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4回目

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4回目
講義概要
遺伝子工学
DNAをクローン化するためには、プラスミドやバクテ
リオファージなどの自己複製能を持ったDNAを改良し
たものをベクターとし、これを適当な宿主と組み合わせ
る必要がある。
第4回 遺伝子のクローニング2
ープラスミド・ベクターの構造ー
始めに、最も標準的な宿主ベクター系として、大腸菌
を宿主とし、プラスミド、ファージならびに両者の性質を
兼ね備えたコスミドをベクターとする系について解説す
る。
山村 晃
その後で、大腸菌以外のグラム陰性菌、枯草菌など
のグラム陽性菌、放線菌、酵母、糸状菌、昆虫ならび
に動植物培養細胞の宿主ベクター系について述べる。22
1
1
ベクターの種類
分類法
挿入できる外来DNA
の長さによる分類
ベクター
複製起点
特徴
プラスミド
λファージ
コスミド
YAC
BAC
PAC
12 kbpまで挿入可能
22 kbpまで挿入可能
47 kbpまで挿入可能
1000 kbpまで挿入可能
300 kbpまで挿入可能
300 kbpまで挿入可能
宿主による分類
大腸菌用ベクター
酵母用ベクター
その他の宿主用ベクター
シャトルベクター
最も簡便で広く使われる系
酵母の解析に使用
ウィルスベクターが多い
2種類以上の生物を宿主とする
用途による分類
クローニングベクター
ライブラリーベクター
発現ベクター
外来DNAのクローニングに特化
ライブラリーの構築に適する
外来遺伝子の発現を目的とする
狭義
DNAの複製が開始するまさにその点
広義
複製開始に必要な周辺のDNA配列
3
3
(例)
ColE 1やpMB 1の複製起点600 bp
2種類のRNA(RNA IおよびRNA II)
と1種類のタンパク質(Rop)をコード
4
4
選択マーカー
複製起点とコピー数の関係
形質転換の際に、プラスミドを取り込んだ大腸菌とそうでない大腸菌を区別する。
通常、抗生物質耐性遺伝子、発色遺伝子、アポトーシス遺伝子、溶菌などが用い
られる。
プラスミドのコピー数→1~700コピー
プラスミドの複製起点によって規定
抗生物質耐性遺伝子
低コピー⇔細胞周期の一時期にだけ合成
高コピー⇔限られた宿主因子を必要としないもの
複製起点
ColE 1
pMB 1
pMB 1
p 15 A
pSC 101
F
大腸菌が生育できない抗生物質に耐性のある遺伝子をプラスミドに挿入
している。
プラスミド
コピー数
pBluescript系
pUC系
pBR系
pACYC系
pSC系
pDF系
300~500
500~700*
15~20
10~12
~5
1~2
*pUC系のプラスミドはpMB 1中に変異を含んでいるため、
同じpMB 1を複製起点としてもつpBR系のプラスミドよりもコ
ピー数が多い
発色遺伝子
発色遺伝子が発現すると、有色の生成物を合成する酵素などをコードし
ている遺伝子をプラスミドに挿入している。
アポトーシス遺伝子
この遺伝子が発現すると宿主が成育できない遺伝子をプラスミドに挿入し
ている。
溶菌
5
5
抗生物質の作用機作(さようきさ)と耐性遺伝子の働き
アンピシリン(ampicillin)
ペプチドグリカンの架橋形成を阻害することによって細胞壁の合成を阻害する。耐性
遺伝子産物であるβ‐ラクタマーゼは、アンピシリンを加水分解することで不活性化する。
カナマイシン(kanamycin)、ネオマイシン(neomycin)、ストレプトマイシン(streptomycin)
リボソームの30Sサブユニットに結合し、翻訳の転位反応を阻害することによってタン
パク質合成を阻害する。耐性遺伝子産物であるアミノグリコシドリン酸転移酵素は、こ
れらの抗生物質をリン酸化することで不活性化する。
テトラサイクリン(tetracycline)
リボソームの30Sサブユニットに結合し、アミノアシルtRNAがリボソームのA部位に結
合するのを阻害することによって、タンパク質合成を阻害する。耐性遺伝子産物である
12‐TMS(12‐transmembrane segments)タンパク質は、テトラサイクリンを細胞外に排出
することでその働きを阻害する。
6
この遺伝子が発現するとファージ粒子が形成され、宿主が溶菌してプラー
6
クを形成する。
クローニング部位
外来DNAを挿入するための部位で、通常、制限酵素認識部位になっている。
クローニング部位の条件
・複製起点や選択マーカーといった重要な構造をばらばらにしない。
・ベクターの望ましくは1箇所だけを切断する
一般的なプラスミドベクターのほとんどはマルチクローニング部位
(multi‐cloning site;複数のクローニング部位を一部分に集めた部
分)を持っている
クロラムフェニコール(chloramphenicol)
リボソームの50Sサブユニットに結合し、翻訳のペプチド転位反応を阻害することに
7
よって、タンパク質合成を阻害する。耐性遺伝子産物であるクロラムフェニコールアセチ
7
ル転移酵素は、クロラムフェニコールをアセチル化することで不活性化する。
8
8
3.1 プラスミド
(1) 薬剤耐性プラスミド
プラスミドをベクターとする場合、ベクターを受
け取った形質転換株のコロニーを検出するた
めに通常、薬剤耐性マーカーが用いられる。さ
らに、ベクターのみによる形質転換株と、何ら
かのDNA断片を組み込んだ組換え体とを容易
に区別するために、2種類以上の薬剤耐性ある
いは酵素活性による発色性を組み合わせて、
異種DNA断片の組込みによって薬剤耐性ある
いは発色性が変わるように改良がなされてい
る。
9
9
ClaI
EcoRI
HindIII
BamHI
(例)
Hind IIIかBam HIかSal I
で切断
PstI
SalI
アンピシリン耐性
遺伝子(Ampr )
pBR322
4.361 kbps
同じ制限酵素で切断
した外来DNAを挿入
大腸菌に形質転換
テトラサイクリン耐性
遺伝子(Tetr )
複製起点(ori )
ネガティブ選択
(negative selection)
外来DNAが挿入され
たプラスミド含有大腸
菌はテトラサイクリン
耐性がない
10
10
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