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認知実験による歩行者ナビゲーション利用がもたらす新たな都市イメージ

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認知実験による歩行者ナビゲーション利用がもたらす新たな都市イメージ
認知実験による歩行者ナビゲーション利用がもたらす新たな都市イメージに関する研究*
A Study of a New Image of a City Formed under Influence of Walk Navigation by Cognitive Experiments*
西内和子**・石井信行***
By Kazuko NISHIUCHI**・Nobuyuki ISHII***
索者が形成する認知地図の特徴を明らかにすることを目
1.はじめに
的とし、外的ナビゲーションに従う探索者(携帯電話ナ
近年では携帯電話が急速に普及するとともに、モバイ
ビゲーション歩行者)と内的ナビゲーションに従う探索
ル情報端末としての進歩が目覚しい。そのような情況に
者(紙面地図記憶探索者)
、さらに第 3 者に誘導される誘
伴い、従来は紙地図や街中の案内板あるいは知っている
導歩行者を対象として実験を行い、属性の違いによる都
人に聞くなどの「第三者」からの情報を頼りに、自らの
市空間認知と都市空間要素に関する記憶の差異を分析・
現在置を確認しながら都市内を移動するということが一
考察する。
般的であったのが、携帯電話を使いながらリアルタイム
に外部から誘導を受けるようになった。また自動車のナ
3.方法
ビゲーションシステムと同じように、GPS を利用した歩
行ナビゲーションや非接触 IC タグによる情報提供がさ
認知地図が俯瞰的に空間をイメージする絶対基準系
れるようになっている。この技術はユビキタスネットワ
(2 次元)と自己を中心とした視覚的な景である相対基
ーク社会化、都市空間のユニバーサルデザイン化にとも
準系(3 次元)で構成されるという説 3)に基づき、絶対
ない、
交通弱者を対象に進められている
「自律移動支援」
、
基準系にある位置座標(位置の記憶)と相対基準系(像
「歩行者 ITS」としても盛んに用いられると考えられる。
の記憶)が結びついている状態をリンクと呼ぶことにす
そこで、情報端末機器の利用を前提として都市内移動
る。そして経路探索における、リンクの形成と認知地図
者の空間経験を豊かにするための都市デザイン手法を導
について以下の上位仮説を設定した。
くことが必要であると考えた。情報端末機器利用者の認
経路探索者は、実空間から都市空間要素に関する相対
知地図の特徴が明らかになれば、ケビン・リンチが「都
基準系の情報を視覚的な刺激
(手がかり)
の形で受容し、
市のイメージ 1)(原題:The Image of the City)
」
(1960)に
その情報を次のような過程を経て脳内で再構築する。先
おいて示したように、都市が有する空間的な特徴や、個
ず、相対基準系で得た情報を、絶対基準系の記憶と照合
人の価値観や日常行動に関する情報を読み取ることが可
し、同定した場合に新たな記憶として、固定化・イメー
2)
能だからである。そのための基礎として、先行研究 で
ジ化(これを符号化と呼ぶ)する。符号化は、先行研究
は従来の経路探索を行う場合と PDA に GPS を搭載した
2)
機器を利用した場合の、認知地図の差異の可能性を明ら
クされた記憶である。そして経路探索の過程において繰
かにした。しかし方法論にいくつかの問題点があり定性
り返し符号化が行われ、脳内に集積されたリンクが統合
的には特徴が得られたが、定量的には説明し難かった。
され認知地図となる。
から、都市空間要素の位置(絶対座標系)と像がリン
本研究では定量的に議論できるような仮説を立て、それ
に従った方法論を構築し、実験を行った。
表-1 絶対基準系・相対基準系のイメージ
絶対基準系
相対基準系
2.目的・対象
本研究では、歩行者ナビゲーションを利用する経路探
*キーワーズ:景観、空間認知、空間整備・設計、ITS
**正員、工修、パシフィックコンサルタンツ株式会社
(東京都多摩市関戸 1-7-5、
TEL042-372-6208、FAX042-372-2155)
***正員、工博、山梨大学大学院医学工学総合研究部
土木環境工学専攻
(山梨県甲府市武田 4-3-11、TEL/FAX055-220-8597)
都市の情報と上記に記した認知地図の仮説から次のよう
および誘導歩行の 3 グループは探索歩行が異なるだけで
な下位仮説を以下のように設定した。
仮説 1:経路探索時、情報量が多い程、絶対座標と相
その他の内容については同一である。
対座標のリンクが増えることにより、リンクした要素の
イメージに影響されるので、移動(経路)距離・直線距
(2)装置および情報
離は短く認知する。
(a)外的ナビゲーション探索者が用いる装置
仮説 2:経路探索時、記憶している情報と視覚的な情
報との照合作業が多い程、絶対基準系と相対基準系のリ
ンクが増え、記憶した要素がリンクした要素に限定され
携帯電話端末:au by KDDI、
CDMA 1X WIN、W21SA
地図案内ソフト: au ナビウォーク
(b)内的ナビゲーション探索者が用いる紙面地図
外的ナビゲーション探索者が利用する地図案内ソ
るので、認知する要素数が少ない。
仮説 3:記憶している情報と視覚的な情報との照合作
業が少ない程、
絶対基準系と相対基準系のリンクが減り、
フトの地図情報を用い、同じ情報内容の地図を作成
した。方位・縮尺を記載した。
時間経過に伴い記憶は減衰していく。但し、記憶してい
る情報とは、探索前から保持していた記憶および探索中
(3)被験者
学生および社会人(14 歳、18 歳∼28 歳)計 120 名。
に形成した記憶である。
実験対象地に不慣れな人を対象とした。
これらの下位仮説に基づき、探索時に視認できる特徴
を有した都市空間要素の数および探索者に与える地図上
の要素を情報量と定義し、外的ナビゲーションに従う探
索者、内的ナビゲーションに従う探索者、および「第 3
者」に誘導される誘導歩行者という情報獲得・利用の違
う属性の被験者に、情報量の異なる 2 対象地を歩行させ
表-3 被験者の内訳
新橋 60名
被験者
外的 内的
男性
11
13
女性
9
7
合計
20
20
誘導
11
9
20
東中野 60名
外的 内的 誘導
10
10
12
10
10
8
20
20
20
合計
67
53
120
る。歩行後に、空間認知および都市要素に関する記憶を
問う空間認知・記憶想起実験を行い、被験者が形成した
リンクに関する情報を都市要素の画像の記憶、地図上の
(4)対象地の概要
仮説に基づき、情報量の異なる 2 地区を選定した。
布置、認知距離・方向というデータとして得る。
表-4 対象地
認知距離・方向、都市要素の回答の正誤による統計分
析、記憶要素の布置された地図(回答分布地図)および
記憶要素数と時間経過の関係を示した記憶グラフを用い
出発地点
新橋
桜田公園
東中野
東中野駅東口
(公共施設)
御成門駅A4入口
(交通結節点)
800m
(交通結節点)
落合郵便局
(公共施設)
700m
た定性分析を行い、具体的な差異を検討する。
目的地点
4.実験概要
経路距離
直線距離
605m
3回
525m
4回
(1)実験構成
方向転換の回数
地図情報量
20箇所
7箇所
特徴ある都市要素
街路パタン
多い
格子状(グリッド)
少ない
変形型(バナキュラ)
実験の構成は表-2 のようである。
外的ナビ、
内的ナビ、
表-2 実験の構成
被験者
作
業 外的ナビゲーション
携帯ナビ探索者
内的ナビゲーション
地図記憶探索者
誘導歩行者
概要説明
探
索
歩
行
教示(携帯電話)
教示(紙面地図)
経路探索歩行
実
験
1
実
験
2
経路歩行
1-1 認知距離(経路距離・直線距離),認知方向
1-2 要素による想起実験,並べ替え
1-3 要素と位置の一致実験
◇アンケート(選択式,記述式)
1週間以上経過
2-1 要素による想起実験
2-2 要素と位置の一致実験
(a) 新橋
(b) 東中野
図-1 対象地と実験経路
(5)実験日
表-5 T 検定結果 新橋-東中野
実験 1:2004 年 12 月 20 日∼2005 年 1 月 22 日
T検定
実験 2:2004 年 12 日 27 日∼2005 年 1 月 30 日
携帯 認知
ナビ 距離
探索
方向
5.実験結果
地図 認知
記憶 距離
探索
方向
(1)実験 1-1
認知
誘導
距離
歩行
方向
認知距離と認知方向について以下のデータが得られ
経路
直線
比距離
角度
経路
直線
比距離
角度
経路
直線
比距離
角度
新橋
平均
分散
782.5
58818.8
552.5
34618.8
573.7
10288.1
9.6
36.1
887.5
71218.8
647.5
29118.8
596.9
8818.3
8.3
24.8
1140.0 234400.0
789.0 156949.0
553.3
10846.2
8.0
12.8
東中野
平均
分散
991.4 427518.4
567.5 123518.4
473.9
15342.4
27.4
444.8
874.3
98525.0
584.8
50318.8
550.3
12557.6
15.8
64.2
1051.4 300850.0
705.8
93968.8
567.4
8031.8
24.5
311.3
T値
1.340
0.169
-2.786
3.633
-0.143
-0.994
-1.426
3.568
-0.541
-0.743
0.461
4.100
有意差
片側(5%)
無
無
有
有
無
無
無
有
無
無
無
有
た。図-2 は②の結果、図-3 は③と④の個人の結果を合わ
せたもの、表-5 は各被験者の T 検定結果である。
表-6 分散分析結果(一元配置)新橋
①経路距離:経路に沿って歩いた距離。道のり。
②経路直線距離:出発地点と目的地点の直線距離。
③方向:目的地点から見た出発地点の方向。
④比直線距離(①経路距離と②経路直線距離の比)
3000
[m]
3000
[m]
2500
2500
2000
2000
1500
1500
1140
1000
888
1000
783
800
868
920
765
700
500
500
Mobile
外的
Map
内的
Guid
誘導
(a) 新橋
表-7 分散分析結果(一元配置)東中野
携帯ナビ探索 地図記憶探索
誘導歩行
分散比 危険率
有意差
(F値)
(P値)
平均 分散 平均 分散 平均 分散
RM
13.7 101.589 15.4 105.411 15.8 55.326
0.284 0.7535
無
RP
4.5
7.313
6.0
5.263
5.0
5.684
2.029 0.1409
無
60要素
WM 16.2 158.134 18.0 156.000 17.1 82.471
0.129 0.8788
無
WP
4.8
5.747
6.9
4.766
6.1
7.779
3.529* 0.0359
有
RM
3.9
7.608
4.2
6.063
5.0
5.579
1.083 0.3454
無
ランドマーク候補 RP
1.8 1.642105 2.45 0.681579 2.35 1.60789
1.869 0.1635
無
(15写真)
WM
4.6
8.463
5.3
8.747
5.0
7.474
0.300 0.7421
無
WP
2.3
1.168
3.1
1.042
2.8
2.303
2.138 0.1272
無
RM
2.4
5.516
2.2
8.379
1.6
4.682
0.638 0.5321
無
角地の要素 RP
0.25 0.302632 0.45 0.471053
0.1 0.09474
2.130 0.1282
無
(14写真)
WM
2.7 10.029
3.2 13.537
2.5
4.787
0.319 0.7280
無
WP
0.1
0.095
0.5
0.576
0.2
0.134
2.670 0.0779
無
RM
6.0 21.053
6.9 18.450
7.7 17.503
0.717 0.4928
無
店舗情報
RP
2 2.421053 1.95 1.207895 1.85 1.60789
0.067 0.9354
無
(23要素)
WM
7.2 31.958
7.0 24.997
7.6 21.305
0.082 0.9210
無
WP
1.6
2.682
2.3
2.116
2.3
3.355
1.294 0.2821
無
RM
1.5
2.155
2.2
2.976
1.6
1.621
1.207 0.3066
無
特徴的な要素 RP
0.4 0.357895 1.15 0.660526
0.7 0.85263 4.570* 0.0144
有
(8要素)
WM
1.7
3.168
2.6
3.524
2.0
1.368
1.383 0.2590
無
WP
0.9
0.661
1.0
0.526
1.0
0.892
0.168 0.8455
無
全体変動=59,因子間変動=2,誤差変動=57,有意水準=5%,F境界値=3.159
東中野
0
0
携帯ナビ探索 地図記憶探索
誘導歩行
分散比 危険率
有意差
(F値)
(P値)
平均 分散 平均 分散 平均 分散
RM 13.1
59.463 11.8 74.274 14.0 33.474
0.439 0.6469 無
RP
3.1
1.253
3.5
5.000
3.9
9.989
0.591 0.5571 無
60要素
WM 12.6 100.358 10.3 69.484 13.1 50.576
0.592 0.5564 無
WP
3.8
6.408
3.7
7.484
3.3
8.092
0.207 0.8137 無
RM
3.2
8.695
2.8
6.724
2.5
4.050
0.439 0.6467 無
ランドマーク候補 RP
0.6
0.568
0.3
0.303
0.5
0.471
1.378 0.2602 無
(16写真)
WM
3.0
13.082
2.1
4.526
2.0
4.516
0.639 0.5316 無
WP
0.5
0.366
0.4
0.463
0.4
0.555
0.108 0.8975 無
RM
5.1
10.892
4.4 11.187
4.6
6.147
0.267 0.7663 無
角地の要素 RP
1.0
0.526
1.3
1.145
1.0
1.524
0.485 0.6181 無
(20写真)
WM
4.3
16.197
3.5
9.839
4.4
6.871
0.444 0.6439 無
WP
1.3
1.461
1.2
1.292
0.7
0.976
1.663 0.1987 無
RM
3.9
4.661
3.6
6.576
5.7 10.011
3.829* 0.0275 有
店舗情報
RP
1.4
0.463
1.8
1.250
2.3
4.618
1.729 0.1866 無
(17要素)
WM
4.5
5.316
3.8 10.829
5.4 11.305
1.492 0.2336 無
WP
1.8
1.537
1.9
2.200
2.1
3.524
0.131 0.8776 無
RM
1.0
1.053
1.2
2.345
1.3
1.355
0.200
0.8194 無
特徴的な要素 RP
0.1
0.095
0.3
0.303
0.3
0.303
0.643 0.5296 無
(7要素)
WM
0.9
2.516
1.1
2.200
1.1
0.892
0.116 0.8908 無
WP
0.3
0.303
0.3
0.303
0.2
0.168
0.065 0.9375 無
全体変動=59,因子間変動=2,誤差変動=57,有意水準=5%,F境界値=3.159
新橋
Mobile
外的
Map
内的
Guid
誘導
(b) 東中野
図-2 直線距離の平均値と全被験者の回答
(2)実験 1-2、1-3、2-1、2-2
要素(写真)による想起実験と要素と位置の一致実験
外的
内的
誘導
では、
は各対象地経路上 62 枚の写真を用いた。
そのうち、
起点と終点を除いた 60 写真とそれらをランドマーク候
(a) 新橋
補、角地の要素、店舗情報、特徴的な建物の 4 つに分類
したものを一元配置の分散分析にかけたものが表-6、表
-7 である。表中の RM、WM、RP、WP は以下である。
RM(実験 1-2:歩行直後の想起実験で選択した写真数)
WM(実験 2-1:一週間後以降の想起実験で選択した写
真数)
RP(実験 1-3:歩行直後の想起実験で選択した写真を
正確な位置に配置した数)
、
外的
内的
誘導
(b) 東中野
図-3 認知方向と比直線距離の関係
WP(実験 2-2:一週間後以降の想起実験で選択した写
真を正確な位置に配置した数)
6.仮説の検証
って符号化された記憶の保持量が少ないことが本研究の
実証実験で示された。このことは、時間経過に伴い、外
(1)仮説 1 の検証
部ナビゲーション探索者と内部ナビゲーション探索者の
情報量について検討すると、計画段階では地図情報量
空間認知の違いが如実に現れた結果だと考えられる。事
(単純に地図データが多い)が多い新橋ほど情報量が多
前に絶対座標系のイメージを形成している内部ナビゲー
いとしていた。しかし、実際の実験では、探索者にとっ
ション探索者と、即時的に相対座標系のイメージを視覚
て情報量が多い都市というは、必ずしも仮説で情報量と
的に把握する外部ナビゲーション探索者の都市認知が原
したものに限定されなかった。探索者は、都市の情報量
因だと考えられる。
として視覚的な情報量のみならず地形やその他の要素を
組み合わせて情報として認知していたと考えられる。
以上のことから、事前に保持していた記憶および探索
中に形成した記憶を含め、記憶している情報と視覚的な
一方、実験 1-2、1-3、2-1、2-2 より、絶対座標と相対
情報との照合作業が少ないほど、絶対座標系と相対座標
座標のリンクが増えることにより①経路距離、②経路直
系のリンクが減り、時間経過に伴い記憶は減衰していく
線距離は短く認知することになる、仮説のリンクとは、
ことが示された。
実験での RP、WP である。単純に新橋と東中野のリンク
数を比較すると具体的な差は出来ていない。
7.結論
また認知方向について、経路が単調な新橋では、経路
が複雑な東中野に比べ、外的ナビゲーション探索者は内
(1)論文の成果
的ナビゲーション探索者よりも、実方向に対する誤差が
歩行探索実験で得られた、外的ナビゲーションに従う
小さい(図-3)
。以上より、仮説 1 は一部であるが妥当で
探索者と内的ナビゲーションに従う探索者の都市認知に
あると考えられる。
関する差異について、3 つの仮説を用いて理由を説明し
た。
(2)仮説 2 の検証
外的ナビゲーション探索者は内的ナビゲーション
探索者に比べて視覚的な記憶量が多いことが想起実験に
よって実証された。逆に外部ナビゲーション探索者は内
(2)今後の課題
実験結果をさらに吟味して、具体的な都市モデルや都
市デザインを提案する必要がある、
部ナビゲーション探索者に比べて符号化された記憶は少
情報提供方法について提案する必要がある。
ないことが実証された。このことは、外部ナビゲーショ
外的ナビゲーション探索者と内的ナビゲーション探
ン探索者と内部ナビゲーション探索者の認知行動が明ら
索者の都市イメージを、認知距離・方向および記憶に依
かに異なることを示唆していると考えられ、仮定したよ
存した視点のほかに、身体感覚(運動感覚・聴覚・触覚・
うに新しい都市のイメージ形成過程のメカニズムが異な
嗅覚など)の視点からも議論していく必要がある。
っていることを示していると考えられる。
そのため、外部ナビゲーション探索者は内部ナビゲー
8.謝辞
ション探索者に比べて記憶に依存しないため、記憶して
本論文は文部科学省、科学研究費の補助を受けて作成
いる要素の種類が多く、一貫性がなく、個人の属性に影
したものである。また歩行実験にご協力くださった方へ
響されるところが多いこということが示された。
ここに謝意を表す。
都市空間の記憶を、都市を構成する個々の要素で説明
できるならば、
どの様な特徴の要素が都市空間にあれば、
参考文献
空間体験の豊かな都市空間の一般性を導き出せると考え
1) ケビン・リンチ著、丹下健三・三田玲子訳:都市のイメージ
られる。このことは、これからの都市デザインに重要な
(原題:The Image of the City, Kevin Lynch, 1960)
、岩波書店、
影響を与える知見であると考えられる。
1968.
以上のことから、経路探索時、記憶している情報と視
2) 石井信行・西内和子:経路探索者の都市空間記憶に歩行ナビ
覚的な情報との照合作業が多いほど、絶対座標経路相対
ゲーションが与える影響に関する認知実験、土木計画学研
座標系のリンクが増え、記憶した要素がリンクした要素
究・論文集 No.21、pp. 425-434、2004
に大きく起因するということが示された。
3)ナイジェル=フォアマン・ラファエル=ジレット編、竹内謙彰・
旦直子訳:空間認知研究ハンドブック、
(原題:Nigel Foreman
(3)仮説 3 の検証
外部ナビゲーション探索者は内部ナビゲーション探
索者に比べて視覚的な記憶の保持量が少なく、それに伴
& Raphael Gillet:Handbook of Spatial Research Paradigms and
Methodologies Volume. 1, Spatial Cognition in the Child and Adult.
Hove, U.K.: Psychology Press. 1997)二瓶社、2001
Fly UP