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効率的な税務行政に向けた地方税一元化の推進

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効率的な税務行政に向けた地方税一元化の推進
NRI Public Management Review
効率的な税務行政に向けた地方税一元化の推進
株式会社 野村総合研究所
社会産業コンサルティング部
コンサルタント
宮崎
誠
2.地方税務行政が抱える課題と現状
1.求められる地方税務行政の変革
1)徴収率の低下
地方分権の推進に伴い、2007 年より、国か
ら地方へ約 3 兆円規模の税源移譲が行われ、
全国的に都道府県と市町村においては、税
地方自治体は、これを地方税として自ら徴収
務業務に関わる職員数が毎年減少している
することになった。しかし、地方税務行政は、
(図表1)。その理由は、行財政改革による職
この状況を手放しでは喜べない状況にある。
員定数の見直しと、それに伴う税務職員数の
地方自治体、特に小規模な市町村では、地方
削減が進んでいることが挙げられる。
税が増えても、現行の徴収率のままでは滞納
こうした税務職員数の減少と並行するよう
額の累積も増加してしまうという問題が発生
に、徴収率の低下とそれに伴う滞納額の累積
する。
という問題が生じている。図表2および図表
地方税務行政においては、上記の問題への
3から、近年、全国的に都市 * 1 と町村におけ
対応を含めた地方税務全体の変革に向けて、
る徴収率が低下傾向にあることがわかる。徴
徴収率の向上、専門性の向上、事務の効率化、
収率とは、本来収められるべき税額に対し、
電算システムの統合によるコスト削減などを
実際に収められた税額の割合である。徴収率
図ることが重要である。また、コンビニエン
が低いほど納税されず、未納となっている税
スストア収納やクレジットカード収納、IT を
額が多いことを意味する。
活用した電子申告、電子納税の促進など、納
徴収率の低下という問題は、市町村だけに
税者の利便性の向上を図るような納税環境の
関わる問題ではない。市町村では、個人の市
整備も求められている。
町村民税と併せて、個人の道府県民税の課税
これらを実現していくためには、今後一層
徴収も行っている(地方税法第 41 条)。従っ
地方税務行政における業務、体制・組織を見
て、市町村の徴収率の低下は、当該市町村を
直し、都道府県と市町村が連携し、効率化を
有する都道府県の税収額にも影響を与えるこ
図ることが必要となる。効率的な地方税務行
とになる。
政の推進に向けて、都道府県税と市町村税に
おける課税事務と徴収事務の共同処理を進め
る「地方税一元化」は、今後、重要な視点に
なると考えられる。
本稿では、地方税一元化に焦点を当て、そ
の推進の方向について述べる。
*1
都市とは、大都市、中核市および特例市以外の市のことである。
NRI パブリックマネジメントレビュー March 2007 vol.44
1
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図表1
全国の地方自治体における税務職員数の推移
(税務職員数、人)
都道府県計
市町村計
70,000
60,956 60,911 60,792 60,655 60,300 60,013 59,767 59,095 58,693 58,147
57,660 56,323
60,000
50,000
40,000
21,985
21,893
22,311
22,156
30,000
21,814
21,605
20,815
20,120
19,841
H10
H12
H14
19,320
19,502
20,000
19,190
10,000
0
H6
H7
H8
H9
H11
H13
H15
H16
H17(年)
出所)財団法人地方財務協会「地方財政統計年報」より作成
図表2
全国の都市における徴収率と未収入額の推移
未収入額
徴収率
10,000
95
(
7,999 8,241 8,107
7,180
93.1
93.6
未
収
6,000
入
額
4,000
億
円
2,000
7,667
7,425 7,222
94
6,628 6,933
92.7
91.6
91.6
90.8
91 %
)
91.1
)
90.5
90.2
0
H6
H7
H8
H9
H10
H11
93 徴
収
92 率
、
、
92.0
(
7,107 8,241
8,000
H12
H13
H14
H15
90.4
90
89
(年度)
H16
出所)財団法人地方財務協会「地方財政統計年報」より作成
図表3
3,000
94.7
全国の町村における徴収率と未収入額の推移
未収入額
94.5
94.2
(
93.8
2,861 2,828
95
2,343
2,218
94
2,014
93 徴
収
92 率
93.0
92.5
、
1,514
1,658
1,801
、
未
収 2,000
入
額 1,500
2,412
2,554
2,703
(
2,500
徴収率
92.0
91 %
)
億 1,000
円
91.5
)
90.9
500
90.3
H15
89
H16 (年度)
0
H6
H7
H8
H9
H10
H11
H12
H13
H14
出所)財団法人地方財務協会「地方財政統計年報」より作成
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90
90.4
ことが、今後必要となってくる。以下では、
2)滞納整理の停滞
税務業務では、滞納された税金についての
地方税務行政が共通に有する課題の解決を目
徴収事務を滞納整理という。この滞納整理に
指し、府県と市町村が協働している取り組み
おいて、特に小規模な市町村では、職員と滞
についてその実態をみていく。
納者が顔見知りであることが多く、差押え等
1)滞納整理の広域的な取り組み
の処分が行いにくい、徴収専門の職員が不在
または不足している、組織内に徴収技術やノ
近年、市町村の徴収率低下とそれに伴う滞
ウハウがあまり蓄積されていないなどの理由
納額の累積への対策として、県内すべての市
により、滞納整理業務が停滞するという問題
町村が参加する滞納整理機構の設立が増えて
が発生している。
いる。平成 13 年の茨城租税債権管理機構の
設立をはじめとして、平成 16 年には三重地
方税管理機構、平成 18 年には愛媛地方税滞
3)中核的職員の不足
納整理機構、徳島県滞納整理機構、和歌山地
従来、地方自治体の税務部門には、他の部
方税回収機構の設立が続いている。
門と比べて、長い経験年数を持つ職員が多く
配置されていた。しかし、近年では、こうし
こうした機構は、地方自治法に規定される
たベテラン職員の退職、人事異動の活発化な
一部事務組合の方式により、県と市町村が共
ど、体制内部の変化によって組織に中核的人
同で設置したものである。また、一部事務組
材が不足するという問題が生じている。効率
合とは別に協議会を設置している県もある。
的に業務を遂行できる体制づくりには、中核
例えば、滋賀県では県レベルの機関として、
的職員の存在が欠かせない。こうした人材の
平成 15 年に滋賀県地方税務協議会を設置し
育成は、早期かつ計画的に取り組んでいく必
ている。
機構の設立当初の課題としては、市町村か
要がある。
らの滞納案件の移管のための事務手続きや、
スケジュールの改善などが指摘されている。
4)知識・技術・ノウハウの蓄積不足
市町村の徴収部門の多くでは、滞納整理の
また、機構設立の効果としては、財産調査、
事例・経験の少なさやアンバランスな職員構
差押え等の滞納処分と定期的な公売の実施に
成により、徴収に関する専門知識・技術・ノ
より、滞納案件からの徴収額の増加が挙げら
ウハウが組織内に十分に蓄積できていないと
れている。
いう問題が発生している。このような市町村
2)静岡県の地方税一元化への取り組み
には、今後、徴収業務における事務効率の低
下を招かないために、組織内に徴収に関する
上記のような滞納整理だけでなく、府県と
十分な専門知識・技術・ノウハウを蓄積して
市町村が協働して地方税一元化へ向けて取り
いくことが必要である。
組んでいる事例が出ている。静岡県の地方税
一元化の例である。
平成 18 年 3 月、静岡県は地方税一元化構
想を全国初の取り組みとして発表した。県、
3.府県と市町村の協働による取り組み
市町固有の課税権を尊重しつつ、広域連合で
地方税務行政が抱える課題を解決するには、
地方税に係る課税・徴収業務を共同処理によ
都道府県と市町村が協働して取り組んでいく
NRI パブリックマネジメントレビュー March 2007 vol.44
ある「静岡県地方税機構(仮称)」を設置し、
3
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「共同化に賛同するが、現場が納得できるよ
り進める、という内容である。
静岡県では現在、県と全市町の税務担当局
うに丁寧に進めてほしい」、「現場では、法人
部の参加を得て「静岡県地方税一元化連絡協
住民税と軽自動車税の課税共同化にはメリッ
議会」を設置している。その中で、市町の協
トがあるが、個人住民税と固定資産税におい
力を得て、地方税一元化の方向性を探るため
ては消極的である」といった意見や、
「府への
の検討がなされている最中である。現時点で
固定資産税承継データの提供については、デ
は、税機構に徴収困難な滞納案件を扱う業務
ータ内容等を個人情報の観点から十分に詰め
を優先的に導入することなどが議論されてい
てほしい」、「府と連携した共同システムの費
る。
用負担は、明確な理由に基づく合理的な範囲
に限定すべき」などの意見が出ている。 * 2
地方税一元化の効果としては、納税者の利
便性向上と税務事務の生産性向上が期待され
こうした意見を踏まえて、京都府では、徴
ている。また県では、市町に係る税務事務を
収、課税、電算システム等の 3 つの分科会を
42 市町から 8 事務所に集約化し、共通事務を
通じて、市町村と相談しながら、地方税一元
一元的に処理することにより、税務職員数
化に向けた取り組みを進めている。このよう
2,219 人(県・市町の平成 15 年度合計)に比
に、地方税一元化の導入には、府と市町村の
べ、200 人から 310 人(9%から 14%)程度
連携と十分な意思疎通が重要である。
の職員数の削減が可能となると試算している。
3)京都府の地方税一元化への取り組み
4.地方税一元化の目指すべき方向
静岡県と同様に、京都府においても地方税
一元化の取り組みが行われている。
以上の静岡県と京都府の事例を踏まえて、
平成 18 年 11 月、京都府は平成 19 年度か
以下では、効率的な税務行政の推進に向けて、
ら地方税一元化に向けて取り組むことを発表
地方税一元化の目指すべき方向を探っていく
した。その概要は次の以下のとおりである。
ことにする。
京都府と府内市町村では、家屋評価、納税通
知書の作成、電話催告など、府税と市町村税
1)地方税一元化の意義
に係る税務業務を共同処理する。一元化にお
現在、静岡県と京都府以外には、地方税一
いては、府と市町村はそれぞれ課税権を持つ。
元化に向けて動き出している都道府県は見ら
また、組織については、現在議論されており、
れない。一元化への取り組みがあまり進まな
検討段階にある。
い理由としては、都道府県の税務業務の効率
地方税一元化の導入に至った背景としては、
化にはあまり大きなメリットがないこと、市
平成 17 年度の府の徴収率は 97.7%で、全国
町村ごとに税務に関する独自の考え方や意見
平均の 96.9%を上回っているが、京都市を除
を持っているため市町村の足並みが揃いにく
いた市町村では 92.4%まで落ち込んだこと、
いことなどが挙げられる。
滞納が府と市町村の共通課題であったため、
しかし、地方税務行政には、国から地方へ
府では平成 17 年度から税務業務の効率化に
の税源移譲に伴い、一層の徴収率向上と税収
ついて検討していたこと、などが挙げられる。
確保が迫られている。また、住民サービスの
現在、一元化に向けて府内市町村からは、
視点から、納税者の利便性の向上を図ること
*2
京都府ホームページ
http://www.pref.kyoto.jp/
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る。都道府県や市町村では、課税徴収事務に
も求められている。
以上のような地方税務行政が抱える様々な
関する膨大なデータを取り扱うため、多額の
課題を解消し、さらに効率的な税務行政の推
費用をかけて個別に電算システムを構築・導
進と税務執行体制の強化を図るために、地方
入している。一元化に向けて新たに電算シス
税一元化は極めて有効な選択肢の一つである
テムを構築するとなると、新たなシステム開
と考えられる。
発・導入費用が発生するためその調整と合意
形成が大きな課題となる。参考として、平成
17 年度に静岡県で試算した経費は、イニシャ
2)地方税一元化への課題
ルコスト約 36 億円、ランニングコスト約 8
以下は、地方税一元化に取り組む際に、想
億円/年と積算している。
定される課題である。
・組織体制、職員の派遣
3)地方税一元化における組織形態
・費用分担
地方自治体が、事務の共同処理のために、
・事務所等の配置
・一元化される業務内容と役割分担
組織を設置する場合には、地方自治法に規定
・税目ごとの業務整理と役割分担
される広域連合、一部事務組合、協議会の設
・税目ごとの課税業務の標準化
置、機関等の共同設置、事務の委託などの方
・徴収金分配
式を採用することになる。
地方税一元化の組織形態としては、地方税
・申告書様式とその他関係帳票類の統一
・電算システムの統合
一元化の導入目的、地方自治法での制約など
など
を総合的に勘案すると、広域連合または協議
これらの中で、費用分担と電算システムの
会によることが適当であると考えられる。
統合は、一元化において最も調整と合意の必
一元化の組織として広域連合を選択した場
要な課題であると考えられる。
合のメリットは、責任関係が明確であること、
費用分担については、各地方自治体の費用
負担額をどのように決定するかが重要なポイ
迅速な事務処理が可能なことなどである。デ
ントである。地方税一元化では、業務を共同
メリットとしては、組織、都道府県・市町村
処理するための運営組織自体には課税権がな
双方での窓口業務ができないこと、組織での
いため、構成自治体である都道府県と市町村
住民基本台帳ネットワークの利用が困難なこ
からの負担金が主要な財源となる。費用分担
とが挙げられる。
の仕方については、組織運営の基礎経費の総
一方、同様に協議会を選択した場合のメリ
額について、都道府県と市町村の負担割合を
ットは、組織、都道府県・市町村双方での窓
決めてから、市町村分について、均等割、人
口業務が可能であること、組織での住基ネッ
口割、従量割といった方法を用いて負担割合
ト利用が可能であることなどである。デメリ
を決めていくことになる。
ットとしては、責任の明確性が広域連合には
劣るという点が挙げられる。
電算システムの統合については、費用対効
果の点で、市町村から疑問が出ると考えられ
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図表4
区
分
広域連合
協議会
地方自治体第 284 条第 3 項
根 拠 法
性
広域連合と協議会の主な相違点
地方自治法第 252 条の 2
格 特別地方公共団体
法人格なし(共同の執行組織)
団体の性格等
構 成 団 体 都道府県、市町村及び特別区
都道府県、市町村及び特別区
組織運営
機
能 構成団体の事務のうち広域にわたり処理 ・事務の一部を共同して管理及び執行
されることが適当であるものについて
・事務の管理及び執行の連絡調整
・広域計画を作成すること
・広域にわたる総合的な計画を共同して
・広域計画の実施のために連絡調整を
作成
図ること
・その事務を広域にわたり総合的かつ
計画的に処理すること
職
員 固有職員あり(派遣、固有職員の雇用可)固有職員なし。関係団体からの派遣
(固有職員の雇用は原則不可)
服
務
等 広域連合の条例による
関係団体の条例による
条 例 ・ 規 則 独自条例・規則制定が必要
特定又は関係団体の条例・規則による
執
関係団体の長
※効力は関係団体に帰属
行
者 広域連合の長
その他
徴 税 吏 員 広域連合の長が任命
関係市町・県の併任
執 行 権 限 移管した場合、移管元から消滅
関係団体の権限により協議会が執行
民
主
性 議会、監査委員、長の直接選挙制、住民 規約において監査、報告書の提出、事務の
からの直接請求制度あり
監視等を定めることができる
制 度 創 設 の 広域行政需要に適切かつ効率的に対応で 組織及び運営の簡素化、能率化を図り経費
趣
旨 きる
の節約
一元化に当たっ
てのメリット・
デメリット
・組織、団体の双方における窓口事務の ・組織、団体の双方における窓口事務可
不可(職員駐在等の検討必要)
能
・組織における住基ネット利用の疑義
・組織における住基ネット利用可能
・ 権限が組織と団体とに分かれるため住 ・権限が団体にあるため住民に分かりや
民に分かりにくい面が残る
すい
・将来的に国税との一元化可能
・国税との一元化不可
・設立、維持は団体と同等
・設立、維持が比較的簡易
・責任関係の明確性、民主性に優れてい ・責任関係の明確性、民主性は広域連合
る
に比べ劣る
・職員雇用、徴税吏員・出納員の委任等、 ・非常勤職員の雇用上の制約、徴税吏員・
迅速な事務処理が可能
出納員のへ委任等、事務執行が迂遠と
なる恐れがある
出所)静岡県「地方税一元化のあり方について~検討結果報告書~」より抜粋
での課税データの共有、電子申告等による関
4)地方税一元化による効果
地方税一元化の導入により期待される主な
連業務の事務量の縮減、電算システムの統合
効果は、徴収率の向上と滞納事案の圧縮、専
によるコスト削減、納税者の利便性の向上な
門性の向上と事務の効率化、県税と市町村税
どである(図表5)。
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図表5
地方税一元化の導入により、期待される主な効果
① 徴 収 率 の 向 上 と 滞 納 事 職員の徴収技術の向上と専門的知識が高まることで、徴収率
案の圧縮
が向上し、滞納事案の圧縮が期待される。
② 専 門 性 の 向 上 と 事 務 の 特に固定資産税と不動産取得税といった税目では、専門性の
効率化
向上とそれに伴う事務の効率化が期待される。
③ 県 税 と 市 町 村 税 で の 課 法人県民税・法人事業税の申告データを、法人市町村民税の
税データの共有
課税データとして活用することも可能となる。
④ 電 子 申 告 等 に よ る 関 連 電子申告等が普及することで、課税事務の事務量縮減が期待
業務の事務量の縮減
される。
⑤ 電 算 シ ス テ ム の 統 合 に システム管理の合理化とそれに伴うランニングコスト等の
よるコスト削減
削減が期待される。
⑥納税者の利便性の向上
申告窓口の一元化とコンビニエンスストア収納等の促進に
より、納税者の利便性の向上が期待される。
⑦ 適 正 な 職 員 配 置 と 効 率 職員の適正な配置が可能となり、課税対象の補足に係る調査
的な組織体制
などへの機動的な対応が期待される。
⑧ 職 員 数 の 削 減 に よ る 人 以上の効果により、職員数の削減とそれに伴う人件費の縮減
件費の縮減
が期待される。
5)地方税一元化の推進に向けて
以上のような地方税一元化の推進に向けて
は、都道府県と市町村との間で一元化に取り
組むことへの「合意」が形成されていること
が基礎として必要である。その上で、都道府
県と市町村が密接に連携を図りながら、それ
ぞれが抱える課題の解決に取り組みつつ、地
方税一元化に向けて、広範な議論と十分な検
討を行い、効率的な税務執行体制の構築を目
指すことが望まれる。
(参考文献)
・静岡県地方税一元化のあり方検討会「地方税一
元化のあり方について~検討結果報告書~」
・京都府税務課「税務業務共同化に係る市町村税
務担当課長等説明会」資料
筆 者
宮崎 誠(みやざき まこと)
社会産業コンサルティング部
コンサルタント
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