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多国籍交差点,ドバイ事情

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多国籍交差点,ドバイ事情
現地駐在員だより 多国籍交差点,ドバイ事情
K2マネジメントソリューション㈱ ドバイ事務所 マネージャー 島崎 彩子
進化する魅惑の近未来都市ドバイ。私は2010年12月にこの都市に駐在して以来,それ
まで知らなかったドバイの実態を含め,ドバイの様々な側面に触れることができました。
本稿ではその一部をご紹介させて頂きたいと思います。
事情①:生活
「郷に入っては郷に従え」が当てはまらないのがドバイ!
外国人が80%を占める国際都市ドバイでは,
「Where are you from?」が挨拶代わりで
す。それぞれの国籍の人がそれぞれの国のライフスタイルを楽しむことができ,日本人で
ある我々も,朝食には日本米,昼食にはカツカレー,夜はお肴をつつきながら日本酒を口
にすることもできます。ビーチでは,肌の露出を避けるアラブ民族衣装アバヤをまとった
女性の横で,ビキニ姿で泳ぐ女性がいたりもします。ビジネスや生活にアラビア語は必須
でなく,英語でコミュニケーションを取ることができますが,街を歩くと様々な言語が聞
こえてきます。
私の勤める K2マネジメントソリューション株式会社ドバイ事務所は,世界最大を誇る
ジュベルアリ・フリーゾーン
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人工港ジュベル・アリ港を持ち,完成すると世界最大の大きさになるアル・マクトゥム空
港に隣接するドバイで最古のフリーゾーン(経済特区)ジュベルアリ・フリーゾーンの正
規代理店です。この事務所は代理店機能の他,中東進出支援のインキュベーション施設も
持ち,中東進出を考える企業様から様々な問い合わせが届いています。その質問の内容は,
フリーゾーン特有の法人税免除,100%外国資本で進出できる優遇措置,輸出入の関税の
質問等,ビジネスに関連する内容が多いのですが,その一方でドバイの生活様式や子供の
幼稚園等,ドバイでの生活に関する質問も多数届いております。
さて,生活面に関して私の中で興味深かったことは,過去にアルジェリアで日本人誘拐
事件があった時のことです。近隣地域で邦人の誘拐事件が発生したということで,中東進
出を検討中のある日本企業から,当初予定していたドバイ視察のアポイントのキャンセル
の連絡がありました。しかしながら,そんな夜でもドバイではいつものように人々が街に
繰り出し,お酒を楽しんだり,クラブで踊ったり,普段と全く変わらない日常生活が展開
されていました。「安全な都市ランキング」でも上位にランクインするドバイですが,その
安全性は他国と比較してもかなり素晴らしいと思います。車内にカバンを置いたまま,鍵
をかけずに買い物に立ち寄る女性が過去のテレビ番組で報道されていましたが,これも本
当です。(*もちろんお勧めしているわけではございませんが)
以前,私はスペインのマドリッドに住んでいました。夜道や人通りの少ない道はもちろ
んのこと,歩いている時には常に注意が必要です。車を駐車する際は,カーステレオを外
し,ダッシュボードに隠すのは当然のこと,隙をみせれば盗難にあうこともしばしばです。
飲食店ではカバンを背もたれにかけない,知らない人に話しかけられても応対をしない
等々,色々と注意が必要でした。
それに比べてドバイは,テーブルに携帯電話やカバンを置いたまま注文に行くことがで
きる等,他国では考えられない光景をよく目にします。私自身,夜遅くに愛犬の散歩に出
かけることもありますが,危険な目にあったことはありません。観光に力を注ぐドバイ政
府は,今後建設される商用施設への監視カメラシステムの導入を義務付け,ドバイタクシー
への監視カメラの導入も検討する等,安心して暮らせる都市を目指しています。それを象
徴するような事例として,客が忘れた財布や金品をタクシー運転手が警察へ届け,ドバイ
政府に表彰されたニュースも時折目にしたりします。また,犯罪がおきた際の強制送還等
の対処,失業者は居住権を失ってしまう等,この国が犯罪率を低くするために努力してい
ることが十分窺えます。
事情②:交通
ガソリン価格24%上昇
自宅と会社の往復走行距離は約60キロ,でも会社までの信号の数はゼロ。6レーンで幅
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の広い道路を時速140キロで走るのはとても気持ちがいいです。ただし,走る速度が速く,
ドライバーの運転マナーがよくないため,ドバイの交通事故による死亡率は日本の約5倍
と言われており,かなり注意も必要です。
8月1日,UAEエネルギー省から燃料価格の規制緩和が発表され,ガソリン価格が上昇
しました。7月中旬にドバイのメインロードである Sheikh Zayed Road 沿いの高層マン
ションから郊外のコンパウンドへ引っ越した私には他人事では済まされません。今回の価
格上昇で,愛車のガソリンを満タンにするには100Dirhams 札(日本円で約3,380円)で
お釣りが来なくなったわけですが,それでも日本のガソリン価格と比べるととても安い。
日本企業の駐在員は職場に便利な場所に住んでいる方が多いのですが,ドバイの住民の
約4割を占める出稼ぎ労働者(インド,フィリピン,パキスタン,その他アラブ周辺国)
の多くは,家賃の安いドバイ周辺の首長国に住み,会社との往復が120キロを超える距離
を毎日通勤しています。私の知人は,朝5時起床,子供を幼稚園へ送り,奥さんを職場へ
送り,その後会社へ出勤。1日の走行距離はやはり150キロ程度。彼らに今回の価格上昇
はなかなか痛手となっています。
ドバイ政府はメトロ・バス等の公共交通手段の利用を呼びかけ,現在,市内の渋滞解消
に努めていますが,上記のように周辺国に住む人々にとっては車が必要不可欠ですので,
新たな渋滞解消対策に期待したいところです。
事情③:Expo2020
前述した私の新居から職場までの間に「Expo2020」の開催地があります。今回のエキ
スポは中東で初めての開催となり,また参加者の約70%が他国からの参加になるという最
も国際的なエキスポになることが予想されています。エキスポ開催を控え,予想される経
Jafza 日本企業イベント
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ガルフード Jafza スタンド
済効果は2021年までに US $19.6 billion,2020年中のドバイへの観光客数は25百万人,
また観光を始めとする様々な分野で270,000もの新たな雇用が見込まれており,増加する
来訪者の受け入れ体制への準備が進んでいます。
また,ドバイ空港は,昨年国際線旅客数でヒースロー空港を抜き,世界で一番忙しい空
港となりました。ヨーロッパとアジアの間に位置し,且つインドやアフリカにも手が届く
所に位置しているドバイが Expo2020の開催地に選ばれてから,メインロードのビルに
“Keep Calm,There is no bubble”と大きく不動産業者の垂れ幕がかかり,
「ドバイブー
ムが来るのか」,「いやいやバブルだ」などと街中が騒めき立っています。
余談ですが,私は最近アラビア語を習い始めました。英語での生活で特に障害はありま
せんが,やはり「郷に少し入ってみたく」なりました。読み書きの基礎から勉強している
ので先は長いですが,Expo2020までに我が社のサービスに「アラビア語通訳」を提案で
きることを目標に努力していきます。
事情④:転職
出稼ぎ労働者が大半を占めるドバイ。多くの企業にとっての頭痛の種は労働者の転職で
す。インド,パキスタン,フィリピン,その他のアラブ周辺国からやってくる労働者は,
よりよい賃金を求めて転職を繰り返します。銀行窓口を担当するエジプト人の友人は,家
族の伝手で観光ビザを取得してドバイへ来訪,アブダビの銀行へ就職しました。1年程基
礎を学んだ後,僅かに給料の高いドバイの銀行へ転職しました。それから2年足らずで
「イ
ギリス系の銀行へ転職した」と彼から連絡があったのはつい最近のことです。見ると名刺
のタイトルが“Assistant Manager”になっていました。「なぜ,一つの会社で昇給を目指
さないのか?」との私の質問に,「“偉くなる”手っ取り早い手段だから」との返答があり
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ました。彼らにとっては,本国に帰るまでにいくら稼げるか,というのが一番優先される
ようです。
一方で,日系企業のマネジメント層からは,部下が育たないとの苦情の声をよく聞きま
す。彼らに仕事で必要なスキルを教えるとそのスキルを生かして転職してしまうそうです。
常によりよい給料を求める彼らには,彼ら独自のネットワークがあり,常に転職のための
アンテナを張っています。ある知人が会社を退職したと聞いていたところ,以前に退職し
た同僚と転職先が同じだったという話もあります。また,これから一緒に事業を開始しよ
うと考えていた相手から「あなたの会社で人材を募集していないか?」,そして「私を採用
してくれないか?」と聞かれ,呆れたこともあります。ドバイでは,企業運営にとって,
従業員の転職対策は大きな課題の一つとなっています。
事情⑤:ドバイ人
「ローカル」と呼ばれるドバイ人はどんな人たちなのか?
私は仕事柄,彼らと接することも多いのですが,やはり一般に言われているようにお金
持ちが多い。以前,ライオンを助手席に乗せて走る車の写真が有名になりましたが,家に
は高級車がズラリなんていう話は大変多い。そんな彼らと話をしていて,印象的なのが
「こ
れがベストだ」というフレーズ。とにかくナンバー1が好きのようです。自分だけのオン
リーワンよりも,「誰からみても一番だと理解されるもの」が好きという印象を受けます。
他国の製品と比べて,日本の製品やサービスはいいと評価されていることを考えますと,
私達日本企業にとっては大きなアドバンテージだと思います。「Where are you from?」
という質問に「日本」と答えると,
「Japan!」と喜んでくれる。流行にも敏感です。民族
衣装であるアバヤから少しばかりの前髪とキラキラ輝くブレスレットを見せながら,おし
ゃべりに夢中になるマダム達の話題は,化粧品やファッションの話が多い。「資生堂の飲む
総領事公邸
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天皇陛下誕生レセプション
ブルジュハリファ前の噴水
コラーゲンの効果がどうだ?」とか,
「フランスでしか入手できない限定品のシャネルのバ
ッグ」だとか,やはり彼女達のこだわりが窺えます。
また,ドバイ人は一見近づきがたい雰囲気がありますが,実は素朴でシャイな人たちが
多いと思います。人と人との繋がりを大切にし,そこには心のこもった態度をよく見るこ
とができます。ここで暮らしていると,時々耳に入ってくる「ワスタ」という単語があり
ます。これはいわゆる「コネ」のことであり,ビジネスだけでなくありとあらゆるシーン
で使われています。「コネ」と聞くとネガティブなイメージがあるかもしれませんが,彼ら
にとっては事がスムースにいくように「口を添えてくれる」という感覚だと思います。当
地でのビジネスでは,いかに沢山の「ワスタ」があるかで事業のスピードや成果が大きく
変わってきます。これには本当に驚きです。そういう意味では,ドバイ人との繋がりは,
ここで生活する上でプラスアルファになることは間違いありません。
住みやすく,安全で,人とモノが集まる多国籍交差点であるドバイは,未来に向かって
グングン進み,これからますます世界の中心に近づいていくに違いないと思います。
ちなみにドバイ人に聞くと「いやいやもう我々は(世界の)中心にいるよ」との返答が
返ってきました(笑)。
まだご訪問されていない方には,是非とも一度,この“世界の中心都市ドバイ”を訪ね
て頂きたいと思います。
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