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多面体法による 地すべり地のすべり面形状の推定
多面体法による 地すべり地のすべり面形状の推定 (株)長野技研 宮澤 圭 概 要 ① 地すべり地の地表諸点の三次元位置の変動 を,時間差のある測量で求め,得られた変 位データを解析してすべり面形状を推定す る手法において,新たに「多面体法」を考 案した. 概 要 ② 「多面体法」は,推定すべり面の三次元形状 を複数の三角形面で構成される多面体モデル で近似するものである. ]の変位方向 Di 地表面[i地表面 [i] (変位ベクトル の平均変位方向) a',b',c'a'-b'-c' [三角形( )i ] 勾 配 S (本研究会 平成21年度 第3回で大上研谷口氏が発表) c' i 推定すべり面 地表面 変位ベクトル 変位追跡点 変位ベクトル a' b' c 平行 S i = si a 推定すべり面の一部 [三角形(a-b-c)i ] 多面体法の概念図 b すべり面の勾配 si 変位追跡点とすべり面の関係 概 要 ③ 新安地すべり この「多面体法」を, 長野市新安地すべり 池田町相道寺地すべり (長野市) 姫 川 長野市 に適用した結果を示す. ※ 新安地すべりは谷口氏が検討して いるが,解析プログラムの修正, 解析条件の変更を行い.再度検討 を行った結果を示す. 松本市 相道寺地すべり (北安曇郡池田町) 検討地すべり地の位置図 信 濃 川 ●検討地すべり地の概要比較 新安地すべり 規 模 発生時期 (兆候確認) 活動活発 時 期 測 量 実施期間 最大移動量 相道寺地すべり 長さ60m×幅70m 長さ70m×幅45m 2005年 3月末頃 2010年 4月21日 2006年 7月下旬 2010年 5月23日 (梅雨前線) (降 雨) 2008年11月 2010年 ~2009年5月 5月17日~6月17日 活発期から 2年以上経過 遅延対応型 11cm 兆候確認から 1ヶ月以内に着手 早期対応型 77cm 市道 新 安畑 山線 側溝 L型 HK-7 市道新安畑山線 エン ビパ イプ BV19-2 φ1 00 伸縮計 H58 滑落崖 南 B24 浅 B22 B23 BV19-1 川 B21 B1 B25 H61 H55 B2 H62 H63 H57 H56 H18-1 H52 HK-6 崩壊 H54 B20 H34 亀 裂 H35 B19 B3 H60 H64 H53 最上段滑落崖 B4 H65 H51 H32 BV20-1 H59 610 H10 H40 H36 61 0 B5 H21 H31 B16 H25 H44 H5 H45 H19 末端部押出し H13 H26 B15 HK-4 H3 H8 H46 H24 H48 B6 H20 H43 H4 NO.1 H12 H42 伸縮計 650 H9 64 0 620 H23 630 0 62 H22 H41 A6 H2 H11 H37 B17 H49 H18 H30 H16 H17 H27 BV19-4 H15 H14 B8 B7 H47 H7 HK-8 BV19-5 亀 裂 B10 H29 B13 変位追跡点 H6 H28 B14 凡 例 地すべり境界点 B9 H38 A-13 670 H1 H39 680 H50 660 H33 B18 BV20-2 B11 B12 調査ボーリング位置 滑落崖 HK-5 湛水池 湛水池 A-11 新安地すべり地平面図 0 10 平面図Scale 20m N 0 10 H58 20m 伸縮計 側方滑落崖・亀裂 調査期間に変動した範囲 平面図Scale B24 B22 BV19-1 地すべりの範囲 B1 B23 B21 B25 H61 H62 H63 B20 H34 H54 B3 H60 H53 H64 H35 B19 H18-1 H52 HK-6 H32 BV20-1 H50 H1 H39 610 H36 61 0 B5 H21 H31 H2 H11 H9 64 0 H22 630 H23 620 H41 H20 H43 B16 H44 H45 B15 H19 H13 H16 H17 H27 BV19-4 B9 H38 H5 B7 H49 H18 H30 脚部し出し H14 H15 凡 例 A-13 湛水池 B13 BV19-5 H6 時点 開始 量 測 H7 0.100m B8 B10 H29 HK-8 H47 点 始時 開 測量 B11 B12 HK-5 0.100m 2.500m 側方滑落崖・亀裂 滑 落 (境 崖下 界点 端 ) N 新安地すべり地平面図(拡大) 滑落崖 変位追跡点の 移動ベクトル 凡 例 H28 B14 HK-4 H3 H8 H24 H26 H48 B6 H46 H25 H4 NO.1 H12 H42 伸縮計 650 H37 B17 大きな滑落崖 H10 H40 B18 660 H33 B4 H65 H59 第1回測量以後 に発生した亀裂 H56 B2 滑落崖の ベクトル 変位追跡点の 移動ベクトル B24 B23 B22 B22 B21 B24 B23 B21 H34 H35 H35 B19 B19 H64 H33 H21 H23 H24 H24 H46 H30 H18 H17H17 H27 凡 例 時点 開始 量 測 H15 H15 0.100m B9 H28 B11 H28 B13 B13 B7 B8 B8 変位追跡点の 移動ベクトル B9 B10 BV19-4 (近隣点) B11 B10 H38 B14 B14 H16 H27 H38 B7 H16 H18 H30 H13 H13 H49 H49 645 B15 B15 0 H26 H26 H45 64 H19 H19 H45 645 5 B6 B6 H8H8 H20 H20 635 H44 H44 61 H12 H12 630 H25 H25 H46 625 H43 H43 H22 0 H23 H11 62 620 H42 H42 5 61 0 61 B16 B16 H22 H41 B5 H11 5 62 H41 640 H21 H31 B5 630 0 61 B17 H59 H59 H37H37 B4B4 H65 H65 H32 H32 H31 H36 B3 B3 635 B18 H60 H64 H36 H52 H60 H33 B18 変位追跡点 地すべり境界点 H52 H34 B20 B20 B17 B2 B2 H61 H62 H62 H63 H63 B25 H61 地表面 推定すべり面 B25B1 B1 B12 B12 滑落崖の ベクトル 0 10 20m 2.500m ボーリング点BV-19の 滑落 平面図Scale (境 崖下 すべり面深さを使用 界点 端 ) 新安地すべり 新安地すべり地平面図(拡大) 推定すべり面(等高線表示) 解析用TINモデル H=660m H=660m 点 時点 始 始時 開 開 量 量 測 測 640 0.100m 0.100m 635 630 A 0 61 B7 5 62 A B6 変位追跡点の移動ベクトル 変位追跡点の移動ベクトル 滑落崖のベクトル 滑落崖のベクトル 630 B 635 625 6 1 645 0 62 620 5 61 0 61 650m 650m 5 0 645 64 B 2.500m 2.500m 滑 滑落 落崖 崖下 下端 端 H13 H13 H12 H12 H19 H19 H20 H20 640m 640m H49 H11 H11 H21 H21 B25 B25 H24 H24 H18 H31 H31 H23 H18 H23 B22 B22 B21 B21 H=630m H=630m H22 H22 H8 B1 B1 B5 B2 B2 B24 B24 H26 H26 H25 H25 B4 B23 B23 H36 H36 H32 H32 H63 H63 H26 H26 B8 B8 B10 B10 B3 H44 H44 H45 H45 H41 H41 H28 H28 B11 B11 B20 B20 610m 610m 605m 605m 0.0m 0.0m 1.7m B17 B17 2.6 B14 B14 B18 B18 B16 B16 B9 B9 H30 H30 B19 B19 1.7 620m 620m H37 H37 BV19-4 ボーリングすべり面 (杭頭-9.4m) 多面体法による推定すべり面 2.6m B12 B12 地質調査による推定すべり面 B15 B15 10m 10m 20m 20m B13 B13 30m 30m 40m 40m 50m 50m 60m 70m BA - BA 断面 推定すべり面縦断方向(斜面傾斜方向)断面図 80m P=90m 新安地すべりの推定結果の考察 『遅延対応型』の新安地すべりでは,「地質調査から 経験的に推定されたすべり面」と今回の「多面体法」 は大きく異なる推定結果となった. 「多面体法」が間違っているのではないか ・・・? 「地質調査から経験的に推定されたすべり面」は,地 すべり発生直後に推定されたもので, それから2年 以上経過した,今回測量を行った期間では,別の挙 動を示していたのではないかと思われる(実際,移動 している範囲が違っている).よって,今回は当初と は別のすべり面を推定しているのではないかと考え られる. ③5/23降雨により 凡 例 柵1 町 道 拡大すべり (旧地すべり) N-1 墓 地 G47 カ ゴ 枠 積 段差(古い) T.5 G8 N-8 抑え盛土 舗装クラック 宅 大型土のう積 G22 G23 G28 伸縮計S-3 宅 G2 GH=656.50m Dep=17.5m B26 G38 G13 B25 G50 B24 B23 大型土のう積 G16 B22 B21 G39 B6 ヌキ板N-2 G15 G40 B8 B9 G6 B10 G5 G7 G42 伸縮計S-1 BV-3 GH=664.13m Dep=14.5m B11 G37 頭部滑落崖 ④縦排水 これによりほぼ終息 T.1 B12 G17 B13 G41 B20 B19 G43 ヌキ板N-1 B14 亀裂 ①兆候: N-2 B17 B16 G44 B15 N-5 N-4 墓 地 町 道 ・舗装クラック ・擁壁傾倒 B18 10 20m 平面図Scale B7 G4 BV-2 G1 G14 舗装クラック G35 G12 G26 T.6 住 G3 T.2 B5 G34 G24 S-3 住宅 0 N-6 伸縮計S-2 G36 T.6 G73 0.50m 滑 落崖 上端 拡大すべり B2 B3 B4 G29 G30 G72 B27 変位追跡点の移動ベクトル 滑落崖及びヌキ板のベクトル B1 ②横ボーリング排水 BV-1 G25 G33 G11 GH=646.17m Dep=19.5m G52 G74 B37 G27 G10 B39 G21 G19 G18 G71 G75 B34 B35 B36 時点 開始 測量 0.50m B38 G9 G31 B30 B28 B31 G45 G20 B32 B33 G46 B29 G76 G70 6 35 住 亀裂 G100 変位追跡点 地すべり境界点 ボーリング調査位置 町 道 G49 675 N 68 5 ・押え盛土 ・大型土のう 設置 (測点の一部消失) 相道寺地すべり地平面図 積 段差(古い) G8 亀裂 B39 B38 B39 G100 G45 B1 G20 B31 G46 G9 B32 G33 B33 B2 B2 G46 B37 G33 舗装クラック G31 B36 B3 B34 B35 B35 B29 G31 G29 B4 G76 G76 G28 G27 G22 G22 G29 B30 G10 BV-1 G30 G23 G70 (近隣点) G21 G19 G21 G18 G34 G11 G35 G18 G11 G75 BV-1 G71 G25GH=646.17m G75 Dep=19.5m BV-2 G24 G12 G25 (近隣点) G52 G74 G24 G36 G72 G6 G2 G4 BV-2 G3 伸縮計S-3 T.6 (近隣点) G73 G1 BV-2 G26 G5 655 0 B25 G50 B24 B24 G16 G16 G15 G15 G38 G13 G39 G40 B23 B22 B22 B20 B20 B21 変位追跡点 地表面 大型土のう積 B19 地すべり境界点 推定すべり面★★ボーリング点の 0.50m 端 崖上 ) 滑落 界点 (境 亀裂 データは使用しない 0.50m N-2 変位追跡点の移動ベクトル 滑落崖のベクトル 655 G37 B12 G17 B13 G41 G43 G43 B18 B17 G44 G44 B15 B16 相道寺地すべり 推定すべり面(等高線表示)-解析条件A 相道寺地すべり地平面図(拡大) 解析用TINモデル-解析条件A 伸縮計S-1 B10 B11 B11 頭部滑落崖 G7 G42 B6 B6 B7 B7 ヌキ板N-2 B8 B8 B9 B9 B10 645 6 3 B26 時点 開始 量 測 B5 65 0 T. S- GH=656.50m Dep=17.5m G14 舗装クラック 伸縮計S-2 65 635 B27 B27 635 645 640 B28 B28 64 0 大型 土の う 積 平面図Scale N-8 抑え盛土 660 20m 660 T.5 枠 10 カ ゴ 0 ヌキ板N-1 B14 660 655 0 645 65 64 0 645 640 65 0 635 A 655 635 660 A 開 測量 点 始時 0.500m B5 変位追跡点の移動ベクトル B4 滑落崖及びヌキ板のベクトル G35 G29 0.500m 滑落 崖 G33 H=655m G1 G12 G11 G2 別ブロック G21 G19 G75 T.6 B25 G71 G46 B31 B32 B23 G26 B22 G16 G74 G73 B27 630m 0.0m 10m 20m B19 B16 G41 B17 B18 0.1m BV-2 ボーリングすべり面 GL-8.5m(杭頭-8.7m) 1.0m 多面体法による推定すべり面 0.9m BV-1 ボーリングすべり面 GL-5.5m(杭頭-5.7m) B26 G17 B21 B24 G72 B29 B28 B33 G27 B36 G40 G39 G28 B38 B20 B34 1.0 G52 G76 G22 G23 G15 G24 0.9 道路 ↓ 640m G13 B35 G10 G42 G5 0.1 650m G38 B37 B15 G36 G34 B39 G4 G7 G37 B3 G30 B2 上端 G6 B6 B7 B8 B9 B11 B12 B13 30m 地質調査による推定すべり面 40m 50m 60m A - A 断面 推定すべり面縦断方向(主移動方向)断面図-解析条件A P=70m 20m G8 平面図Scale G70 G75 G75 655 G52 645 G73 B8 B8 B9 B9 B10 64 T.6 ボーリング点BV-1の すべり面深さを使用 G38 G13 655 635 B27 B27 635 G72 B6 B6 B7 65 0 G74 640 B28 B28 G71 B5 660 B30 660 B29 5 G76 G76 B39 B38 B39 G100 G45 B1 G20 B31 G46 G9 B32 G33 B33 B2 G46 B37 G33 B2 G31 B36 B3 B34 B34 B35 B35 G31 G29 B4 G28 G27 G22 G22 G29 G10 BV-1 G30 G23 (近隣点) G21 G19 G18 G21 G34 G11 G35 G18 G11 BV-1 (近隣点) G25 BV-2 G24 G12 G25 (近隣点) G24 G36 G6 G2 G4 BV-2 G3 (近隣点) G1 G26 G5 65 0 10 64 0 0 G14 B26 B25 G50 B24 B24 B23 地表面 変位追跡点 推定すべり面 地すべり境界点 G16 G16 B22 B22 時点 開始 量 測 B21 G15 G15 変位追跡点の移動ベクトル G40 G42 滑落崖のベクトル G37 B12 G17 B13 G41 B20 B20 B19 端 崖上 ) 滑落 界点 境 0.50m ( 0.50m G39 B18 B10 B11 B11 G7 G43 G43 B17 G44 G44 B15 B16 相道寺地すべり 推定すべり面(等高線表示)-解析条件B 解析用TINモデル-解析条件B B14 B7 660 66 0 65 0 64 5 64 65 0 635 A 655 635 0 655 BV-1 (近隣点) 645 640 A 時点 開始 測量 0.500m B5 変位追跡点の移動ベクトル B4 滑落崖及びヌキ板のベクトル G35 G29 0.500m G33 H=655m G1 G12 G11 G2 G13 B35 G10 G21 G19 G22 G23 G52 G76 G75 B25 G71 G46 B31 B23 G26 B22 G16 G73 B27 630m 0.0m 0.0 BV-1 ボーリングすべり面 GL-5.5m(杭頭-5.7m) B26 10m 20m B19 G41 B17 B18 0.1m 0.2m 多面体法による推定すべり面 0.0m 30m B16 BV-2 ボーリングすべり面 GL-8.5m(杭頭-8.7m) B24 G74 G17 B21 G72 B29 B28 B33 G39 G28 B38 B20 B34 0.2 640m T.6 B32 G15 G24 G27 B36 G40 G42 G5 0.1 650m G38 B37 B15 G36 G34 B39 G4 G7 G37 B3 G30 B2 滑落 崖上 端 G6 B6 B7 B8 B9 B11 B12 B13 40m 地質調査による推定すべり面 50m 60m A - A 断面 推定すべり面縦断方向(主移動方向)断面図-解析条件B P=70m 相道寺地すべりの推定結果の考察 地すべり発生から10日後に情報を入手し,現場に入 ったのは応急対策工事(横ボーリング工)が完了した ,発生から1ヶ月弱後であった(『早期対応型』) .地 すべり発生後,比較的早期のデータを得ることができ たため,精度の良い推定結果を得ることができたもの と考えられる. 地すべり発生の情報を入手する前の3日間で,伸縮 計で5~7cm程度の変位量を記録していた.もし発生 直後に情報を得ていれば,応急対策工事の前に推定 すべり面を提示することができたものと考えられる. 測量期間中に,犀川砂防事務所より移動量・移動方 向の観測結果の提示を求められた.変位追跡の測量 は価値のある作業であるので,今後積極的に行って いくことを期待する. 「多面体法」等の使い道① ボーリング計画の参考資料として (たとえば)1本目の位置は,経験で決める. 2本目の位置は, 「多面体法」等の推定結果を参考に決める. 相道寺地すべりの ボーリング調査位置 660 655 BV-2 65 0 64 5 65 0 64 0 635 645 640 655 660 BV-1 635 2本目 こちらの方が深い!! 地表面 推定すべり面 1本目 「多面体法」等の使い道② (地質調査による)推定すべり面の妥当性確認 (たとえば)地質調査によって,勾配が緩いすべり面が推定され た場合, 地質調査による 推定すべり面 勾配が緩い? これを確認するために,「多面体法」等を利用できるのでは・・・ (時間があれば)「多面体法」のデモ エクセルのマクロによる数値計算 AutoCAD LTのスクリプト機能を使った作図 をお見せしようと思うのですが・・・・ 最後に ●資料提供や測量調査に協力していただいた, (新安地すべり) 長野県長野地方事務所林務課 (相道寺地すべり)長野県犀川砂防事務所・(株)北陽建設 に対し,ここに厚く感謝いたします. ●「時空間測量研究会」に所属していなければ,この研究 をここまで進展させることはできませんでした. JACIC研究費(現地測量の費用)の申請 谷口氏の卒業研究(協力) 自分のモチベーションの向上(特に相道寺地すべりで の行動) 「多面体法」で論文投稿ができた たいへん感謝しております.