0 点 と 設 定 し 評 価 し た 。
エ
予備力の考え方
水道施設設計指針によると、施設能力の予備力は、浄水場内施設
を複数系列に分割した場合の1系列分程度とし、一日最大給水量
に 浄 水 場 内 の 作 業 用 水 量 等 を 含 め た 計 画 浄 水 量 の 25 % 程 度 を 標 準
とすると示されている。
し か し 、 3 (1)の ア で 述 べ た と お り 、 今 後 、 人 口 お よ び 給 水 量 は
減少する見込みであり、浄水場の更新時が最大と考えられること
や現状において十分な配水池容量を有していること、事業費の抑
制等を考慮し、予備力は見込まないことが適当と考える。
28
(2)浄 水 処 理 方 式
仁井田浄水場の浄水方式は凝集沈殿池を備えた急速ろ過方式である
が 、 2 の (4)「 原 水 濁 度 上 昇 に 伴 う 水 処 理 性 能 不 足 の 顕 在 化 」 で 触 れ
たとおり、急激な濁度変化に対応できない等の弱点を持っている。
浄水場の更新に当たっては、こうした弱点の克服に努めるとともに、
原水の特性や経済性など様々な観点から本市に適した浄水処理方式
を 慎 重 に 選 択 す る 必 要 が あ る ( 図 14) 。
図 14
浄水処理方式選定フロー図
原水水質の現状
濁度、かび臭など過去4年間の
実績の最大値
浄水水質の現状
過去4年間の最大値
浄水水質の目標設定
国の方向性、市民意識
レベル2設定
浄水処理の高度化
水処理性能
概算建設費
概算維持管理費
維持管理リスク
設置スペース
4パターンの浄水処理
方式の比較
ア
浄水処理方式の分類と特徴
浄水処理は、消毒のみを行う方式と、ろ過した後に消毒する方
式に大別される。このうちのろ過処理には、急速ろ過方式、緩速
ろ過方式、膜ろ過方式がある。
全 国 の 処 理 方 式 別 の 年 間 浄 水 量 割 合 は 、 図 15 に 示 す と お り で あ
る 。 膜 ろ 過 方 式 は 新 し い 技 術 で あ る こ と か ら 現 状 で は 1.4% 程 度 と
小さい割合になっているが、施設の全面更新等に当たって膜ろ過
方式に転換する事業体が多い。
ま た 、 膜 ろ 過 方 式 の 特 徴 を 表 21に 整 理 し た 。
29
図 15
全 国 の 浄 水 処 理 方 式 別 の 年 間 浄 水 量 割 合 (平 成 24年 度 実 績 )
膜ろ過
1.4%
緩速ろ過
3.3%
(単位:千m 3)
消毒のみ
17.6%
浄水処理方式
急速ろ過
77.7%
年間浄水量
割合
消 毒 の み
2,667,480
17.6%
緩 速 ろ 過
503,061
3.3%
急 速 ろ 過
11,775,008
77.7%
213,189
1.4%
15,158,738
100.0%
膜
ろ
過
計
(出典) (社)日本水道協会「水道統計(平成 24 年度版)」
表 21
項
膜ろ過方式の特徴等
目
膜ろ過方式
模式図
仕組み
原 水 を 孔 径 0.1∼ 0.01μ mの 微 小 の 孔 を 持 つ 膜 を 通 過 さ せ
ることにより、濁り物質や微生物を除去することにより
ろ過するもの。
特
浄水過程の管理が容易であり、施設の面積も少なくて済
むが、定期的な膜の薬品洗浄と交換が必要である。
原水に、膜ろ過で除去しにくい鉄、マンガン等が多く含
まれる場合には、前ろ過等により処理する必要がある。
平成5年から導入が始まった新しい技術である。
徴
( 注 ) 急 速 ろ 過 方 式 お よ び 緩 速 ろ 過 方 式 に つ い て は 、 p5 に 記 載 。
イ
原水水質の現状
雄 物 川 か ら 取 水 し て い る 原 水 水 質 に つ い て 、 平 成 21 か ら 24 年 度
の 測 定 実 績 と ガ イ ド ラ イ ン が 示 す 原 水 水 質 レ ベ ル 基 準 を 表 22 に 整
理 し た 。 レ ベ ル 基 準 と 実 績 の 最 大 値 を 比 較 す る と 、 濁 度 は 「高 」、全
有 機 炭 素 ※ 1 3 (TOC)と か び 臭 物 質 ( ジ ェ オ ス ミ ン 、 2 -MIB) に つ い て
は 「 低 」 、 ト リ ハ ロ メ タ ン 生 成 能 ※ 1 4 ( THM-FP ) は 「 中 」 で あ る こ
とが判る。
30
このことから、仁井田浄水場の原水は、濁度を除いて比較的良
好なレベルにあると言える。
※ 13
※ 14
表 22
全 有 機 炭 素 (TOC): 水 中 の 有 機 物 濃 度 を 推 定 す る 指 標 値 。
ト リ ハ ロ メ タ ン 生 成 能 ( THM-FP) : 水 道 原 水 中 に 存 在 す る フ ミ ン 質 と 消
毒用に注入された塩素が反応してできるトリハロメタン濃度のこと。
ガイドライン原水水質レベル基準と仁井田浄水場原水水質実績
原水水質
水質項目
ガイドラインが示す
水 質 レ ベ ル 基 準
低
中
高
(超~以下)
(以下) (超~以下)
仁井田浄水場実績(H21~H24)
最小
平均
最大
濁度(度)
1
1~ 5
5~ 800
2.0
中
18.2
高
857
高
全有機炭素
(mg/L)
2.5
2.5~ 3.5
3.5~ 8.1
0.6
低
1.0
低
1.8
低
かび臭物質
( ng/L)
5
5~ 25
25~ 1000
<1
低
2
低
4
低
トリハロメタン
(mg/L)
0.04
0.04~0.07
0.07~0.14
0.018
低
0.030
低
0.044
中
ウ
浄水水質の現状
仁 井 田 浄 水 場 の 浄 水 水 質 は 表 23 の と お り 、 レ ベ ル 基 準 と 実 績 の
最大値を比較すると、ろ過濁度、全有機炭素およびトリハロメタ
ンは「レベル1」、かび臭物質は「水質基準」となっており、ガ
イドラインが示す「レベル2」に達していない現状である。
表 23
ガイドライン浄水水質レベル基準と仁井田浄水場浄水水質実績
原水水質
水質項目
ガイドラインが示す
水 質 レ ベ ル 基 準
水質
レベル1
レベル2
基準
仁井田浄水場実績(H21~H24)
最小
平均
最大
濁度(度)
2
0.1
0.01
0.000
レベル2
0.003
レベル2
0.019
レベル1
全有機炭素
(mg/L)
3
1.5
1.0
<0.3
レベル2
0.6
レベル2
1.2
レベル1
かび臭物質
( ng/L)
10
3
1未満
1
レベル1
2
レベル1
4
水質基準
トリハロメタン
(mg/L)
0.1
0.040
0.015
<0.001
レベル2
0.008
レベル2
0.024
レベル1
31
エ
浄水水質の目標
より安全で安心な水を求める市民意識は高まっており、また、
国は浄水処理の高度化を掲げガイドラインにより水質レベル2を
目指すべき方向としている。
こうしたことを踏まえ、浄水水質の目標について以下のとおり
検討する。
(ア) 国 の 方 向 性
厚 生 労 働 省 が 平 成 25年 3 月 に 策 定 し た 「 新 水 道 ビ ジ ョ ン 」 で は 、
50年 後 、 100年 後 の 将 来 を 見 据 え 、 水 道 の 理 想 像 を 水 道 水 の 安 全
確保(安全)、確実な給水の確保(強靱)、給水体制の持続性の
確保(持続)と表現し、水道事業者のみならず水道を利用する市
民も含め幅広く関係者が理想像を共有し、取り組んでいくことを
求めている。
この中で、重点的な実現方策として、水道施設のレベルアップ
や危機管理対策を掲げ、その具体策として、施設の再構築を契機
と し た 浄 水 処 理 の 高 度 化 を 図 る べ き で あ る と し て い る ( 図 16) 。
図 16
「新水道ビジョン」重点的な実現方策
重点的な実現方策
1 関係者の内部方策
(1)水道施設のレベルアップ
(2)資産管理の活用
(3)人材育成・組織力強化
(4)危機管理対策
(5)環境対策
3 新たな発想で取り組むべき方策
(1)料金制度の最適化
(2)小規模水道対策
(3)小規模自家用水道等対策
(4)多様な手法による水供給
強靱 安全
持続
・施設の再構築を契
機とした浄水処理
の高度化
・水源事故対策とし
ての浄水処理の高
度化
2 関係者間の連携方策
(1)住民との連携の促進
(2)発展的広域化
(3)官民連携の推進
(4)技術開発、調査・研究の拡充
(5)国際展開
(6)水源環境の保全
32
(イ) 市 民 意 識
市 民 が 水 道 事 業 に 求 め る も の に つ い て 、 平 成 25 年 10 月 に 市 民
1,000人 を 対 象 ( 回 収 数 619人 ) に 実 施 し た ア ン ケ ー ト 調 査 で は 、
約6割が「安全な水の供給」が最も重要だと考えていることが把
握 さ れ た ( 図 17) 。
ま た 、 平 成 26年 6 月 に 秋 田 駅 前 の ア ゴ ラ 広 場 で 実 施 し た 水 道 週
間 ア ン ケ ー ト ( 市 民 832人 ) に お い て も 、 図 18の と お り 約 7 割 が
同様の回答であった。
図 17
1番目
水道事業に関するアンケート調査
16%
57%
おいしい水
13%
5%
8%
安全な水の供給
2%
2番目
19%
18%
33%
13%
12%
安定した水道
3番目
16%
合計
17%
9%
20%
17%
5%
28%
2%
28%
0%
おいしい水
安定水源の確保
水道料金
90%
12%
50%
安全な水
環境に配慮した施設整備
その他
図 18
100%
22%
16%
100%
地震・災害に強く安定した水道
お客さまサービスの充実
無回答
水道週間アンケート調査
0.0%
3.8%
5.1%
0.7%
5.9%
7.6%
0.2%
6.5%
5.6%
0.9%
3.9%
6.3%
0.1%
4.2%
9.3%
0.1%
6.3%
7.9%
0.3%
5.5%
6.6%
76.0%
70.9%
73.4%
74.1%
69.8%
69.4%
71.4%
80%
70%
60%
50%
安
全
性
40%
30%
20%
10%
14.6%
14.6%
14.4%
14.3%
15.9%
16.3%
16.2%
0%
平成20年 平成21年 平成22年 平成23年 平成24年 平成25年
その他
料金の安さ
安定性
安全性
おいしさ
33
平成26年
(ウ) 目 標 設 定 に 向 け た 検 討
浄水施設の更新に当たっては、「新水道ビジョン」の方向性や
市民アンケート調査結果から、浄水水質レベルの向上に努める必
要がある。
浄水技術の進歩が目覚ましい一方で、人口減少など水道事業の
経営環境は大きく変化していくと見通されている。
こうしたことを考慮すれば、浄水水質の向上については、経済
性や安定性などを考慮しながら、さらに広範かつ詳細な検討を踏
まえて目標設定する必要がある。
オ
安全性を高める対策
原水に含まれる各成分の大きさと、これに対応する代表的な浄
水 方 式 を 図 19 に 示 す 。 か び 臭 原 因 物 質 等 の 臭 気 物 質 は 非 常 に 微 細
であるため、活性炭処理やオゾン処理などの高度浄水処理以外に
除去方法はない。
また、活性炭処理を導入することにより、農薬類やトリハロメ
タン前駆物質の除去が可能となり、水源域での事故により化学物
質が混入した場合の取水停止リスクも軽減される。
これらのことから、高度浄水処理方式の導入について検討する
必要がある。
図 19
原水中に含まれる各成分の大きさと浄水方式の適用範囲
0.001μm 0.01μm 0.1μm 1μm 10μm
コロイド
水
道
原
水
農薬、フルボ酸、フミン酸
の
成
臭気物質、トリハロメタン
ウィルス
分
粘土
クリプトスポリジウム
大腸菌
藻類、泥
バクテリア
前駆物質
浄
水
方
式
濁質
凝集+急速ろ過
膜ろ過(精密ろ過(MF))
活性炭処理
組み合わせにより幅広い水質に対応
( 参 考 文 献 ) 「 浄 水 技 術 ガ イ ド ラ イ ン 2010」 ((財 )水 道 技 術 研 究 セ ン タ ー )お よ
び 「 水 道 膜 ろ 過 入 門 改 訂 版 」 (日 本 水 道 新 聞 社 )
34
カ
急速ろ過方式と膜ろ過方式の比較検討
代表的な浄水方式4パターンについて、事業化の優位性を比較
検 討 し た ( 表 24) 。
①案
凝 集 沈 殿 + 粉 末 活 性 炭 処 理 ※ 15+ 急 速 ろ 過 池
②案
凝 集 沈 殿 + 粒 状 活 性 炭 処 理 ※ 16+ 急 速 ろ 過 池
③案
凝 集 剤 + 前 ろ 過 ※ 17+ 粉 末 活 性 炭 処 理 + 膜 ろ 過 方 式
④案
凝集剤+前ろ過+粒状活性炭処理+膜ろ過方式
この結果、急速ろ過方式、膜ろ過方式とも水処理性能に差はな
く、耐用年数を考慮した概算建設費は急速ろ過方式が優位であっ
た。また、概算維持管理費は、本市の原水水質において農薬類や
夏季のかび臭が発生する時期等を考慮し、粉末活性炭の注入期間
を5カ月で試算したこともあり、粉末活性炭処理を組み合わせた
方式が優位となった。
維持管理リスクについては、膜処理方式では、前ろ過の処理性
能が悪化しても膜ろ過で確実に濁度、クリプトスポリジウム等が
除去できることからリスクは低いが、急速ろ過方式では凝集沈殿
機能が悪化した場合は、急速ろ過池でこれらを除去できないため
リスクは高くなる。
設置スペースは、急速ろ過方式の場合、凝集沈殿池が広い面積
を要することもあり、膜ろ過方式の方が優位となった。
これらの結果、③案の粉末活性炭を用いた膜ろ過方式が最も高
い評価となった。
しかし、各処理方式において様々な技術の進展があることから、
それらの適応性や、事業費の精査等によりこの評価は容易に変わ
り得ると考えられることから、現時点では「膜ろ過方式+粉末活
性炭」方式に限定することなく、さらに本市に適した方式を研究
することとしたい。
※ 15
粉末活性炭処理:原水に粉末活性炭を注入し、有機物を吸着除去する処
理方式で、夏場に発生する異臭味など短い期間の使用に適しており、初
期投資額は粒状活性炭に比べ小さい。
35
※ 16
※ 17
粒状活性炭処理:原水を活性炭層に通して有機物を除去する方式で、異
臭味や有機物の除去を連続的に行う場合などに適している。新たな施設
が必要となるため、粉末活性炭処理と比較し初期投資額が大きい。
前ろ過:本検討では、鉄やマンガンを除去する機能を有するろ過設備と
した。
表 24
代表的な浄水方式4パターンの比較
ケース
項 目 [配 点 ]
急速ろ過方式
膜ろ過方式
①
粉末活性炭
②
粒状活性炭
③
粉末活性炭
④
粒状活性炭
水処理性能
30
23
-
24
-
23
-
24
-
概算建設費
(億 円 /年 )
20
20
7.2
19
7.5
18
8.1
17
8.4
概算維持管理費
(億 円 /年 )
20
20
3.6
15
4.7
17
4.2
13
5.3
維持管理リスク
20
15
中
15
中
20
低
20
低
設置スペース
(㎡ )
10
8
9,020
8
9,660
10
7,420
9
8,060
評価(総合点)
100
○ (86点 )
△ (81点 )
◎ (88点 )
○ (84点 )
(注 )ガ イ ド ラ イ ン と 「 水 道 事 業 の 再 構 築 に 関 す る 施 設 更 新 費 用 算 定 の 手 引 き 」 等
を参考に試算した。なお、概算維持管理費の粉末活性炭の注入期間は、本市
の原水水質から5カ月とした。また、維持管理リスクの急速ろ過方式は、濁
度、クリプトスポリジウム等の漏洩が懸念されるため、リスクが高くなるも
のとした。
(3) 非 常 時 に 備 え た 施 設 機 能
ア
耐震性能の確保
浄水施設は水道施設の中枢をなすものであり、その機能は水道
システム全般に直接的な影響を及ぼす。
このため、浄水施設は「水道施設の技術的基準を定める省令
※ 18
」に よ り レ ベ ル 2 地 震 動 に 対 し 、 生 ず る 損 傷 が 軽 微 で 機 能 に 重
大な影響を及ぼさないことが求められている。
このことから、耐震性能を有する施設に更新する必要がある。
※ 18
水道法第五条第四項に基づき、水道施設に関して必要な技術的基準を
定めた厚生労働省令
36
イ
浸水、津波に対する考え 方
本 市 が 平 成 18 年 度 に 作 成 し た 災 害 ハ ザ ー ド マ ッ プ ( 図 20 ) に よ
れ ば 、 仁 井 田 浄 水 場 一 帯 は 0.5 m か ら 2.0 m 程 度 の 浸 水 が 想 定 さ れ
ている。
こ の た め 、 浸水 に よ る 設 備 被 害を 回 避 する 対 策 が 必 要 で ある 。
図 200
秋 田市 災 害 ハ ザ ー ド マッ プ ( 洪水 避 難 地 図 )
ま た 、 津 波 に つ い て は 、 本 市 が 平 成 26 年 3 月 に 作 成 し た 秋 田 市
津 波 ハ ザ ー ド マ ッ プ ※ 1 9 ( 図 21 ) に お い て 、 仁 井 田 浄 水 場 内 は 影 響
を受けな いとされ ている 。しかし、雄物川および河 川敷内にある
取 水 施 設 、 導 水 施 設 は 0. 3 m か ら 5.0
5 m程度 の浸水 が 想定され てい
る こ と か ら 、 濁流 や 海 水 等 の 流 入を 想 定 した 対 策 が 必 要 で ある 。
37
図 21
※ 19
ウ
秋 田 市 津 波ハ ザ ー ドマ ッ プ
秋 田 市 津 波ハ ザ ー ド マ ッ プ : 秋田 県 が 公 表し た 秋 田 県 地 震 被 害想 定
調 査 ( 平 成 25
5年 8 月 ) に お け る 最 大 ク ラ スの 津 波 浸 水 想 定 を 基 に 秋
田市が作成したマップ。
非常用発電設備の設置
仁井田浄水場は、非常用 発電設備を備えていなか ったことから、
平 成 23 年 3 月 に 発 生 し た 東 日 本 大 震 災 で は 、 市 内 全 域 が 停 電 し た
こ と に 伴 い 15時 間 半 に わ た り 浄 水 場 の 運 転 が 停 止 し た 。
この経 験を踏ま え、施設 整備に当 た っては 非 常用 発 電 設備を 設
置する必要がある。
(4) 現 有 敷 地 を 活 用 し た 施 設 整 備 の 可 能 性
浄水場の 更新は、 既存施 設を稼働しながら新たな施 設整備を行う
必 要 が あ る こ と か ら 、 現 有 敷 地 の 未 利 用 地 等 に 表 24 で 検 討 し た ス ペ
ー ス の 最 大 値 9,660 ㎡ が 当 て は ま る か を 検 討 し た 。
そ の 結 果 、 図 22 の と お り 、 現 有 敷 地 で の 更 新 が 可 能 で あ る こ と が
確認できた。
38
図 22
現有敷地を活用した施設整備の可能性検討図
高速沈でん池
No.1(S42)
高速沈でん池
12
10
11
9
取水ポンプ
沈砂池
取水ポンプ
8 6 4 2
急速ろ過池
沈砂池
7
5
3 1
浄水池
No.2(S42
既存2群施設
)
排水施設ゾーン
(既存施設を活用:排泥
池、濃縮槽、脱水機、天
日乾燥床)
14
12
10
8
6
4
11
9
7
5
取水施設ゾーン
(自家発電設備、
特高変電所)
(沈砂池等)
浄水池
既存1群施設
2
管理本館
急速ろ過池
13
受電施設ゾーン
3
1
濃縮槽
浄水池
排泥池
豊岩送水
ポンプ
(S51)
特高変電所
排水池
管理施設ゾーン
送水施設ゾーン
(管理棟、薬品貯蔵棟)
(送水ポンプ棟)
上下水道局敷地
浄水施設ゾーン
(沈殿池、ろ過施設、
浄水池等)
4
他都市事例による事業費の考察
(1) 他 都 市 事 例
他 都 市 の 浄 水 場 の 全 面 更 新 状 況 等 は 、 表 25の と お り で あ る 。
近年は、浄水場の全面更新に当たり、従来の設計および建設に加
え、資金調達、運転管理、保守、修繕など民間活力の活用範囲が広
がっていることがわかる。
予 定 価 格 は 、 15 年 か ら 20 年 程 度 の 維 持 管 理 費 を 含 め て 設 定 し て い
る都市が多く、建設費を公表しているケースは少ない。
39
表 25
事業者名
浄水場名
(浄水量)
A浄水場
(約 17万 m3/日)
B浄水場
(8 万 m3/日)
C浄水場
(約 6.8万 m3/日)
D浄水場
(約 5.1万 m3/日)
他都市の浄水場の全面更新状況等
処理方式
事業
手法
※ 20
膜ろ過
PFI
予定価格
建設期間
設 建 運 維 【契約額】 【 維 持 管 理
期間】
計 設 転 持 (税 抜 き )
H21.4~
265億 円
○ ○ ○ ○
27.3(6年)
【265億円】
【20年間】
※ 21
膜ろ過
急速ろ過
DB
PFI
膜ろ過
膜ろ過
○ ○
○ ○
総事業費
156億円
(税込み)
H18.5~
22.12
(4年7カ月)
H25.1~
202億 円
29.7
○
【110億円】 (4年6カ月)
【15年間】
DBO
H22.9~
27.3
99億 円
○ ○ ○ ○
【93億円】 (4年6カ月)
【15年間】
DBO
H26.4~
132億 円
○ ○ ○ ○
30.3(4年)
【103億円】
【19年間】
※ 22
E浄水場
(2.7 万 m3/日)
業務内容
F浄水場
(約 2.6万 m3/日)
膜ろ過
DBO
H21.6~
88億 円
24.3
○ ○ ○ ○
【80億円】 (2年10カ月)
【15年間】
G浄水場
(2.5万 m3/日)
膜ろ過
DB
○ ○
51億 円
【46億円】
H25.7~30.3
(4年8カ月)
(注)業務内容:「運転」は浄水施設の運転管理、「維持」は保守点検や修繕業務
等である。
※ 20 PFI ( プ ラ イ ベ ー ト ・ フ ァ イ ナ ン ス ・ イ ニ シ ア テ ィ ブ ) : 公 共 施 設 等 の 設
計、建設、維持管理、修繕等の業務について、民間事業者の資金とノウハ
ウを活用して包括的に実施する方式。
※ 21 DB( デ ザ イ ン ・ ビ ル ド ) : 施 設 の 設 計 、 建 設 等 の 業 務 に つ い て 、 民 間 事 業
者のノウハウを活用して包括的に実施するもので、施設整備に伴う資金調
達は公共側が行う。
※ 22 DBO ( デ ザ イ ン ・ ビ ル ド ・ オ ペ レ ー ト ) : DB に 運 転 管 理 、 維 持 ・ 修 繕 等 を 含
めたもの。
40
(2) 仁 井 田 浄 水 場 更 新 に 係 る 建 設 事 業 費 の 考 察
仁 井 田 浄 水 場 の 適 正 施 設 規 模 を 7.5万 m 3 /日 と し 、 こ れ に 表 26に 示 し
た 他 都 市 の 1 万 m 3 / 日 当 た り の 平 均 建 設 単 価 約 20.6億 円 ( 設 計 ベ ー ス )
を 単 純 に 乗 じ る と 本 市 の 目 安 と な る 参 考 概 算 事 業 費 は 、 155億 円 ( 税
抜き)と試算される。
し か し な が ら 、 平 成 24 年 度 以 降 建 設 単 価 は 上 昇 を 続 け て い る こ と
や、消費税率の引き上げがあったことなどから、今後さらに直近の
他都市事例などの情報収集に努め、信頼できる参考概算事業費の把
握を行う必要がある。
また、今後、人口減少や節水器具の普及等により、水需要が減少
し、料金収入が減少すると見込まれている状況では、建設事業費は
可能な限り縮減しなければならないものであり、縮減方法等につい
て、さらに検討する必要がある。
表 26
仁 井 田 浄 水 場 更 新 の 目 安 と な る 建 設 単 価 (税 抜 き )
浄水量
(m 3 /日 )
建設価格
1 万 m 3 /日 当 た り
の建設単価
(億 円 /万 m 3 /日 )
C浄水場
約 6.8万 m 3 /日
約 180億 円
約 26億 円
D浄水場
約 5.1万 m 3 /日
約 70億 円
約 14億 円
E浄水場
2.7万 m 3 /日
約 65億 円
約 24億 円
F浄水場
約 2.6万 m 3 /日
約 40億 円
約 15億 円
G浄水場
2.5万 m 3 /日
約 50億 円
約 20億 円
19.7万 m 3 /日
405億 円
(平 均 )
約 20.6億 円 /万 m 3 /日
事業者名
浄水場名
計
(注)建設費の時点修正は考慮していない。
41
5
官民連携の手法および範囲
他都市では、浄水場の全面更新に当たり、特許技術の活用や浄水技
術の高度化への対応を図るため、民間活力を導入した事業手法を採用し
ているケースが多くなっている。
このため、本市においてもこれらの導入のメリットやデメリットに
ついて、国の手引き等を参考にしながら、さらに研究する必要がある。
(1) 民 間 活 用 の 形 態
水道事業における業務範囲と民間活用に係わる連携形態との関係
は 、 図 23 に 示 す と お り で あ る 。 な お 、 仁 井 田 浄 水 場 の 維 持 管 理 、 運
転管理等は、現状では個別に民間事業者に業務委託している。
図 23
業務形態
業務内容
個別
委託
業務範囲と連携形態との関係
第三者
委 託
DBO
理
営
業
※ 23
コンセッション
完 全
民営化
民間活力活用の流れ
経 営 ・ 計 画 個別業務
管
PFI
の部分的
水道の管
な委託
理に関す
る技術上
の業務
設計・建設
維 持 管 理
※ 23
コ ン セ ッ シ ョ ン :水 道 資 産 を 地 方 公 共 団 体 が 所 有 し た ま ま 、 事 業 の 運 営 権
を一定期間民間に売却し、民間事業者が事業を経営する方式。
(2) 官 民 連 携 事 業 方 式 の 事 業 規 模
官民連携を活用した事業方式について、「水道事業における官民
連 携 に 関 す る 手 引 き 」 ( 平 成 26 年 3 月 厚 生 労 働 省 健 康 局 水 道 課 ) に
は、導入対象となる事業規模の目安として、以下の内容が記載され
ている。
① 施 設 整 備 費 10億 円 以 上
②運営・維持管理費1億円/年以上
③ 施 設 整 備 費 と 運 営 ・ 維 持 管 理 費 の 計 30 億 円 以 上 ( 事 業 期 間 20 年
に相当)
42
(3) 官 民 連 携 の 課 題
新たな仁井田浄水場の規模を考慮すると、民間活力の連携形態に
は、設計、建設、維持管理、運転管理の各業務ごと、あるいはこれ
らを一括するなど様々な事業手法が考えられるが、
①災害等の危機管理に対応できる地元への技術蓄積
②長期契約が経営に及ぼす影響
③市職員の管理能力
など、さらに検討すべき課題も多い。
こうした検討を踏まえ、最も効率的な事業手法を検討する必要が
ある。
6
今後の検討の進め方
本検討により、仁井田浄水場の更新に向け、以下の項目についてさ
らに詳細な検討が必要なことが明らかとなった。
①浄水処理方式の選定
②浄水水質目標の設定
③高度浄水処理方式の導入
④事業費の縮減方策
⑤官民連携を含めた効率的な手法
平 成 27 年 度 以 降 は 、 上 記 5 項 目 の 詳 細 検 討 を 行 う と と も に 、 そ の 検
討結果を基に浄水場更新事業が本市水道の経営に及ぼす影響、更新に当
たっての発注方式、取水、導水施設の更新方法および国庫補助金等の財
源確保について検討を進め、具体的な計画を策定する予定である。
なお、検討に当たっては、公平性、公正性および透明性を確保する
ためにも外部有識者等で構成する委員会を設置し、進めることとしたい。
43
仁井田浄水場更新に関する基本検討報告書
平 成 27 年 1 月 作 成
作
成
秋田市上下水道局
担
当
総務課 経営企画係
〒 010-0945 秋 田 市 川 尻 み よ し 町 14 番 8 号
Tel 018-823-8434
Fax 018-824-7414
e-mail [email protected]
http://www.city.akita.akita.jp/city/ws
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