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成功の鍵は失敗事例にあり! 苦戦や撤退を余儀なくされる 経営者像が

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成功の鍵は失敗事例にあり! 苦戦や撤退を余儀なくされる 経営者像が
成功の鍵は失敗事例にあり!
苦戦や撤退を余儀なくされる
経営者像が明らかに
のは限界がある。
客観的な情報を
だが、
自社で調査し情報収集する
とまがないという。
ぐにわかる失敗事例は枚挙にい
退するなど、
事前調査を行えばす
見極めるということ。
海外に出て
「1はまず自らの業種の事業性を
得るには、
現地の深いリサーチが
業と民営企業があり、
国有企業は、
3は現地企業と合弁を組むと
きの心得だ。
合弁相手には、
国有企
2。
事前調査の重要性を表すもの
とながら運に恵まれたケースが
いくべき事業なのか否か。
バスに
専門機関へ依頼するなどコスト
できデータ類や人脈などを持つ
採用し育てる
少 な く な い。だ か ら あ ま り 参 考
乗り遅れるから出るという会社
「成 功 に は 個 人 の 能 力 も さ る こ
に は な ら な い の で す。む し ろ 失
はまず失敗します」
政府直轄と、
省レベルの国有企業
敗 事 例 こ そ 示 唆 深 い。こ れ を 企
を惜しんではならない。
自体が尊大で技術力などにプライ
がある。
政府直轄国有企業は存在
ドがあるので何かと口を出すこと
行っても喜ばれません。
IT、
シル
バー、
環 境、
農 業関 連などであれ
術力がそれほどではなくこちらに
が多い。
省レベルの国有企業は技
「中 国 に 生 産 加 工 型 企 業 が 出 て
費に期待するなら中国とベトナ
ばウエルカムでしょう。
現地の消
開する㈱マイツCEO(公認会計
日本および中国法人を対象に
コンサルティングサービスを展
どの国に出ていったら成功確
率が高いかの見極めも大切だ。
す
士)の池田博義氏はこう断言す
敗事例を数多く見てきた池田氏
ムで、
その他はまだこれからです」
る。
日系企業による中国進出の失
べてが低コストと思ったら大間
例 えば現地にニーズのないe
ラーニングの研 修ビジネスを中
と、
海外留学経験がある若い人た
「民営企業にも2種あります。国
内で育ってきた土着の民営企業
国に持ち込んで半年もたずに撤
任されるケースが多い。
が進出企業としての心得やなす
気料金が高い国もある。
違い。
カンボジアなど日本より電
1に連動して挙げられるのが
1、
出る前に事業性を見極める
中国企業には4つの種類がある
合弁相手のバックグラウンド
調査は念入りに
業進出の糧とすべきです」
オリンパス 文書偽造
べきことを7つ挙げる。
2、
自社の情報だけでは足りない。
2種あると心得る
「会社を動かすのは
スキルよりマインド」
そのことを忘れている
すのは社員のマインドだという
る。
それが6だ。
CEO 公認会計士
リサーチにお金をかける
3、
国有企業にも、
民営企業にも
4、
トップの考え方ができる
COOを置く
5、
スキルより社員のマインドを
重視する
社内キャリアアップを用意する
6、
優秀な2割の人材のために
ちが作った企業。
前者はこちらを
ことを忘れてしまっている。
マイ
7、
狩猟型より農耕型の人材を
取り込むことしか考えず、
後者は
着率が悪くなってしまう。
マイン
る社会常識的なものです。
それを
ドの育 成こそが正しいスキルを
ンドといっても挨 拶からはじま
ければ失敗の確率は高くなる。
こ
合弁相手のバック
いずれにせよ、
グラウンド調査は念入りにやらな
作っていくのです」
欧米的なビジネスルールを理解
こで資金を惜しむべきではない。
その上で社員の上昇志向に合
うようなキャリアアッププラン
しているので比較的対応し易い」
4~7はすべて企業内の取り
組みに関するものだ。
を作るべきだと池田氏は力説す
ジネスをするというのが常識。
だ
ためにも職務等級制度を明確に
「彼らのモチベーションを高める
教え込んでいかないと人材の定
「中国では企業のトップ同士がビ
お話になりません。
長期常駐する
して昇進への道を明らかにする。
からトップが出ていかなければ
必要はないが、
即断即決が求めら
特に8対2の法則で会社を実質
員。
だからそこを特に厚くしなけ
的に動かしているのは2割の社
2、
3のCOOを置かなければビ
ればいけない」
え方を十分理解できるナンバー
ジネスが円滑に進みません」
7に関しては「中国人=拝金主
義」
というイメージが定着してい
れるケースが多いのでトップの考
社内的にトップを悩ますのは
社員教育だが、
日系企業は5を理
倒で欧米企業への転職を希望す
※注1 「ASEAN4」
とはマレーシア、
タイ、
インドネシア、
フィリピンの4ヵ国で構成される地域を指す。
※注2 「NIEs3」
とはシンガポール、
台湾、
韓国」
の3カ国
(地域)
で構成される地域を指す。
※注3 香港は中国に含めて集計されている。
池田 博義
06
Emerging Company 2012.07 vol.29
07 Emerging Company 2012.07 vol.29
いけだ・ひろよし/ 1948年生まれ。
同志社大学経済学部卒。
上海を拠点
に中国8ヵ所にオフィスを設置。
中国
進出18年、中国全土従業員350名、
中国顧問先1700社を抱える。
出所:経済産業省
「海外事業活動基本調査」
より加工
取締役と製造課長らが買い付けなどに絡
み仲介会社の幹部と共謀し、
8年間で計
約1億4500万円を着服した。
(6月29日)
06年度
07年度
08年度
09年度
10年度
0
05年度
123
マイツ
52
45
アジア経営者連合会
アジア研究委員会顧問
90
68 74
50
50
るが、
池田氏によるとスキル一辺
303
IHIマスターメタル
(IHI子会社)
1億4500万円
0
339
350
2000
181
200
200
68
65
75
69 77
71
82
100
151
150
解していないところが多いと池
371
執行役員で韓国の現地法人社長が会社
の文書を偽造したことが社内調査で明ら
かになったとして解任。
背任や横領の疑い
もあるが、
「全容が解明できるまで詳細は話
せない」
(広報)
としている。
(6月15日)
109
235
231
241
4000
進出数
撤退数
300
田氏は嘆く。
【現地法人の地域別撤退数と進出数の推移(単位:社)
】
タダノ
(クレーン大手)
7億円
10000
中国
400
る狩猟型ではなく、
マインドを育
かぶらぎ・ゆうすけ/ 1972年生まれ。
慶応義塾大学経済学部卒。
在学中に
訪れたベトナムに強く惹かれ、
大手監
査法人に在職中にベトナムへ赴任。
日本人初のベトナム公認会計士。
「社員教育がスキルに偏ったもの
代表 公認会計士
てる上でも農耕型の人材を採用
蕪木 優典
になっており、
実際に会社を動か
I-GLOCAL
米国の弁護士資格を有し法務を担当して
いた米国籍の米国子会社の元副社長が、
実在しない訴訟の手数料などの法務費用
を水増しし、
架空の法律事務所に支払うな
どして2010年から約7億円を横領してい
た疑い。
(6月9日)
250
社数
ASEAN4
NIEs3
総合
成功する人、しない人。
「人が良い」より
「 嫌 わ れ る タイプ」
が騙される
アジア経営者連合会
会員企業
2012年6月に報道された
主な不正事件
社数
400
海外進出、
海外進出、
力がある人間がいる、
その人が不
不正をしても見つからない状態
で戻らない。
それほどの気持ちで
「失敗する会社は、
明確なコンセ
になっている、
という3つ要素が
んとした言葉で具体的に説明す
氏は強調する。察してください、
ることを怠る傾向にあると蕪木
ある場合に発生します。
特に重要
し、
マインドや職務等級付けを徹
底していかなければならないと
プトや実現可能で具体的な事業
なのは最後で、
不正が判明したら
社です。
これではビジネスが机上
本の企業があまり得意ではあり
作らなければならない。
これは日
すぐに分かるようなシステムを
正をできる立場にいる、
その人が
いう。
採用時に家庭環境などまで
よろしくお願いしますでは中国
資や人材採用を行ってしまう会
計画を持たずに大規模な設備投
「合弁しようとする相手に、
信頼
立ち上げ以前に撤退ということ
他 社 の 意 見 ば か り 聞 く 経 営 者。
はまらないが自分に都合の良い
は必ずしも自社のケースに当て
難 し い。も う 1 つ 挙 げ ら れ る の
張り付いてやらなければ成功は
経営者本人が現地に乗り込んで
せ の 経 営 者 で す。海 外 進 出 時 は
「まず、
すべてにわたって他人任
ポートなどの実績を多数持つ。
務等総合的アドバイス・実務サ
設立サポートや設立後の会計税
がちで、曖昧な言葉を使い、
きち
日本人は相手も感覚的に同じ
だろうという前提で何かを始め
異常に増減すると警告が出る購
者 か ら の み の 購 買、購 買 単 価 が
担当者の定期的な異動や指定業
ど 購 買 絡 み の 不 正 も 多 い の で、
た、業 者 か ら の キ ッ ク バ ッ ク な
ク を 入 れ ら れ る よ う に す る。ま
は本社経理部門でも常にチェッ
す。特に現金、銀行預金について
て牽制することが求められま
「複 数 人 に よ る チ ェ ッ ク を 入 れ
い。井上氏はこう話す。
営がおかしくなるケースも多
間が横領などの裏切り行為で経
進出すると決めたら成功するま
ら止めたほうがいいと断言する。
外国に出ると騙されるという
声が多いことについて蕪 木氏は
こう分析している。
目立つという。
コンプライアンスが杜 撰な例が
イプの人が騙されることが多い
いというのではなく嫌われるタ
ようです。
人間はお金で動くとい
ゆるところに気を遣うような人
やすい。
人の良さそうな人やあら
特徴があります」
「失 敗 す る 経 営 者 に は 共 通 す る
うような感覚で出た人は騙され
は意外に騙されにくい」
ティは低くジョブホッピングも
ん。い ず れ も 会 社 へ の ロ イ ヤ リ
方は必ずしもそうではありませ
人 に 近 い と 思 わ れ ま す が、考 え
トナムの人はその容姿から日本
「私 の 事 業 領 域 で あ る タ イ や ベ
注意点として井上氏が挙げる
のが以下だ。
て牽制する必要があります」
語の分かる日本人も他に雇用し
せ っ ぱ な し に せ ず、通 訳 や 現 地
場 合 が 多 い の で、そ の 方 に 任
確 に す る。ま た 現 地 語 が 流 暢 な
「不正は、
不正ができるくらい能
巡り合う機会を逃す可能性があ
図っていかなければ良い人材に
社員とのコミュニケーションを
く、少 し で も 現 地 語 を 覚 え 現 地
本人や通訳とだけ話すのではな
な る と 井 上 氏 は 付 け 加 え る。日
のスピードの遅さは致命的に
最後に新興国では状況が日々
流 動 的 に 変 わ る た め、意 思 決 定
拠となるからです」
者(裁判官、税務署)に対する証
と り は 文 書 で 残 す。そ れ が 外 部
い。また、取引先や社員とのやり
たくないよりはあるほうがい
タイに進出する日系企業の会社
税理士)の井上慶太氏。
井上氏は
き わ め て 一 般 的。そ ん な 中 で 契
ると警告してくれた。
現地社員のさまざまな不正を見抜く
チェック機能を社内に作っていない
人はお金で動くという感覚で
ビジネスを行う経営者は騙されやすい
スキルアップに偏り、
社員のマインドの養成を疎かにして
定着率を悪くする
合 も あ り ま す が、契 約 書 は ま っ
す。契 約 書 が 有 効 と な ら な い 場
約書が唯一日本人を守る武器で
失敗事例の典型的なもの
また、
が不正によるものだという。
こう話すのはA・Iネットワー
ク㈱ 代 表 取 締 役( 公認 会 計 士・
唯一日本人を守る武器が契約書
取引先や社員とのやりとりは
文書で残す
「騙される人というのは、
人が 良
に経営しているような会社ほど
指摘する。
一部の経営者が独善的
があるので要注意だと蕪木氏は
者に給料を払 うといったケース
ンを懐に入れていたり、
架空採用
現地採用の総務担当者
さらに、
などが採用に当たってコミッショ
させていかなければなりません」
んと作り担当ごとの管理を徹底
きだし、
内部統制の手続きをきち
起きらないような社風を作るべ
くさんあります。
ですから不正が
たら分からないようなものがた
ません。
不正は複数人につるまれ
の空論に終わってしまい事 業の
ていないからお互いに信 頼でき
さらに自分の立場を守ることを
になってしまうでしょう」
な綺麗事を前提にするような人
するな、
こちらもあなたを信頼し
ません。私の知る例ですが、信頼
は相手から本質的には尊敬され
してから合弁しようというよう
ないと成功はおぼつかない。
踏み込んで採用するべきなのだ
ないのだ。
やアジアのビジネスでは通用し
失敗事例の典型的なものは不正
3つの要素が揃うと
不正が発生する
海外進出の成否を日本人特有
の 考 え 方 や 行 動、コミュニケ ー
る仕 事をするために疑ってもい
他人任せで
専 門 家 の 意 見を聞かない
経 営 者 は 失 敗する
ションの観 点などから斬るのが
れ、
こちらはあなたが投資して儲
かってくれればいいから、
と相手
いから契約書に何でも書いてく
「日系企業が中国やアジアで失敗
す。
この人はあちこちと合弁して
に話すベトナム人経営者がいま
蕪木優典氏だ。
事をしているという感覚から抜
優先するような自社の社員の意
買管理システムによる管理を行
いますがどれも成功しています」
見ばかり聞いて専門家の意見を
うことは避けられません。
けられないことがすべて背後に
聞かないバランスに欠けた経営
海外進出については、
進出する
こと自体が目的化したケースな
者です」
現地社長など部下に当たる人
業種の事業性を見極めず、
明確な事業計画を持たず、
バスに乗り遅れまいとして出る
日本人同士が日本でビジネスをする
という感覚が抜けきらない
自らの情報収集にこだわり、
現地のリサーチに
お金をかけようとしない
いのうえ・けいた/ 1969年生まれ。
一橋大学商学部経営学科卒業。
大手
メーカー、
大手監査法人勤務後、
バン
コクの日系会計事務所に入所。
タイを
中心にベトナム、
モンゴルへも展開。
氏は言う。
が、
日系企業でそこまで徹底して
代表 公認会計士
いる企業はほとんどないと池田
井上 慶太
A.I. ネットワーク
ま た、現 地 採 用 の 社 長 の 場 合
は、本 人 枠 の 交 際 費 の 範 囲 を 明
あると思います」
するのは、
日本人同士が日本で仕
i・GLOCAL代 表 取 締 役の
アジア経営者連合会
会員企業
失敗する
経営者
6つの法則
08
Emerging Company 2012.07 vol.29
09 Emerging Company 2012.07 vol.29
成功する人、しない人。
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