...

パピローマウイルスの表面カプシド抗原または 癌誘発関連抗原に対する

by user

on
Category: Documents
12

views

Report

Comments

Transcript

パピローマウイルスの表面カプシド抗原または 癌誘発関連抗原に対する
JP 2006-502732 A 2006.1.26
(57)【要約】
【課題】パピローマウイルスの表面カプシド抗原または
癌誘発関連抗原に対するワクチンを発現させるベクター
、前記ベクターによって形質転換された微生物、および
前記形質転換された微生物またはその抽出精製物を用い
たワクチンを提供する。
【解決手段】ポリ−γ−グルタミン酸合成酵素複合体を
コードする遺伝子pgsB、pgsC、pgsAのうち
のいずれか1つまたは2つ以上と、ヒト・パピローマウ
イルス(HPV)の表面カプシド抗原タンパク質または
癌誘発関連抗原タンパク質遺伝子を含むワクチン製造用
表面発現ベクターを提供する。
(2)
JP 2006-502732 A 2006.1.26
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ−γ−グルタミン酸合成酵素複合体をコードする遺伝子であるpgsB、pgsCお
よびpgsAのうちのいずれか1つまたは2つ以上と、ヒト・パピローマウイルスの抗原
タンパク質遺伝子を含むワクチン製造用ベクター。
【請求項2】
前記抗原タンパク質遺伝子はヒト・パピローマウイルスのカプシドHPV L1およびH
PV L2からなる群より選択されるいずれか1つまたは2つ以上の遺伝子であることを
特徴とする、請求項1に記載のワクチン製造用ベクター。
【請求項3】
10
前記抗原タンパク質遺伝子はヒト・パピローマウイルスの腫瘍誘発抗原タンパク質である
HPV E6およびHPV E7からなる群より選択されるいずれか1つまたは2つの遺伝
子であることを特徴とする、請求項1に記載のワクチン製造用ベクター。
【請求項4】
第1項において、 前記ポリ−γ−グルタミン酸合成酵素複合体をコードする遺伝子pg
sAを含むことを特徴とする、請求項1に記載のワクチン製造用ベクター。
【請求項5】
請求項1に記載のワクチン製造用ベクターにより形質転換されたグラム陰性微生物。
【請求項6】
前記微生物は 大膓菌、チフス菌(Salmonella typhi)、ネズミチフス
20
菌(Salmonella typhimurium)、コレラ菌(Vibrio ch
o l e r a e ) 、 ウ シ 型 結 核 菌 (M y c o b a c t e r i u m b o v i s )お よ び 赤 痢 菌
(Shigella)からなる群より選択されることを特徴とする、請求項5に記載の微
生物。
【請求項7】
請求項1に記載のワクチン製造用ベクターにより形質転換されたグラム陽性微生物。
【請求項8】
前記微生物はバチルス、ラクトバチルス、ラクトコッカス、スタフィロコッカス、リステ
リア、モノサイトゲネスおよびストレプトコッカスからなる群より選択されることを特徴
とする、請求項7に記載の微生物。
30
【請求項9】
抗原タンパク質が細胞表面に発現した請求項5及び請求項7に記載の微生物、前記微生物
から粗抽出された抗原タンパク質または前記微生物から精製された抗原タンパク質を有効
成分として含む粘膜腫瘍治療または予防用ワクチン。
【請求項10】
前記ワクチンは経口用または食用として投与できることを特徴とする、請求項9に記載の
粘膜腫瘍治療または予防用ワクチン。
【請求項11】
前記ワクチンは皮下または腹腔に注射用できることを特徴とする、請求項9に記載の粘膜
腫瘍治療または予防用ワクチン。
40
【請求項12】
前記ワクチンは鼻腔に噴霧できることを特徴とする、請求項9に記載の粘膜腫瘍治療また
は予防用ワクチン。
【請求項13】
前記ベクターは図1に示す遺伝子地図をもつことを特徴とし、pHCE2LB:pgsA
−HPVL1と呼称される、請求項1に記載のワクチン製造用ベクター。
【請求項14】
前記ベクターは 図5に示す遺伝子地図をもつことを特徴とし、pHCE2LB:pgs
BCA−HPVE7と呼称される、請求項1に記載のワクチン製造用ベクター。
【請求項15】
50
(3)
JP 2006-502732 A 2006.1.26
請求項13または請求項14に記載のワクチン製造用ベクターにより形質転換された微生
物。
【請求項16】
前記微生物はラクトバチルス(Latobacillus)またはサルモネラ(Salm
onella)が宿主細胞として利用されていることを特徴とする請求項15に記載の微
生物。
【請求項17】
請求項13に記載のワクチン製造用ベクターにより形質転換された大腸菌(KCTC10
349BP)。
【請求項18】
10
請求項14に記載のワクチン製造用ベクターにより形質転換された大腸菌(KCTC10
520BP)。
【請求項19】
抗原タンパク質が細胞表面に発現した請求項16に記載の微生物、前記微生物から粗抽出
された抗原タンパク質または前記微生物から精製された抗原タンパク質を有効成分として
含む粘膜腫瘍治療または予防用ワクチン。
【請求項20】
前記ワクチンは経口用または食用として投与できることを特徴とする請求項19に記載の
粘膜腫瘍治療または予防用ワクチン。
【請求項21】
20
前記ワクチンは皮下または腹腔に注射できることを特徴とする請求項19に記載の粘膜腫
瘍治療または予防用ワクチン。
【請求項22】
前記ワクチンは鼻腔に噴霧できることを特徴とする請求項19に記載の粘膜腫瘍治療また
は予防用ワクチン。
【請求項23】
抗原タンパク質が細胞表面に発現した請求項16に記載の微生物, 前記微生物から粗抽出
された抗原タンパク質または前記微生物から精製された抗原タンパク質を有効成分として
含む生殖器洗浄液。
【発明の詳細な説明】
30
【技術分野】
【0001】
本発明は、パピローマウイルスの表面抗原に対するワクチンを発現させるベクター、前記
ベクターによって形質転換された微生物、および前記形質転換された微生物またはその抽
出精製物を用いたワクチンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
微生物の細胞表面に所望のタンパク質を付着させ発現させる技術を細胞表面発現(cel
l surface display)技術という。タンパク質の分泌メカニズムとして
分子生物学的情報を利用しての応用方も解明されている。この細胞表面発現技術は、バク
40
テリアや酵母などの微生物の表面タンパク質を表面発現母体(surface anch
oring motif)として使用して外来タンパク質を表面に発現させる技術であっ
て、組み換え生ワクチンの生産、ペプチド/抗体ライブラリー製造およびスクリーニング
、全細胞アブソルベント、全細胞生物転換触媒などの様々な応用範囲を有する技術である
。すなわち、細胞表面に発現した外来タンパク質の多様性が高ければそれだけ応用範囲が
広くなる。したがって本技術の産業的利用の可能性は甚大であると言える。
【0003】
細胞表面発現技術を成功させるためには表面発現母体が最も重要な要素となる。より効果
的に外来タンパク質を細胞表面に発現させ得る母体を選定することがこの技術の核心とな
る。
50
(4)
JP 2006-502732 A 2006.1.26
【0004】
したがって、次のような性質を有する表面発現母体を選定しなければならない。第一に、
外来タンパク質を細胞表面まで送り出すために、外来タンパク質の細胞内膜通過を助け
る分泌信号があること、第2に、細胞外膜表面に外来タンパク質が確実に付着するように
手伝う標的信号があること、第3に、細胞表面に多量に発現しても細胞成長にはほとんど
影響を及ぼさないこと、第4に、タンパク質の大きさに関係なく外来タンパク質の3次元
的な構造変化なしに安定的に発現されることである。しかし、上記条件を全て満たす表面
発現母体は未だに開発されておらず、現在までは上記各短所を補う程度の水準である。
【0005】
今まで知られていて使用される表面発現母体としては、細胞外膜タンパク質、リポタンパ
10
ク質(lipoprotein)、分泌タンパク質(secretory protei
n)、鞭毛タンパク質のような表面器官タンパク質などの4種に大別される。グラム陰性
菌 の 場 合 、 L a m B 、 P h o E [ C h a r b i t e t a l ., J .I m m u n o l .,
1 3 9 : 1 6 5 8 − 1 6 6 4 ( 1 9 8 7 ) ; A g t e r b e r g e t a l ., V a c
cine,8:85−91(1990)]、OmpAなどのような細胞外膜に存在するタ
ンパク質を主に用いており、リポタンパク質であるTraT[Felici et al
., J .M o l .B i o l ., 2 2 2 : 3 0 1 − 3 1 0 ( 1 9 9 1 ) ] , ペ プ チ ド グ リ カ ン 関
連 リ ポ プ ロ テ イ ン ( P A L ) [ F u c h s e t a l ., B i o / T e c h n o l o g
y,9:1369−1372(1991)]そしてLpp[Francisco et a l ., P r o c . N a t l . A c a d . S c i . U S A , 4 8 9 : 2 7 1 3 − 2 7 1 7
20
(1992)]なども用いられ、FimAやtype 1 fimbriaeのFimH
adhesin のようなfimbriae protein[Hedegard et
a l ., G e n e , 8 5 : 1 1 5 − 1 2 4 ( 1 9 8 9 ) ] 、 P a p A p i l u s u b
unitのようなピリープロテインなどを細胞表面発現母体として用いての外来タンパク
質の発現が試みられてきた。この他、氷核活性タンパク質(ice nucleatio
n p r o t e i n ) [ J u n g e t a l ., N a t . B i o t e c h n o l , 1
6 : 5 7 6 − 5 6 0 ( 1 9 9 8 ) , J u n g e t a l ., E n z y m e M i c r o
b.Technol,22(5):348−354(1998),Lee et al.
,Nat.Biotechnol.,18:645−648(2000)]、Klebs
iella oxytocaのpullulanase[Kornacker et a
30
l . 、 M o l . M i c r o l ., 4 : 1 1 0 1 − 1 1 0 9 ( 1 9 9 0 ) ] 、 N e i s s
e r i a の I g A p r o t e a s e [ K l a u s e r e t a l ., E M B O L ., 9
:1991−1999(1990)]などが表面発現母体となることが報告されている。
グラム陽性菌に関しては、Staphylococcus aureus来由のプロテイ
ンAを表面発現母体として用いてマラリア抗原を効果的に発現させたことや、乳酸菌の表
面外皮タンパク質が表面発現したことが知られている。したがって、グラム陽性菌の表面
タンパク質は細胞表面タンパク質となることが明らかにされた。
【0006】
本発明者らは、バチルス属菌株来由のポリ−γ−グルタミン酸の合成複合体遺伝子(pg
sBCA)を新たな表面発現母体としての活用の可能性をすることに対し、鋭意研究した
40
ところ、pgsBCA遺伝子を用いて外来タンパク質を微生物の表面に効果的に発現させ
る新たなベクター、および微生物の表面に外来タンパク質を多量に発現させる方法を開発
した(韓国特許出願番号第10−2001−48373)。
【0007】
上述の各表面発現母体を用いて病原体の抗原または抗原決定基を遺伝工学的な方法を利用
して大量生産の可能な細菌で安定的に発現させようとする研究が数多く行われている。特
に、非病原性の細菌表面に外来免疫源を発現させて生きている状態で経口投与する場合、
従来の弱毒化された病原性細菌やウイルスを用いたワクチンに比べてより持続的で強力な
免疫反応を誘導できると報告されている。細菌の各表面構造物は表面発現した外来タンパ
ク 質 の 抗 原 性 ( a n t i g e n i c i t y ) を 増 加 さ せ る ア ジ ュ バ ン ト (a d j u v a n
50
(5)
JP 2006-502732 A 2006.1.26
t )作 用 を す る た め で あ り 、 生 き て い る 菌 に よ り 誘 発 さ れ る 体 内 の 免 疫 反 応 に よ る も の と
して知られている。このような表面発現システムを用いた非病原性細菌の組み換え生ワク
チンの開発は注目すべきものである。
【0008】
ヒト・パピローマウイルス(Human papilloma virus,以下HPV
と称する。)による感染は、世界的に全体の大人のうちの50%以上を占めていると推定
されており、パピローマウイルスのうち、特にHPV16、HPV18、HPV31およ
びHPV45の4種は、子宮頸部癌(cervical cancer)の原因の80%
以 上 を 占 め る こ と が 確 認 さ れ た [ L o w r y , D .R ., K i r n b a u e r , R ., S c
h i l l e r J .T ., ( 1 9 9 4 ) P r o c .N a l t .A c a d .S c i .9 1 , 2 4 3
10
6−2440]。パピローマウイルスは非常に種特異的な小型のDNA腫瘍ウイルスであ
って、人間、牛、兎、羊などの哺乳動物に感染し、皮膚や粘膜でイボや乳頭腫を誘発する
パポバウイルス科(Papovaviridae )の一種である[Pfister,H.
( 1 9 8 7 ) A d v . C a n c e r R e s .4 8 , 1 1 3 − 1 4 7 ] 。 そ の 中 で も ヒ ト ・
パピローマウイルスは約70余種のタイプが知られており、その中で約20余種のタイプ
が口腔や生殖器官の皮膚粘膜で腫瘍を誘発するが、特に、HPV16とHPV18とのタ
イプは、女性癌の大部分を占める子宮頸部癌を誘発すると報告されている[Zur Ha
usen H,(1988)Mol.Carcinogenesis,8:147−15
0]。
【0009】
20
世界的に子宮頸部癌は、女性にとっては乳房癌に次いで発生頻度の高い癌であって、世界
保健機関(World Health Organization, WHO)によれば
、毎年全世界で50万人以上の子宮頸部癌患者が発生し、毎年30万人以上が子宮頸部癌
によって死亡している。特に、開発途上国では、女性の死亡の主原因となっている(Pi
s a n i , P ., P a r k i n , D .M ., F e r l a y , J .( 1 9 9 3 ) I n t J C
ancer 55:891−903)。IARCの統計によれば、特に慢性感染者が先進
国に比べて格段に多い開発途上国においてパピローマウイルス感染を根絶するための長期
的で最も効果的な方法は、パピローマウイルス予防ワクチンを投与することとして報告さ
れた。
【0010】
30
ある種のウイルスに対するワクチンを開発するためには、適当な動物培養システムを備え
なければならず、これを用いてウイルス粒子を大量に生産、精製すべきである。しかし、
HPVは最終的に分化が終わった上皮細胞(keratinocytes)でのみ、ウイ
ルス粒子(ビリオン)を形成するため、試験管内(in vitro)または生体内(i
n vivo)でウイルス粒子を大量に生産しにくいという問題点があり、研究に必要な
ウイルス粒子の十分な生産はもとより、子宮頸部癌に対する予防用または治療用ワクチン
を実用化することが難しかった。子宮頸部癌に係るワクチン開発の方法として、予防ワク
チン(prophylactic)と治療ワクチン(therapeutic)との2つ
の 形 態 に 焦 点 が 当 て ら れ て い る 。 予 防 ワ ク チ ン は 、 H P V L 1 / L2 抗 原 タ ン パ ク 質 に よ
って強力な中和抗体(neutralizing antibody)が生成されるよう
40
にすることで宿主がHPVに感染することを阻止し、既に感染したとしてもそれ以上疾病
が進展しないようにすることを目的とする。一方、治療ワクチンは、HPV E6/E7
を対象とし、特異的な細胞性免疫を誘導し、既に形成された病斑や悪性腫瘍を退化させる
ことを目的とする。
【0011】
人間の上皮細胞に感染するヒト・パピローマウイルスは、去る20余年間の研究結果によ
れば、種々の遺伝子型(genotype)が存在し、様々な良性および悪性腫瘍の原因
に関わっている。かかる様々なHPVに対する実験結果および発見は、HPVワクチンの
開発を促進するようになった。パピローマウイルス以外に、他のウイルスに比べてHPV
の免疫誘導能が比較的に良いという特徴のため、いくつかのHPVワクチン候補物質のう
50
(6)
JP 2006-502732 A 2006.1.26
ちHPV類似粒子(recombinant virus like particle
)は、動物モデルおよび人間を対象としたワクチン效能実験において非常に楽観的な結果
を 示 し た [ K o u t s k y , L .A ., A u l t , K .A ., W h e e l e r , C .M ., B r
o w n , D .R ., B a r r , E ., A l v a r e z , F .B ., C h i a c c h i e r i n
i , L .M ., J a n s e n , K .U .( 2 0 0 2 ) N .E n g l .J .o f M e d 3 4
7(21):1645−1651]。すなわち、HPV感染が癌を誘導する最も核心的な
原因であるということが近年確証されて以来、世界的に多くの科学者らがHPVの研究に
興味をもって参加するようになり、HPVワクチンの開発に拍車がかかった。現在、世界
的に開発されているHPVワクチンとしては、HPVタンパク質(recombinan
t protein)、HPV類似粒子(recombinant virus lik
10
e particle)、HPV DNAなどを用いた製品が挙げられる。
【0012】
バクテリア、酵母、動物細胞などにおいて、HPV構成体の一部を組み換え技術にて生産
された組み換えタンパク質と、直接主要エピトープ部位を合成した合成ペプチドとをワク
チンとして使用しようとする研究が進められてきた。組み換えタンパク質は、一般に広く
使用されている生産方法であるバクテリア、酵母、バキュロウイルス(baculovi
rus)、組み換えワクチン用ウイルス( recombinant vaccinia
virus)などのシステムを用いて生産しており、これらの方法によってHPVの組
み換えタンパク質を生産する研究と、一部生産された組み換えタンパク質を用いて血清内
HPVに対する抗体形成能および細胞性免疫誘導能などを検証する研究とが行われている
20
。しかし、動物および昆虫細胞を用いたウイルスシステムの場合、培養過程での汚染およ
び精製過程での難しさなどの問題点がある。また、合成ペプチドの合成を通じる場合を含
み全体としてコストが高いという短所があり、パピローマウイルス感染患者が主に低開発
国家に集中しているという現実から商業的な制約が伴う。
【0013】
組み換え生ウイルスワクチン(Live recombinant vaccinia
virus)としてHPV L1ウイルス類似粒子( virus like part
icle :以下VLPという。)を乳腺細胞培養を通じて生産する方法が知られており
[ H a g e n s e e , M .E ., Y a e g a s h i , N ., G a l l o w a t , D .A .( 1
993)J. Virol 67:315−322]、VLPはマウスモデルにおいて、
30
中 和 抗 体 を 誘 導 産 生 す る と い う 報 告 が あ る [ S c h i l l e r , J .T ., L o w r y , D
.R .( 1 9 9 6 ) S e m i n a r s i n C a n c e r B i o l .7 , 3 7 3 − 3 8 2
]。治療ワクチンは子宮頸部癌で発現する唯一のHPVタンパク質であるE6とE7を用
いて開発されてきた[Bubenik J.(2002)Neoplasma 49:2
85−289]。HPVのE6/E7タンパク質は、HPVに感染した細胞の癌化に係る
癌特異抗原であるため、子宮頸部癌の免疫治療のターゲットとしてE6/E7タンパク質
を用いた治療ワクチンの研究が続けて進行されてきた。実際、微生物システムで合成され
たHPV E6/E7タンパク質を腫瘍細胞が注入されたマウスに投与したとき腫瘍形成
が 阻 害 も し く は 遅 延 さ れ る と い う 報 告 が あ る [ G a o , L ., C h a i n , B ., S i n c
l a i r , C .( 1 9 9 4 ) J .G e n V i o l , 7 5 : 1 5 7 − 1 6 4 , M e n e g u
40
z z i , G ., C e r n , C ., K i e n y , M .P .( 1 9 9 1 ) V i r o l o g y , 1 8
1:62−69]。しかし、他の場合と同様に、生ウイルスワクチンを用いる場合、過多
なウイルス複製による問題点が誘発され得るので、実際には、研究レベルに止まる場合が
多く、商業化までは長年の期間と相当な臨床実験が要されるという短所がある。このよう
な短所を克服するために、ウイルスの複製能が阻害もしくは欠乏したウイルスベクターの
開 発 に 関 す る 研 究 も 行 わ れ て い る が 、 ま だ 商 業 化 さ れ て い な い [ M o s s , B .( 1 9 9
6 ) P r o c .N a t l .A c a d .S c i .U S A 9 3 , 1 1 3 4 1 − 1 1 3 4 8 ] 。
【0014】
一方、バクテリアベクターを用いたワクチン開発の研究も活発に進行されつつあり、弱化
したサルモネラ菌(attenuated Salmonella typhimuri
50
(7)
JP 2006-502732 A 2006.1.26
um)から合成されたHPV 16 VLPがマウスの粘膜や全身で抗原特異的な抗体生成
を 誘 導 す る と い う 報 告 も あ る [ D e n i s , N a r d e l i − h a e f l i g e r ., R
i c h a r d , B ., S .R o d e n .( 1 9 9 7 ) I n f e c t i o n a n d i m m
unity 65:3328−3336]。合成ペプチドを用いたワクチンは免疫反応を
誘導するのに必要なエピトープのみを合成して接種(vaccination)させるも
のであって、既にHPV 16 E6/E7に対する細胞性免疫反応(Cytotoxic
T Lymphocyte;CTL)を起こすエピトープが究明されている[Ress
i n g , M .E ., S e t t e , A ., B r a n d t , R .M .( 1 9 9 5 ) J . I m m u n
ol 154:5934−5943]。
【0015】
10
このような試みのほか、植物からウイルス抗原を産生するために、トマトやじゃがいもな
どの野菜類を用いてその形質転換体の野菜類そのものを経口用ワクチンまたは食物ワクチ
ンとして使用しようとする研究が進行中である。代表的な例として肝炎ウイルス表面抗原
粒子(Hepatitis B surface antigen particle )
[ T h a v a l a , Y .F .a n d C .J .A r t z e n .( 1 9 9 5 ) P r o c .N a t l .
A c a d .S c i .U S A 9 2 : 3 3 5 8 − 3 3 6 1 ] 、 お よ び パ ピ ロ ー マ ウ イ ル ス の カ
プシドL1およびL2タンパク質(韓国特許出願番号第10−2000−0007022
)が挙げられる。しかし、植物を用いたシステムの場合、発現されるHPV L1タンパ
ク質の量が少なく精製過程に問題があり、同じく商業的な制約が伴うという問題がある。
【0016】
20
したがって、ヒト・パピローマウイルスの感染者が主に低開発国家に集中している点を勘
案すれば、パピローマウイルス来由の口腔または生殖器官の皮膚粘膜の腫瘍に対する予防
と治療のために、より経済的で安定的にヒト・パピローマウイルス抗原を作製する方法の
開発が切望される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
前述の技術的問題点を解決するために、本発明は、微生物の表面発現システムを用いてH
PV抗原を製造できるベクター、および前記ベクターによって形質転換された微生物を提
供することを目的とする。
30
【0018】
また、本発明は、HPV抗原が表面に発現した前記形質転換された微生物、前記微生物か
ら粗抽出されたHPV抗原、または前記微生物から精製されたHPV抗原を有効成分とす
る粘膜腫瘍治療・予防用ワクチンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、本発明は、ポリ−γ−グルタミン酸合成酵素複合体をコード
する遺伝子であるpgsB、pgsCおよびpgsAのうちのいずれか1つまたは2つ以
上と、ヒト・パピローマウイルスの表面抗原タンパク質遺伝子を含むワクチン製造用表面
発現ベクターを提供するものである。
40
【0020】
本発明において、前記遺伝子pgsB、pgsC、pgsAはそれぞれ配列1、配列2、
配列3と記載された塩基配列を持つ。
【0021】
本発明において、前記表面抗原タンパク質遺伝子としてはHPV表面構成体タンパク質を
暗号化する遺伝子であればいずれも使用可能である。例えば、ヒト・パピローマウイルス
のカプシドであるHPV L1またはHPV L2抗原タンパク質遺伝子を単独で用いるこ
ともできれば、2つ以上を複合的に用いることもできる。しかし、HPVの主要カプシド
であるL1抗原タンパク質の遺伝子を用いるのがより望ましい。
【0022】
50
(8)
JP 2006-502732 A 2006.1.26
また、本発明において、前記腫瘍関連抗原タンパク質遺伝子としてはHPVの腫瘍関連タ
ンパク質を暗号化する遺伝子であればいずれも使用でき、ヒト・パピローマウイルスの腫
瘍関連抗原タンパク質であるHPV E6またはHPV E7抗原タンパク質遺伝子を単独
で用いることもできれば、2つ以上を複合的に用いることもできる。また、E6およびE
7の腫瘍誘発に係る遺伝子を変形して発現させた抗原も使用可能である。しかし、HPV
の主要腫瘍関連抗原タンパク質であるE7抗原タンパク質の遺伝子を用いるのがより望ま
しい。
【0023】
また、本発明では、前記ポリ−γ−グルタミン酸合成酵素複合体をコードする遺伝子には
pgsAが含まれることが好ましい。
10
【0024】
本発明はまた、前記ワクチン製造用ベクターで形質転換された微生物に関するものである
。
【0025】
本 発 明 に お い て が は 、 生 体 適 用 の 際 に 毒 性 が な く 、 弱 毒 化 さ れ た ( attenuated) 微 生 物 で
あればいずれも使用可能である。例えば、グラム陰性菌としては、大膓菌、チフス菌(S
almonella typhi)、ネズミチフス菌(Salmonella typh
imurium)、コレラ菌(Vibrio cholera)、ウシ型結核菌(Myc
obacterium bovis)、赤痢菌などを、グラム陽性菌としては、バチルス
、ラクトバチルス、ラクトコッカス、スタフィロコッカス、リステリア・モノサイトゲネ
20
スおよびストレプトコッカスなどを適宜選択することができる。
【0026】
本発明はまた、前記抗原タンパク質が表面に発現した微生物そのもの及び、前記微生物を
破壊してメンブレイン成分を粗抽出物質、前記微生物から精製した抗原タンパク質を有効
成分として含む各種の粘膜腫瘍治療・予防用ワクチンを提供するものである。すなわち、
本発明に係るワクチンは、HPVによって誘発される、口腔や生殖器官などの粘膜に発生
した腫瘍、特に女性子宮頸部癌の治療・予防薬として用いることができる。
【0027】
本発明に係るワクチンは、経口用または食用として摂取可能であり、皮下または腹腔に注
射可能で、更に生殖器の洗浄液としても使用可能である。女性生殖器に直接適用する場合
30
は、女性生殖器に棲息する有用菌、例えば乳酸菌を宿主とすることが好ましく、このよう
にすることは当業者にとっては非常に容易なことであろう。
【0028】
また、本発明に係るワクチンはスプレー方式による鼻腔への適用も可能である。
【0029】
HPVの感染は粘膜組織表面(mucosal surface)に発生することが多い
ので、粘膜免疫による感染の防御は非常に重要である。HPVの抗原を表面に発現する微
生物は粘膜での抗体形成(mucosal response)を更に効果的に誘導でき
るという長所があり、前記形質転換された微生物そのものを用いた経口用ワクチンが非経
口用(parenteral)ワクチンに比べてHPVの防御により高い効果が期待され
40
る。
【0030】
具体的には、本発明は、バチルス属菌株由来のポリ−γ−グルタミン酸合成複合体の遺伝
子のうちpgsAを含み、pgsAのC末端にHPV L1のN末端を連結し、HPV L
1を融合タンパク質の形態でグラム陰性菌およびグラム陽性菌の表面に発現させることの
できるワクチン用表面発現形質転換ベクター[pHCE2LB:pgsA−HPV L1
(図1参照)]、およびこれによって形質転換された微生物を提供するものである。前記
ワクチン製造用ベクターで形質転換された大腸菌は別に寄託した(KCTC 10349
BP)。
【0031】
50
(9)
JP 2006-502732 A 2006.1.26
また、本発明は、バチルス属菌株由来のポリ−γ−グルタミン酸合成複合体の遺伝子のう
ちpgsBCAを含み、pgsAのC末端にHPV E7のN末端を連結し、HPV E7
を融合タンパク質の形態でグラム陰性菌およびグラム陽性菌の表面に発現させることので
きるワクチン用表面発現形質転換ベクター[pHCE2LB:pgsBCA−HPV E
7(図5参照)]、およびこれによって形質転換された微生物を提供するものである。前
記ワクチン製造用ベクターで形質転換された大腸菌は別に寄託した(KCTC 1052
0BP)。
【発明の効果】
【0032】
本発明者らは、バチルス属菌株来由のポリ−γ−グルタミン酸の合成遺伝子(pgsBC
10
A)を用いてヒト・パピローマウイルスのカプシドL1タンパク質を微生物の表面に、特
に経口投与可能な乳酸菌表面およびワクチン菌株であるサルモネラ菌株の表面に效果的に
発現させる方法、およびその用途を開発し、この組み換え菌株はHPVの予防および治療
のためのワクチンなどの開発に使用可能である。特に、HPVの抗体誘導のための抗原の
大量生産が不可能であるのに対し、本発明のHPV抗原を発現する組み換え菌株を低コス
トで大量増殖させ経口用ワクチンとして直接あるいは膣部位に直接適用可能な経済性のあ
るワクチンとして用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明を実施例によって更に詳しく説明する。但し、これらの実施例は本発明をよ
20
り具体的に説明するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例に局限されないこ
とは、当業界で通常の知識を有する者にとっては自明なことであろう。
【0034】
特に、下記実施例では、HPV 16 L1抗原タンパク質遺伝子を適用したが、他のHP
Vのタイプストレイン(type strain)のL1およびL2など、HPVのカプ
シドであるいずれかの抗原タンパク質遺伝子を、単独または2つ以上を複合的に用いるこ
ともできる。また、下記実施例では、HPV type16の主要癌誘発関連抗原タンパ
ク質であるE7遺伝子を適用したが、他のHPVのタイプストレインの癌誘発抗原タンパ
ク質遺伝子を単独または複合的に用いることもできる。
【0035】
30
また、下記実施例ではバチルス・サブチルス清麹醤(Bacillus subtili
s var.chungkookjang, KCTC 0697BP)からポリ−γ−グ
ルタミン酸合成に関与する細胞外膜タンパク質の遺伝子pgsBCAを獲得して用いたが
、遺伝子はポリ−γ−グルタミン酸を産生する全てのバチルス属菌株からpgsBCAを
獲得して製造されたベクター、またはこのベクターを用いた形質転換微生物なども本発明
の範囲に含まれる。例えば、バチルス・サブチルス清麹醤に存在するpgsBCA遺伝子
の塩基配列と80%以上の相同性を有する他の菌株来由のpgsBCA遺伝子を用いてワ
クチン用ベクターを製造すること及び、これを用いることも本発明の範囲に含まれる。
【0036】
また、下記実施例および間接実施例に示すように、遺伝子pgsBCAの全部または一部
40
のみを用いてワクチン用ベクターを製造することも本発明の範囲に含まれる。
【0037】
また、下記実施例では、前記ベクターに対する宿主として、グラム陰性菌であるチフス菌
とグラム陽性菌であるラクトバチルスのみを用いたが、これらの細菌のほか、如何なるグ
ラム陽性菌またはグラム陽性菌も本発明に係る方法で形質転換させれば同様の結果が得ら
れるという事実も当業者にとっては自明なことであろう。
【0038】
また、下記実施例では、ワクチン用ベクターで形質転換された微生物そのものを生ワクチ
ンとして生体に適用した例のみが提示されている。しかし、ワクチン関連技術分野の知識
上、前記微生物から抽出された発現タンパク質(すなわち、HPV抗原タンパク質)また
50
(10)
JP 2006-502732 A 2006.1.26
は精製された発現タンパク質を生体に適用しても同一または類似の結果が得られることは
当然であろう。
<実施例1>表面発現形質転換ベクター(pHCE2LB:pgsA:HPV L1)の
製造
【0039】
バチルス属菌株から由来のポリ−γ−グルタミン酸合成に関与する細胞外膜タンパク質の
遺伝子(pgsBCA)のうちpgsAを用いてグラム陰性微生物およびグラム陽性微生
物を宿主としてヒト・パピローマウイルスtype16(以下、パピローマウイルスをH
PVという。)の主要カプシドタンパク質L1を表面発現できる形質転換ベクター(pH
CE2LB:pgsA−HPV L1)を製造した。
10
【0040】
まず、グラム陰性微生物を宿主とする表面発現ベクターpGNA(韓国特許出願第10−
2001−48373号の出願人から提供される。)にHPVのL1をコードする遺伝子
を 導 入 す る た め に 、 p U C 1 9 に ク ロ ー ニ ン グ さ れ て い る 約 1 .5 k b の ヒ ト ・ パ ピ ロ ー
マ ウ イ ル ス 遺 伝 子 を 鋳 型 と し て 用 い 、 H P V L 1 を コ ー ド す る 遺 伝 子 配 列 4 ( 5 -c g c
g g a t c c t c t c t t t g g c t g c c t a g − 3 ) お よ び 配 列 5 ( 5 -g g
a a a g c t t t t a t t a c a g c t t a c g t t t t t t g -3 ) の 塩 基 配
列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いたポリメラーゼ連鎖反応(pol
ymerase chain reaction,PCR)を行った。この結果、増幅され
た遺伝子部位の大きさは1518bpであった。
20
【0041】
前記プライマー配列4および配列5には表面発現ベクターpGNAに存在する制限酵素B
amHIとHindIIIとの認識部位が存在するように構成した。前記増幅されたHP
V L1抗原遺伝子を制限酵素BamHIとHindIIIとで切断し、予め用意した表
面発現ベクターpGNAのポリ−γ−グルタミン酸合成に関与する細胞外膜タンパク質の
遺伝子pgsAのC末端部位に翻訳コドンを合わせて連結し、形質転換ベクターpGNA
-H P V L 1 を 製 造 し た 。
【0042】
製造された形質転換ベクターpGNA−HPV L1からHCEプローモータ、pgsA
、そしてHPV L1を含む切片を得るために、pGNA−HPV L1を制限酵素である
30
NheIとScaIとで切断して切片を用意し、グラム陽性の汎用ベクターであるpAT
19のマルチクローニングサイト内の制限酵素であるXbaIとSmaI部位とでその切
片を連結し、形質転換ベクター[pHCE2LB:pgsA−HPV L1(図1)]を
製造した。
【0043】
本表面発現ベクターで大腸菌を形質転換させ、pHCE2LB:pgsA−HPV L1
を含む大腸菌を韓国生命工学研究院遺伝子銀行(KCTC,韓国大田広域市儒城区魚隠洞
52番地)に受託番号KCTC 10349BPにて寄託した。
<実施例2>pgsAと融合したHPV L1の表面発現
【0044】
40
前記表面発現ベクター(pHCE2LB:pgsA−HPV L1)を用いてグラム陰性
菌であるチフス菌(Ty21a)を形質転換させた後、チフス菌(Ty21a)において
のpgsAと融合したHPV L1抗原のタンパク質発現を調べ、グラム陽性菌であるラ
クトバチルスを形質転換させた後、ラクトバチルス内のpHCE2LB:pgsA−HP
V L1プラスミドの存在を確認し、pgsAと融合したHPV L1抗原のタンパク質発
現を調べた(図2参照)。
【0045】
ポリ−γ−グルタミン酸を合成する遺伝子pgsAのC末端と融合したHPV L1抗原
の細菌発現は、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動およびHPV L1に対する特
異抗体を用いたウエスタンブロッティング(western Immunoblotti
50
(11)
JP 2006-502732 A 2006.1.26
ng)を行って確認した。
【0046】
具体的には、pHCE2LB:pgsA−HPV L1に形質転換されたチフス菌(Ty
21a)を抗生剤のエリスロマイシン100mg/Lの添加された50mlのLB培地(
酵 母 エ キ ス 5 g / L , ト リ プ ト ン 1 0 g / L , 食 塩 5 g / L , p H 7 .0 ) を 含 む 5 0 0
mlフラスコで増殖させることで、表面発現を誘導した。これとは別に、pHCE2LB
:pgsA−HPV L1に形質転換されたラクトバチルスカゼイをMRS培地(Lat
obacillus MRS,Becton Dickinson and Compan
y Sparks,USA)上で37℃で静置培養・増殖させることで、表面発現を誘導
した。
10
【0047】
発現が誘導されたチフス菌(Ty21a)およびラクトバチルスカゼイを同じ細胞濃度か
ら得たタンパク質で変性させて試料を用意し、これをSDS−ポリアクリルアミドゲル電
気泳動で分析した後、分画された各タンパク質をPVDF(polyvinyllide
ne−difluoride membranes,Bio−Rad)メンブレインに移
した。各タンパク質が移されたPVDFメンブレインをブロッキング緩衝溶液(50mM
ト リ ス 塩 酸 , 5 % ス キ ム ミ ル ク , p H 8 .0 ) で 1 時 間 振 っ て ブ ロ ッ キ ン グ さ せ た 後 、 H
PV L1に対するマウス来由のモノクローナル一次抗体をブロッキング緩衝溶液に10
00倍希釈し、12時間反応させた。反応の終わったメンブレインは緩衝溶液で洗浄し、
ビオチンの接合したマウスに対する2次抗体をブロッキング緩衝溶液に1000倍希釈し
20
、4時間反応させた。反応の終わったメンブレインは緩衝溶液で洗浄し、アビジン−ビオ
チン試薬を1時間反応させて再び洗浄した。洗浄されたメンブレインに基質と発色試薬と
してH2 O2 およびDAB溶液を添加して発色させ、HPV L1に対する特異抗体と前
記融合タンパク質と間の特異的な結合を確認した(図2)。
【0048】
図2のAにおいて、レーン1は形質転換されていない宿主細胞であるチフス菌(Ty21
a)を示し、レーン2およびレーン3は形質転換されたpHCE2LB:pgsA−HP
V L1/チフス菌(Ty21a)を示す。なお、図2のBにおいて、レーン1は形質転
換されていないラクトバチルスカゼイを示し、レーン2は形質転換されたpHCE2LB
:pgsA−HPV L1/ラクトバチルスカゼイを示す。同図に示すように、pHCE
30
2 L B : p g s A − H P V L 1 プ ラ ス ミ ド に よ っ て 約 9 7 .4 k D a の 融 合 タ ン パ ク 質 バ
ン ド を 確 認 す る こ と が で き た 。 p g s A が 約 4 1 .8 k D a で 、 L 1 タ ン パ ク 質 が 約 5 5 .
6 k D a で あ る の で 、 上 記 の 9 7 .4 k D a を 示 す バ ン ド は 、 p g s A と L 1 タ ン パ ク 質
とが融合した融合タンパク質であることが分かる。
<実施例3>HPV L1抗原を表面発現するラクトバチルスの免疫反応誘導能調査
【0049】
前記表面発現形質転換ベクター(pHCE2LB:pgsA−HPV L1)でグラム陽
性菌であるラクトバチルスカゼイを形質転換させ、実施例2と同様の方法で前記抗原をラ
クトバチルスカゼイにおいて表面発現を誘導した後、ポリ−γ−グルタミン酸合成に関与
する細胞外膜タンパク質pgsAと融合したHPV16のL1抗原の抗原性を調べた。
40
【0050】
具体的に、本発明の表面発現形質転換ベクターpHCE2LB:pgsA−HPV L1
でラクトバチルスカゼイを形質転換させ、それぞれ同じ細菌濃度になるように獲得した細
胞 を 緩 衝 溶 液 ( P B S b u f f e r , p H 7 .4 ) で 数 回 洗 浄 し 、 H P V 1 6 の L 1 抗 原
が表面発現したラクトバチルスおよび形質転換されていないラクトバチルス(それぞれ5
×10
1 0
菌)を、4∼6週齢のBALB/cマウスの口腔に第1週および第2週に1日
おきに3回、そして2週間後に更に、同じく1日おきに3回投与した。対照群としては、
酵母で発現して得たHPV16のL1 VLP(virus like particl
e)を1日おきに 2回静脈投与したマウスを用いた。
【0051】
50
(12)
JP 2006-502732 A 2006.1.26
経口投与および静脈投与後、2週間おきにマウスを犠牲にしてそれぞれの1マウス群の血
清を採って血清内のHPV16のL1抗原に対するIgG抗体価、および2マウスの内臓
、気管支、肺そして膣を採ってその内部を洗浄した浮遊液内でのHPV16のL1抗原に
対するIgA抗体価をELISA(Enzyme−linked Immunosorb
ent assay)で抗原に対する抗体価を測定した(図3a,図3b)。HPV16
のL1抗原に対するIgGおよびIgA抗体価を測定するためのELISA方法では、酵
母で発現させて得たHPV16のL1 VLP(virus like particl
e)を抗原として使用し、IgG抗体価測定のためには、ホースラディッシュ・過酸化酵
素コンジュゲート(horseradish peroxidase conjugat
ed)抗マウスIgGを、そしてIgA抗体価測定のためには、ホースラディッシュ・
10
過酸化酵素コンジュゲート抗マウスIgAを使用した。
【0052】
【0053】
20
その結果、図3aに示すように、pHCE2LB:pgsA−HPV L1で形質転換さ
せたラクトバチルスカゼイを投与したBALB/cマウス群の血清希釈液において、ヒト
HPVのL1抗原に対するIgG抗体が、対照群であるBALB/cマウスのそれより格
段に高く現れることを確認し、HPV16のL1 VLPを静脈投与した群に比べても、
比較できるような抗体価の上昇を確認した。
【0054】
また、図3bに示すように、pHCE2LB:pgsA−HPV L1で形質転換させた
ラクトバチルスカゼイを投与したBALB/cマウス群の内臓、気管支、肺、そして膣内
部などを洗浄した浮遊液内でのHPV16のL1抗原に対するIgA抗体が、対照群とH
PV16のL1 VLPを静脈投与したBALB/cマウス群とも比較できるような抗体
30
価の上昇を確認した。特に、内臓浮遊液内のHPV16のL1抗原に対するIgA抗体価
の差がより大きく現れた。
【0055】
したがって、本発明に係る形質転換微生物は、全身的免疫誘導の指標であるHPVに対す
るIgG抗体および局所免疫である粘膜免疫誘導の指標であるHPVに対するIgA抗体
を形成することが確認され、これらの形質転換微生物が生ワクチンとして活用可能である
ことが分かった。
<実施例4>HPV L1抗原を表面発現するラクトバチルスで兔疫された動物からの脾
臓細胞の細胞融解活性
【0056】
40
HPV L1抗原を表面発現するラクトバチルスで免疫が確認されたマウスにおいて発生
する免疫反応の中で細胞媒介性免疫反応が同様の過程を通じて誘導されるか否かを確認す
るために、兔疫された動物から脾臓の細胞を分離して細胞毒性リンパ球(CTL)の活性
を測定した。
【0057】
具体的には、免疫化されていないBalb/cマウスの脾臓細胞と10μgの合成HPV
16のL1ペプチドとを37℃で3時間インキュベートし、4000radで照射して刺
激細胞(stimulating cell)を用意する。
【0058】
前記実施例3でのHPV L1抗原を表面発現するラクトバチルスで兔疫されたBALB
50
(13)
JP 2006-502732 A 2006.1.26
/cマウスから脾臓細胞を分離し、合成ペプチドをローディングした刺激細胞と混合して
6日間培養し、効果細胞(effector cell)を用意する。この際、刺激細胞
と効果細胞との割合は2:1にする。6日目に更に刺激を与える。アッセイの前日、標的
細胞として使用される細胞に10μgの合成HPV16のL1ペプチドを入れてインキュ
ベートする。アッセイの当日に、ペプチドローディングされた標的細胞に100uCi/
10
6
cellの
5 1
CrO4 を入れて2時間インキュベートした後、洗浄する。用意さ
れた効果細胞を96ウエルに5000cells/wellの標的細胞と1:100ない
し1:25までの割合で分注する。標的細胞と効果細胞とを混合した後、37℃で4時間
インキュベートする。4時間後、上清液を集めて
5 1
CrO4 のリリース(releas
e ) を 測 定 す る 。 1 % t r i t o n X -1 0 0 と 標 的 細 胞 と を 混 合 し た 時 を 最 大 リ リ ー ス
10
、メジアー(media)と標的細胞とを混合した時を自然リリース(spontane
ous release )とし、以下の計算式によって特異的分解(specific
lysis)を換算する。
[ Specific lysis =100×(experimmental cpm−
spontaneous cpm)/maximum cpm spontaneou
s cpm ]
【0059】
換算された細胞融解活性の結果を図4に示した。
【0060】
その結果、同図に示すように、pHCE2LB:pgsA−HPV L1で形質転換させ
20
たラクトバチルスカゼイを投与したBALB/cマウスの脾臓細胞での特異的な細胞融解
の割合が、形質転換されていないラクトバチルスを投与したBALB/cマウスのそれよ
り高く現れることが確認された。
【0061】
したがって、本発明に係るHPV16のL1抗原を表面発現させたラクトバチルスによっ
て誘導された免疫は、経口ワクチンとしての主要効果である細胞毒性リンパ球(CTL)
を活性化させるような特異性を現わす細胞媒介性免疫反応であることが確認された。
<実施例5>表面発現形質転換ベクター(pHCE2LB:pgsBCA:HPV E7
)の製造
【0062】
30
バチルス属菌株由来のポリ−γ−グルタミン酸合成に関与する細胞外膜タンパク質の遺伝
子(pgsBCA)のうち、pgsBCAを用いてグラム陰性微生物およびグラム陽性微
生物を宿主としてHPV type16の主要癌誘発関連抗原タンパク質E7を表面発現
させることのできる形質転換ベクター(pHCE2LB:pgsBCA−E7)を製造し
た。
【0063】
まず、グラム陰性微生物を宿主とする表面発現ベクターpGNBCA(韓国特許出願第1
0−2001−48373号の出願人から提供される。)にHPV16のE7をコードす
る遺伝子を導入するために、pUC19にクローニングされている約324bpのヒト・
パピローマウイルスtype16のE7遺伝子を鋳型として使用し、HPV16 E7を
40
コ ー ド す る 遺 伝 子 配 列 6 ( 5 -c g c g g a t c c c c a g g a g g t a t g c a
t -3 ) お よ び 配 列 7 ( 5 -g g a a a g c t t t t a t g g t t t c t g a g a
a c a g a -3 ) の 塩 基 配 列 を 有 す る オ リ ゴ ヌ ク レ オ チ ド を プ ラ イ マ ー と し て 用 い た ポ リ
メラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction,PCR)を
行った。この結果、増幅された遺伝子部位の大きさは324bpであった。
【0064】
前記プライマー配列6およびプライマー配列7には表面発現ベクターpGNBCAに存在
する制限酵素BamHIおよびHindIIIの認識部位が存在するように構成した。前
記増幅されたHPV L1抗原遺伝子を制限酵素BamHIおよびHindIIIで切断
し、予め用意された表面発現ベクターpGNBCAのポリ−γ−グルタミン酸合成に関与
50
(14)
JP 2006-502732 A 2006.1.26
する細胞外膜タンパク質の遺伝子pgsAのC末端部位に翻訳コドンを合わせて連結し、
形質転換ベクターpGNBCA−HPV E7を製造した。
【0065】
製造された形質転換ベクターpGNBCA−HPV E7からHCEプローモータ、pg
sBCA、およびHPV L1を含む切片を得るために、pGNBCA−HPV E7を制
限酵素であるNheIとScaIとで切断して切片を用意し、グラム陽性の汎用ベクター
であるpAT19のマルチクローニングサイト内の制限酵素であるXbaIとSmaI部
位とでその切片を連結し、形質転換ベクター[pHCE2LB:pgsBCA−HPV
E7(図5)]を製造した。
【0066】
10
本表面発現ベクターで大腸菌を形質転換させ、pHCE2LB:pgsBCA−HPV
E7を含む大腸菌を、韓国生命工学研究院遺伝子銀行(KCTC,大田広域市儒城区魚隠
洞52番地所在)に受託番号KCTC 10520BPにて寄託した。
<実施例6>pgsAと融合したHPV E7の表面発現
【0067】
前記表面発現ベクター(pHCE2LB:pgsBCA−HPV E7)でグラム陽性菌
であるラクトバチルスを形質転換させた後、ラクトバチルス内のpHCE2LB:pgs
BCA−HPV E7プラスミドの存在を確認し、pgsAと融合したHPV E7抗原の
タンパク質発現を調べた(図6参照)。
【0068】
20
このために、前記発現ベクターでラクトバチルスを形質転換させ、実施例2と同様の過程
で発現を誘導した後、ポリ−γ−グルタミン酸を合成する遺伝子pgsAのC末端と融合
したHPV E7抗原タンパク質のラクトバチルスの発現をSDS−ポリアクリルアミド
ゲル電気泳動、およびpgsA(図6のA)とHPV E7(図6のB)に対する特異抗
体を用いたウエスタンブロッティングを行って確認した(図6)。図6において、レーン
1は形質転換されていないラクトバチルスカゼイを示し、レーン2およびレーン3は形質
転換されたpHCE2LB:pgsBCA−HPV E7/ラクトバチルスカゼイを示す
。
【0069】
同図に示すように、pHCE2LB:pgsBCA−HPV E7プラスミドによって約
30
6 0 .8 k D a の 融 合 タ ン パ ク 質 バ ン ド が 確 認 さ れ た 。 p g s A が 約 4 1 .8 k D a で 、 典
型 的 な H P V 1 6 の E 7 抗 原 タ ン パ ク 質 が 約 1 9 k D a で あ る の で 、 前 記 6 0 .8 k D a
を示すバンドはpgsAとHPV16のE7抗原タンパク質とが融合した融合タンパク質
であることが分かった。
<実施例7>HPV E7抗原を表面発現するラクトバチルスで兔疫された動物への腫瘍
細胞チャレンジ
【0070】
前記表面発現形質転換ベクター(pHCE2LB:pgsBCA−HPV E7)でグラ
ム陽性菌であるラクトバチルスカゼイを形質転換させ、実施例2と同様の方法で前記抗原
をラクトバチルスカゼイにおいて表面発現を誘導した後、ポリ−γ−グルタミン酸合成に
40
関与する細胞外膜タンパク質pgsAと融合したHPV16のE7抗原の免疫化による腫
瘍増殖抑制效果を調べた。
【0071】
具体的には、本発明の表面発現形質転換ベクター(pHCE2LB:pgsBCA−HP
V E7)で形質転換させたラクトバチルスカゼイ、および形質転換されていないラクト
バチルスをそれぞれ実施例3のように処理し、5×10
1 0
菌を4∼6週齢のC57/B
L/6マウスの口腔に第1週および第2週に1日おきに3回、そして2週間後に更に、同
じく1日おきに3回投与した。
【0072】
最後に投与した後、HPVのE7を発現する腫瘍細胞TC−1細胞株(1×10
4
/50
50
(15)
JP 2006-502732 A 2006.1.26
μl)をマウスの左わき腹に皮下注射することで、チャレンジした。
【0073】
HPVのE7発現腫瘍細胞を発現させるTC−1腫瘍細胞株は、先行文献[Lin et
a l ., C a n c e r R e s .5 6 : 2 1 − 2 6 ( 1 9 9 6 ) ] に 記 載 の よ う に 、 H P
V16のE6およびE7遺伝子と、活性化されたヒト・c−Ha−ras遺伝子とで免疫
・形質転換させることで、C57/BL/6マウスの一次肺細胞から誘導されたものであ
る。
【0074】
腫瘍チャレンジ2週間後から腫瘍の大きさを測定した。腫瘍の大きさは、2日おきに週3
回測定し、最長の長さと最短の長さとを測定し、それらを掛け算して表示した。腫瘍チャ
10
レンジの後、腫瘍の大きさを測定した結果は図7に示した。
【0075】
図7に示すように、pHCE2LB:pgsBCA−E7で形質転換させたラクトバチル
スカゼイを投与したC57/BL/6マウスでチャレンジした腫瘍細胞の増殖が形質転換
されていないラクトバチルスを投与したC57/BL/6マウスの場合に比べて著しく抑
制された。
【0076】
したがって、本発明に係るHPV16のE7抗原を表面発現させたラクトバチルスによっ
て誘導された免疫は、腫瘍細胞でチャレンジしたマウスの腫瘍細胞の増殖を抑制すること
が確認された。
20
<間接実施例>pgsB、pgsC、およびpgsAの組み合わせが挿入されたワクチン
用ベクターの作製およびそれを用いた外来タンパク質表面発現実験
【0077】
ポリ−γ−グルタミン酸合成酵素複合体をコードする遺伝子pgsB、pgsC、および
pgsAのうちのいずれか一つまたは2つ以上と、外来タンパク質をコードする遺伝子が
含まれた表面発現ベクターとの製造が可能であり、これらのベクターで微生物を形質転換
させることで、外来タンパク質が微生物の表面に発現することを確認した。
【0078】
これにより、ポリ−γ−グルタミン酸合成酵素複合体をコードする遺伝子pgsB、pg
sC、およびpgsAのうちのいずれか1つまたは2つ以上を含むワクチン用ベクター及
30
び、本発明に係るHPV抗原タンパク質をコードする遺伝子を含むワクチン用ベクターを
製造できることが間接的に確認された。
【0079】
間接実施例において、プラスミドpGNBCA、pGNCAは、それぞれ本発明でのプラ
スミドpGNpgsBCA、pGNpgsCAと等しいものである。
<間接実施例1>表面発現形質転換ベクターpGNBCA−HB168の製造およびS抗
原の中和抗体形成抗原基の表面発現
【0080】
バチルス属菌株由来のポリ−γ−グルタミン酸合成に関与する細胞外膜タンパク質の遺伝
子(pgsBCA)を用い、グラム陰性微生物を宿主としてB型肝炎ウイルスS抗原の中
40
和抗体形成抗原基を表面発現できる形質転換ベクターpGNBCA−HB168を製造し
た。
【0081】
グラム陰性微生物を宿主とする表面発現ベクターpGNBCAにB型肝炎ウイルスS抗原
遺伝子を導入するために、汎用クローニングベクターであるpUC8にクローニングされ
て い る 約 1 .4 k b の B 型 肝 炎 ウ イ ル ス 遺 伝 子 を 鋳 型 と し て 使 用 し 、 配 列 8 ( 5 -c t g g
g a t c c c a a g g t a t g t t g c c c g t t t g -3 ) お よ び 配 列 9 ( 5 t g a a g c t t a t t a g g a c g a t g g g a t g g g a a t -3 ) の 塩 基
配列を有するオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いたポリメラーゼ連鎖反応を行っ
てS抗原遺伝子を増幅させた。このとき、増幅された遺伝子部位の大きさは168bpで
50
(16)
JP 2006-502732 A 2006.1.26
あった。
【0082】
前記配列8および配列9のプライマーは、表面発現ベクターpGNBCAに存在する制限
酵素BamHIとHindIIIとの認識部位が存在するように構成した。前記増幅され
たB型肝炎ウイルスS抗原遺伝子を制限酵素BamHIおよびHindIIIで切断し、
予め用意された表面発現ベクターpGNBCAのポリ−γ−グルタミン酸合成に関与する
細胞外膜タンパク質の遺伝子のC末端部位に翻訳コドンを合わせて連結した。このように
して形質転換ベクターpGNBCA−HB168を製造した(図8参照)。
【0083】
前記表面発現ベクターpGNBCA−HB168を用いて大腸菌でのB型肝炎ウイルスS
10
抗原の中和抗体形成抗原基の表面発現を調べた。
【0084】
実施例2で製造された発現ベクターで大腸菌を形質転換させた後、抗生剤のアンピシリン
100mg/Lの添加された50mlのLB培地(酵母エキス5g/L,トリプトン10
g / L , 食 塩 5 g / L , p H 7 .0 ) を 含 む 5 0 0 m l フ ラ ス コ で 増 殖 さ せ る こ と で 、 表
面発現を誘導した。
【0085】
ポリ−γ−グルタミン酸を合成する遺伝子のC末端と融合したS抗原の中和抗体形成抗原
基の細菌発現は、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動およびS抗原に対する抗体を
用いたウエスタンブロッティングを行って確認した。具体的には、同じ細胞濃度より得た
20
タンパク質を変性させて試料を用意し、これをSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動
で分析した後、分画された各タンパク質をPVDFメンブレインに移した。各タンパク質
の移されたPVDFメンブレインをブロッキング緩衝溶液(50mMトリス塩酸,5%ス
キ ム ミ ル ク , p H 8 .0 ) で 1 時 間 振 っ て ブ ロ ッ キ ン グ さ せ た 後 、 S 抗 原 に 対 す る ヒ ツ ジ
来由のポリクローナル一次抗体をブロッキング緩衝溶液で1000倍希釈し、12時間反
応させた。反応の終わったメンブレインを緩衝溶液で洗浄し、ビオチンの接合されたヒツ
ジに対する2次抗体をブロッキング緩衝溶液で1000倍希釈し、4時間反応させた。反
応の終わったメンブレインを緩衝溶液で洗浄し、アビジン−ビオチン試薬を1時間反応さ
せ、再び洗浄した。洗浄されたメンブレインに基質と、発色試薬としてH2 O2 およびD
AB溶液を添加して発色させ、S抗原に対する特異抗体と前記融合タンパク質と間の特異
30
的な結合を確認した(図9のA)。図9において、レーン1は形質転換されていない宿主
細胞であるJM109を示し、レーン2は形質転換されたpGNBCA−HB168/J
M109を示す。同図に示すように、pGNBCA−HB168プラスミドによって約4
8kDaの融合タンパク質バンドを確認することができた。
【0086】
また、S抗原の中和抗体形成抗原基が大腸菌の表面に位置し発現されることを直接確認す
るために、外幕分画法で発現を誘導させた大腸菌の可溶性成分、内膜、外膜などを分離し
た後、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動およびS抗原に対する抗体を用いたウエ
スタンブロッティングを行って確認した。具体的には、上記方法で融合タンパク質の表面
発現が誘導された大腸菌を、形質転換されていない大腸菌と同じ細胞濃度となるように獲
40
得 し 、 細 胞 を 緩 衝 溶 液 ( 1 0 m M H E P E S b u f f e r , p H 7 .4 ) で 数 回 洗 浄 し
た後、10μg/mlリゾチーム、1mM PMSF、および1mM EDTAが含有され
た 緩 衝 溶 液 で 浮 遊 さ せ 、 4 ℃ で 1 0 分 間 反 応 さ せ た 後 、 D N a se ( 0 .5 m g / m l ) と
R N a s e ( 0 .5 m g / m l ) と を 加 え た 後 、 超 音 波 処 理 で 細 胞 を 破 壊 し た 後 、 無 傷 の
大 膓 菌 と 細 胞 残 屑 が 4 ℃ で 2 0 分 間 の 遠 心 分 離 ( 1 0 ,0 0 0 g ) に よ っ て 分 離 さ れ 、 分
離 さ れ た 大 腸 菌 の 細 胞 残 屑 が 4 ℃ で 2 時 間 の 遠 心 分 離 ( 1 5 ,0 0 0 g ) に よ っ て 大 腸 菌
のペリプラズムと細胞質とのタンパク質を含む分画を得ることができた。得られたペレッ
ト を 1 % サ ル コ シ ル ( N -l a u r y l s a r c o s i n a t e , s o d i u m s a l
t ) を 含 む 緩 衝 溶 液 ( P B S , p H 7 .4 ) で 浮 遊 さ せ た 後 、 4 ℃ で 2 時 間 の 遠 心 分 離 (
1 5 ,0 0 0 g ) に よ っ て 上 清 液 は 大 腸 菌 の 内 膜 、 ペ レ ッ ト は 大 腸 菌 の 外 膜 の タ ン パ ク 質
50
(17)
JP 2006-502732 A 2006.1.26
からその分画を得た後、それぞれの分画をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動およ
びS抗原に対する抗体を用いたウエスタンブロッティングを行ってそれぞれの大膓菌分画
中のS抗原の中和抗体形成抗原基が外膜に位置することを確認した(図9a;大膓菌メン
ブレイン分画ウエスタンブロッティングの結果)。図9において、レーン1は形質転換さ
れていないJM109を、レーン2は形質転換されたpGNBCA−HB168/JM1
09の全細胞を、レーン3は形質転換されたpGNBCA−HB168/JM109の可
溶性分画を、レーン4は形質転換されたpGNBCA−HB168/JM109の内膜分
画を、レーン5は形質転換されたpGNBCA−HB168/JM109の外膜分画をそ
れぞれ示す。
【0087】
10
S抗原の中和抗体形成抗原基が、ポリ−γ−グルタミン酸合成タンパク質のC末端によっ
て大腸菌の表面に発現されることを、蛍光標示式細胞分取器(FACS, Fluore
scence−activating cell sorter)で確認した。
【0088】
免疫蛍光(Immunofluorescence)染色のために、発現を誘導させた大
腸著菌を同じ細胞濃度となるように獲得し、細胞を緩衝溶液(PBS buffer,p
H 7 .4 ) で 数 回 洗 浄 し た 後 、 1 % ウ シ 血 清 ア ル ブ ミ ン を 含 む 緩 衝 溶 液 1 m l に 浮 遊 さ せ
、S抗原に対するヒツジ来由のポリクローナル一次抗体を1000倍希釈し、4℃で12
時間反応させた。反応の終わった各細胞を緩衝溶液で数回洗浄し、1%ウシ血清アルブミ
ンを含む緩衝溶液1mlに浮遊させた後、ビオチンが結合されている2次抗体を1000
20
倍希釈し、4℃で3時間反応させた。更に、反応の終わった細胞は緩衝溶液で数回洗浄し
、 1 % ウ シ 血 清 ア ル ブ ミ ン が 入 っ て い る 緩 衝 溶 液 0 .1 m l に 浮 遊 さ せ た 後 、 ビ オ チ ン に
特異的なストレプトアビジン−R−フィコエリスリン染色試薬を1000倍希釈して結合
させた。
【0089】
反応の終わった大腸菌を数回洗浄してFACSで測定した結果、形質転換されていない大
腸菌と比較されるS抗原の中和抗体形成抗原基タンパク質が表面に発現することを確認し
た(図9のB)。同図において、白色は形質転換されていないJM109を示し、黒色は
形質転換されたpGNBCA−HB168/JM109から来由したものを示す。なお、
同図に示すように、形質転換されていない大腸菌ではS抗原中和抗体形成基が発現されな
30
かったが、表面発現ベクターによって形質転換された大膓菌ではS抗原中和抗体形成基の
表面発現が明らかに確認された。
<間接実施例2>表面発現形質転換ベクターpGNCA−HB168の作製およびB型肝
炎ウイルスS抗原の中和抗体形成抗原基の表面発現
【0090】
バチルス属菌株由来のポリ−γ−グルタミン酸合成に関与する細胞外膜タンパク質の遺伝
子(pgsBCA)のうち、pgsCとpgsAとを用いたグラム陰性微生物を宿主とす
る表面発現ベクターを製造した。
【0091】
ポリ−γ−グルタミン酸合成に関与する細胞外膜タンパク質のうち、pgsCとpgsA
40
とのN末端およびC末端を暗号化する遺伝子を得るために、前記全染色体を鋳型として用
い 、 N 末 端 に は 配 列 1 0 ( 5 -g c a c a t a t g t t c g g a t c a g a t t t
a t a c a t c -3 ) 、 C 末 端 に は 配 列 1 1 ( 5 -c t c g g a t c c t t t a g a
t t t t a g t t t g t c a c t -3 ) の 塩 基 配 列 を 有 す る オ リ ゴ ヌ ク レ オ チ ド を プ
ライマーとして用いたポリメラーゼ連鎖反応を行った。
【0092】
N末端に対するプライマーである配列には、発現ベクターpHCE19T(II)に存在
する制限酵素NdeIの認識部位が存在するように構成した。このとき、増幅された遺伝
子部位は、ポリ−γ−グルタミン酸合成に関与する細胞外膜タンパク質遺伝子であるpg
s C の N 末 端 部 位 か ら p g s A の C 末 端 部 位 ま で の 約 1 .6 k b の 大 き さ の 部 位 で あ っ た
50
(18)
JP 2006-502732 A 2006.1.26
。
【0093】
ポリメラーゼ連鎖反応によって増幅された遺伝子を、制限酵素NdeIとBamHIとで
切断し、既にNdeIとBamHIとで切断された常時的な高発現ベクターであるpHC
E19T(II)に挿入し、ポリ−γ−グルタミン酸合成に関与する細胞外膜タンパク質
の 遺 伝 子 に 終 止 コ ド ン が な く 新 た な 制 限 酵 素 認 識 部 位 の 添 加 さ れ た 新 規 の 約 5 .3 k b の
大きさのベクターを製造し、これをpGNCAと命名した。
【0094】
ポリ−γ−グルタミン酸合成に関与する細胞外膜タンパク質の遺伝子(pgsBCA)の
うち、pgsCとpgsAとを用い、グラム陰性微生物を宿主としてB型肝炎ウイルスS
10
抗原の中和抗体形成抗原基を表面発現することのできる形質転換ベクターpGNCA−H
B168を、上記実施例2と同様の方法で製造した。このようにして製造した形質転換ベ
クターpGNCA−HB168を図10に示した。
【0095】
前記表面発現ベクターpGNCA−HB168を用い、大膓菌でのB型肝炎ウイルスS抗
原の中和抗体形成抗原基の発現を調べた。
【0096】
このために、前記発現ベクターで大膓菌を形質転換させ、上記実施例3と同様の過程で発
現を誘導した後、細胞外膜タンパク質pgsCAと融合したS抗原の中和抗体抗原基が大
腸菌で発現することを、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動およびS抗原に対する
20
抗体を用いたウエスタンブロッティングを行って確認した。
【0097】
図11において、レーン1は形質転換されない宿主細胞であるJM109を示し、レーン
2は形質転換されたpGNCA−HB168/JM109を示す。同図に示すように、p
GNCA−HB168プラスミドによって約48kDaの融合タンパク質バンドを確認す
ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明に係るグラム陰性およびグラム陽性微生物を宿主細胞とする表面発現形質
転換ベクター(pHCE2LB:pgsA−HPV L1)の遺伝子地図である。
30
【図2】AおよびBは、本発明の表面発現形質転換ベクター(pHCE2LB:pgsA
−HPV L1)で形質転換させたサルモネラ菌株および乳酸菌株内において、pgsA
と融合したHPV L1抗原の融合タンパク質発現の様子を、特異抗体でウエスタンブロ
ッティングした写真である。
【図3−a】本発明の表面発現形質転換ベクター(pHCE2LB:pgsA−HPV
L1)で形質転換させたラクトバチルスカゼイ菌株において、抗原基の表面発現が確認さ
れた一定量の菌を口腔に一定期間投与したマウスの血清内HPV L1抗原基に対するI
gG抗体価の結果を示したグラフである。
【図3−b】本発明の表面発現形質転換ベクター(pHCE2LB:pgsA−HPV
L1)で形質転換されたラクトバチルスカゼイ菌株において、抗原基の表面発現が確認さ
40
れた一定量の菌を一定期間口腔に投与したマウスの小腸、気管支、肺および膣洗浄液内の
HPV L1抗原基に対するIgA抗体価の結果を示したグラフである。
【図4】本発明の表面発現形質転換ベクター(pHCE2LB:pgsA−HPV L1
)で形質転換させたラクトバチルスカゼイ菌株において、抗原基の表面発現が確認された
一定量の菌を一定期間口腔に投与した後、マウスの脾臓細胞の細胞毒性Tリンパ球の細胞
融解活性の結果を示したグラフである。
【図5】本発明に係るグラム陰性およびグラム陽性微生物を宿主とする表面発現形質転換
ベクター(pHCE2LB:pgsBCA−HPV E7)の遺伝子地図である。
【図6】本発明の表面発現形質転換ベクター(pHCE2LB:pgsBCA−HPV
E7)で形質転換させた乳酸菌株内において、pgsAと融合したHPV E7抗原の融
50
(19)
JP 2006-502732 A 2006.1.26
合タンパク質発現の様子を、特異抗体でウエスタンブロッティングした写真である。
【図7】本発明の表面発現形質転換ベクター(pHCE2LB:pgsBCA−HPV
E7)で形質転換させたラクトバチルスカゼイ菌株における抗原基の表面発現が確認され
た一定量の菌を一定期間口腔に投与した後、マウスに腫瘍細胞をチャレンジして経時によ
る腫瘍増殖率を測定した結果を示したグラフである。
【図8】本発明に係る間接実施例において、表面発現ベクターpGNBCAおよび形質転
換ベクターpGNBCA−HB168の遺伝子地図である。
【図9−a】本発明に係る間接実施例において、表面発現形質転換ベクターpGNBCA
−HB168で形質転換させたグラム陰性微生物におけるB型肝炎ウイルスの表面抗原基
タンパク質の表面発現を示すウエスタンブロッティング写真およびFACSによる測定結
10
果グラフである。
【図9−b】本発明に係る間接実施例において、表面発現形質転換ベクターpGNBCA
−HB168で形質転換させたグラム陰性微生物におけるB型肝炎ウイルスの表面抗原基
タンパク質の表面発現を示すウエスタンブロッティング写真およびFACSによる測定結
果グラフである。
【図10】本発明に係る間接実施例において、表面発現ベクターpGNCAおよび形質転
換ベクターpGNCA−HB168の遺伝子地図である。
【図11】図11aおよび図11bは、本発明に係る間接実施例において、表面発現形質
転換ベクター(pGNCA−HB168:A2,pGNA−HB168:A3、およびp
GNHB−A:A4)で形質転換させたグラム陰性微生物におけるB型肝炎ウイルスの表
面抗原基タンパク質の表面発現を示すウエスタンブロッティング写真およびFACSによ
る測定結果グラフである。
【配列表】
20
(20)
JP 2006-502732 A 2006.1.26
10
20
30
40
(21)
JP 2006-502732 A 2006.1.26
10
20
30
(22)
JP 2006-502732 A 2006.1.26
10
20
30
40
(23)
JP 2006-502732 A 2006.1.26
10
20
30
40
(24)
JP 2006-502732 A 2006.1.26
10
20
30
(25)
JP 2006-502732 A 2006.1.26
10
20
30
(26)
JP 2006-502732 A 2006.1.26
10
【図1】
【図2】
(27)
【図3−a】
【図3−b】
【図4】
【図6】
【図5】
JP 2006-502732 A 2006.1.26
(28)
【図7】
【図9−a】
【図8】
JP 2006-502732 A 2006.1.26
(29)
【図10】
JP 2006-502732 A 2006.1.26
(30)
【国際調査報告】
JP 2006-502732 A 2006.1.26
(31)
JP 2006-502732 A 2006.1.26
(32)
JP 2006-502732 A 2006.1.26
(33)
JP 2006-502732 A 2006.1.26
フロントページの続き
(51)Int.Cl.
FI
A61K 38/00
C07K 14/025
(2006.01)
(2006.01)
テーマコード(参考)
A61K 37/02
C07K 14/025
(81)指定国 AP(GH,GM,KE,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,
BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IT,LU,MC,NL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,
GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,
EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KP,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN,M
W,MX,MZ,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,YU,ZA
,ZM,ZW
(72)発明者 スング,ムーン−ヒー
大韓民国 305−301 テジョン,ユセオン−グ,ボンミョン−ドン,538−8,ドン−エ
ー ベンチャー ビルディング 908 ホ
(72)発明者 プー,ハ−リョウン
大韓民国 302−121 テジョン,セオ−グ,ダンサン−ドン,オナー ヴィル,1619 ホ
(72)発明者 リー,ジョン−ソウ
大韓民国 305−308 テジョン,ユセオン−グ,ジャンダエ−ドン,307−11
(72)発明者 ジュン,チャン−ミン
大韓民国 158−811 ソウル,ヤンチェオン−グ,モック3−ドン,618−13
(72)発明者 ホン,セウン−ピョ
大韓民国 305−751 テジョン ユセオン−グ,ソンガン−ドン,ソンガン グリーン ア
パートメント 310−1503
(72)発明者 キム,チュル−ジューン
大韓民国 305−345 テジョン ユセオン−グ,シンセオン−ドン,ハンウール アパート
メント 103−801
(72)発明者 パク,スエ−ニエ
大韓民国 120−090 ソウル セオダエムーン−グ,ホンジェ−ドン,インワンサン ヒュ
ンダイ アパートメント 103−202
(72)発明者 ピョ,ヒュン−ミ
大韓民国 302−744 テジョン,セオ−グ,サムチェオン−ドン,ガラム アパートメント
2−901
Fターム(参考) 4B024 AA01 BA07 BA32 CA02 CA07 DA05 DA06 DA07 EA04
4B065 AA01X AA15X AA15Y AA26X AA30X AA36X AA46X AA49X AA53X AA55X
AA95Y AB01 AC14 BA02 CA24 CA27 CA45
4C084 AA02 AA03 BA44 CA01 CA53 DA01 MA52 MA56 MA59 MA66
NA14 ZA812 ZB092 ZB262 ZB332
4C085 AA03 BA76 BB11 CC08 DD62 EE01 GG04 GG06 GG08
4H045 AA11 AA20 AA30 BA41 CA01 CA11 EA31 FA74
Fly UP