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第9回 シニアの暮らしとインターネット(1)-シニア

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第9回 シニアの暮らしとインターネット(1)-シニア
第
9
回
インターネットと
上手につき合う
吉田 敦也
Yoshida Atsuya
徳島大学 大学院 ソシオ・アーツ&サイエンス研究部 教授 地域創生センター長
特定非営利活動法人 いきいきネットとくしま理事長。専門は情報工学、教育工学、生涯学習
情報論。地域創生の観点からの地域ICT課題解決と生涯学習支援・社会教育の支援に取り組む。
シニアの暮らしとインターネット
(1)
―シニアネットの活動 ―
えてきます。
シニアとインターネット
そしてその恩恵を大きく受けているのがシニ
総務省
「平成 25 年通信利用動向調査」による
アだといえます。ここでは、そのことに関連し
と、シニアのインターネット
(以下、ネット)
利用
た1つの話題として
「シニアネット」
をご紹介し
率は、国民全体の利用率 73.8% に対して、60
ます。
歳以上全体では 42.2% ですが、60 ~ 64 歳に
限ると 66.6% となっています*1。
知性や能力を照らすシニアネット
こうした傾向が示していることは ⑴ 社会の情
報化が急速に進んでいること⑵ シニアであって
シニアネットとは、1983 年、当時サンフラン
も、ネットや情報機器はなくてはならないもの
シスコ大学の教育学部教授メリー・ファーロング
になってきているということでしょう。
(Mary Furlong) 博士が高齢者向けコンピュー
かたど
一方で、私たち日本人は、社会を象る方向性
ター講座を開いたことから始まるネットワーク
を見失っています。なんのための情報社会なの
活動のことをいいます。注目すべきは、3年後
か? なんのためにネットで便利に暮らすのか?
の 1986 年に立ち上がった
「シニアネット(Se-
ピンと来ないまま、ただただ
「時代に追いつい
niorNet.org)
」の冒頭に掲げられた宣言です。
ていかねば」という焦りに引きずられる一方で、
「50 歳以上のシニアが、生活をより豊かにし、
ネットの負の面がクローズアップされ、しんど
長い人生の中で築き上げた知や知識を広く社会
くなっている人も多いように感じます。
の中で共有できるようにするためのコンピュー
ター技術活用教育を提供する」
なんと素晴らしいことでしょう。シニアネッ
暮らしをつくるインターネット
トとは、単なる高齢者の集まりではなく、ICT
まずは、ネットのプラス面を考えてみましょ
の学習と活用により、介護が必要な高齢者たち
う。1つの答えとして、ネット、パソコン、ス
はもとより、心身ともに狭まりがちなシニアの
マートフォンなど ICT
(情報通信技術)が引き起
活動範囲を拡大し、若者など異世代との交流を
こす社会変革が、新しい活力を生み出し、地域、
含め、社会とつなぎ、機会を与えるもの。知性
社会を持続させ、これまでになかった暮らしの
や能力を積極活用するためのしくみ、環境
(プ
あり方を次々実現している―― そのことがみ
ラットフォーム)
なのです。
*1 平成 25 年世帯編
(世帯構成員)
の
「過去1年間のインターネット利
用経験
(全員)
」
より
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=
000001048692&cycode=0
2015.2
国民生活
24
インターネットと上手につき合う
環境も、解決すべき ICT 課題として、行政の助
いきいきネットとくしま
成金などに頼らず、自前で整備しました。
現在、日本には、いわゆるシニアネットと称
3つ目のポイントは、デキル人、やりたい人
されるものが、登録されているだけでも 100 団
にはどんどん上達してもらい、活躍できる場を
体以上あります。その1つが、徳島県の特定非
つくることです。徳島県内では唯一のシニア情
営利活動法人
「いきいきネットとくしま」
です。
報生活アドバイザー*2資格認定講座実施団体と
いきいきネットとくしまは、アメリカ・サン
して、地域 ICT リーダー育成を続けています。
フランシスコ発の社会変革の思想を受け継い
で、2003 年9月に発足しました。徳島大学の
ICT によるつながりが命を救う
生涯学習講座の受講生を中心に有志 16 名が集
まり任意団体としてスタート。新しい人が入会
16 人から始まったいきいきネットとくしまは、
しやすいよう、2004 年 10 月に徳島県知事より
2015 年1月1日現在、会員数 280 名
(女性 178
特定非営利活動法人
(NPO)
として認証を受けま
名、男性102名、平均年齢69歳)となりました。
した。
当初は徳島市を中心に活動を開始しました
出発点は、
「初心者にやさしい学びの場をつく
が、現在は会員数の増大に伴い、地理的なこと
る」
こと。デジタルは苦手! パソコンなんてやっ
を考慮し、本部、県南支部、県西支部の3つの
たことない、というシニアが中心となって組織
組織に分割して運営しています。
されました。
NPO法人になってから10年が経過しました。
ひ けつ
大切にしたことは、
「楽しい」
「ワクワク・ドキ
継続の秘訣は、声かけ、触れ合う交流を大切に
ドキ」
という気持ちです。パソコンに限らず、ス
してきたことだと思っています。デジカメ撮影
マートフォンやソーシャルメディアなど最先端
会、地元特産品の梨狩り、食事会などを自主的
の ICT に触れることができ、賢く使って、おしゃ
に企画し、誘い合い、努めて屋外に出ています。
れなシニアライフをみんなで作り出すことを意
ネットでつながるだけでなく、実際に顔を合わ
識しました。
せています。
目標は「つながる」
こと。
情報生活の輪を広げ、
この ICT で結ばれた強固で温かいつながりと
最終的に大災害に強い地域づくり、情報共有型
絆は大地震や津波、大雨や洪水など大災害のと
で参加型の市民育成をめざしています。
きにきっと機能し、命を救うことと信じていま
ICT 学習と習得のポイントは3つあります。
す。事実、台風などのときに互助共助のかたち
1つは
「教え合う」こと。交代で講師を担当し、
で効果が現れています。みなさんもシニアネッ
ICT 活用に必要な技能、問題設定と ICT による
トに参加しませんか!
課題解決、倫理観など、いわゆるデジタルリテ
ラシーの形成をめざして同世代で教え合います。
2つ目のポイントは
「実践の導入」
です。学ぶ
だけでなく、目的をもって ICT を活用します。
公式ウェブサイトは、発足以来、自分たちで構
築・更新・運営しています。メールマガジンは
写真 「いきいきネットとくしま」
の活動
編集部を組織して、
オンラインでの原稿づくり、
定例勉強会「森の日」のようす
刊行に取り組んでいます。会員の力を結集して
*2 パソコンやネット等の普及活動を行い、シニアの社会参加、地域
の活性化を促進する人材養成制度。シニア向けの地域の市民パ
ソコン教室などでの指導者を育成する。
10 年以上発行しています。学習用パソコンの
2015.2
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