Comments
Description
Transcript
国の資産と債務の改革の新しい動き
国の資産と債務の改革の新しい動き Government Asset & Liability NEWS 2007 年7月(Vol.4) 財務省理財局 国の資産・債務改革の推進・・・・・・・ 1 (国有財産) 庁舎・宿舎で約 1.6 兆円の売却収入を達成・・・・ 2 (財政投融資) 財政融資資金貸付金の証券化について・・・・・・ 6 (国債管理政策) 国債保有者層の多様化への取組みについて・・・・ 7 資産・債務改革関連会議の 最近の動き・・・・ 9 国有財産、財政投融資、国債といった国の資産・債務両面の管理に 携わる理財局では、 「簡素で効率的な政府」を実現する観点から、責任 を持って「国の資産・債務改革」に取り組んでおります。 今回は、国有財産に関する有識者会議から報告された「国有財産の 有効活用に関する報告書」を中心とする内容をお届けします。 本ニュースレターは、http://www.mof.go.jp/jouhou/shisansaimu/news_04.pdf においても掲載しております。 国の資産・債務改革の推進について 「簡素で効率的な政府」を実現し、債務の増大を抑制する観点から、今後 10 年間(~ 平成 27 年度末)に国の資産の対名目GDP比の半減を目指します。その規模を着実 に圧縮するため、積極的な取組みを進めています。 -1- 庁舎・宿舎で約1.6兆円の売却収入を達成 ~東京23区内の庁舎及び全国の公務員宿舎の移転・再配置計画の策定~ 「国有財産の有効活用に関する報告書」 (平成 19 年6月 15 日) 6月 15 日、国有財産の有効活用に関する検討・フォローアップ有識者会議は「国 有財産の有効活用に関する報告書」をとりまとめ、尾身財務大臣に報告し、公表しま した。また、同報告書の内容は、6月 19 日に尾身財務大臣から、閣僚懇談会及び経 済財政諮問会議に報告されました。 今回の報告書では、東京 23 区内の庁舎及び全国の宿舎の移転・再配置計画(試案) が策定されています。これにより、昨年から取り組んできた庁舎や公務員宿舎といっ た国有財産の見直しは検討段階から実行段階へと移行していきます。 報告書の概要 今回の報告書では、23 区内の庁舎と全国 の宿舎を集約化するため、23 区内の庁舎〔詳 細は2、3ページ〕 、23 区内及び 23 区外の 宿舎〔詳細は4ページ〕それぞれについて 移転・再配置計画が策定されました。 この計画により東京 23 区内で 73ha、全国 では 382ha に及ぶ土地が捻出される予定で あり、その売却収入の目安は 1 兆 6,400 億 円と見込まれています。 伊藤滋座長から尾身財務大臣へ完成した報 告書を手交(平成 19 年 6 月 15 日) 今後の課題 今後は、計画の着実な実施に向けて取組をさらに強化していく方針です。さらに、 今回、大量の跡地が捻出されることから、跡地利用のあり方も重要な課題です。この ため、公正透明な手続の下、環境や景観にも配慮しながら、財政健全化への貢献を第 一とした有効活用に向け、具体策を検討していく予定です。 -2- 移転・再配置計画①:東京 23 区内の庁舎 (1)計画の概要 東京 23 区内の庁舎は、昨年8月より有識者 会議が 339 件全てにメスを入れ、現地視察や 省庁等からのヒアリングを含め、精力的に審 議されてきました。その上で、財政健全化へ の貢献を第一としつつ、有効活用の一環とし て、危機管理能力の強化や、環境・まちづく り・景観への配慮等により、社会全体の活力 や安全性の向上を図ることを基本として、移 有識者会議での審議風景(平成 18 年 12 月) 転・再配置計画を策定しました。 今回の移転・再配置計画では、霞が関の有効活用、大手町等に所在する庁舎の移転、省庁別に保 有する会議室・研修所・倉庫等の廃止・集約化が大きな柱となっています。 (2)霞が関:財務省と内閣府庁舎を高層の合同庁舎に 霞が関については、まず、霞が関のまちづくりのビジョンと基本戦略として、①財政健全化への 貢献、②霞が関の都市再生を設定しています。 まちづくりのビジョンと基本戦略①:財政健全化への貢献 霞が関は、未利用の容積を活用して庁舎を高層化し、霞が関以外にある中央省庁等の庁舎の 集約地として有効活用し、捻出した大手町等の土地を処分することで財政健全化に貢献する。 まちづくりのビジョンと基本戦略②:霞が関の都市再生 財政健全化への貢献を第一としつつ、環境に配慮したまちづくり、危機に強く安全なまちづ くり、美しく魅力のあるまちづくりを基本として、霞が関の都市再生を進める。 これに基づいて、現行の未利用の容積を最大限活用することを基本とし、その上で、行政府ブロ ックの容積率の取扱いについて、現行容積率(500%)設定時からの状況変化等を踏まえ、早期の 見直しに向けて、東京都や千代田区等と協議する方針です。 霞が関の有効活用策 ¾ 霞が関は庁舎敷地を売却せず、高層合同庁舎化。 ¾ 内閣府(講堂等)を高層集約化(容積率 500%、高さ 65m程度) 。 ¾ 財務省を高層合同庁舎化。 ※容積率(500%)の引上げ、歴史的建築物の取扱い等については、東京都・千代田区と協議 -3- (3)大手町:庁舎を移転し、跡地を捻出 大手町については、跡地の資産価値を最大にするため、東京国税局などが入居する大手町合同庁 舎第3号館と気象庁の敷地をまとめて余剰地として捻出することを目指します。 このため、東京国税局を海上保安庁海洋情報部が所在する築地に移転します。また、気象庁につ いては、情報処理システムを主に清瀬市に移転した上で、それ以外の主要部分を虎ノ門の公有地に 移転します。なお、移転によって捻出される庁舎跡地(約 2.4 万㎡)の具体的な処分方法について は、今後、検討していく予定です。 主要庁舎(霞が関・大手町等)の移転・再配置のイメージ (4)各種庁舎・会議室・研修所・倉庫等:廃止もしくは集約化 東京 23 区内にある分室や会議室といった庁舎の中に は、年間の稼動実績が低く、有効活用されていないもの <会議室・研修所・倉庫等> ①有効活用されておらず廃止 もあります。今回、こうした庁舎が 35 箇所洗い出され、 ・五反田共用会議所〔内閣法制局〕 そのすべてを廃止することとしました。 ・青山分室〔人事院〕 また、研修所や書庫・倉庫は、各省庁がばらばらに保 有しています。こうした施設については、効率的な運用 を図るため、共同の施設に集約することとします。 例えば、人事院、総務省、財務省、厚生労働省が保有 等 【合計:35 箇所】 ②省庁別を改め集約化 ・国家公務員研修センター ・総務省統計研修所 ・財務本省研修所 する研修所は西ヶ原に新設する共同研修所に集約化し、 ・厚生労働本省庁舎白金台分室 等 国税庁、文部科学省、総務省が保有する倉庫等は大井に 新設する共同倉庫に集約化します。 ⇒共同研修所(西ヶ原)に集約化。 【合計:31 箇所】 -4- 移転・再配置計画②:宿舎 (1)概要 東京 23 区外の地域の宿舎については、中間とりまとめ(平成 19 年3月)で設定した検討対象地 域や宿舎廃止基準を踏まえて、各財務局等で移転・再配置計画の検討を行いました。併せて、23 区内の宿舎も、前回(平成 18 年6月) 、庁舎敷地に所在するなどの理由で対象外となっていた宿舎 や司法府が維持管理する宿舎を新たに対象に加え、移転・再配置計画を改訂しました。 (2)23 区外の宿舎 23 区外の宿舎については、政令指定都市等を中心に 全国 11 の地域(90 市町)を検討対象地域に選定しま ①法定容積率に対する利用率が5割未満 した。その地域内に所在する 1,014 箇所の宿舎につい ②小規模宿舎(1,000 ㎡未満) て、昨年6月の 23 区内の宿舎の移転・再配置計画も ③平成 27 年度末までに耐用年数を迎える 考慮した宿舎廃止基準に基づいて検討し、地域の実情 も踏まえ、移転・再配置計画を策定しました。 本計画では、平成 27 年度までに、検討対象地域内 の宿舎が 1,014 箇所から 377 箇所に削減されます。こ れにより、309ha の土地が捻出され、売却収入の目安 として約 6,000 億円が見込まれています。 (3)23 区内の宿舎 23 区内の宿舎は、昨年6月に移転・再配置計画を策 定した際、庁舎と合築されている又は庁舎敷地の上に 所在するという理由から、一部の宿舎が対象外となっ ていました。 今回、23 区内の庁舎の検討の中で、関係する庁舎が 廃止されることになったため、合わせて廃止すること になりました。 こうした宿舎と司法府が維持管理する宿舎の追加 を反映させるため、昨年6月の東京 23 区内の移転・ 再配置計画に所要の改訂を行いました。 改訂された移転・再配置計画により、平成 27 年度 までに、東京 23 区内の宿舎は 360 箇所から 112 箇所 に削減され、売却収入の目安として、約 5,000 億円が 見込まれています。 -5- 宿舎廃止基準 宿舎 ④そのほか都市再生等への活用が考えら れる土地に所在する宿舎 財政融資資金貸付金の証券化について 証券化のメリットについて 財務省では、財政融資資金貸付金の証券化の実施に向け、民間の知見を活用しつつ実務 的・技術的な検討を進めるために、有識者による検討会を開催しており、これまで9回の 会合を行いました。 第9回会合(6 月 18 日)では、 「経済財政運営と構造改革に関する基本方針 2006」(平成 18 年 7 月)において、証券化について「メリットがコストを上回る場合、積極的に実施する」 とされたことを踏まえ、証券化のメリットについて検討を行いました。その結果、 ○ 財政融資資金において、マチュリティーのギャップを解消するように証券化を実施し た場合には、金利変動による損失発生リスクの軽減が図られる ○ 金利変動による損失発生リスクの軽減とのメリットとコストとの関係についても、証 券化のコストを勘案してもなお、メリットが上回る場合がありうる との点について、各委員の間で概ねの一致が得られました。 財政融資資金のマチュリティーラダー(イメージ図) 貸付金回収額 資産 財投債の要償還 額 負債 ① ② 証券化により、将来の回収金を前倒しで現金化。 この現金を活用して、マイナスのギャップを縮小。 ※ 斜線、網掛けは、マチュリティーギャップ(資産-負債) アドバイザー選定手続きの結果について 上記実務検討会における選定基準の検討も参考に、5 月 7 日より証券化商品の設計の支 援を担当するアドバイザーを募集した結果、15 社より応募があり、応募者に対して書類審 査及び口頭審査を実施しました。その結果、大和証券エスエムビーシー株式会社(正)と 三菱UFJ証券株式会社(副)の2社をアドバイザーとして選定することとし、6 月 20 日 にこれを公表しました。 今後、証券化スキームの検討、コンピューターシステムの整備、引受会社(アレンジャ ー)の選定等を予定しており、今年度中の証券化の実施に向けた取組みを継続しています。 ⇒財政投融資に関する情報については、http://www.mof.go.jp/jouhou/zaitou/zaitou.htm を御覧下さい。 -6- 国債保有者層の多様化への取組みについて 多様な投資家が市場に参加していれば、市場の状況が変化した場合にも、市場に深みを 増すことにより、取引が一方向に流れない効果が期待できます。そのため、理財局として は、国債保有者層の多様化、特に個人や海外投資家の国債保有促進に力を入れています。 以下ではその内容についてご紹介いたします。 個人の国債保有促進 理財局では、平成 15 年3月に個人向け国債を導入するなど、個人の国債保有促進に取り組ん できた結果、家計の国債保有額は 12.7 兆円(平成 15 年3月末時点)から 33.4 兆円(平成 19 年 3月末時点)へと大きく拡大しています。 今後さらに個人の国債保有を促進すべく、国債に関するPRを強化した他、国債トップリテー ラー会議を本年6月に立ち上げました。また、本年 10 月より、個人が身近の金融機関で国債を 購入し易くするため、新型窓口販売方式を開始することにしました。 (1)国債に関するPRの強化 夏の個人向け国債の販売にあたっては、これまでのテレビ、新聞、 ポスターの他に、広告貸切電車(いわゆる「電車ジャック」)を新た に試みました。また、パンフレットについても内容を質量ともに充実 させ、詳細版のパンフレットでは、団塊世代、独身OL、若手サラリーマンの具体的な購入動 機の事例を紹介するなど、国債をより身近に感じてもらえるよう、PRを強化しました。 <電車ジャックの模様(山手線)> <新パンフレット> (2)国債トップリテーラー会議の開催 個人に対する国債販売を更に促進するため、個人向け国債の募集取扱を積極的に行っている 金融機関と当局との間で相互に意見を交換する場として、「国債トップリテーラー会議」を本 年6月に立ち上げました。今後も、国債の販売上位機関に参加していただき、定期的に開催し ていく予定です。また、会議の開催と同時に、各業態ごとの販売上位機関を公表しており、こ れについても今後半年ごとの実績を公表する予定です。 -7- 海外投資家の国債保有促進策 海外投資家の投資行動は、下図に見られるように、国内投資家の行動と異なる傾向にあります。 国債市場の安定のためには、海外投資家の国債保有促進は重要な課題です。 理財局では、海外投資家の日本国債に 国債売買動向 (兆円) 対する理解が一層深まるよう、平成 17 年 4 1月より国債に係る海外説明会(海外IR) 3 都市銀行等 海外投資家 買い越し を実施しています。 2 そうした取組みもあり、海外投資家の 国債保有額は 25.9 兆円(平成 16 年 12 月末 1 時点)から 42.1 兆円(平成 19 年3月末時 0 点)へと増加しています。さらに、従来の -1 北米、欧州、アジア・オセアニア地域に -2 加え、4~6月には、中東地域、北欧・ロ シア地域で初めて海外IRを実施し、説明会 売り越し -3 H16.4 H16.6 H16.8 H16.10 H16.12 H17.2 H17.4 H17.6 H17.8 H17.10 H17.12 H18.2 H18.4 H18.6 H18.8 H18.10 H18.12 (注1) FBを除く (注2) 「都市銀行等」とは、都市銀行、あおぞら銀行、新生銀行を指す。 (出典) 日本証券業協会 及び個別投資家訪問を行いました。 <クウェートでの説明会の模様> 中東およびロシアでの説明会は、初めての開 催でしたが、予想以上に現地投資家の関心が高 く、多くの政府機関関係者、金融関係者が参加 し、活発な質疑応答が行われました。参加者か らは、直接日本経済や日本国債に関する説明を 受けることができ、非常に有益であったとの声 が聞かれるなど、これらの地域における日本国 債への理解が促進されました。 <モスクワでの説明会の模様> また、アブダビ、モスクワにおいて、説明会 終了後記者会見を開催しました。テレビカメラ を持ち込んだメディアが開始 30 分前から積極 的に取材を行うなど、両地域における海外IR に対する注目の高さがうかがわれました。また、 現地マスコミも多数つめかけ、当日の模様は現 地新聞、テレビでも取り上 げられました。 -8- 資産・債務改革関連会議の最近の動き 国有財産関連 ● 国有財産の有効活用に関する検討・フォローアップ有識者会議 (⇒P.2参照) 5月 7日(第 17 回会合) 議題 霞が関地区の整備・有効活用の方向性について 5月 25 日(第 18 回会合) 6月 1日(第 19 回会合) 議題 報告書とりまとめに向けた討議 6月 15 日(第 20 回会合) 議題 「国有財産の有効活用に関する報告書」のとりまとめ ⇒詳細は、http://www.mof.go.jp/singikai/zaisanfollow_up/top.htm を御参照下さい。 ○ 財政制度等審議会 国有財産分科会不動産部会 6 月 19 日(第 11 回会合) 議題 庁舎等の使用調整計画について ⇒詳細は、http://www.mof.go.jp/singikai/zaiseseido/zai3.htm#fa を御参照下さい。 ○ 都市再生本部 / 国家公務員宿舎の移転・再配置を通じた 都市再生の推進に関する連絡調整会議 6 月 27 日(第2回会合) 議題 ○ 「東京 23 区内の宿舎の年度別移転・再配置計画(試案) 」の改訂 国有財産情報公開・売却等促進連絡会議 / 国有財産有効活用等連絡会議 7月3日 議題 国有財産情報公開・売却等促進連絡会議の改組 国債管理政策関連 ○ 国の債務管理の在り方に関する懇談会 4月 5日(第 11 回会合) 議題 平成 19 年度の債務管理等について 6月 1日(第 12 回会合) 議題 主要投資家を取り巻く制度・環境の変化と国債管理政策等について ⇒詳細は、http://www.mof.go.jp/singikai/kokusai/top3.htm をご参照下さい。 -9- ○ 国債市場特別参加者会合 5月 25 日(第 16 回会合) 議題 最近の国債市場の状況と今後の見通し等について ⇒詳細は、http://www.mof.go.jp/singikai/kokusai/top.htm をご参照下さい。 ● 国債トップリテーラー会議 (⇒P.7参照) 6月 8日(第1回会合) 議題 個人向け国債の販売状況及び個人による国債保有の促進策について ⇒詳細は、http://www.mof.go.jp/singikai/kokusai/top4.htm をご参照下さい。 財政投融資関連 ○ 財政投融資に関する基本問題検討会 4月 18 日(第3回会合) 議題 地方債の現状等について 4月 24 日(第4回会合) 議題 メザニンファイナンス等について 5月 22 日(第5回会合) 議題 財投機関債について 6月 19 日(第6回会合) 議題 政府保証債等について ⇒詳細は、http://www.mof.go.jp/kentoukai/gyouseiunei/kitop.htm をご参照下さい。 ● 財政融資資金貸付金の証券化に関する実務検討会 (⇒P.6参照) 4月 3日(第5回会合) 議題 法律事務所からのヒアリング及び質疑応答 4月 17 日(第6回会合) 議題 証券会社からのヒアリング及び質疑応答④ アドバイザーの募集・選定について① 5月 15 日(第7回会合) 議題 アドバイザーの募集・選定について② 格付け会社からのヒアリング及び質疑応答① 5月 29 日(第8回会合) 議題 格付け会社からのヒアリング及び質疑応答② 6月 18 日(第9回会合) 議題 財政融資資金貸付金の証券化のメリットについて ⇒詳細は、http://www.mof.go.jp/kentoukai/gyouseiunei/jitop.htm をご参照下さい。 -10- 財務省理財局 〒100-8940 東京都千代田区霞が関 3-1-1 www.mof.go.jp TEL:03-3581-4111