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高負荷容量スラストアンギュラ玉軸受 「TAF X シリーズ」
NACHI TECHNICAL REPORT Components 31B3 Vol. October/2016 ■ 新商品・適用事例紹介 高負荷容量スラストアンギュラ玉軸受 機能部品事業 「TAF X シリーズ」 High Capacity Thrust Angular Contact Ball Bearing "TAF X series" 〈キーワード〉 ボールねじ・長寿命・高負荷容量・高速化 組み付け性向上 軸受事業部/技術部 伏 江 一史 Kazufumi Fushie 高負荷容量スラストアンギュラ玉軸受「TAF X シリーズ」 要 旨 1. 背景 ボールねじサポート用軸受は、工作機械、精密 油圧式から電動式への移行より、射出成型機の 測定装置、射出成型機、プレス機、ロボットなどの 高効率化がすすんでいる。ボールねじ支持軸受に ボールねじを支持する軸受である。その中で射出 対し、さらなる高速回転、高負荷容量、高剛性、低 成型機と大型プレス機は高スラスト荷重下で使用 トルク化が必要となってきている。NACHIは市場 されており、スラスト荷 重 を 受 ける軸 受として ニーズを調査し、新しい環境においても機能を十分 スラスト自動 調心ころ軸受やアンギュラ玉軸受を 発揮できる軸受を開発してきた。 採用してきた。しかし、機械の高効率のニーズを 背 景に、ボールねじの高速化の開発が高まって おり、NACHIは高負荷 容量スラストアンギュラ玉 1 軸受「TAF X シリーズ」を開発した。 2. 高負荷容量スラスト アンギュラ玉軸受 「TAF X シリーズ」 Abstract 1)開発の狙い Ball Screw Support Bearings support the axial loads of the ball screws used in machine tools, precision measuring devices, injection molding machines, press machines and robots. Among those applications, high thrust loads are required in injection molding machines and large press machines. Thus, spherical roller thrust bearings or angular contact ball bearings have been used to withstand the load. Due to the need for high-efficient machines, however, development of a high-speed ball screw has accelerated. NACHI has developed TAF X Series, high-load thrust angular ball bearings that can withstand the high load of the high-speed ball screw. 心ころ軸受、円筒ころ軸受とアンギュラ玉軸受の 従来の押し出し部位の構造は、スラスト自動調 組み合わせだった。NACHIが開発した「TAF X シリーズ」は、スラストアンギュラ玉軸受の多列組み 合わせを使用することにより、これまで採用して きた複雑な構造を簡易化することが可能となった。 さらに、ころ軸受から玉軸受への採用より、軸受の 高速および低トルク化が実現可能となった。 2)高負荷容量、長寿命 73Bシリーズと従来のTAFシリーズに対し、 「TAF 角度は40° 、50° から55° に変更し (図1) 、アキシアル X シリーズ」は限られた主要寸法内で使用鋼球の 動定格荷重向上による長寿命を実現した。 (図2) 直径を極力大きいものを使用している。さらに、接触 27 50 55 ° ø50 ° ø50 ° 73B シリーズ ø50 ø110 40 ø110 27 ø110 27 TAF シリーズ TAF X シリーズ 図1 各シリーズの模式図 600 ■73B ■TAF Ca 基本動定格荷重(kN) 500 ■TAF X 400 300 200 100 0 φ25 φ30 φ40 φ45 φ50 φ60 φ80 φ100 φ120 内径 (mm) 図2 基本動定格荷重 (NACHI比較) NACHI TECHNICAL REPORT 31B3 Vol. 2 高負荷容量スラストアンギュラ玉軸受「TAF X シリーズ」 3)アキシアル限界荷重 TAF Xのような大きなアキシアル荷重を受ける 軸受では、あるアキシアル荷重を超えるとボールと アキシアル荷重 軌道との接触楕円が過大になり、軌道面からはみ 出すことがある。 (図3)このときのアキシアル荷重を 接触楕円 アキシアル限界荷重と定義する。アキシアル限界 アキシアル荷重 荷重以上の荷重を負荷すると、軌 道 肩乗り上げ が 生じ、早 期に損 傷するケースがある。 「TAF X 2a 2b シリーズ」は軌道肩径を最適設計することにより、 従来品に対し、アキシアル限界荷重を大きくする 図3 軌道肩乗り上げ ことを実現した。 (図4) 600 ■73B ■TAF アキシアル限界荷重(kN) 500 ■TAF X 400 300 200 100 0 φ25 φ30 φ40 φ45 φ50 φ60 φ80 内径 (mm) 図4 アキシアル限界荷重 (NACHI比較) 3 φ100 φ120 4)高精度、高剛性 射出成型機用ボールねじは、多列組み合わせで 接触角55° の採用および予圧量の最適設計より、 使用することが主流のため、各軸受間の外内径寸 射出成型機の性能向上に要求されている高剛性は 法相互 差が大きいと軸と軸箱とのはめあい時に、 維持した。図5に 「TAF X シリーズ」と従来のTAF 各軸列間に荷重分布のアンバランスが生じ、発熱に シリーズとのアキシアル剛性を示す。接触角55° の 繋がる恐れがある。このため、 「TAF X シリーズ」の 採用により、射出成型機の性能向上に要求されて 標準精度はJIS 5級相当と設定した。 いる剛性をさらに高めた。 30 50TAF11 アキシアル変位量 (µm) 25 50TAF11X 20 15 10 5 0 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 アキシアル荷重 (N) 図5 アキシアル剛性線図 NACHI TECHNICAL REPORT 31B3 Vol. 4 高負荷容量スラストアンギュラ玉軸受「TAF X シリーズ」 5)低トルク、高速化 接触角55° の採用により、トルク増加が懸念さ 約15%トルク低減を実現し、許容回転数は、約25% れるが、軌道曲率および予圧量の最適設計より、 向上した。 (図6、図7) 「TAF X シリーズ」は従来のTAFシリーズに対し、 回転トルク(N・cm) 100 90 50TAF11 80 50TAF11X 70 60 50 40 30 20 10 0 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 回転数(min -1) 図6 回転トルク 許容回転数(min -1、 グリース) 6,000 ■TAF 5,000 ■TAF X 4,000 3,000 2,000 1,000 0 25TAF06 30TAF07 40TAF09 50TAF11 60TAF13 80TAF17 100TAF21 120TAF26 図7 許容回転数 6)組み付け性向上 5 スラスト自動調心ころ軸受、円筒ころ軸受とアン を多列組み合わせすることにより、ハウジング簡 ギュラ玉軸受の組み合わせ構造では、軸受サイズ 略化、スリーブ廃止が可能となる。さらに 「TAF X が異なっているため、ハウジングが複雑でシャフト シリーズ」は予圧調整されているため、組み付け時 スリーブが必要となっていたが、 「TAF X シリーズ」 の調整が不要となる。 3. ラインナップ B r1 r 本品のラインナップを以下の表1に示す。本シリー ズの標準仕様は、万能組み合わせに対応してい る単品フラッシュグラウンドである。また2列以上の r r1 ød øD 多列組み合わせにも対応している。 α° TAF X シリーズ寸法図 表1 TAF X シリーズ仕様 呼び番号 25TAF05X 25TAF06X 30TAF07X 35TAF09X 40TAF09X 40TAF11X 45TAF10X 45TAF11X 50TAF11X 50TAF13X 60TAF13X 60TAF17X 80TAF17X 80TAF21X 100TAF21X 100TAF26X 120TAF26X 主要寸法(mm) B r(min) 52 15 1.0 62 17 1.1 72 19 1.1 90 23 1.5 90 23 1.5 110 27 2.0 100 25 1.5 110 27 2.0 110 27 2.0 130 31 2.1 130 31 2.1 170 39 2.1 170 39 2.1 215 47 3.0 215 47 3.0 260 55 3.0 260 55 3.0 d D 25 25 30 35 40 40 45 45 50 50 60 60 80 80 100 100 120 接触角度 r1(min) 0.6 0.6 0.6 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.1 1.1 1.1 1.1 1.1 1.1 1.1 1.1 α 55 55 55 55 55 55 55 55 55 55 55 55 55 55 55 55 55 基本動定格荷重 Ca(N) 38,000 64,500 78,500 119,000 119,000 173,000 139,000 173,000 173,000 225,000 225,000 315,000 315,000 445,000 445,000 550,000 550,000 アキシアル限界 荷重(N) 25,700 40,500 56,900 85,500 85,500 131,000 103,000 131,000 131,000 174,000 174,000 280,000 280,000 405,000 405,000 540,000 540,000 4. ユニット型「WTF シリーズ」 開放型とは別に 「TAF X シリーズ」とハウジング を組み合わせたユニット型 「WTF シリーズ」もライ ンナップに追加した。軸受箱組み付け時の調整が 不要であり、 2列以上の多列組み合わせにも対応し ている。また、顧客の要求にあわせて、外付けシー ルの組み込み、とり付け穴位置、給脂用の油穴付 きなど特殊設計にも対応している。 図8 WTF シリーズ NACHI TECHNICAL REPORT 31B3 Vol. 6 5. シール付き密封構造 60 メンテナンスフリーのニーズに応えてオプション としてシール付きもラインナップに加えた。開放型 30 30 に対し軸受幅は広くなるが、密封性が高いランド からの異 物 混入を防止することができ、グリース ø50 供給などのメンテナス装置が不要となる。 (図9) ø110 ライディングシールを採用した。シールにより、外部 図9 シール付きTAF X シリーズ 6. まとめ 今回紹介した高負荷容量スラストアンギュラ玉 軸受 「TAF X シリーズ」は、射出成型機の長寿 命、高速化、組み付け性向上のニーズに貢献する ため開発された軸受である。本品は射出成型機 だけでなく従来のTAFシリーズが用いられた部位 への置き換えも可能である。 今後もさらなる技術開発をすすめ、射出成型機、 ボールねじサポート部位の発展に貢献する 「TAF X シリーズ」の開発・改良にとり組んでいく。 NACHI TECHNICAL REPORT Vol.31B3 October / 2016 〈発 行〉2016 年 10 月 12 日 株式会社 不二越 技術開発本部 富山市不二越本町 1-1-1 〒 930-8511 Tel.076-423-5118 Fax.076-493-5213