Comments
Description
Transcript
画像解析による 材の触感評価Ⅱ 視覚が 材の触り 地に及ぼす影響
画像解析による⽊材の触感評価Ⅱ 視覚が⽊材の触り⼼地に及ぼす影響 (京⼤農)◯堀⽥ 修吾(京⼤院農)仲村 匡司(住友林業)鴻池 孝宏,⼭内 活也 【背景と⽬的】 ⽊質感には材⾯の⾒た⽬の印象だけでなく触り⼼地も⼤きく影響する.前報1)では,様々な塗装を施した⽊材表 ⾯に現れている凹凸の特徴を多重解像度コントラスト解析(Multi-Resolution Contrast Analysis; MRCA)2)によっ てコントラストという画像特徴量で表し,実際に材⾯に触れたときの粗滑感などと⾼い相関が得られることを確認 した.本報では,触覚のみで実施された前報の実験に視覚を導⼊したマルチモーダルな触感評価実験を⾏い,視覚 が⽊材の触り⼼地に及ぼす影響について検討した. 【参考⽂献】 1) 菊池,仲村他︓第65回⽇本⽊材学会⼤会研究発表要旨集G17-P-S10,p.159 (2015) 2) M. Nakamura, M. Matsuo and T. Nakano︓Holzforschung, 64(2), 251-257(2010) 【実験⽅法】 主観評価 試料 ホワイトオーク材化粧合板を被験者実験に供した 仕上げ ⽊理 無塗装 含浸型塗装 造膜型ウレタン塗装 オイル F1 オープンポア F2 セミオープンポア クローズドポア F3 F4 観察距離 550 mm ゆず肌 F5 F6 板⽬ E3 E4 E5 E6 まさ⽬ 50 mm ⼨法︓400 mm(繊維⽅向)× 300 mm × 12.5 mm 突き板厚さ︓0.5 mm ゆず肌試料の塗膜には微⼩な凸部付き 【結果と考察】 「触覚」 vs 「触覚+視覚」 視覚情報の寄与 コントラストスペクトル 滑らかな→ 繊維直交擦りでの「粗い-滑らかな」の⽐較 まさ⽬(E) 板⽬(F) 触+視 「触覚」と「触覚+視覚」に明瞭な正の 相関関係(r = 0.946) 視覚導⼊によって ウレタン塗装材 (E3, E4, E5, F4) が「粗い」側へ有意にシフト ゆず肌試料(E6, F6)が「滑らかな」側 へ有意にシフト ←粗い 天井にD65標準光源を取り付けた幅700 mm × 奥⾏き700 mm × ⾼さ600 mm の観察ブース内に⽊材試料を配置. 被験者は試料の触り⼼地を「⾒て触わりながら」評価. 被験者︓35名の男⼥⼤学⽣(男性19名,⼥性16名) 平均年齢21.1±1.6歳,平均視⼒1.0±0.3 接触⽅法︓利き⼿五指の腹で,70BPMのリズムで前後に移動 評価法︓Visual Analogue Scale(VAS)法で試料の触り⼼地を評価 評価語︓「ざらざら」などの11種類のオノマトペ 「粗い-滑らかな」などの10種類の形容詞対 CS E1 E2 E3 E4 E5 E6 CM F1 F2 F3 F4 F5 F6 コントラスト E2 コントラスト E1 照度 450 lux フィルタサイズ[mm] CS CM フィルタサイズ[mm] CS︓フィルタサイズ0.1〜0.3 mmでのコントラスト平均値 組織構造に起因する微細な凹凸を反映 <考察> 「⽊理を横切っている」という視覚情報によって「粗さ感」が増⼤ ⾒ながら触ることで 「⽊材に触れている」ことを明確に知覚する 視認できる⽊理の明瞭さを反映 重回帰分析による粗滑感の予測 菊池(2014) 本実験(2015) R2 = 0.791 予測値 視覚バイアス 滑らかな→ 滑らかな→ *︓p<0.05, **︓p<0.01 滑らかな→ 触 ←粗い CM︓フィルタサイズ1〜3 mmでのコントラスト平均値 触+視 触+視 「つるつる」感と「ざらざら」感の⽐較 CS ←粗い ←粗い ため粗さ感が減少 偏回帰係数 標準偏回帰係数 CS -0.0496 -0.728 CM -0.0532 -0.411 CM 観測値 定数項 寄与率 重相関係数 1.04 0.791 0.889 まとめ 触 *︓p<0.05, **︓p<0.01 触 ウレタン塗装材の粗さ増⼤ 「ざらざら」感の増加 「つるつる」感の減少 ゆず肌試料の粗さ減少 「つるつる」感の増加 「ざらざら」感の減少 ⽊材を⾒て触ると粗滑感に視覚バイアスが⽣じる ⾒ることで粗滑感は “粗く” も “滑らか” にもなる 1 mm以上の⽊理のコントラストを加味すると視覚バイアスの程度 を推定できる可能性がある