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欧州の風力発電の現状

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欧州の風力発電の現状
情 報 報 告
ウィーン
欧州の風力発電の現状
欧州の再生可能エネルギーの様々な部門の発展の監視を行うコンソーシアムである
EurObserv’ER が発行した風力発電に関するレポート『WIND ENERGY barometer –
EUROBSERV’ER – February 2015』を以下に報告する。
風力発電の現状
~EurObserv'ER バローメータ~
1.はじめに
2014 年の世界的な風力発電市場は、昨年の低迷の後、急増し新記録を樹立した。
37GW 足らずであった 2013 年と比べ、52GW 以上の容量が世界各国に建設された。世界的
な風力発電量は 2014 年に 41.4%と大きな飛躍を遂げ、設備容量は 371GW 以上を樹立した。
2014 年の欧州及び世界における風力発電に関する主要な数値は以下のとおり。
・2014 年欧州における総風力発電容量の成長率は 10.1%
・2014 年に設置された世界の風力発電容量は 52.1GW
・2014 年欧州に設置された風力発電容量は 12.4GW
20 年未満の調査及び技術革新の中で、風力発電は新発電容量を構築するための最も人気
のある技術の一つとなっている。陸上風力発電は現在、世界の電力ミックスの大部分を供
給できるほど成熟し、競争力があり、信頼できる技術であると見なされている。同様の研
究開発の努力は洋上風力発電部門に投資されており、今後 10 年以内に競争力のある結果を
提供することが期待されている。
2.世界中に設置されている 52GW を超える風力タービンの設備容量
最初に、2014 年に世界中に設置されている風力発電容量は 52,129MW であると推定され
(表 1-1 及び図 1-1 参照)、現在までには設備容量合計は 371,191MW となっている。
アジア及び欧州市場、またアメリカ市場の回復による良好な実績はこの世界市場での急
激な上昇の原因である。各国に主な風力電力のインセンティブシステムの急激な遅れが広
がった結果として、米国市場が急落した。その時は運悪く 2013 年であった。
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情報報告 ウィーン
表1-1
2014年末における世界の風力発電容量(MW)
(MW)
(MW)
2014 年の
設 備 容量 (MW)
2014 年の
廃止容量(MW)
出典:WIND ENERGY barometer – EUROBSERV’ER – february 2015、EurObserv'ER
年
出典:WIND ENERGY barometer – EUROBSERV’ER – february 2015、EurObserv'ER
図1-1
1995年からの世界の累積風力発電容量(MW)
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情報報告 ウィーン
2013 年にアジアは最も多くの風力発電市場を持ち世界の新設容量の内、約半分(50.2%)
を自国で保有していた(図 1-2 参照)。欧州は北アメリカ市場の 13.9%に次いで、まだ世界市
場の内 4 分の 1 以上(25.8%)を占めている。市場に浮上中の南アメリカ、アフリカ、及び
2014 年に統合された太平洋圏諸国の設備容量は増進され、現在は世界市場の内、それらの
国で 10.1%のシェアを保有している。現在の総設備容量はどうかと言えば(図 1-3 参照)、ア
ジアが風力発電施設の有数の設置地域として欧州を抜き、現在は 38.3%と、ヨーロッパの
36.5%の世界シェアを突破している。北アメリカはまだ 21%と 3 番手の位置である。
その他
ヨーロッパ
アジア
北アメリカ
出典:WIND ENERGY barometer – EUROBSERV’ER – february 2015、EurObserv'ER
図1-2
2014年の世界の風力タービン市場の内訳
その他
ヨーロッパ
アジア
北アメリカ
出典:WIND ENERGY barometer – EUROBSERV’ER – february 2015、EurObserv'ER
図1-3
2014年までの世界の風力タービン市場の累積内訳
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情報報告 ウィーン
3.表彰台の中国、ドイツ、及びアメリカ
トップ3の風力発電市場はまた所属する大陸での最たる経済国でもある。世界風力エネ
ルギー会議(GWEC)の年次報告では中国は援助なしで暫定値として 23351MW の容量を設
置し、ほぼ 45%の世界シェアを達成している。ドイツはまだ 2 番手である。ドイツ環境省
のワーキンググループ(AGEE)の統計では暫定的に 2014 年に約 6187MW の新しい設置記録
が発表された。3 番手のアメリカは、生産税控除を遅ればせながら延長したにもかかわらず、
昨年の 12 カ月間にさかのぼり 2014 年の終わりに投票を行い、2014 年に以前の形態を発見
した。
米国風力エネルギー協会(AWEA)は 2014 年における米国の設置容量は 4854MW であり、
その内 3597MW は最終四半期に設置されたものであると主張した。その数値は 2013 年の
4倍以上であるが、2012 年の実績である 13,000MW と比べると見劣りする。さらに初めて
このように目印となる先例を設定することで、新しい再生可能資源由来の発電容量はガス
火力発電所の容量を上回った。連邦エネルギー規制委員会(FERC)は 2014 年の報告で、ガ
ス火力発電所は発電量 7,663MW の内 48.7%を占めるのに比べ、再生可能エネルギーは
49.8%を占めると述べている。風力発電所の設備容量への寄与は、その内の 4 分の1以上
にあたる。
4.ドイツの健闘に感謝
EU 電力部門の危機がありながらも、EU は 2012 年の新風力発電施設の設置実績を改善
することができた。しかし、その傾向は設備容量の着実な増加を示すものではなく、2012
年から、12GW の実績付近を漂っている。本記事では 2014 年に 12442.9MW の設備容量が
導入され、約 463MW が廃棄されると見積もっている(表 1-2 参照)。2014 年末までには、
EU の風力発電総量は 130GW を超え 130,389.4MW に到達した。2014 年のドイツ市場の
高まりはヨーロッパ市場の減速を覆った。しかし、英国エネルギー・気候変動省(DECC)が
示す数値では、1 月では不完全であり、イギリス市場の 2014 年の実績は洋上風力発電によ
り支えられたものの、低下したように思われる。
中欧市場では、予期したように、2014 年は幾分単調なものであった。2013 年に、共に1
GW の容量に到達したポーランド及びルーマニア市場は、互いに約 440MW を導入したこ
とにより最終的には下落した。100MW を少し超えた導入量であるイタリア市場では、ほぼ
停止状態であり、30MW 以下の導入量であるスペインとほぼ同様である。対照的に、スウ
ェーデン及びフランス市場は首尾よく1GW の敷居を超えた。他に良い実績を残した国と
してはオーストリア、アイルランド、ギリシャが挙げられる。
2013 年から 2014 年の間にランキングは変化した。デンマークがまだ国民千人当たり
862kW の容量を持ちランキングの首位にいる一方、現在スウェーデン(562 kW/k inhab.)
及びドイツ(501 kW/k inhab.)が後続に続いている。スペイン(494 kW/k inhab.)はアイルラ
ンド及びポルトガルに追いやられ、四番手に降格した。フランスはこの基準では(145 kW/k
inhab.)で EU 内で 15 位にランク付けされている(図 1-4 参照)。
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情報報告 ウィーン
表 1-2
2014 年末に EU に設置された風力発電容量(MW)
2013 年の
累積容量 (MW)
2014 年の
累積容量 (MW)
2014 年の
設 備 容量 (MW)
2014 年の
廃止容量 (MW)
注記:2014年第3四半期までの暫定数値、フランスの海外県は含まず。
出典:WIND ENERGY barometer – EUROBSERV’ER – february 2015、EurObserv'ER
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情報報告 ウィーン
出典:WIND ENERGY barometer – EUROBSERV’ER – february 2015、EurObserv'ER
図1-4
EUにおける住民1000人あたりの風力発電容量(kW)
5.EU が 10GW の洋上設備容量を持つのもそう遠くはない
洋上風力発電は 2014 年の設置実績を打ち破っただろうか。その答えは指標によるもので
あり、設置した風力タービンが稼働するよう準備をしたか、或いはグリッドに接続されて
いるかによる。接続インフラの設置の遅れのため、ドイツの洋上風力発電タービンの大部
分が接続を待っており、今ではそのギャップは大きくなっている。
EurObserv’ER は市場を公平に見るため統計へ、このグリッドへの接続を待っている容量
も含んでいる。この基準では、EU の年々の洋上風力発電容量は 2013 年の 1819MW の増
加と比べ、2014 年は少なくとも 2250MW 増加している。これにより EU 内に設置された
洋上発電容量は 2014 年末までには 9243MW に達する見込みであり、EU の総風力発電容
量の 7.1%に相当する。
EU 諸国の内、ドイツ、イギリス、ベルギーの3国のみが 2014 年洋上風力発電容量を追
加した。イギリスは 12 カ月に渡り最も多くの洋上風力発電容量を接続した一方で、ドイツ
は洋上風力発電施設数でトップである。AGEE-Stat’s の暫定数値によると、ドイツの洋上
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情報報告 ウィーン
風力施設設置の実績は 1437MW 増加し、同国の総量を 2340MW とした。
“ヨーロッパの洋
上風力産業”
と題された 2015 年 1 月発行の欧州風力エネルギー協会(EWEA)の報告書では、
風力タービンを設置しただけの風力施設と、グリッドに接続しているものとを区別してい
る。
ドイツは現在 2 つの風力プラントを完全にグリッドへ接続しており、the DanTysk,
Global Tech 及び Nordsee Ost wind farms のタービンは部分的に接続されている。それは
イギリスの場合、DECC が公表した公式データは、2014 年の第3四半期までをカバーした
ものとなっており、不完全である。またそのデータでは 724MW の洋上風力容量追加して
おり、合計では 4,420MW となっている。EWEA の報告はイギリスの総容量として
4494.4MW が 2014 年グリッドへ接続された。イギリスは West of Duddon Sands と Methil
Demo の洋上風力施設を完全にグリッドへ繋いでおり、Gwenty Môr and Westermost wind
farms を部分的に繋いでいる。ベルギーは 2014 年に洋上風力タービンを設置し Northwind
風力発電所をグリッドへ完全に繋ぎその総容量は 712MW となった。
6.EU の風力タービンは 2014 年 247TWh の電力を生産
EU の 設 備 容 量 の 増 加 は 自 然 に 電 力 の ア ウ ト プ ッ ト の 上 昇 に 繋 が っ て い る 。
EurOb-serv’ER の利用可能データでは 2014 年にアウトプットは 5.3%上昇し 247 TWh と
なった。これは南ヨーロッパの風力条件が非常に好ましかった時、つまり昨年と比較する
と非常に遅いペースである。それにも関らず、EU の各種の電力の内、風力発電量のシェア
は総化しており、2013 年の 7.1%の電気消費量と比べ 7.5%はあるべきである。EU での優
れた風力発電国はドイツ(56 TWh)、スペイン(51.1 TWh)、及びイギリス(31.5 TWh)である。
7.ドイツのエネルギー転換は新しい段階へ
ドイツの風力電力は拡大し新記録を樹立した。AGEE-Stat によると、6187MW の容量が
2014 年に設置され、内 1437MW が洋上風力電力であった。もし廃棄された容量(391 MW)
を考慮に入れると、ドイツの総電力容量は 40456MW にのぼる。この増進は事業者が 2014
年 8 月 1 日に発効した再生エネルギー法の改正発表前に、可能な限りの風力タービンを設
置しようとした結果であることは疑いの余地がない。
500kW を超える施設の電力の保証売買価格は廃止され 2012 年からの随意の直接販売に
加えて、市場のプレミアムシステムが現在は主流である。新しい法はまた、年間の設置容
量を 2400MW~2600MW の幅にすることにより将来の陸上風力発電の発達を制限してい
る。更に、新法は洋上風力発電容量の設置目標を 2020 年までに 6500MW、
2030 年までに 15000MW と、その規模を縮小している。直接市場販売システムは生産手
法の競争力を向上させる一方で、再生可能エネルギーの電力生産市場への統合を容易にす
ることを目的としている。
その手順はシステムの要求事項を満たし、グリッドへの接続をより柔軟にさせる予測・
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情報報告 ウィーン
統合技術設備管理システムの正確性を改善することにより、高貴な行いを採用することを
推奨されている。この手順条件のもとでは、風力発電事業者(或いは売電事業者)はアウトプ
ットとなる電力の販売に関して責任を負う。バランスを保つために事業者は事前に一日の
生産予測を保証し、電力市場の需要と供給の調製手法から生じるコストに貢献する義務が
ある。義務を履行するために障害が生じた場合、グリッド管理者は電力事業者へ必要な調
整を要求する。市場で電力を販売することに加え、再生可能電力販売者は設備固有の固定
価格買取制度(FIT)と EPEX(European Power Exchange)のスポット取引における平均月額
の差が、マーケットプレミアムの手法により払い戻される。追加の管理費用は直接販売(予
測、マーケティングコスト等)により発生したコストを払い戻す。
新しい再生可能エネルギー法(EEG)は裁判の申し出の可能性を受け、遅くとも 2017 年に
はドイツで入札制度を開始する規定といった、他の要素を導入する。同国は入札手続きを
経て他のヨーロッパ諸国への支援メカニズムの開放を計画しており、これにより外国市場
への年次容量の 5%まで広げる。
8.フランスの風力発電の反騰
4 年に渡る減退の後、2014 年グリッドへ接続された設備容量は大きく飛躍を遂げ、1GW
を超えた。フランスの風力発電は、1042MW に到達し、現在では 9285MW の総量に相当
する。
協会はこの進歩をより前向きな政策のためとしている。法的な固定価格取引制度を確保
する、及び Brottes Law(2013)を採用し、風力開発区(ZDE)と風力発電施設建設のための 5
本の柱となる敷居を廃止する、といったいくつかの重要な措置が講じられている。これら
の法的な簡易化は事業をうまくいくよう促進している。
風力発電を支援しようとする政治的な意思が明白である一方、フランスの部門は 2016 年
1 月 1 日に市場販売基本システムのための保証された固定価格取引制度を廃止するという政
府の計画を懸念している。フランスの風力発電では投資家の信用を保証し更なる発展を奨
励することは固定価格買取制度(FIT)を保持していく上で欠かせないとしている。
事業者は、電力市場の構造とそのプレイヤーの役割が、欧州委員会により決定した再生
可能エネルギーの刺激メカニズムの統合が進行中のため、またはフランスは風力発電のた
め野心的な目標を抱いているため、大きく変化していることに気づいている。しかしなが
ら、もしその新システムが適切に機能するならば、FEE は電力市場は最初に改革されるべ
きであり、それには時間がかかるであろうと考えている。
9.差金決済取引予算の上昇
もしイギリスが EU 市場で2番目の風力発電規模を保持しようとするなら、2.14MW を
グリッドへ接続した 2013 年の実績を改善しなければならないだろう。1 月末に公開された
DECC の部分統計データ(2014 年の第3四半期データ)では、1266MW(541MW は陸上風力
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発電、725MW は洋上風力発電)が接続されたことを示している。第3四半期では洋上風力
発電の設置数は陸上風力発電の設置数を追い越した。新しい差金決済取引(CfD)の報奨シス
テムは段階的に取り入れられている。システムから利益を得るために最初の新しい契約割
当は 2015 年 1 月末に発表された。
潜在的に成功した企業は名が付き、今月の入札の提出が出来る。これらの入札総予算は、
イギリス政府が洋上風力発電のような発展途上の技術への割当金を 2 億 6000 万ポンド、す
なわち、計画より 2500 万ポンド多い金額の増加を決定したため、3 億 2500 万ポンド(4 億
3900 万ユーロ)へと上昇した。
陸上風力発電のような成熟した技術と太陽光発電技術は 6500 万ポンドが割当てられるだ
ろう。これはイギリス政府が差金決済取引入札の予算割り当てを増加させて 2 度目となる。
昨年の 10 月、DECC は予算を 2 億 500 万ポンドから 3 億ポンドへと引き上げた。風力発
電の保証価格は陸上風力発電では 95 ポンド/MW 時、洋上風力発電では 155 ポンド/MW 時
となるだろう。これらの保証価格は 90 ポンド/MW 時及び 140 ポンド/MW 時へと、2018
年から 2019 年にかけての税制年度の開始から徐々に下降するだろう。
表 1-3
EU での 2014 年末における洋上風力発電容量(MW)
注記:2014年第3四半期までの暫定数値、フランスの海外県は含まず。
出典:WIND ENERGY barometer – EUROBSERV’ER – february 2015、EurObserv'ER
10.イタリアはスペインの足取りをたどるだろうか
イタリア市場はこの 2 年で文字通り崩壊した。イタリア風力発電協会(ANEV)は 2012 年
1200MW 以上の容量が設置された一方、市場の取組みは 2013 年には 450MW へ、更に 2014
年には 107.5MW へ落ち込んだ。風力発電の成長を抑止しようとするイタリア政府の決定は、
この落ち込みに対し責任がある。その策略は、5MW を超える 2015 年までの 500MW の陸
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情報報告 ウィーン
上風力発電の年間設置数を超えると同時に、2012 年末に入札システムを設定することであ
った。このようにして、2014 年の結果は電力部門の期待を打ち砕いた。2015 年 1 月中旬
に、2016 年から 2020 年にかけての年間割当量の設定に関する法令の公表をまだ待ってい
るため、現在電力事業者は幾分懸念している。イタリア風力発電事業のこの急激な減速は、
再生可能電力生産のためのインセンティブを削減する 2012 年1月のスペイン政府の決定を
強く連想させる。
表 1-4
EU での 2014 年末における風力発電からの電力生産量(TWh)
出典:WIND ENERGY barometer – EUROBSERV’ER – february 2015、EurObserv'ER
11.電力のキロワット時当たりの生産コストへの新たなアプローチ
仮に一般的に危機に結合した電力生産部門の背景を認めるにしても、従来の生産設備(ガ
ス、石炭、原子力)からのより低い利益に直面している多くの電力経営者は、再生可能電力
のアウトプット、特に風力発電で増加が続くと危機感を強めている。このために行き詰っ
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情報報告 ウィーン
ている全ての当事者は政策立案者の機嫌を伺おうとしている。風力タービン製造者、特に
洋上部門での製造者は近年のこのロビー活動の結果として成長の見通しは先細りしている
と感じている。
風力発電産業は現在様々な部門の電力生産コストを比較するのに使用される指標の妥当
性を議論している。2014 年 12 月に欧州委員会の委託により Ecofys(オランダのコンサル会
社)が発表した“補助金と EU 電力のコスト”と題された研究をベースとして、EWEA は陸
上風力タービンで発電した電気は空気の質、気候変動、人間への有毒性及びその他の外部
要因を考慮した際、最も価格競争力があることを実証しようと試みている。この報告の分
析から、EWEA は陸上風力発電は概算の総コストが 105 ユーロ/MWh であり、ガス発電(164
ユーロ/MWh)、石炭発電(163~233 ユーロ/MWh)及び原子力発電(133 ユーロ/MWh)と比較
し非常に安価であると結論付けた。
洋上風力発電のコストは 186 ユーロ/MWh と見積もられているが、これを劇的に減らす
非常に良い方法がある。皮肉にも、もし全ての外的要因が考慮されるなら、石炭つまり、
欧州で発電に種として使用される燃料が最も費用がかかるものの内の一つだと判明した。
コストへの新たなアプローチの実施に関するこの議論はまた、シーメンス、洋上風力発電
でのヨーロッパ及び世界のリーダーに擁護されている。シーメンスによると、様々な分野
の製造コストを比較を要求する均等化発電コスト(LCOE)の使用は、種々の分野の費用便益
比をマクロ経済規模に反映していない。
理想的なエネルギーミックスの生産技術を選択する際、同社はより関連性の高い新たな
比較指標、つまり、社会発電コストを考慮した。均等化発電コスト(LCOE)は、発電所の耐
用年数の予測という点で、そのシステムのコストを表す。それはその生涯に渡って達成す
るであろう電気出力(kWh 数)で割ったシステムコスト(顕在化投資+運用コスト)に相当する。
シーメンスによって提唱された新しい指標、SCOE は、雇用上の技術、環境への影響、
補助金レベル、発展に必要なグリッドインフラ、調達コストの確保に起因する地理的な影
響、経時変化によるコストの変動、及び社会的な側面の影響といった全てのマクロ経済的
基準を考慮に入れている。
イギリスを例にすると、シーメンスモデルは洋上か陸上かに関係なく、風力発電の 2025
年までの予定に対する SCOE の予定が従来の SCOE コスト或いは原子力よりも非常に低い。
シーメンスが発表した計算では、洋上風力発電が 61 ユーロ/MWh、陸上風力発電が 60 ユ
ーロ/MWh、太陽光発電が 78 ユーロ/MWh、ガス発電が 89 ユーロ/MWh、石炭発電が 110
ユーロ/MWh、及び原子力発電が 107 ユーロ/MWh である。これらの数値はイギリスによ
って 2013 年に計算された現在の LCOE のコスト(洋上風力発電が 140 ユーロ/MWh、陸上
風力発電が 81 ユーロ/MWh、太陽光発電が 143 ユーロ/MWh、ガス発電が 60 ユーロ/MWh、
石炭発電が 63 ユーロ/MWh、原子力発電が 79 ユーロ/MWh)からかけ離れている。この研
究はイギリスの特定の電飾生産コスト(主たる洋上風力発電市場)を基準にしているという
ことを指摘されるべきである。
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2014 年末における現在までの
EU 各国の設備容量
2014 年の EU 各国の設備容量
2014 年の廃止容量
注記:2014年第3四半期までの暫定数値、フランスの海外件県は含まず。
出典:WIND ENERGY barometer – EUROBSERV’ER – february 2015、EurObserv'ER
図1-5
2014年末におけるEUの風力発電容量(MW)
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情報報告 ウィーン
表 1-5
2014 年における風力発電を含む主な開発者
企業名
国
2014 年末時点の洋上風力発電を
含む風力発電容量(MW)
年間売上高
(×100 万€)
2014 年度
従業員数
注記:2014年の9ヶ月間の暫定数値、及びその後の予測を含んでいる。1年の事業期間を反映したものではない。
出典:WIND ENERGY barometer – EUROBSERV’ER – february 2015、EurObserv'ER
12.より強力な風力タービンからの更なる収益
生産者が大局的に見て洋上風力発電の LCOE コスト水準を得ようとしている一方で、政
府及び開発者プレッシャーが非常に強くなっている。イギリス、ドイツ、オランダのよう
な洋上風力発電開発を行っているほとんどの国は奨励プログラムにて既に主要な値下げを
発表している。コストを早急に削減することは上で述べたように、洋上風力産業が生き残
るための課題であり、より強力なタービンの設置数を増加させることはこれを達成するた
めの主な策略である。
基礎と海底ケーブルが各マストをグリッドへ接続するのに必要なように、非常に高容量
のタービン(クラス 6,7 又は 8MW)によって発生したキロワット当たりの生産コストは同様
の合成容量を持つ複数の 3MW タービン又は 3.6MW タービンより潜在的に低い。タービン
メーカは現在より低コストの需要に応じてより強力なタービンを開発しており、いくつか
の製品は既に実験段階に来ており、今後すぐに市場に投入されるだろう。他のものはまだ
開発中であるが、既に確定注文を呼び入れている。
2014 年に 1 月にデンマークのウスタイル(Osterild)に設置された Vestas 社の V164 型出
力 8MW 試作型タービンは、現在設置されている洋上風力タービンの中でも最大出力を誇る。
これは三菱重工業(MHI)と Vestas 社の洋上風力事業の合弁会社である MHI Vestas 社によ
り開発された。他の 8MW の出力を誇る風力タービンは、Areva 社と Gamesa 社の共同開
発によるものである。このタービンの商業生産は 2018 年に予定されている。このタービン
は 2021 年にフランス沖のトレポー(500MW)と、Yeu 島と Noirmoutier の風力発電施設に
設置される予定である。
洋上風力部門の他の 6 又は 7MWの出力のタービンは試験を終え販売準備が進められてい
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情報報告 ウィーン
る。例として、7MW出力で世界最大の長さのタービンブレード(約 85 メートル)を持つサム
スン製 S7.0 171 型タービンは昨年 10 月にスコットランドの Fife Energy Park 内に設置さ
れた。
三菱重工業はまた、以前は Sea Angel 7 MW として知られる Vestas 社の MWT 167H/7.0
タービンと関連して、自社で 7MW出力の洋上風力発電用タービンを開発した。その風力タ
ービンは 2014 年 12 月末にスコットランドの Hunterston 試験場に設置された。それは 2015
年 4 月に就役する予定である。6MW出力のカテゴリでは、2014 年に設置された最大の容
量を持つ深海用風力タービンである Repower 社製の 6MW出力シリーズに注目している。
シーメンス社製の SWT-6.0 150 型の内、最初のタービンは昨年 8 月、北海の Westermost
Rough 洋上風力発電施設に設置され、他の 2 つはドイツの Wilhelmshaven 港近くに 2014
年末に試験目的で陸上に設置された。これらの情報を完全なものにするには、現在中国で
試験が行われている最大容量の風力タービンである Sinovel 社製 SL6000 型タービン、及び
フランスの Loire Atlantique で試験予定の Alstom 社製の Haliade タービンについてもま
た言及するべきである。
13.Dong Energy 社は改革に期待
最大の洋上風力発電所のディベロッパーである Dong Energy 社は 6MW及び大容量ター
ビンの第一人者の一人であることより、その分野における先駆者であることを主張するこ
とができる。同社は明らかに風力発電所の生産コストを現在最も収益性の高い風力発電所
の 125-140 ユーロ/MWh と比べ、 2020 年までに 100 ユーロ/MWh まで削減する照準を設
定している。これを行うために、2014 年から 2017 年にかけて 300 基の SWT-6.0 150 型の
風力タービンを配送する為 2012 年 7 月にシーメンス社と枠組契約を締結した。こうして、
洋 上 風 力 発 電 業 界 に 新 し い 風 潮 を 作 っ た 。 6MW 出 力 の タ ー ビ ン は イ ギ リ ス 沖 の
Westermost Rough 風力発電所(35 基 x 6 MW)と現在建設中のドイツ沖の Gode Wind 風力
発電所(97 基 x 6 MW)に配備される予定である。
2014 年 8 月に、Dong Energy 社は V164-8 MW 商用機 32 基の風力タービンの発注契約
を締結したことで新たな段階に入った。それらは Burbo Bank 風力発電所拡張プロジェク
トに充てられ、建設は 2016 に開始される予定である。最後に、2015 年 2 月、デンマーク
企業がパートナーである Smart Wind 社(Siemens Financial Service 社と Mainstream
Renewable Power 社の合弁企業)から、Hornsea プロジェクトの洋上風力発電所の全ての保
有開発所有権(66%)を買収した。
この買収は当初の予定よりも大容量の風力タービンを使用する機会を与えてくれる。こ
の風力発電所は 1GW(約 1200MW)の容量を超えるため、イギリス沖から非常に遠くに率先
して配置され、2020 年に送電が開始される予定である。
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情報報告 ウィーン
14.Senvion 社、10 億ユーロで売却
昨年の Areva 社と Gamesa 社だけでなく、Vestas 社と三菱重工業の合併に見られる洋
上風力事業者の合併、つまり風力発電業界の再編は 2015 年に入ってからも継続している。
2015 年 1 月 22 日、Suzlon 社はアメリカ民間投資会社の Centerbridge Partners LP 社に
Senvion SE 社の 100%の保有株式を売却する拘束力のある契約を締結したと発表した。
その取引金額は約 10 億ユーロ(720 億インドルピー)にのぼる。契約条件のもと、Senvion
社はインド市場での洋上風力技術に関する運転ライセンスを Suzlon 社に授与しており、
Suzlon 社はその交換として、米国市場での S11 型 2.1 MW 風力タービンの運転ライセンス
を提供している。その取引は監督官庁に受け入れられなければならない。Suzlon 社はその
債務を削減し、この動きに加えアメリカ及び新興国市場(中国、ブラジル、南アフリカ、ト
ルコ及びメキシコ)の高成長の理由として国内市場に集中する決意を上げている。
15.2020 年の新たなシナリオ
EU の長引く不況と重要な風力エネルギー生産国の規則不安定性は、EU 市場の成長率に
直接影響を与えている。そのため、メーカが在庫を取ることを余儀なくされており、新た
な成長のシナリオを検討している。
第一の主張:現在の電力消費の傾向は数年前に予測されていたものよりはるかに少ない。
この低消費は再生可能エネルギーのシェアに恩恵をもたらし、そのシェアを速く増加させ
ているだけでなくまた、より小容量の電力が 2020 年までに該当部門から要求されるであろ
うことを意味している。EU の風力発電容量のシナリオはパーセンテージとして表現され、
加盟国の公約に密接に関連している。2020 年に予想される低消費電力化は、国の目標を満
たすために、風力発電容量の要求をより低いものとする結果となるだろう。
第二の主張:市場の勢いはまた、規制レベル、市場の状況、電力インフラへの投資、容
量を結合するためのグリッドといった風力発電の開発に好意的な条件に関連する。
第三の主張:法律の遡及的な変更は、投資の収益性を弱め、投資家の信頼を損なう。こ
の新しい経済の現実は EWEA に 2014 年 7 月に 2020 年への 3 つの新しいシナリオを提案
させるよう促した。
ほぼ、或いは全く楽観視していないシナリオでは 2020 年までに予想される 165.6GW の
市場成長よりはるかに低いと予想している。これは洋上風力発電の成長が 19.5GW までに
制限され、単に現在の設備容量の 2 倍を超えた場合を前提としている。総風力発電出力は
欧州の電力消費量の 12.8%をカバーするために 378.9 TWh(陸上風力発電は 307 TWh、洋
上風力発電は 71.9 TWh)に上昇するだろう。基礎となる仮定は、電力の需要や、2020 年ま
で続く公共支出、成熟及び新興市場に影響を与える不安定な国内法の枠組みの圧力に影響
を与え、不況を長引かせている。
この不安定性はプロジェクトへの投資、特に洋上風力発電プロジェクトを妨げるだろう。
最後の仮定は、欧州及び国際的な気候・エネルギー政策に向上心がなく、控え目なものと
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情報報告 ウィーン
なることを示している。
中央のシナリオは、洋上風力発電の 23.5GW を含め EU を通した総設備容量が 192.5GW
となると見積もっている。予想される合成出力は 441.7TWh(陸上風力発電で 355.2 TWh、
洋上風力発電で 86.4 TWh)と見積もられ、それは欧州で予想される電力消費量である 2956
TWh のうち、14.9%をカバーしている。その基礎となる仮定は、規制の安定性が十分に達
成されないものの、鍵となる陸上風力発電市場(ドイツ、フランス、イギリス及びポーラン
ド)での政策改革が完了し、新たな規制の枠組みが市場の成長に資するであろう。洋上風力
発電の開発は、イギリスの信頼と支持、及びフランス・オランダの迅速な開発によって加
速され、そのペースを上げるだろう。
“高”のシナリオは、EU 全体の風力発電容量が洋上風力の 28GW を含め、217GW と
なるだろうと推測している。それは欧州の電力需要の 17%に相当する 500TWh(陸上風力が
397.8 TWh、洋上風力が 102.2 TWh)の出力だと予想している。このシナリオは述べられる
範囲では、ほとんどの欧州市場における安定した法的枠組みが復帰するかにかかっている。
またそれは、2020 年までに 40%の温室効果ガスの削減及び再生可能エネルギーの 30%の
シェアを設定している野心的な天候及びエネルギーパッケージの EU の採択に基づいてい
る。
これらの目標は重要な風力発電市場、つまりドイツ、フランス、イタリア及びイギリス
に弾みを与えるだろう。代替えの仮定は、不況の影響が終わり、スペインといった風力発
電市場が停滞している国が成長の兆しを見せ始めるというものである。このシナリオはま
た、ベルギー、アイルランド、イギリス及びドイツで予想された洋上風力部門の成長より
も幾分強いものであることを意味している。
6カ月後にこれらのシナリオは欧州機関及び多くの加盟国により決められた決定が楽観
できる理由を持っていないことを発表し、承認されなければならない。高のシナリオは国
内の再生可能エネルギー行動計画のコミットメントに最も近いが、今日では全く妥当なも
のではない。2020 年までの新しく完全で野心的な天候及びエネルギーパッケージによって
支持されるような成長推力は発生しないだろう。2014 年 10 月 24 日、各国首脳及び政府を
招集した欧州理事会は新しい気候及びエネルギーパッケージを採択した。
それは 2030 年に向け一つの努力目標、つまり温室効果ガス排出量を 1990 年比で 40%削
減することを設定した。その 27%の再生可能エネルギー目標は EU 全体を結び付けていな
い。それは EU 目標をともに達成する必要性に導かれ、加盟国の貢献により達成される。
多くの国が現在再生可能エネルギーのインセンティブ削減に躍起になっており、欧州理
事会の妥協案は、整備するのに簡単なものではない。欧州の現在の緊縮政策を考慮に入れ
た場合、インセンティブと、市場への参入の十分な準備を行わず市場メカニズムに対する
再生可能エネルギーを売り込む政治家の準備を引き下げたため、欧州の風力発電市場は長
い間不振状態である可能性がある。より楽観的なシナリオは起こりそうであるが、はるか
に強引な政治的判断により実行される必要があるだろう。
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情報報告 ウィーン
今後の風力発電市場を取り巻く不確実性は、2015 年 11 月 30 日から 12 月 11 日にかけて
の今後のパリ気候会議で決定される政策の結果に左右される。これは重要な会議であり、
地球の温暖化を 2 度未満に抑えるために、全員一致で拘束力のある気候合意の採択に繋げ
る必要がある。責任ある決定が地球のために採択されるなら、より鋭敏である欧州政策を
奨励し、風力発電市場に新しい展望を与え、欧州の電力市場の変化を加速する(図 1-6 参照)。
GW
現在の傾向
GW
年
出典:WIND ENERGY barometer – EUROBSERV’ER – february 2015、EurObserv'ER
図1-6 国立再生可能エネルギー行動計画(NREAP)に対する現在の傾向の比較
(参考資料)
・WIND ENERGY barometer – EUROBSERV’ER –february 2015、EurObserv'ER
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