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はじめに

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はじめに
◆
はじめに
◆
み な さ ん, こ ん に ち は。 マ セ マ の 高 杉 豊, 馬 場 敬 之 で す。 既 刊 の『 統
計学キャンパス・ゼミ』は多くの読者の皆様のご支持を頂いて,数学教
育の新たなスタンダードな参考書として定着してきているようです。そ
して,マセマには連日のようにこの『統計学キャンパス・ゼミ』で養っ
た 実 力 を よ り 確 実 な も の と す る た め の『 演 習 書
( 問 題 集 ) 』が 欲 し い と の
ご意見が寄せられてきました。このご要望にお応えするため,新たにこ
の 『 演 習 統 計 学 キャンパス・ゼミ』を 上 梓 す る こ と が で き て , 心 よ り 嬉 し
く 思 っ て います。
統 計 学 を 単 に 理 解 す る だ け で な く, 自 分 の も の と し て 使 い こ な せ る よ う
に な る た めに 問題練習が不可欠です 。 こ の『 演 習 統 計 学 キ ャ ン パ ス ・ ゼ ミ 』
は , そ の ための 最適な演習書 と言えます 。
こ こ で ,まず本書の特徴を紹介して お き ま し ょ う 。
●『 統 計 学 キ ャ ン パ ス ・ ゼ ミ 』 に 準 拠 し て 全 体 を 8 章 に 分 け , 各 章 の
は じ め に は ,解法のパターンが一目 で 分 か る よ う に ,
methods & formulae
( 要項 ) を設けて い る 。
● マ セ マオリジナルの頻出典型の演習 問 題 を ,各 章 毎 に分 か り や す く 体
系 立 てて配置 している。
● 各 演 習 問 題 に は ヒ ン ト を 設 け て 解 法 の 糸 口 を 示 し ,ま た 解 答 & 解 説
で は ,定評あるマセマ流の読者の目 線 に 立 っ た親 切 で 分 か り や す い 解
説 で 明快に解き明かしている。
●演習問題の中には,類似問題を 2 題併記して,2 題目は穴あき形式に
し て 自分で穴を埋めながら実践的な 練 習 が で き る よ う に し て い る 箇 所
も 多 数設けた。
● 2 色 刷り の美しい構成で,読者の理 解 を 助 け る た め 図 解 も 豊 富 に 掲 載
し て いる。
さ ら に , 本書の具体的な利用法につい て も 紹 介 し て お き ま し ょ う 。
● ま ず ,各章毎に,methods & formulae ( 要 項 ) と 演 習 問 題 を 一 度 流 し 読
み し て,学ぶべき内容の全体像を押 さ え る 。
● 次 に ,methods & formulae
2
( 要項 ) を 精 読 し て ,公 式 や 定 理 そ れ に 解 法
パ タ ー ンを頭に入れる。そして,各演 習 問 題 の 解 答 & 解 説 を 見 ず に ,
問 題 文 と ヒント のみを読んで, 自分な り の 解 答 を 考 え る 。
●そ の 後, 解 答 & 解 説 を よ く 読 ん で, 自 分 の 解 答 と 比 較 し て み る。
そ し て ,間違っている場合は,どこにミ ス が あ っ た か を よ く 検 討 す る 。
● 後 日 , また 解答 & 解説 を見ずに 再チャ レ ン ジ す る 。
● そ し て ,問題がスラスラ解けるように な る ま で ,何 度 で も 納 得 が い く
ま で 反 復練習 する。
以 上 の 流 れ に 従 っ て 練 習 し て い け ば, 統 計 学 も 確 実 に マ ス タ ー で き ま す
の で , 大 学 や 大 学 院 の 試 験 で も 高 得 点 で 乗 り 切 れ るは ず で す 。 こ の 統 計 学
は大学で様々な自然科学や社会科学を学習していく上での基礎となる分野
で す 。 で す か ら, こ れ を マ ス タ ー す る こ と に よ り , さ ら な る 上 の ス テ ー ジ
に 上 が っ て いく鍵を手に入れることができ る の で す 。 頑 張 り ま し ょ う 。
ま た , こ の 『演習 統計学キャンパス・ゼ ミ 』で は 『 統 計 学 キ ャ ン パ ス・
ゼ ミ 』 で は 扱 え な か っ た,チ ェ ビ シ ェ フ の 不 等 式 , モ ー メ ン ト 母 関 数 と 確
2
率 密 度 の 一 対一対応,χ 分布の再生性,正 規 分 布 の 再 生 性 の 定 理 ,統 計 量
n
Σ
i=1
(X σ X)
i−
2
2
が自由度 n − 1 の χ 分布に従うことの証明なども詳しく解説
し て い ま す 。 で す か ら,『 統 計 学 キ ャ ン パ ス ・ ゼ ミ 』 を 完 璧 に マ ス タ ー で
き る だ け で なく,さらに ワンランク上の勉 強 も で き ま す 。
こ の『 演 習 統計学キャンパス・ゼミ』は皆 さ ん の 統 計 学 の 学 習 の 良 き パ ー
ト ナ ー と な る べ き 演 習 書 で す。 本 書 に よ っ て , 多 く の 方 々 が 統 計 学 に 開 眼
さ れ , 統 計 学の面白さを堪能されることを 願 っ て や み ま せ ん 。
皆 様 の さ らなる成長を心より楽しみにし て お り ま す 。
今 回 こ の『演習 統計学キャンパス・ゼミ 』の 制 作 に , マ セ マ の メ ン バ ー
の 久 池 井 茂 先 生 , 栄 瑠 璃 子 氏 , 真 下 久 志 氏 ,五 十 里 哲 君 ,河 野 達 也 君 ,
下 野 俊 英 君 ,中 田 恵 里 佳 さ ん ,吉 開 秀 悟 君 が 大 い に 頑 張 っ て 下 さ い ま し た 。
ここに心より謝意を表します。 演習問題 5 7 , 9 0 の証明は難しいので,初学者の方は飛ばされても
構いません。
マセマ代表 高杉
豊
けいし
馬場 敬之
3
◆ 目 次 ◆
講義1
●
離散型確率分布(1 変数確率関数)[ 確率編 ]
methods & formulae …………………………………………………6
二項定理(問題 1)…………………………………………………10
● 反復試行の確率(問題 2)…………………………………………11
● ベイズの定理(問題 3 ∼ 6)
………………………………………12
● 期待値,分散,標準偏差(問題 7 ∼ 10)………………………16
● 二項分布の期待値と分散(問題 11 ∼ 13)……………………20
● モーメント母関数と期待値・分散(問題 14, 15)……………26
● 確率関数と分布関数のグラフ(問題 16, 17)…………………28
●
講義2
●
連続型確率分布(1 変数確率密度)[ 確率編 ]
methods & formulae ………………………………………………30
確率密度と分布関数(問題 18, 19)……………………………34
● 連続型確率分布の期待値と分散(問題 20 ∼ 23)……………36
● 連続型確率分布の変数変換(問題 24 ∼ 26)…………………42
● チェビシェフの不等式(問題 27, 28)…………………………48
●
講義3
●
2 変数の確率分布 [ 確率編 ]
methods & formulae ……………………………………………………50
●
●
●
●
●
●
●
●
講義4
●
ポアソン分布と正規分布 [ 確率編 ]
methods & formulae ……………………………………………………76
●
●
●
●
●
4
同時確率分布(問題 29, 30) ……………………………………54
離散型確率変数の相関係数(問題 31, 32)……………………56
確率変数の独立(問題 33, 34) …………………………………58
離散型確率分布の期待値と分散(問題 35 ∼ 38) ……………60
連続型確率変数の相関係数(問題 39)……………………………64
ガウス積分(問題 40, 41)…………………………………………66
2変数の和の確率密度(問題 42 ∼ 44)…………………………68
連続型確率分布の期待値と分散(問題 45)………………………75
●
ポアソン分布と確率(問題 46, 47) ……………………………82
ポアソン分布の確率関数,期待値,分散(問題 48, 49)……84
スターリングの公式(問題 50) …………………………………86
正規分布の確率密度,期待値,分散(問題 51, 52) …………87
標準正規分布と確率(問題 53 ∼ 59)……………………………92
大数の法則と中心極限定理(問題 60 ∼ 64)…………………104
講義5
●
χ 2 分布, t 分布, F 分布 [ 確率編 ]
methods & formulae ………………………………………………114
●
●
●
●
講義6
●
ガンマ関数とベータ関数(問題 65 ∼ 67)……………………118
χ 2 分布の確率密度,期待値,分散(問題 68, 69) …………122
χ 2 分布の再生性(問題 70) ……………………………………126
F 分布・t 分布の確率密度(問題 71 ∼ 74)…………………128
データの整理(記述統計)[ 統計編 ]
methods & formulae ………………………………………………134
1変数データの整理(問題 75, 76) …………………………138
● 回帰直線,誤差の平均と分散(問題 77 ∼ 81) ……………142
●
講義7
●
推定[ 統計編 ]
methods & formulae ………………………………………………152
母数の不偏推定量(問題 82) …………………………………156
● 最尤推定量(問題 83, 84) ……………………………………158
2
● 母平均の区間推定(σ は既知)
(問題 85, 86) ……………160
2
● 母平均の区間推定(σ は未知)
(問題 87, 88) ……………162
● 母分散の区間推定(μ は未知)
(問題 89 ∼ 91)……………166
●
講義8
●
検定[ 統計編 ]
methods & formulae ………………………………………………176
2
母平均 μ の検定(σ は未知)
(問題 92) ……………………180
2
● 母分散 σ の検定(問題 93)……………………………………182
● 母平均の差の検定(問題 94 ∼ 96) …………………………184
● 母分散の比の検定(問題 97 ∼ 99) …………………………192
●
◆数表
………………………………………………………………………………197
1. 標準正規分布表
2. 自由度 n の t 分布表
3. 自由度 n の χ 分布表
2
4. 自由度 ( m , n ) の F 分布表
(α = 0.005 )
5. 自由度 ( m , n ) の F 分布表 (α = 0.025 )
◆ Term・Index(索引) ……………………………………………………202
5
演習問題 89
● 正規分布の再生性の定理 ●
互 い に 独 立 な 2 つ の 確 率 変 数 X 1 ,X 2 , … ,X n が そ れ ぞ れ 正 規 分 布
N (μ 1 ,σ 1 2 ) ,N (μ 2 ,σ 2 2 ) ,… , N (μ n ,σ n 2 ) に 従 う と き ,新 た な 確 率 変 数
a 1 X 1 + a 2 X 2 + … + a n X n + b … … ① ( a 1 , a 2 ,…, a n , b :定 数 ) は ,
正 規 分 布 N ( a 1μ 1 + a 2μ 2 + … + a nμ n + b, a 1 2σ 1 2 + a 2 2σ 2 2 + … + a n 2σ n 2 ) に
従 う こ とを, ① のモーメント母関数 M ( θ ) を 求 め る こ と に よ っ て 示 せ 。
2
ヒント!
N (μ ,σ ) に従う確率変数 X のモーメント母関数は,
e
μθ+
σ2
2
θ2
となる。 ( P7 8 ) よって,①のモーメント母関数 M ( θ ) が,
M(θ) = E[e
=e
θ ( a 1X 1 + a 2X 2 + … + a nX n + b )
]
2
2
2
σ 2
σ 2
σ 2
( a 1μ 1 + a 2μ 2 + … + a nμ n + b ) θ + a 1 1 + a 2 2 + … + a n n θ 2
2
となることを示せばよい。
解答&解説
X 1 ,X 2 ,…,X n そ れぞ れの 確 率密 度 を f X 1 ( x 1 ) ,f X 2 ( x 2 ) ,… ,f X n ( x n ) と お く。
ま た, n 変 数 X 1 , X 2 , …, X n の 確 率 密 度 を h ( x 1 ,x 2 , …, x n ) と お く と ,
X 1 ,X 2 , …, X n が 互い に 独立 より ,
h ( x 1 , x 2 , …, x n ) = f X 1 ( x 1 )・f X 2 ( x 2 )・…・f X n ( x n ) ……②と な る。
X 1 , X 2 , …, X n はそ れ ぞれ N (μ 1 ,σ 1 2 ) , N (μ 2 ,σ 2 2 ) ,… ,N (μ n ,σ n 2 )
{
に従 う ので , X 1 , X 2 ,… , X n のモ ー メン ト母 関 数を そ れぞ れ
M 1 ( θ ) ,M 2 ( θ ) , … ,M n ( θ ) とお く と,
M 1( θ ) = E [ e
θX1
]=∫
M 2( θ ) = E [ e
θX2
M n( θ ) = E [ e
θXn
∞
1
e x ・f
X 1 ( x 1 ) dx 1 = e
−∞
]=∫
∞
]=∫
∞
θ
μ 1θ +
2
e x ・f
X 2( x 2 ) d x 2 = e
−∞
−∞
θ
μ 2θ +
e x n・f X n ( x n ) dx n = e
θ
σ 12
2
σ 22
μ nθ +
2
σ n2
2
θ2
θ2
……③
……④
θ2
……⑤
ここで,a 1 X 1 + a 2 X 2 + … + a n X n + b … ① の モ ー メ ン ト 母 関 数 を M ( θ ) と お
くと , ②よ り
166
●推 定
M(θ) = E[e
=
θ ( a 1X 1 + a 2X 2 + … + a nX n + b )
∞
∞
∫ ∫ …∫
−∞ −∞
∞
−∞
ea
1θ x 1
e
]
・f X 1 ( x 1 ) f X 2 ( x 2 ) … f X n ( x n ) dx 1 d x 2 … dx n
θ ( a 1x 1 + a 2x 2 + … + a nx n + b )
・e a
2θ x 2
・…・e a
nθ x n
・e b
h( x 1 ,x 2 ,…,x n )
θ
②より
定数
∫
=e ・
bθ
∞
−∞
ea1
θx1
f X 1 ( x 1 ) dx 1・
∫
−∞
μ 1・a 1θ +
σ 12
2
( a 1θ )
bθ
θx2
f X 2 ( x 2 ) dx 2・…・
μ 2・ a 2 θ +
2
=e
③の θ に a 1 θ を代入
= e ・e
ea2
( σ )2
a 1μ 1 θ + a 1 1 θ 2
2
・e
∞
∫
−∞
ean
θxn
f X n ( x n ) dx n
M n( a nθ )
M 2( a 2θ )
M 1( a 1θ )
=e
∞
σ 22
2
( a 2θ )
μ n・a nθ +
2
=e
・…・e
2
( a nθ ) 2
⑤の θ に a n θ を代入
④の θ に a 2 θ を代入
( σ )2
a 2μ 2 θ + a 2 2 θ 2
2
σ n2
( σ )2
a nμ n θ + a n n θ 2
2
よ っ て, a 1 X 1 + a 2 X 2 + … + a n X n + b ……①の モ ーメ ン ト母 関 数 M ( θ ) は ,
M(θ) = e
2σ 2
2σ 2
2σ 2
( a 1μ 1 + a 2μ 2 + … + a nμ n + b ) θ + a 1 1 + a 2 2 + … + a n n θ 2
2
……④
こ の ④の 右 辺は , 平均 a 1μ 1 + a 2μ 2 + … + a nμ n + b, 分散
a 1 2σ 1 2 + a 2 2σ 2 2 + … + a n 2σ n 2 の 正規 分 布の モ ーメ ン ト母 関 数で あ るか ら,
a 1 X 1 + a 2 X 2 + … + a n X n + b ……① は, 正 規分 布
N ( a 1μ 1 + a 2μ 2 + … + a nμ n + b, a 1 2σ 1 2 + a 2 2σ 2 2 + … + a n 2σ n 2 ) に 従 う。… ( 終 )
これを正規分布の再生性の定理と呼ぶ。
n = 2,a1 = a2 = 1,b = 0 の場合,次が成り立つ。
「互いに独立な 2 つの変数 X1,X2 がそれぞれ N(μ 1 ,σ 1 2 ) ,N(μ 2 ,σ 2 2 ) に従うとき,変数
X1 + X2 は,正規分布 N(μ 1 + μ 2 ,σ 1 2 + σ 2 2 ) に従う。
」
これを,正規分布の再生性という。
また,n = 1,a1 = a,の場合,X1 = X,μ 1 =μ ,σ 1 2 =σ 2 とおくと,次が成り立つ。
「変数 X が N(μ ,σ 2 ) に従うとき,変数 aX + b は,正規分布 N( aμ + b,a2σ 2 ) に従う。」
正規分布の再生性の定理より,互いに独立な n 個の変数 X 1 ,X 2 ,…,X n がすべて同一の
1(
X 1 + X 2 + … + X n ) は,
n
2
1
1
1
1 2 1 2
1 2
μ + μ + … + μ , 2 σ + 2 σ + … + 2 σ ,すなわち,N μ , σ
正規分布 N
n
n
n
n
n
n
n
正規分布 N(μ ,σ 2 ) に従うとき,これらの相加平均 X =
(
)
(
)に
従うことが分かる。
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