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地理的表示保護制度研究会(第2回)議事概要 1.
地理的表示保護制度研究会(第2回)議事概要 1.日 時:平成24年4月25日(水)13:30~15:45 2.場 所:農林水産省第3特別会議室 3.出席者:上原座長、荒井委員、川端委員、ジャン=シャルル・クルアン委 員、高倉委員、福士委員、山口委員 (国内・海外関係者) 西尾元弘 鳥取いなば農業協同組合福部支店長 坂元昭夫 鹿児島県天然つぼづくり米酢協議会会長 クレイグ・ソーン Consortium for Common Food Names(一般 食品名称に関わるコンソーシアム) 4.概 要 【要 旨】 ・ 農林水産省から、第1回研究会における委員からの指摘事項について資 料説明。 ・ 国内産地関係者及び我が国への農産物輸出関係者から、制度に対する要 望等についてプレゼンテーション及び質疑応答。 ・ 次回会合は、5月下旬に開催予定(関係業界からのヒアリング)。 【国内・海外関係者の主な発言】 <西尾氏> ・ 平成17年にJA鳥取いなばが「砂丘らっきょう」の一般商標を登録。 平成19年に県外業者が中国産らっきょうを使用した商品に対して「砂丘 らっきょう」との商標を使用していた事実を把握したため、警告文を送り、 製造・販売を取りやめてもらった。 ・ 県内他産地についても、当JAとは選別方法が異なるらっきょうを使用 した商品に「砂丘らっきょう」との商標を使用。同じ選別方法をとるまで は当該商標を使用してはいけないとの指導をした。 ・ 地理的表示制度については、より強い差別化に結びつくようなものとな ることを期待。 <坂元氏> ・ 自社の壺造り黒酢について昭和50年に「くろず」と命名したが、商標 登録をしなかったため、一般名称になってしまった。 ・ 地理的表示保護制度の導入により、商品の認知度が高まり、差別化が期 待できる。海外への展開、産業観光、地域活性化にも寄与。 ・ 対象品目は伝統食品や地域に根ざした食品に限定すべき。制度の維持・ -1- 運営・品質管理は、地域の協議会に委ねるべき。「本場の本物」を発展さ せた仕組みとすべき。地域団体商標制度を根本から改定し、地理的表示保 護制度を一本化すべき。 <ソーン氏> ・ 現在、各国において、地理的表示への対応の動きがあるが、それにより、 通商、貿易が阻害されないようにすべき。 ・ TRIPS協定における地理的表示の定義が明確でない。対象範囲が広 くとられると、貿易のあり方に障害をもたらす可能性がある。 ・ 原産地以外では著名でない商品も、積極的なマーケティングにより、世 界規模で販売が促進されることがある(例:アジアーゴ・ベーグル)。 ・ EUの制度では、複合語の一部(例:プロヴォローネ)、派生語(パル メザン)などまで保護の範囲としている。これらの名称の多くは世界(特 に新大陸)で一般的に使用されているものであり、これが保護されると貿 易に深刻な影響を及ぼすことから、保護対象外とすべき。 ・ また、一般名称は保護対象外とすべき。一般名称の判断に当たっての指 標として、出願者所在国以外での大量生産、国際貿易での取扱量、コーデ ックス規格などがある。 ・ 日本の制度が、潜在的な貿易構造や米国との貿易を損ねるような制度と なることは回避してほしい。 【委員の主な発言】 <複合名称、一般名称に関する問題について> ・ 一般名称に関する問題は、今後も引き続き議論していかなければならな い分野だと認識。 ・ カマンベールに代表される地理的表示に係る一般名称、複合名称の問題 は、特殊な事例であって、日本国内の地理的表示保護制度に基づき、日本 の伝統的な産品について保護したとしても、同様の問題が発生する可能性 はあまりないのではないか。 ・ ソーン氏の発表で挙げられていた既に一般名称化したものを表示した製 品が制度の導入に伴い輸出できなくなることへの懸念はよく理解できる。 しかし、この問題は、ヨーロッパの地名とアメリカ等の新大陸諸国の地名 がしばしば同じであること、ヨーロッパの伝統的かつ特殊な技術を有する 者が移民として新大陸に移住し、そのまま活用されたこと等によって生じ ており、旧大陸と新大陸との問題に集約されるのではないか。同様の問題 が日本の産品との関係で生じるとは思えない。日本の国内産品又は日本の 地名について同様の懸念があるということか。それとも制度内容としての -2- 懸念か。 → 後者である。確かに、日本の国内産品で現時点で具体的な懸念が生じ ている事例は確認されていない。EUの産品についても一般名称の問題 があるものは一握りである。しかし、当該産品が日本国内で登録された 結果、日本への市場アクセスが阻害されることを懸念している。 <産品の特徴を段階的に分析し、国際的な妥当性をもった制度にすべき> ・ 今後本研究会で検討される我が国の地理的表示保護制度は、国際的な妥 当性をもったものであることが大事になってくると感じた。その意味で、 対象となる産品に関して、他の国・地域でも再現できるものも保護対象と するのか、それとも特定の土地の風土でなければ再現できないもののみを 保護対象とするのかについて、地域の特殊性(土壌、気候など)、伝統性 (製法、技術)、加工度などに応じて段階的に整理・定義化することが必 要。その上で、ある地域のこの特殊性が、この特徴を引き出し、それが産 品の独自性、評判に結びついているのだということが確認できるようしっ かりと整理できれば、グローバルな妥当性を有するのではないか。 ・ 日本の制度が国際ルールに適合したものであるものとすることは当然 だが、当該制度が中国などアジアの様々な地域の関係者においても望まし い制度として受け入れられるものとすべき。 <制度の導入が消費者にもたらすメリットをより明確にすべき> ・ 地理的表示保護制度の導入に伴うメリットに関しては、輸出促進になる というだけでなく、日本の消費者や社会にどのようなメリットがもたらさ れるかを整理する必要。 ・ 消費者の安全・安心志向、美味しくかつ高品質なものを求める志向に本 制度がどう応えられるかが重要。最近は、消費者にとって原産地の偽装に 代表される「まがいもの」的な産品に対する不信感は強まりつつある。コ ントロールがしっかりされていることを担保することは重要だといえる。 <その他> ・ 西尾氏、坂元氏の発表を聞いていて、不正使用に対する権利行使、ブラ ンド産品の品質管理及び一般名称化の防止の観点で、商標登録の有効性を 改めて感じた。 ・ 「伝統」と一言で言っても、それが単に江戸時代から製造しているといっ た歴史的事実のみではなく、我々日本人としての価値観・慣習に結びつい たものであることが大切。 ・ 地理的表示への登録の是非を判断するにあたって、当該産品に関わる土 -3- 地が有する固有性は非常に重要だが、現状として、我が国においてその土 地だけで生産・加工が全て完結することはまれだろう。その中でどのよう な産品が地理的表示として保護されるかについてコンセンサスを得ること が重要。 ・ 地理的表示保護制度は、消費者に安全・安心な品質のものを届けるもの であるとともに、歴史・伝統を守るものであることから重要であると考え る。 ― 以上 ― -4-