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「フードディフェンス」に対する世界の潮流

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「フードディフェンス」に対する世界の潮流
システム認証事業本部
「フードディフェンス」に対する世界の潮流
フードディフェンスに関わる背景
1984 年、青酸ソーダや針を菓子に混入させ菓子メーカーなどを脅迫するというグリコ森永事件が発生しました。
また、2007 年 12 月下旬から 2008 年 1 月にかけて中国の天洋食品が製造し、ジェイティフーズが輸入、日本生
活協同組合連合会が販売した中国製の冷凍餃子では、これを食べた千葉県と兵庫県の 3 家族計 10 人が下痢
や嘔吐などの中毒症状を訴え、このうち市川市の女児が一時意識不明の重体となり、調査の結果、中国製冷凍
餃子からメタミドホスなどの有機リン系殺虫剤が検出されたという事件もありました。
米国においては、2011 年の 9.11 同時多発テロの後、テレビ局や新聞社、上院議員へ炭疽菌が封入された封筒
が送りつけられ、肺炭疽の感染者を出した事件がありました。この事件を背景に生物兵器によるテロのリスクが
高まり、食品のサプライチェーンへの依存度が高まる中で、それがそのままテロの道具にされてしまう恐れが
あるとして、生物化学兵器や人為的な毒物の混入による身体的被害を防ぐために 2002 年、「公衆衛生安全と
バイオテロ対策法(連邦バイオテロ法)」が制定されました。この法律の中では、米国に輸入される人や動物向け
の食品飼料全般についてアメリカ食品医薬品局(FDA:Food and Drug Administration)に事前に通知することが
義務付けられています。
また、世界保健機構(WHO)は 2002 年に、「食への脅威 “Terrorist Threat to Food” その防止と対応のシステ
ムの確立と強化のためのガイダンス」を発表しています。WHO は、「食品テロ」を「市民を傷つけ、死に至らしめる
ため、または社会的、経済的、政治的安定を脅かすため、もしくはこれらの両方のために、薬品、細菌、放射性
物質を意図的に食品に混入する行為、または、それを行おうとする脅迫行為」と定義しています。
一方 EU では、バイオテロに対し広範囲にわたる法律でカバーされているため特別なシステムを必要とはしてい
ませんが、バイオテロの脅威を視野に入れたシステム改善が求められています。
英国では、英国規格協会(BSI)が 2008 年に PAS96(食品・飲料の防御、食品・飲料及びそのサプライチェーンへ
のテロ攻撃の検出及び抑止のためのガイドライン)を策定し、
2010 年に改正が行われました。
食料を輸入に頼る日本では、食品のグローバリゼーション
が進む中、国内で起こるかもしれない個人や小規模な組織
によるフードチェーンへの食品テロ行為、鳥インフルエンザ
ウイルスや口蹄疫など大型の感染症の脅威に備え、その
対策に企業自ら、もしくはフードチェーン全体で取り組んで
いかなければならない段階へきています。
食品の安全を確保する 3 つの概念
2002 年以降、「食の安全性を確保する方法」として 3 つの概念が重要視されています。
■フードセキュリティ(食の安全保障)
安全な食品を人々がいつでも入手できるようにし、食品の安全を確保すること。
国際制度、国内の安全保障制度、情報技術による輸入食品の安全確認、検疫や監視についてのシステムの
設置、確立、強化が求められる事項である。この先 TPP(環太平洋パートナーシップ協定)に参加し、貿易関税が
撤廃されれば、今まで以上に流入する輸入食品に対する日本政府のフードセキュリティに対する強化が求めら
れることになると予想される。
■フードセーフティ(食の安全)
食品製造や供給プロセスにおいて危害因子による食品汚染の防止又は低減を図り、食品の安全性を確保する
こと。
HACCP システム(日本では総合衛生管理製造過程)、もしくは HACCP 手法に基づく管理システムにより食品
衛生の確保を行うもの。近年は、HACCP 手法が取り入れられた ISO22000:2005 のマネジメントシステム認証
が拡大してきている。
■フードディフェンス(食の防御)
意図的な外部からの毒物の混入など、人為的に発生する危害因子に対し食品の安全を確保すること。
例として、外部からの敷地、工場へ侵入や入場者に対するセキュリティ強化、外部からの異物混入を防ぐための
包装仕様の変更や流通形態の見直し、従業員とのコミュニケーションへの配慮やトレーニングの強化、会社
情報のセキュリティ強化など、外部及び内部からの攻撃に対して備えておくこと。
【フードディフェンスとフードセーフティの相違点】
フードディフェンス(食品防御)
フードセーフティ(食品安全)
システムへの攻撃
システムの欠陥
細菌、化学物質
細菌、化学物質汚染
予期せぬ物質
既知の物質
予測不可能
予測可能
意図的
偶発的
高レベル/高濃度
低レベル/低濃度
犯罪捜査対象
当局の規制対象
米国では、9.11 事件以降、テロ攻撃に対してシステムやインフラの脆弱性と健康、経済、心理的影響という被害
者側の衝撃度を計る評価方法として、カーバー・プラス・ショック(CARVER plus Shock)評価方式を採用し、食品
産業自体が自らの工程、施設の脆弱性を評価し、個々の施設やプロセスの潜在的な弱さの把握を行うことで、
事件が起こった場合の影響や即時対応の手順について検討、改善することが勧められています。
カーバー・プラス・ショック(CARVER plus Shock)評価方式
C=Criticality(危険性):テロによる公衆衛生及び経済的影響の度合い(死者数、損失額)
A=Accessibility(アクセス容易性):テロ対象への物理的なアクセスの容易性(テロ実行後補足を免れる度合い)
R=Recuperability(回復容易性):テロ後のシステムの回復容易性(生産性を回復するまでに要する時間
V=Vulnerability(脆弱性):テロの遂行容易性(テロ物質混入の容易性)
E=Effect(影響):テロによる直接的損失規模(生産量の損失度合い)
R=Recognizability(認識容易性):テロ対象の認識容易性(認識の容易さ、訓練が必要か)
+Shock(衝撃度):被害者の健康・経済・心理的影響(死者数、国家経済の影響、被害額、歴史及び宗教等象
徴への衝撃度)
米国におけるバイオテロ法に連動した食品安全強化法
2011 年 1 月 4 日、米国政府は食品医薬品化粧品など諸法律を改正し、連邦保健福祉省・食品医薬品局(FDA)
の権限を多岐にわたり強化する食品安全強化法を制定しました。
この中では、第一に輸入食品の製造などを行う施設において、食品への危害を評価し、リスクに応じた予防的
管理措置を計画、実行することを義務付けています。これは米国内で消費される食品を製造、加工、包装、保管
するすべての施設は、バイオテロ法に基づきFDAに登録することを義務付け、健康への甚大な脅威や致命的な
危機の合理的な可能性がある場合、登録を停止する権限をFDAに付与することで、実質的に輸入が不可能に
できる防御システムです。登録施設には HACCP 方式の衛生管理の考え方を取り入れ、自然発生もしくは意図
せずにもたらされる危害だけでなく、意図的にもたらされる危害を含むリスクに対して予防的管理措置の計画、
実行を義務付けています(水産物 HACCP、ジュース HACCP で制度上既に義務化されている分野は対象外)。
現在、FDA がこの規制を実施するための最低限の基準は明らかになっていませんが、対米輸出を行う日本
国内の食品関連施設は少なくとも予防的管理措置を整備しなければ輸出をできなくなるのは確実です。この
法律で認証の義務化を求めてはいませんが、日本でこれに対応する予防的管理措置は、食品衛生法に基づく
総合衛生管理製造過程承認制度(マル総)、地方自治体による HACCP 認証制度、ISO22000, FSSC22000,
SQF2000 などの民間認証となります。
第二に、食品安全強化法は、米国の輸入業者に対し、輸入食
品が安全であることの検証を義務付けています。この中には
外国供給業者検証プログラムが含まれ、輸入業者に対し外国
供給業者の検証を行うことを義務付け、予防的管理措置が
行われたうえで製造された食品かどうかを確認する事項が
含まれています。また、FDA が必要と認めるときは、食品の
輸入に際し、政府または認証を受けた第三者監査人の証明書
を要求する権限を FDA に付与しています。これに連動して、
第三者監査人(団体)の認定制度及び試験所の認定制度を立ち上げることも示されています。
このように米国では、食品のグローバリゼーション化が進む中で、食品衛生対策だけでなく、バイオテロ、脅威と
なる新興感染症にも対応した危機管理システムづくりが国策として進められつつあります。
TPP とこれからの食品企業の対応
TPP(環太平洋パートナーシップ協定)に日本が参加することになれば、輸入関税の撤廃により TPP 加盟国から
の輸入農産物、輸入加工食品が日本に溢れ、また、非関税障壁(関税以外の方法で貿易を制限すること)の
撤廃により、日本の食品安全基準や制度まで大きな影響を受けることが危惧されています。日本の輸入食品に
対するモニタリング検査に対する予算は年々増加しています。しかしながら検疫に携わる 検査員の大幅な増員
は無く、日本の検疫体制が食品のグローバリゼーション化についていけていないのが現状です。
米国のように、食品危害に対する予防的管理措置・危機管理のシステムづくりは、それこそ輸入大国である日本
が優先的に取組まなければならない課題といえます。しかし、現在のところ、国策としてシステム的な防疫管理
強化対策の話は聞こえません。このことから、食品関連企業自らもしくはフードチェーンが連携して、食品テロ
行為、鳥インフルエンザウイルスや口蹄疫など大型の感染症の脅威に対する備えを整備していかなければなり
ません。
ビューローベリタスグループは、フードセーフティ、フードディフェンスに備えようとする食品関連企業様に対し、
食品分析から ISO22000 認証、食品輸送セキュリティ(TAPA フードディフェンス),FSSC22000 認証、食品供給
業者の監査(V-CAP:関係法令の基準に自主規格・基準を組み合わせたカスタマイズ代行(二者)監査)など幅広
い食品安全対策確認・サービスを提供しています。
食品分析に関しては、グループ会社の日本認証サービス株式会社(JCS)が、放射能検査、微生物検査、残留農
薬検査、アレルゲン検査、遺伝子組換え食品検査など危害分析やモニタリングを行う上での検査・分析を、生産
者から製造業者、商社、小売業者までフードチェーンに対して広く提供しています。柔軟な対応を心がけていま
すので、お客様の検査室としてご利用下さい。
ISO22000 認証、FSSC22000 認証、食品輸送セキュリティ(TAPA フードディフェンス)、および V-CAP に関して
は、ビューローベリタスジャパン株式会社(BV) システム認証事業部が提供しています。現在 ISO22000 認証数
は国内トップを誇り、認証機関として日本の食品業界での信頼を得ております。
さらに加速する食品のグローバリゼーション化を見据えて、世界のビューローベリタスグループを信頼性の証と
して是非ご活用下さい。
ビューローベリタスの食品関連サービス
(参考・引用資料)
「食品・農業バイオテロへの警告」 松延洋平著, (株)日本食糧新聞社発行, 2008
「放射能汚染からTPPまで – 食の安全はこう守る」 小倉正行著, (株)新日本出版社, 2011
食品サプライチェーン・ハンドブック 全米食品製造者協会(GMA), 日本 HACCP トレーニングセンター/(株)鶏卵肉情報センター, 2008
平成 23 年度 米国食品安全強化法の概要及び分析 日本貿易振興機構(JETRO)シカゴ事務所 農林水産・食品部, 2011
(ビューローベリタスグループ)
日本認証サービス株式会社 営業部 部長 安藤 寿人
【お問い合わせ先】
・日本認証サービス株式会社(JCS) 営業部
〒224-0033 横浜市都筑区茅ヶ崎東 4 丁目 5 番 17 号
TEL: 045-949-4620 FAX: 045-949-4621 URL: http://www.pure-foods.co.jp/
・ビューローベリタスジャパン株式会社 システム認証事業本部 営業部
〒231-0023 横浜市中区山下町 1 番地シルクビル 2F
TEL: 045-651-4785 FAX: 045-641-4330 URL: http://certification.bureauveritas.jp/
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