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046 - 中四国エイズセンター

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046 - 中四国エイズセンター
Medical Postgraduates Vol. 41 No. 6 2003
H I V/A I D S 情 報 ファイル
#046
54(442)
翻 訳
[展望]
HIVケアにおける新たな挑戦:HIV感染患者間での予防**
Carlos del Rio,*M.D.
要 旨:HIV感染母集団のリスク低減と予防介入に関する研究は低調で,未だ目的を達成して
いない。高いリスクを伴う性的習慣と性感染症(STD)の増加は,大きな関心を駆り立ててお
り,所定のSTDスクリーニングとHIV感染群におけるリスク低減のカウンセリング実施の率先を
もたらしている。入手可能な証拠は,リスク低減カウンセリングが効果的と思われることを指摘
している。HIV医療設定におけるリスク低減カウンセリングに対する注目の向上が必要とされ,
ケアとのリンクの利用可能性と維持を改善する努力が増大されなければならない。本論文は,
2003年3月のアトランタにおけるInternational AIDS Society-USA[国際エイズ学会米国部会]
の講座におけるDr. Carlos del Rioの発表を要約したものである。
Key words : HIV-1感染症,抗レトロウイルス療法,MSM,性感染症,予防,AIDSケア,
リスク低減,カウンセリング
これまでのHIV予防は,有リスク(at-risk)HIV
多数の人々が,性生活も含めた正常な生活活動を
血清反応陰性母集団におけるリスク低減行動の奨
追求し続けることを可能にしている。最近の種々
励にほとんど完全に焦点を合わせてきた。一般に,
のデータは,高リスクの性行動が激増しているこ
これらの計画は理論主導であり,低リスクの性行
とを指摘している。例えば, Chenらは,サンフ
動と薬物濫用と関連した認識論的,社会的,なら
ランシスコにおける過去数年間にわたる男性の同
びに技術的能力と技能の発展を強調している。し
性間性的接触者(MSM: men who have sex with
かしながら,リスク低減と予防介入に関する研究
men)の複数のパートナーとの一般的に無防備な
が低調であり,目的を達していない母集団は,
アナルセックスの恒常的増加を報告している 1)。
HIV疾患と共に生きる人々である。今や,この個
この高リスクの性行動に伴って,直腸性淋病と早
体群こそが,そこに属する人々自身のための,ま
期梅毒発生率の増加が起こっている(図1)。実
た重要な保健施策としての介入が対象とする非常
際に,梅毒の流行が多くの都市で現在みられてい
に重要な母集団であることが認識されている。
る。Colfaxらは,HIV感染患者における高リスク
過去 6 年間にわたるHIV罹患率および死亡率の
行動の予測子に,実際に直近のクリニック受診の
低減における強力抗レトロウイルス療法の成功の
際に血中HIV-1 RNA濃度がアッセイ検知限界以
結果として,より多くのHIV疾患患者が,より長
下であった場合(オッズ比9.3)と同様に,「検出
期間,改善された健康状態で,安らぎを感じ,活
不能」の血中HIV-1 RNA濃度は伝染のリスクを
力を得て生きるようになった。これらの便益は,
低下させる(オッズ比5.9)という確信があるこ
del Rio, Carlos, M.D.: New challenges in HIV care: prevention among HIV-infected patients.
*
Associate Professor of Medicine at Emory University School of Medicine, Chief of the Emory Medical Service at Grady
Memorial Hospital, and Associate Director for Clinical Sciences and International Research of the Emory Center for AIDS
Research in Atlanta, Georgia, U.S.A.
**
当論文は,International AIDS Society-USA (IAS-USA)が発行する機関誌に掲載された論文を本誌掲載に際して内容を改
訂したものである。IAS-USAの承諾を得て,翻訳のうえ転載した。del Rio, C: New challenges in HIV care: prevention
among HIV-infected patients. Topics in HIV Medicine 2003;11(4):140-44.
55(443)
図1
Medical Postgraduates Vol. 41 No. 6 2003
サンフランシスコにおける男性の同性間性的接触者(MSM)の高リスク性交率(上)と性感染症
(直腸性淋病および初期梅毒)の症例(下)
(Chen et al, XIV Int AIDS Conf, 2002)
。
とが含まれていると報告している2)。
したがって,いまやHIV感染母集団における予
カウンセリングと検査を通じて,自らが感染して
いることを知っている患者の比率を,現在の70%
防対策に注目が高まっている。当母集団における
から2005年までに95%まで引き上げること,(2)
HIV予防に関する枠組みを含む 2 つの公衆衛生に
適切なケア,予防施設,および治療施設と連携し
関する提唱が,米国疫病予防センター(CDC)
ている感染患者の比率を,現在の50%から2005年
の以下の文書,『2005年までのHIV予防戦略計画
までに80%まで引き上げることである。その戦略
(HIV Prevention Strategic Plan Through 2005)』
計画の一端として,CDCはSAFE(Serostatus
(www.cdc.gov/nchstp/od/hiv_plan/default.htm),
Approach to Fighting the HIV Epidemic)戦略
及び米国医学研究所の『No Time to Lose: Getting
を展開している3)。この戦略には,以下の努力を
More Out of HIV Prevention』(search.nap.edu/
要する。
books/0309071372/html)に示されている。CDC
によって明記された,HIV感染母集団における予
防戦略に関する 2 つの重要な目標は,(1)自発的
(1)HIVと共に生きる人々のための予防施設の
利用可能性を向上させること
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(2)HIV感染患者におけるHIVおよび性感染症
56(444)
予防対策に対する障壁
(STD)のリスク評価を実施するための医療関係
効果的なリスク低減における主要な問題は,多
者を教育すること
(3)医療従事者による,HIV感染患者向けの予
くの医療関係者が予防を優先しないことである。
Marksらは,カリフォルニア州の 6 つの公立HIV
防メッセージの通知回数を増加すること
クリニックの839名のHIV感染男女患者に,医療
リスク低減カウンセリングは役に立つか?
関係者が,より低リスクのセックスあるいはセッ
クスパートナーにHIVの状況を打ち明ける必要性
リスク低減カウンセリングが功を奏している証
を話し合ったか否かに関する横断調査の所見を報
拠がある。例えば,Johnsonらによって報告され
告している9)。開示の話し合いは,回答者の50%
たメタアナリシスでは,カウンセリングがMSM
で報告されており,より低リスクのセックスにつ
間での無防備なアナルセックスの26%の低下をも
いての話し合いは,71%で報告された。MSMは,
たらした 4)。 Prendergastらは,カウンセリング
より低リスクのセックスについて話し合ったと報
が,静注薬物常用者におけるリスク低減能力の
告している異性愛の男性の恐らく半数であった。
30%の増加と,性的リスク行動の16%の低下をも
可能性のある説明は,多数の医療関係者が,
5)
6)
たらしたことを報告している 。Kambら ,およ
びShainら
7)
は,教訓的カウンセリングが淋病と
クラミジア感染率を有意に低下させたが,最初の
MSMは,既にリスク低減の方法を知っており,
そのため何らのカウンセリングも必要としなかっ
たと考えていたことである。
カウンセリングから 6 ∼12カ月の間の介入効果が
臨床医による予防介入の実施に対する障壁に
低下していることは,多くの患者にとって「起爆
は,セックスおよび薬物関連リスク行動に関する
薬」的カウンセリングが必要なことを示唆してい
訓練もしくは知識の欠如,セックスおよび薬物濫
ると報告している。米国国立精神衛生研究所
用の問題を話し合う際の技量不足もしくは話し合
(NIMH)の多施設HIV予防試験(Multisite HIV
いに対する気後れ,患者がリスクにあることの認
Prevention Trial)は,行動カウンセリング介入
識の欠如,患者のリスクまたは介入実施を評価す
群に属する高リスク行動の患者が,12カ月のフォ
る標準手法の欠如,介入企図が成功しないであろ
ローアップにわたってこのようなカウンセリング
うとの思い込み,および時間と資源の制約などが
を受けなかった患者よりも,無防備な異性との出
含まれている。さらに,多くの臨床医は,治療遵
会いが少なく,コンドーム使用率の増加と,より
守,薬物毒性,検査室モニタリング,および健康
徹底したコンドーム使用を報告していることを示
維持の問題をHIV血清陽性患者と話し合うには忙
8)
した 。Kambらによって報告されたProject Res-
し過ぎて,予防問題を話し合うにはわずかな時間
pect研究は,STDクリニックでのカウンセリン
しかないと感じている。しかし,かなりの数の研
グが, 6 カ月のフォローアップでコンドーム使用
究は,患者が臨床医を予防―たとえば運動推進,
の増加とSTDの発現頻度の低下をもたらしたこ
禁煙,冠動脈疾患リスクの低減などの状況におけ
6)
とを報告している 。しかしながら,この領域で
る,信頼出来る情報源と考えていることを示して
の多くの研究が抱える問題は,一般の医療関係者
おり,したがって,臨床医は,予防に優先順序を
よりもむしろ専門化したリスク低減カウンセラー
与えて患者と接する時間の一部としなければなら
をカウンセリングに採用しており,適用された介
ないことを示している。
入はかなり徹底した処置であったことである。最
CDCが実施した「抗レトロウイルス療法評価
も頻繁に患者と接触する一般の医療関係者にとっ
研究(Antiretroviral Treatment and Access
ては,定期的患者訪問の枠組みの中にカウンセリ
Studies, ARTAS)」プロジェクトは,HIV診断後
ングの効果的書式を導入するのがより良いのだろ
の治療連携を向上させるための症例管理アプロー
う。
チの利用を評価する多施設比較対照介入試験
(multicenter controlled intervention study)で
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ある。この研究の一環として,予防カウンセリン
び梅毒)に関する検査は,性的に積極的な患者の
グ実践に関する質問項目が含まれた調査が,アト
場合,少なくとも年 1 回実施されるべきである。
ランタ,ボルチモア,ロサンゼルス,およびマイ
CDC,米国保健資源事業局,米国国立衛生研究
アミ在住のHIV医療関係者に送付された。この調
所(NIH),および米国感染症学会は現在,HIV
査の所見は,予防介入の向上において直面する多
医療環境にHIV予防を導入するための共同推奨を
くの問題を指摘している。コンドーム使用,安全
最終的に承認するところである。これらのガイド
な静注習慣,ならびにHIV開示といったリスク低
ラインは,4 つの基本的優先事項を反映している。
減カウンセリングが,診断の確立した患者より,
むしろ新規に診断された患者と,より一般的に話
し合われていた。しかしながら,リスク低減カウ
ンセリングは, 3 分の 2 以下の医療提供者で定期
10)
的に提供されていた 。さらに,リスク低減カウ
(1)リスク行動とSTDに関するスクリーニン
グ
(2)患者に対して,全般的かつ個別のリスク低
減メッセージの提供
ンセリングは,HIV担当医が医師助手,看護関係
(3)必要な場合には,追加のリスク低減サービ
者,あるいはその他の非医師職員の場合,担当医
スとその他のリスク低減に影響を及ぼす可能性の
がラテン系アメリカ人の場合,および担当医が診
あるサービスに関する患者への紹介
断の確立した患者と少なくとも31分間を費やして
いる場合に提供されている傾向が強い。全体的に
(4)患者が,カウンセリングパートナーと紹介
施設の提供を受けることの保証
見て,担当医によって低リスクのセックスを実践
している患者の明らかにされた割合は低かった
HIV医療担当医が予防において担うべき役割を
(担当医の18.4%について 0 %∼25%,16.3%につ
完全に認識するには,クリニックまたは診察室を
いて25%∼75%,29.8%について76%∼100%)。
受診することが,患者にとってHIV感染予防に関
予防カウンセリングにおける下位専門分野の訓練
する教育を提供することが可能な人物と接触する
の効果に着目した副次研究は,学会から認定され
唯一の時間であるかも知れないことを強調する必
た感染症専門医が,感染症専門医でない担当医よ
要がある。どの形式の介入戦略が最適かというこ
りも,コンドーム使用,リスク低減,および薬物
とは正確には不明のままであるが,カウンセリン
濫用カウンセリングを提供することが有意に少な
グは支えとなるもので,懲罰的ではなく,個別的
11)
いことを示している (図2)
。
であり,目的志向で,規則正しい間隔で繰り返さ
れるものであることが望ましい。動機付けのある
予防におけるHIVケア担当医の役割
面接技術に基づいた魅力的で将来性のあるアプロ
ーチが,NIMH-Options Projectにおいて評価さ
HIVケア担当医には,STDとリスク行動の存在
れている。このアプローチでは,介入グループの
に関する患者評価,およびリスク低減カウンセリ
臨床医は,各臨床受診毎に以下のような発言から
ングを提供することによって,HIVおよびSTD伝
なる動機付け面接技法を用いる。「さて,あなた
播を予防する際の明確な役割がある。STDは,
の薬物療法については話し合いを終えましたが,
STDの存在がHIV感染の獲得と伝播のリスクを増
あなたのセックスと薬物使用行動に関して幾つか
大することを意味するHIVとの疫学的相乗効果を
質問したいのですが…。リスク行動を減らすこと
与えられていることを示している。『CDC性感染
がいかに大切か,あなたはこれが出来るとどれだ
症治療ガイドライン2002
(CDC 2002 STD Treat-
け確信していますか」。患者は,数字の尺度でこ
ment Guidelines)』(MMWR, 2002)12)は,すべ
れらの質問に対する答えを示すことが出来る。次
ての新規診断HIV感染患者が,淋病,クラミジア
いで臨床医は,「それでは, 5 から 7 へ移動して
感染,B型およびC型肝炎ウイルス感染,および
みましょう」といった発言で答えることが可能で
梅毒について検査を受けることを推奨している。
あろう。アプローチには,臨床医が患者に「薬局
治癒可能なSTD(淋病,クラミジア感染,およ
でコンドームを買いなさい」といった指示を患者
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図2
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米国疾病予防センター(CDC)実施の「抗レトロウイルス療法評価研究(ARTAS)」の臨床医母
集団における感染症専門医(ID)と非感染症専門医(非ID)間のリスク低減カウンセリングの実施
率(Duffus et al, Clin Infect Dis, 2003)。
に提供するために処方箋用紙を利用する「予防処
は,種々の研究で報告されている。患者を医療に
方」の適用も包含される。当研究の完全な成果は,
留めておくことの困難性は,例えば,血清陽性と
来年まで利用出来ないが,予備的データには心強
して最初に検査を受けた後,HIV感染患者の27%
いものがある13)。
が1年以上,12%が 2 年以上もの間診療を受ける
HIV感染患者のリスク低減におけるその他の優
のが遅れたことを示した1994年の研究によって例
先事項には,例えばHIV検査と医療の利用を拡大
示されている14)。いったん医療を必要とする場合,
することで,これらの患者をより多くリスク低減
多くの患者は彼らの医療環境としてクリニックよ
教育が提供されうる環境に持ち込むことが含まれ
りはむしろ救急科を利用する。例えば,アフリカ
ている。この点に関して,患者をケアに引き入れ
系アメリカ人とラテン系アメリカ人,貧困者,お
てそこにとどまらせるための代替モデルが必要と
よび心理的満足感が低い患者は,一般的なHIV疾
されている。このような努力の 1 つは,「移行セ
患症状と関連した受診に,クリニックよりは救急
ンター(transition center)」の開発を伴うAtlanta-
科を利用する傾向があることが示されている 15)。
based Grady Memorial Hospital感染症計画にお
さらに,ケアを受けている多数の患者は,抗レト
いて着手されている。このセンターは,定期的医
ロウイルス療法を継続しておらず, 1 つの研究に
療連絡が維持出来ない,またはしない人々が,社
よれば,女性と静注薬物濫用者は,他の患者より
会的機能体系に属さない彼らの生活とかみ合うよ
も抗レトロウイルス療法を処方されている可能性
うな,かなり不統一な方法で医療を利用出来るよ
が高くないことを指摘している16)。いったん抗レ
うな場所を提供する。この計画から得られた予備
トロウイルス療法が処方されると,都市部のクリ
的データは,このアプローチが患者の医療への連
ニックの患者の多くは,ウイルス学的失敗の最も
携を維持するのに役立つかも知れないことを示唆
重要なリスクファクターである診察予約を忘れる
している。口腔HIV検査の可能性も,新規患者と
ことで,期待されるウイルス学的応答を得られて
彼らのパートナーの感染状態の迅速決定と,医療
いない17)。
への即座の連携を可能にする能力にある程度の効
果を持つことを約束している。
医療利用の向上と患者を医療に留めておく挑戦
医療に対する不適切な連携のリスクの幾つか
は,アトランタで進行中の研究の予備的所見で指
摘されている。ケア中(規則的受診者)のHIV感
59(447)
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結 論
染患者と非ケア中の患者(非受診者)の比較は,
非受診者が過去 6 カ月のクラックコカインの使用
頻度がより高く(53%対13%),経膣セックス
HIV感染患者に対する全般的予防メッセージは
( 7 %対60%)およびアナルセックス( 7 %対
明瞭である。HIV感染患者は,彼ら自身と他者を
20%)での規則的コンドーム使用率が低く,HIV
新たな感染から守るため,安全なセックスと,そ
感染者との性的ならびに薬物接触がより高率
の他のリスク低減対策を実践すべきであり,また,
(53%対13%)であったことを示している。非受
彼らは彼ら自身の利益と,他者に感染する可能性
診者では,27%が過去に抗レトロウイルス療法を
がある耐性ウイルスの発現を予防するため,抗レ
処方されていたが,もはや療法を受けておらず,
トロウイルス療法を遵守しなければならない。
耐性ウイルス感染の懸念が起きている。
HIV医療環境は,リスク評価と予防カウンセリン
グのため望ましい配置を提供する。これらの環境
抗レトロウイルス療法における問題
でリスク低減カウンセリングを行うための最適戦
略を定義するには,さらなる研究が必要とされる。
血中HIV-1 RNA濃度を引き下げることで,強
力抗レトロウイルス療法はHIV感染低下のために
しかしながら,幾つかの基本的推奨事項を実行す
ることは可能である。
利用可能な最も効果的な医療介入かも知れない。
血中HIV-1 RNA濃度の最適抑制の維持には,厳
1 )医師とその他の医療関係者に対するリスク
格な服薬遵守が不可欠である。高率の高リスク行
低減カウンセリングに関する訓練が,もっと利用
動が,抗レトロウイルス療法に対するより低い服
可能になるべきである。
薬遵守の患者間で報告されており,耐性ウイルス
2 )患者と予防対策を話し合うため,標準的な
感染に関する潜在的可能性の増加を示唆してい
診察室/クリニックでの受診において,より多く
る。事実,最近感染した患者における高レベルの
の時間が割かれるべきである。
抗レトロウイルス耐性の罹患率が,1995年∼1998
3 )患者に対する予防カウンセリングを提供す
年の3.4%から,1999年∼2000年の12.4%に上昇し
る紹介先と他の治療戦略の適用は,臨床実践を通
ている18,19)。さらに,HIV重感染がヒトにおいて
じて最適化されるべきである。
可能性があることが知られており20,21),これら既
謝 辞
感染者における薬剤耐性ウイルス感染に対するさ
らなる懸念が生じている。
当研究は,CDC協力合意番号CCU417657-04からの一部
援助,並びにRO1-DA13895を通じてのNIHよりの助成金
を受けたものである。
本稿は,2003年 3 月に口演された内容を, Matthew
Stenger が原稿として起こし,その後,2003年6月にDr.
del Rioによって加筆訂正が加えられたものである。
参 考 文 献
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[本論文のオリジナル論文(英文)のコピーを希望される方は,本誌編集部までご請求ください]
感染症法に基づくエイズ患者・感染者情報
(厚生労働省「エイズ動向委員会報告」より抜粋)
●2003年 3 月31日∼2003年 6 月29日までの集計データ
1 .AIDS患者の報告数:2,705件(前回報告より81件増加)[2003年 6 月29日現在]
2 .HIV感染者の報告数:5,421件(前回報告より135件増加)[2003年 6 月29日現在]
3 .累積死亡者数*:1,284名(前回報告より 2 名増加)
[2003年 6 月29日現在]
●凝固因子製剤による感染者数:1,432名[2002年 5 月31日現在]
*累積死亡者数に関しては,「委員会報告」に明示されていないため,前回の集計データより算定した。
これらの統計データの詳細は,国立国際医療センター/エイズ治療・研究開発センターのホームペー
ジhttp://www.acc.go.jp/center/inf_frame.htm もしくは,エイズ予防情報センターが提供する「エイ
ズ予防情報ネット」のホームページ http://api-net.jfap.or.jp/ にてご覧頂けます。
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