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神学部神学科 日原 広志 准教授
【教授の研究紹介】 私は教員になる前、福岡国際マラソン15キロ地点のすぐそば あると、 「今だ!」と、一気に説教が出来上がるのです。そんな時 にある教会で牧師をしておりましたが、礼拝用の説教を準備して は、日ごろ説教作りに四苦八苦して、感動的な例話や、お笑いの いる最中に、 “み言葉が、匂い立つ”不思議な瞬間をよく味わい 時事ネタや、注解書の切れ端をかき集めて、寄せ鍋にしたり闇鍋 ました。料理人がお鍋の前で微妙な空気の変化を察知して「今 にしたりと悪あがきしている時には決して出てこないような味に 仕上がりますので、要は聖書そのものからダ だ!」と思う瞬間がある(と思う)のですが、 牧師にもそういう瞬間があるのです。準備の シが取れたということだったのでしょう。聖書 ヘレニズムとヘブライズム は聖書という楕円の二つの 焦 点です。ヘブライズムの 統 合 的・全人 的思考は、硬 直した二元論からの脱却に おいて、聖 書 宗 教にとって も現代 社 会にとっても有 益 です。 ために開いている聖書から、白い湯気のよう なものが湧き上がるのが見えるのです。 (もち ろん、肉眼で見えるわけではないので、そう いう気がするだけなのですが…)その体験が に優る素材なしと教会で学ばせてもらってい るうちに、 (旧約聖書の原書)ヘブライ語聖書 からの匂い立ちが際立ってきまして、ヘブライ 語聖書研究への道が拓かれ、今は西南で旧 約聖書学とヘブライ語を教える恵みに与らせ て頂いているわけです。 ユダヤ教、キリスト教、イスラム教にとって共 通の信仰の土台であるヘブライ語聖書(旧約聖書)は、今日、宗 教間対話の書としてその重要性が再認識されています。また日本 では一般に古代人の純朴な神話とみなされがちな創世記の物語 は、特にエコロジーの視点から再評価を受けています。対話と 共生の知恵の宝庫としてのヘブライ語聖書に触れることは、皆さ んの日常生活にとっても人生にとっても有益です。是非皆さんも “み言葉が、匂い立つ”瞬間を目撃して下さい。 ひ は ら 神学部神学科 日原 ひ ろ し 広志 准教授 東京大学文学部卒業。西南学院大学大学院神学研究科博士後期終了。神学修士。 研究テーマは旧約聖書学、 イザヤ書。訳書に 『ラビの聖書解釈-ユダヤ教とキリスト教 の対話-』小林洋一編 (新教出版社、 2012年、部分共訳) 、論文に「ヘブライ語聖書 における被造物の福音」西南学院大学神学論集70巻1号1-49頁など。 K.Elliger und W.Rudolph hg., “Biblia Hebraica Stuttgartensia,” Deutsche Bibelgesellschaft, 1990(c1977). ISBN 3438052180 (ヘブライ語聖書) または 『旧約聖書』 教員として学生に一番読んで欲しい本となると、 やはりこれしかありま せん。 “本の中の本” ヘブライ語聖書です。聖書には必要なものがす べて詰まっているとよく言われますが、 この本を読めば読むほどアーメン (その通り) と思わされます。西南に来た理由が分からなくなった人は、 是非、旧約聖書を読んでみて下さい。 “A S e ed of K nowled ge” 12