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岩野山の岩場 (改訂版) あそ望山岳会 緒方一成 【概要】 熊本市植木にある「岩野山の岩場」は低山ながら自然林に囲まれた小さな岩場である。 熊本市内から近いこともありリードクライミングや懸垂下降の訓練ができるトレーニ ング場として以前から重宝されてきた。 ここは戦後、地元の青空山岳会や熊本クレッテルカメラードを中心として開拓され、 1980 年代に宮崎登攀倶楽部の川北真太郎氏らによってフリークライミングのゲレンデ として再開拓された。古い残置ピトンも多く、歴史を感じさせる岩場でもある。近年は 新しいボルトが打たれ、より安全で便利な岩場として再認識されつつある。 岩質は不明だが、変成作用で硬軟入り混じっている。石英質の固いところはパキパキ に割れやすく、落石には注意したい。 岩野山の周囲はゴルフ場になっているが、岩場周辺の樹林帯は熊本市の市有林である。 公共性のある岩場でもあり、環境保全には注意を払いたい。 古いルート名は「宮崎の岩場・フリールート 昭和 61 年版」を参考にしている。 【アクセス】 熊本市から国道 3 号線を北上し、北区植木町五両から右の「岩野山登山道」に車を乗 り入れる。駐車場は広く、10 数台は停められる。山腹を東に伸びる林道を 6 分ほど進む と山頂への標識があり、左の山道に入る。5分ほど登ると岩場の基部に着く。 東側のゴルフ場は通らないようにして、必ず国道 3 号線から入るようにしたい。 【記号】 ▽~終了点 NP~ナチュラルプロテクション(カム、ナッツ類を使用) Tr.~トップロープ ?~詳細は不明 【 ウェルカム・エリア 】 ① マルチで GO! (5.10a 2 ピッチ NP あり 緒方) 1P 目上部にトラバースがあり、ナッツや立ち木利用の支点構築の練習ができる。2P 目の右ルートは残置ピトンが1本なので、ナッツを使いたい。左ルートはハングを越し て右に少し戻り直上する。小さいスラブにボルトが2本ある。上部はカムの大きめを使 ってプロテクションをとると良い。 ② クラシック (5.4) 残置ピトンを利用する。終了点のボルトがゆるいので要注意。 ③ ぺったんこスラブ (5.10c 限定あり 緒方) 右のカンテと左の階段は使わない。クラックより上の小さなスラブも右のカンテは使 わない。 ④ カンテの左 (5.8 緒方) カンテの左側面を主に使って登る。限定はなく、見た目よりも易しい。 【 正面フェース 】 ⑤ カンテの右(5.8) カンテ直下の小ハングからカチをひろって取りつく。右から登ると 5.7。初めてのリ ードに最適な 1 本。 ⑥ クラックルート(5.8) ルート名は「クラック」だが残置ピトンを使うフェースだ。ナチュプロの練習でクラ ックにカム(小)やナッツを使って登ると充実する。 ⑦ ノーマルルート(5.7) 中間部に水平に打たれたボルトがあり、マルチクライミングのビレイ点としてトップ 交代の練習ができる。 【 奥の院 (正面フェースの右側から奥)】 ⑧ ニッケ栗まんじゅう (5.10a 23m 緒方) 上部壁のピークまで直上するこの岩場の最長ルートである。ロワーダウンするとロー プが伸びるので 50m ロープで十分足りる。 ⑨ トップロープ (Tr. 5.10d) 【 ロックタワー(岩洞峰) 】 ⑩ ドミノライン(5.10a~b 緒方) 左上クラックからバンドに上がり、斜めに幾筋もあるホールドを使う。最上部を左に 上がると 5.10b、右に上がると 5.10a。右の終了点にはRCCボルトが 2 本ある。 ⑪ ホタルガの舞い (5.10c 緒方) 草付きの中段あたりからカンテに取り付く。核心部でクリップ前に落ちると下の岩に 当たりそうになるので、ビレイはスタート地点で行った方が良い。 ⑫ デズイリハング・ダイレクト(5.10c 緒方) ハングの左を下部から直上するライン。思い切りの良いムーブが要求される。 ⑬ ルッキングアップ(5.10b) ロックタワーのほぼ中央をハング下の小さなカチで耐えて突破する。プロテクション が整理されていないので注意がいる。 ⑭ スカイラインルート(5.9) ハングを右のカンテを使って越える。クライマーが写真に映えるルートである。 ⑮ 夏の思いで(5.11a 緒方) ロックタワーの右末端から取り付き、カンテの右側壁を登る。2ピン目から直上すれ ば 5.11a、3ピン目からなら 5.10b、4ピン目からなら 5.9 になり、実力に合わせて 楽しめる。 【 前傾フェース 】 ※以前このエリアはリードでも登られていたらしいが、確実なプロテクションが取れな いのでトップロープをお勧めする。 ⑯ サニーサイドカンテ (NP 5.8) カンテの右にあるクラックに NP を取りながら登る。終了点には古いボルトがある。 ⑰ ノン・エスケープジェードル(Ⅴ ?) ⑱ グリコ(Tr. 5.9) ハーケンがリスに連打してあるのでルートはわかりやすい。 ⑲ 左 スーパーフライト(Tr. 5.10c) 思い切りよく上に飛びたいがなかなか飛べないルート。 右 モンローウォーク・クラック(Tr. 5.11a) 前傾壁でのフィンガージャム、フットワークが重要になる。 【 積木くずし岩 】 ⑳ くちなしの香り(5.10a 緒方) リーチの短い者は出だしが核心となる。1 ピン目は長いヌンチャクが良い。 ㉑ キマワリくん(5.9 緒方) ハング下の尖ったガバをダイナミックに取ると面白い。 ㉒ ヤモリの卵 (5.11a 緒方) 核心のホールドが小さい。 ㉓ キャッツアイ・ハング(5.10b 緒方) ホールドは多いので落ち着いて登りたい。 ㉔ 秋日 (5.8 緒方) 楽しく登れる。 【 上部壁 】 ㉕ 青大将( 5.8 NP 緒方) クラックの横にボルトもあるがカムを使って登りたい。 ㉖ 右ルート(5.7) ボルトとピトンが混在する。下部(正面フェース)からつなげても良い。ピークに右 から登り上がるとラッペルが非常にやりにくい(危ない)ので、⑧の終了点を下から取 った方が良い。