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中国IT視察&日中流通フォーラム開催

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中国IT視察&日中流通フォーラム開催
中国 IT 視察&中日流通フォーラム
小売業のグローバル経営を支えるIT戦略活用研究会(IT研究会)主催
中国IT視察&日中流通フォーラム開催
日本小売業協会IT研究会では、去る8月19日~ 23日の5日間、中国3都市を巡る第1回中国
流通・IT視察会を実施した。期間中の20日(月)には北京にて中国商業連合会と共同による日
中流通フォーラム「小売とIT」を開催した。フォーラムへの参加と本研究会での中心テーマで
ある中国・アジア市場での流通ITの実態把握を目的に北京、杭州、上海を訪問した。視察会に
は縣座長、佐藤副座長をはじめ22名の方々にご参加いただいた。また、フォーラムでは視察
参加者に加えて、中国駐在の日系小売・IT企業の幹部、中国側合わせて100名の方々が出席した。
月日
訪問先
時間
羽田空港発 9:25
北京着
12:20
8月19日
14:00〜15:00
(日)
16:00〜17:30
19:00〜
8月20日
(月)
北京(滞在) 午前
9:30〜
14:00〜18:00
18:30〜20:30
北京発
8月21日 杭州着
(火)
杭州
8月22日
(水)
上海着
上海
専用車にて市内視察
◆イトーヨーカ堂十里保店(視察)
中日流通フォーラム
中日懇親会
11:00
18:00
18:00〜20:00
20:00〜22:00
新幹線にて杭州へ
着後、専用車にて市内視察
杭州市ビンチャン区懇親夕食会
宋城千古情見学
8:00
8:30〜9:00
9:30〜10:30
11:00〜12:00
15:00〜16:30
18:00
19:00〜
専用車にて市内視察
◆ビンキュラムチャイナ訪問
杭州市役所訪問
昼食
◆テスコ物流センター(視察)
ホテル着
上海にてフェアウェル夕食会
9:00
9:30〜10:00
8月23日
10:30〜12:00
(木)
13:00〜14:00
上海発
17:00
成田空港着 20:55
北京
摘要
空路、直行便にて北京へ
入国審査後、専用車にて市内視察
◆ウォルマート(沃爾瑪)望京店(視察)
◆イオン北京国際商城店(視察)
歓迎懇親会
イトーヨーカ堂十里堡店
専用車にて市内視察
◇テスコ鎮寧店(自由見学)
◆上海梅龍鎮伊勢丹(レクチャーと見学)
◆ファミリーマート(レクチャーと見学)
空路、直行便にて東京へ
着後解散
イトーヨーカ堂十里堡店の七夕イベント
北京上海新幹線300Kmの表示
北京新幹線駅構内
混雑するイオン北京商城モール内
1
杭州
目覚ましい発展を遂げる杭州市は建設ラッシュ
杭州市郊外にあるテスコ物流センター
日中流通フォーラム8月20日(月) 杭州ウォルマート外観
中日流通フォーラム会場は日中双方から100名の参加者を集め、盛況裡に終了した
杭州宋城千古情劇場
杭州市に本社のある中国インターネットショッピングサイト最大手の淘
宝網(タオバオ)
講演するイオン執行役IT責任者の縣厚伸氏
挨拶する中国商業連合会副会長の
王琴華氏
パネルディスカッションでは、日本と中国の小売業とITを取り巻く状況について
活発に議論が行われた
杭州劇場夜景
2
平成24年10月秋号 日本小売業協会発行
中国 IT 視察&日中流通フォーラム
上海
上海浦東地区101ビルから見た市内の風景
上海ファミリーマート101ビル2階
「小売とIT」開催
時間
項目
14:00〜14:30 登録
14:30〜14:50 ご挨拶:中国商業連合会副会長 王琴華
日本小売業協会専務理事 岡部義裕
14:50〜15:25 講 演:イオン執行役・グループIT責任者 縣厚伸
テーマ:お客様満足度向上に向けたイオンのIT技術の活用
15:25〜16:00 講 演:金源新燕莎モール副総経理 宋清
テーマ:中国大型ショッピングセンターの運営と管理
16:00〜16:35 講 演:長益科技湯現行車総経理 宋清
テーマ:IT活用こそが流通業界成功への鍵
上海梅龍鎮伊勢丹の外観
16:35〜16:50 コーヒーブレイク
15:50〜18:00 パネルディスカッション
コーディネーター:野村総研主任コンサルタント 藤野直明
パネリスト:丸井グループ専務取締役 佐藤元彦
トライアルカンパニー取締役CIO 西川晋二
金源新燕莎モール総経理 傳 紅
富基融通代表取締役CEO 顔艶春
趺沃
18:00〜18:20 休憩
18:20〜20:30 交流晩餐会
上海梅龍鎮伊勢丹に出展した東急ハンズ
懇親会での会長挨拶
夜には交流晩餐会が開催され、日中間の交流を促進した
上:上海梅龍鎮伊勢丹キッズフロア
右:テスコ南京西路店の朝9時半の
レジ周辺
中国商業連合会張志剛会長(左から3人目)を囲んで、関係者
3
第11回小売業のグローバル経営を支えるIT活用戦略研究会報告
日中流通フォーラム 講
演
お客様満足度向上に向けたイオンのIT技術の活用
縣 厚伸 氏
イオン株式会社 執行役 グループIT責任者
イオンのお客さまとの接点におけ
ることながら、お客さまにとって、
います。
るIT活用事例を紹介し、新たなお客
価値ある情報の発信という点でも強
次に、店舗でのお客さまからの電
さまの買物環境とITの変化、その対
みを発揮しています。
話取次ぎ業務を集約したCSC(カスタ
応について話します。
次の事例は、タブレット端末を活
マー・サポート・センター)について
イオンの主な顧客接点に関係する
用した受注システムです。店舗でギ
紹介します。CSCは、2004年に新設
ITシステムは、大きく3つの領域に
フト商品をお買い上げのお客さまに
され、現在では、電話交換業務に加え、
整理できます。1つはリアル店舗の
対して、正確かつ迅速な承りを実現
各種サービスの受付業務およびE
対面接客サービスを向上させるITシ
するべく、スマートフォンやiPadに
メール等の問い合わせ対応など業務
ステム、2つ目はリアル店舗とネッ
先駆け、2008年度より、ペン入力&
の拡大を図っています。
ト事業両方に関係するITシステム、
対話型のタブレット端末方式を導入
CSCのもう1つの重要な役割に、
3つ目がネット事業の顧客サービス
し、受付時間が3~4割減り、受付
お客さまの声の収集があります。お
を担うITシステムです。
不備やミスは95%削減しています。
客さまの申し出や苦情をCSCのオペ
リ ア ル 店 舗 のITと し て、 ま ず ト
次は、ハンディターミナルを活用
レーターが「お客さまの声データベー
レーサビリティシステムを紹介しま
した加工補正受付システムの紹介で
ス」に入力することで、関係各部署
す。放射性セシウム問題では、イオ
す。この仕組みにより、ズボンの裾
が情報共有でき、連携して対応する
ンはいち早くトップバリュ牛肉の放
上げなど加工補正の混雑状況を売場
ことができます。さらにお客さまの
射性物質検査を行い、結果の開示シ
と作業場が相互にリアルタイムで把
声を分析・把握することで、新商品の
ステムを2011年8月1日よりリリー
握することで、お客さまへの商品の
開発・接客・売場改革・マーチャンダイ
スしました。これは、商品ラベルに
引渡しが、正確に短時間でできるよ
ジング改革などにも活用しています。
ある生産履歴確認番号をインター
うになりました。
次の事例は、モバイル端末の活用
ネット経由で入力することで、検査
リアル店舗の対面接客サービス向
です。イオンはお客さま1人ひとり
合格証明書と原料を確認できる仕組
上の最後の事例を紹介します。イオ
の嗜好やニーズ、購買・利用履歴など
みです。このように、イオンの食品
ンでは業界に先駆け、2003年よりセ
に合わせた付加価値を提供する目的
は安心・安全という素早いメッセージ
ルフレジを導入し、レジ待ち時間の
で、「かざすクーポン」を展開してい
の発信は、イオンのブランドイメー
短縮を実現しました。店舗ではレジ
ます。今後は、1人ひとりのお客さ
ジの醸成に加え、顧客経験価値の向
要 員 の 配 置 の 効 率 化 が 図 れ、15 ~
まの利用状況に応じ、タイムリーな
上にも寄与しています。ちなみに、
30%の生産性向上を実現しています。
情報発信、クーポン配布を可能とす
このシステムは、パブリッククラウ
次は、リアル店舗とネットの両方
るOne to Oneマーケティングへと発
ドサービスを利用し、1週間という
に関与するITシステムとして、電子
展させていきたいと考えています。
短期間でシステム構築を行いました。
マネーを紹介します。日本では2010
リアル店舗とネットに関わる事例
次の事例は、デジタルサイネージ
年に電子マネー決済総額が2兆円を
の最後に、CRMの取り組みについて
です。イオンは、グループ企業152店
超え、イオンの電子マネー 「WAON
紹介します。イオンカードの取扱高
舗、1302台の大型ディスプレイと約
(ワオン)」は、2011年度の年間決済総
は年間2兆5000億円、うちグループ
3万台のPOSレジモニターを活用し
額が1兆円を突破しました。電子マ
企業利用は8700億円となり、詳細な
たデジタルサイネージネットワーク
ネーのお客さまメリットは、決済ス
お客さまの買い物動向の把握ができ
を展開しています。このITシステム
ピードが速いことに加え、WAONポ
ます。店舗レシートの情報について
は、販促効果による売上アップもさ
イントを貯める楽しさも評価されて
も、25社1933店舗、約3兆8000億円規
4
平成24年10月秋号 日本小売業協会発行
中国 IT 視察&日中流通フォーラム(第 11 回小売業のグローバル経営を支える IT 活用戦略研究会報告)
模で情報分析ができる状態です。さ
について話します。企業内のPOS情
の技術変化とソリューションが必要
らに、40万人を超える規模で、顧客
報だけでは読み取ることのできない
だと考えています。1つ目はオープ
セグメントごとに分析・分類を行い、
ソーシャルメディアの情報とグルー
ンID(共通ID化)であり、外部と社内
お客さまの特性に合ったマーケティ
プ社内で保有する販売情報を紐づけ、
システムをシームレスにつなぐこと
ングの検証を行っています。
マーケティング活動に利用すること
です。2つ目はビッグデータ活用で
次に、リアル店舗とネットを融合
で、さらなる競争力向上を図ります。
す。お客さまの消費行動に加え、お
した新たな買い物プラットホームで
以上、顧客接点におけるイオンの
客さまのライフログデータを含む膨
あるネットスーパーについて紹介し
取り組み事例を紹介しました。
大なデータを蓄積、消費プロセスを
ます。ネットスーパーを現在36都道
分析・活用することで、お客さまに対
府県、221店舗で展開し、その特徴は、 オムニチャネル・リテイリングへ
しての価値経験を最大化する取り組
食料品から日用品まで配送するサー
次に、顧客接点の多様化に対応し
みを推進します。3つ目は、企業内
ビスを1日5便、2時間単位で行っ
たIT基盤の統合について話します。
システム技術の連携基盤と情報統合・
ています。リアル店舗より商品を配
リアル店舗を中心に展開してきたイ
分析基盤です。現在、チャネルごと
達する店舗型とセンターから商品を
オンは、IT技術の活用では、店舗の
に分断されている企業内システムを
配送する倉庫型の2つの方式により、
対面接客におけるものが中心でした。
統合し、お客さまのライフログデー
現在のサービスエリアをカバーでき
技術の進展にあわせ、2000年にネッ
タと連携することで、新たな商品・
るようになりました。
ト事業を開始しましたが、これはネッ
サービスが提供できるようになりま
また、イオンは、リアル店舗とE
ト事業の中で閉じた仕組みでした。
す。4つ目は、情報セキュリティ技
コマース双方のチャネルで、便利で
現在、お客さまはモバイルを駆使し、
術です。企業は、今以上に、厳格な
楽しくお買い物をしていただく
ネットとリアル店舗を使い分けるな
セキュリティのもとで各種情報蓄積・
ショッピングポータルサイト「イオ
ど、場所・時間などの制約を受けずに、 管理・提供できる環境構築が必須条件
ンスクエア」を8月10日にオープン
自分にとって最適な状態で買い物が
となります。
しました。イオンスクエアは、店舗
できる環境の中にいます。私どもは、
ITが 従 来 の 業 務 プ ロ セ ス の 一 部
のキャンペーン情報などをタイム
そうしたお客さまの変化とそれを可
だった時代から、ITそのものが事業
リーに発信すると同時に、WAONな
能にしているIT技術の変化に対応し、 の重要なプロセスとなり、さらには
ど既存の会員サービス間で共通ID化、 お客さま満足度の更なる向上という
事業そのものといわれる等、事業に
共通ポイント化を行い、2016年度に
視点で、業務プロセス、それを支え
おけるITの位置づけは大きく変化し
は3000万人の会員組織を形成し、日
るIT基盤を再構築することが求めら
ています。お客さまは、コンシュー
本最大級のクリック&モルタル型
れています。
マー ITを使いこなすことで、情報を
ポータルサイトに育てる計画です。
イオンは、グループ中期経営計画
自由に収集し、賢い買い物を実践し
次に、BtoCタブレット端末を活
の柱の1つに「デジタルシフト戦略」
ています。こうした変化の中、リア
用した「暮らしサポートサービス」に
を掲げ、リアル店舗とネット事業を
ル店舗も変革していかなければなり
ついて紹介します。イオンは、2012
融合させ、シナジーを追求すること
ません。そのためにも、既存システ
年3月より家族の絆をより深めるコ
で、新たな買い物環境、付加価値を
ムとの連携と新たなIT技術サービス
ンテンツ機能を搭載した端末を活用
提供する取り組みを開始しました。
を導入することで、企業のIT基盤を
し、新しいサービスの協業を開始し
その目指す姿は、お客さまの買い物
早急に再構築する必要があります。
ました。この端末は、機器の操作が
行動の変化に柔軟に対応できるオム
加えて、IT部門自体の役割・機能、求
苦手な方にも簡単・手軽にサービスが
ニチャネル・リテイリングの基盤を構
められるスキル、人材育成・教育制度
利用できます。今後は、家庭のリビ
築することで、お客さまの価値経験
も大きく変えていかなくてはなりま
ングとイオンを繋ぐコミュニケー
を最大化し、イオンブランドに対す
せん。お客さまの変化とIT技術の変
ションツールとしての機能を強化し、
る信頼を一層高めることです。
化スピードに遅れることなく、IT部
さらなるお客さまの生活の利便性向
イオンでは、このオムニチャネル・
門として求められる変革をスピー
上に寄与していく計画です。
リテイリングを実現するうえで必要
ディに実行することが重要と考えて
次は、ソーシャルメディアの活用
となる主なIT機能・基盤として、4つ
います。
5
第11回小売業のグローバル経営を支えるIT活用戦略研究会報告
日中流通フォーラム パ
ネ ル デ ィ ス カ ッ シ ョ ン
IT業界発展の見通しと、中日協働の可能性
コーディネーター
パネリスト
藤野直明 氏 野村総合研究所主席コンサルタント
佐藤元彦 氏 丸井グループ専務取締役
西川晋二 氏 トライアルカンパニー取締役CIO
傳 紅 氏 金源新燕莎モール総経理
顔艶春 氏 富基融通代表取締役
今後の中国流通の発展のためには、
イヤーをパートナーとして選択する
ITの高度な活用が不可欠
ことが非常に重要だということです。 銘したのは、サービスレベルの向上
藤野 まず、4人のパネリストにそ
2つ目は、ITをどう活用するかです。 を第一に考えている点です。これは
れぞれ簡単なショートプレゼンテー
これについては、①SCのテナント
永遠のテーマであり課題です。その
ションをしていただきます。トップ
のポートフォリオをどうするか、②
ベースとなるのがITです。日本も
バッターとして金源新燕莎モールの
SCの 特 徴 に 合 わ せ て い か にCRM
中国も同じだと思いますが、現在は
(顧客関係管理)を実現するか、③
ITなくして営業活動はほぼできま
傳さんお願いします。
佐藤 今、話を聞いていて非常に感
趺沃
傳 金源新燕莎モールは、中国で初
ネット普及によるEC(電子商取引)
せん。
めてのショッピングセンター(SC)
の対応をどうするのか、④オンライ
SCのテナントの組み合わせの話
として2004年10月にオープンしまし
ン、オフラインを含めて有効な融合
がありましたが、今後中国でもオー
た。運営面積は18万平方メートルで、 を活用し、携帯端末のショッピング
バーストア現象が起きます。SCは
500社のブランド店舗が入っていま
センターへの応用をどう実現するの
かなり早く、大きく、短期間で出店
す。主力店舗は、燕莎友誼商城と貴
か、の4点が重要です。
しています。そのため、日本でも同
友大廈の2つです。
3つ目は、小売業の管理、情報化
質化が課題になっています。どの
弊社は、世界一流の中国ショッピ
の技術の応用面において、日本は中
SCも同じようなつくりで、同じよ
ングモールづくりを目標に、国際的
国より進んでいます。日本で成功し
うなブランドが入っています。中国
先進的なSC運営の管理パターンを
た例をいろいろ勉強し、これからの
の小売業を見させていただきました
中国の状況と結びつけて、中国SC
中国の小売業の発展に実際に生かし
が、上海も北京も同じような課題が
の運営管理基準と情報化サービスの
ていきたいと考えています。よろし
起きてきているのではないかと思い
管理標準に注力しています。
くお願いします。
ます。これは、今後の差別化戦略に
中国国内でのSCの歴史はまだ10
藤 野 小 売 業 専 業 のITの パ ー ト
とって非常に悩ましい問題だと思う
年ぐらいですが、国民経済の発展と
ナーを選ぶことが非常に重要だとい
ので、私のパートで少し話をしたい
ともにすでに小売業の主要業態とな
う指摘がありました。また、具体的
と思います。
りました。弊社は、開業準備に1年
なITの使い方という点では、ショッ
藤野 次に、丸井の佐藤さんのプレ
を費やし、開業3年の育成段階から
ピングモールのテナントのポート
ゼンテーションです。
利益が出て、安定した成長段階に入
フォリオ、CRMが大きな課題だと
佐藤 弊社の代表的な店舗として有
りました。
考えていること、Eコマースの実現
楽町駅前の丸井を紹介します。入り
こうした中、今後、情報化の管理
方法、オンラインとオフラインの融
口を入ると、緑を豊富に使ったレイ
と応用をどう生かすかは、ますます
合のための携帯端末のモールへの応
アウトになっており、屋上には英国
大きな問題になってきます。
用などが重要とのご指摘でした。で
式の屋上庭園があります。さらに女
申し上げたいポイントは3つ。1
は、丸井の佐藤さんに一言コメント
性のトイレについては、地域ナン
つ目は、小売業専業のITのサプラ
をいただければと思います。
バーワンを志向しているので、非常
6
平成24年10月秋号 日本小売業協会発行
中国 IT 視察&日中流通フォーラム(第 11 回小売業のグローバル経営を支える IT 活用戦略研究会報告)
にゆったりとした、使い勝手のいい
トイレを各フロアに設置しています。
売上高は4120億円、営業利益が
180億円、総資産6100億円程度の会
社です。社員数は8000名程度ですが、
取引先の社員も数多く入っているの
で、グループ全体では2万4000名で
す。総売上高は4100億円ですが、ア
パ レ ル だ け の 売 上 は1900億 円 で、
シューズやバッグなどの雑貨系も取
左から、藤野コーディネーター、西川氏、佐藤氏、顔氏
り扱っているので、約8割がたを
こともできます。
くするためです。
ファッショングッズとファッション
しかし、実はこの根本にある仕組
藤野 丸井の佐藤様、ありがとうご
アパレルが占めています。
みは、そんなに単純ではありません。 ざいました。では、次に富基融通の
弊社の仕組みの中で中心になって
この仕組みでは、店舗の在庫とイン
顔さん、お願いします。
いる店舗とウェブの在庫管理のシス
ターネットで持っている物流の在庫
顔 私は過去15年、小売業に対する
テムについてご紹介したいと思いま
管理が連動しているのです。つまり、 ITサービスの提供に取り組んでい
す。今日本での話題はオムニチャネ
店舗で買われたら在庫が1点引かれ
ます。2006年に米NASDAQに上場
ル(店舗・ネットでの買い物の境が
ま す。 弊 社 は 二 十 数 店 舗 全 て で、
し、中国では家電専門店やスーパー
なくなった購買行動)です。小売・
POSで売上の確定をした途端にすべ
マーケットなど、上海や北京を含め
流通よりもお客様のほうが進んでい
てリアルタイムで在庫が1点減りま
て約1500の小売業者に対してサービ
るのではないかと思っています。
す。併せてウェブの倉庫にある在庫
スを提供しています。流通の一連の
2012年4月2日に繊研新聞で発表
も、お客様から注文が入った段階で
サービスをドア・ツー・ドア(出荷工
さ れ た ア ン ケ ー ト 結 果 を 見 る と、
1点ずつ引かれていきます。それら
場のドアから消費者の自宅のドアま
ネットで探して店で買う人が30%強、 が連動しており、リアルタイムで在
で)で提供しています。1日の売上
店で探したがなかったのでネットで
庫が更新されていないとこの仕組み
は500万円を超えています。
注文する人が10%弱、ネットで探し
は成り立ちません。ということは、
5年後の中国は、最大のグローバ
て店に行って確認をしてネットで注
倉庫の在庫も店舗の在庫も、納品か
ル小売市場およびオンライン小売市
文する人が20%強、店で探してネッ
ら販売までリアルタイムで一元管理
場になります。これは大きなチャレ
トで価格まで確認してまた店に行っ
される仕組みになっているわけです。 ンジです。しかしながら、準備はま
て買う人が9%です。すでに70%が
こうした一元管理の基盤はJAN
だ十分ではありません。
(ジャパニーズ・アーティクル・ナン
1つは、技術の変化が小売業に与
これに対して、弊社ではウェブで
バー)コードです。弊社では、年間
えるインパクトについてです。情報
見て店舗で買い物ができる仕組みを
約1000万単品を管理しています。カ
革命が起きています。人々の生活パ
2009年からスタートしています。店
ラーやサイズ別のコードで一元管理
ターンが変化し、情報を通じた革命
舗での商品の有無もウェブでわかる
することで、それが店舗でもネット
がこれから中国の小売業を再編しま
ようになっています。各店舗には
でも、リアルタイムで在庫検索でき
す。そういう中、日本や中国も含め
ウェブチャネルパークというスペー
購入できる仕組みになっています。
次の10年をいかに運営すべきかを真
スがあり、ネットで注文した人でも、 どうしてここまでつくったのかと
剣に考える必要があります。例えば
店とネットを併用しています。
店舗に取りに来られる人はここに来
いうと、弊社ではお客様の満足の向
先日アメリカで本屋に行きましたが、
て試着をして気に入ったら買えます
上を一番に考えているからです。も
お客様がほとんどいませんでした。
し、気に入らなければ返品もできま
う1つは、収益の最大化で、無理・
インターネットがなかった時代と今
す。もちろん、自宅に直接配送する
無駄をなくし、売れ残りを極力少な
では全然違います。
7
私の考えでは、インターネットは
で成長しています。それと同時に起
もう1つは、携帯端末を独自につ
小売業にとって非常に重要なツール
こっているのが情報革命です。「ソ
くりました。店頭の全員が携帯端末
であるだけでなく、事業機会です。
ロモ」を紹介していただきましたが、 を持ち、コミュニケーションや業務
観点が大きく変化します。インター
ソーシャル(So)、ローカル(Lo)、
ネットが商圏そのものになります。
モバイル(Mo)という情報革命です。 を業務の改善に最大限活用しようと
さまざまなプラットホームが誕生し、 その結果、流通業者はワン・ツー・ワ
処理を行うためです。そして、これ
思っています。「神経系システム」
本当のネットワークが形成されまし
ン・ストラテジーとか、本当に個々
という言い方をしていますが、現場
た。例えば携帯などのモバイル端末
のお客様のニーズに応じ、情報も商
の店舗と本部のコミュニケーション
です。グーグルやアイフォンを1つ
品も提供する時代が来ているという
をよくすることに使っています。ま
の商圏と見なすことができます。い
印象を強く持ちました。
た、自動補充発注の精度を上げるこ
ろいろなサービスの新しい変化が起
次に、トライアルの西川さんお願
となどにも、高度なコンピューティ
きています。中国では、淘宝(タオ
いします。
ング技術を活用しています。
バオ)や天猫(テンマオ)が代表的
西川 当社は1981年に設立され、小
実は、これら2つの技術開発を実
なものです。オープンした店舗は、
売・流通・物流をカバーしています。
現しているのは中国の仲間です。シ
昔の物理的な店舗から社交的な店舗
社員は1万3000人、売上は約2000億
ステム開発会社には200名ぐらいお
に変身できます。
円、日本のディスカウント業界では、 り、BPO(ビジネス・プロセス・アウ
私たちはそういう変化に対応した
2位になります。業態としては、スー
トソーシング)を行っています。中
次世代の小売のシステムを準備して
パーセンター、スーパー、ドラッグ
国の仲間の力を生かして、中国で
います。マルチチャネルを全面的に
ストア、CVSなどの多業態を運営し
ITの事業や貿易事業、さらに小売
バックアップし、ソロモ(Solomo)
ています。
業のコンサルティング事業も始めて
のクラウドサービスを実現します。
傘下には物流会社、ソフトウエア
います。これからも、中国の企業と
次に消費者のニーズについてです
会社などがあり、3つの近代的な物
幅広くお付き合いをさせていただき
が、お客様のニーズがどこにあるの
流センターから100以上の店舗のた
たいと考えております。よろしくお
かについては、事前にははっきり見
めに配送サービスを行っています。
願いします。
えない部分が存在します。これから
ソフトウエア会社では情報システム
藤野 ありがとうございました。
の小売業は、この潜在ニーズを掘り
開発を行っています。PACERとい
起こすことが必要です。
うシステムを開発し、このシステム
流通ITの標準化について、
例えば、アマゾンには推奨システ
によって大幅な効率アップができま
日本の経験や中国での可能性を
ムがあります。例えば、マネジメン
した。こういった改革をやっていく
研究することが重要
トの本を1冊買うと、アマゾンはマ
うえでは、ITの高度な活用と業務の
藤野 では、ディスカッションに入
ネジメント関係の本をどんどん推奨
改革が重要です。
りたいと思います。中国企業と日本
します。若い女性が妊娠したときに
当社は急成長してきましたので、
企業が協働するポイント、可能性は
妊娠や育児の本を買ったら、本屋か
データ量が急激に増えてきました。
どこにあるのでしょうか。最初に佐
ら妊娠や育児関係の本がどんどん推
まず、この過程で当社は、欧米の
藤さんいかがですか。
奨されてくるので、彼女は、なぜい
ERP(企業資源計画)を検討しまし
佐藤 日本の小売業を振り返ってみ
つまでも変わらずに妊娠や育児に関
た。しかし、当社が求めることは
ると、ITの標準化に関して20年間近
する本を推奨するのかと怒り出しま
ERPを導入するだけでは難しく、自
く無駄な議論を費やしてきました。
した(笑)
。このようなことがすで
社で開発する方針を採用しました。
かなり失敗したと思っています。先
に実現しています。もちろん、消費
自社の新しい仕組みは「スマート
ほど私が少し触れた1000万単品の情
者の立場に立ち、消費者の期待値を
(SMART)」といいます。スケール
報を捉えるには、一企業ではできま
探ることは意義があることです。
アウト型で、パラレル処理を行う
せん。すなわち製造元からアパレル
藤野 今、中国の小売は大変な勢い
アーキテクチャーを採用しています。 のサプライヤーも含め、業界を超え
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平成24年10月秋号 日本小売業協会発行
中国 IT 視察&日中流通フォーラム(第 11 回小売業のグローバル経営を支える IT 活用戦略研究会報告)
た標準化が必要になります。ところ
バルな視点で考えて標準を制定し、
しては、今回は下記の4つ。1つ目
が、日本はこれについて20年間かけ
ローカルの特徴に合わせた標準が活
は、いろいろな商業空間のテナント
て無駄な議論をしてきました。
用できるような仕組みをつくること
のポートフォリオのマネジメントで
具 体 的 に は、 情 報 の や り 取 り、
でしょう。これにより、中・日両国
す。2つ目はCRMをどう実現して
EDIの標準化をいかに早く図るかで
の小売業がより発展し、より拡大で
いくのか。「ワン・ツー・ワン・マーケ
す。ここで企業が競争しても仕方が
きると確信しています。要は、自分
ティング」、3つ目は「エレクトロ
ありません。中国商業連合会が、業
の地域の特徴をいかに国際標準に盛
ニクスコマース」これらにどう対応
界を超えてEDI標準をつくっていけ
り込むかが重要です。
していくのか。4つ目は、店頭オペ
ば、GMS 、百貨店、モールのディ
藤野 国際標準を、むしろ中国と日
レーションの高度化のために、オン
ベロッパーも含め、非常に有効に機
本から提案することでつくっていこ
ラインとオフライン、新しいテクノ
能すると思います。この点は中国と
うではないかということですね。
ロジーをどう活用していくのか、に
日本との協働活動が非常に効果的で
西川 私どもは、日本での失敗の経
ついて、ご指摘をいただきました。
す。
験、うまくいった経験を中国の皆さ
さらに、佐藤さんと顔さんからの
藤野 EDIでのやり取りは、共通語
んにどんどん提供していきたいと
提案は、流通ITの標準化、特に小
を英語にするか、中国語にするか、
思っています。
売から製造業までの垂直連鎖を実現
日本語にするかという議論をしてい
するための標準、そして業態を超え
るようなものです。この議論は非常
流通や物流の仕組みやITに関して、
た小売の中での標準、こうした垂直・
にエネルギーがかかります。早期に
今は欧米が進んでいると思います。
水平横断型の標準化を競争というよ
業界で共通の標準を確立し、それで
しかし、これから圧倒的に大きくな
りも協働の思想で、できるだけ早く
情報交換できれば、システムへの投
るのはアジアの市場です。中国と日
実現していくことが重要ではないか
資対効果が格段に向上します。
本の仲間が新しく構想した流通業の
ということです。さらに、中国と日
もう1つの標準化すべき対象は、
業務を事業革新に生かし、その背景
本の流通業や流通IT企業が提携や
商品マスターの同期化です。1つの
にあるIT革新を一緒に実践し、世
コラボレーションを行い、世界の
メーカーがいろいろな小売に商品を
界の流通市場へ展開したいと思いま
マーケット、世界の流通IT市場に
出しますが、色やサイズなど、いろ
す。
大きなインパクトを与えていくこと
いろな商品属性があります。基本的
藤野 皆様、ありがとうございまし
ができる可能性が高いのではないか
な属性項目については、すべて共通
た。
という議論だったと思います。
にしておくと、小売も分析が容易に
最後に、総括をさせていただきま
特に、指摘していただいた流通
できるようになりますし、メーカー
す。まず、現在の中国の流通の成長
ITの標準化推進については、もち
も各小売のマスタに合わせた情報を
は、世界の歴史が始まって以来、最
ろん、このパネルだけで結論を出す
提供するという余分なエネルギーが
も急速に発展している市場であると
わけにはいきませんが、この日・中
かからない仕組みになり、効率的で
いうこと。次に、流通ITは、これ
流通フォーラムの中で継続的に流通
す。
までこの急成長を支え、実現してき
IT標準化の研究、特に日本の経験
それでは顔さん、日本企業と中国
たという点で大きな貢献をしてきた
と中国での可能性について、今後も
企業の協働・合作の可能性というこ
といえるでしょう。ただし、顔さん
継続的に行っていくことが重要なの
とで一言お願いします。
は、これからさらに質的な面で大き
ではないでしょうか(拍手)。皆様
顔 中国の標準化の組織は、ECR
な課題がでてくるのではないか、特
の合意が得られたということで、ぜ
(エフィシェント・コンシューマー・
に消費者や生活者の高度化するニー
ひ今後も日中流通フォーラムの中で
レスポンス)や各種協会など、いろ
ズに小売業が対応していくには、ま
検討していきましょう。
いろあり、むしろ乱立していると
だまだ大きな課題があると指摘され
皆様、ご清聴有難うございました。
いったほうがよいほどです。
ました。
もう一度パネリストの方に盛大なる
中・日両国の共同の市場で、グロー
ITを活用すべき具体的な業務と
拍手をお願いいたします。
9
中国IT視察会報告 中
国 流 通 事 情
評価が“品質・安全・安心”へと移行する中国消費者
中国は非常な勢いで発展している。
2011年の実質GDP成長率は9.2%を記
小山直行 氏
録した。同年、GDP規模第3位の日
オートバックスセブン執行役員 アジア市場調査担当
本は、▲0.7%を記録。第1位の米国
は、1.8%を記録した。これらを比べ
流通事情はどのようになっているの
ように、プロットした中国の省、都
れば、勢いの差は歴然だ。
だろうか。物流、人材事情等気にな
市は、日本の1962年から73年くらい
そして、流通業者にとって大きな
る点は多々あるが、今回は、各都市
の状況であることがわかる。1人当
チャンスが到来している。2012年は
の成長段階・スピードに焦点を絞りお
たりGDPが3000ドルを超えるとコン
中国の第12次5カ年計画の2年目で
伝えする。中国の状況を把握する際、
ビニができ、1万ドルを超えると車
ある。今回の計画では、消費による
「中国では統計やアンケートなどが信
が一般化するなどといわれる。先頭
内需拡大に重点が置かれている。可
用できない」という言葉をよく耳に
を行く都市でまさに消費が活発化し、
処分所得の伸び率目標も年平均で
する。これに対し、私は「複数の情
モータリゼーションが花開いている
7%超に設定され、GDP成長率の目
報源から多角的に情報を得て、実情
最中であることがわかる。
標7%を上回る水準となっている。
を自ら紡ぎだすしかない」と考えて
続いて中国に暮らす日本人、中国
加えて、日系企業にとって新たな
いる。今回は、統計情報とこれまで、
人から学んだ判断尺度・基準で捉えた
局面を迎えている。日中関係は緊張
私が中国に暮らす日本人、中国人の
成長段階・スピードを御紹介する。
しているが、9月29日には日中国交
方から教えていただいた判断尺度・基
まず、空港から市内に入るときに
正常化40周年を迎えた。1972年、
「日
準を基に成長段階を捉えてみた。今
車窓から数えるのが“建築現場に立
本国政府と中華人民共和国政府の共
回の情報が、皆様が中国の実情を紡
つクレーンの数”。例えば杭州。秋の
同声明」において、日本と中華人民
ぎだす際の一助になれば、幸いである。 満月の日に逆流現象も見られる銭塘
共和国を代表する田中角栄と周恩来
江両岸の再開発エリアにクレーンが
両首相が署名をしてから40年を迎え
消費者は成熟しつつある
林立している。実際、杭州では2010
たのである。先日出席した日中流通
まずは統計情報から。指標として
年 のGDP成 長 率 も18%を 記 録 し た。
フォーラムでも感じたが、中国側の
は人口、世帯数、可処分所得、消費
ただし、この判断尺度には注意も必
日本の流通関係者への期待も高まっ
支出、乗用車保有台数、住宅価格、
要である。中国の場合、地方政府主
ている。
家電保有量……とさまざまな指標を
導で大規模開発が進むため、時折“つ
成長著しく、流通業にとって大き
皆様参考にされているが、今回は、
くりすぎ”が起こる。先日もある地
な機会を生み出しそうな中国だが、
1人当たりGDPを取ってみた。
方政府幹部が、「住宅をつくりすぎた。
図表1 中国、日本、米国のGDP成長率
図表2上段は日本の1
御社が来るなら住宅はただで提供す
人当たりGDPの推移を折
る」と冗談半分で語っていた。また、
れ線グラフに表したもの
出所:ジェトロ
10
平成24年10月秋号 日本小売業協会発行
「住宅価格が右肩上がりのため、1世
である。その線上に中国
帯3つの家を持つ」という話も聞く。
全体を2011年の1人当た
自分用、将来の子供用、投資用なの
りGDPを基にプロットし
だそうである。
ている。下段は上段のグ
次に車の数。北京では毎日ナンバー
ラフの1955年から1970年
プレートの末尾規制(指定された2
代前半を拡大し、いくつ
つの番号を末尾に持つ車両は通行で
かの省、都市を同様にプ
きない)
、北京外ナンバーの通行禁止、
ロットしている。ご覧の
日中の大型トラックの市内への進入
中国 IT 視察&日中流通フォーラム
図表2 日本の1人当たりGDP推移と
中国各省・都市の2011年のGDP
出所:ジェトロ
が移行している」とも聞く。
海ほどではないが、確実におしゃれ
車の車種にも注目している。 になってきている。「女性のおしゃれ
北京市内を走る車はアウディ
への消費は服、靴、化粧、アクセサ
やフォルクスワーゲンといっ
リー、香水の順に進む」とは北京イ
た中・高級自動車が多い。前
オンモール総経理の佐々木さんの言
掲のイオンショッピングセン
である。北京にあるイオンSCでも8
ターでの駐車車両を見ても、
人に1人くらいはハイヒールを履く
ドイツ車、日本車、アメリカ
ようになってきている。しかし、ま
車がほとんどである。天津市
だアクセサリーや化粧・香水までは消
内を見ても7年前と比べ同じ
費が及んでない。地下鉄内の女性達
日本車でも車格が上がってい
はファンデーション、香水とは無縁
る。付加価値の高い商品を消
であるようである。一方、南の杭州。
費する層が育ってきていると
あるIT会社に勤める20代の女性は日
いえそうである。これらの車
本人と変わらないほど流行の服装で
が多く走る都市は“高品質”
ハイヒールを履く。化粧品もネット
を売りにする日系企業にとっ
でファンケル製品を購入している。
て商売環境が整っている都市
しかし未だアクセサリーは身に着け
なのではないだろうか。ただ
ていない。香水も持っていないといっ
し、平均の車年齢が4年台で、 ていた。嗜好品の消費段階も、徐々
禁止といった制限があるにもかかわ
欧米や日本の6〜7年に比べると未
に成熟している。
らず、渋滞は激しい。ただし、いつ
だ短い。車1台目という人が多く、
サービス品質の向上も進んでいる。
も渋滞しているために、経済成長の
自動車関係の市場自体が成熟してい
日系のイオンやイトーヨーカ堂、ユ
変化がわかりにくい。そこで、ショッ
るとはいい難い。
ニクロ店内の挨拶はマニュアル通り
ピングセンターの駐車場へ。北京の
食品の消費も変わってきている。
と思われる動きの堅いものではある
環状5号線外に3年前に開店したイ
例えば精肉。「2年前は生肉をむき出
が、その徹底度は日本より上なので
オ ン のSCで も、 開 店 当 時 ガ ラ ガ ラ
しで冷蔵ケースきちんと並べた陳列
はないかとさえ感じることがある。
だった駐車場が日曜日は7割埋まる
が“近代流通”という認識であった。
また、先日上海から北京へのチャイ
ようになってきている。
今は日本と同じようにトレイにラッ
ナエアー機内でのサービスは全日空
「結婚前にすでに車を持っている若
プでパッケージされたものが“安心”
を上回るかと思われる気遣いを感じ
者が多い」とある北京の女子大生は
となりつつある」とイトーヨーカ堂
た。中国小売業協会会長も“商品”か
いっていた。
「車を持っている人は車
十里堡店長はいう。消費者の“安全・
ら”サービス“へのシフトを意識され
で通勤する。それ以外の人はバス。
安心”への意識が大きく変わってき
ていた。
結婚前にも車を持っている人が多い」
ている表れだという。また、相次ぐ
成長の段階では大都市でモータリ
とは、現在地下鉄1号線を建設中の
食品問題の中で、外国製の製品の購
ゼーションが進み、大衆層の評価基
杭州での話。中国では信用が発達し
買が増えているという新聞報道が
準が“物の多さ”から“品質”
、
“安全・
ておらず、車も多くは現金購入であ
あった。杭州市のある女性も「最近
安心”に移り“嗜好品”消費が増えて
る。統計上の給与収入から見ると、
は中国系スーパーでも外国品を扱う
いる。競合が多く、商品の模倣も多
若者に車を買う余裕はなさそうだが、
コーナーが新設された」といっていた。 い中国では日系企業が商品の数や価
一人っ子である彼らは親からの援助
「ファッションでは上海がおしゃれ
がもらえ、十分車が購入できるとい
だよね。北京は田舎」とよくいわれる。 しいと思われる。ようやく
“商品品質”
う。
「車と家がないと結婚してもらえ
サマーセール期間中、“田舎”である
や“サービス品質”を大衆に訴求でき
ない」といった価値観も影響してい
北京の若者の街“西単”に、ザラを訪
る時が来つつある今、日本企業にとっ
る。
「新車販売台数は大都市では鈍化
れた。人の多さに驚くと共に、若者
て消費者の“信頼”を勝ち取れるチャ
し、中級都市へ新車販売台数の中心
のおしゃれさにちょっと驚いた。上
ンスなのではないだろうか。
格だけを武器に勝負することは、難
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