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注射剤の配合変化と混合手順

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注射剤の配合変化と混合手順
第 1 章 病院調剤を実践する
H101
病院調剤業務の全体の流れ(1)
●学習方法:説明・見学 ●時間:90 分× 2
H101… 1.患者の診療過程に同行し,その体験を通して診療システムを概説できる。
2.病院内での患者情報の流れを図式化できる。
3.病院に所属する医療スタッフの職種名を列挙し,その業務内容を相互に関連づけて
説明できる。
4.生命に関わる職種であることを自覚し,ふさわしい態度で行動する。
5.医療の担い手が守るべき倫理規範を遵守する。
6.職務上知り得た情報について守秘義務を守る。
学習内容
1.病院内での患者の動きと各部門の関わりを見学す
る。
2.薬剤師が生命に関わる職種であることを自覚さ
せ,薬剤師の役割と責任について学ぶ。
3.病院の医療スタッフの職名とその業務内容を相互
に関連づけて学ぶ。
● 施設の入院案内パンフレット
●「調剤指針」
(薬事日報社)
● 関係法規(医療法,保険医療機関及び保険医
4.薬剤部の各部門と部門間の連携について学ぶ。
療養担当規則,薬剤師法・薬剤師法施行規則,
5.処方せんの発行から薬剤交付までの流れについて
薬剤師倫理規定)
学ぶ。
6.病院薬剤師と保険薬局薬剤師との連携について学
ぶ。
(知識)
1.診療の流れが理解できたか?
2.薬剤師が医療チームの一員として法律で定められており,医療に対する法的責任を有していることが理
解できたか ?
3.薬剤部各部門の業務と部門間の連携が理解できたか?
4.オーダリングシステムを含む処方せんの発行から調剤までの流れが理解できたか?
5.病院と薬局との連携(いわゆる薬薬連携)の重要性が理解できたか?
指導薬剤師からのアドバイス
1.医療機関の種類と病院の機能別分類
1)病院・診療所の定義
「病院」とは,医師または歯科医師が,公衆または特定多数人のため医業または歯科医業を行う場所であって,
20 人以上の患者を入院させるための施設を有するものをいう。「診療所」とは医師または歯科医師が,公衆また
は特定多数人のため医業または歯科医業を行う場所であって,患者を入院させるための施設を有しないものま
たは 19 人以下の患者を入院させるための施設を有するものをいう。
2)病院の機能別分類
病院はその機能により「特定機能病院」
,
「地域医療支援病院」,「臨床研修病院」などいくつかの種類がある。
002
病院調剤業務の全体の流れ(1)
の下に各部門が配置されている。内科,外科など診療部
門のほか,中央診療部門として検査部,放射線部,手術部,
輸血部,ICU,HCU,救急部などがある。薬剤部,看護部,
中央診療部門
病院長
事務部などが独立した部門として設置されている。
3.
「医療の担い手」としての薬剤師に関する規則(薬剤師法
薬剤部門
看護部門
以外)
1)医療法
事務部門
第 1 条の 4 医師,歯科医師,薬剤師,看護師その他
の医療の担い手は,第 1 条の 2 に規定する理念に基づ
き,医療を受ける者に対し,良質かつ適切な医療を行うよう努めなければならない。
2 医師,歯科医師,薬剤師,看護師その他の医療の担い手は,医療を提供するに当たり,適切な説明を行い,
医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならない。
2)刑法
(秘密漏示)
第 134 条 医師,薬剤師,医薬品販売業者,助産師,弁護士,弁護人,公証人又はこれらの職にあった者が,
正当な理由がないのに,その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは,6 月以下の
懲役又は 10 万円以下の罰金に処する。
4.調剤における薬剤師の義務(薬剤師法)
1)調剤の求めに応ずる義務(第 21 条)
調剤に従事する薬剤師は,調剤の求めがあつた場合には,正当な理由がなければ,これを拒んではならない。
2)処方せん中の疑義(第 24 条)
薬剤師は,処方せん中に疑わしい点があるときは,その処方せんを交付した医師,歯科医師又は獣医師に問
い合わせて,その疑わしい点を確かめた後でなければ,これによつて調剤してはならない。
3)情報の提供及び指導(第 25 条の 2)
薬剤師は,調剤した薬剤の適正な使用のため,販売又は授与の目的で調剤したときは,患者又は現にその看
護に当たつている者に対し,必要な情報を提供し,及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない。
このように薬剤師法は,調剤を薬剤師の独占業務と定めている。また薬剤師は,薬剤に関わる医療事故防止
のためのリスクマネジメントとしての役割を担っている。
《薬剤師の任務と薬剤部門内の業務との関連》
薬剤師法第 1 条に「薬剤師は,調剤,医薬品の供給その他薬事衛生をつかさどることによつて,公衆衛生の
向上及び増進に寄与し,もつて国民の健康な生活を確保するものとする」と薬剤師の任務が規定されている。
調剤を中心として,薬品管理,製剤,医薬品情報,試験研究等が関連しながら最終的に患者志向の薬剤師業務
を形成している。
5.処方オーダリングシステム
処方せんの発行から調剤までの流れについて示す。
外来受診の目的で来院した患者は,受付で診察券を作成し目的の診療科を受診する。血液検査,X 線撮影な
どの検査が行われ診断された後,必要に応じて薬剤が処方され,処方せんが発行される。調剤ならびに薬剤交
付は病院もしくは保険薬局にて行われる。処方内容に問題なければ調剤が行われ,患者に薬剤が交付される。
この時の患者への対応として,医療人としての責任と自覚を持って接する必要がある。患者との信頼関係が
診療や疾病の予後にも影響することがあることを心得ておく。また,患者の個人情報保護に十分配慮する必要
003
章
病院調剤を実践する
診療部門
病院長は,病院の管理運営にすべての責任を有し,そ
第
2.病院の組織
1
第 1 章 病院調剤を実践する
がある。調剤は薬剤師の基本的な業務であり,製剤,薬品
医師の処方入力
管理,医薬品情報,病棟業務,試験研究等と密接に関わっ
ていることを理解する。
近年,多くの施設で処方オーダリングシステムが導入さ
れており,調剤業務に活用されている。オーダリングシス
テムを利用することにより,処方せん作成時の誤記,判読
不明瞭な記載や記載不備などはなくなったが,逆に入力ミ
スによる重大な処方間違いが起こっているのも事実である。
オーダリングシステムでは薬袋作成,散薬鑑査システム,
自動錠剤分包機などに連携し,調剤時の過誤防止に役立っ
ている。診察室で入力されたデータはリアルタイムで医事
課,薬剤部,他部門に転送される。オーダリングシステム
には,医薬品データベース,薬剤の相互作用チェック,患
者の同一投薬期間中の重複チェックなどの機能が付加され
薬剤部に処方せんを出力
処方監査
薬袋,医薬品情報提供書の作成
調剤業務
調剤薬鑑査
薬剤交付・服薬指導
ている。さらに,薬歴表の作成や薬剤管理指導業務への支
処方せんの整理・保存
援も可能である。
処方オーダリングでは薬剤を選択する際に,利便性と医療安全の観点から,薬剤名の頭文字3文字を入力す
ることにより,該当する医薬品リストが表示され,その中から医薬品名を選択する方法がとられることが多い。
6.調剤後の処方せんの保存
1)調剤済み処方せんの扱い
「調剤した処方せんには調剤済みである旨,調剤年月日,調剤した薬剤師の氏名押印又は署名,調剤した病院
の名称,所在地,医師・歯科医師等の同意を得て変更した場合にはその変更内容,医師・歯科医師に疑わしい
点を確かめた場合にはその回答の内容を記入しなければならない」
(薬剤師法第 26 条,同法施行規則第 15 条)
調剤済みの処方せんは,診療科別に分類して保管する。処方せん枚数,件数,剤数等の業務統計を作成する。
2)処方せんの保存
薬局開設者については「処方せんを,調剤済みとなった日から 3 年間の保存」
(薬剤師法第 27 条),病院につ
いては医療法第 21 条および同法施行規則第 20 条では「診療に関する諸記録の1つとして,過去 2 年間の処方
せんの保存」となっている。薬剤師法第 27 条では 3 年間,医療法では 2 年間と定められているが,処方せんの
保存は 3 年間とするのが妥当である。
《院内処方せんと院外処方せんの違い》
① 院内処方せん:病院,診療所内の薬局で医師または薬剤師が処方せんに基づいて調剤する場合の処方せん
であり,独自の様式をとることが可能である。記載事項のいくつかは省略可能である。
② 院外処方せん:病院・診療所等で処方せんを発行し,院外の保険薬局で調剤してもらうための処方せんで
ある。様式は「保険医療機関及び保険医療養担当規則」
(療担規則)
,記載事項は医師法等により定められ
ている。
7.病院と薬局の薬剤師連携(薬薬連携)
院外処方せんの発行増加に伴い,薬剤の適正使用促進による安全性確保のため,病院と保険薬局の薬剤師間
の連携が重要となる。病院,
保険薬局それぞれの薬剤師が 1 人の患者の薬学的ケアを統一的に行う必要性があり,
このためには病院と保険薬局が共通した「お薬手帳」や「医療情報提供書」を介して,患者情報を共有する必
要がある。詳細は 007 頁参照。
1 調剤における薬剤師の法的責任
薬剤師が関与する代表的な法律のうち,調剤業務に関連するものを列挙し,それぞれ簡単に内容を説明しな
さい。
004
第 1 章 病院調剤を実践する
H122
注射剤調剤(4)
2.注射剤の配合変化に関して実施されている回避方法を列挙できる。
学習内容
1.指導薬剤師が行う混合操作を見学する。
2.混合操作に必要な器具・機器や正しい服装につい
て学ぶ。
3.バイアル・アンプル製剤の取り扱い上の注意につ
いて学ぶ。
● 注射剤処方せん
● 各施設で使用している調剤マニュアル
4.コアリングの発生機序について学ぶ。
●「調剤指針」
(薬事日報社)
5.調製後の鑑査項目を列挙できる。
● 添付文書
6.実際に混合操作を行い,正確にできたか指導薬剤
● インタビューフォーム
師に確認してもらう。
7.配合変化の種類と要因について学ぶ。
8.実際に実施されている配合変化の回避方法につい
て学ぶ。
●「注射剤・抗がん薬無菌調製ガイドライン」
(薬事日報社)
●「注射薬調剤監査マニュアル」
(エルゼビア・
ジャパン)
●「抗悪性腫瘍剤の院内取扱い指針 抗がん薬調
製マニュアル第 3 版」
(じほう)
(知識)
1.混合操作に必要な器具,設備,服装を正しく列挙できたか?
2.バイアルの混合操作における注意点について正しく説明できたか?
3.アンプルの混合操作における注意点について正しく説明できたか?
4.調製後の鑑査項目について正しく列挙できたか?
5.配合変化の実例を列挙し,その回避方法について説明できたか?
(態度)
1.指導薬剤師の確認のもと,実際の注射剤処方せんに基づいて正しく混合操作が実施できたか?
2.コアリングの発生機序を理解し,混合操作が実施できたか?
3.実際の注射剤処方せんにおける配合変化について理解し,
それを回避するための混合操作が実施できたか?
指導薬剤師からのアドバイス
1.混合操作を行う環境(設備・服装)
高カロリー輸液などの,ある期間保管が必要な注射剤の調製は,クラス 10,000 の条件を満たす管理区域内に
正しく設置されたクラス 100 の水平または垂直層流クリーンベンチで行うのが望ましい。
清浄度(NASA 規格)
クラス 10,000:1 立方フィートの空気中に含まれる 0.5μm 以上の粒子が 10,000 個以下
クラス 100:1 立方フィートの空気中に含まれる 0.5μm 以上の粒子が 100 個以下
067
章
病院調剤を実践する
H122 … 1.注射剤(高カロリー栄養輸液など)の混合操作を実施できる。
(技能)
第
●学習方法:実習 ●時間:90 分× 10
1
第 1 章 病院調剤を実践する
クリーンベンチは HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルターでろ過された空気により作業空間が陽
圧に保たれ,局所的に完全な清浄環境が得られる装置である。それに対して安全キャビネットは,細胞毒性があ
る薬剤の調製に用いるため,調製者の安全性を確保するために作業空間は陰圧に保たれている(
【H124】参照)
。
使用開始 5 分前にはファンを起動させ,消毒用アルコールを浸したディスポガーゼなどでクリーンベンチ内
を拭き取る。作業は上から下へ,奥から手前へ順に行う。
手指は,最初に逆性石けんで洗浄後流水で洗い流し,アルコール含有の速乾性擦り込み式消毒剤で十分に消
毒する。その後,清潔な袖口が縮まる専用の長袖ガウンを着用し,マスク・帽子(髪全体を覆う)
,薬剤透過性
が少ないラテックス製でパウダーフリーの手袋を着用する。なお,細胞毒性のある薬剤の調製の際には,ゴー
グルの装着を推奨する。
クリーンベンチ
安全キャビネット
排気
HEPAフィルター
HEPAフィルター
エアーバリア
清浄空間
清浄空間
Supply Air
(給気流)
ファン
ファン
Intake Air
(吸気流)
(日本病院薬剤師会 監,遠藤一司 他編著:抗悪性腫瘍剤の院内取扱い指針 抗がん薬調製マニュアル第 3 版,p.75,じほう,2014)
クリーンベンチと安全キャビネットの構造的相違
2.混合操作の注意点
1)アンプル製剤
① アンプル内の薬液が頭部に残っていないか確認する。残っている場合はアンプルの頭部を指ではじくか,
頭部をつかみ軽く回し振って薬液を落とす(1−1)。
② アンプルのカットする部分をアルコール綿で清拭する(ガラス・ゴミや付着物などを拭き取り消毒するた
め)
(1−2)
。
③ アンプルの体部を片手で持ち,カットポイントを手前に向ける。アンプル上部をアルコール綿で包み,も
う一方の手の親指と人差し指でしっかりとつかみ,向こう側に倒してカットする(1−3)。
④ アンプルをカットする際に,ガラス片が発生してアンプル内に混入するため,カット後しばらく(約 10
秒ほど)静置し,発生したガラス片を沈降させる。
⑤ アンプルを持ち横に傾け,注射針の針先の開口部を下に向けた状態でアンプルのカット口から挿入し,ア
ンプルの肩の部分から薬液をシリンジ内へ吸い取る。この時,針先がアンプルの口や外側に触れないよう
に注意する(1−4)
。
1−1
068
1−2
1−3
1−4
注射剤調剤(4)
② バイアルのゴム面に垂直に針を刺入し,溶解液を注入する(2−1)。斜めに刺入するとコアリングを起
こすことがあるので注意する。コアリングとは針をゴム栓に穿刺するとき,刃先部とヒール部によりゴム
片が削り取られる現象をいう。
③ 粉末注射剤を溶解し,バイアルを軽く振って完全に溶解したことを確認する。
④ 適量の空気をシリンジ内にとり,空気と溶液を交換するようにして溶液を吸引する。この時,エアロゾル
現象に注意する(2−2)。
2−1
2−2
ボトル貫通例
ゴム栓破損・脱落例
(日本病院薬剤師会 監,遠藤一司 他編著:抗悪性腫瘍剤の院内取扱い指
針 抗がん薬調製マニュアル第 3 版,p.21,じほう,2014 を改変)
斜めに注射針を穿刺する場合の注意
ヒール部
圧縮
圧縮
圧縮
圧縮
圧縮
圧縮
圧縮
圧縮
ゴム栓
刃先とヒール部により
削り取られる
コアリング発生!
(矢後和夫 監,黒山政一 編:注射薬調剤,p.130,じほう,2002 を参考に作成)
コアリングの発生機構
3.最終鑑査の注意点
使用した空アンプル・空バイアル・残液などをもとに,薬剤名・規格・数量・残液量などを確認する。調製
済みの注射剤については,用量,外観上の変化(色調変化・沈殿・混濁・不溶性物質)
,異物(コアリングによ
るゴム片等)
,破損(液漏れ等)などを確認する。その他,ラベルの貼り間違いや遮光保存など注射剤を適正に
使用するために必要な情報が指示されているか確認する。
4.代表的な配合変化と回避方法
注射剤には,他の薬剤との混合や希釈によって変化を起こす組み合わせが多くみられる。注射剤は単剤での
投与が原則となるが,複数の注射剤を投与する場合には,混合して使用されることも多い。処方監査時には混
合の可否についての確認が必要となる。
最近は,糖質・アミノ酸・電解質およびビタミンが一体化された,TPN キット製品が汎用されている。これ
らの製品はブドウ糖とアミノ酸の混合によりメイラード反応を起こすことから,隔壁によって区分されており,
069
章
とる(添付の溶解液がない場合は,生食,5%ブドウ糖,TPN 基本液等配合変化の少ない溶解液を用いる)。
病院調剤を実践する
① キャップを取り,ゴム栓をアルコール綿で清拭する。粉末注射剤の場合,適当な溶解液を適量シリンジに
第
2)バイアル製剤
1
第 1 章 病院調剤を実践する
ピーエヌツイン-2号
ダブルバッグ製剤
フルカリック2号
トリプルバッグ製剤
エルネオパ2号
クワッドバッグ製剤
使用時に開通させて混合する。また,ビタミン B 1 の欠乏による乳酸アシドーシスを防ぐため,ビタミン類をあ
らかじめ配合したトリプルバッグ製剤も開発され,臨床上の選択肢が広がっている。なお,ビタミン B1 などの
分解を防ぐため,調製終了後にバッグ全体に遮光袋を被せる必要がある。
微量元素製剤は他の注射剤と直接混合した場合,配合変化を起こしやすいことから,必ず単独のシリンジで
採取しアミノ酸輸液あるいは TPN 基本液に添加する必要がある。最近では,微量元素があらかじめ小室で区分
されており,開通することで混合可能な製剤も汎用されている。
配合変化を回避するためには,注射剤混合の可否,混合順序,混合後の安定性,配合変化の防止,輸液バッグ・
輸液セット・フィルターなどへの吸着防止,適切な投与方法などの情報を収集・整理し,注射剤が適正に使用
されるための体制を整えることが必要となる。主な配合変化の組み合わせについて以下に示す。
主な配合変化の組み合わせ
主な商品名(一般名)
対象薬剤名
配合変化の概略
アレビアチン注
(フェニトインナトリウム)
5%ブドウ糖注など
pHの低下による白濁(pH11.7以下で急激な溶解度の低下)
テラルビシン注
(塩酸ピラルビシン)
生理食塩液
溶解直後に沈殿(pHの上昇で急激に溶解度低下)
ビクシリン注
(アンピシリンナトリウム)
5%ブドウ糖注
経時的な力価低下(ブドウ糖の還元作用による分解)
ファンギゾン注
(アムホテリシンB)
生理食塩液,
ラクテック注など
混合直後に沈殿, 混濁(電解質による溶解性の低下)
アミノグリコシド系抗生物質
βラクタム環の開裂による力価の低下
ラシックス注
(フロセミド)
アリナミンF注,
ペルサンチン注など
pHの低下による混濁(pH6.0以下で急激な溶解度の低下)
ラステット注
(エトポシド)
生理食塩液,
ソリタ−T3号など
溶解後の経過時間により結晶析出(希釈濃度により結晶析
出までの時間は異なる)
βラクタム系抗生物質
(伊賀立二 監,鈴木洋二 他編:注射薬調剤 基本と実践,p.53,じほう,2008 より)
070
注射剤調剤(4)
3 無菌製剤処理料の施設基準等
(1)無菌製剤処理料の施設基準
イ 病院であること
ロ 無菌製剤処理を行うにつき十分な施設を有していること
ハ 無菌製剤処理を行うにつき必要な体制が整備されていること
(2)無菌製剤処理料の対象患者
イ 無菌製剤処理料 1 の対象患者
悪性腫瘍に対して用いる薬剤であって細胞毒性を有するものに関し,動脈注射,抗悪性腫瘍剤局所持
続注入,肝動脈塞栓を伴う抗悪性腫瘍剤肝動脈内注入又は点滴注射が行われる患者
ロ 無菌製剤処理料 2 の対象患者
動脈注射若しくは点滴注射が行われる入院中の患者であって次の①から③までに掲げるもの又は中心
静脈注射若しくは埋込型カテーテルによる中心静脈栄養が行われる患者
① 無菌治療室管理加算を算定する患者
② HIV 感染者療養環境特別加算を算定する患者
③ ① 又は② に準ずる患者
■無菌製剤処理料
1 無菌製剤処理料 1(悪性腫瘍に対して用いる薬剤が注射される一部の患者)
イ 閉鎖式接続器具を使用した場合
(1)揮発性の高い薬剤の場合*
150 点
*揮発性の高い薬剤とは、次に掲げる成分を含有する製剤である
ア イホスファミド
イ シクロホスファミド
ウ ベンダムスチン塩酸塩
(2)
(1)以外の場合
ロ イ以外の場合
50 点
2 無菌製剤処理料 2(1 以外のもの)
24 100 点
40 点
注射剤の配合変化と混合手順
次の事例に対する発生原因および回避方法を考えなさい。
① セルシン注射液を生食 20mL に溶かしたら白濁した。
② タケプロン注射液を側管から投与したら色調に変化を来した。
071
章
病院調剤を実践する
■特掲診療料の施設基準等(最終改正:2012 年 3 月 5 日 厚生労働省告示第 78 号)抜粋
第 8 注射
第
リファレンスデータ
1
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